説明

無線通信システムおよび無線通信方法

【課題】ネットワークの輻輳時にも、すべてのユーザに対して最低限の情報提供を行うとともに、通話の可能性を高める。
【解決手段】端末局は、呼の生起により基地局に一定の帯域の割り当てを要求し、基地局から要求帯域が割り当てられた場合に当該要求帯域を用いて通信を行い、基地局から要求帯域が割り当てられない場合に待機状態に移行し、待機状態を表示する。基地局は、当該基地局の利用可能な全帯域のうち割当済帯域を管理し、端末局から帯域の割り当てを要求され、割当可能帯域が要求帯域を超えている場合に要求帯域を割り当て、それ以外の場合には当該端末局に要求帯域の割り当てを行わずに待機状態に移行させて当該端末局を待機させた順に管理し、割当可能帯域が当該要求帯域を超えた端末局に対して当該要求帯域を割り当てるための制御信号を送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基地局と端末局との間において、災害等によるネットワークの輻輳時に所要の通信手段を確保する無線通信システムおよび無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話等の無線通信システムは、図1に示すように、基地局2aと端末局1a,1b,1c、基地局2bと端末局1d、基地局2cと端末局1eは、それぞれ無線回線を用いて接続されるアクセスネットワークを構成する。基地局2a〜2cは、主に有線回線を用いて接続されるコアネットワークを構成する。コアネットワークには、例えばメールの送受信に用いる内部サーバ3a、災害用伝言板や災害用伝言ダイヤルに対応する内部サーバ3bが接続される。さらに、コアネットワークには、外部ネットワークを介して外部サーバ4や音声通話の行う有線事業者・携帯電話事業者設備5が接続される。
【0003】
端末局1a〜1eは、コアネットワークに接続される他の端末局や、外部ネットワークを介して有線事業者・携帯電話事業者設備5と接続され、音声通話が行われる。例えば、端末局1aと端末局1eとの間で音声通話を行う場合には、経路A(端末局1a−基地局2a−基地局2c−端末局1e)を介して通信が行われる。
【0004】
また、端末局1a〜1eは、内部サーバ3aを介して行われるメールの送受信や、外部ネットワークおよび外部サーバ4を介して情報取得等のデータ通信が行われる。例えば、端末局1aが内部サーバ3aにアクセスしてメールの送受信を行う場合には、経路B(端末局1a−基地局2a−内部サーバ3a)を介して通信が行われる。
【0005】
次に、アクセスネットワークの動作について説明する。なお、使用する無線規格に従い、TDMA(時分割多元接続) であっても、FDMA(周波数分割多元接続) であってもよい。無線リンクの伝送容量に余裕がある平常時のFDMAにおける周波数割当例を図5に示す。
【0006】
図5において、「データ」、「音声」は、基地局と端末局との間の通信内容を示す。「制御」は、端末局の登録、音声通話における通話先電話番号情報、データ通信におけるサーバアドレス情報の送受信等を示す。なお、端末局毎に異なる周波数チャネルを用いてもよいし、OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access) により端末局毎に異なるサブキャリアを用いてもよい。ここでは、ネットワークの輻輳は発生せず、全ての通信が滞りなく行われている状態を示す。
【0007】
地震等の災害時には、即座に通信相手への連絡が行えない場合においても、内部サーバ3bを用いた災害用伝言板に情報を掲載したり、または災害用伝言ダイヤルに音声を記録し、それを通信相手が参照することにより安否を確認することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−338877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
災害時には、安否の確認等のため、災害が発生した地点付近の端末局への着信、および同端末局からの発信によるトラフィックが増加する。例えば、図1に示す基地局2a付近で災害が発生した場合、周辺の端末局1a,1b,1cとの通信のため、基地局2aが接続されるコアネットワークのトラヒックや、基地局2aを用いるアクセスネットワークのトラヒックが増加する。トラヒックが装置や回線の処理能力を超過した場合にはネットワークの輻輳を生じ、通信が行えなくなる。この輻輳時のFDMAにおける周波数割当例を図6に示す。
【0010】
図6に示すように、全ての周波数が使用された場合には新たな通信が確立できなくなる。コアネットワークでは高速な光伝送が導入され、またアクセスネットワークではLTE(Long-Term Evolution )、WiMAX(Worldwide interoperability for microwave access)等の高速な無線伝送が導入され、共に伝送速度が向上しているが、災害時等の急激なトラヒックの増加に対応できていない。通信ができない端末局には、例えば「通信できません」や「圏外」と表示され、外部から一切の情報を得ることができず、使用者に不安を生じる恐れがある。これは、特許文献1のように、災害発生地域のトラヒックを制限した場合においても同様である。また、災害用伝言板や災害用伝言ダイヤルを用いたとしても、それ以外のトラヒックは低減できないため、ネットワークの輻輳は避けられない。
【0011】
本発明は、ネットワークの輻輳時にも、すべてのユーザに対して最低限の情報提供を行うとともに、通話の可能性を高めることができる無線通信システムおよび無線通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の発明は、基地局と端末局との間で通信を行う無線通信システムであって、端末局は、呼の生起により基地局に一定の帯域の割り当てを要求する手段と、基地局から要求した帯域(以下「要求帯域」という)が割り当てられた場合に、当該要求帯域を用いて通信を行う手段と、基地局から要求帯域が割り当てられない場合に待機状態に移行し、待機状態を表示する手段とを備える。基地局は、当該基地局の利用可能な全帯域のうち、端末局に割り当てた帯域(以下「割当済帯域」という)を管理する手段と、端末局から帯域の割り当てを要求され、当該基地局の利用可能な全帯域から制御信号を送信するために必要な帯域と割当済帯域を引いた割当可能帯域が要求帯域を超えている場合に、当該端末局に対して要求帯域を割り当て、それ以外の場合には当該端末局に要求帯域の割り当てを行わずに待機状態に移行させ、当該端末局を待機させた順に管理する手段と、割当済帯域が開放されたときに、割当可能帯域と待機中の端末局の要求帯域を比較し、待機順に、割当可能帯域が当該要求帯域を超えた端末局に対して当該要求帯域を割り当てるための制御信号を送信する手段とを備える。
【0013】
第1の発明の無線通信システムにおいて、基地局は、制御信号としてトラヒックの輻輳に関する情報を報知する手段を備え、端末局は、待機状態において受信したトラヒックの輻輳に関する情報を表示する手段を備える。
【0014】
第2の発明は、基地局と端末局との間の無線通信方法であって、端末局は、呼の生起により基地局に一定の帯域の割り当てを要求するステップと、基地局から要求した帯域(以下「要求帯域」という)が割り当てられた場合に、当該要求帯域を用いて通信を行うステップと、基地局から要求帯域が割り当てられない場合に待機状態に移行し、待機状態を表示するステップとを有する。基地局は、当該基地局の利用可能な全帯域のうち、端末局に割り当てた帯域(以下「割当済帯域」という)を管理するステップと、端末局から帯域の割り当てを要求され、当該基地局の利用可能な全帯域から制御信号を送信するために必要な帯域と割当済帯域を引いた割当可能帯域が要求帯域を超えている場合に、当該端末局に対して要求帯域を割り当て、それ以外の場合には当該端末局に要求帯域の割り当てを行わずに待機状態に移行させ、当該端末局を待機させた順に管理するステップと、割当済帯域が開放されたときに、割当可能帯域と待機中の端末局の要求帯域を比較し、待機順に、割当可能帯域が当該要求帯域を超えた端末局に対して当該要求帯域を割り当てるための制御信号を送信するステップとを有する。
【0015】
第2の発明の無線通信方法において、基地局は、制御信号としてトラヒックの輻輳に関する情報を報知するステップを有し、端末局は、待機状態において受信したトラヒックの輻輳に関する情報を表示部に表示するステップを有する。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、呼制御において利用可能な帯域を全て割り当てるのではなく、一部の帯域を残しておくことにより、ユーザは、ネットワークが輻輳中でも待機状態が通知され、また報知情報が得られ、さらにネットワークが利用可能になったことを受動的に知ることができるので、ユーザの安心感を高め、さらに通話の可能性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の無線通信システムの構成例を示す図である。
【図2】本発明の無線通信システムにおける基地局および端末局の構成例を示す図である。
【図3】本発明の無線通信システムにおける無線帯域の管理例を示す図である。
【図4】本発明の無線通信システムの動作例を示す図である。
【図5】平常時のFDMAにおける周波数割当例を示す図である。
【図6】輻輳時のFDMAにおける周波数割当例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0018】
図1は、本発明の無線通信システムの構成例を示す。
図1において、基地局2aと端末局1a,1b,1c、基地局2bと端末局1d、基地局2cと端末局1eは、それぞれ無線回線を用いて接続されるアクセスネットワークを構成する。基地局2a〜2cは、主に有線回線を用いて接続されるコアネットワークを構成する。コアネットワークには、例えばメールの送受信に用いる内部サーバ3a、災害用伝言板や災害用伝言ダイヤルに対応する内部サーバ3bが接続される。さらに、コアネットワークには、外部ネットワークを介して外部サーバ4や音声通話を行う有線事業者・携帯電話事業者設備5が接続される。
【0019】
本発明の無線通信システムでは、基地局が、音声通話のための呼制御において、制御信号および報知情報を送信するために必要な帯域を残して呼制御を行う。なお、制御信号は、例えば音声通話における通話先電話番号情報やデータ通信におけるサーバのアドレスをやりとりする信号である。報知情報は、例えばネットワークの輻輳状態や災害情報等を通知する情報である。
【0020】
さらに、基地局は、帯域不足のために帯域の割り当てができない新規呼が生じた場合に、当該呼が生じた端末局を待機状態とし、制御信号および報知情報を受信させる制御を行う。端末局は、待機状態のときに基地局から制御信号または報知情報を受信したときは、その内容に応じたメッセージを表示部に表示する。また、基地局は、すでに割り当てた帯域が通信完了等により空き状態となったときは、待機状態となっている端末局に自動的に当該帯域を割り当て、通話が可能になったことを通知する制御信号を送信する。
【0021】
このように、本発明の無線通信システムでは、呼制御において利用可能な帯域を全て割り当てるのではなく、一部の帯域を残しておき、制御信号や報知情報の送信のために使用する。そして、当該一部の帯域は、待機状態の端末局に対して帯域の割り当てが可能になった場合に、当該端末局に通話が可能になったことを通知する制御信号を送信するために用いる。これにより、ユーザは、ネットワークが輻輳中でも少なくとも報知情報が得られ、さらにネットワークが利用可能になったことを受動的に知ることができるので、安心感を得られる効果がある。なお、使用する無線規格はTDMAでもFDMAでもよい。平常時は無線リンクの伝送容量に余裕があるため、結果的に動作は従来と同様になる。
【0022】
図2は、本発明の無線通信システムにおける基地局および端末局の構成例を示す。
図2において、基地局20は、送受信部21、制御部22、呼制御処理部23、報知情報生成部24により構成される。送受信部21は、アンテナを介して受信した無線信号を入力し、フィルタリング、周波数変換、復調等の受信処理を行い、制御部22へ出力するとともに、制御部22から入力する信号を変調、周波数変換等を行って無線信号を生成し、アンテナを介して送信する。
【0023】
制御部22は、送受信部21から入力する信号または外部から入力する信号に応じた処理を行う。具体的には、端末局10から送信された音声信号を送受信部21が受信したときに、制御部22はその音声信号を外部とのインタフェースを介して外部ネットワークへ転送する。また、外部ネットワークから端末局10へ送信する音声信号が入力されたときに、制御部22はその音声信号を送受信部21を介して送信する。
【0024】
一方、端末局10から新規の音声通話を始めるための発呼要求を含む制御信号が制御部22に入力すると、呼制御処理部23に対して当該発呼要求に対する帯域の割当可否を問い合わせる。問い合わせ結果が帯域割当可能であれば、制御部22は新規の音声通話回線を確立するための手順を開始する。具体的には、音声通話の着信先に向けて、音声通話の要求を転送する。また、音声通話の発信元に対して、帯域割当可能であることを示す通知を送信する。ただし、本実施例は呼制御方式について限定するものではなく、制御部22は、新規の音声通話を始めるための発呼要求を含む制御信号が入力された場合に、呼制御処理部23による当該音声通話の諾否に基づいて音声通話回線の確立を行えばよい。
【0025】
呼制御処理部23への問い合わせ結果が帯域割当不可であった場合は、制御部22は端末局10を待機状態とするための動作を行う。すなわち、発呼要求を送信した端末局10に対して待機通知を送信する。待機通知を受信した端末局10は、待機状態の動作を開始する。制御部22は、当該端末局10の識別子を自らが管理する待機リストに追加する。待機リストには、発信元の端末局の識別子に、通話先電話番号情報および要求帯域を関連付けて管理する。通話先電話番号情報は、帯域に空きが生じたときに、端末局に問い合わせることなく通話回線の確立を始めるためである。要求帯域は、帯域に空きが生じたときに、当該空き帯域で待機リストの一番最初に登録された端末局の帯域割当の可否を判定するためである。
【0026】
さらに、制御部22は、報知情報生成部24に対して、報知情報の生成を開始するための報知情報生成指示を送信する。報知情報生成部24は、報知情報生成指示を受信すると、報知情報の生成を開始する。制御部22は、待機リストに端末局10が登録されている間は、周期的に呼制御処理部23へ帯域割当の可否を問い合わせる。空き帯域が生じ、待機リストに一番最初に登録された端末局10に帯域を割り当てることができる場合には、制御局20は当該端末局10に対して待機解除を通知し、音声通話開始の情報を送信する。
【0027】
呼制御処理部23は、無線帯域の管理を行う。すなわち、制御部22から新たな音声通話の帯域割当について問合せがあった場合、図3に示すように、当該基地局20に設定された周波数帯域幅等により定められる利用可能な全帯域から、制御信号等を伝送するために必要な帯域を引いた使用可能帯域を算出し、さらに使用可能帯域から割当済帯域を引いた割当可能帯域が要求帯域よりも大きいか否かを判定し、割当可能帯域の方が大きい場合には、割当可能として新たな音声通話を許可することを制御部22に応答する。このとき、新たに割り当てた帯域を割当済帯域に追加して管理する。たとえば、制御信号等を伝送するために必要な帯域が、利用可能な全帯域の20%であれば、残りの80%が使用可能帯域である。このように、利用可能な全帯域を音声通話に割り当てる帯域とするのではなく、予め制御信号等を伝送するために必要な帯域を確保することにより、全ての端末局10に対して、報知情報等を送信したり、音声通話における通話先電話番号情報やデータ通信におけるサーバのアドレス等を交換しておくことができる。
【0028】
報知情報生成部24は、輻輳が生じていること等を示す報知情報を生成して、端末局10へ向けてブロードキャストにより配信する。報知情報の例としては、呼制御処理部23から割当済帯域を取得し、閾値よりも大きい場合には、「輻輳している」旨を報知する。なお、割当済帯域を周波数使用率として報知してもよい。また、制御部22を介して、外部サーバと通信を行って取得した災害情報、ネットワークトラブル情報等を報知情報として生成することもできる。
【0029】
端末局10は、送受信部11、表示部12、音声処理部13、入力部14、制御部15により構成される。送受信部11の動作は、基地局20の送受信部21と同様である。音声処理部13は、ユーザの音声を電気信号に変換し、また制御部15から入力する電気信号を音声に変換して出力する。入力部14は、たとえば音声通話の通話先電話番号情報等を入力する。
【0030】
制御部15は、送受信部11を介して入力された信号または音声処理部13から入力された信号に応じた処理を行う。具体的には、入力部14により音声通話の通話先電話番号情報が入力された場合は、当該情報から発呼要求を含む制御信号を生成して、送受信部11を介して送信する。また、音声処理部13から入力された音声信号を送受信部11へ出力し、送受信部11から入力された音声信号を音声処理部13へ転送する。
【0031】
制御部15は、基地局20から待機通知を受信すると、表示部12に待機情報を表示する。表示部12には、たとえば「発信待機中、そのままお待ち下さい」等のメッセージが表示される。また、制御部15は、基地局20から報知情報を受信すると、表示部12に報知情報を表示する。表示部12には、たとえば割当済帯域(周波数使用率)や災害情報、ネットワークトラブル情報等が表示される。
【0032】
また、制御部15は、基地局20から待機解除を受信すると、表示部12に音声通話開始の情報を表示する。表示部12には、たとえば「音声通信開始/通話接続中」等のメッセージが表示される。また、音声通話回線を確立するための制御信号の処理を行う。かかる制御信号は、一般的な音声通信回線の確立のために用いられる信号(リンギング信号等)を指す。
【0033】
図4は、本発明の無線通信システムの動作例を示す。ここでは、図1における端末局1a,1eが経路Aを介して音声通話を行う場合の動作例を示す。
【0034】
図4において、端末局1aは、端末局1eに対する通話要求が生じると、自らが接続すべき基地局2aに対して発信する。基地局2aは、利用可能な全帯域から制御信号等を伝送するために必要な帯域を引いた使用可能帯域から、さらに割当済帯域を引いた割当可能帯域が要求帯域よりも大きいか否かを判定し、割当可能帯域が不足して帯域割当不可のときは、発信元の識別番号等を蓄積し、端末局1aに対して待機通知を行う。さらに、基地局2aは、ブロードキャストによりネットワークの輻輳状態や災害情報等を通知する報知情報を送信する。これは、割当済帯域が通信完了等により空き状態となり、割当可能帯域が要求帯域よりも大きくなり、待機状態が解除されるまで継続する。基地局2aは要求帯域の割り当てが可能になると、蓄積した発呼情報を用いて通信路を確立する。すなわち、基地局2aは経路Aの通信路を確立し、音やメッセージで端末局1aには待機解除を通知し、端末局1eには基地局2cから着信を通知する。両端末局の通話ボタンが押される等、両端末局の話者が存在する場合には音声通話を開始する。
【0035】
なお、端末局1eのみに着信を通知し、通話ボタンの押下を確認した後に端末局1aに待機解除を通知し、端末局1aが応答することにより音声通話を開始してもよい。通話先である端末局1eが応答しなかった場合には、基地局2aの指示により端末局1aは待機状態を継続してもよいし、待機状態を終了してもよい。一方、端末局1eが応答したときに、待機解除を通知された端末局1aの発信者が応答しない場合には、基地局2aは端末局1eに着信を解除する旨を通知するとともに、端末局1aの待機状態を終了する。また、発信者の意志により待機状態を終了してもよい。
【0036】
なお、端末局1a−端末局1eの通話確立前に、別の端末局(例えば端末局1d) が端末局1aへ発信し、帯域割当が可能であった場合には、基地局2aは端末局1aの待機状態を終了させて端末局1eからの着信を通知して通話を開始してもよいし、端末局1a−端末局1eの待機状態を優先させ端末局1dに話中を通知してもよい。
【0037】
以上のように、音声通話に使用される帯域が所定の割合を超えた場合に、基地局が端末局に対して待機通知を出力し、端末局は待機状態になるとともに、その後に報知される報知情報に基づいてメッセージ等を画面に表示することによって、ユーザは、単なる呼損ではなく、ネットワーク等の状態を把握しながら通話の待機ができるため、ユーザエクスペリエンスが向上する。よって、災害等によってトラヒックが増加しネットワークが輻輳した場合にも、端末局−基地局間の通信を確保するとともに、端末局に情報を表示することでユーザの安心感を高めることができる。
【0038】
なお、基地局において報知情報を送信する周期と、空き帯域が生じた場合の待機解除を送信するタイミングを同期させれば、待機状態の端末局は、報知情報が送信される周期にのみ信号を受信すればよいため、それ以外の期間を省電力動作することによって、バッテリーを長持ちさせることができる。
【実施例2】
【0039】
本実施例では、基地局がブロードキャストで報知情報を送信するのではなく、各端末局ごとに報知情報を通知する。基地局20の装置構成は、実施例1と同様である。
【0040】
基地局20の制御部22は、端末局10に待機通知を送信するとともに、待機時間を通知する。また、各端末局の待機時間の経過に合わせて、当該端末局に対する帯域割当が可能か否かを呼制御処理部23に問い合わせて、帯域割当が可能であれば待機解除を送信し、帯域割当が不可のときは、さらなる待機時間を通知する。また、さらなる待機時間を通知するときに、報知情報を送信する。この場合、待機状態の端末局は、待機時間の間は省電力動作とすることで、バッテリーを長持ちさせることができる。報知情報を個別的に送信できるため、たとえば待機リストにおいて、当該端末局の前にいくつの端末局が登録されているか等の情報を送信することができる。
【実施例3】
【0041】
本実施例では、基地局と端末局との間の無線帯域は確保できるものの、ネットワーク側、あるいは相手先の無線帯域が確保できずに、音声通話ができない場合について説明する。この場合は、基地局20の制御部22は、当該基地局が備える呼制御処理部23だけでなく、外部ネットワークの呼制御を処理するサーバまたは着信先の端末局が接続する基地局の呼制御処理部に対して、帯域を確保できるかどうかの問い合わせを行う。このとき、帯域が確保できない場合は、当該基地局の備える呼制御処理部の場合と同様に、端末局に待機通知を送信する。また、制御部22は、待機リストに当該無線局を登録し、周期的に外部ネットワークの呼制御を処理するサーバまたは着信先の端末局が接続する基地局の呼制御処理部に対して問合せを行う。また、この場合は、報知情報生成部23は、外部ネットワークの呼制御を処理するサーバまたは着信先の端末局が接続する基地局の呼制御処理部に対して帯域情報を取得する手段をさらに備え、取得した帯域情報を報知情報として報知する。
【符号の説明】
【0042】
1a,1b,1c,1d,1e 端末局
2a,2b,2c 基地局
3a,3b 内部サーバ
4 外部サーバ
5 有線事業者・携帯電話事業者設備
10 端末局
11 送受信部
12 表示部
13 音声処理部
14 入力部
15 制御部
20 基地局
21 送受信部
22 制御部
23 呼制御処理部
24 報知情報生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局と端末局との間で通信を行う無線通信システムであって、
前記端末局は、
呼の生起により前記基地局に一定の帯域の割り当てを要求する手段と、
前記基地局から要求した帯域(以下「要求帯域」という)が割り当てられた場合に、当該要求帯域を用いて通信を行う手段と、
前記基地局から前記要求帯域が割り当てられない場合に待機状態に移行し、待機状態を表示する手段と
を備え、
前記基地局は、
当該基地局の利用可能な全帯域のうち、前記端末局に割り当てた帯域(以下「割当済帯域」という)を管理する手段と、
前記端末局から前記帯域の割り当てを要求され、当該基地局の利用可能な全帯域から制御信号を送信するために必要な帯域と前記割当済帯域を引いた割当可能帯域が前記要求帯域を超えている場合に、当該端末局に対して前記要求帯域を割り当て、それ以外の場合には当該端末局に前記要求帯域の割り当てを行わずに前記待機状態に移行させ、当該端末局を待機させた順に管理する手段と、
前記割当済帯域が開放されたときに、前記割当可能帯域と前記待機中の端末局の要求帯域を比較し、待機順に、前記割当可能帯域が当該要求帯域を超えた端末局に対して当該要求帯域を割り当てるための制御信号を送信する手段と
を備えた
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
請求項1に記載の無線通信システムにおいて、
前記基地局は、前記制御信号としてトラヒックの輻輳に関する情報を報知する手段を備え、
前記端末局は、前記待機状態において受信した前記トラヒックの輻輳に関する情報を表示する手段を備えた
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項3】
基地局と端末局との間の無線通信方法であって、
前記端末局は、
呼の生起により前記基地局に一定の帯域の割り当てを要求するステップと、
前記基地局から要求した帯域(以下「要求帯域」という)が割り当てられた場合に、当該要求帯域を用いて通信を行うステップと、
前記基地局から前記要求帯域が割り当てられない場合に待機状態に移行し、待機状態を表示するステップと
を有し、
前記基地局は、
当該基地局の利用可能な全帯域のうち、前記端末局に割り当てた帯域(以下「割当済帯域」という)を管理するステップと、
前記端末局から前記帯域の割り当てを要求され、当該基地局の利用可能な全帯域から制御信号を送信するために必要な帯域と前記割当済帯域を引いた割当可能帯域が前記要求帯域を超えている場合に、当該端末局に対して前記要求帯域を割り当て、それ以外の場合には当該端末局に前記要求帯域の割り当てを行わずに前記待機状態に移行させ、当該端末局を待機させた順に管理するステップと、
前記割当済帯域が開放されたときに、前記割当可能帯域と前記待機中の端末局の要求帯域を比較し、待機順に、前記割当可能帯域が当該要求帯域を超えた端末局に対して当該要求帯域を割り当てるための制御信号を送信するステップと
を有する
ことを特徴とする無線通信方法。
【請求項4】
請求項3に記載の無線通信方法において、
前記基地局は、前記制御信号としてトラヒックの輻輳に関する情報を報知するステップを有し、
前記端末局は、前記待機状態において受信した前記トラヒックの輻輳に関する情報を表示部に表示するステップを有する
ことを特徴とする無線通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−77984(P2013−77984A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216613(P2011−216613)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】