説明

無線通信システム

【課題】仕切られた各空間に配置した無線局間で無線通信を行う場合に、各無線局は無線通信波を他の無線局からの直接波の干渉を受けずに受信することで高品質の無線通信を行う。
【解決手段】壁により仕切られた各室に無線局31,41,51を配置し、中継装置24から同軸ケーブル77,78,79及びこの同軸ケーブルに接続し各室に配置した中継アンテナ34,44,54を介して各無線局が相互に無線通信を行うものにおいて、各無線局から中継アンテナに送信する電波を拡散送信部31b,41b,51bによりスペクトル拡散し、このスペクトル拡散した信号を中継装置の逆拡散部73で逆拡散して狭帯域信号に変換し、この狭帯域信号を各室の中継アンテナから無線局に無線送信する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば、住宅等において各部屋に設置した無線局がテレビ共聴配線などの信号ケーブルを使用して互いに無線通信する無線通信システムに関する。
【0002】
【従来の技術】一般住宅や事務所などの建物は、壁、床、天井などによって仕切って空間、すなわち、部屋を形成している。このような各部屋を仕切る壁などは材質や厚さなどによって通過する電波の減衰量が大きく異なるため、送信電力が小さい宅内用無線機器による壁越しの無線通信は確実性に問題があった。
【0003】このため、例えば、特開平8−125600号公報では、図8及び図9に示すような対策を取っている。すなわち、図8に示すように、A室とB室からなる建物1において、建物1の外にテレビ放送受信アンテナ2が配置され、そのアンテナ2と各部屋に設けたアンテナ用端子3,4を壁内を配線したテレビ共聴配線5によって接続されている場合に、A室ではアンテナ用端子3に接続器6を接続し、その接続器6に中継アンテナ7を接続するととともに、無線端末8を配置し、また、B室ではアンテナ用端子4にテレビ放送周波数と無線通信周波数を分離する分波器9を接続し、その分波器9にテレビ受像機10を接続するとともに接続器11を接続し、その接続器11に中継アンテナ12を接続するとともに、無線端末13を配置する。
【0004】これにより、テレビ放送受信アンテナ2が受信した受信放送波はテレビ共聴配線5、アンテナ用端子4及び分波器9を介してテレビ受像機10に送信される。また、A室の無線端末8とB室の無線端末13が相互に無線通信するときには、例えば、無線端末8から無線端末13に無線通信するときには、無線端末8からの無線通信波を中継アンテナ7で受信し、この通信波を接続器6→アンテナ用端子3→テレビ共聴配線5→アンテナ用端子4→分波器9→接続器11の順に送信し、中継アンテナ12から無線端末13に無線通信することになる。
【0005】また、図9に示すように、テレビ共聴配線14に接続したアンテナ用端子15に接続器16を接続し、この接続器16に方向性結合器17を接続し、その方向性結合器17に別の方向性結合器18を直接接続するとともに増幅器19を介して接続し、その方向性結合器18に中継アンテナ20を接続する。
【0006】この場合は、テレビ共聴配線14からアンテナ用端子15を介して接続器16が受信した信号は方向性結合器17及び増幅器19を経由して増幅され、方向性結合器18から中継アンテナ20を介して無線端末に送信される。また、無線端末からの無線通信波を中継アンテナ20が受信すると、その信号を方向性結合器18,17、接続器16及びアンテナ用端子15を経由してテレビ共聴配線14に送信される。
【0007】このように、部屋と部屋との間に電波を減衰させる作用を為す壁が存在してもテレビ共聴配線を利用することで各無線端末が相互に通信できるようにしている。また、テレビ共聴配線等で生じる電力損失を増幅により補償して既定範囲の電力が得られるようになっている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】ところで、このようなシステムでは無線端末8からの送信電波は中継アンテナ7によって受信され、接続器6、アンテナ用端子3、テレビ共聴配線5、アンテナ用端子4、分波器9、接続器11を経由して中継アンテナ12から無線端末13に到達するが、送信電波の一部がA室とB室とを仕切っている壁1aを通過して減衰を受けながらも直接波として無線端末13に到達する。そして、このシステムでは無線端末8が送信する周波数と無線端末13が受信する周波数が同一周波数で、かつ、同一変調方式になっている。
【0009】従って、電波の壁1aによる通過損失がそれ程大きくない場合や、各無線端末8,13が壁1aに接近して配置されている場合には、無線端末8から無線端末13への直接波の到達電力が大きくなり、無線端末13では中継アンテナ12から送信される無線電波と直接波が干渉して伝送品質を劣化させる、いわゆる同一周波数干渉という問題を招く問題があった。また、図8において図9に示すような増幅器を使用して電力増幅を図った場合に、B室の中継アンテナ12からの無線通信波が壁1aを通過してA室の中継アンテナ7に戻るという帰還経路が形成され、両中継アンテナ間の減衰量とテレビ共聴配線等の通過損失の合計よりも増幅器の利得を大きくすると発振を起こす虞れがあり、このため、増幅器の利得や中継アンテナの設置条件に制約が生じ、その結果、受信側の無線端末の位置によっては必要な受信電力が得られなくなるという問題があった。
【0010】そこで、各請求項記載の発明は、壁等により仕切られた各空間にそれぞれ無線局を配置し、この各無線局間で無線通信を行う場合に、中継アンテナ及び信号ケーブルを経由した無線通信波を受信する無線局の受信点において、この無線通信波とこの無線通信波を送信した無線局からの直接波が干渉するのを極力防止し、各無線局間で高品質の無線通信ができる無線通信システムを提供する。
【0011】また、請求項3、5、7、9及び11記載の発明は、さらに、各無線局における無線通信波の受信レベルを最適に調整でき、しかも各空間の間で電波の帰還経路が形成される虞れがなく、より高品質の無線通信ができる無線通信システムを提供する。また、請求項9及び11記載の発明は、さらに、各無線局における無線通信波の受信レベルを各空間内において容易に調整できる無線通信システムを提供する。
【0012】また、請求項12記載の発明は、さらに、無線通信波を送信する無線局と中継アンテナとの間の電力損失を自動的に補償して中継アンテナからの送信電力を既定範囲に制御できる無線通信システムを提供する。
【0013】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明は、壁等により仕切られた各空間にそれぞれ無線局を配置し、中継装置から各空間に個別に配線した信号ケーブル及びこの信号ケーブルに接続し各空間に配置した中継アンテナを介して各無線局が相互に無線通信を行う構成とし、各無線局は、送信部に送信信号をスペクトル拡散する拡散手段を備え、中継装置は、各無線局からそれぞれ信号ケーブルを介して伝送される無線通信波を合成する合成手段と、この合成手段からの出力信号をスペクトル逆拡散する逆拡散手段と、この逆拡散手段にて逆拡散した信号を各空間に対応して分配する分配手段を設け、任意の無線局からのスペクトル拡散した無線通信波を中継装置でスペクトル逆拡散して他の無線局に分配送信することにある。
【0014】請求項2記載の発明は、壁等により仕切られた各空間にそれぞれ無線局を配置し、中継装置から各空間に個別に配線した信号ケーブル及びこの信号ケーブルに接続し各空間に配置した中継アンテナを介して各無線局が相互に無線通信を行う構成とし、各無線局は、受信部に受信信号をスペクトル逆拡散する逆拡散手段を備え、中継装置は、各無線局からそれぞれ信号ケーブルを介して伝送される無線通信波を合成する合成手段と、この合成手段からの出力信号をスペクトル拡散する拡散手段と、この拡散手段にて拡散した信号を各空間に対応して分配する分配手段を設け、任意の無線局からの無線通信波を中継装置でスペクトル拡散して他の無線局に分配送信することにある。
【0015】請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の無線通信システムにおいて、中継装置に、さらに、分配手段が分配した信号をそれぞれレベル補正するレベル補正手段を設けたことにある。
【0016】請求項4記載の発明は、壁等により仕切られた各空間にそれぞれ無線局を配置し、中継装置から各空間に個別に配線した信号ケーブル及びこの信号ケーブルに接続し各空間に配置した中継アンテナを介して各無線局が相互に無線通信を行う構成とし、各無線局は、送信部に送信信号をスペクトル拡散する拡散手段を備え、中継装置は、各無線局からそれぞれ信号ケーブルを介して伝送される無線通信波を合成する合成手段と、この合成手段からの出力信号を各空間に対応して分配する分配手段を設け、各空間は、中継装置からそれぞれ信号ケーブルを介して伝送される信号をスペクトル逆拡散する逆拡散手段を配置し、任意の無線局からのスペクトル拡散した無線通信波を中継装置を経由して各空間に分配送信した後、各空間でスペクトル逆拡散し中継アンテナを介して他の無線局に無線送信することにある。
【0017】請求項5記載の発明は、請求項4記載の無線通信システムにおいて、各空間に、さらに、逆拡散手段がスペクトル逆拡散した信号をレベル補正するレベル補正手段を設けたことにある。
【0018】請求項6記載の発明は、壁等により仕切られた各空間にそれぞれ無線局を配置し、中継装置から各空間に個別に配線した信号ケーブル及びこの信号ケーブルに接続し各空間に配置した中継アンテナを介して各無線局が相互に無線通信を行う構成とし、各無線局は、受信部に受信信号をスペクトル逆拡散する逆拡散手段を備え、中継装置は、各無線局からそれぞれ信号ケーブルを介して伝送される無線通信波を合成する合成手段と、この合成手段からの出力信号を各空間に対応して分配する分配手段を設け、各空間は、中継装置からそれぞれ信号ケーブルを介して伝送される信号をスペクトル拡散する拡散手段を配置し、任意の無線局からの無線通信波を中継装置を経由して各空間に分配送信した後、各空間でスペクトル拡散し中継アンテナを介して他の無線局に無線送信することにある。
【0019】請求項7記載の発明は、請求項6記載の無線通信システムにおいて、各空間に、さらに、拡散手段がスペクトル拡散した信号をレベル補正するレベル補正手段を設けたことにある。
【0020】請求項8記載の発明は、壁等により仕切られた各空間にそれぞれ無線局を配置し、各空間に共通に配線した共通信号ケーブル及びこの信号ケーブルに接続し各空間に配置した中継アンテナを介して各無線局が相互に無線通信を行う構成とし、各無線局は、送信部に送信信号をスペクトル拡散する拡散手段を備え、各空間は、信号ケーブルを介して伝送される信号をスペクトル逆拡散する逆拡散手段を配置し、任意の無線局からのスペクトル拡散した無線通信波を共通信号ケーブルを経由した後、各空間でスペクトル逆拡散し中継アンテナを介して他の無線局に無線送信することにある。
【0021】請求項9記載の発明は、請求項8記載の無線通信システムにおいて、各空間に、さらに、逆拡散手段がスペクトル逆拡散した信号をレベル補正するレベル補正手段を設けたことにある。
【0022】請求項10記載の発明は、壁等により仕切られた各空間にそれぞれ無線局を配置し、各空間に共通に配線した共通信号ケーブル及びこの信号ケーブルに接続し各空間に配置した中継アンテナを介して各無線局が相互に無線通信を行う構成とし、各無線局は、受信部に受信信号をスペクトル逆拡散する逆拡散手段を備え、各空間は、信号ケーブルを介して伝送される信号をスペクトル拡散する拡散手段を配置し、任意の無線局からの無線通信波を共通ケーブルを経由した後、各空間でスペクトル拡散し中継アンテナを介して他の無線局に無線送信することにある。
【0023】請求項11記載の発明は、請求項10記載の無線通信システムにおいて、各空間に、さらに、拡散手段がスペクトル拡散した信号をレベル補正するレベル補正手段を設けたことにある。
【0024】請求項12記載の発明は、請求項3、5、7、9、11のいずれか1記載の無線通信システムにおいて、レベル補正手段に、各空間において中継アンテナから無線局に送信する無線電波の送信電力が既定範囲になるように自動的に補正量を制御する手段を備えたことにある。
【0025】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。なお、この実施の形態は本発明を壁によって仕切られた各室を空間とした建物内に適用したものについて述べる。
(第1の実施の形態)図1において、21,22,23はそれぞれ壁によって仕切られたA室、B室、C室、24は例えば屋根下などに配置された中継装置である。
【0026】前記各室21,22,23は、端末装置31a,41a,51aとこの端末装置からの信号をスペクトル拡散して送信する拡散手段としての拡散送信部31b,41b,51bと狭帯域信号を受信する受信部31c,41c,51cとからなる無線局31,41,51を配置している。また、テレビ受像機32,42,52、分波器33,43,53、中継アンテナ34,44,54及びアンテナ用端子(コンセント)35,45,55をそれぞれ配置している。
【0027】そして、前記分波器33の端子aを前記アンテナ用端子35に接続し、端子bを前記中継アンテナ34に接続し、端子cを前記テレビ受像機32に接続している。また、前記分波器43の端子aを前記アンテナ用端子45に接続し、端子bを前記中継アンテナ44に接続し、端子cを前記テレビ受像機42に接続している。また、前記分波器53の端子aを前記アンテナ用端子55に接続し、端子bを前記中継アンテナ54に接続し、端子cを前記テレビ受像機52に接続している。
【0028】前記各分波器33,43,53は端子aと端子bとの間が双方向ライン、端子aと端子cとの間が端子aからcへの単方向ラインになっている。この各分波器33,43,53は方向性結合器に周波数選択性を持たせることによって容易に構成することができる。
【0029】前記中継装置24は、第1の分配器61、分配手段としての第2の分配器62、第1、第2、第3の混合器63,64,65、第1、第2、第3の方向性結合器66,67,68、レベル補正手段としての第1、第2、第3のレベル補正部69,70,71、合成手段としての合成器72、逆拡散手段としての逆拡散部73及び増幅器74からなり、前記第1の分配器61の端子aを外部に設置した受信ブースタと呼ばれる増幅器75を介してテレビ放送受信アンテナ76に接続し、端子bを前記第1の混合器63の端子cに接続し、端子cを前記第2の混合器64の端子cに接続し、端子dを前記第3の混合器65の端子cに接続している。前記第1の分配器61は端子aと端子b,c,dとの間が端子aからb、aからc、aからdへの単方向ラインになっている。
【0030】前記第1の混合器63は端子aを信号ケーブルラインである同軸ケーブル77を介してA室のアンテナ用端子35に接続し、端子bを前記第1の方向性結合器66の端子aに接続している。前記第2の混合器64は端子aを信号ケーブルラインである同軸ケーブル78を介してB室のアンテナ用端子45に接続し、端子bを前記第2の方向性結合器67の端子aに接続している。前記第3の混合器65は端子aを信号ケーブルラインである同軸ケーブル79を介してC室のアンテナ用端子55に接続し、端子bを前記第3の方向性結合器68の端子aに接続している。
【0031】前記各混合器63,64,65は端子aと端子bとの間が双方向ライン、端子aと端子cとの間が端子cからaへの単方向ラインになっている。前記アンテナ用端子35,45,55及び同軸ケーブル77,78,79は壁内に配線された既存の共聴配線をそのまま利用している。
【0032】前記第1の方向性結合器66は端子bを前記合成器72の端子aに接続し、端子cを前記第1のレベル補正部69の出力端子に接続している。前記第2の方向性結合器67は端子bを前記合成器72の端子bに接続し、端子cを前記第2のレベル補正部70の出力端子に接続している。前記第3の方向性結合器68は端子bを前記合成器72の端子cに接続し、端子cを前記第3のレベル補正部71の出力端子に接続している。前記各方向性結合器66,67,68は端子aと端子bとの間が端子aからbへの単方向ライン、端子aと端子cとの間が端子cからaへの単方向ラインになっている。
【0033】前記合成器72は端子dを前記逆拡散部73の入力端子に接続している。前記合成器72は端子aと端子dとの間が端子aからdへの単方向ライン、端子bと端子dとの間が端子bからdへの単方向ライン、端子cと端子dとの間が端子cからdへの単方向ラインになっている。
【0034】前記逆拡散部73はスペクトル拡散信号を逆拡散して出力するようになっている。前記逆拡散部73からの出力信号を前記増幅器74で増幅した後、前記第2の分配器62の端子aに供給している。
【0035】前記第2の分配器62は端子bを前記第1のレベル補正部69の入力端子に接続し、端子cを前記第2のレベル補正部70の入力端子に接続し、端子dを前記第3のレベル補正部71の入力端子に接続している。前記第2の分配器62は端子aと端子b,c,dとの間が端子aからb、aからc、aからdへの単方向ラインになっている。前記各分配器61,62、各混合器63,64,65及び合成器72は、高周波トランスによるハイブリッド回路及びフェライト素子によって容易に構成することができる。
【0036】前記各レベル補正部69,70,71は個別に信号レベルを調整できるもので、具体的には、図2に示すように、電圧制御増幅器80、固定利得の増幅器81、信号カップラ82及びレベル検出部83からなり、入力信号を前記電圧制御増幅器80及び増幅器81で増幅して出力するとともに、この出力信号の一部を前記信号カップラ82によって検出し、この検出信号を前記レベル検出部83に入力することにより信号電力に逆比例した直流電圧に変換し、この直流電圧を制御電圧として前記電圧制御増幅器80の利得制御端子に供給するようになっている。
【0037】この負帰還制御系により前記増幅器81からの出力電力が目標値に近付くように前記電圧制御増幅器80の利得制御が行われる。このときの目標値は、前記電圧制御増幅器80への入力電力をAdBm、前記増幅器81の出力点から前記各室21,22,23の中継アンテナ34,44,54までの損失をLdB、中継アンテナ34,44,54への最大入力電力、すなわち、電波法での規制値をBdBmとすると、(B+L−A)dBとなる。
【0038】このような構成においては、例えば、A室21の無線局31の拡散送信部31bからスペクトル拡散した無線通信波を中継アンテナ34に無線送信すると、この電波は中継アンテナ34から分波器33、アンテナ用端子35及び同軸ケーブル77を経由して中継装置24内の第1の混合器63に伝送される。
【0039】第1の混合器63を通過した信号は第1の方向性結合器66及び合成器72を経由して逆拡散部73に供給される。逆拡散部73はスペクトル拡散された信号を逆拡散して狭帯域信号に戻す。逆拡散部73からの狭帯域信号は増幅器74で増幅された後、第2の分配器62で3つに分配されてそれぞれレベル補正部69,70,71に供給され、このレベル補正部で既定の電力レベルに補正される。
【0040】各レベル補正部69,70,71からの信号は、それぞれ方向性結合器66,67,68、混合器63,64,65及び同軸ケーブル77,78,79を経由して各室21,22,23のアンテナ用端子35,45,55に伝送される。そして、各アンテナ用端子35,45,55から分波器33,43,53を経て中継アンテナ34,44,54に導かれ、各中継アンテナ34,44,54から狭帯域信号の電波として各無線局31,41,51にそれぞれ送信される。
【0041】各無線局31,41,51の受信部31c,41c,51cは狭帯域信号を受信する機能を有するので、無線通信波を送信した無線局31を除く、B室とC室の無線局41,51がこの電波を受信することになる。このとき、中継アンテナ34,44,54からの送信電力は電波法の既定範囲の最大値となる。
【0042】このようにして、A室21の無線局31からのスペクトル拡散された送信電波は中継装置24で狭帯域信号に変換されたのち、B室22の中継アンテナ34から無線局41に送信され、また、C室23の中継アンテナ54から無線局51に送信され、そして、受信されることになる。
【0043】以上は、A室21の無線局31から無線通信波を送信した場合について述べたが、B室22の無線局41やC室23の無線局51から無線通信波を送信する場合も同様で、B室22の無線局41からのスペクトル拡散した無線通信波は中継装置24の逆拡散部73で狭帯域信号に変換された後、A室21の中継アンテナ34から無線局31に送信されるとともにC室23の中継アンテナ54から無線局51に送信され、また、C室23の無線局51からのスペクトル拡散した無線通信波は中継装置24の逆拡散部73で狭帯域信号に変換された後、A室21の中継アンテナ34から無線局31に送信されるとともにB室22の中継アンテナ44から無線局41に送信される。
【0044】このように、各無線局31,41,51から中継アンテナ34,44,54に送信する送信電波はスペクトル拡散した無線通信波であり、これを中継装置24から中継アンテナ34,44,54を経由して受信する各無線局31,41,51の受信電波は狭帯域の電波となっている。
【0045】従って、無線通信波を受信する無線局の受信点において他の無線局から壁等を通過して直接波が到来してもこの直接波はスペクトル拡散された電波となっているので、無線局の受信部においてスペクトル拡散信号の大部分が除去され、直接波と受信波とが干渉するのを極力防止できる。従って、妨害波電力対希望波電力比が改善されて受信誤りを軽減でき、各無線局間で高品質の無線通信ができる。
【0046】また、中継装置24から中継アンテナ34,44,54への有線伝送系と、中継アンテナ34,44,54から壁などの仕切りを通過して中継装置24に至る空間伝送系で帰還ループが形成されることが考えられるが、帰還系の入出力の一方が狭帯域信号、他方がスペクトル拡散信号となっているので、実際には帰還ループが形成される虞れはなく、たとえ、伝送系の利得を大きくしてもシステムは発振状態に陥ることはない。従って、より高品質の無線通信ができる。
【0047】また、中継装置24の各レベル補正部69,70,71にて信号をレベル補正して各室の中継アンテナ34,44,54から無線局31,41,51への送信電力が電波法の既定範囲の最大値、すなわち、無線局の受信レベルを最適に調整でき、この点においても無線通信をより高品質にできる。
(第2の実施の形態)なお、前述した実施の形態と同一の部分には同一の符号を付し異なる部分についてのみ説明する。
【0048】これは、図3に示すように、各室21,22,23において、前述した実施の形態の各無線局31,41,51に代えて、端末装置31a,41a,51aとこの端末装置からの信号を狭帯域信号として送信する送信部31d,41d,51dとスペクトル拡散した信号を受信し、逆拡散して狭帯域信号に変換する逆拡散手段を備えた逆拡散受信部31e,41e,51eとからなる無線局311,411,511を配置している。また、中継装置24において、前述した実施の形態の逆拡散部73に代えて、狭帯域信号をスペクトル拡散する拡散手段としての拡散部85を配置している。
【0049】このような構成においては、例えば、A室21の無線局31の送信部31dから狭帯域の無線通信波を中継アンテナ34に無線送信すると、この電波は中継アンテナ34から分波器33、アンテナ用端子35及び同軸ケーブル77を経由して中継装置24内の第1の混合器63に伝送される。
【0050】第1の混合器63を通過した信号は第1の方向性結合器66及び合成器72を経由して拡散部85に供給される。拡散部85は狭帯域信号をスペクトル拡散して信号変換する。拡散部85からのスペクトル拡散信号は増幅器74で増幅された後、第2の分配器62で3つに分配されてそれぞれレベル補正部69,70,71に供給され、このレベル補正部で既定の電力レベルに補正される。
【0051】各レベル補正部69,70,71からの信号は、それぞれ方向性結合器66,67,68、混合器63,64,65及び同軸ケーブル77,78,79を経由して各室21,22,23のアンテナ用端子35,45,55に伝送される。そして、各アンテナ用端子35,45,55から分波器33,43,53を経て中継アンテナ34,44,54に導かれ、各中継アンテナ34,44,54からスペクトル拡散した信号の電波として各無線局31,41,51にそれぞれ送信される。
【0052】各無線局31,41,51の逆拡散受信部31e,41e,51eはスペクトル拡散信号を受信して逆拡散し狭帯域信号に変換する。このとき、中継アンテナ34,44,54からの送信電力は電波法の既定範囲の最大値となる。
【0053】このようにして、A室21の無線局31からの狭帯域の送信電波は中継装置24にてスペクトル拡散されてB室22の無線局41及びC室23の無線局51に送信されることになる。
【0054】以上は、A室21の無線局31から無線通信波を送信した場合について述べたが、B室22の無線局41やC室23の無線局51から無線通信波を送信する場合も同様で、B室22の無線局41からの狭帯域の無線通信波は中継装置24の拡散部85でスペクトル拡散された後、A室21において中継アンテナ34から無線局31に送信されるとともにC室23において中継アンテナ54から無線局51に送信され、また、C室23の無線局51からの狭帯域の無線通信波は中継装置24の拡散部85でスペクトル拡散された後、A室21において中継アンテナ34から無線局31に送信されるとともにB室22において中継アンテナ44から無線局41に送信される。
【0055】このように、各無線局31,41,51から中継アンテナ34,44,54に送信する送信電波は狭帯域の無線通信波であり、これを中継装置24から中継アンテナ34,44,54を経由して受信する各無線局31,41,51の受信電波はスペクトル拡散した電波となっている。
【0056】従って、無線通信波を受信する無線局の受信点において他の無線局から壁等を通過して直接波が到来してもこの直接波は狭帯域の電波となっているので、無線局の逆拡散受信部において直接波の狭帯域信号は広帯域に電力が分散されてしまい、これによりスペクトル拡散された受信波と直接波が干渉するのを極力防止できる。
【0057】従って、この実施の形態においても妨害波電力対希望波電力比が改善されて受信誤りを軽減でき、妨害波電力対希望波電力比が改善されて受信誤りを軽減でき、各無線局間で高品質の無線通信ができる。なお、その他についても前述した実施の形態と同様の作用効果が得られるのは勿論である。
(第3の実施の形態)なお、前述した実施の形態と同一の部分には同一の符号を付し異なる部分についてのみ説明する。
【0058】これは、図4に示すように、第1の実施の形態において、中継装置24の各レベル補正部69,70,71及び逆拡散部73を省略し、代わりに、各室21,22,23において、分波器33,43,53と中継アンテナ34,44,54との間に、第4の方向性結合器36,46,56、スペクトル拡散信号を逆拡散する逆拡散手段としての逆拡散部37,47,57、この逆拡散部37,47,57で逆拡散した信号のレベルを補正するレベル補正手段としてのレベル補正部38,48,58及び第5の方向性結合器39,49,59を挿入している。
【0059】前記各レベル補正部38,48,58は、前述した実施の形態のレベル補正部69,70,71と同一の構成でそれぞれ個別に受信レベルを調整できるようになっている。前記各方向性結合器36,46,56、39,49,59はハイブリッドコイルやフェライト素子によって構成している。
【0060】前記第4の方向性結合器36,46,56は、端子aをそれぞれ前記各分波器33,43,53の端子bに接続し、端子bを前記逆拡散部37,47,57の入力端子に接続し、端子cを前記第5の方向性結合器39,49,59の端子cに接続している。前記第4の方向性結合器36,46,56は、端子aと端子bとの間が端子aからbへの単方向ライン、端子aと端子cとの間が端子cからaへの単方向ラインになっている。
【0061】また、前記第5の方向性結合器39,49,59は、端子aをそれぞれ前記中継アンテナ34,44,54に接続し、端子bを前記各レベル補正部38,48,58の出力端子に接続している。前記第5の方向性結合器39,49,59は、端子aと端子bとの間が端子bからaへの単方向ライン、端子aと端子cとの間が端子aからcへの単方向ラインになっている。
【0062】このような構成においては、例えば、A室21の無線局31の拡散送信部31bからスペクトル拡散した無線通信波を中継アンテナ34に無線送信すると、この電波は中継アンテナ34から分波器33、アンテナ用端子35及び同軸ケーブル77を経由して中継装置24内の第1の混合器63に伝送される。
【0063】第1の混合器63を通過した信号は第1の方向性結合器66及び合成器72を経由して増幅器74に供給される。そして、増幅器74で増幅された後、第2の分配器62で3つに分配されてそれぞれ方向性結合器66,67,68、混合器63,64,65及び同軸ケーブル77,78,79を経由して各室21,22,23のアンテナ用端子35,45,55に伝送される。
【0064】各室21,22,23においては信号を各アンテナ用端子35,45,55から分波器33,43,53及び方向性結合器36,46,56を経て逆拡散部37,47,57に供給し、この逆拡散部でスペクトル拡散した信号を逆拡散して狭帯域信号に変換する。そして、この逆拡散部37,47,57からの狭帯域信号をレベル補正部38,48,58でそれぞれ中継アンテナ34,44,54からの送信電力が電波法の既定範囲の最大になるように信号レベルを個別に調整する。
【0065】レベル補正部38,48,58にてレベル補正された信号は方向性結合器39,49,59を経由して中継アンテナ34,44,54に導かれ、各中継アンテナ34,44,54から狭帯域信号の電波として各無線局31,41,51にそれぞれ送信される。各無線局31,41,51の受信部31c,41c,51cは狭帯域信号を受信する機能を有するので、無線通信波を送信した無線局31を除く、B室とC室の無線局41,51がこの電波を受信することになる。このとき、中継アンテナ34,44,54からの送信電力は電波法の既定範囲の最大値となる。
【0066】このようにして、A室21の無線局31からのスペクトル拡散された送信電波は中継装置24を経由した後、B室22及びC室23において狭帯域信号に変換されて無線局41及び無線局51に送信されることになる。
【0067】以上は、A室21の無線局31から無線通信波を送信した場合について述べたが、B室22の無線局41やC室23の無線局51から無線通信波を送信する場合も同様で、B室22の無線局41からのスペクトル拡散した無線通信波はA室21及びC室23の逆拡散部37,57で狭帯域信号に変換された後、中継アンテナ34,54を経由して無線局31,51に送信され、また、C室23の無線局51からのスペクトル拡散した無線通信波はA室21及びB室22の逆拡散部37,47で狭帯域信号に変換された後、中継アンテナ34,44を経由して無線局31,41に送信される。
【0068】このように、無線局31,41,51から中継アンテナ34,44,54に送信する送信電波はスペクトル拡散した無線通信波であり、これを中継アンテナ34,44,54を経由して無線局31,41,51が受信する電波は狭帯域の電波となっている。
【0069】従って、無線通信波を受信する無線局の受信点において他の無線局から壁等を通過して直接波が到来してもこの直接波はスペクトル拡散された電波となっているので、無線局の受信部においてスペクトル拡散信号の大部分が除去され、直接波と受信波とが干渉するのを極力防止できる。
【0070】従って、この実施の形態においても妨害波電力対希望波電力比が改善されて受信誤りを軽減でき、妨害波電力対希望波電力比が改善されて受信誤りを軽減でき、各無線局間で高品質の無線通信ができる。
【0071】また、各室21,22,23においてレベル補正部38,48,58により受信レベルを調整することで、中継アンテナ34,44,54から各無線局31,41,51に送信する無線通信波の電力を最適に調整できる。しかも、調整が室内において容易にできる。なお、その他についても前述した実施の形態と同様の作用効果が得られるのは勿論である。
(第4の実施の形態)なお、前述した実施の形態と同一の部分には同一の符号を付し異なる部分についてのみ説明する。
【0072】これは、図5に示すように、前述した第2の実施の形態において、中継装置24の各レベル補正部69,70,71及び拡散部85を省略し、代わりに、各室21,22,23において、分波器33,43,53と中継アンテナ34,44,54との間に、第4の方向性結合器36,46,56、狭帯域信号をスペクトル拡散してスペクトル拡散信号に変換する拡散手段としての拡散部40,50,60、この拡散部40,50,60でスペクトル拡散した信号のレベルを補正するレベル補正部38,48,58及び第5の方向性結合器39,49,59を挿入している。
【0073】このような構成においては、例えば、A室21の無線局31の送信部31dから狭帯域の無線通信波を中継アンテナ34に無線送信すると、この電波は中継アンテナ34から分波器33、アンテナ用端子35及び同軸ケーブル77を経由して中継装置24内の第1の混合器63に伝送される。
【0074】第1の混合器63を通過した信号は第1の方向性結合器66及び合成器72を経由して増幅器74に供給される。そして、増幅器74で増幅された後、第2の分配器62で3つに分配されてそれぞれ方向性結合器66,67,68、混合器63,64,65及び同軸ケーブル77,78,79を経由して各室21,22,23のアンテナ用端子35,45,55に伝送される。
【0075】各室21,22,23においては信号を各アンテナ用端子35,45,55から分波器33,43,53及び方向性結合器36,46,56を経て拡散部40,50,60に供給し、この拡散部で狭帯域信号をスペクトル拡散してスペクトル拡散信号に変換する。そして、この拡散部40,50,60からのスペクトル拡散信号をレベル補正部38,48,58でそれぞれ中継アンテナ34,44,54からの送信電力が電波法の既定範囲の最大になるように信号レベルを個別に調整する。
【0076】レベル補正部38,48,58にてレベル補正された信号は方向性結合器39,49,59を経由して中継アンテナ34,44,54に導かれ、各中継アンテナ34,44,54からスペクトル拡散信号の電波として各無線局31,41,51にそれぞれ送信される。各無線局31,41,51の逆拡散受信部31e,41e,51eはスペクトル拡散信号を受信して逆拡散し狭帯域信号に変換する。このとき、中継アンテナ34,44,54からの送信電力は電波法の既定範囲の最大値となる。
【0077】このようにして、A室21の無線局31からの狭帯域の送信電波は中継装置24を経由した後、B室22及びC室23においてスペクトル拡散されて中継アンテナ44、54から無線局41、51に送信されることになる。
【0078】以上は、A室21の無線局31から無線通信波を送信した場合について述べたが、B室22の無線局41やC室23の無線局51から無線通信波を送信する場合も同様で、B室22の無線局41からの狭帯域の無線通信波は中継装置24を経由した後、A室21及びC室23においてスペクトル拡散されて中継アンテナ34、54から無線局31、51に送信され、また、C室23の無線局51からの狭帯域の無線通信波は中継装置24を経由した後、A室21及びB室22においてスペクトル拡散されて中継アンテナ34、44から無線局31、41に送信される。
【0079】このように、各無線局31,41,51から中継アンテナ34,44,54に送信する送信電波は狭帯域の無線通信波であり、これを中継装置24を経由して各室の中継アンテナ34,44,54から無線局31,41,51が受信するときには電波はスペクトル拡散した電波となっている。
【0080】従って、無線通信波を受信する無線局の受信点において他の無線局から壁等を通過して直接波が到来してもこの直接波は狭帯域の電波となっているので、無線局の逆拡散受信部において直接波の狭帯域信号は広帯域に電力が分散されてしまい、これによりスペクトル拡散された受信波と直接波が干渉するのを極力防止できる。
【0081】従って、この実施の形態においても妨害波電力対希望波電力比が改善されて受信誤りを軽減でき、妨害波電力対希望波電力比が改善されて受信誤りを軽減でき、各無線局間で高品質の無線通信ができる。
【0082】また、各室21,22,23においてレベル補正部38,48,58により受信レベルを調整することで、中継アンテナ34,44,54から各無線局31,41,51に送信する無線通信波の電力を最適に調整できる。しかも、調整が室内において容易にできる。なお、その他についても前述した実施の形態と同様の作用効果が得られるのは勿論である。
(第5の実施の形態)なお、前述した実施の形態と同一の部分には同一の符号を付し異なる部分についてのみ説明する。
【0083】これは、図6に示すように、中継装置を全く省略した構成になっている。また、各室21,22,23は、アンテナ用端子35,45,55に代えて信号の分岐と合成を行う直列ユニット310,410,510を配置する他は前述した第3の実施の形態と同様である。そして、前記各直列ユニット310,410,510を信号ケーブルとしての1本の同軸ケーブル86に接続し、その同軸ケーブル86は増幅器75を介してテレビ放送受信アンテナ76に接続している。
【0084】このような構成においては、例えば、A室21の無線局31の拡散送信部31bからスペクトル拡散した無線通信波を中継アンテナ34に無線送信すると、この電波は中継アンテナ34で受信され、この中継アンテナ34から信号が方向性結合器39、36、分波器33、直列ユニット310を介して同軸ケーブル86に伝送される。そして、同軸ケーブル86から、B室22の直列ユニット410及びC室23の直列ユニット510に伝送される。
【0085】B室22及びC室23においては信号を直列ユニット410,510から分波器43,53、方向性結合器46,56を経て逆拡散部47,57に供給し、この逆拡散部でスペクトル拡散した信号を逆拡散して狭帯域信号に変換する。そして、この逆拡散部47,57からの狭帯域信号をレベル補正部48,58でそれぞれ中継アンテナ44,54からの送信電力が電波法の既定範囲の最大になるように信号レベルを個別に調整する。
【0086】レベル補正部48,58にてレベル補正された信号は方向性結合器49,59を経由して中継アンテナ44,54に導かれ、中継アンテナ44,54から狭帯域信号の電波として無線局41,51にそれぞれ送信される。無線局41,51の受信部41c,51cは狭帯域信号を受信する機能を有するので、この電波を受信することになる。このとき、中継アンテナ44,54からの送信電力は電波法の既定範囲の最大値となる。
【0087】このようにして、A室21の無線局31からのスペクトル拡散された送信信号は同軸ケーブル86を経由してB室22及びC室23に伝送され、このB室22及びC室23において狭帯域信号に変換されて無線局41,51に送信されることになる。
【0088】以上は、A室21の無線局31から無線通信波を送信した場合について述べたが、B室22の無線局41やC室23の無線局51から無線通信波を送信する場合も同様で、B室22の無線局41からのスペクトル拡散した無線通信波はA室21及びC室23の逆拡散部37,57で狭帯域信号に変換された後、中継アンテナ34,54を経由して無線局31,51に送信され、また、C室23の無線局51からのスペクトル拡散した無線通信波はA室21及びB室22の逆拡散部37,47で狭帯域信号に変換された後、中継アンテナ34,44を経由して無線局31,41に送信される。
【0089】このように、無線局31,41,51から中継アンテナ34,44,54に送信する送信電波はスペクトル拡散した無線通信波であり、これを中継アンテナ34,44,54を経由して無線局31,41,51が受信する電波は狭帯域の電波となっている。
【0090】従って、無線通信波を受信する無線局の受信点において他の無線局から壁等を通過して直接波が到来してもこの直接波はスペクトル拡散された電波となっているので、無線局の受信部においてスペクトル拡散信号の大部分が除去され、直接波と受信波とが干渉するのを極力防止できる。
【0091】従って、この実施の形態においても妨害波電力対希望波電力比が改善されて受信誤りを軽減でき、妨害波電力対希望波電力比が改善されて受信誤りを軽減でき、各無線局間で高品質の無線通信ができる。また、中継装置を不要にできる。
【0092】また、各室21,22,23においてレベル補正部38,48,58により受信レベルを調整することで、中継アンテナ34,44,54から各無線局31,41,51に送信する無線通信波の電力を最適に調整できる。しかも、調整が室内において容易にできる。なお、その他についても前述した実施の形態と同様の作用効果が得られるのは勿論である。
(第6の実施の形態)なお、前述した実施の形態と同一の部分には同一の符号を付し異なる部分についてのみ説明する。
【0093】これは、図7に示すように、中継装置を全く省略した構成になっている。また、各室21,22,23は、アンテナ用端子35,45,55に代えて信号の分岐と合成を行う直列ユニット310,410,510を配置する他は前述した第4の実施の形態と同様である。そして、前記各直列ユニット310,410,510を信号ケーブルとしての1本の同軸ケーブル86に接続し、その同軸ケーブル86は増幅器75を介してテレビ放送受信アンテナ76に接続している。
【0094】このような構成においては、例えば、A室21の無線局31の送信部31dから狭帯域の無線通信波を中継アンテナ34に無線送信すると、この電波は中継アンテナ34で受信され、この中継アンテナ34から信号が方向性結合器39、36、分波器33、直列ユニット310を介して同軸ケーブル86に伝送される。そして、同軸ケーブル86から、B室22の直列ユニット410及びC室23の直列ユニット510に伝送される。
【0095】B室22及びC室23においては信号を直列ユニット410,510から分波器43,53、方向性結合器46,56を経て拡散部50,60に供給し、この拡散部で狭帯域信号をスペクトル拡散してスペクトル拡散信号に変換する。そして、この拡散部50,60からのスペクトル拡散信号をレベル補正部48,58でそれぞれ中継アンテナ44,54からの送信電力が電波法の既定範囲の最大になるように信号レベルを個別に調整する。
【0096】レベル補正部48,58にてレベル補正された信号は方向性結合器49,59を経由して中継アンテナ44,54に導かれ、中継アンテナ44,54からスペクトル拡散信号の電波として無線局41,51にそれぞれ送信される。無線局41,51の逆拡散受信部41e,51eはスペクトル拡散信号を受信して逆拡散し狭帯域信号に変換する。このとき、中継アンテナ44,54からの送信電力は電波法の既定範囲の最大値となる。
【0097】このようにして、A室21の無線局31からの狭帯域信号の送信電波は同軸ケーブル86を経由してB室22及びC室23に伝送され、このB室22及びC室23においてスペクトル拡散信号に変換されて無線局41,51に送信されることになる。
【0098】以上は、A室21の無線局31から無線通信波を送信した場合について述べたが、B室22の無線局41やC室23の無線局51から無線通信波を送信する場合も同様で、B室22の無線局41からの狭帯域の無線通信波はA室21及びC室23の拡散部40,60でスペクトル拡散信号に変換された後、中継アンテナ34,54を経由して無線局31,51に送信され、また、C室23の無線局51からの狭帯域の無線通信波はA室21及びB室22の拡散部40,50でスペクトル拡散信号に変換された後、中継アンテナ34,44を経由して無線局31,41に送信される。
【0099】このように、無線局31,41,51から中継アンテナ34,44,54に送信する送信電波は狭帯域の無線通信波であり、これを中継アンテナ34,44,54を経由して無線局31,41,51が受信する電波はスペクトル拡散した電波となっている。
【0100】従って、無線通信波を受信する無線局の受信点において他の無線局から壁等を通過して直接波が到来してもこの直接波は狭帯域の電波となっているので、無線局の逆拡散受信部において直接波の狭帯域信号は広帯域に電力が分散されてしまい、これによりスペクトル拡散された受信波と直接波が干渉するのを極力防止できる。
【0101】従って、この実施の形態においても妨害波電力対希望波電力比が改善されて受信誤りを軽減でき、妨害波電力対希望波電力比が改善されて受信誤りを軽減でき、各無線局間で高品質の無線通信ができる。
【0102】また、各室21,22,23においてレベル補正部38,48,58により受信レベルを調整することで、中継アンテナ34,44,54から各無線局31,41,51に送信する無線通信波の電力を最適に調整できる。しかも、調整が室内において容易にできる。なお、その他についても前述した実施の形態と同様の作用効果が得られるのは勿論である。
【0103】なお、前述した各実施の形態は、この発明を壁によって仕切られた各室を空間とした建物内に適用したものについて述べたが必ずしもこれに限定するものではなく、建物以外であっても壁などで仕切られた空間が複数存在するような場所であれば適用できるものである。
【0104】
【発明の効果】各請求項記載の発明によれば、壁等により仕切られた各空間にそれぞれ無線局を配置し、この各無線局間で無線通信を行う場合に、中継アンテナ及び信号ケーブルを経由した無線通信波を受信する無線局の受信点において、この無線通信波とこの無線通信波を送信した無線局からの直接波が干渉するのを極力防止し、各無線局間で高品質の無線通信ができる。
【0105】また、請求項3、5、7、9及び11記載の発明によれば、さらに、各無線局における無線通信波の受信レベルを最適に調整でき、しかも各空間の間で電波の帰還経路が形成される虞れがなく、より高品質の無線通信ができる。また、請求項9及び11記載の発明によれば、さらに、各無線局における無線通信波の受信レベルを各空間内において容易に調整できる。
【0106】また、請求項12記載の発明によれば、さらに、無線通信波を送信する無線局と中継アンテナとの間の電力損失を自動的に補償して中継アンテナからの送信電力を既定範囲に制御できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示すブロック図。
【図2】同実施の形態におけるレベル補正部の構成を示すブロック図。
【図3】本発明の第2の実施の形態を示すブロック図。
【図4】本発明の第3の実施の形態を示すブロック図。
【図5】本発明の第4の実施の形態を示すブロック図。
【図6】本発明の第5の実施の形態を示すブロック図。
【図7】本発明の第6の実施の形態を示すブロック図。
【図8】従来例を示すブロック図。
【図9】従来例を示す要部ブロック図。
【符号の説明】
21,22,23…室
24…中継装置
31,41,51…無線局
31b,41b,51b…拡散送信部
34,44,54…中継アンテナ
62…第2の分配器
72…合成器
73…逆拡散部
77,78,79…同軸ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】 壁等により仕切られた各空間にそれぞれ無線局を配置し、中継装置から前記各空間に個別に配線した信号ケーブル及びこの信号ケーブルに接続し前記各空間に配置した中継アンテナを介して前記各無線局が相互に無線通信を行う構成とし、前記各無線局は、送信部に送信信号をスペクトル拡散する拡散手段を備え、前記中継装置は、前記各無線局からそれぞれ前記信号ケーブルを介して伝送される無線通信波を合成する合成手段と、この合成手段からの出力信号をスペクトル逆拡散する逆拡散手段と、この逆拡散手段にて逆拡散した信号を前記各空間に対応して分配する分配手段を設け、任意の無線局からのスペクトル拡散した無線通信波を前記中継装置でスペクトル逆拡散して他の無線局に分配送信することを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】 壁等により仕切られた各空間にそれぞれ無線局を配置し、中継装置から前記各空間に個別に配線した信号ケーブル及びこの信号ケーブルに接続し前記各空間に配置した中継アンテナを介して前記各無線局が相互に無線通信を行う構成とし、前記各無線局は、受信部に受信信号をスペクトル逆拡散する逆拡散手段を備え、前記中継装置は、前記各無線局からそれぞれ前記信号ケーブルを介して伝送される無線通信波を合成する合成手段と、この合成手段からの出力信号をスペクトル拡散する拡散手段と、この拡散手段にて拡散した信号を前記各空間に対応して分配する分配手段を設け、任意の無線局からの無線通信波を前記中継装置でスペクトル拡散して他の無線局に分配送信することを特徴とする無線通信システム。
【請求項3】 中継装置は、さらに、分配手段が分配した信号をそれぞれレベル補正するレベル補正手段を設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の無線通信システム。
【請求項4】 壁等により仕切られた各空間にそれぞれ無線局を配置し、中継装置から前記各空間に個別に配線した信号ケーブル及びこの信号ケーブルに接続し前記各空間に配置した中継アンテナを介して前記各無線局が相互に無線通信を行う構成とし、前記各無線局は、送信部に送信信号をスペクトル拡散する拡散手段を備え、前記中継装置は、前記各無線局からそれぞれ前記信号ケーブルを介して伝送される無線通信波を合成する合成手段と、この合成手段からの出力信号を前記各空間に対応して分配する分配手段を設け、前記各空間は、前記中継装置からそれぞれ前記信号ケーブルを介して伝送される信号をスペクトル逆拡散する逆拡散手段を配置し、任意の無線局からのスペクトル拡散した無線通信波を前記中継装置を経由して前記各空間に分配送信した後、前記各空間でスペクトル逆拡散し前記中継アンテナを介して他の無線局に無線送信することを特徴とする無線通信システム。
【請求項5】 各空間は、さらに、逆拡散手段がスペクトル逆拡散した信号をレベル補正するレベル補正手段を設けたことを特徴とする請求項4記載の無線通信システム。
【請求項6】 壁等により仕切られた各空間にそれぞれ無線局を配置し、中継装置から前記各空間に個別に配線した信号ケーブル及びこの信号ケーブルに接続し前記各空間に配置した中継アンテナを介して前記各無線局が相互に無線通信を行う構成とし、前記各無線局は、受信部に受信信号をスペクトル逆拡散する逆拡散手段を備え、前記中継装置は、前記各無線局からそれぞれ前記信号ケーブルを介して伝送される無線通信波を合成する合成手段と、この合成手段からの出力信号を前記各空間に対応して分配する分配手段を設け、前記各空間は、前記中継装置からそれぞれ前記信号ケーブルを介して伝送される信号をスペクトル拡散する拡散手段を配置し、任意の無線局からの無線通信波を前記中継装置を経由して前記各空間に分配送信した後、前記各空間でスペクトル拡散し前記中継アンテナを介して他の無線局に無線送信することを特徴とする無線通信システム。
【請求項7】 各空間は、さらに、拡散手段がスペクトル拡散した信号をレベル補正するレベル補正手段を設けたことを特徴とする請求項6記載の無線通信システム。
【請求項8】 壁等により仕切られた各空間にそれぞれ無線局を配置し、前記各空間に共通に配線した共通信号ケーブル及びこの信号ケーブルに接続し前記各空間に配置した中継アンテナを介して前記各無線局が相互に無線通信を行う構成とし、前記各無線局は、送信部に送信信号をスペクトル拡散する拡散手段を備え、前記各空間は、前記信号ケーブルを介して伝送される信号をスペクトル逆拡散する逆拡散手段を配置し、任意の無線局からのスペクトル拡散した無線通信波を前記共通信号ケーブルを経由した後、前記各空間でスペクトル逆拡散し前記中継アンテナを介して他の無線局に無線送信することを特徴とする無線通信システム。
【請求項9】 各空間は、さらに、逆拡散手段がスペクトル逆拡散した信号をレベル補正するレベル補正手段を設けたことを特徴とする請求項8記載の無線通信システム。
【請求項10】 壁等により仕切られた各空間にそれぞれ無線局を配置し、前記各空間に共通に配線した共通信号ケーブル及びこの信号ケーブルに接続し前記各空間に配置した中継アンテナを介して前記各無線局が相互に無線通信を行う構成とし、前記各無線局は、受信部に受信信号をスペクトル逆拡散する逆拡散手段を備え、前記各空間は、前記信号ケーブルを介して伝送される信号をスペクトル拡散する拡散手段を配置し、任意の無線局からの無線通信波を前記共通ケーブルを経由した後、前記各空間でスペクトル拡散し前記中継アンテナを介して他の無線局に無線送信することを特徴とする無線通信システム。
【請求項11】 各空間は、さらに、拡散手段がスペクトル拡散した信号をレベル補正するレベル補正手段を設けたことを特徴とする請求項10記載の無線通信システム。
【請求項12】 レベル補正手段は、各空間において中継アンテナから無線局に送信する無線電波の送信電力が既定範囲になるように自動的に補正量を制御する手段を備えたことを特徴とする請求項3、5、7、9、11のいずれか1記載の無線通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図8】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図9】
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【図7】
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【公開番号】特開2000−165401(P2000−165401A)
【公開日】平成12年6月16日(2000.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−339186
【出願日】平成10年11月30日(1998.11.30)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】