説明

無線通信システム

【課題】無線端末のVC−TCXO(電圧制御温度補償水晶発振器)の経年変化による基準発振周波数のずれを補正する。
【解決手段】PLL260aにおいて長波標準電波受信部120で受信した長波標準電波信号の周波数(40kHzまたは60kHz)と同じ周波数にリファレンスカウンタ261aを設定し、またフラクショナルNデバイダー264についてもリファレンスカウンタ261aの周波数(リファレンス周波数)にVCO(電圧制御発振器)280が出力する局部発振周波数を分周する。長波標準電波信号とリファレンス周波数との位相差を検出し、位相差を補正する周波数制御電圧を制御し、VC−TCXO250の基準発振周波数のずれを補正する。また、無線端末100が長波標準電波信号を受信していないときには、記憶部113に記憶されている周波数制御電圧により、VC−TCXO250の基準発振周波数のずれを補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システムにおける周波数補正に係り、特に長波標準電波に追従して自局周波数の補正を行う無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話や業務用などの各種の無線通信システムにおいては、無線通信システム毎に周波数と周波数との最大誤差(以下、周波数安定度という)が規定されている。このため、携帯電話や業務用などの一般的な無線通信システムでは、基地局に高精度の基準発振器を設け、無線端末が基地局から送信される基準となる周波数(以下、基準発振周波数という)を受信し、基地局の基準発振周波数に追従する自動周波数制御(以下、AFCという)行い、自局の基準発振周波数を補正している。
【0003】
基地局と通信する無線端末で行っている従来の周波数補正について説明する。従来の実施形態に係る無線端末の機能構成を図4に示す。従来の実施形態の無線端末200は、受信増幅部210、MIX(Mixer:周波数混合回路)220、DSP(Digital Signal Processor:デジタル信号処理部)230、LPF(Low Pass Filter:低域通過濾波器)240、VC−TCXO(Voltage Controlled−Temperature Compensated Crystal Oscillator:電圧制御温度補償水晶発振器)250、PLL(Phase locked loop:可変周波数発振器)260、LPF(Loop Filter:ループフィルタ)270、及びVCO(Voltage Controlled Oscillator:電圧制御発振器)280から構成されている。受信増幅部210には、AMP(Amplifier:アンプ)211を備えている。DSP230は、位相誤差検出器231、記憶部232、D/A変換器233、及び信号処理部234から構成されている。PLL260は、リファレンスカウンター(分周器)261、PD(Phase Detector:位相検出器)262、CP(Charge Pump:チャージポンプ)263、及びフラクショナルNデバイダー264から構成されている。
【0004】
次に、無線端末200を構成する部位の機能について説明する。受信増幅部210は、無線端末200が送信または待受けでないときに基地局から送信される基準発振周波数などの電波を受信すると、受信した基準発振周波数などの電波をIF帯周波数に変換し、IF帯周波数をAMP211で増幅を行う部位である。MIX220は、受信増幅部210から出力される増幅されたIF帯周波数と、VCOから出力される周波数(以下、局部発振周波数という)を入力し、受信IF信号と局部発振周波数の混合信号(以下、受信IF信号という)を生成する部位である。DSP230は、MIX220から出力される受信IF信号の処理を行う部位である。位相誤差検出器231は、MIX220から出力される受信IF信号から位相誤差を検出し、その位相誤差に応じたVC−TCXO250の周波数制御電圧のデジタル信号を出力する部位である。記憶部232は、RAMやROMからなる主記憶の部位で、位相誤差検出器231から出力されるVC−TCXO250の周波数制御電圧のデジタル信号を記憶する。記憶部232に記憶されている周波数制御電圧のデジタル信号は、無線端末200が送信または待受けのときに、DSP230からの指令によりD/A変換器233に出力される。D/A変換器233は、位相誤差検出器231から出力される周波数制御電圧のデジタル信号、または記憶部232に記憶されている周波数制御電圧のデジタル信号をアナログ信号に変換する部位である。信号処理部234は、MIX220から出力される受信IF信号について信号処理を行い、DATA/CLK/LEの信号をPLL260に出力する部位である。LPF240は、D/A変換器233から出力される周波数制御電圧のアナログ信号について、低域通過濾波を行う部位である。VC−TCXO250は、一定の周波数を保つために温度変化に対する補償を行い、LPF240から出力される周波数制御電圧のアナログ信号により基準発振周波数を制御する水晶発振器である。
【0005】
リファレンスカウンタ261は、無線通信システムのチャンネル間隔やロックアップ時間を考慮して、VC−TCXO250の発振周波数に基づいてPD262が使用するリファレンス周波数を設定する部位である。フラクショナルNデバイダー264は、VCO280が出力する局部発振周波数がリファレンス周波数と同じになるように局部発振周波数を分周する部位である。PD262は、リファレンスカウンタ261のリファレンス周波数と、フラクショナルNデバイダー264で分周された局部発振周波数との位相差を検出し、位相差に応じたVCO280の周波数制御電圧を出力する部位である。CP263は、PD262が出力する電圧を昇圧させる部位である。LPF270は、CP263が出力する電圧を低域濾波し、VCO280に帰還させる部位である。VCO280は、PD262が出力する電圧に応じて、正確な局部発振周波数を生成する部位である。
【0006】
無線端末200は、図4に示すような構成を備えることで、例えば、VC−TCXO250が出力する基準発振周波数が19.2MHzであるときは、リファレンスカウンタ261に1/1920が設定されると、リファレンス周波数は10kHz(=19.2MHz×1/1920)の基準発振周波数(fs)となる。また、VCO280が出力する局部発振周波数は、フラクショナルNデバイダー264で分周されて、PD262にフィードバックされ、VCO280の局部発振周波数(fo)はリファレンス周波数と同じ10kHzとなる。このようにして、VC−TCXO250を基に得られた正確な10kHzの信号と、VCO280から出力される10kHzの信号とが、PD262で精密に比較される。そして比較された結果、誤差があればそれをなくすようにPD262から周波数制御電圧のアナログ信号がCP263とLPF270を通してVCO280に出力される。VCO280は、LPF270から出力される周波数制御電圧のアナログ信号に応答し、正確な局部発振周波数を生成する。
【0007】
このような無線端末200で構成された無線通信システムにおいては、基地局で高精度な基準発振器を備え、基地局から精度のよい基準発振周波数を受信することで、無線端末200はVC−TCXO250の経年変化による基準発振周波数のずれを補正することができる。このように従来の無線端末200では高精度の基準発振器を備える必要がない。しかし、基地局には高精度の基準発振器を備える必要があり、また、基地局を介さない通話(端末同士の通話)では、適用できなかった。
【0008】
無線端末が自局の基準発振周波数の補正を行う技術として下記の特許文献1と特許文献2がある。特許文献1は、VCTCXO(電圧制御温度補償水晶発振器)の非同期時の制御値を、温度レベル毎に基地局送信波を基準として補正値を求めることで、VCTCXO(電圧制御温度補償水晶発振器)の経年変化による原振のずれを自動で補正する周波数追従方法を提供している。特許文献2は、基地局から信号を受信できない場合に、時刻情報パルスである標準電波を受信し、この標準電波と水晶振動子から基準クロックを生成し、この基準クロックに基づいてVCTCXO(電圧制御温度補償水晶発振器)の経年劣化による周波数のずれを補正する周波数制御装置を提供している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−305442
【特許文献2】特開2008−199523
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の実施形態の無線通信システムの周波数補正では、無線端末200が基地局から基準発振周波数の電波を受信して基地局の基準発振周波数に追従するので、基地局に高精度の基準発振器が必要となる。また、特許文献1の周波数追従方法では、移動局が基地局からの送信波に同期して受信を行っているので、基地局には高精度の基準発振器が必要となる。特許文献2の周波数制御装置では、基地局を介さない時刻情報パルスである標準電波による周波数制御を行うので、基地局に高精度の基準発振器は必要ないが、受信した標準電波と水晶振動子から基準クロックを生成するので、無線端末に高精度の水晶振動子を搭載する必要がある。しかし、高精度の基準発振器は高価であり、また、標準電波の復調処理が必要となるため、無線端末を安価で提供できないという問題があった。
【0011】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、上記課題を解決できる無線通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の無線通信システムは、無線端末の基準発振周波数の補正を行う無線通信システムであって、長波標準電波信号を受信する長波標準電波信号受信手段と、可変周波数発振器のリファレンス周波数を長波標準電波信号の周波数に設定するリファレンス周波数設定手段と、前記長波標準電波信号の周波数と前記リファレンス周波数との位相差を検出する位相検出手段と、前記位相差に基づいて電圧制御温度補償水晶発振器の周波数制御電圧を制御することで前記基準発振周波数を補正することを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、基地局が高精度の基準発振器を備えることなく、自局内で基準発振周波数の補正を容易に行うことができる無線通信システム、無線通信システムを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る長波標準電波の被変調波形を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る無線端末の機能構成を示す機能ブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に係る長波標準電波追従周波数補正手順を示すフローチャートである。
【図4】従来の実施形態に係る無線端末の機能構成を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態に係る、長波標準電波追従周波数補正について説明する。
【0016】
まず、本発明の実施形態で利用する長波標準電波信号について説明する。長波標準電波信号は、時間と周波数の標準を知らせするために送信される電波であり、時刻に関する情報としてタイムコードを送信している。長波標準電波信号は、1Hzのタイムコードを40kHzもしくは60kHzの搬送波に10:1でAM変調をかけたもので、1秒を1ビット、60ビット(1分)を1フレームとするシリアルのデジタル信号である。タイムコードは分、時、曜日、通算日(1年)、西暦年、うるう秒情報等をBCDで表現している。このタイムコードは、図1に示すように3種類のデューティ比からなり、20%デューティはマーカー(M)及びポジションマーカ(P0〜P5)、50%デューティは2進数の1、80%デューティは2進数の0を表している。マーカー(M)は、正分(毎分0秒)の立ち上がりに対応し、ポジションマーカーP0は、通常(非うるう秒時)は59秒の立ち上がりに対応する。また、ポジションマーカーP1〜P5は、それぞれ、9秒、19秒、29秒、39秒、49秒の立ち上がりに対応する。長波標準電波信号は、大鷹鳥谷山(おおたかどややま)標準電波送信所から40kHz、羽金山(はがねやま)標準電波送信所から60kHzの長波で送信されている。
【0017】
次に、本発明の実施形態に係る無線端末の機能構成について、図2の無線端末100の機能ブロック図を用いて説明する。本発明の無線端末100は、従来の無線端末200と同じ機能については、同じ符号を付している。本発明の実施形態の無線端末100は、受信増幅部210、MIX(Mixer:周波数混合回路)220、DSP(Digital Signal Processor:中央制御装置)110、VC−TCXO(Voltage Controlled−Temperature Compensated Crystal Oscillator:電圧制御温度補償水晶発振器)250、PLL(Phase locked loop:可変周波数発振器)260a、LPF(Loop Filter:ループフィルタ)270、VCO(Voltage Controlled Oscillator:電圧制御発振器)280、長波標準電波受信部120、RF−AMP(Next Stage RF Amplifier:次段高周波アンプ)130、BPF(Band-pass filter:バンドパスフィルタ)140、LIM−AMP(Limiter Amplifier:リミッタアンプ)150、PD(Phase Detector:位相検出器)160、検波器170、及びLPF(Low Pass Filter:低域通過濾波器)180から構成されている。受信増幅部210には、AMP(Amplifier:アンプ)211を備えている。DSP110は、信号処理部111、制御部112、記憶部113、A/D変換器114、及びD/A変換器115から構成されている。PLL260aは、リファレンスカウンター(分周器)261a、PD(Phase Detector:位相検出器)262a、Ftest/LD端子262b、CP(Charge Pump:チャージポンプ)263、及びフラクショナルNデバイダー264から構成されている。長波標準電波受信部120は、長波標準電波受信アンテナ121、及びANT共振器122から構成されている。
【0018】
次に、無線端末100を構成する部位の機能について説明する。図2に示す本発明の実施形態における無線端末100において、図4に示す従来の実施形態における無線端末200と同じ符号を付している部位の機能は同じであるので、本発明の実施形態における無線端末100に追加または変更された部位の機能について説明する。リファレンスカウンタ261aは、無線端末100が長波標準電波追従周波数補正を行うときには、40kHzまたは60kHzの長波標準電波信号のうち、ANT共振器122によって切り替えられている周波数が設定される部位である。また、リファレンスカウンタ261aが40kHzまたは60kHzの長波標準電波信号に切り替えられることにより、フラクショナルNデバイダー264はVCO280が出力する局部発振周波数がリファレンス周波数と同じになるように局部発振周波数を分周する。PD262aは、リファレンスカウンタ261aのリファレンス周波数と、フラクショナルNデバイダー264で分周された局部発振周波数との位相差を検出し、位相差に応じたVCO280の周波数制御電圧を出力する部位である。また、PD262aには、PLLの状態モニタ出力であるFtest/LD端子262bを備え、制御部112より、ロック検出、リファレンス周波数の出力、フラクショナルNデバイダー出力等の出力切り替えを行う。通常、Ftest/LD端子262bは、ロック検出に設定されているが、長波標準電波信号の受信時には、リファレンス周波数の出力モニタに切り替えられる。
【0019】
DSP110は、MIX220から出力される受信IF信号の処理を行う部位である。また、DSP110は、長波標準電波信号が受信できないときに、LPF180を経由してVC−TCXO250を制御する電圧を出力する装置である。制御部112は、DSP110全体を制御する部位である。記憶部113は、RAMやROMからなる主記憶の部位である。A/D変換器114は、制御部112からの指令によりLPF180を経由してPD160から出力されるVCO280の周波数制御電圧のアナログ信号を、デジタル信号に変換し、記憶部113に記憶する部位である。D/A変換器115は、制御部112からの指令により無線端末100が長波標準電波信号を受信できないときに、記憶部113に記憶されている周波数制御電圧のデジタル信号をアナログ信号に変換し、LPF180を経由してVC−TCXO250に出力する部位である。
【0020】
長波標準電波受信部120は、長波標準電波受信アンテナ121によって受信された40kHzまたは60kHzの長波標準電波信号のうち、ANT共振器122によって切り替えられている周波数の長波標準電波信号を受信する部位である。ANT共振器122をどちらの長波標準電波信号に切り替えるかは、DSP110の制御部112からの指令に基づいて行われる。RF−AMP130は、長波標準電波受信部120から出力される長波標準電波信号を増幅させる部位である。BPF140は、RF−AMP130から出力される長波標準電波信号について、必要な範囲の周波数のみを通す濾波を行う部位である。LIM−AMP150は、BPF140から出力される長波標準電波信号を包絡線成分のない40kHzまたは60kHzの単信キャリアに成形して、長波標準電波信号の搬送波を取り出す部位である。PD160は、LIM−AMP150から出力される長波標準電波信号の搬送波の周波数と、Ftest/LD端子262bがリファレンス周波数出力のときにPD262aから出力されるリファレンス周波数との位相を比較し、位相差に応じたVC−TCXO250の周波数制御電圧を出力する部位である。検波器170は、LIM−AMP150から出力される長波標準電波信号の搬送波の受信レベルを検出し、長波標準電波信号を受信しているかを判定するために、受信レベルが予め決められている閾値以上かを判定し、その判定結果をDSP110の制御部112に出力する部位である。LPF180は、DSP110のD/A変換器115から出力される電圧のアナログ信号、またはPD160から出力される電圧のアナログ信号について低域通過濾波を行いVC−TCXO250に出力する部位である。
【0021】
次に、無線端末100おける長波標準電波追従周波数補正手順について説明する。以下、図3に示す長波標準電波追従周波数補正手順のステップ順に説明する。
【0022】
(ステップS101)
長波標準電波受信部120において、長波標準電波受信アンテナ121によって受信された40kHzまたは60kHzの長波標準電波信号のうち、ANT共振器122によって切り替えられている周波数の長波標準電波信号を受信し、RF−AMP130に出力する。
【0023】
(ステップS102)
次に、RF−AMP130において、長波標準電波受信部120から出力される長波標準電波信号を増幅し、BPF140に出力する。
【0024】
(ステップS103)
次に、BPF140において、RF−AMP130から出力される長波標準電波信号に対して必要な範囲の周波数のみを通す濾波を行い、LIM−AMP150に出力する。
【0025】
(ステップS104)
次に、LIM−AMP150において、BPF140から出力される長波標準電波信号を包絡線成分のない40kHzまたは60kHzの単信キャリアに成形してから搬送波を取り出し、PD160と検波器170に出力する。
【0026】
(ステップS105)
次に、検波器170において、LIM−AMP150から出力される長波標準電波信号の搬送波の受信レベルを検出し、制御部112に出力する。
【0027】
(ステップS106)
次に、制御部112は、受信レベルが予め決められている閾値以上かの判定を行う。
【0028】
(ステップS107)
次に、受信レベルの判定結果により受信レベルが予め決められている閾値以上でないときは長波標準電波信号を受信していないので、別の長波標準電波周波数に切り替え、ステップS101を再度、実行する。そして、両周波数40kHz/60kHzとも受信していない場合、制御部112は、記憶部113に記憶されているVC−TCXO250の周波数制御電圧のデジタル信号を取り出し、D/A変換器115にてアナログ信号に変換し、LPF180に出力する。
【0029】
(ステップS108)
次に、受信レベルの判定結果により受信レベルが予め決められている閾値以上であるときは長波標準電波信号を受信しているので、制御部112は、Ftest/LD端子262bをリファレンス周波数出力に切り替え、PD160にリファレンス周波数を出力する。
【0030】
(ステップS109)
次に、PD160は、LIM−AMP150から出力される長波標準電波信号の搬送波の周波数と、PD262aから出力されるリファレンス周波数との位相を比較し、位相差に応じたVC−TCXO250の周波数制御電圧をLPF180に出力する。但し、長波標準電波信号を受信していないときには、制御部112はFtest/LD端子262bをロック検出出力とするのでリファレンス周波数は出力されない。また、PD160はVC−TCXO250の周波数制御電圧をLPF180に出力しないように制御する。
【0031】
(ステップS110)
次に、LPF180は、PD160またはDSP110のD/A変換器115から出力される周波数制御電圧のアナログ信号について低域通過濾波を行いVC−TCXO250に出力する。更に、LPF180が、PD160から出力される周波数制御電圧のアナログ信号をDSP110に出力すると、制御部112からの指令によりA/D変換器114は、周波数制御電圧のアナログ信号をデジタル信号に変換し、記憶部113に記憶する。
【0032】
(ステップS111)
次に、VC−TCXO250は、LPF180から出力される周波数制御電圧のアナログ信号に基づいて基準発振周波数の制御を行い、基準発振周波数をPLL260aに出力する。
【0033】
(ステップS112)
次に、PLL260aのPD262aは、リファレンスカウンタ261aのリファレンス周波数と、フラクショナルNデバイダー264で分周された局部発振周波数との位相差を検出する。そして、PD262aは、この位相差を補正する周波数制御電圧のアナログ信号を求め、CP263に出力する。CP263は、この周波数制御電圧のアナログ信号を昇圧し、LPF270に出力する。
【0034】
(ステップS113)
次に、LPF270は、PLL260aのCP263が出力する周波数制御電圧のアナログ信号を低域濾波し、VCO280に帰還させる。
【0035】
(ステップS114)
次に、VCO280は、LPF270を経由してPD262aが出力する周波数制御電圧のアナログ信号に基づいて局部発振周波数の制御を行い、局部発振周波数をMIX220とフラクショナルNデバイダー264に出力する。
【0036】
(ステップS115)
次に、MIX220は、受信増幅部210から出力されるRF帯周波数と、VCO280から出力される局部発振周波数から受信IF信号を生成し、DSP110の信号処理部111に出力する。
【0037】
以上のような実施形態によれば、無線端末100が長波標準電波信号を受信しているときには、PLL260aにおいてリファレンスカウンタ261aを長波標準電波信号と同じ周波数に設定し、またフラクショナルNデバイダー264についてもVCO280の局部発振周波数をリファレンスカウンタ261aと同じ周波数に分周することで、VC−TCXO250が出力する基準発振周波数を長波標準電波信号で補正することができる。また、無線端末100が長波標準電波信号を受信していないまたは送信や待受けのときには、DSP110の記憶部113に記憶されているVC−TCXO250の周波数制御電圧のデジタル信号を取り出し、D/A変換器115にてアナログ信号に変換し、LPF180を経由してVC−TCXO250に出力することができる。このような無線通信システムでは、端末が高精度の基準発振器を備えることなく、安価な汎用ロジックとDSPだけでVC−TCXO250の経年変化による基準発振周波数のずれを補正する無線通信システムを提供できる。
【0038】
具体的な実施の形態により本発明を説明したが、上記実施の形態は本発明の例示であり、この実施の形態に限定されないことは言うまでもない。
【0039】
以上をまとめると、本発明は次のような特徴を有する。
(1) 本発明の無線通信システムは、無線端末の基準発振周波数の補正を行う無線通信システムであって、長波標準電波信号を受信する長波標準電波信号受信手段と、可変周波数発振器のリファレンス周波数を長波標準電波信号の周波数に設定するリファレンス周波数設定手段と、前記長波標準電波信号の周波数と前記リファレンス周波数との位相差を検出する位相検出手段と、前記位相差に基づいて電圧制御温度補償水晶発振器の周波数制御電圧を制御することで前記基準発振周波数を補正することを特徴としている。
(2) 本発明の無線通信システムは、無線端末の基準発振周波数の補正を行う無線通信システムであって、長波標準電波信号を受信する長波標準電波信号受信手段と、可変周波数発振器のリファレンス周波数を長波標準電波信号の周波数に設定するリファレンス周波数設定手段と、前記長波標準電波信号の周波数と前記リファレンス周波数との位相差を検出する位相検出手段と、前記長波標準電波信号を受信しているかを判定する長波標準電波信号受信判定手段とを備え、前記長波標準電波信号受信判定手段により前記長波標準電波信号を受信していると判定したときに、前記長波標準電波信号受信手段が受信している前記長波標準電波信号の周波数と前記リファレンス周波数との位相差に基づいて電圧制御温度補償水晶発振器の周波数制御電圧を制御することで前記基準発振周波数を補正することを特徴としている。
(3) (2)の本発明の無線通信システムは、前記周波数制御電圧を記憶する周波数制御電圧記憶手段を備え、前記長波標準電波信号受信判定手段により前記長波標準電波信号を受信していると判定したときに、前記周波数制御電圧記憶手段により前記周波数制御電圧を記憶することを特徴としている。
(4) (2)または(3)の本発明の無線通信システムは、前記長波標準電波信号受信判定手段により前記長波標準電波信号を受信していないと判定したときに、前記周波数制御電圧記憶手段から取り出した前記周波数制御電圧で前記電圧制御温度補償水晶発振器を制御することで前記基準発振周波数を補正することを特徴としている。
(5) 本発明の無線通信システムの長波標準電波追従周波数補正方法は、無線端末の基準発振周波数の補正を行う無線通信システムの長波標準電波追従周波数補正方法であって、長波標準電波信号を受信する長波標準電波信号受信工程と、可変周波数発振器のリファレンス周波数を長波標準電波信号の周波数に設定するリファレンス周波数設定工程と、前記長波標準電波信号の周波数と前記リファレンス周波数との位相差を検出する位相検出工程と、前記位相差に基づいて電圧制御温度補償水晶発振器の周波数制御電圧を制御することで前記基準発振周波数を補正することを特徴としている。
(6) 本発明の無線通信システムの長波標準電波追従周波数補正方法は、無線端末の基準発振周波数の補正を行う無線通信システムの長波標準電波追従周波数補正方法であって、長波標準電波信号を受信する長波標準電波信号受信工程と、可変周波数発振器のリファレンス周波数を長波標準電波信号の周波数に設定するリファレンス周波数設定工程と、前記長波標準電波信号の周波数と前記リファレンス周波数との位相差を検出する位相検出工程と、前記長波標準電波信号を受信しているかを判定する長波標準電波信号受信判定工程とを備え、前記長波標準電波信号受信判定工程により前記長波標準電波信号を受信していると判定したときに、前記長波標準電波信号受信工程が受信している前記長波標準電波信号の周波数と前記リファレンス周波数との位相差に基づいて電圧制御温度補償水晶発振器の周波数制御電圧を制御することで前記基準発振周波数を補正することを特徴としている。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、無線通信システムに好適であるが、無線通信システムに限られるものではなく、基準発振周波数の補正を行うシステム一般に適用可能である。
【符号の説明】
【0041】
100・・・・・・・・無線端末
110・・・・・・・・DSP
111・・・・・・・・信号処理部
112・・・・・・・・制御部
113・・・・・・・・記憶部
114・・・・・・・・A/D変換器
115・・・・・・・・D/A変換器
120・・・・・・・・長波標準電波受信部
121・・・・・・・・長波標準電波受信アンテナ
122・・・・・・・・ANT共振器
130・・・・・・・・RF−AMP
140・・・・・・・・BPF
150・・・・・・・・LIM−AMP
160・・・・・・・・PD
170・・・・・・・・検波器
180・・・・・・・・LPF
200・・・・・・・・無線端末
210・・・・・・・・受信増幅部
211・・・・・・・・AMP
220・・・・・・・・MIX
230・・・・・・・・DSP
231・・・・・・・・位相誤差検出器
232・・・・・・・・記憶部
233・・・・・・・・D/A変換器
234・・・・・・・・信号処理部
240・・・・・・・・LPF
250・・・・・・・・VC−TCXO(電圧制御温度補償水晶発振器)
260・・・・・・・・PLL
260a・・・・・・・PLL
261・・・・・・・・リファレンスカウンタ
261a・・・・・・・リファレンスカウンタ
262・・・・・・・・PD
262a・・・・・・・PD
262b・・・・・・・Ftest/LD端子
263・・・・・・・・CP
264・・・・・・・・フラクショナルNデバイダー
270・・・・・・・・LPF
280・・・・・・・・VCO

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線端末の基準発振周波数の補正を行う無線通信システムであって、
長波標準電波信号を受信する長波標準電波信号受信手段と、
可変周波数発振器のリファレンス周波数を長波標準電波信号の周波数に設定するリファレンス周波数設定手段と、
前記長波標準電波信号の周波数と前記リファレンス周波数との位相差を検出する位相検出手段と、
前記位相差に基づいて電圧制御温度補償水晶発振器の周波数制御電圧を制御することで前記基準発振周波数を補正することを特徴とする無線通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−109516(P2011−109516A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−263933(P2009−263933)
【出願日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】