説明

無線通信システム

【課題】 高コストな設備を不要にし、既設の他の無線局による影響を防ぎ、また、他の無線局に影響を与えることを防ぐことができる無線通信システムを提供する。
【解決手段】 互いに離れて配列され、電波を受信して高周波信号を出力する空中線10、20と、ポートP1とP3、ポートP1とP4およびポートP2とP3の間に、電波の4分の1波長の電気的な長さの伝送路30A〜30Cが接続されていると共にポートP2とP4の間に、電波の4分の3波長の電気的な長さの伝送路30Dが接続され、ポートP1、P2が空中線10、20に接続され、同相の高周波信号を合成してポートP3から出力すると共に逆相の高周波信号を合成してポートP4から出力するラットレース回路30と、ポートP3に接続されていると共に合成された高周波信号を利用する空中線40と、ポートP4に接続されていると共に少なくとも1つの抵抗からなる抵抗回路50とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、受信した電波を利用する無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信システムは各種の分野で用いられている。例えば電力会社は、電力保安通信を目的とする無線局の免許を受け、電力保安通信設備を構築し、無線によるサービスエリア(通話範囲)を拡充している。これにより、電力会社は、車載無線機や携帯無線機を使用して、電力保安の業務を行っている。
【0003】
このような無線通信システムは広い通信範囲を持ち、山間部を含む場合もある。しかし、山間部においては、電波伝搬状況が複雑である。つまり、V/UHF(Very High Frequency/Ultra High Frequency)帯の電波は、光の性質に近い特性を持ち、地形などにより遮蔽された部分には電波が到達しにくくなる。このために、山間部の電力供給区域については、無線の十分なサービスエリアを確保しているとはいえない。こうした問題を解決するために、主要となる無線局のサービスエリア周辺部に、例えば前進基地局を設置したり、無給電中継装置を設置したりするなどして、不感地帯を解消すると共にサービスエリアの充実を行っている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
一方、例えば前述の電力保安通信設備において、無線通信により固定通信路を設ける場合、その空中線には十分な利得と満足な指向特性とを備えておく必要がある。このために、電力会社は、これらの要求に応じた空中線を設置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−131371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
先に述べた従来の技術には次の課題がある。通信設備において無給電中継装置を設置する場合、従来技術では送電用鉄塔を利用したり、既存の建物等を利用したりする。しかし、鉄塔等が設置されていない場合には、無給電中継装置を設けることが困難である。このために、新たに前進基地局を設置すると、前進基地局を設置するためのコストが高くなり、しかも、高コストの新たな設備が必要になる。
【0007】
また、通信設備において固定通信路を設ける場合、一般的に、十分な利得と満足な指向特性とを両立させると、空中線が大型化し、高コストな設備が必要である。また、大型の空中線は強風等の自然災害による被害を受けやすくなる。さらに、新たに固定通信路を設ける必要が生じた場合、または既存の固定通信路の設備老朽化による建て替えを行う場合、固定局周辺に既設の他の無線局があるときには、既存無線局に影響を与えず、かつ、既設の他の無線局による影響を受けない設備が要求される。
【0008】
この発明の目的は、前記の課題を解決し、高コストな設備を不要にし、既設の他の無線局による影響を防ぎ、また、他の無線局に影響を与えることを防ぐことができる無線通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決するために、請求項1の発明は、互いに離れて配列され、電波を受信して高周波信号を出力する空中線と、第1と第3のポート、第1と第4のポートおよび第2と第3のポートの間に、電波の4分の1波長の電気的な長さの伝送路が接続されていると共に第2と第4のポートの間に、電波の4分の3波長の電気的な長さの伝送路が接続され、第1および第2のポートが空中線にそれぞれ接続され、同相の高周波信号を合成して第3のポートから出力すると共に逆相の高周波信号を合成して第4のポートから出力するラットレース回路(ハイブリッド回路)と、ラットレース回路の第3のポートに接続されていると共に合成された高周波信号を利用する無線設備と、ラットレース回路の第4のポートに接続されていると共に少なくとも1つの抵抗からなる抵抗回路と、を備えることを特徴とする無線通信システムである。
【0010】
請求項1の発明では、互いに離れて配列された空中線が電波を受信して高周波信号を出力する。ラットレース回路は、第1および第2のポートを経て空中線から高周波信号を受け取ると、互いに同相の高周波信号を合成した信号を第3のポートから出力し、互いに逆相の高周波信号を合成した信号を第4のポートから出力する。無線設備は、第3のポートを経て送られて来る、合成された高周波信号を利用する。同時に、抵抗回路は、第4のポートを経て送られて来る、合成された高周波信号を吸収する。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1に記載の無線通信システムにおいて、無線設備は、ラットレース回路からの合成された高周波信号を受け取ると、この信号により電波を再放出する空中線である、ことを特徴とする。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1に記載の無線通信システムにおいて、無線設備は、ラットレース回路からの合成された高周波信号を受け取ると、この信号を復調する無線機である、ことを特徴とする。
【0013】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の無線通信システムにおいて、抵抗回路は、ラットレース回路の第4のポートのインピーダンスと整合されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、空中線の正面から到来してきた電波つまり目的とする電波を受信して発生する高周波信号のみを、同相で合成して無線設備に出力することができ、かつ、空中線の側面近傍方向から到来した電波つまり不要な電波を受信して発生する高周波信号を、逆相で合成して抵抗回路で吸収するので、無線設備に出力する信号から不要な信号を排除することができる。
【0015】
請求項2の発明によれば、ラットレース回路からは目的方向からの同相の高周波信号のみが送られて来るので、他の無線局からの電波の影響を受けない良好な電波を空中線から放出して、無給電による中継を可能にする。かつ、無給電中継に際して、他の無線局からの電波を受信して発生する不要な高周波信号を抵抗回路で吸収するので、他の無線局からの電波の再放射を行うことなく、他の無線局に影響を与えない、良好な中継を可能にする。
【0016】
請求項3の発明によれば、ラットレース回路からは同相の高周波信号のみが出力され、かつ、他の無線局からの電波を受信して発生する、不要な高周波信号を抵抗回路で吸収するので、受信機における復調で混変調や相互変調を生ずることなく、良好な復調信号を得ることができる。
【0017】
請求項4の発明によれば、抵抗回路のインピーダンスがラットレース回路のインピーダンスと整合しているので、抵抗回路は、ラットレース回路から出力される合成された高周波信号つまり不要な信号をラットレース回路に反射して再放出することなく、すべて吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施の形態1による無線通信システムを示す構成図である。
【図2】空中線を説明するための説明図である。
【図3】ラットレース回路およびそれに対する接続を示す構成図である。
【図4】実施の形態1の無線通信システムによる指向性を説明する図であり、図4(a)はアンテナ単体の指向性を示す図、図4(b)は同相における指向性を示す図、図4(c)は逆相における指向性を示す図である。
【図5】実施の形態2による無線通信システムのラットレース回路およびそれに対する接続を示す構成図である。
【図6】実施の形態1の無線通信システムによる指向性を説明する図であり、図6(a)はアンテナ単体の指向性を示す図、図6(b)は別のアンテナ単体の指向性を示す図、図6(c)は同相における指向性を示す図、図6(d)は逆相における指向性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、この発明の各実施の形態について、図面を用いて詳しく説明する。
【0020】
(実施の形態1)
この実施の形態による無線通信システムは、通話範囲を拡充するための、無線の無給電中継装置として用いられている。この無線通信システムの構成を図1に示す。この無線通信システムは、空中線10、20、40と、ハイブリッド回路であるラットレース回路30と、抵抗回路50とを備えている。
【0021】
空中線10、20は指向性が尖鋭であり高利得のアンテナである。この実施の形態では、XY平面を水平面とした図2に示すように、空中線10、20は12素子の八木型空中線である。そして、基地局からの電波の垂直偏波を受信するために、各素子の長手方向がZ軸に沿うように、空中線10、20が配置されている。また、各素子の配列方向(X軸方向)つまり空中線10、20の受信方向が基地局に正対するように、空中線10、20が配置されている。さらに、空中線10は空中線20に対して、受信する電波の1/2波長またはその奇数倍の間隔でY軸方向に配列されている。
【0022】
空中線10、20は電波を受信すると、高周波信号をラットレース回路30にそれぞれ出力する。先に述べたように、空中線10と空中線20とはY軸方向に離れて配置されているので、X軸に沿って到来した電波、つまり基地局からの電波を受信すると、空中線10、20は同相の高周波信号をラットレース回路30に出力する。基地局とは異なる方向から目的としない別の無線局からの電波を受信すると、空中線10、20は、位相が異なる2つの高周波信号つまり逆相の高周波信号をラットレース回路30に出力する。
【0023】
ラットレース回路30は、同軸構造の伝送路などを用いて形成されている。この実施の形態では、図3に示すラットレース回路30を用いる。このラットレース回路30は、4つのポートP1〜P4を持っている。ポートP1、P2は入力端子であり、ポートP3、P4は出力端子である。ポートP1は空中線10に接続され、ポートP2は空中線20に接続されている。また、ポートP3は空中線40に接続され、ポートP4は抵抗回路50に接続されている。
【0024】
ラットレース回路30のポートP1とポートP3との間に、目的とする信号の波長λの、λ/4の電気的な長さの同軸構造の伝送路30Aが接続され、ポートP1とポートP4との間にλ/4の電気的な長さの同軸構造の伝送路30Bが接続されている。また、ポートP2とポートP3との間にλ/4の電気的な長さの同軸構造の伝送路30Cが接続され、ポートP2とポートP4との間に3λ/4の電気的な長さの同軸構造の伝送路30Dが接続されている。各同軸構造の伝送路30A〜30Dには、空中線10、20からの高周波信号が流れる。また、空中線10からポートP1までの伝送路と、空中線20からポートP2までの伝送路の長さは同じ長さ、あるいは、λの整数倍の差を持った長さとする。
【0025】
ラットレース回路30は次のように動作する。図3で時計回りを矢印Aの方向とし、反時計回りを矢印Bの方向とすると、ポートP1に入力された空中線10からの高周波信号は、
時計回り…λ/4(同軸構造の伝送路30A)
反時計回り…λ/4(同軸構造の伝送路30B)、3λ/4(同軸構造の伝送路30D)、λ/4(同軸構造の伝送路30C)
の両経路を経てポートP3に到達する。このとき、時計回りの信号はλ/4だけ遅延し、反時計回りの信号は5λ/4つまりλ/4だけ遅延する。この結果、ポートP1に入力された高周波信号により、ポートP3からはλ/4だけ遅延した高周波信号が出力される。
【0026】
また、ポートP2に入力された空中線20からの高周波信号は、
時計回り…3λ/4(同軸構造の伝送路30D)、λ/4(同軸構造の伝送路30B)、λ/4(同軸構造の伝送路30A)
反時計回り…λ/4(同軸構造の伝送路30C)
の両経路を経てポートP3に到達する。このとき、時計回りの信号は5λ/4つまりλ/4だけ遅延し、反時計回りの信号はλ/4だけ遅延する。この結果、ポートP2に入力された高周波信号により、ポートP3からはλ/4だけ遅延した高周波信号が出力される。
【0027】
したがって、ポートP3では、ポートP1に対する入力で生じた、λ/4だけ遅延した高周波信号と、ポートP2に対する入力で生じた、λ/4だけ遅延した高周波信号との合成(以下、「正相合成」という)により、合成高周波信号が生成される。
【0028】
一方、ポートP1に入力された空中線10からの高周波信号は、
時計回り…λ/4(同軸構造の伝送路30A)、λ/4(同軸構造の伝送路30C)、3λ/4(同軸構造の伝送路30D)
反時計回り…λ/4(同軸構造の伝送路30B)
の両経路を経てポートP4に到達する。このとき、時計回りの信号は5λ/4つまりλ/4だけ遅延し、反時計回りの信号はλ/4だけ遅延する。この結果、ポートP1に入力された高周波信号により、ポートP4からはλ/4だけ遅延した高周波信号が出力される。
【0029】
また、ポートP2に入力された空中線20からの高周波信号は、
時計回り…3λ/4(同軸構造の伝送路30D)
反時計回り…λ/4(同軸構造の伝送路30C)、λ/4(同軸構造の伝送路30A)、λ/4(同軸構造の伝送路30B)
の両経路を経てポートP4に到達する。このとき、時計回りの信号は3λ/4だけ遅延し、反時計回りの信号は3λ/4だけ遅延する。この結果、ポートP2に入力された高周波信号により、ポートP4からは3λ/4だけ遅延した高周波信号が出力される。
【0030】
したがって、ポートP4では、ポートP1に対する入力で生じた、λ/4だけ遅延した高周波信号と、ポートP2に対する入力で生じた、3λ/4だけ遅延した高周波信号との合成(以下、「逆相合成」という)により、合成高周波信号が生成される。
【0031】
ラットレース回路30はこのように動作するので、空中線10、20からの高周波信号に応じて、次の合成高周波信号を出力する。空中線10、20が同相の高周波信号を出力すると、ポートP3では、ポートP1に対する入力信号(高周波信号)と、ポートP2に対する入力信号(高周波信号)とが正相合成をされる。一方、ポートP4では、ポートP1に対する入力信号と、ポートP2に対する入力信号とが逆相合成をされ、ポートP4からの出力はゼロになる。また、空中線10、20が逆相の高周波信号を出力すると、ポートP3では、ポートP1に対する入力信号(高周波信号)と、ポートP2に対する入力信号(高周波信号)とが正相合成をされる。これにより、ポートP3からの出力はゼロになる。一方、ポートP4では、ポートP1に対する入力信号と、ポートP2に対する入力信号とが逆相合成をされ、ポートP4からの出力は正相合成をされる。
【0032】
具体的に、空中線10、20が370MHzで設計したものであって、指向性(垂直偏波)を持つ12素子の八木型空中線である場合、図4(a)に示すように、前方利得が20.01dBi、前方半値角は約30度である。これらの空中線10、20を互いに例えば1.5波長の間隔で設置すると、正相合成をされた合成高周波信号を出力する、ラットレース回路30のポートP3において、図4(b)に示すように、前方利得は22.83dBiになり、前方半値角は約15度になる。つまり、1本の八木型空中線に比べて、利得が向上し、かつ、指向性が尖鋭になる。一方、逆相合成をされた合成高周波信号を出力する、ラットレース回路30のポートP4においては、図4(c)に示すように、前方利得は全く無く、側方15度方向の各利得は20.67dBiである。
【0033】
空中線40は、空中線10、20と同様に指向性が尖鋭であり高利得の、送信用のアンテナである。空中線40は、ラットレース回路30のポートP3に接続され、ポートP3から合成された高周波信号を受け取ると、サービスエリアに向けて電波を放射する。
【0034】
抵抗回路50は、1つ以上の抵抗を用いて形成され、ラットレース回路30のポートP4におけるインピーダンスに整合されている。抵抗回路50は、ポートP4から合成された高周波信号を受け取ると、インピーダンス整合により、この信号をラットレース回路30に向けて反射することなく、すべて吸収する。つまり、抵抗回路50は、高周波信号の抵抗負荷として作用する。
【0035】
次に、この実施の形態による無線通信システムの動作について説明する。基地局からの電波は、無線通信システムの空中線10、20で受信される。この電波はX軸(図2)に沿う方向から到来するので、空中線10、20は同相の高周波信号をラットレース回路30に出力する。ラットレース回路30は、ポートP1、P2で空中線10、20からの同相の高周波信号を受け取ると、これらの信号の正相合成を行い、空中線40に対してポートP3から合成高周波信号を送る。空中線40は、合成高周波信号を受け取ると、この信号により、新たなサービスエリアに向けて電波を放射する。一方、ラットレース回路30は、空中線10、20から同相の高周波信号を受け取ると、これらの信号の逆相合成を行い、レベルがゼロまたはゼロに近い低レベルの合成高周波信号を、ポートP4に出力する。
【0036】
ところで、基地局とは異なる方向から、目的としない他の無線局からの電波が到来すると、空中線10、20は逆相の高周波信号をラットレース回路30に出力する。ラットレース回路30は、ポートP1、P2で空中線10、20からの逆相の高周波信号を受け取ると、これらの信号の正相合成を行い、ポートP3のレベルをゼロにする。これにより、空中線40からは電波を放射しない。一方、ラットレース回路30は、空中線10、20から逆相の高周波信号を受け取ると、これらの信号の逆相合成を行い、高レベルの合成高周波信号をポートP4から抵抗回路50に送る。抵抗回路50は、この高レベルの合成高周波信号をすべて吸収して、ラットレース回路30に影響を与えることを防いでいる。
【0037】
こうして、この実施の形態により、空中線10、20の側面近傍方向に存在する、別の無線局から到来した信号をすべて抵抗回路50で吸収するので、不要な信号を積極的に、かつ、効率的に排除した無給電中継を可能にする。また、この実施の形態により、ラットレース回路30が単一の周波数であれば、総計が1.5波長の電気的な長さを有する伝送線路で構成することが可能であり、低コストで低損失の無給電中継装置を形成することができる。これにより、前進基地局を補完する機能を、必要に応じて低コストで多数設置することができ、サービスエリアの拡大と無線サービスの向上を可能にする。また、この実施の形態によれば、無給電で電波を中継すると共に中継する高周波信号から不要な信号を排除するので、無給電中継に際して、既設の他の無線局による影響を受けないようにすることができ、良好なサービスエリアの確保を可能にする。さらに、他の無線局に影響を与えることを防ぐことができる。これにより、良好な無給電中継を可能にする。
【0038】
(実施の形態2)
この実施の形態による無線通信システムを図5に示す。なお、この実施の形態では、先に説明した実施の形態1と同一もしくは同一と見なされる構成要素には、それと同じ参照符号を付けて、その説明を省略する。この実施の形態では、実施の形態1の空中線40の代わりに受信機60を用いている。つまり、ラットレース回路30のポートP3には、受信機60の入力が接続されている。
【0039】
この実施の形態では、正相合成をされてポートP3から出力される高利得の高周波信号を受信機60で復調する。具体的に、空中線10、20が150MHzで設計したものであって、指向性(垂直偏波)を持つ3素子八木型空中線である場合、図6(a)に示すように、空中線の前後長は61.4cmであり、前方利得は13.35dBiである。また、空中線10、20が150MHzで設計したものであって、指向性(垂直偏波)を持つ6素子八木型空中線である場合、図6(b)に示すように、空中線の前後長は215.5cmであり、前方利得は16.48dBiである。6素子八木型空中線は、3素子八木型空中線に比べて指向性は鋭くなり利得も向上するが、形状が大きくなった結果、受風面積が増大し、強風や豪雪時に不利となる。
【0040】
これに対して、空中線10、20として3素子八木型空中線を互いに例えば0.5波長の間隔で設置すると、正相合成をされた合成高周波信号を出力する、ラットレース回路30のポートP3において、図6(c)に示すように、前方利得は16.1dBiになる。つまり、1本の八木型空中線に比べて、利得が向上し、かつ、図6(a)に比べて指向性が尖鋭になる。一方、逆相合成をされた合成高周波信号を出力する、ラットレース回路30のポートP4においては、図6(d)に示すように、前方利得は全く無く、側方40度方向の利得は13.38dBiである。こうした信号が抵抗回路50と受信機60とに送られる。
【0041】
受信機60は、ラットレース回路30から高周波信号を受け取ると、この信号を復調して音声信号を再生する無線設備である。
【0042】
この実施の形態によれば、不要な信号を積極的に、かつ、効率的に排除するので、受信機60により、良好な音声信号を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
この発明は、無線の無給電中継や受信設備に限らず、各種の高周波信号を扱う設備や回路に利用可能である。
【符号の説明】
【0044】
10、20、40 空中線
30 ラットレース回路
30A〜30D 伝送路
P1〜P4 ポート
50 抵抗回路(無線設備)
60 受信機(無線設備)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに離れて配列され、電波を受信して高周波信号を出力する空中線と、
第1と第3のポート、第1と第4のポートおよび第2と第3のポートの間に、電波の4分の1波長の電気的な長さの伝送路が接続されていると共に第2と第4のポートの間に、電波の4分の3波長の電気的な長さの伝送路が接続され、第1および第2のポートが空中線にそれぞれ接続され、同相の高周波信号を合成して第3のポートから出力すると共に逆相の高周波信号を合成して第4のポートから出力するラットレース回路と、
ラットレース回路の第3のポートに接続されていると共に合成された高周波信号を利用する無線設備と、
ラットレース回路の第4のポートに接続されていると共に少なくとも1つの抵抗からなる抵抗回路と、
を備えることを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
無線設備は、ラットレース回路からの合成された高周波信号を受け取ると、この信号により電波を再放出する空中線である、
ことを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
無線設備は、ラットレース回路からの合成された高周波信号を受け取ると、この信号を復調する無線機である、
ことを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項4】
抵抗回路は、ラットレース回路の第4のポートのインピーダンスと整合されている、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の無線通信システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−142413(P2011−142413A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−800(P2010−800)
【出願日】平成22年1月5日(2010.1.5)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】