説明

無線通信ネットワークシステム、その送信側の無線端末、受信側の無線端末、プログラム

【課題】中継を伴う無線通信ネットワークシステムにおいて、構成情報に無い無線端末であっても通信可能な状況であれば通信を行えるようにする。
【解決手段】任意の他の無線端末が送信したID通知信号を受信すると、宛先の無線端末が構成情報に登録されているか否かを判定し(ステップS52)、登録されている場合には宛先と宛先までのホップ数を含む要求パケットを送信し、登録されていない場合には該宛先までのホップ数を無限大(∞)とした要求パケットを送信する。そして、この要求に対してACK応答があれば、宛先に対する送信データを上記他の無線端末に渡して中継を行わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の無線端末によって構成され、各無線端末が直接又は他の1以上の無線端末を介することで他の全ての無線端末と通信可能である無線通信ネットワークシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1、2等に記載の無線通信ネットワークシステムが提案されている。
図29に、従来の特許文献1、2等に記載の無線通信ネットワークシステム全体の構成の一例を示す。
【0003】
同図において、A〜Jは分散設置された無線端末を示す。自らが直接無線通信可能な距離は一般に有限であるので、各無線端末A〜Jはシステムを構成する全ての無線端末と直接無線通信することはできない。しかしながら、各無線端末A〜Jは全て1台以上の他の無線端末と直接無線通信することは可能であり、他の無線端末を経由することでシステムを構成する全ての無線端末との通信を可能としている。
【0004】
尚、図29に示す各無線端末A〜Jを結ぶ直線(矢印も含む)は各通信路を意味し、直線で結ばれた2つの無線端末間では直接無線通信可能であることを意味している。
各無線端末A〜Jは、それぞれ、存在通知パケット、通信診断パケット等を相互に送受信して通信路の信頼性を診断することで、例えば図30(a)に示すような構成情報を生成・記憶する。
【0005】
図30(a)に示す構成情報は、無線端末Aが生成・記憶する構成情報の一例であり、無線端末Aの送信するパケットが着信先の無線端末に到達するまでになされる通信回数と、その通信回数を最小通信回数として到達する着信先の無線端末との関係を示している。同図から、例えば、無線端末Aが1回の通信でパケットを転送可能な無線端末(つまり、無線端末Aが直接通信可能な無線端末)は、無線端末B、C、Dであることが分かる。また、無線端末E,F,G,H,I,Jは、無線端末Aが直接通信できない無線端末であり、他の無線端末が中継することで(複数回の通信で)、パケットを転送可能な無線端末であることが分かる。そして、他の無線端末が中継することでパケットを転送するために、無線端末E,Fは少なくとも2回の通信を要し(中継回数1回以上)、無線端末G、H、Iは少なくとも3回の通信を要し、無線端末Jは少なくとも3回の通信を要することがわかる。
【0006】
但し、無線端末B、C、D以外の無線端末が全て無線端末Aと直接通信できないものとは限らない。例えば、無線端末E,F等であれば、例えば周囲の通信環境が良好なとき等に無線端末Aと直接通信できる場合もあり得る。しかし、ここでは、上記通信路の信頼性の診断の結果、信頼性が十分でなかったことから、無線端末E,Fへのパケット転送には他の無線端末の中継を要するものとして管理されている。
【0007】
更に、各無線端末は、例えば図30(a)のような自端末の構成情報に基づいて、少なくとも自端末が直接通信できる他の無線端末(以下、隣接する無線端末という場合もある)の構成情報を、当該隣接する各無線端末に要求して取得して記憶する。
【0008】
図30(b)に、この様に取得・記憶した構成情報の一例を示す。
図30(b)には、一例として、無線端末Aが取得・記憶する、隣接する各無線端末の構成情報の一例を示す。
【0009】
無線端末Aは、図30(a)に示す自端末の構成情報の他に、図30(b)に示す隣接無線端末B、C、Dの構成情報をも記憶・管理することになる。基本的には、これらをまとめて構成情報と呼ぶものである。そして、無線端末Aは(勿論、他の各無線端末も)、自己の構成情報を参照して、パケットの送出先を決定する。
【0010】
一例として、無線端末Aが無線端末Eを宛先とするパケットを送出する場合を考える。図30(b)を参照すると、無線端末Eへパケットを転送するためには、無線端末Bからは1回の通信で転送可能であることがわかる。同様に、無線端末Cからは1回、無線端末Dからは2回の通信で転送可能であることがわかる。このことにより、無線端末Aは、着信先が無線端末Eであるパケットを無線端末BまたはCのいずれかに送出する。無線端末BまたはCは、このパケットを中継し、これにより当該パケットは1回の中継で無線端末Eへ届くことになる。
【0011】
また、図31に、各無線端末で記憶する構成情報の一例を示す。尚、ここでは無線端末A,B,E,Gを例にするが、他の無線端末も同様にして構成情報を生成・記憶している。
【0012】
図31に示すように、無線端末Aの記憶する構成情報は、上記図30(a)と図30(b)の構成情報を合わせたものとなっている。他の無線端末B,E,Gも同様に、自端末の構成情報及びその隣接無線端末の構成情報を、自己が保持・管理する構成情報としており、この構成情報を参照して、パケットの送信先を決定することになる。
【0013】
また、特許文献3の発明は、アドホック型無線通信ネットワークにおいて、ブロードキャスト通信をする際、無線伝送路のトラフィックを抑え効率的に通信を行う為のプロトコルを提供するものである。
【特許文献1】特開2000−13376号公報
【特許文献2】特開2004−7714号公報
【特許文献3】特開2003−8591号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ここで、上述した従来の無線通信ネットワークシステムは、無線データ通信を行う複数の無線端末によって構成され、各無線端末が構成情報を参照することで、各無線端末のいずれも直接又は他の1以上の無線端末に中継させることで他の全ての無線端末と通信可能である。
【0015】
しかしながら、最初は他の全ての無線端末と通信可能な状態であったとしても、その後、何等かの原因で(例えば一部通信路に障害物が置かれる、通信環境の悪化等)ネットワークを構成する各通信路のうちの一部の通信路が遮断(切断)されてしまう場合がある。そして、場合によっては、他の無線端末に中継させても通信できない無線端末が存在することになる。上記構成情報は例えば定期的に更新されるものであり、上記の状況では、通信できなくなった無線端末は、構成情報から削除されることになる。
【0016】
構成情報に無い無線端末は、基本的に、他のどの無線端末を介しても通信できない無線端末である。よって、従来では、構成情報に無い無線端末に関しては、パケット送信/中継処理等は行わない(この様なパケットを受信した場合、破棄する)。
【0017】
しかしながら、例えば、上記遮断状態となった通信路が一時的に回復して通信可能となる場合もあり有る。しかしながら、上記の通り、構成情報には無いことから、パケット送信/中継処理等は行われない。あるいは、例えば上記障害物が除去される等して、上記遮断状態となった通信路が完全に回復した場合でも、これが直ちに構成情報に反映されるわけではなく、構成情報が更新されるまでは、構成情報には無いことから、パケット送信/中継処理等は行われない。
【0018】
しかしながら、たとえ構成情報にはなくても、現実に通信可能な状態であるならば、通信処理(パケット送信/中継処理等)が行われるようにすることが望ましい。しかしながら、上述した従来の無線通信ネットワークシステムでは、この様な要望を実現することは難しかった。
【0019】
また、上述した従来の無線通信ネットワークシステムにおいて、上記無線端末は、基本的に、電池により駆動される。この為、電池の消耗を抑え、電池の交換頻度を減らすことが望まれる。また、電池により駆動される構成ではない場合でも、省電力化は望ましいものである。また、上記のように、例えば、無線端末E,F等は、常に、直接通信できないものとは限らない。もし、上記の例において、無線端末Aが宛先の無線端末Eと直接通信できる状況であったならば、無線端末Eと直接通信することで、通信回数を減らすことができる(つまり、効率化が図れる)と共に、無線端末BまたはCは中継動作を行わなくて済む分、省電力化が図れることになる。

本発明の課題は、無線データ通信を行う複数の無線端末によって構成され、各無線端末がシステム構成情報を記憶・参照することで、各無線端末のいずれも直接又は他の1以上の無線端末に中継させることで他の全ての無線端末と通信可能である無線通信ネットワークシステムにおいて、構成情報に無い無線端末であっても通信可能な状況であれば通信を行えるようにする無線通信ネットワークシステム、その無線端末、プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】

本発明の無線通信ネットワークシステムは、無線データ通信を行う複数の無線端末によって構成され、該各無線端末はシステム構成情報を記憶し、該システム構成情報を用いることで前記無線端末のいずれも直接又は他の1以上の無線端末に中継させることで他の全ての無線端末と通信可能である無線通信ネットワークシステムにおいて、受信側の前記無線端末は、一定周期で間欠的に、第1の信号を送信し更に続いて所定の第1の期間、他の無線端末からの該第1の信号に対する返信待ち状態とする受信動作制御手段を有し、送信側の前記無線端末は、任意の宛先の無線端末に対する任意のデータの送信要求が発生すると、所定の第2の期間、他の無線端末からの前記第1の信号の受信待ち状態とする送信動作制御手段と、該第2の期間中に前記第1の信号を受信すると、前記宛先の無線端末が自己の前記システム構成情報にあるか否かに係らず自端末から該宛先までの中継回数を決定する第1の中継回数決定手段と、該決定した中継回数と前記宛先を含む要求パケットを前記第1の信号に対する返信として送信する中継回数通知手段と、該要求パケットに対して前記受信側の無線端末からデータ送信許可があった場合には、該受信側の無線端末に対して前記データを送信するデータ送信手段とを有し、前記受信側の無線端末は更に、前記要求パケットを受信すると、前記宛先の無線端末が自己の前記システム構成情報にあるか否かに係らず自端末から該宛先までの中継回数を決定する第2の中継回数決定手段と、該第2の中継回数決定手段で決定した中継回数が前記要求パケットの中継回数よりも少ない場合には、前記データ送信許可を送信する中継可否決定・送信手段とを有する。
【0021】
上記構成の無線通信ネットワークシステムにおいて、例えば、前記第1の中継回数決定手段、第2の中継回数決定手段は何れも、前記宛先の無線端末が自己の前記システム構成情報にある場合には該システム構成情報から前記宛先までの中継回数を取得し、前記宛先の無線端末が自己の前記システム構成情報に無い場合には、予め設定されている所定の大きな値を前記宛先までの中継回数に決定する。
【0022】
上記構成の無線通信ネットワークシステムでは、任意のデータの送信元の無線端末において、宛先が自己の構成情報に無い場合でも、宛先までの中継回数を決定して(例えば、所定の大きな値)、通信相手の無線端末に送信する。所定の大きな値とは、例えば、中継回数としてあり得る最も大きな値よりも大きな値である。これより、通信相手の無線端末において、宛先が自己の構成情報にある場合、すなわち直接又は他の1以上の無線端末に中継させることで宛先の無線端末と通信可能な場合には、上記中継可否決定・送信手段の判定によりデータ送信許可を送信することになる。
【0023】
また、例えば、前記各無線端末は、自己の前記システム構成情報を更新すると共に該更新前のシステム構成情報を旧システム構成情報として記憶しておく構成情報更新手段を更に有し、前記第1、第2の中継回数決定手段は何れも更に、該旧システム構成情報を参照して、前記宛先の無線端末が該旧システム構成情報にある場合には該旧システム構成情報から前記宛先までの中継回数を取得してこれを旧中継回数として決定し、前記中継回数通知手段は、該旧中継回数も前記要求パケットに含めて送信し、前記中継可否決定・送信手段は、前記第2の中継回数決定手段で決定した中継回数が前記要求パケットの中継回数よりも少ない場合以外でも、該第2の中継回数決定手段で決定した中継回数が前記所定の大きな値である場合には、該第2の中継回数決定手段で決定した旧中継回数が、前記要求パケットの旧中継回数よりも少ない場合には、前記データ送信許可を送信する。
【0024】
自端末も通信相手の無線端末も、両方とも宛先が自己の構成情報に無い場合でも、以前は宛先が自己の構成情報にあったかもしれない(何等かの原因で一部の通信路が切断された為、宛先が構成情報から消えたかもしれない)。よって、通信相手の無線端末においても宛先がその構成情報に無い場合でも、この通信相手の無線端末が自端末よりも宛先に近いのならば、この通信相手の無線端末にデータを渡しておけば、例えばその後に上記切断された通信路がたとえ一時的であっても回復したならば、このデータが宛先に届く可能性がある。
【0025】
また、上記構成では、受信側の前記無線端末が一定周期で間欠的に動作し、送信側でも任意の受信側からの第1の信号を受信できたときにデータ送信を行うので、送信動作中における空間のチャンネルの占有時間を低減しつつ、送受信時の低消費電力化を図ることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の無線通信ネットワークシステム、その無線端末、プログラムによれば、無線データ通信を行う複数の無線端末によって構成され、各無線端末がシステム構成情報を記憶・参照することで、各無線端末のいずれも直接又は他の1以上の無線端末に中継させることで他の全ての無線端末と通信可能である無線通信ネットワークシステムにおいて、構成情報に無い無線端末であっても通信可能な状況であれば通信を行えるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
尚、以下に説明する本例の無線通信ネットワークシステムに関して、当該無線通信ネットワークシステム全体の構成例は、従来技術の説明に用いた図29の構成例を参照するものとする。
【0028】
図1に、無線通信ネットワークシステムにおける上記各無線端末の構成図を示す。
尚、ここでは、各無線端末の基本的な機能を示す為に、データ受信側の無線端末を受信端末11a、データ送信側の無線端末を送信端末11bとする構成を示すが、通常、無線機は、データ送信側として動作する場合もあればデータ受信側として動作する場合もあるので、実際には後述するように、各無線端末は受信端末11a、送信端末11b両方の構成を有する場合が多いことになる。但し、図1に示す通りに、受信専用、送信専用の無線端末がそれぞれ存在するような構成であってもよい。
【0029】
図1において、受信端末11aには、データを無線にて送信する無線送信回路13a、無線で送信されたデータを受信する無線受信回路14a、データの送受信の制御を行う制御部12a、データの送受信の切り替えを行う切り替え部15a、データを電波として空間に送出したり受信したりするアンテナ16a、無線送信回路13a、無線受信回路14aおよび制御部12aの電源を供給する電池17a、不図示の上位装置とデータのやり取りを行うインターフェース18a、無線送信回路13aの電源をオン/オフするスイッチ19a、無線受信回路14aの電源をオン/オフするスイッチ20aが設けられている。
【0030】
尚、インターフェース18aを介してデータのやり取りを行う上位装置としては、例えば、パソコン等の情報処理装置、スイッチやセンサ、表示器などを挙げることができる。また、制御部12aにはタイマが設けられ、制御部12a自体の消費電力を最低に維持するスリープ状態となり、一定時間後に動作状態に移行することができる。
【0031】
ここで、制御部12aには、無線送信回路13aまたは無線受信回路14aを間欠的に動作状態に移行させる動作状態制御部31aが設けられる。動作状態制御部31aには、第1送信状態制御部32aおよび第1受信状態制御部33aが設けられている。
【0032】
図2(a)は、動作状態制御部31aの処理フローチャート図である。図3(a)は、図2(a)の処理による受信端末11aの動作タイミング図である。
動作状態制御部31aの処理動作は、上記第1送信状態制御部32aの処理動作と第1受信状態制御部33aの処理動作とから成る。
【0033】
まず、図2(a)の処理は繰り返し行われているものであり、図示の各処理の最後の処理であるステップS3の処理の際に図3(a)に示すスリープ期間TSがセットされて起動された不図示のタイマ(詳しくは後にステップS3の説明の際に説明する)が、タイムアップすることで、制御部12aはスリープ状態から目覚め(起動し)、これによって図2(a)の処理が開始されることになる。
【0034】
図2(a)の処理が開始されると、まず、第1送信状態制御部32aが、スイッチ19aをON制御して無線送信回路13aを電源オンすると共に、切り替え部15aを無線送信回路13a側に切り替えて、予め設定されている所定期間(図3(a)に示す一定期間TT)、図3(a)に示す送信状態T11とする。この送信状態T11では、例えば制御部12a等が、少なくとも自端末のIDを含む所定の信号を、無線送信回路13aによってアンテナ16aから無線送信させるものである(後述する間欠送信信号P11(ID通知信号とも呼ぶものとする)を送信するものである)(ステップS1)。尚、上記IDとは、予め各無線端末(受信端末11a、送信端末11b)に割り当てられている、各無線端末の識別番号である。そして、送信状態T11終了時にスイッチ19aをOFF制御して無線送信回路13aを電源オフする。
【0035】
上記送信状態T11が終了すると、続いて、第1受信状態制御部33aが、スイッチ20aをON制御して無線受信回路14aを電源オンすると共に、切り替え部15aを無線受信回路14a側に切り替える。そして、予め設定されている所定期間(図3(a)に示す一定期間TR)、図3(a)に示す受信状態R11となる。つまり、外部からの無線信号(特に後述する送信信号P12)の受信待ち状態となる(ステップS2)。
【0036】
そして、受信状態R11終了時に、第1受信状態制御部33aは(又は制御部12a等であってもよいが)、ステップS3のスリープ状態への移行処理を実行する。
ステップS3の処理は、まず、スイッチ20aをOFF制御して無線受信回路14aを電源オフする。これによって、無線送信回路13a、無線受信回路14aの両方が電源オフとなる。更に、図3(a)に示すスリープ期間TSを上記不図示のタイマにセットしてタイマ起動すると共に、制御部12a自体をスリープ状態にする。これによって、スリープ期間TSの間は、無線送信回路13a、無線受信回路14aの両方が電源オフになっていると共に、制御部12a自体もスリープ状態となっているので、電力消費が非常に少なくて済む。
【0037】
尚、上記送信状態T11とは、受信端末11aの動作状態において当該受信端末11aが動作状態にあることを送信端末11b側に知らせるための信号(間欠送信信号P11)を無線送信する状態であると言える。
【0038】
尚、上述した図2(a)の処理は、換言すれば、動作状態制御部31aが、図3(a)に示すように、一定期間TTの送信状態T11とそれに続く一定期間TRの受信状態R11を、スリープ期間TSだけ間隔を空けながら間欠的に繰り返すように制御する処理であるとも言える。上述した図2(a)の処理の説明は、一例であり、これに限るものではない。例えば、第1送信状態制御部32a、第1受信状態制御部33aは、それぞれ、上述した送信処理、受信処理に係る処理のみを実行し、期間TS、TT、TRに係る期間管理は、動作状態制御部31a等が行うようにしてもよい。何れにしても、動作状態制御部31a全体(あるいは制御部12a全体)として、図2(a)に示す動作が行われるように制御するものであれば何でもよい。これは、以下に説明する送信端末11bの動作に関しても同様である。
【0039】
また、一定期間TT、TRは、動作期間(スリープ状態ではない期間)であるとも言える。
尚、動作期間(TT+TR)は、スリープ期間TSに対して十分に短くすることができ、受信端末11aの消費電力は以下の(1)式を満たすことができる。
(TT×PT+TR×PR)≪PR×(TT+TR+TS) ・・・(1)
但し、PTは送信時に無線送信回路13aおよび制御部12aにて消費される電力、PRは受信時に無線受信回路14aおよび制御部12aにて消費される電力である。この式により、無線受信回路14aを常時受信状態とした場合に比べて期間(TT+TR+TS)に消費される電力を削減することができる。
【0040】
一方、送信端末11bには、データを無線にて送信する無線送信回路13b、無線で送信されたデータを受信する無線受信回路14b、データの送受信の制御を行う制御部12b、データの送受信の切り替えを行う切り替え部15b、データを電波として空間に送出したり受信したりするアンテナ16b、無線送信回路13b、無線受信回路14bおよび制御部12bの電源を供給する電池17b、上位装置とデータのやり取りを行うインターフェース18b、無線送信回路13bの電源をオン/オフするスイッチ19b、無線受信回路14bの電源をオン/オフするスイッチ20bが設けられている。
【0041】
ここで、制御部12bには、無線送信回路13bまたは無線受信回路14bを必要に応じて動作状態に移行させる動作状態制御部31bが設けられ、動作状態制御部31bには、第2送信状態制御部32bおよび第2受信状態制御部33bが設けられている。
【0042】
そして、第2受信状態制御部33bは、図3(b)に示すように、送信事象J11の発生を契機として、受信端末11aが動作状態にあるということを送信端末11bが知るための受信待ち状態R12に移行させる。尚、送信事象J11としては、例えば、上位装置からの送信指令、送信端末11b内部で発生した電池電圧情報、他の無線機から中継送信されるデータを受信した場合などを挙げることができる。
【0043】
尚、送信事象J11(例えば上記送信指令)には、送信すべきデータの他に、送信相手先のデータ(宛先の無線端末のID等)も含まれる。よって、送信端末11bは、送信事象J11が発生することにより、どの受信端末11aにデータを送信したらよいかを判断することができると共に、上記ステップS1のID通知によって通知元がデータ送信相手であるか否かを判断できる。
【0044】
また、受信待ち状態R12において任意の受信端末11aが送信した上記間欠送信信号P11(自己が動作状態であることを示す信号)を送信端末11bが受信した場合、第2送信状態制御部32bによって、当該動作状態にある受信端末11aに上記送信すべきデータを送信するための送信状態T12に移行させる。但し、上記の通り、間欠送信信号P11には受信端末11のIDが含まれており、このIDが上記送信事象J11による宛先のIDと一致しない場合には、送信状態T12に移行せずに、そのまま受信待ち状態R12を継続する。
【0045】
上述した動作状態制御部31bの処理動作について、以下、図2(b)、図3(b)を参照して、更に詳しく説明する。
図2(b)は動作状態制御部31bの処理フローチャート図であり、図3(b)はこの処理による送信端末11bの動作タイミング図である。
【0046】
図2(b)の処理は、上記の通り送信端末11bにおいて送信事象J11が発生すると、開始される。
すなわち、送信端末11bの制御部12bは、上記送信事象J11が発生するとスリープ状態から目覚める(起動する)。そして、まず、第2受信状態制御部33bは、予め任意の一定時間TWが設定されている不図示のタイマを起動する。更に、切り替え部15bを無線受信回路14b側に切り替えると共にスイッチ20bをON制御して無線受信回路14bを電源ONすることで、上記受信待ち状態R12を開始する(ステップS4)。上記タイマにより、最長で、予め設定されている一定時間TWだけ受信待ち状態R12となることになる。
【0047】
そして、上記タイマがタイムアップする前に(一定時間TW経過する前に;ステップS6の判定がYESとなる前に)、上記送信相手先の受信端末11aが送信した間欠送信信号P11を受信した場合には(当然、上記ID一致判定を行っている)(ステップS5,YES)、上記送信すべきデータのデータパケットを、上記送信相手先の受信端末11a宛に無線送信する(ステップS7)。ステップS7の処理を行う為に、第2送信状態制御部32bは、切り替え部15bを無線送信回路13b側に切り替えると共にスイッチ19bをON制御して無線送信回路13bを電源ONする(その際、スイッチ20bをOFF制御する)(尚、これは、図3(b)に示す送信状態T12に移ることを意味する)。
【0048】
そして、ステップS7の処理が完了したら、受信待ち状態R12に戻ることなく、スリープ状態へ移行する(ステップS8)。
尚、図3(a)と図3(b)は、それぞれ独立して示しているものであり、相互の関係を示すものではない(相互の関係例は図4(a)、(b)などで示している)。
【0049】
一方、上記送信相手先の受信端末11aが送信した間欠送信信号P11を受信することなく、上記タイマがタイムアップした場合(一定時間TW経過した場合)には(ステップS6,YES)、スリープ状態へ移行する(ステップS8)。すなわち、スイッチを制御して無線送信回路13b、無線受信回路14bの両方を電源オフすると共に、制御部12b自体をスリープ状態にする。
【0050】
ここで、上述した一定時間TWは、電波を受信可能な場所に存在する全ての受信端末11aの送信状態T11を確認できるようにするために、以下の(2)式を満たすように設定することができる。
【0051】
TW>TT+(TT+TR+TS) ・・・(2)
ただし、通信エラーなどにより受信端末11aの送信状態T11を確認できない場合も考慮して、N(Nは2以上の整数)回だけ受信端末11aの送信状態T11を確認できるように、以下の式を満たすように一定時間TWを設定することができる。
【0052】
TW>TT+N×(TT+TR+TS) ・・・(3)
図4は、上述した処理による無線端末の間欠通信方法の一例を示すタイミング図である。
【0053】
以下、図4を参照して、上述した処理についてまとめて説明する。
尚、ここでの説明では、上述した説明のように制御部12a、12bがそれぞれ有する上記各機能部毎に区別することなく、まとめて、制御部12a、12bが行うものとして説明する。
【0054】
図4において、受信端末11a側では、制御部12aが動作状態に移行している動作期間(TT+TR)においては、制御部12aは、まず、送信期間TTにおいて、スイッチ19aをオンして電源を無線送信回路13aに供給することにより、無線送信回路13aを送信状態T11に移行させる。また、制御部12aは、送信期間TTに続く受信期間TRおいて、スイッチ20aをオンして(その際、スイッチ19aをオフする。また切り替え部の切り替え制御も行う;逐一説明しないが、実施形態の説明では全て同様)、電源を無線受信回路14aに供給することにより、無線受信回路14aを受信状態R11に移行させる。
【0055】
そして、制御部12aは、上記一定期間TTの送信状態T11とそれに続く一定期間TRの受信状態R11の後に、スイッチ19a、20aの両方がオフになるようにし、無線送信回路13aおよび無線受信回路14aの電源を切断し、更に制御部12a自らがスリープ状態となることにより、スリープ期間TSに移行させる。
【0056】
上述した制御を繰返すことで、制御部12aは、一定期間TTの送信状態T11とそれに続く一定期間TRの受信状態R11をスリープ期間TSだけ間隔を空けながら間欠的に繰り返すことができる。
【0057】
一方、送信端末11b側では、制御部12bは、通常時は(送信事象J11が発生しない限りは)、スイッチ19b、20bをオフすることにより、無線送信回路13bおよび無線受信回路14bの電源を切断するとともに、制御部12b自らがスリープ状態となっている。そして、送信事象J11が発生することをトリガとして起動する制御部12bは、スイッチ20bをオンして電源を無線受信回路14bに供給することにより、無線受信回路14bを一定時間TWだけ受信待ち状態R12に移行させる。
【0058】
そして、受信端末11a側において無線送信回路13aが送信状態T11に移行されると、上述した通り、無線送信回路13aはアンテナ16aを介して間欠送信信号P11を送信することになる。尚、既に述べた通り、間欠送信信号P11には、個々の受信端末11aに固有なコード(上記ID)の情報も含まれている(それ以外にも、たとえば、当該信号が間欠送信信号であることを示す情報等も含まれていてよい;これは、他の信号に関しても同様)。
【0059】
そして、図4に示すように送信端末11b側が受信待ち状態R12となっている期間中の任意のときに、間欠送信信号P11が受信端末11aから送信されると、送信端末11bにてこの間欠送信信号P11が受信される。ここで、上述した(2)式を満たすように受信待ち状態R12の時間TWを設定することにより、間欠送信信号P11が受信待ち状態R12と非同期で受信端末11aから送信された場合においても、電波を受信可能な場所に存在する全ての送信端末11bに間欠送信信号P11を受信させることができ、受信端末11aは、自己が動作状態となっていることを送信端末11bに確実に知らせることができる。
【0060】
そして、受信待ち状態R12となっている送信端末11bにて間欠送信信号P11が受信されると、送信端末11bは、既に述べた通り、間欠送信信号P11に含まれる受信端末11aに固有なコード(上記ID)に基づいて、その受信端末11aが送信相手であるかどうかを判断する。そして、その受信端末11aが送信相手であると確認された場合には、送信端末11bは送信状態T12に直ちに移行し、送信信号P12を受信端末11aに送信する。
【0061】
ここで、受信端末11a側でも、送信状態T11において間欠送信信号P11を送信すると、その直後に受信状態R11に移行するので、送信端末11bが送信状態T12である時には、受信端末11aは受信状態R11となっており、タイマなどを用いて受信端末11aと送信端末11bとの間で同期をとることなく、受信端末11aは送信端末11bから送信された送信信号P12を受信することができる。
【0062】
但し、上記“直後”である必要は必ずしもない。要は、間欠送信信号P11の送受信タイミングを基準にして、受信端末11aと送信端末11bとでその後に同じタイミング(上記“直後”又は同じ時間経過後等)でそれぞれ受信状態R11、送信状態T12に移行するように予め設定しておけばよい。
【0063】
上記本例の手法では、送信端末11b側では受信端末11a側にデータを送信する前に受信待ち状態R12で待機し、送信端末11bが送信事象に係るパケットデータの送信を行う以前に、受信端末11aが動作状態にあることを送信端末11bに通知することが可能となる。更に、この通知タイミングを元にそれぞれ受信状態R11、送信状態T12に移行する。
【0064】
このため、受信端末11aが非同期で間欠的に動作状態を繰り返している場合においても、受信端末11aと送信端末11bとで動作タイミングを同期化させることなく、受信端末11aが動作状態にある時にデータを受信させることが可能となるとともに、送信端末11bが受信端末11aを捕捉するために、送信端末11bが長時間送信状態T12を継続させる必要がなくなることから、送受信時の低消費電力化を図りつつ、送信動作中における空間のチャンネルの占有時間を低減することができる。
【0065】
尚、間欠送信信号P11に含まれる受信端末11aに固有なコード(ID)に基づいて、その受信端末11aが送信相手であると送信端末11b側で確認された場合には、図4に示す通り、送信端末11bではその直後に受信待ち状態R12を中止するようにしてもよい。これにより、受信端末11aが今回のデータの送信相手であるかどうかを送信端末11b側で確実に確認することを可能としつつ、送信端末11bが受信待ち状態R12となっている時間を短くすることができ、送信端末11bの低消費電力化を図ることが可能となる。
【0066】
図5は、本実施形態に係る無線端末の間欠通信方法のその他の例を示すタイミング図である。
図5において、受信端末11a側では、一定期間TTの送信状態T11とそれに続く一定期間TRの受信状態R11がスリープ期間TSだけ間隔を空けながら間欠的に繰り返されている。一方、送信端末11b側では、送信事象J11が発生すると、一定時間TWだけ受信待ち状態R12に移行する。
【0067】
そして、受信端末11a側において送信状態T11に移行すると、間欠送信信号P11が送信され、受信待ち状態R12となっている送信端末11bにて間欠送信信号P11が受信される。そして、受信待ち状態R12となっている送信端末11bにて間欠送信信号P11が受信されると、送信端末11bは、間欠送信信号P11に含まれる受信端末11aに固有なコードに基づいて、その受信端末11aが送信相手であるかどうかを判断する。そして、その受信端末11aが送信相手であると確認された場合には、送信端末11bは送信状態T12に直ちに移行し、送信信号P12を送信相手の受信端末11aに送信する。
【0068】
ここまでは、図4と同様である。
そして、送信端末11bは、送信信号P12を受信端末11aに送信すると、受信状態R13に直ちに移行する。尚、受信状態R13は受信状態R12と略同様の処理により実現される(違いは、待ち受けるデータの種類(P11か後述するP15か)である)。これは、T11〜T13等に関しても同様である(送信するデータが異なるだけ)。
【0069】
一方、受信端末11aは、間欠送信信号P11を送信すると、受信状態R11に直ちに移行し、送信端末11bから送信された送信信号P12を受信することができる。これは図4と同様である。そして、受信端末11aは、送信端末11bから送信された送信信号P12を受信すると、送信状態T13に直ちに移行し、送信信号P12に対する応答信号P15を送信端末11bに送信する。
【0070】
そして、送信端末11bは、応答信号P15を受信端末11aから受信すると、受信待ち状態R12を直ちに中止することができる。
これにより、受信端末11a側でデータを正常に受信できたか否かを送信端末11bで確実に確認することを可能としつつ、送信端末11bが受信待ち状態となっている時間を短くすることができ、データ通信の信頼性を担保しつつ、送信端末11bの低消費電力化を図ることが可能となる。
【0071】
図6は、本発明の一実施形態に係る無線端末の間欠通信方法のさらにその他の例を示すタイミング図である。
図6において、送信端末11bは、複数の受信端末11a、11cと通信を行うものとする。なお、受信端末11cは、図1の受信端末11aと同様の構成をとることができる。
【0072】
そして、受信端末11a、11c側では、一定期間TTの送信状態T11とそれに続く一定期間TRの受信状態R11がスリープ期間TSだけ間隔を空けながら間欠的に繰り返されている。一方、送信端末11b側では、受信端末11aに対する送信事象J11が発生すると、一定時間TWだけ受信待ち状態R12に移行する。
【0073】
そして、受信端末11a側において送信状態T11に移行すると、間欠送信信号P11が送信され、受信待ち状態R12となっている送信端末11bにて間欠送信信号P11が受信される。そして、受信待ち状態R12となっている送信端末11bにて間欠送信信号P11が受信されると、送信端末11bは、間欠送信信号P11に含まれる受信端末11aに固有なコード(ID)に基づいて、その受信端末11aが送信相手であるかどうかを判断する。そして、その受信端末11aが送信相手であると確認された場合には、送信端末11bは送信状態T12に直ちに移行し、送信信号P12を受信端末11aに送信する。
【0074】
一方、受信端末11aは、間欠送信信号P11を送信すると、受信状態R11に直ちに移行し、送信端末11bから送信された送信信号P12を受信することができる。
ここまでは図4と同様である。
【0075】
ここで、本例では、送信端末11bにおいて、送信事象J11発生に応じた受信待ち状態R12の間に、更に、受信端末11cに対する送信事象J12が発生している。
この場合、送信端末11bは、受信端末11aに送信信号P12を送信した後も、受信待ち状態R12を継続させる。そして、受信端末11c側において送信状態T11に移行すると、図示の間欠送信信号P13が送信され、受信待ち状態R12となっている送信端末11bにて間欠送信信号P13が受信される。尚、この例の場合、一定時間TWは、送信事象J12発生時を基準にしてもよい。
【0076】
そして、受信待ち状態R12となっている送信端末11bにて間欠送信信号P13が受信されると、送信端末11bは、間欠送信信号P13に含まれる受信端末11cに固有なコードに基づいて、受信端末11cが送信相手であるかどうかを判断する。そして、受信端末11cが送信相手であると確認された場合には、送信端末11bは送信状態T13に直ちに移行し、送信信号P14を受信端末11cに送信する。
【0077】
尚、送信状態T13は、送信状態T12と略同様である(送信するデータと送信相手が異なるだけである)。
一方、受信端末11cは、間欠送信信号P13を送信すると、受信状態R11に直ちに移行し、送信端末11bから送信された送信信号P14を受信することができる。
【0078】
これにより、複数の受信端末11a、11cを対象とした送信事象J11、J12が連続して発生した場合においても、それらの複数の受信端末11a、11cについての送信処理を継続して行うことができ、受信端末11a、11cが間欠的に動作状態を繰り返している場合においても、複数の受信端末11a、11cを対象としたデータ通信を効率よく行うことができる。
【0079】
なお、第1送信状態制御部32a、第1受信状態制御部33a、第2送信状態制御部32bおよび第2受信状態制御部33bは、これらの各制御部で行われる処理を遂行させる命令が記述されたプログラムをコンピュータに実行させることにより実現することができる。
【0080】
そして、このプログラムをCD−ROMなどの記憶媒体に記憶しておけば、受信端末11aおよび送信端末11bに搭載されたコンピュータに記憶媒体を装着し、そのプログラムをコンピュータにインストールすることにより、第1送信状態制御部32a、第1受信状態制御部33a、第2送信状態制御部32bおよび第2受信状態制御部33bで行われる処理を実現することができる。また、このプログラムを通信ネットワークを介して受信端末11aおよび送信端末11bに搭載されたコンピュータにダウンロードすることにより、このプログラムを受信端末11aおよび送信端末11bにインストールするようにしてもよい。
【0081】
図7は、本発明の第2実施形態に係る無線端末の概略構成を示すブロック図である。
既に述べた通り、一般的に、無線機は、送信側、受信側のどちらにもなり得るので、図1に示す受信端末11a、送信端末11bの両方の機能を備えていることになる。これより、図7に示す無線端末111a、111bは、受信端末11a、送信端末11bの両方の機能を有している。また、これより、当然、無線端末111a、111bの構成は同じである(符号は変えているが、実質、同じものである)。
【0082】
よって、無線端末111a、111bというように区別することなく、無線端末111と呼んでも良い。これは、これら無線端末111内の各構成要素についても同様であり、例えば制御部112a,112bというように区別することなく、制御部112と呼んでも良い。これは他の構成要素についても同様である。但し、説明の都合上、区別して記す場合もある。
【0083】
そして、以下の説明においては、無線端末111a、111bが受信端末11aとして動作する場合には受信側の無線端末111a、111b等といい、送信端末11bとして動作する場合には送信側の無線端末111a、111b等というものとする。また、無線端末111a、111bの何れか一方が受信側の場合には、他方は送信側であるものとして説明するものとする。
【0084】
同様に、後述する無線端末111cも、無線端末111a等と同じ構成である。
尚、以下に図7について説明するが、上述したことから、この説明は基本的には単に既に説明した受信端末11a、送信端末11bの両方の機能をまとめたものである。
【0085】
図7において、無線端末111a、111bには、データを無線にて送信する無線送信回路113a、113b、無線で送信されたデータを受信する無線受信回路114a、114b、データの送受信の制御を行う制御部112a、112b、データの送受信の切り替えを行う切り替え部115a、115b、データを電波として空間に送出したり受信したりするアンテナ116a、116b、無線送信回路113a、113b、無線受信回路114a、114bおよび制御部112a、112bの電源をそれぞれ供給する電池117a、117b、上位装置とデータのやり取りを行うインターフェース118a、118b、無線送信回路113a、113bの電源をそれぞれオン/オフするスイッチ119a、119b、無線受信回路114a、114bの電源をそれぞれオン/オフするスイッチ120a、120bがそれぞれ設けられている。また、制御部112a、112bには不図示のタイマが設けられ、制御部112a、112b自体の消費電力を最低に維持するスリープ状態となり、一定時間後に動作状態に移行することができる。
【0086】
ここで、制御部112a、112bには、無線送信回路113a、113bまたは無線受信回路114a、114bを間欠的に動作状態にそれぞれ移行させる動作状態制御部131a、131bがそれぞれ設けられ、動作状態制御部131a、131bには、第1送信状態制御部132a、132b、第1受信状態制御部133a、133b、第2送信状態制御部134a、134bおよび第2受信状態制御部135a、135bがそれぞれ設けられている。
【0087】
そして、第1送信状態制御部132a、132bは、受信側の無線端末111a、111bの動作状態において、受信側の無線端末111a、111bが動作状態にあることを送信側の無線端末111a、111bに知らせるための送信状態T11にそれぞれ移行させることができる。また、第1受信状態制御部133a、133bは、受信側の無線端末111a、111bが動作状態にあることを送信側の無線端末111a、111bにそれぞれ知らせるための送信状態T11に引き続いて、送信側の無線端末111a、111bから送信されたデータを受信するための受信状態R11にそれぞれ移行させることができる。
【0088】
さらに、第2受信状態制御部135a、135bは、送信事象J11の発生を契機として、受信側の無線端末111a、111bが動作状態にあるということを送信側の無線端末111a、111bが知るための受信待ち状態R12にそれぞれ移行させる。また、第2送信状態制御部134a、134bは、受信待ち状態R12において受信側の無線端末111a、111bが送信相手であることを示すデータ(上記ID等)を送信側の無線端末111a、111bがそれぞれ受信した場合、動作状態にある受信側の無線端末111a、111bにデータを送信するための送信状態T12にそれぞれ移行させる。
【0089】
そして、動作状態制御部131a、131bは、受信側の無線端末111a、111bにおいて、送信状態T11とそれに続く受信状態R11を間欠的にそれぞれ繰り返すことができる。
【0090】
図8は、図7の無線端末の間欠通信方法を示すタイミング図である。
図8において、無線端末111bは、複数の無線端末111a、111cと通信を行うものとする。なお、無線端末111cは、図7の無線端末111a、111bと同様の構成をとることができる。
【0091】
そして、各無線端末111a〜111cでは、送信状態T11とそれに続く受信状態R11がスリープ状態(上記スリープ期間TS等)を挟みながら間欠的に繰り返されている。また、無線端末111a〜111cでは、任意の他の無線端末に対する任意の送信事象が発生すると、一定時間(上記TW等)だけ受信待ち状態R12に移行する。そして、既に述べている通り、受信待ち状態R12中に、当該送信事象に係るデータ送信相手から上記送信状態T11による間欠送信信号P11が送信されてくると、送信状態T12に移行してデータ送信(送信信号P12)を行う。また、本例では、図示の通り、受信待ち状態R12中にスリープ期間TSが終わった場合には、受信待ち状態R12を中断して、送信状態T11及び受信状態R11に移行し、その後再び受信待ち状態R12に戻る。尚、その際、中断前後の受信待ち状態R12の期間を合わせて上記一定時間TWとなるように制御してもよいし、この例に限らなくてもよい。
【0092】
そして、図示の例では、まず、無線端末111aにおいて、無線端末111bに対する送信事象J11が発生するものとし、一定時間だけ受信待ち状態R12に移行する。
そして、無線端末111bでは送信状態T11に移行すると、間欠送信信号P11が送信され、受信待ち状態R12となっている無線端末111aにて間欠送信信号P11が受信される。そして、受信待ち状態R12となっている無線端末111aにて間欠送信信号P11が受信されると、無線端末111aは、間欠送信信号P11に含まれる無線端末111bに固有なコードに基づいて、その無線端末111bが送信相手であるかどうかを判断する。そして、その無線端末111bが送信相手であると確認された場合には、無線端末111aは送信状態T12に直ちに移行し、送信信号P12を無線端末111bに送信することができる。
【0093】
一方、無線端末111bは、間欠送信信号P11を送信すると、受信状態R11に直ちに移行し、無線端末111aから送信された送信信号P12を受信することができる。
また、無線端末111bでは、ここでは図示のタイミングで無線端末111cに対する送信事象J11が発生しており、上記の通り場合によっては送信状態T11とそれに続く受信状態R11を間に割り込ませながら、一定時間だけ受信待ち状態R12に移行する。
【0094】
そして、無線端末111cでは送信状態T11に移行すると、間欠送信信号P13が送信され、受信待ち状態R12となっている無線端末111bにて間欠送信信号P13が受信される。そして、受信待ち状態R12となっている無線端末111bにて間欠送信信号P13が受信されると、無線端末111bは、間欠送信信号P13に含まれる無線端末111cに固有なコードに基づいて、その無線端末111cが送信相手であるかどうかを判断する。そして、その無線端末111cが送信相手であると確認された場合には、無線端末111bは送信状態T12に直ちに移行し、送信信号P14を無線端末111cに送信することができる。
【0095】
一方、無線端末111cは、間欠送信信号P13を送信すると、受信状態R11に直ちに移行し、無線端末111bから送信された送信信号P14を受信することができる。
これにより、受信待ち状態R12中に送信状態T11とそれに続く受信状態R11を同一の無線端末111a〜111cで間欠的に繰り返すことができ、双方向通信における空間のチャンネルの占有時間を低減しつつ、送受信時の低消費電力化を図るとともに、非同期的に通信状態に移行することが可能となる。
【0096】
図9は、本実施形態に係る無線端末の間欠通信方法のさらにその他の例を示すタイミング図である。
図9において、無線端末111a、111bでは、送信状態T11とそれに続く受信状態R11がスリープ状態を挟みながら間欠的に繰り返されている。また、無線端末111bは、無線端末111aに対する送信事象J11が発生すると、送信状態T11とそれに続く受信状態R11を間に割り込ませながら、一定時間だけ受信待ち状態R12に移行する。
【0097】
そして、無線端末111a、111bでは、送信状態T11に移行すると、間欠送信信号P11、P13がそれぞれ送信される。ここで、無線端末111a、111bが送信状態T11に同時に移行した場合、間欠送信信号P11、P13の送信タイミングが一致し、受信待ち状態R12となっている無線端末111bが間欠送信信号P13を受信できなくなる。そして、無線端末111a、111bにおいて送信状態T11に移行するタイミングが一定である場合、間欠送信信号P11、P13の送信タイミングが一旦一致すると、次回以降の間欠送信信号P11、P13の送信タイミングも一致する可能性が高くなる。
【0098】
このため、無線端末111a、111bでは、送信状態T11とそれに続く受信状態R11になる周期を毎回変化させるようにすることができる。例えば、無線端末111aでは、送信状態T11とそれに続く受信状態R11になる周期をTW+αR+TT、無線端末111bでは、送信状態T11とそれに続く受信状態R11になる周期をTW+αB+TTとすることができる。ただし、αR、αBは、各無線端末111a、111bがその都度計算する間欠送信信号P11、P13の送信タイミングに固有の値である。例えば、αR、αBは、各無線端末111a、111bの識別コードと時間経過に関する情報を基準に算出されたランダムな値に設定することができる。
【0099】
そして、無線端末111a、111bでは、送信状態T11とそれに続く受信状態R11になる周期を毎回変化させることで、間欠送信信号P11、P13の送信タイミングが一致した後、無線端末111bが送信状態T11に再度移行する前に、無線端末111aでは送信状態T11に再度移行することができる。そして、無線端末111aが送信状態T11に再度移行すると、間欠送信信号P13が送信され、受信待ち状態R12となっている無線端末111bにて間欠送信信号P13が受信される。そして、受信待ち状態R12となっている無線端末111bにて間欠送信信号P13が受信されると、無線端末111bは、間欠送信信号P13に含まれる無線端末111aに固有なコードに基づいて、その無線端末111aが送信相手であるかどうかを判断する。そして、その無線端末111aが送信相手であると確認された場合には、無線端末111bは送信状態T12に直ちに移行し、送信信号P14を無線端末111aに送信することができる。
【0100】
一方、無線端末111aは、間欠送信信号P13を送信すると、受信状態R11に直ちに移行し、無線端末111bから送信された送信信号P14を受信することができる。これにより、無線端末111a、111b間で周期的に双方向通信を行う場合においても、定周期送信の動作タイミングの衝突を回避することが可能となり、双方向通信における空間のチャンネルの占有時間を低減しつつ、送受信時の低消費電力化を図るとともに、非同期的に通信状態に移行することが可能となる。
【0101】
図10は、図1に示した受信端末11a、送信端末11b、図7に示した無線端末111a、111bを、よりハードウェア的に示す構成図である。
図10に示す無線端末200は、アンテナ201、送受信切替部202、無線送信回路203、無線受信回路204、送信状態制御部205、受信状態制御部206、データ送信制御部207、間欠動作制御部208、ID通知信号判定部209、電源(電池)210、電源ライン211、スイッチ212、スイッチ213とから成る。
【0102】
送信状態制御部205、受信状態制御部206、データ送信制御部207、間欠動作制御部208、及びID通知信号判定部209は、図示のCPU220等が、内臓の又は不図示の外部メモリ等の記憶装置に予め記憶されている所定のアプリケーションプログラムを読み出し・実行することにより実現される各種機能部である。
【0103】
尚、送信状態制御部205、受信状態制御部206、データ送信制御部207、間欠動作制御部208、及びID通知信号判定部209は、これら全体として、図1や図7等に示す制御部12a、12b、111a、111bの機能に相当するものである。よって、制御部12a、12b、111a、111bの機能も、図示のCPU220等が、内臓の又は不図示の外部メモリ等の記憶装置に予め記憶されている所定のアプリケーションプログラムを読み出し・実行することにより実現されるものであるとも言える。
【0104】
よって、当然、上述した動作状態制御部31a,31b,131a、131bや、各送信状態制御部32a、32b、132a,132b,133a,133bや、各受信状態制御部33a、33b、134a,134b,135a,135bの機能も、図示のCPU220等が、内臓の又は不図示の外部メモリ等の記憶装置に予め記憶されている所定のアプリケーションプログラムを読み出し・実行することにより実現されるものであるとも言える。
【0105】
また、更に、後述する図15、図19、図22、図23に示すフローチャート図の処理も、図示のCPU220等が、内臓の又は不図示の外部メモリ等の記憶装置に予め記憶されている所定のアプリケーションプログラムを読み出し・実行することにより実現されるものであるとも言える。また、上記記憶装置には、図30(a),(b)や図17(a)に示す構成情報等、上述した処理や図15、図19に示す処理に必要な各種データ等も記憶されている。
【0106】
アンテナ201は上記アンテナ16a等に相当し、送受信切替部202は上記切り替え部15a等に相当し、無線送信回路203は上記無線送信回路13a等に相当し、無線受信回路204は上記無線受信回路14a等に相当するので、これらについては特に説明しない。
【0107】
スイッチ212、スイッチ213は、上記スイッチ19a、20a等に相当し、ここではその構成をより明確に示してある。すなわち、スイッチ212、スイッチ213は、図示の通り、電源ライン211上に設けられており、スイッチ212、213をON/OFF制御することで、無線送信回路203、無線受信回路204に対する電源(電池)210からの電力供給がON/OFFされる。
【0108】
スイッチ212、213をON/OFF制御は、それぞれ送信状態制御部205、受信状態制御部206が、間欠動作制御部208による間欠動作制御に基づいて実行する。
間欠動作制御部208は、上記各期間(TT、TR、TS、TW)を管理して、送信状態制御部205、受信状態制御部206に対してスイッチON/OFFの指示を出す。つまり、間欠動作制御部208及び送信状態制御部205、受信状態制御部206によって、無線送信回路203、無線受信回路204への電源供給がON/OFF制御される。換言すれば、間欠動作制御部208及び送信状態制御部205、受信状態制御部206は、上述した各送信状態制御部32a、32b、132a,132b,133a,133bや、各受信状態制御部33a、33b、134a,134b,135a,135bに相当する機能部である。
【0109】
上記間欠動作制御部208等によって無線受信回路204が動作状態になると、他の無線端末からの無線送信信号が無線受信回路204によって受信可能となり、無線受信回路204によって受信された受信データは、ID通知信号判定部209に入力され、あるいは不図示の上位装置等に伝送される。
【0110】
ID通知信号判定部209は、無線受信回路14aによって受信した信号に含まれる上記IDを取り出して、当該信号の送信元がパケットデータの送信相手であるか否かを判定して、判定結果をデータ送信制御部207に渡す。
【0111】
上記間欠動作制御部208等によって無線送信回路203が動作状態になることで無線によるデータ送信が可能になると、データ送信制御部207は、上記間欠送信信号P11,P13や応答信号P15や送信信号P12,P14等を無線送信させる。尚、送信信号P12,P14等は、上記ID通知信号判定部209から渡される判定結果に基づいて、送信すべきか否かを判定する。
【0112】
上記の通り図10に示す何れの機能部の処理も、既に説明してある処理であり、ここでは、スイッチON/OFF制御に関すること、及び上述した各種処理がCPUで実行されることを明確にする為に、図示の構成図を示して説明している。
【0113】
図11は、本実施形態に係る無線端末の動作方法を示す状態遷移図である。
図11において、図7の無線端末111a、111bは定期的にスリープ状態に入る(K11)。なお、スリープ状態とは、無線送信回路113a、113bおよび無線受信回路114a、114bの電源をオフするとともに、制御部112a、112b自体も起動用のタイマのみが動作している状態を示す。
【0114】
そして、無線端末111a、111bがスリープ状態にある時に、タイマがタイムアップすると、送信状態T11に遷移する(K12)。そして、送信状態T11において送信処理が終了すると、送信状態T11に続く受信状態R11に遷移し、受信待ちとなる(K13)。そして、受信状態R11において受信待ちがタイムアップすると、スリープ状態に戻る。一方、受信状態R11において受信が行われると、受信処理を行い(K14)、受信したデータが無効な場合はスリープ状態に戻る。一方、受信状態R11において受信したデータが自分宛の情報である場合には、そのデータを処理した後(K15)、スリープ状態に戻る。
【0115】
一方、無線端末111a、111bがスリープ状態にある時に、送信事象が発生すると(K16)、送信先候補を選択した後に、受信待ち状態R12に遷移する(K17)。そして、受信待ち状態R12においては、送信事象が発生するごとに、送信先候補を選択する。
【0116】
また、受信待ち状態R12において、タイマがタイムアップすると、送信状態T11に遷移し(K18)、送信処理が終了すると、受信待ち状態R12に戻る。
また、受信待ち状態R12において受信が行われると、受信処理を行い(K19)、受信したデータが無効な場合は受信待ち状態R12に戻る。一方、受信処理において受信されたデータが自分宛の情報である場合には、そのデータを処理した後(K20)、受信待ち状態R12に戻る。
【0117】
また、受信処理において受信されたデータが無線端末111a、111bの動作状態を知らせるためのものである場合、そのデータに含まれる無線端末111a、111bに固有のコードに基づいて無線端末111a、111bが送信相手であるかどうかを判断する(K21)。そして、その無線端末111a、111bが送信相手でないと確認された場合には、受信待ち状態R12に戻る。一方、その無線端末111a、111bが送信相手でないと確認された場合には、無線端末111a、111bは送信状態T12に直ちに移行し、データ送信を行う(K22)。そして、送信情報が残っている場合には、受信待ち状態R12に戻り、全ての送信処理が終了した場合には、スリープ状態に戻る。
【0118】
ここで、特許文献1等に示される無線通信ネットワークシステムにおいて、各無線端末が、上記無線端末111a、111bの構成・動作を備える場合、まず、各無線端末は、通常時(送信事象J11が発生していないとき)には、間欠的に受信側の動作状態を繰返している。そして、任意の送信事象J11が発生した無線端末(パケット送信元の無線端末だけでなく、このパケットの中継を依頼された無線端末(中継無線端末)全て)は、一定時間TWの受信待ち状態R12となるが、上記の通り、間欠送信信号P11を受信してパケットをデータ送信(送信信号P12を送信)したならば、一定時間TW経過する前であっても受信待ち状態R12を終了してよい。特許文献1等に示される無線通信ネットワークシステムでは、各無線端末の周辺には多くの無線端末が存在する場合が多いので、早期にパケットデータを送信できる可能性が高く、これによって早期に受信待ち状態R12を終了できれば、その分、電池消耗を抑えることができる。
【0119】
すなわち、特許文献1等に示される無線通信ネットワークシステムにおいて、各無線端末が、上記無線端末111a、111bの構成・動作を備える場合、任意の送信事象J11の発生に伴って特定のデータ相手先が決められるものではない。特許文献1等に示される無線通信ネットワークシステムでは、任意の送信事象J11の発生に伴ってパケットの着信先(最終着信先;最終宛先)は指定されるが、このパケットの中継先(自端末の通信相手)は、例えば上述した図30等に示す構成情報を参照する等して決定する。換言すれば、所定の条件を満たす無線端末(特許文献1等に記載の通り、基本的には特許文献1記載の“前向き隣接無線端末”であるが、これに限らない(詳しくは後述する))が、パケットデータ送信相手となる。
【0120】
これを無線端末111a、111bの動作に適用すると、所定の条件が満たされる無線端末のなかで最初に間欠送信信号P11を送信してきた無線端末を、パケットデータ送信相手としてパケット送信(上記送信信号P12等の送信に相当)してよいことになる。これより、上記の通り、早期に受信待ち状態R12を終了できる可能性が高くなる。
【0121】
例えば、図12(a)、(b)に、本例の無線端末間の通信動作の一例を示す。
図12(a)には任意の無線端末が通信可能な他の無線端末が1台のみである場合、図12(b)には任意の無線端末が通信可能な他の無線端末が多数台である場合の動作例を示す。図示の通り、図12(b)の方が図12(a)よりもずっと早く、送信信号P12を送信して、受信待ち状態R12を終了できている。
【0122】
図12(a)(b)の例が極端であるにしても、確率的に、多くの無線端末と通信可能である方が早期に受信待ち状態R12を終了できる可能性が高いことは明らかである。すなわち、図12(b)に示す例では、最初に受信した間欠送信信号P11の送信元が上記所定の条件を満たす場合を例にしたが、もしこれが条件を満たさなくても、次の間欠送信信号P11の送信元、あるいは更にその次の間欠送信信号P11の送信元が、所定の条件を満たすものであれば、その時点でパケットデータ(P12)を送信して、受信待ち状態R12を終了できる。
【0123】
また、特許文献1等記載の技術では、パケットデータ送信相手は、自端末が直接通信可能であるとする無線端末(構成情報における通信回数が1回)のなかから決定されることになるが、当該“自端末が直接通信可能であるとする無線端末”は基本的に安定的に通信可能なものが選ばれているので、他の無線端末とは全く通信できないというわけではない。
【0124】
すなわち、従来技術で説明したように、特許文献1等に示される無線通信ネットワークシステムでは、通信路の信頼性の診断結果に基づいて、信頼性の高い通信相手(上記無線端末Aの例では、無線端末B,C,D)とのみ通信を行っていたが、これら以外の無線端末であっても、その無線端末からの間欠送信信号P11を受信できたならば、少なくともこのときには当該無線端末との通信が可能であることになる。
【0125】
これにより、例えば図13に示すようなパケット転送経路によるパケット伝送が可能となる場合もあり得る。
図13には、パケット送信元が無線端末A、着信先が無線端末Jである場合を例にしている。この場合、特許文献1等に記載の手法では、例えば、無線端末A→C→E→G→Jの順にパケットが中継されることで、パケットが無線端末Jに到達することになる。つまり、通信回数4回(中継回数3回)必要となる。(尚、図30や後述する図17等に示す構成情報における“通信回数”は、“中継回数”に置き換えることができる。この場合、中継回数=通信回数−1となる。よって、例えば通信回数2回のものは中継回数1回となる。)
これに対して、あるとき、周囲の通信環境が良好等の理由により、無線端末AとE、及び無線端末EとJとが通信可能であったものとする。この場合、送信側の無線端末Aは、上記受信待ち状態R12の状態で、受信側の無線端末Eからの間欠送信信号P11を受信することができ、これにより、現在、無線端末Eと通信可能であることが分かり、図13において図上点線→で示すように、無線端末Eへデータパケットを送信する。
【0126】
同様に、このデータパケットを受信した無線端末Eは、送信側の無線端末として、上記受信待ち状態R12の状態となり、受信側の無線端末Jからの間欠送信信号P11を受信すると、このデータパケットを無線端末Jへ送信する(パケットを中継する)ことになる。この場合、通信回数2回(中継回数1回)で済むことになり、パケットの伝送効率が向上すると共に、無線端末CとGがパケット中継動作を行わなくて済み、両端末の電池消耗を抑えることができる。
【0127】
しかしながら、単純に、受信待ち状態R12になってから最初に受信した間欠送信信号P11の送信元の無線端末へパケットを送信するようにした場合、例えば着信先(最終目的地)と反対方向の無線端末へ中継したりすると、かえってパケット中継効率が悪くなり(転送経路が遠回りになる)、全体としての消費電力が多くなる(そこまでいかなくても省電力効果が少なくなる)場合もあり得る。
【0128】
例えば、図13において、パケット送信元が無線端末C、着信先が無線端末Jである場合であって、無線端末Cが受信待ち状態R12になってから最初に受信した間欠送信信号P11の送信元が、無線端末Aであった場合、無線端末Aにパケットを送信して中継してもらうと、パケットの転送経路が遠回りなものとなってしまう。つまり、パケット中継効率が悪くなる。また、パケットの転送経路が遠回りとなることで、パケット中継を行う無線端末の数が増えることになるので、全体としての消費電力が増えることになり得る。
【0129】
以上述べたことから、各無線端末は、図1、図7等で説明した基本動作を行うだけでなく、以下に説明するように、例えば上述した特許文献1等における構成情報を用いて、図15に示す処理を実行する。
【0130】
尚、上記図1、図7等で説明した基本動作は、図14に示す変形例も可能であるので、図15に示す処理は、図14に示す変形例を前提としたものとするが、この例に限らない。
【0131】
図14に示す変形例では、受信待ち状態R12になっている任意の送信側無線端末が、任意の受信側無線端末からの間欠送信信号P11を受信すると、この間欠送信信号P11の送信元の無線端末に対して、まず受信時間延長要求を送信し、その後に送信すべきデータのパケット(上記送信信号P12に相当)を送信する。上述した基本動作では、受信状態R11となる期間TRは一定であるが、本例では、受信時間延長要求を受信すると、期間TRを延長する。どの程度延長するかは、予め任意に決めて設定しておく。
【0132】
上述した基本動作では、間欠送信信号P11を受信すると直ちに送信信号P12を送信していたが、送信信号P12のデータを準備するのに時間が掛かる場合もあり得る。この為、本例では、上記の通り、まず受信時間延長要求を送信し、受信状態R11の期間を延ばすようにしている。
【0133】
以下、図15のフローチャート図を参照して、本例の無線通信ネットワークシステムの無線端末の動作について説明する。また、上記の通り、無線通信ネットワークシステム例は、図29を参照するものとする。
【0134】
まず、任意の送信事象J11(ここでは、無線端末X宛のパケットデータの送信又は中継の要求;尚、XはA〜Jの何れか)が発生した無線端末(以下、パケットデータ送信側無線端末と呼ぶ)は、まず、上記受信待ち状態R12に移行し、他の無線端末からの間欠送信信号P11受信待ち状態となる(ステップS11)。尚、間欠送信信号P11には当該信号P11の送信元の無線端末のID(識別符号)が含まれており、ステップS11は識別符号(ID)受信待ちの状態であるとも言える。
【0135】
尚、無線端末Xは、特許文献1等に記載の「最終着信先の無線端末」に相当する。従って、無線端末Xと直接通信可能な場合を除いて、通信相手(パケットの送信先)は無線端末X以外の無線端末となり、この無線端末が新たなパケットデータ送信側無線端末となってパケットデータを中継・送信することになる。尚、最終着信先を単に着信先と呼ぶ場合もあるものとする。
【0136】
そして、任意の無線端末(以下、パケットデータ受信側無線端末又は無線端末Yと呼ぶ;尚、YはA〜Jの何れか)が送信した送信信号P11を受信すると、上記IDによって、送信元無線端末YがA〜Jの何れであるかを認識する。そして、構成情報を参照して、無線端末Xへの前向き隣接局と無線端末Yへの前向き隣接局とを求めて、両者に共通の隣接局があるか否かを判定する(ステップS12)。尚、「前向き隣接局」に関しては、特許文献1に開示されているし、後に簡単に説明してあるので、ここでの説明は省略する。また、「隣接局」と「隣接無線端末」とは同義である。
【0137】
また、尚、既に述べた通り、無線端末Yは、パケットデータ送信側無線端末の隣接無線端末のみとは限らない。上記の通り、隣接無線端末以外の無線端末(非隣接無線端末)が送信した間欠送信信号P11を受信する場合もあり得るからである。
【0138】
例えば、図30(a),(b)に示す構成情報を例にすると、パケットデータ送信側無線端末が無線端末Aであり、無線端末Xが無線端末Jであり、無線端末Yが無線端末Eであった場合、無線端末Aにとって、無線端末Jに対する前向き隣接局は無線端末B,C,Dであり、無線端末Eに対する前向き隣接局は無線端末B,Cである。よって、この場合、両者に共通の隣接局がある(無線端末B,Cが共通)ことになるので、ステップS12の判定はYESとなる。
【0139】
尚、無線端末Yが隣接局である場合には、無線端末Y自体を当該無線端末Yへの前向き隣接局と見做して、ステップS12の判定を行う。よって、上記の例において無線端末Yが無線端末B又はC又はDである場合には、ステップS12の判定はYESとなる。
【0140】
尚、ステップS12の処理と後述するステップS25の処理は、“パケットデータ転送経路が少なくとも遠回りにならないようにする”という目的の為の処理であるという点で似ている。よって、ステップS12の判定がYESになる場合には、後述するステップS25の判定がNOとなる(ACK(肯定応答)送信となる)可能性が高いのであるが、100%ではない。つまり、ステップS12の判定がYESであってもステップS12の判定がYES(NACK(否定応答)送信)になる場合もあり得る。しかし、もし、ステップS12の判定を行わないと、送信信号P11を受信する毎にステップS13の受信延長要求送信処理を行うことになり、通信回数が多くなる可能性があるので、ステップS12の処理を行っている。
【0141】
但し、ステップS12の処理と後述するステップS25に係わる処理の何れか一方のみを行うようにしてもよい。尚、後述するステップS25に係る処理は、後述するように、送信側で行う形態とすることも可能である。
【0142】
共通の隣接局が無い場合には(ステップS12、NO)、ステップS11に戻り、再び、他の無線端末からの間欠送信信号P11受信待ち状態となる。一方、共通の隣接局がある場合には(ステップS12、YES)、上記送信信号P11の送信元の無線端末Yに対して上記受信時間延長要求を送信する(ステップS13)。この受信時間延長要求には、自端末のID、無線端末XのID等の他に、自端末から無線端末Xまでのホップ数を付加する。上記の例では、無線端末Aから無線端末Jまでのホップ数(構成情報に示す“通信回数”)は‘4’であることが分かる。尚、“通信回数”を“中継回数”に置き換えてもよい。つまり、上記ホップ数は“中継回数”を意味するものとしてもよい。「“中継回数”=“通信回数”−1」の関係であり、どちらであっても本例の処理には特に影響しない。尚、その意味で、構成情報においても、“通信回数”ではなく“中継回数”を用いるようにしてもよい。
【0143】
一方、上記パケットデータ受信側無線端末(無線端末Y)は、間欠的に(上記TS間隔)、ステップS21のスリープ状態から動作状態に以降して、上述した間欠送信信号P11(上記自己のIDも含む)を送信し(ステップS22)、続いて受信状態R11に移行する(ステップS23)。そして、ステップS23の受信待ち状態で上記ステップS13で送信された受信時間延長要求を受信すると(ステップS24、YES)、自端末が保持する構成情報を参照して、自端末から無線端末Xまでのホップ数を求める。
【0144】
後に図17(a)に示す無線端末Eの構成情報例では(当然、無線端末Eは少なくとも自己の構成情報は保持している)、無線端末Eから無線端末Xまでのホップ数は‘2’であることが分かる。
【0145】
そして、このホップ数を上記受信時間延長要求に付加されているホップ数と比較して、自己のホップ数の方が大きい場合には(ステップS25,YES)パケットデータ送信側無線端末に対してNACK(否定応答)を送信し(ステップS27)、自己のホップ数の方が小さいか又は同一の場合には(ステップS25,NO)パケットデータ送信側無線端末に対してACK(肯定応答)を送信する(ステップS26)。そして、受信状態R11の時間延長して受信待ち状態を続行する(ステップS28)。尚、上記の例では、‘2’<‘4’であるので、ACKが返信されることになる。
【0146】
パケットデータ送信側無線端末は、上記ステップS26,S27の何れかの応答を受信すると(ステップS14)、この応答内容がACKであるか否かを判定し(ステップS15)、ACKではない場合(つまり、NACKの場合)には(ステップS15,NO)、ステップS11に戻り、次の(他の無線端末からの)間欠送信信号P11を受信するまで待つ。
【0147】
一方、ACKを受信した場合には(ステップS15,YES)、パケットデータを送信する(ステップS16)。無線端末Yは、このパケットデータの受信処理を行う(ステップS29)。
【0148】
尚、送信側無線端末は、所定時間内に応答が無かった場合にはNACK受信時と同じ動作を行うようにしてもよい。
また、尚、ステップS13の受信延長要求送信を行わない形態であってもよい。この形態では、ステップS13の処理の代わりにステップS16のパケットデータ送信処理(但し、上記ホップ数等を付加する)を行うようにしてもよい。この場合、受信側の無線端末は、ステップS25の判定がYESとなった場合には、NACKを返信すると共に受信したパケットデータを破棄する(中継等は行わない)。送信側は、当然、NACKが返信されたらステップS11に戻る。但し、この形態では、特にパケットデータ量が多い場合には(更にNACKが返信される確率が低くは無い場合には)、通信処理負荷が増大するので、受信延長要求送信を行う形態の方が望ましい。
【0149】
図16(a)、(b)に、上記図15の処理による送信側−受信側間の通信シーケンスを示す。図16(a)には応答がACKであった場合、図16(b)には応答がNACKであった場合を示す。
【0150】
図16(a)に示す通り、応答がACKであった場合には、受信待ち状態R12を解除して、パケットデータ送信処理を行い、発生した送信事象J11に係るデータ送信処理は終了する。一方、図16(b)に示す通り、応答がNACKであった場合には、受信待ち状態R12を続行することになる。
【0151】
尚、図16(a)、(b)には、図5等に示したような各無線端末の詳細な送信状態、受信状態は示さないが、当然、図示の各送受信動作に必要な状態となっている。これは上記図12、図14についても同様である。例えば、図16(a)、(b)において、受信側の無線端末は、図では受信状態R11のみ示すが、これは受信時間が延長されるイメージを示しているだけであり、実際には例えば図5と同様にして送信状態T11で信号P11を送信した後は受信状態R11で受信時間延長要求を受信し、続いて送信状態T13でACK/NACK応答を送信し、ACK応答送信した場合には更に(図5には無いが)再び受信状態R11になって送信されてくるデータを受信することになる。
【0152】
送信側の無線端末においても、同様に、受信状態R12で信号P11を受信したら、送信状態T12になって受信時間延長要求を送信し、続いて受信状態R13になりACK/NACK応答を受信し、ACK応答受信した場合には更に(図5には無いが)再び送信状態になってデータ送信することになる。
【0153】
上述した図15の処理では、受信側(無線端末Y)がホップ数の比較判定処理を行う必要がある為、送信側無線端末はたとえステップS25の判定がYESとなる場合であっても受信時間延長要求を送信しなければならず、エネルギーの無駄となる。
【0154】
そこで、図15の処理の変形例として、特に図示しないが、受信側(無線端末Y)は図13のステップS25,S26,S27の処理は実行せず、送信側無線端末がステップS13の処理の前にステップS25の処理を実行するものとする。この場合、送信側無線端末に関するホップ数が、受信側(無線端末Y)に関するホップ数よりも大きければ(ステップS25,YES)、無線端末Yにデータを渡してよいことになるので、ステップS13の処理に移行して、受信時間延長要求を送信する(当然、ホップ数は付加しない)。その後、ステップS14、S15の処理は行わずに、直ちにステップS16の処理へ移る。
【0155】
無線端末Yは、受信時間延長要求を受信すると(ステップS24、YES)、上記の通りステップS25〜S27の処理を行うことなく、直ちに受信時間を延長して受信待ち状態を継続する(ステップS28)。そして、送信側がステップS16の処理によりパケットデータを送信してきたら、その受信処理を行う(ステップS29)。
【0156】
上述した変形例の処理では、送信側無線端末(ここでの例では無線端末A)においてステップS25の「ホップ数の比較判定処理」を行うので、無駄に受信時間延長要求を送信することなく、以って電力消費を抑えられる。但し、送信側でステップS25の処理を行う為には、受信側(無線端末Y)の構成情報が必要となる。特許文献1等においても隣接無線端末の構成情報は取得して記憶しているので、例えばY=B,C,D等であれば、上記図30(b)に示す構成情報を参照することで、例えば無線端末Bから無線端末Jまでのホップ数は‘3’であること等が分かる。
【0157】
しかし、上記の通り、本例では、受信側(無線端末Y)は隣接無線端末とは限らず、例えば無線端末Eからの間欠送信信号P11を受信する場合もあり得る。これより、上記変形例においては、各無線端末が記憶する構成情報は、自己の構成情報、及び隣接無線端末の構成情報に限らず、更に、隣接無線端末以外の他の無線端末の構成情報も含まれる。但し、他の全ての無線端末の構成情報を記憶するわけではなく、過去に任意の他の無線端末(隣接無線端末は除く)と通信可能となったときに、この無線端末が保持している構成情報を取得して記憶しておくものである。
【0158】
尚、特許文献1等の発明においては、隣接無線端末からの構成情報を受信すると、自己の構成情報と照らし合わせて、必要に応じて自己の構成情報を更新していた。また、隣接無線端末以外の他の無線端末からの構成情報を受信した場合には、構成情報を受信した旨の履歴のみを保存して通信路の判定に使用していた。これに対して、本変形例では、上記の通り、隣接無線端末以外の他の無線端末の構成情報も記憶しておく。尚、隣接無線端末とは、構成情報における“通信回数”が1回の無線端末であり、無線端末Aの場合、無線端末B,C,Dが隣接無線端末ということになる。
【0159】
以上述べたことから、本変形例で用いる構成情報の一例を図17(a)に示す。
図17(a)に示す例では、無線端末Aに関して、隣接無線端末B,C,D以外にも、無線端末E,Fと通信可能なときがあったものとし、そのときに無線端末E,Fの構成情報を取得して記憶している。
【0160】
尚、図17(a)に示す構成情報を理解し易くする為に、図17(b)にネットワーク構成例を示しておく。
次に、以下、本例の他の実施形態について説明する。
【0161】
ここで、上記特許文献1の発明では、上記隣接無線端末を、前向き隣接無線端末、後向き隣接無線端末、横向き隣接無線端末の3種類に分類していた。これらについては、特許文献1に詳しく説明されているので、以下、簡単に説明する。
【0162】
任意の送信側無線端末についての隣接無線端末の中で、最終着信先の無線端末へ通信パケットを転送する場合に要する通信回数が、当該送信側無線端末よりも多く要する隣接無線端末を、送信側無線端末における最終着信先の無線端末についての後向き隣接無線端末という。
【0163】
その逆に、上記任意の送信側無線端末についての隣接無線端末の中で、最終着信先の無線端末へ通信パケットを転送する場合に要する通信回数が、当該送信側無線端末よりも少なくて済む隣接無線端末を、送信側無線端末における最終着信先の無線端末についての前向き隣接無線端末という。
【0164】
また、上記任意の送信側無線端末についての隣接無線端末の中で、最終着信先の無線端末へ通信パケットを転送する場合に要する通信回数が、当該送信側無線端末で要する通信回数と同数である隣接無線端末を、横向き隣接無線端末という。
【0165】
例えば、上記任意の送信側無線端末が無線端末Cであるとした場合、上記図17(a)の構成情報は、無線端末Cが保持する構成情報(自端末及び隣接無線端末の構成情報)と見做すこともできるので、これを例にして説明する。また、最終着信先の無線端末は無線端末Jであるものとする。
【0166】
この例の場合、まず、無線端末Cの隣接無線端末(通信回数1回)は、図17(a)に示す通り、無線端末A,B,D,E,Fの5台である。そして、無線端末Cから無線端末Jまでのパケット転送に要する通信回数は、3回であることが分かる。同様に、無線端末A,B,D,E,Fから無線端末Jまでのパケット転送に要する通信回数も、図17(a)の構成情報を参照すれば分かる。
【0167】
これより、隣接無線端末A,B,D,E,Fのうち、前向き隣接無線端末は無線端末E,Fであり(通信回数;2回)、横向き隣接無線端末は無線端末B,Dであり(通信回数;3回)、後向き隣接無線端末は無線端末A(通信回数;4回)であることが判別できる。
【0168】
そして、本例では、上記の通り、通信相手は隣接無線端末に限らないので、隣接無線端末以外で通信可能な無線端末を「非隣接無線端末」と呼ぶものとすると、任意の送信側無線端末の通信相手は、非隣接無線端末、前向き隣接無線端末、後向き隣接無線端末、横向き隣接無線端末の4種類に分類できる。
【0169】
そして、図15のフローチャート図の処理では、上記の通り最終着信先の無線端末へパケットが届くまでの通信回数(中継回数)が増えてしまわないようにする為に、少なくとも後向き隣接無線端末からの間欠送信信号P11を受信しても、パケットデータを送信しないようにしている。しかしながら、これでは、もし何等かの理由で(一時的な通信路遮断等)、非隣接無線端末や前向き隣接無線端末等からの間欠送信信号P11を受信しない状況であったならば、パケットデータを送信できないことになってしまう(一定時間TW経過するまでにパケットデータを送信できない場合には、タイムアウトでデータは破棄される)。
【0170】
そこで、パケットデータ送信に関して、非隣接無線端末や前向き隣接無線端末を優先するが、後向き隣接無線端末等であってもパケットデータを送信する場合がある(当然、優先度は低くするが)ように制御することが、他の実施の形態の特徴である。
【0171】
その為に、まず、受信待ち状態R12となる最大の時間帯TWを、図18に示すように、時間帯A、時間帯B、時間帯C、時間帯Dに4分割する。分割した各時間帯のうち、時間帯Aが最初の時間帯であり、次が時間帯B、その次が時間帯Cであり、最後の時間帯が時間帯Dである。
【0172】
そして、以下のルールに沿うように処理を実行する(図19の処理を実行する)。
時間帯 ; パケットデータ送信が許される無線端末
時間帯A; 非隣接無線端末のみ
時間帯B; 非隣接無線端末+前向き隣接無線端末
時間帯C; 非隣接無線端末+前向き隣接無線端末+横向き隣接無線端末
時間帯D; 非隣接無線端末+前向き隣接無線端末+横向き隣接無線端末+後向き隣接無線端末
上記ルールでは、例えば時間帯Bにおいてパケットデータ送信が許される無線端末は、非隣接無線端末、前向き隣接無線端末のみということになる。よって、もし、時間帯Bにおいて受信した間欠送信信号P11の送信元が、横向き隣接無線端末や後向き隣接無線端末であったならば、パケットデータ送信は行われない。
【0173】
以下、図19の処理について説明する。尚、図19には、送信側無線端末の処理のみを示すものとし、受信側(無線端末Y)の処理は図15に示す処理と略同様であってよいので、図15の処理を利用して説明するものとする。
【0174】
図19において、任意の送信事象J11(ここでは、無線端末X宛のパケットデータの送信又は中継の要求)が発生した無線端末(送信側無線端末)は、上記ステップS11と同様に、受信待ち状態R12に移行し、他の無線端末からの間欠送信信号P11受信待ち状態となる(ステップS31)。そして、任意の他の無線端末から、その無線端末のIDが含まれている間欠送信信号P11が送られてくると、上述した通り、このIDの無線端末が上記4種類の分類の何れに該当するのかを判別できるので、この判別結果に基づき、ステップS32以降の処理を実行する。
【0175】
まず、非隣接無線端末であった場合には(ステップS32,YES)、上記ルールの通り、時間帯A〜D全てにおいてパケットデータ送信が許可されるので、ステップS39、S40、S41の処理を実行する。尚、ステップS39、S40、S41の処理は、図13に示すステップS13〜S16の処理と略同様である(図では省略してあるが、ステップS15に相当する処理も行われる)。従って、図示していないが、受信側ではステップS25の判定処理等が行われ、もしNACKが返信されてきたならば、ステップS41のパケットデータ送信は行うことなく、ステップS31の処理に戻ることになる。
【0176】
また、図示していないが、ステップS32の判定がYESの場合に更にステップS12の処理を行って、ステップS12の判定がNOならば、ステップS31の処理に戻るようにしてもよい。
【0177】
何れにしても、上記「パケットデータ送信が許可される」場合であっても、更に図15で説明した条件を満たさなければ、パケットデータ送信は行われないことになる。但し、この例に限るものではない。
【0178】
もし、前向き隣接無線端末であった場合には(ステップS33,YES)、上記ルールの通り、時間帯B〜Dにおいてパケットデータ送信が許可されるので、現在が時間帯B〜D内にある場合には(ステップS36,YES)ステップS39以降の処理に移行し、現在が時間帯Aであるならば、ステップS31に戻って、次の間欠送信信号P11受信を待つ。
【0179】
もし、横向き隣接無線端末であった場合には(ステップS34,YES)、上記ルールの通り、時間帯C〜Dにおいてパケットデータ送信が許可されるので、現在が時間帯C〜D内にある場合には(ステップS37,YES)ステップS39以降の処理に移行し、現在が時間帯A又はBであるならば、ステップS31に戻って、次の間欠送信信号P11受信を待つ。
【0180】
もし、後向き隣接無線端末であった場合には(ステップS35,YES)、上記ルールの通り、時間帯Dにおいてのみパケットデータ送信が許可されるので、現在が時間帯D内にある場合には(ステップS38,YES)ステップS39以降の処理に移行し、現在が時間帯A〜C内であるならば、ステップS31に戻って、次の間欠送信信号P11受信を待つ。
【0181】
尚、後向き隣接無線端末である場合、そのままでは当然、ステップS25の判定がYESとなりNACKが返信されてしまうので、ここでは特許文献1に記載の「チェックポイント(経由無線端末)」を用いる手法を適用する。すなわち、チェックポイントはいわばダミーの着信先端末であり、着信先を上記無線端末Xからチェックポイントに変更した受信延長要求を送信することで、ステップS25の判定がNO(ACK返信)となるようにする。
【0182】
また、尚、上記ルールの代わりに、以下の変形例のルールを適用してもよい。
受信側無線端末 : 時間延長要求を送信する確率
非隣接無線端末 : 100%
前向き隣接無線端末 : 90%
横向き隣接無線端末 : 50%
後向き隣接無線端末 : 10%
上記の例では、例えば後向き隣接無線端末に関しては、10回に1回しか時間延長要求を送信しないことになり、後向き隣接無線端末に対してパケットデータが送信される可能性は低いものとなる。一方、例えば、非隣接無線端末や前向き隣接無線端末であれば、10回のうち10回又は9回、時間延長要求を送信することになり、非隣接無線端末や前向き隣接無線端末に対してパケットデータが送信される可能性は高いものとなる。勿論、確率的に低いものとはいえ、後向き隣接無線端末に対してパケットデータが送信される場合がありえるようにしている。
【0183】
各無線端末のメモリ等には、予め、上記4種類の無線端末毎に対応付けた時間延長要求を送信する確率(後述するパケットデータ送信先候補とする確率)が記憶されている。そして、送信側として動作する無線端末において、例えば上記ステップS11により任意の受信側無線端末から送信されたID等を受信すると、まず当該ID送信元が上記4種類の何れであるかを判定し、判定した種類に応じた上記時間延長要求を送信する確率(後述するパケットデータ送信先候補とする確率)を取得する(上記記憶内容を参照することで取得する)。
【0184】
そして、取得した“確率”に基づいて、上記ID等の送信元の受信側無線端末をパケットデータ送信先候補とするか否か(時間延長要求を送信するか否か)を決定する。この決定方法は、既存技術で行えるので、特に説明しないが、例えば確率10%であれば、10個のうちの1個を“当り”として10個のうち1個をランダムに選択するような手法を用いればよい。そして、パケットデータ送信先候補とする(時間延長要求を送信する)と決定した場合には、図15等の例ではステップS13の時間延長要求送信処理を行い、時間延長要求送信を行わない例ではパケットデータを送信することになる。
【0185】
尚、上記100%、90%、50%、10%という数値は、当然、一例を示しただけであり、この例に限るわけではない。上記時間延長要求を送信する確率、すなわち換言すればパケットデータ送信先候補とする確率が、非隣接無線端末>前向き隣接無線端末>横向き隣接無線端末>後向き隣接無線端末という条件を満たせばよく、この条件を満たす限り、確率の数値は任意に決定してよい。
【0186】
あるいは、更に、上記の条件に限るものではないが、少なくとも非隣接無線端末や前向き隣接無線端末は、後向き隣接無線端末よりも、時間延長要求を送信する確率が高くなるように設定することは必要である。
【0187】
尚、上記「パケットデータ送信先“候補”」と言っているのは、時間延長要求を送信しても例えば上記ステップS25の処理によりNACK応答が返信された場合には、パケットデータ送信先とはならないので、あくまでも“候補”となるという意味である。これは、時間延長要求を送信しない例の場合も同様であり、この例では時間延長要求を送信せずにパケットデータを送信するものの、受信側で例えば上記ステップS25の判定がYESならば受信処理は行われないので、意味的にはパケットデータ送信先候補とするものとなる。
【0188】
ところで、ここで、一旦確立した無線通信ネットワークシステムにおいて一部の通信路が何等かの原因で切断されてしまう場合がある。例えば、荷物や人等により通信路が遮断されてしまったり、何等かの原因で通信環境が悪化する等して、その通信路が切断されてしまう場合がある。この様な状況がある程度以上継続すると、上記特許文献1,2等に記載の公知手法により構成情報が更新される。
【0189】
ここで、例えば一例として、図20に示すネットワーク構成の無線通信ネットワークシステムを示す。
図示の無線通信ネットワークシステムは、無線端末A〜無線端末Nまでの14個の無線端末より成り、全ての無線端末は、直接又は他の無線端末によって中継させることで、全ての他の無線端末との通信を行うことができる。この通信/中継は、当然、構成情報に基づいて行うものであり、同図には一例として無線端末Fの構成情報を示してある。図示の通り、無線端末Fの構成情報には、他の全ての無線端末のIDが登録されている。
【0190】
ここで、図20に示すネットワーク構成の無線通信ネットワークシステムにおいて、例えば図21に示すように無線端末F−無線端末H間の通信路が、何等かの原因で切断されたものとする。そして、この状況を反映させるような構成情報の更新処理が行われたとすると、上記無線端末Fの構成情報は図21に示すようになる。
【0191】
尚、図20、図21に示す構成情報は、図30(a)、(b)に示す構成情報のうちの図30(a)に相当する情報のみを示すものであるが、図30(b)に相当する情報も図示していないだけであり存在している。これは、後述する図24、図26に関しても同様である。
【0192】
図示の通り、更新後の無線端末Fの構成情報には、無線端末A〜EのIDのみ登録されており、無線端末G〜Nは登録されないことになる。よって、特許文献1等の従来方式では、無線端末Fは、無線端末F−無線端末H間の通信路が回復してそれが構成情報に反映されるまでは、無線端末G〜Nと通信を行うことはできないことになる。無線端末A〜Eも同様に、無線端末G〜Nと通信を行うことはできない。つまり、無線端末A〜Eのグループ内でのみ通信を行うことができる。
【0193】
これは他方のグループである無線端末G〜Nにおいても同様であり、これら無線端末G〜Nは何れも無線端末A〜Fと通信を行うことができず、無線端末G〜Nのグループ内でのみ通信を行うことができる。
【0194】
つまり、無線通信ネットワークシステムが2つのグループに分断され、各グループ内でしか通信できないことになる。
無線端末F−無線端末H間の通信路が完全に遮断されたままであれば、この状態が続くことになるが、通信路の切断が一時的なものであれば、後に回復してそれが構成情報に反映されると、再び全無線端末A〜N間での通信が可能となる。しかし、たとえ無線端末F−無線端末H間の通信が可能となっても、構成情報に反映されるまでの間は、送信/中継処理上は上記2つのグループに分断された状態が続くことになる。あるいは、基本的には無線端末F−無線端末H間の通信路は切断状態であるが、ときどき一時的に通信可能となることも考えられる。しかし、特許文献1等の従来方式では、この様な場合でも、データ送受信を行うことができなかった。
【0195】
しかしながら、上述した本手法によれば、例えば上記図13で一例を示したように、必ずしも構成情報に従わない通信を行うこともできる。図13で説明したように、構成情報に従えば直接通信できない(通信回数=1ではない)無線端末であっても、その間欠送信信号P11を受信したことを以って、例えば無線端末Aが無線端末Eへ直接データ送信すること等ができるので、同様にして必ずしも構成情報に従うものではない通信制御を行うことが考えられる。
【0196】
しかしながら、上記図13の例では、直接無線通信の相手や宛先の無線端末のIDが構成情報から削除されているわけではないので、上記図15の処理を行うことで実現可能となるが、本例では宛先の無線端末等のIDが構成情報に無いことになるので、宛先までのホップ数が分からず、図15の特にステップS12やS25等の処理を行うことができないことになる。
【0197】
よって、この点を解消する通信制御処理の一例を以下に説明する。
尚、本例の各無線端末は、中継処理を行う点等から、送信端末11b、受信端末11aの両方の機能を備える必要があるので、例えば図7に示す構成を有しており、例えば図8に示す動作を行う。そして、既に図7においても説明した通り、本例の各無線端末は、送信端末11bとして動作する場合は送信側の無線端末、受信端末11aとして動作する場合は受信側の無線端末というものとする。また、以下の説明(特にフローチャートの処理の説明)は、図7に示す制御部112の各種機能部毎の動作を説明するものではなく、制御部112の動作として説明するものとする。
【0198】
尚、必ずしも図8のようにR12を中断してT11,R11の動作を行うようにするものではなく、送信端末側として動作中は受信端末側として動作することはなく、データ送信処理が完了したら、受信端末側として動作するようにしてもよい。
【0199】
図22は本例の送信側の無線端末の処理フローチャート図であり、図23は本例の受信側の無線端末の処理フローチャート図である。
尚、ここでは一例として、無線端末F(その上位装置等)において無線端末Nを宛先とする送信事象J11が発生していたものとし、この具体例も用いて説明するものとする。この具体例では、無線端末Fは送信側の無線端末として動作するので図22の処理を行うことになる。すなわち、まず、上記ステップS11と同様、図2(b)のステップS4,S5に相当する動作を行う。すなわち、上記受信待ち状態R12に移行し、他の無線端末からの間欠送信信号P11(ID通知信号)の受信待ち状態となる。そして、任意の他の無線端末(受信側の無線端末)がステップS61によって送信したID通知信号を受信すると(図22のステップS51)、ステップS52以降の処理を実行することになる。
【0200】
一方、受信側の無線端末は、ここでは図23の処理を行うものであり、上記間欠送信信号P11としてID通知信号を送信している(ステップS61)。このID通知信号には自端末のIDが含まれている。そして、要求パケットの受信待ち状態(上記期間TRの受信状態R11に相当)となり(ステップS62)、この期間TR内に要求パケットを受信しない場合には(ステップS63、NO;タイムアウト)、ステップS61に戻る。一方、要求パケットを受信したら(ステップS63,YES)、ステップS64以降の処理を実行する。
【0201】
ここで、上記“要求パケット”について説明する。
上述した基本動作では、間欠送信信号P11を受信すると直ちに送信信号P12を送信していたが、送信信号P12のデータを準備するのに時間が掛かる場合もあり得る。この為、上記図14、図15で説明した例では、上記の通り、まず受信時間延長要求を送信し、その後にACK応答があったら、パケットデータを送信するようにした。
【0202】
本例でも、基本的にはこれと同様にするが、受信時間延長要求の代わりに上記要求パケットを送信するものである。但し、本例の要求パケットには受信時間延長要求も含まれていてよい。そして、本例の要求パケットには、後述するように、宛先の無線端末のIDや宛先無線端末までのホップ数が含まれる。尚、宛先とは、上記特許文献1等における“着信先”(最終着信先)のことである。
【0203】
尚、一度でも構成情報に登録されたことがある無線端末のID等は、その後に構成情報から削除された場合であっても、別途保持されている。また、不図示の上位装置等は、構成情報の内容に関係なく送信事象を発生させる。例えば無線端末Nに何等かのセンサが接続されており、無線端末Fの上位装置がこのセンサ情報を定期的に取得する処理を行っていた場合、この無線端末Fの上位装置は、構成情報から無線端末Nが削除されていても関係なく、定期的に、無線端末Nに対してセンサ情報を要求する送信事象を発生させることになる。
【0204】
ここで、上記のように無線端末FがID通知信号の受信待ち状態R12となっているときに、例えば偶然、上記図21のように切断状態となっていた無線端末F−H間の通信路が、通信可能な状態となっており、無線端末Fが無線端末Hからの間欠送信信号P11を受信(ID通知信号受信)できたとする(ステップS51でID通知信号受信)。
【0205】
この例の場合、ステップS51でID通知信号受信した無線端末Fは、まず、上記送信事象による宛先の無線端末(ここでは無線端末N)のIDが、構成情報に登録されているか否かを判定する(ステップS52)。この例では図21に示すように無線端末Fの構成情報には無線端末Nは無いので、ステップS52の判定はNOとなり、ステップS54の処理を行うことになる。一方、図20に示す状態のときには、宛先の無線端末Nは無線端末Fの構成情報にあるので(ステップS52,YES)、ステップS53の処理を行うことになる。あるいは、図21の状態であっても、宛先が無線端末A〜Eの何れかであれば、ステップS52の判定はYESとなる。
【0206】
ステップS53、S54の処理は何れも、上記要求パケットを送信する処理であり、この要求パケットには上記の通り宛先の無線端末のIDや宛先無線端末までのホップ数等が含まれる。つまり、要求パケットによって、宛先の無線端末のIDや宛先無線端末までのホップ数等を通知するものである。ステップS53とS54とが異なる点は、ステップS53では構成情報に従って宛先までのホップ数を通知すればよいが(図20の状態であれば、宛先の無線端末Nまでのホップ数=5となる)、ステップS54では、宛先までのホップ数が分からないので、ここでは宛先までのホップ数=∞を通知する(ステップS54)。上記の例では、無線端末Fは無線端末Nまでのホップ数は分からないので、宛先までのホップ数=∞を通知することになる。
【0207】
尚、ステップS54において通知するホップ数は、上記無限大(∞)に限らない。基本的に、ホップ数としては通常あり得ないような大きな値(例えば、ホップ数は普通は数十程度までで、どんなに多くても百程度であるとするならば、無限大(∞)の代わりに千や1万等)等であれば何でもよい。また、上記大きな値は、上記の通りなんでも良いが、予め決められて各無線端末に同じ値(所定の大きな値という)を登録しておく必要がある。これは、ステップS64で両方とも大きな値であった場合には必ずNOの判定となるようにする為である(両方の値が同じであれば、NOの判定となる)。
【0208】
ここでの説明では、上記の通り、上記所定の大きな値の一例として、無限大(∞)を用いるものとする。よって、全ての無線端末において、自端末から宛先までのホップ数が分からない場合には、宛先までのホップ数を無限大(∞)とすることになる。
【0209】
尚、上記通知するホップ数は、要求元(送信側の無線端末)から宛先までのホップ数であり、以下、ホップ数Aというものとする。
送信側の無線端末Fは、上記ステップS53又はS54の何れかの処理で要求パケットを送信した後は、上記図15のステップS14,S15,S16と略同様の処理を実行する。すなわち、この要求パケットに対する応答パケットの受信待ち状態となり、所定時間内に応答が無かった場合又は応答がNACK応答であった場合には(ステップS55,NO)、データ送信を行うことなく、ステップS51に戻る。そして、別の無線端末からのID通知信号を受信したら、再びステップS52以降の処理を実行することになる。
【0210】
一方、所定時間内にACK応答があった場合には(ステップS55,YES)、上記送信事象に係る宛先に送信すべきデータを送信する(ステップS56)。このデータ送信までの動作は、もし上記要求パケットに上記受信時間延長要求を含めていた場合には、図16(a)に示したものと略同様になることになる。
【0211】
尚、データ送信の為のパケットのヘッダ部の構成は、上記特許文献1等に開示されている通りであり、送信元、宛先(着信先)、転送元、転送先等である。上記の例では、無線端末Fが無線端末N宛のデータを無線端末Hに送って中継させるのであるから、送信元、転送元がF、宛先がN、転送先がHとなる。また、尚、上記データ送信の為のパケット以外のパケット、すなわち上記ID通知信号のパケットや上記要求パケット、応答パケットの構成は、図25(a)〜(c)に示してあり、後に説明する。
【0212】
上記ステップS56でデータ送信後は、後述するステップS70によるデータ受信確認応答の受信待ち状態となり、このデータ受信確認応答を受信したら本処理は終了する(ステップS57)。尚、ステップS57の処理は、必ずしも行う必要はない。よって、受信側の無線端末(H)も、必ずしもステップS70のデータ受信確認応答の送信を行う必要はない。
【0213】
上記ステップS53又はS54の何れかの処理による要求パケット送信後の受信側の無線端末(ここでは無線端末H)の処理について説明する。
図23に示すように、受信側の無線端末Hは、上記要求パケットを受信したら(ステップS63,YES)、この要求パケットに格納されている上記ホップ数Aと、自端末から宛先までのホップ数(自己の構成情報を参照して求めるものであり、ホップ数Bというものとする)とを比較する。そして、ホップ数A>ホップ数Bであれば(ステップS64、YES)、ステップS67に移行してACK応答を返信する。そして、ACK応答送信後は上記ステップS56による送信側の無線端末Fからの送信データの受信待ち状態となり、所定時間内にデータ受信したら(ステップS69,YES)、データ受信した旨の確認通知である上記データ受信確認応答を送信側の無線端末Fへ送信する(ステップS70)。そして、受信したデータの中継処理等へ移行することになる。一方、所定時間内にデータ受信しなかった場合には(ステップS69,NO)、ステップS61に戻ることになる。一時的に通信可能となっていたが、再び通信不能な状態に戻っていることもあり得るからである。
【0214】
一方、ホップ数A>ホップ数Bではない場合には(ステップS64,NO)、ステップS65へ移行する。
ここで、受信側の無線端末Hは、自己の構成情報に宛先の無線端末のIDが無い場合には、自端末から宛先までのホップ数は分からないので、自端末から宛先までのホップ数=無限大(∞)として、上記ステップS64の判定を行うが、この場合には必ずステップS64の判定はNOとなり、ステップS65の処理を実行することになる(ホップ数Aも無限大(∞)の場合には、判定不可能(又はA=Bであるもの)として、ステップS64の判定はNOとなる)。
【0215】
そして、ステップS65の処理では、自端末から宛先までのホップ数Bが無限大(∞)か否かを判定し、無限大(∞)である場合には(ステップS65,YES)ステップS66へ移行し、無限大(∞)ではない場合には(ステップS65,NO)、NACK送信して(ステップS71)ステップS61へ戻る。
【0216】
ステップS66の処理は、各無線端末がそれぞれ、現在の構成情報だけでなく旧構成情報(現在の構成情報に更新する前の構成情報等)も記憶しておくことを前提とした処理であり、これについては後に図26、図27に示す他の具体例も参照しながら説明するものとする。
【0217】
ホップ数A,Bの両方とも無限大(∞)ではない場合には、上記図15のステップS25と略同様に、自端末(受信端末)の方が要求元(送信端末)よりも宛先に近ければ、パケットデータ中継を引き受けるものとしてACK応答を返信し、そうでなければNACK応答を返信することになる。
【0218】
また、ホップ数A,Bのどちらか一方のみが無限大(∞)である場合には、無限大(∞)よりも大きな数は存在しないので、必ず無限大(∞)の方が大きいものとして判定される。すなわち、もしホップ数Aのみが∞であれば、必ずA>Bとなるので、ステップS64の判定はYESとなる。逆に、ホップ数Bのみが∞であれば、必ずA<Bとなるので、ステップS64の判定はNOとなる。尚、この場合にはステップS65の判定はYESとなるのでステップS66の処理を実行することになる。
【0219】
また、ホップ数A,Bの両方が無限大(∞)である場合には、上記の通り大小判定できないので(またはイコールと考えられるので)、ここではステップS64の判定はNOとなるものとする。この場合にも、ステップS65の判定はYESとなるのでステップS66の処理を実行することになる。
【0220】
上述した無線端末F、H、Nの例では、図24に示すように、まず、無線端末HがステップS61でID通知信号を送信しており、これをこのときは無線端末Fが受信できたことからステップS52以降の処理を実行すると、図示の通り無線端末Fの構成情報には宛先の無線端末Nはないので、ホップ数A=∞の要求パケットを無線端末Hへ送信することになる。この要求パケットを受信した無線端末Hでは、図示の通り無線端末Hの構成情報には宛先の無線端末Nがあり通信回数は‘4’回であるので、ホップ数B=4となり、ステップS64の判定を行う。
【0221】
この場合、∞>4であるのでステップS64の判定はYESとなり、無線端末Hは無線端末Fに対してACK応答を返信することになる。これより、無線端末Fは、無線端末Nに対する送信データを無線端末Hへ渡す。図24に示す状況のままであれば、この送信データは、無線端末H及び他の無線端末(例えば無線端末I,J,L等)によって順次中継されて、無事に宛先である無線端末Nに届くことになる。
【0222】
この様に、データ送信元(要求元)では宛先が構成情報から削除されていて分からなくなっていても、データ送信先では宛先が構成情報にあるならば送信データをデータ送信先に渡せば宛先に届くことになるので、ステップS64の判定がYESとなった場合には、ACK応答することになる。
【0223】
上記図24の例において無線端末F−H間で送受信する上記パケット、すなわち上記ID通知信号、要求、応答の各パケットの構成例を、図25(a)〜(c)に示す。
まず、ID通知信号パケットは、図25(a)に示すように、コマンド301、送信元(自分)302、送信先(相手)303より成る。コマンド301には本パケットがID通知信号パケットであることを示すコマンド(ID)が格納される。送信元(自分)302には本例では無線端末HのID=‘H’が格納される。送信先(相手)303は特定しないのでALL(全てが対象)となっている。
【0224】
また、要求パケットは、図25(b)に示すように、コマンド311、送信元(自分)312、送信先(相手)313、宛先局314、宛先局までのホップ数315より成る。コマンド311には本パケットが要求パケットであることを示すコマンド(要求)が格納される。また、本例では、送信元(自分)312=‘F’、送信先(相手)313=‘H’、宛先局314=‘N’、宛先局までのホップ数315=‘∞’となる。
【0225】
また、応答パケットは、図25(c)に示すように、コマンド321、送信元(自分)322、送信先(相手)323、宛先局324、ACK/NACK(応答内容)325より成る。コマンド321には本パケットが応答パケットであることを示すコマンド(応答)が格納される。また、本例では、送信元(自分)322=‘H’、送信先(相手)323=‘F’、宛先局324=‘N’、ACK/NACK(応答内容)325=‘ACK’となる。
【0226】
以下、図26、図27を参照して、上記ステップS66の処理について説明する。
尚、以下の説明では、説明の都合上、送信側/受信側の無線端末は上記の例から変わるが、宛先は同じく無線端末Nであるものとする。
【0227】
まず、上記ホップ数A,Bの両方とも無限大(∞)ではない場合には、ステップS64でYESとなるか、ステップS65でNOとなるかの何れかなので、ステップS66の処理が行われることはない。ホップ数A,Bの両方が無限大(∞)、もしくはホップ数Bのみが無限大(∞)である場合に、ステップS66の処理が実行されることになる。
【0228】
例えば上記図24の例とは逆に、無線端末Hが要求元(送信側の無線端末)、無線端末Fが受信側の無線端末となった場合には、ホップ数Bのみが無限大(∞)となることになる。また、図26に示す例のように、無線端末Eが要求元(送信側の無線端末)、無線端末Fが要求先(受信側の無線端末)となった場合には(逆でも同じだが)、どちらもその構成情報には無線端末Nはないので、ホップ数A,Bの両方が無限大(∞)となることになる。
【0229】
ここでは、全ての無線端末において、自己の構成情報を更新する際に、更新前の構成情報を旧構成情報として残しておくものとする(現在の構成情報を新構成情報とする)。図26には、無線端末E,Fそれぞれの新旧構成情報を示す。ここでは、ネットワーク状態が上記図20の状態から図21の状態に変わった場合を例にする。よって、図26に示す無線端末Fの新旧構成情報は、旧構成情報が図20に示すものと同じであり、新構成情報は図21に示すものと同じである。無線端末Eの新旧構成情報も同様に、旧構成情報が図20に示す状態に対応する構成情報であり、新構成情報は図21に示す状態に対応する構成情報である。
【0230】
従って、無線端末E,Fの両方とも、現在の構成情報には無線端末A〜Fのみが登録されており、従って上記の通り宛先が無線端末Nである場合には、宛先は構成情報には無いことになる。
【0231】
尚、図22、図23の処理において、ステップS66以外の処理は、構成情報を参照する際には新構成情報のみを参照することになる。
ここでは、無線端末Eにおいて、無線端末Nに対するデータ送信要求が発生したものとする。この場合、無線端末Eは図22の処理、無線端末Fは図23の処理を実行することになる。そして、図22の処理において、ステップS52はNOとなることから、ステップS54の処理を行うことになるが、ステップS66の処理を行う為には旧構成情報における宛先までのホップ数も一緒に通知する必要がある。
【0232】
よって、本例における要求パケットは、図27(b)に示すデータ構成となる。同図では、図25(b)に示すものと同一のものには同一符号を付しており、説明は省略する。よって、図示の通り、図25(b)との違いは、「宛先局までの旧ホップ数」316が付加されている点である。これが、旧構成情報における宛先までのホップ数であり、これは要求元(送信側の無線端末)から宛先までの旧ホップ数を意味する。図26に示す無線端末Eの旧構成情報によれば、無線端末Nに対応する通信回数は‘6’であるので、「宛先局までの旧ホップ数」316=‘6’となっている。
【0233】
また、図26に示す無線端末Fの旧構成情報によれば、無線端末Nに対応する通信回数は‘5’であるので、宛先局までの旧ホップ数=‘5’となる。これが、自端末(受信側の無線端末)から宛先までの旧ホップ数となる。
【0234】
これより、ステップS66の処理、すなわち「要求元(送信側の無線端末)から宛先までの旧ホップ数(「宛先局までの旧ホップ数」316)>自端末(受信側の無線端末)から宛先までの旧ホップ数?」の判定を行うと、‘6’>‘5’であるので、判定結果はYESとなり、ステップS67によりACK応答を返信することになる。
【0235】
よって、この場合には、無線端末Eは無線端末Fに送信データを渡して、中継を依頼することになる。但し、この場合、無線端末Fがこの送信データを無線端末Hに中継できるかどうかは不明である。しかし、図24で説明した状態になれば、この送信データは無線端末Hへ中継されるので、送信データが宛先局である無線端末Nに届くことになる。
【0236】
上記のように、自己(要求元)も通信相手(要求先)も両方とも現在の構成情報には宛先が無い状態であっても、通信相手が元々は(通信路切断前は)上記「前向き隣接局」等(本手法では隣接局に限らないが)であったならば、この通信相手に送信データを渡しておくことで、確実ではないにしても、送信データが宛先局に届く可能性はあることになる。
【0237】
尚、上記処理によれば、上記「後向き隣接局」等(本手法では隣接局に限らないが)に送信データが渡されることは無いことになる。よって、上記無線端末Eの送信データを受け取った無線端末Fが、これを無線端末B等に中継するようなことはなく、無意味な中継処理が行われないで済むことになる。但し、自端末も送信相手もその構成情報に宛先の無線端末がある場合には、場合によっては(何度トライしても前向き隣接局にはデータ送信できない場合等)、送信相手が横向き隣接局や後向き隣接局である場合でも、データ送信して中継を依頼することができるようにしてもよい。
【0238】
また、当然、上記処理は、要求元が転送元(中継元)であり要求先が中継先である場合も同様である。例えば、無線端末Aにおいて無線端末Nに対するデータ送信要求が発生した場合、この送信データは送信端末Bに渡されることになる。そして、送信端末Bが上記図22の処理を行い、送信端末C,D,F等が上記図23の処理を行うと、送信データは無線端末Fに渡されることになり、無線端末CやDに渡されるようなことはない。
【0239】
そして、無線端末Fが無線端末Hに送信データを渡すことに成功すれば、送信データは宛先局Nに届くことになる。尚、無線端末Fは、送信データの中継が行えないまま一定時間以上経過した場合には、当該送信データを破棄する等して、中継処理は終了する。
【0240】
図28に、無線端末の概略的構成例を示す。
図28に示す無線端末400は、アンテナ401と、無線送受信回路402、通信制御部403、電源回路404等を有し、上位装置であるデータ処理装置401に接続してデータ処理装置401とのデータ送受信を行うことができる。無線送受信回路402は上記無線送信回路13aと無線受信回路14a等に相当する。通信制御部403は上記制御部12a、12b等に相当する。電源回路404は上記電池17a、17b等に相当するが、この例に限らず、商用AC電源を入力してDC電源に変換するAC/DCコンバータ等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0241】
【図1】無線端末(受信端末、送信端末)の構成図である。
【図2】(a)、(b)は、各動作状態制御部の処理フローチャート図である。
【図3】(a)は図2(a)の処理による受信端末の動作タイミング図、(b)は図2(b)の処理による送信端末11bの動作タイミング図である。
【図4】無線端末の間欠通信方法の一例を示すタイミング図である。
【図5】本例の無線端末の間欠通信方法のその他の例を示すタイミング図である。
【図6】本例の無線端末の間欠通信方法の更に他の例を示すタイミング図である。
【図7】第2実施形態に係る無線端末の概略構成を示すブロック図である。
【図8】図7の無線端末の間欠通信方法を示すタイミング図である。
【図9】本例の無線端末の間欠通信方法のさらにその他の例を示すタイミング図である。
【図10】図1、図7に示す無線端末を、よりハードウェア的に示す構成図である。
【図11】本例の無線端末の動作方法を示す状態遷移図である。
【図12】(b)は本例の無線端末を無線通信ネットワークシステムに適用した場合の動作例であり,(a)は比較の為の動作例である。
【図13】本例の無線端末によるパケット転送経路の一例を示す図である。
【図14】本例の無線端末のデータ送受信動作の変形例を示す図である。
【図15】本例の無線端末の動作フローチャート図である。
【図16】(a)、(b)は、図15の処理による送信側−受信側間の通信シーケンス図である。
【図17】(a)は本例の構成情報の一例、(b)はネットワーク構成例である。
【図18】変形例に係る受信待ち状態の時間分割例である。
【図19】変形例の無線端末の動作フローチャート図である。
【図20】無線通信ネットワークシステムのネットワーク構成例である。
【図21】ネットワークの一部が切断された状態を示す図である。
【図22】本例のID受信側(送信端末)の処理フローチャート図である。
【図23】本例のID送信側(受信端末)の処理フローチャート図である。
【図24】図21の状態から図22、図23の処理によって通信が行われる様子を示す図(その1)である。
【図25】図24の各通信パケットのデータ例である。
【図26】図21の状態から図22、図23の処理によって通信が行われる様子を示す図(その2)である。
【図27】図26の各通信パケットのデータ例である。
【図28】無線端末の概略構成例である。
【図29】従来の無線通信ネットワークシステム全体の構成の一例を示す図である。
【図30】(a)、(b)は無線端末Aが保持する構成情報の一例を示す図である。
【図31】各無線端末が保持する構成情報の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0242】
11a 受信端末
12a 制御部
13a 無線送信回路
14a 無線受信回路
15a 切り替え部
16a アンテナ
17a 電池
18a インターフェース
19a スイッチ
20a スイッチ
31a 動作状態制御部
32a 第1送信状態制御部
33a 第1受信状態制御部
11b 送信端末
12b 制御部
13b 無線送信回路
14b 無線受信回路
15b 切り替え部
16b アンテナ
17b 電池
18b インターフェース
19b スイッチ
20b スイッチ
31b 動作状態制御部
32b 第2送信状態制御部
33a 第2受信状態制御部
111a,111b 無線端末
112a、112b 制御部
113a、113b 無線送信回路
114a、114b 無線受信回路
115a、115b 切り替え部
116a、116b アンテナ
117a、117b 電池
118a、118b インターフェース
119a、119b スイッチ
120a、120b スイッチ
131a、131b 動作状態制御部
132a、132b 第1送信状態制御部
133a、133b 第2送信状態制御部
134a、134b 第1受信状態制御部
135a、135b 第2受信状態制御部
200 無線端末
201 アンテナ
202 送受信切替部
203 無線送信回路
204 無線受信回路
205 送信状態制御部
206 受信状態制御部
207 データ送信制御部
208 間欠動作制御部
209 ID通知信号判定部
210 電源(電池)
211 電源ライン
212 スイッチ
213 スイッチ
301 コマンド
302 送信元(自分)
303 送信先(相手)
311 コマンド
312 送信元(自分)
313 送信先(相手)
314 宛先局
315 宛先局までのホップ数
316 宛先局までの旧ホップ数
321 コマンド
322 送信元(自分)
323 送信先(相手)
324 宛先局
325 ACK/NACK(応答内容)
TT,TR 一定期間
TS スリープ期間
TW 一定時間
T11,T12,T13 送信状態
R11,R12,R13 受信状態
R12 受信待ち状態
J11,J12 送信事象
P11,P13 間欠送信信号
P12,P14 送信信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線データ通信を行う複数の無線端末によって構成され、該各無線端末はシステム構成情報を記憶し、該システム構成情報を用いることで前記無線端末のいずれも直接又は他の1以上の無線端末に中継させることで他の全ての無線端末と通信可能である無線通信ネットワークシステムにおいて、
受信側の前記無線端末は、
一定周期で間欠的に、第1の信号を送信し更に続いて所定の第1の期間、他の無線端末からの該第1の信号に対する返信待ち状態とする受信動作制御手段を有し、
送信側の前記無線端末は、
任意の宛先の無線端末に対する任意のデータの送信要求が発生すると、所定の第2の期間、他の無線端末からの前記第1の信号の受信待ち状態とする送信動作制御手段と、
該第2の期間中に前記第1の信号を受信すると、前記宛先の無線端末が自己の前記システム構成情報にあるか否かに係らず自端末から該宛先までの中継回数を決定する第1の中継回数決定手段と、
該決定した中継回数と前記宛先を含む要求パケットを前記第1の信号に対する返信として送信する中継回数通知手段と、
該要求パケットに対して前記受信側の無線端末からデータ送信許可があった場合には、該受信側の無線端末に対して前記データを送信するデータ送信手段とを有し、
前記受信側の無線端末は更に、
前記要求パケットを受信すると、前記宛先の無線端末が自己の前記システム構成情報にあるか否かに係らず自端末から該宛先までの中継回数を決定する第2の中継回数決定手段と、
該第2の中継回数決定手段で決定した中継回数が前記要求パケットの中継回数よりも少ない場合には、前記データ送信許可を送信する中継可否決定・送信手段と、
を有することを特徴とする無線通信ネットワークシステム。
【請求項2】
前記第1の中継回数決定手段、第2の中継回数決定手段は何れも、前記宛先の無線端末が自己の前記システム構成情報にある場合には該システム構成情報から前記宛先までの中継回数を取得し、前記宛先の無線端末が自己の前記システム構成情報に無い場合には、予め設定されている所定の大きな値を前記宛先までの中継回数に決定することを特徴とする請求項1記載の無線通信ネットワークシステム。
【請求項3】
前記各無線端末は、自己の前記システム構成情報を更新すると共に該更新前のシステム構成情報を旧システム構成情報として記憶しておく構成情報更新手段を更に有し、
前記第1、第2の中継回数決定手段は何れも更に、該旧システム構成情報を参照して、前記宛先の無線端末が該旧システム構成情報にある場合には該旧システム構成情報から前記宛先までの中継回数を取得してこれを旧中継回数として決定し、
前記中継回数通知手段は、該旧中継回数も前記要求パケットに含めて送信し、
前記中継可否決定・送信手段は、前記第2の中継回数決定手段で決定した中継回数が前記要求パケットの中継回数よりも少ない場合以外でも、該第2の中継回数決定手段で決定した中継回数が前記所定の大きな値である場合には、該第2の中継回数決定手段で決定した旧中継回数が、前記要求パケットの旧中継回数よりも少ない場合には、前記データ送信許可を送信することを特徴とする請求項2記載の無線通信ネットワークシステム。
【請求項4】
前記各無線端末は、電池と、該電池から電源供給される無線送信回路及び無線受信回路を有し、
前記受信側の前記無線端末は、前記第1の信号の送信時のみ前記無線送信回路に電源供給させ、前記第1の信号に対する返信待ち状態時のみ前記無線受信回路に電源供給させ、
前記送信側の前記無線端末は、前記他の無線端末からの前記第1の信号の受信待ち状態及び前記データ送信許可の受信待ちのときのみ前記無線受信回路に電源供給させ、前記要求パケットの送信時及び前記データ送信時のみ前記無線送信回路に電源供給させることを特徴とする請求項1記載の無線通信ネットワークシステム。
【請求項5】
無線データ通信を行う複数の無線端末によって構成され、該各無線端末はシステム構成情報を記憶し、該システム構成情報を用いることで前記無線端末のいずれも直接又は他の1以上の無線端末に中継させることで他の全ての無線端末と通信可能である無線通信ネットワークシステムにおける受信側の前記無線端末であって、
一定周期で間欠的に、第1の信号を送信し更に続いて所定の第1の期間、他の無線端末からの該第1の信号に対する返信待ち状態とする受信動作制御手段と、
他の無線端末から送信される、前記該第1の信号に対する返信としての宛先と宛先までの中継回数を含む要求パケットを受信すると、該宛先が自己の前記システム構成情報にあるか否かに係らず自端末から該宛先までの中継回数を決定する第2の中継回数決定手段と、
該第2の中継回数決定手段で決定した中継回数が前記要求パケットの中継回数よりも少ない場合には、データ送信許可を送信する中継可否決定・送信手段と、
を有することを特徴とする無線通信ネットワークシステムにおける受信側の無線端末。
【請求項6】
無線データ通信を行う複数の無線端末によって構成され、該各無線端末はシステム構成情報を記憶し、該システム構成情報を用いることで前記無線端末のいずれも直接又は他の1以上の無線端末に中継させることで他の全ての無線端末と通信可能である無線通信ネットワークシステムにおける送信側の前記無線端末であって、
任意の宛先の無線端末に対する任意のデータの送信要求が発生すると、所定の第2の期間、他の無線端末からの第1の信号の受信待ち状態とする送信動作制御手段と、
該第2の期間中に前記第1の信号を受信すると、前記宛先の無線端末が自己の前記システム構成情報にあるか否かに係らず自端末から該宛先までの中継回数を決定する第1の中継回数決定手段と、
該決定した中継回数と前記宛先を含む要求パケットを前記第1の信号に対する返信として送信する中継回数通知手段と、
該要求パケットに対して前記他の無線端末からデータ送信許可があった場合には、該他の無線端末に対して前記データを送信するデータ送信手段と、
を有することを特徴とする無線通信ネットワークシステムにおける送信側の無線端末。
【請求項7】
無線データ通信を行う複数の無線端末によって構成され、該各無線端末はシステム構成情報を記憶し、該システム構成情報を用いることで前記無線端末のいずれも直接又は他の1以上の無線端末に中継させることで他の全ての無線端末と通信可能である無線通信ネットワークシステムにおける受信側の前記無線端末のコンピュータを、
一定周期で間欠的に、第1の信号を送信し更に続いて所定の第1の期間、他の無線端末からの該第1の信号に対する返信待ち状態とする受信動作制御手段と、
他の無線端末から送信される、前記該第1の信号に対する返信としての宛先と宛先までの中継回数を含む要求パケットを受信すると、該宛先が自己の前記システム構成情報にあるか否かに係らず自端末から該宛先までの中継回数を決定する第2の中継回数決定手段と、
該第2の中継回数決定手段で決定した中継回数が前記要求パケットの中継回数よりも少ない場合には、データ送信許可を送信する中継可否決定・送信手段、
として機能させる為のプログラム。
【請求項8】
無線データ通信を行う複数の無線端末によって構成され、該各無線端末はシステム構成情報を記憶し、該システム構成情報を用いることで前記無線端末のいずれも直接又は他の1以上の無線端末に中継させることで他の全ての無線端末と通信可能である無線通信ネットワークシステムにおける送信側の前記無線端末のコンピュータを、
任意の宛先の無線端末に対する任意のデータの送信要求が発生すると、所定の第2の期間、他の無線端末からの第1の信号の受信待ち状態とする送信動作制御手段と、
該第2の期間中に前記第1の信号を受信すると、前記宛先の無線端末が自己の前記システム構成情報にあるか否かに係らず自端末から該宛先までの中継回数を決定する第1の中継回数決定手段と、
該決定した中継回数と前記宛先を含む要求パケットを前記第1の信号に対する返信として送信する中継回数通知手段と、
該要求パケットに対して前記他の無線端末からデータ送信許可があった場合には、該他の無線端末に対して前記データを送信するデータ送信手段、
として機能させる為のプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図15】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図12】
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【図14】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−28175(P2010−28175A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−183505(P2008−183505)
【出願日】平成20年7月15日(2008.7.15)
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【出願人】(000221834)東邦瓦斯株式会社 (440)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】