説明

無線通信ネットワーク間の共存方法及びシステム

【課題】無線通信ネットワーク間の通信干渉を防止して、時間分割や周波数分割することで通信空間を共存する。
【解決手段】一の無線通信ネットワーク3は、少なくとも他の無線通信ネットワーク3の位置情報、チャネル情報及びそれぞれの共存方法が格納されたCMDB2にアクセスすることにより、当該他の無線通信ネットワーク3との干渉度合をチャネル毎に判別し、判別したチャネル毎の干渉度合に基づいて、共存しようとする他の無線通信ネットワーク3、共存するチャネル、並びにその共存方法を選択するとともに、これらをCMDB2に反映させ、当該選択した他の無線通信ネットワークに対して共存を要求するための信号をCMDB2へ送信し、当該選択された他の無線通信ネットワーク3は、CMDB2へアクセスして共存要求を取得した場合には、CMDB2に反映されたチャネル並びにその共存方法に基づいて、通信空間を共存するための制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
複数の無線通信ネットワーク間で時間分割や周波数分割することで通信空間を共存する無線通信ネットワーク間の共存方法及びにシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年において、無線通信システムの加入数が増加や、サービスの高度化や多様化が進展している。このとき、同一の通信空間でしかも同一の周波数帯域において、複数の無線通信ネットワークが共存する場合、互いに通信干渉を起こすことになる。このため、複数の無線通信ネットワーク間で時間分割や周波数分割することで通信空間を共存する無線通信ネットワーク間の共存方法が従来より求められている。
【0003】
例えば複数の無線通信ネットワーク間で時間分割することで通信空間を共存する方法では、複数のタイムスロットからなるタイムフレームをいくつかのタイムスロット群に区分し、区分されたタイムスロット群をそれぞれ各システムに割り当てる。
【0004】
また、複数の無線通信ネットワーク間で周波数分割することで通信空間を共存する方法では、ある周波数帯域を2以上の部分周波数帯域に分割し、分割された部分周波数帯域をそれぞれ各システムに割り当てる。
【0005】
従来の無線通信ネットワーク間の共存方法としては、例えば特許文献1、2に示す方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5732076号
【特許文献2】米国特許出願2008/247445号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図10は、無線通信ネットワーク61が他のネットワーク間で通信干渉が生じる一般的な例を示している。この例において、無線通信ネットワーク61は、チャンネルAに基づいて、デバイス72と、ネットワーク全体を制御するコーディネータ71とを備えている。このとき、無線通信ネットワーク61と通信空間が重複する他の無線通信ネットワーク62、63が存在するものとする。この無線通信ネットワーク62は、無線通信ネットワーク61と同様にチャネルAを利用するものであることから、無線通信ネットワーク61との間で通信干渉が生じる。これに対して、無線通信ネットワーク63は、チャネルBを利用するものであることから、チャネルAを利用する無線通信ネットワーク61との間で通信干渉が生じることはない。
【0008】
また、無線通信ネットワーク64は、無線通信ネットワーク61と同様にチャネルAを利用するものであるが、無線通信ネットワーク61と異なる通信空間を利用するものであることから、特に通信干渉が生じることが無い。
【0009】
即ち、この無線通信ネットワーク61との間で通信空間が重複し、しかも共通するチャネルを用いている他の無線通信ネットワーク62との間で干渉が生じることとなる。
【0010】
本発明は、上述した無線通信ネットワーク間の通信干渉を防止して、時間分割や周波数分割することで通信空間を共存する上で好適な無線通信ネットワーク間の共存方法及びにシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る無線通信ネットワーク間の共存方法は、上述した課題を解決するために、複数の無線通信ネットワーク間で時間分割及び/又は周波数分割することで通信空間を共存する無線通信ネットワーク間の共存方法において、上記一の無線通信ネットワークにより、少なくとも他の無線通信ネットワークの位置情報、チャネル情報及びそれぞれの共存方法が格納されたデータベースにアクセスすることにより、当該他の無線通信ネットワークとの干渉度合をチャネル毎に判別し、上記判別したチャネル毎の干渉度合に基づいて、共存しようとする他の無線通信ネットワーク、共存するチャネル、並びにその共存方法を選択するとともに、これらを上記データベースに反映し、当該選択した他の無線通信ネットワークに対して共存を要求するための信号を上記データベースへ送信し、当該選択した他の無線通信ネットワークにより上記データベースへアクセスして上記共存要求を取得した場合には、上記データベースに反映されたチャネル並びにその共存方法に基づいて、上記一の無線通信ネットワークと当該選択した他の無線通信ネットワークとの間で通信空間を共存するための制御を行うことを特徴とする。
【0012】
本発明に係る無線通信ネットワーク間の共存システムは、上述した課題を解決するために、複数の無線通信ネットワーク間で時間分割及び/又は周波数分割することで通信空間を共存する無線通信ネットワーク間の共存システムにおいて、上記一の無線通信ネットワークは、少なくとも他の無線通信ネットワークの位置情報、チャネル情報及びそれぞれの共存方法が格納されたデータベースにアクセスすることにより、当該他の無線通信ネットワークとの干渉度合をチャネル毎に判別し、上記判別したチャネル毎の干渉度合に基づいて、共存しようとする他の無線通信ネットワーク、共存するチャネル、並びにその共存方法を選択するとともに、これらを上記データベースに反映させ、当該選択した他の無線通信ネットワークに対して共存を要求するための信号を上記データベースへ送信し、当該選択された他の無線通信ネットワークは、上記データベースへアクセスして上記共存要求を取得した場合には、上記データベースに反映されたチャネル並びにその共存方法に基づいて、上記一の無線通信ネットワークとの間で通信空間を共存するための制御を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
このようにして、本発明によれば、少なくとも他の無線通信ネットワークの位置情報、チャネル情報及びそれぞれの共存方法が格納されたCMDBにアクセスすることにより、当該他の無線通信ネットワークとの干渉度合をチャネル毎に判別し、判別したチャネル毎の干渉度合に基づいて、共存しようとする他の無線通信ネットワーク、共存するチャネル、並びにその共存方法を選択するとともに、これらをCMDBに反映させる。そして、当該選択した他の無線通信ネットワークに対して共存を要求するための信号をCMDBへ送信し、選択した他の無線通信ネットワークによりCMDBへアクセスして共存要求を取得した場合には、CMDBに反映されたチャネル並びにその共存方法に基づいて、一の無線通信ネットワークと当該選択した他の無線通信ネットワーク3との間で通信空間を共存するための制御を行う。
【0014】
これにより、本発明によれば、無線通信ネットワーク間の通信干渉を防止して、時間分割や周波数分割することで通信空間を共存することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明を適用した無線通信ネットワーク間の共存システムの構成を示す図である。
【図2】各無線通信ネットワークの構成を示す図である。
【図3】本発明を適用した無線通信ネットワーク間の共存システムにおけるインターフェース構成を示す図である。
【図4】各無線通信ネットワークがアクセス可能なデータベース(CMDB)の構成図である。
【図5】本発明を適用した無線通信ネットワーク間の共存システムの他の構成を示す図である。
【図6】本発明を適用した無線通信ネットワーク間の共存方法を実行するためのフローチャートである。
【図7】ステップS14における動作の詳細について説明するための図である。
【図8】本発明を適用した無線通信ネットワーク間の共存システムの効果について説明するための図である。
【図9】本発明を適用した無線通信ネットワーク間の共存システムにおいて時分割多重を行う例を示す図である。
【図10】無線通信ネットワークが他のネットワーク間で通信干渉が生じる一般的な例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態として、複数の無線通信ネットワーク間で通信空間を共存する無線通信ネットワーク間の共存システムについて図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
本発明を適用した無線通信ネットワーク間の共存システム1は、例えば図1に示すように、複数の無線通信ネットワーク3_1、・・・3_Pと、各無線通信ネットワーク3がアクセス可能なデータベース(Coexistence Management and Databank: CMDB)2とを有する。
【0018】
無線通信ネットワーク3は、図2に示すように、デバイス12a〜12eと、ネットワーク全体を制御するコーディネータ11とを備えている。
【0019】
デバイス12a〜12eは、例えば、ノート型のパーソナルコンピュータ(ノートPC)や、携帯電話等を初めとした各種携帯情報端末等で構成される。このデバイス12は、少なくともWPAN、WMAN、WLAN,WRAN等においてコーディネータ11との間で無線通信を行うことができ、更にはコーディネータ11を介して他のデバイス12との間で無線パケット通信を行うことができる。
【0020】
コーディネータ11も同様に上述した携帯情報端末と構成を同一とするものであってもよい。このコーディネータ11は、いわゆる無線基地局としての役割を担う。そして、このコーディネータ11は、デバイス12から送信されてくるビーコンを取得し、またデバイス12との間でリンクを確立するために、これらを互いに同期化させる役割を担う。また、コーディネータ11は、上述したCMDB2に対してそれぞれアクセスが可能である。このコーディネータ11は、CMDB2に対して信号を送信することができ、また必要に応じてCMDB2に記述されているデータを書き換えることができる。また、このコーディネータ11は、CMDB2を検索することができ、更にはCMDB2に格納されているデータを読み出すことが可能となる。
【0021】
なお、無線通信ネットワーク3は、図2に示すようなスター型に限定されるものではなく、ツリー型やメッシュ型等いかなるネットワーク形態を適用してもよい。
【0022】
また、各無線通信ネットワーク3_1、・・・3_Pには、CEF(Coexistence Enabling Function)がそれぞれ実装されている。無線通信ネットワーク3_1には、CEF1が、無線通信ネットワーク3_Pには、CEFPがそれぞれ実装されている。即ち、各無線通信ネットワーク3_1、・・・3_Pに実装されるCEF1・・・CEFPは同一のものではないが、それぞれ奏しえる機能は共通するものである。
【0023】
CEFを無線通信ネットワーク3に対して実装する場合には、コーディネータ11内にあるメモリやハードディスク内にそのプログラムを格納することにより行うこととなるが、これをデバイス12に実装するようにしてもよいことは勿論である。
【0024】
CEFは、一の無線通信ネットワーク3が、他の無線通信ネットワーク3との間で、通信干渉を防止し、同一の通信空間を共存するための制御を行うための、いわば意思決定を行うためのプログラムである。実際に、一の無線通信ネットワーク3が、他の無線通信ネットワーク3との間で、本発明を適用した共存方法を実行する際には、この実装されたCEFに基づいて処理を実行していくことになる。CFEの一の機能としては、無線通信ネットワーク3やそのデバイス12に対して、共存を行うために必要なパラメータを修正するための命令を与えるものである。その命令は、CMDB2から得られる示唆や情報に基づくものである。
【0025】
また本発明では、複数の無線通信ネットワーク3の間で共存方法を実行していく過程で、上述したCEFに基づくことに加え、共存方法の詳細を常にCMDB2へ問い合わせることにより実行していく点に特徴がある。即ち、各無線通信ネットワーク3は、他の無線通信ネットワーク3の位置情報や通信範囲、チャネル等の各種情報をCMDB2へ問い合わせ、また他の無線通信ネットワーク3間の共存方法をCMDB2へ問い合わせる。また無線通信ネットワーク3は、自らの選択した情報や新たに取得した情報その他をCMDB2に反映させることにより、CMDB2には常に最新の情報が記憶されていることとなる。また、他の無線通信ネットワーク3もこのCMDB2に対して随時アクセスする。そして、他の無線通信ネットワーク3も、このCMDB2において新たに更新された情報があれば、これをCMDB2を介して取得することが可能となる。
【0026】
即ち、本発明では、複数の無線通信ネットワーク3の間で共存方法を実行していく上で、その共存方法を実行する無線通信ネットワーク3の間で直接的に対話をするのではなく、あくまでCMDB2を介して対話を行う。このCMDB2は、かかる共存方法を実行する複数の無線通信ネットワーク3間のみならず、他の無線通信ネットワーク3からアクセスすることにより、CMDB2に対して新たに反映された各情報を随時識別することが可能となり、またこれを利用して新たに共存方法を同時に実行することも可能となる。
【0027】
本発明を適用した無線通信ネットワーク間の共存システム1では、図3に示すようなインターフェースの構成となる。図3(a)では、各無線通信ネットワーク3が、CEFとの間でインターフェースを持っているものの、CMDB2に対するインターフェースが無い例を示している。かかる場合には、各無線通信ネットワーク3がCEFを介してCMDB2へとアクセスすることとなる。図3(b)では、各無線通信ネットワーク3が、CEF、CMDB2の双方との間でインターフェースを持っている例を示している。かかる場合には、各無線通信ネットワーク3は、CEFによる制御の下で、CMDB2へと直接的にアクセスすることとなる。また図3(c)では、CMDB2は、この図3(b)の形態において、新たにCMDB2がTVWS(Television white space)帯域との間でデータを送受信する例を示している。かかる場合、CMDB2は、TVWS DBにインターフェース接続されている。また、CMDB2は、他のCMDBにインターフェース接続されていてもよい。
【0028】
図4は、CMDB2の構成を示している。領域40aには、自らの位置情報、通信範囲情報(例えば、電波100mWのときにその電波の届く範囲はどこまでかを示す情報)、自らが通信を行っている周波数チャネルを示すチャネル情報、例えばIEEEにおけるいかなる通信規格に基づいて通信を行うかを示す通信規格情報が記録される。また、領域40bに対しては、各無線通信ネットワーク3における具体的な共存方法を記述し、具体的には、時分割で共存する、或いは周波数分割で共存する、更には時分割及び周波数分割の双方を利用して共存する旨が、各無線通信ネットワーク3毎に記憶されているが、その他各種の共存方法も記憶されている場合もある。
【0029】
また領域40cは、一の無線通信ネットワーク3が、共存相手側の無線通信ネットワーク3に対して、各種情報や通知すべきメッセージを格納しておくための領域である。領域40dには、各無線通信ネットワーク3間で実際に共存するための制御を行う上で必要な共存アルゴリズムが記述されている。領域40eは、使用する標準に関する情報が記憶されている。この領域40eに対しては、外部から標準に関する情報が入力されることとなる。また領域40fには、その他各種の情報が記憶されることになる。
【0030】
実際に、各無線通信ネットワーク3が、このCMDB2に対して情報を入力し、または更新したい場合には、入力インターフェース31を介してCMDB2内へとアクセスすることになる。そして、入力したい情報に応じて、各領域40a〜40fに対して情報を入力することとなる。
【0031】
また、各無線通信ネットワーク3が、このCMDB2に対して検索を行い、情報を読み取りたい場合には、情報検索インターフェース32を介してCMDB2内へとアクセスすることになる。そして、読み取りたい情報を各領域40a〜40fから検索し、読み取りを行っていくこととなる。
【0032】
なお、このCMDB2の構造としては、大きく分類して当該CMDB2内へのデータの書き込み、読み出しを制御するためのマネジメント機能と、実際にデータを記憶するためデータバンク機能の2つに分類することが可能となる。具体的には、マネジメント機能を担うのはCM (Coexistence Management)であり、データバンク機能を担うのはCDB(Coexistence Databank)となる。以下、これらCM、CDBをそれぞれ分けずにCMDB2と包括的に説明することとするが、あえて具体的にCM2、CDB2と示す場合もある。
【0033】
なお本発明を適用した無線通信ネットワーク3間の共存システム1は、例えば図5に示すような形態で具体化されるものであってもよい。即ち、CMDB2は、中心に位置する中心CMDB2aと、この中心CMDB2aにそれぞれ接続されている分散CMDB2b〜2dで構成されている。
【0034】
中心CMDB2aは、中央制御ユニットとしての役割を果たすのであり、無線通信ネットワーク3からアクセスされることはない。これに対して、分散CMDB2bは、無線通信ネットワーク3_11〜3_1Pがアクセスし、分散CMDB2cは、無線通信ネットワーク3_21〜3_2Qがアクセスし、分散CMDB2dは、無線通信ネットワーク3_11〜3_1Pがアクセスし、分散CMDB2Nは、無線通信ネットワーク3_N1〜3_NRがアクセスすることになる。
【0035】
次に、本発明を適用した無線通信ネットワーク間の共存システム1による共存方法について説明をする。以下の例では、図1における無線通信ネットワーク3_1が、CFE1による制御の下で、CMDB2にアクセスし、他の無線通信ネットワーク3との間で共存するための制御を行う場合を例にとる。
【0036】
図6は、本発明を適用した無線通信ネットワーク間の共存方法を実行するためのフローチャートを示している。
【0037】
先ずステップS11において、無線通信ネットワーク3_1は、CDB2(CMDB2)にアクセスする。無線通信ネットワーク3_1は、CDB2(CMDB2)内を検索し、所望のデータの読み取りを行う。
【0038】
次にステップS12へ移行し、無線通信ネットワーク3_1は、他の無線通信ネットワーク3の存在確認を行うとともに、干渉マップを作成する。この干渉マップは、上述したステップS11においてCMDB2内から読み取ったデータに基づいて作成するものである。例えば、無線通信ネットワーク3_1の周囲に、無線通信ネットワーク3_2、3_3、3_Pが存在することを確認するとともに、それらの位置関係、電波の範囲やチャネル情報等から無線通信ネットワーク3_1に対する無線通信ネットワーク3_2、3_3、3_Pの干渉度合を2次元的又は3次元的に把握する。この干渉マップは、2次元画像又は3次元画像として把握するようにしてもよいが、画像化することは必須とならず、他の無線通信ネットワーク3_2、3_3、3_Pの干渉度合を把握さえできればよい。
【0039】
次にステップS13へ移行し、無線通信ネットワーク3_1は、他の無線通信ネットワーク3_2、3_3、3_Pにより使用されていない空チャネルが存在するか否かを判別する。この判別は、ステップS11においてCMDB2へアクセスして取得した、他の無線通信ネットワーク3_2、3_3、3_P毎のチャネル情報に基づいて行う。このステップS13において、他の無線通信ネットワーク3_2、3_3、3_Pにより使用されていない空チャネルが存在するものと判定した場合には、“B”へと移行する。このBに移行した場合にはステップS27に入り、無線通信ネットワーク3_1は、かかる空のチャネルを利用して無線通信を行う。これに対して、空チャネルが存在しない場合には、ステップS14へと移行する。
【0040】
ステップS14において、無線通信ネットワーク3_1は、無線通信ネットワーク3_1自身及び/又は他の無線通信ネットワーク3_2、3_3、3_Pの各通信範囲を狭小化させることにより干渉を減らせるか否かを判別する。
【0041】
例えば図7(a)に示すように、ネットワーク3_30の通信電力が高いと、その通信範囲は実線で示される範囲となり、他のネットワーク3_31、3_30との間で干渉が生じてしまうが、ネットワーク3_30の通信電力を単に低くするだけで、その通信範囲は点線で示される範囲まで狭小化させることが可能となり、通信干渉が生じなくなる。
【0042】
これに対して、図7(b)に示すようなケースの場合、ネットワーク3_40の通信電力を単に低くして通信範囲を狭小化しても、ネットワーク3_41、3_42との間で通信干渉が生じてしまうことになる。
【0043】
同様に、図7(c)に示すようなケースの場合、ネットワーク3_50の通信電力を単に低くして通信範囲を狭小化しても、ネットワーク3_51、3_52、3_53との間で通信干渉が生じてしまうことになる。
【0044】
このようにステップS14の判別は、無線通信ネットワーク3間の位置関係並びにその通信範囲から行うことが可能となる。実際に係る判別は、ステップS12において作成した干渉マップに基づいて行うことができる。ステップS14において、無線通信ネットワーク3_1の電力を軽減させるのみで、他の無線通信ネットワーク3_2、3_3、3_Pとの間で通信干渉を許容範囲内まで減らせる場合には、B”へと移行する。このBに移行した場合にはステップS27に入り、無線通信ネットワーク3_1は、かかる通信電力を軽減させた上で無線通信を行うことになる。これに対して、無線通信ネットワーク3_1の電力を軽減させるのみで、他の無線通信ネットワーク3_2、3_3、3_Pとの間で通信干渉を許容範囲内まで減らせない旨を判別した場合には、ステップS15へと移行する。なお、このステップS14を実行するためには、上述したCMDB2において少なくとも他の無線通信ネットワーク3の通信範囲情報が格納されていることが前提となる。
【0045】
次にステップS15へ移行し、無線通信ネットワーク3_1は、他の無線通信ネットワーク3との干渉度合をチャネル毎に判別する。即ち、このステップS15では、CMDB2に再度アクセスし、他の無線通信ネットワーク3の利用数をチャネル毎に求めるようにしてもよい。また、各チャネルの干渉度合は、いかなるパラメータに基づいて求めるようにしてもよいが、例えば、ステップS12において求めた干渉マップに基づいて判別するようにしてもよい。
【0046】
次にステップS16に移行し、無線通信ネットワーク3_1は、ステップS15の判別結果に基づいて、これから共存しようとする他の無線通信ネットワーク3_2、3_3、3_Pを選択する。以下では、無線通信ネットワーク3_2と共存することを選択した場合を例にとり説明をする。なお、この共存する他の無線通信ネットワーク3は、2以上であってもよい。また、このステップS16において、無線通信ネットワーク3_1は、無線通信ネットワーク3_2と共存するチャネルを選択する。なお、このチャネルは、1)最も低い通信干渉のチャネル、2)最も容易に共存制御が実行できる、3)共存のために頻繁に好んで使用されているチャネル、4)時間、周波数等のリソースを有効に活用できる、等の優先順位で決定される。
【0047】
次にステップS17へ移行し、無線通信ネットワーク3_1は、無線通信ネットワーク3_2と共存するための共存方法を選択する。この共存方法としては、例えば、時間分割、周波数分割、更には時間分割及び周波数分割を混合のうち何れかから選択するようにしてもよいが、他の方法を選択するようにしてもよい。ちなみに周波数分割の場合には、例えばOFDMを用いるようにしてもよい。無線通信ネットワーク3_1は、ステップS16において選択した他の無線通信ネットワーク3並びに選択したチャネル、ステップS17において選択した共存方法をCDB2(CMDB2)へアップデートすることにより、反映させる。
【0048】
次にステップS18へ移行し、無線通信ネットワーク3_1は、無線通信ネットワーク3_2と共存するための共存要求を送信する。この共存要求の送信先は、相手側の無線通信ネットワーク3_2に対して直接的に送信するのではなく、あくまでCMDB2に対して送信する。その結果、この無線通信ネットワーク3_1からの送信要求がCMDB2内に書き込まれることとなる。また、他の無線通信ネットワーク3は、このCMDB2に対して随時アクセスする。このとき相手側の無線通信ネットワーク3_2がCMDB2に対してアクセスした結果、自らに対する送信要求がCMDB2内に書き込まれていることを確認した場合には、その応答を無線通信ネットワーク3_1に対して送信することとなるが、これも直接的に無線通信ネットワーク3_1へ送信するのではなく、これをCMDB2に対して送信していくことになる。
【0049】
ステップS19において、無線通信ネットワーク3_1は、CMDB2に対して随時アクセスすることにより、無線通信ネットワーク3_2からの応答があったか否かを確認する。そして、この無線通信ネットワーク3_2からの応答があった場合には、ステップS22へ移行し、これが無い場合にはステップS20へ移行する。
【0050】
ステップS20では、カウンタiについてi=i+1と1を加算して、ステップS21
へと移行する。ステップS21では、この加算されたカウンタiと閾値Lとを比較する。
その結果、i>Lの場合には、“A”に戻る。この“A”とは、ステップS14とステッ
プS15の間に位置するものである。これに対して、i≦Lの場合には、再びステップS
19へと戻り、無線通信ネットワーク3_2からの応答があったか否かを確認することとなる。即ち、カウンタiがL以下の場合には、ステップS19〜ステップS21を
繰り返し実行するループとなっている。このLは、無線通信ネットワーク3_2からの応答があったか否かを何回繰り返して確認するかを示すものであって、これはユーザが任意に設定することも可能である。そして、L回繰り返し確認しても、無線通信ネットワーク3_2からの応答が確認できない場合には、再度ステップS15以降のフローを繰り返し実行することとなる。
【0051】
またステップS22に移行した場合、無線通信ネットワーク3_1は、応答があった無線通信ネットワーク3_2が、共存要求を拒絶したか否かを確認する。仮に線通信ネットワーク3_2が、共存要求を拒絶した場合には、“A”へと移行し、再度ステップS15以降のフローを繰り返し実行することとなる。これに対して、応答があった無線通信ネットワーク3_2が、共存要求を拒絶しなかった場合、ステップS23へ移行する。
【0052】
ステップS23へ移行した場合、無線通信ネットワーク3_1は、選択した共存方法が無線通信ネットワーク3_2によって受け入れられたか否かを判別する。選択した共存方法が無線通信ネットワーク3_2によって受け入れられた場合には、ステップS26へ移行し、受け入れられなかった場合には、ステップS24へと移行する。
【0053】
ステップS26に移行した場合には、提案した共存方法が無線通信ネットワーク3_2によって受け入れられたものであることから、この提案した共存方法に基づいて共存するための制御を実行していくことになる。実際に共存をするためのプロトコルをCMDB2内に予め記録しておき、制御を実行する際にCMDB2からそのプロトコルをダウンロードして共存制御を行うようにしてもよい。そして、無線通信ネットワーク3_1と、無線通信ネットワーク3_2との間で共存するための制御を行った後、ステップS27へ移行して通信を開始することになる。
【0054】
これに対して、ステップS24に移行した場合には、相手側の無線通信ネットワーク3_2から新たに共存方法が提案されたか否かを確認する。無線通信ネットワーク3_2から新たに共存方法が新たに提案された場合には、ステップS25へ移行し、提案されなかった場合には、“A”へと移行し、再度ステップS15以降のフローを繰り返し実行することとなる。
【0055】
ステップS25に移行した場合に、無線通信ネットワーク3_1は、相手側の無線通信ネットワーク3_2から提案された共存方法を受け入れるか否かの判断を行う。そして、これを受け入れる場合には、ステップS26へ移行し、その受け入れた共存方法を実行し、ステップS27へ移行して通信を開始することになる。これに対して、相手側の無線通信ネットワーク3_2から提案された共存方法を受け入れない場合には、“A”へと移行し、再度ステップS15以降のフローを繰り返し実行することとなる。
【0056】
このようにして、本発明によれば、少なくとも他の無線通信ネットワーク3の位置情報、チャネル情報及びそれぞれの共存方法が格納されたCMDB2にアクセスすることにより、当該他の無線通信ネットワーク3との干渉度合をチャネル毎に判別し、判別したチャネル毎の干渉度合に基づいて、共存しようとする他の無線通信ネットワーク、共存するチャネル、並びにその共存方法を選択するとともに、これらをCMDB2に反映させる。そして、当該選択した他の無線通信ネットワーク3に対して共存を要求するための信号をCMDB2へ送信し、選択した他の無線通信ネットワーク3によりCMDB2へアクセスして共存要求を取得した場合には、CMDB2に反映されたチャネル並びにその共存方法に基づいて、一の無線通信ネットワーク3と当該選択した他の無線通信ネットワーク3との間で通信空間を共存するための制御を行う。
【0057】
これにより、本発明によれば、無線通信ネットワーク3間の通信干渉を防止して、時間分割や周波数分割することで通信空間を共存することが可能となる。
【0058】
また本発明によれば、特に既存のシステムや既存のプロトコルをそのまま用いることができ、これについて大きな改変を施さないで済むという利点もある。
【0059】
また上述した構成からなる本発明によれば、図8(a)に示すように、無線通信ネットワーク3cにおけるコーディネータ11cから信号を受信してビジー状態となっているコーディネータ11bのため、コーディネータ11aを有する無線通信ネットワーク3aが機能不全に陥る等の問題を防止することが可能となる。
【0060】
また、通常は図8(b)に示すように、コーディネータ11bがコーディネータ11cに向けて、信号を送信したい場合に、これが無線通信ネットワーク3aにおけるコーディネータ11aが無線通信ネットワーク3dにおけるコーディネータ11dへの信号送信による干渉を受けてしまう。その結果、コーディネータ11bがコーディネータ11cに向けて信号を送信できなくなってしまう。本発明は、かかる問題点も解消することが可能となる。
なお、上述した実施の形態では、あくまで無線通信ネットワーク3がCMDB2に対してアクセスする場合を例に挙げて説明をしたが、図2に示すようにこの無線通信ネットワーク3の構成要素としてデバイス12も含むものとなっている。このため、この無線通信ネットワーク3からのアクセスは、何れもその中に含まれるデバイス12からのアクセスと考えてもよいことは勿論である。
【実施例1】
【0061】
図9(a)は、本発明を適用した共存システム1により、実際に無線通信ネットワーク3_61〜3_63を時分割多重化した例を示している。このような形で、時分割多重を行うようにしてもよいし、例えば図9(b)に示すように、クワイエットピリオドQPをこの時分割多重された時間帯の間に挿入されていてもよい。クワイエットピリオドQPは、IEEE802.22や、IEEE802.16hにおいて定義されているものであって、信号検出に用いられる。しかしながら、これらクワイエットピリオドQPは、共存するための制御を行う際において、同期することができず、信号検出を行うことができなくなる。このため、時分割多重時において図9(b)に示すように、時分割多重領域の間にクワイエットピリオドQPを挿入するようにしてもよい。
【0062】
また図9(c)は、本発明を適用した共存システム1により、実際に無線通信ネットワーク3を周波数分割多重化した例を示している。この図9(c)では、OFDM(直交周波数分割多重方式)に基づいてサブキャリア、ナローバンド(NB)にそれぞれのシステムを割り当てた例を示している。
【符号の説明】
【0063】
1 無線通信ネットワーク間の共存システム
2 CMDB
3 無線通信ネットワーク
11 コーディネータ
12 デバイス





【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無線通信ネットワーク間で時間分割及び/又は周波数分割することで通信空間を共存する無線通信ネットワーク間の共存方法において、
上記一の無線通信ネットワークにより、
少なくとも他の無線通信ネットワークの位置情報、チャネル情報及びそれぞれの共存方法が格納されたデータベースにアクセスすることにより、当該他の無線通信ネットワークとの干渉度合をチャネル毎に判別し、
上記判別したチャネル毎の干渉度合に基づいて、共存しようとする他の無線通信ネットワーク、共存するチャネル、並びにその共存方法を選択するとともに、これらを上記データベースに反映し、
当該選択した他の無線通信ネットワークに対して共存を要求するための信号を上記データベースへ送信し、
当該選択した他の無線通信ネットワークにより上記データベースへアクセスして上記共存要求を取得した場合には、上記データベースに反映されたチャネル並びにその共存方法に基づいて、上記一の無線通信ネットワークと当該選択した他の無線通信ネットワークとの間で通信空間を共存するための制御を行うこと
を特徴とする無線通信ネットワーク間の共存方法。
【請求項2】
上記一の無線通信ネットワークにより、上記データベースにアクセスしたときに、他の無線通信ネットワークにより使用されていない空チャネルが存在することを判別した場合には、その空のチャネルを用いて通信すること
を特徴とする請求項1記載の無線通信ネットワーク間の共存方法。
【請求項3】
上記一の無線通信ネットワークにより、少なくとも他の無線通信ネットワークの通信範囲情報が更に格納された上記データベースにアクセスしたときに、上記一の無線通信ネットワーク及び/又は他の無線通信ネットワークの各通信範囲を狭小化させることにより干渉を減らせることを判別した場合には、上記一の無線通信ネットワーク及び/又は上記他の無線通信ネットワークの通信電力を減少させること
を特徴とする請求項1又は2記載の無線通信ネットワーク間の共存方法。
【請求項4】
上記一の無線通信ネットワークと当該選択した他の無線通信ネットワークとの間で通信空間を共存するための制御を行う場合には、
上記一の無線通信ネットワークにより選択された共存方法を当該選択した他の無線通信ネットワークが受け入れた場合には、その共存方法に基づいて共存するための制御を行い、
上記一の無線通信ネットワークにより選択された共存方法を当該選択した他の無線通信ネットワークが受け入れない場合には、当該選択した他の無線通信ネットワークから共存方法を提案し、上記一の無線通信ネットワークがその提案された共存方法を受け入れた場合には、当該共存方法に基づいて共存するための制御を行うこと
を特徴とする請求項1〜3のうち何れか1項記載の無線通信ネットワーク間の共存方法。
【請求項5】
複数の無線通信ネットワーク間で時間分割及び/又は周波数分割することで通信空間を共存する無線通信ネットワーク間の共存システムにおいて、
上記一の無線通信ネットワークは、
少なくとも他の無線通信ネットワークの位置情報、チャネル情報及びそれぞれの共存方法が格納されたデータベースにアクセスすることにより、当該他の無線通信ネットワークとの干渉度合をチャネル毎に判別し、
上記判別したチャネル毎の干渉度合に基づいて、共存しようとする他の無線通信ネットワーク、共存するチャネル、並びにその共存方法を選択するとともに、これらを上記データベースに反映させ、
当該選択した他の無線通信ネットワークに対して共存を要求するための信号を上記データベースへ送信し、
当該選択された他の無線通信ネットワークは、
上記データベースへアクセスして上記共存要求を取得した場合には、上記データベースに反映されたチャネル並びにその共存方法に基づいて、上記一の無線通信ネットワークとの間で通信空間を共存するための制御を行うこと
を特徴とする無線通信ネットワーク間の共存システム。
【請求項6】
上記一の無線通信ネットワークは、上記データベースにアクセスしたときに、他の無線通信ネットワークにより使用されていない空チャネルが存在することを判別した場合には、その空のチャネルを用いて通信すること
を特徴とする請求項5記載の無線通信ネットワーク間の共存システム。
【請求項7】
上記一の無線通信ネットワークは、少なくとも他の無線通信ネットワークの通信範囲情報が更に格納された上記データベースにアクセスしたときに、上記一の無線通信ネットワーク及び/又は他の無線通信ネットワークの各通信範囲を狭小化させることにより干渉を減らせることを判別した場合、上記一の無線通信ネットワーク及び/又は上記他の無線通信ネットワークは、通信電力を減少させるための制御を行うこと
を特徴とする請求項5又は6記載の無線通信ネットワーク間の共存システム。
【請求項8】
上記一の無線通信ネットワークと当該選択した他の無線通信ネットワークとの間で通信空間を共存するための制御を行う場合には、
当該選択した他の無線通信ネットワークが上記一の無線通信ネットワークにより選択された共存方法を受け入れた場合には、その共存方法に基づいて共存するための制御を行い、
当該選択した他の無線通信ネットワークが上記一の無線通信ネットワークにより選択された共存方法を受け入れない場合には、上記一の無線通信ネットワークに対して、共存方法を提案し、
上記一の無線通信ネットワークがその提案された共存方法を受け入れた場合には、当該共存方法に基づいて共存するための制御を行うこと
を特徴とする請求項5〜7のうち何れか1項記載の無線通信ネットワーク間の共存システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−188389(P2011−188389A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−53821(P2010−53821)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)総務省委託「周波数ひっ迫対策のための技術試験事務」の一環、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301022471)独立行政法人情報通信研究機構 (1,071)
【Fターム(参考)】