説明

無線通信方法及び装置

【課題】キャリアセンスを行なった場合でも送信遅れ量が小さい無線通信方法及び装置を提供する。
【解決手段】受信された無線信号の電波強度を示す強度表示データを生成し、当該強度表示データを間欠的に取り込んでこれを保持する。そして、当該保持している強度表示データの平均値を算出し、当該平均値が閾値以下である場合に無線送信動作を可とする。この際、当該強度表示データの取込頻度に応じた頻度にて当該平均値を算出し、当該平均値の算出頻度に応じた頻度にて当該平均値と当該閾値とを比較する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線信号により通信を行なう無線通信方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、基地局と、当該基地局に対して自身が保持しているデータ(以下、保持データと称する)を各々が送信する複数の無線通信端末とを有する無線通信システムが知られている。かかるシステムにおいて採用されている例えばCSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access/Collision Avoidance)等の通信方式においては、無線通信装置は自身の保持データを送信する際に他の無線通信装置がその保持データを送信していないことを確認するいわゆるキャリアセンス(CCA:Clear Channel Assessment)動作を行なう(例えば特許文献1)。他の無線通信装置による保持データの送信波が妨害波となって自身の保持データ送信が妨げられないようにするためである。具体的には、無線通信端末は、自身の周囲の無線信号強度を所定期間測定し、その期間内における平均強度が所定値以下である場合に保持データを送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−263511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通信規格であるIEEE802.15.4によれば、上記の如く保持データ送信前にキャリアセンスを行なうことが規定されている。これに従えば、保持データ送信前に所定期間だけ無線信号強度を測定し、その平均強度が所定値以上であると判定した場合には、当該判定後に更に所定期間に亘って無線信号強度を測定し同様の判定を行う必要がある。
【0005】
しかしながら、かかる動作によれば、例えば1の所定期間についての判定において平均強度が所定値以上であったがその判定直後に無線信号強度が所定値以下となって実質的に保持データを送信可能な状態になった場合であっても、当該判定後に更に所定期間に亘って無線信号強度を測定することとなるので、当該所定期間分の送信遅れが必ず生じてしまうという問題があった。
【0006】
本発明は上記した如き問題点に鑑みてなされたものであって、キャリアセンスを行なった場合でも送信遅れ量が小さい無線通信方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による無線通信方法は、無線信号により無線通信を行なう無線通信方法であって、受信された無線信号の電波強度を示す強度表示データを生成する強度表示データ生成ステップと、前記強度表示データを間欠的に取り込んでこれを保持するデータ保持ステップと、前記データ保持ステップにおいて保持された強度表示データの平均値を算出する平均値算出ステップと、前記平均値が閾値以下である場合に無線送信動作を可とする比較ステップと、を含み、前記平均値算出ステップにおいては、前記データ保持ステップにおける前記強度表示データの取込頻度に応じた頻度にて前記平均値を算出し、前記比較ステップにおいては、前記平均値の算出頻度に応じた頻度にて前記平均値と前記閾値とを比較することを特徴とする。
【0008】
また、本発明による無線通信装置は、無線信号により無線通信を行なう無線通信装置であって、受信された無線信号の電波強度を示す強度表示データを生成する強度表示データ生成部と、前記強度表示データを間欠的に取り込んでこれを保持するデータ保持部と、前記データ保持部に保持されている強度表示データの平均値を算出する平均値算出部と、前記平均値が閾値以下である場合に無線送信動作を可とする比較部と、を含み、前記平均値算出部は、前記データ保持部への前記強度表示データの取込頻度に応じた頻度にて前記平均値を算出し、前記比較部は、前記平均値の算出頻度に応じた頻度にて前記平均値と前記閾値とを比較することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明による無線通信方法及び装置によれば、キャリアセンスを行なった場合でも送信遅れ量を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例である無線通信装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1のRSSI処理部の構成を示すブロック図である。
【図3】図1のCCA処理部の構成を示すブロック図である。
【図4】無線通信装置によるデータ送信処理ルーチンを示すフローチャートである。
【図5】CCA判定タイミングを示す説明図である。
【図6】第2の実施例におけるRSSI処理部の構成を示すブロック図である。
【図7】第2の実施例におけるCCA処理部の構成を示すブロック図である。
【図8】第2の実施例におけるデータ送信処理ルーチンを示すフローチャートである。
【図9】電波強度、判定回路出力、及び強入力判定結果の変化を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る実施例について添付の図面を参照しつつ詳細に説明する。
<第1の実施例>
図1には、本発明の実施例である無線通信装置10の構成が示されている。無線通信装置10は、例えば気温測定のセンサ(図示せず)を備え、当該センサによって得られた気温データ等の各種データを基地局(図示せず)に送信する端末であり得る。
【0012】
通信部11は、制御部17からの送信命令に応じて、変調部14から供給される変調データを無線送信する。また、通信部11は、制御部17からの受信命令に応じて無線信号を受信し、これを復調部13に供給する。
【0013】
RSSI処理部12は、通信部11によって受信された無線信号の信号強度を測定し、その測定結果をRSSI(Receive Signal Strength Indication)値として生成する。RSSI処理部12は、当該測定及び生成を間欠的に行って得られた複数のRSSI値の平均値(以下、RSSI平均値と称する)を算出し、これを後段のCCA処理部15に供給する。
【0014】
復調部13は、通信部11によって受信された無線信号に対してRF⇒IF変換等の処理を施して復調し、得られた復調データをデータ処理部16に供給する。
【0015】
変調部14は、データ処理部16から供給された送信データについて変調処理を施して、得られた変調データを通信部11に供給する。
【0016】
CCA処理部15は、RSSI処理部12から供給されたRSSI平均値と所定の閾値との比較に基づいて変調データの送信可否を判定する。CCA処理部15は、判定結果を制御部17に通知する。
【0017】
データ処理部16は、制御部17から供給される送信データ、及び復調部13から供給される復調データに対して各種のデータ処理を施す。データ処理部16は、供給される送信データに対しては、例えばプリアンブル、ユニークワードの追加、CRC演算値の付加等の送信データ組立て処理を施し、当該処理後のデータを変調部14に供給する。また、データ処理部16は、供給される復調データに対しては、例えばユニークワード検出、データ長検出、CRC判定等のパケットデータ処理を施し、その結果を制御部17に通知する。
【0018】
制御部17は、無線通信装置10全体の動作を制御する。制御部17は、例えば送信/受信命令を上記の各機能ブロック11〜16に発することができる。以下、CCA処理部15及び制御部17をまとめて比較部とも称する。
【0019】
図2には、RSSI処理部12の構成が示されている。
【0020】
RSSI値生成部20は、通信部11によって現在受信されている無線信号の信号強度を示すRSSI値を生成する。以下、RSSI値を強度表示データ、RSSI値生成部20を強度表示データ生成部とも称する。
【0021】
シフトレジスタ21は、RSSI値生成部20によって生成されたRSSI値を順次取り込み、これをレジスタ21−1〜21−n(nは2以上の整数)に時系列順に保持する。以下、シフトレジスタ21をデータ保持部とも称する。シフトレジスタ21は、制御部17(図1)からRSSI取込命令が供給される毎にRSSI値を取り込む。例えば、無線データの送受信レートが100Kbpsの場合、10マイクロ秒毎にRSSI取込命令が供給される。以下、nが8の場合つまりレジスタ21−1〜21−8の場合について説明する。この場合、シフトレジスタ21は、最大で8個のRSSI値を同時に保持できる。
【0022】
平均値算出部22は、レジスタ21−1〜21−8の各々から供給されるRSSI値の平均値を算出し、RSSI平均値をCCA処理部15(図1)に供給する。
【0023】
RSSIカウンタ23は、制御部17から受信命令が供給されている場合に、制御部17から供給されるRSSI取込命令の回数をカウントする。そして、RSSIカウンタ23は、カウント値が所定値に達した場合に、取込完了通知をCCA処理部15(図1)に供給する。シフトレジスタ21が8個のレジスタ21−1〜21−8からなる場合には、当該所定値は”8”である。
【0024】
図3には、CCA処理部15の構成が示されている。
【0025】
比較部31は、RSSI処理部12(図1)から供給されるRSSI平均値と、閾値格納レジスタ32に保持されている所定の閾値とを比較してその比較結果を出力する。
【0026】
閾値格納レジスタ32は、所定の閾値を保持している。当該閾値は、いわゆるキャリアセンス(CCA)による電波強度比較のために用いられる。当該閾値は、変調部14からの変調データを通信部11が無線送信した場合に、その無線送信が妨害されないと考えられるレベルの値に適宜設定される。
【0027】
CCA判定レジスタ33は、RSSI処理部12(図1)から取込完了通知を受けている場合に、比較部31による比較結果をCCA判定結果として出力する。CCA判定結果は、制御部17(図1)に供給される。
【0028】
以下、図4を参照しつつ、無線通信装置10によるデータ送信処理の動作について説明する。
【0029】
先ず、制御部17が受信命令を通信部11、RSSI処理部12、復調部13、データ処理部16に対して発する(ステップS11)。
【0030】
次に、RSSI処理部12のRSSI値生成部20は、受信命令に応じて通信部11によって現在受信されている無線信号の信号強度を示すRSSI値を生成する。そして、RSSI処理部12のシフトレジスタ21は、制御部17からRSSI取込命令が供給される毎に、RSSI値生成部20によって生成されたRSSI値を取り込む(ステップS12)。シフトレジスタ21のレジスタ21−1〜21−nには、時系列順にRSSI値が保持される。レジスタ21−1〜21−nの各々は、自身が保持しているRSSI値を平均値算出部22に供給する。
【0031】
平均値算出部22は、レジスタ21−1〜21−nの各々から供給されたRSSI値の平均値を算出する(ステップS13)。
【0032】
RSSIカウンタ23は、制御部17からRSSI取込命令が発せられた回数をカウントしている。そして、RSSIカウンタ23は、そのカウント値が所定値に達したときに、所定個数のRSSI値の取り込みが完了したと判定し、取込完了通知をCCA処理部に供給する(ステップS14)。
【0033】
CCA処理部15の比較部31は、RSSI処理部12によって算出されたRSSI平均値が、閾値格納レジスタ32に保持されている所定の閾値以下であるか比較判定する(ステップS15)。以下、当該比較判定をCCA判定と称する。CCA判定レジスタ33は、取込完了通知を受けた時点から、比較部31による比較判定結果を取り込み、これをCCA判定結果として出力する。CCA判定結果は、制御部17に供給される。以下、RSSI平均値が閾値以下である比較判定結果を送信可能判定と称し、RSSI平均値が閾値を上回る比較判定結果を送信不可判定と称する。
【0034】
CCA判定結果が送信可能判定である場合には、制御部17は、基地局(図示せず)への変調データの無線送信を許可する通知を通信部11に与える(ステップS16)。
【0035】
通信部11は、制御部17からデータ送信完了の通知を受けるまで変調データを送信し、当該通知を受けたときにデータ送信処理を終了する(ステップS17)。かかる動作により、無線通信装置10以外の無線通信装置(図示せず)が基地局(図示せず)にデータ送信をしていないとき、すなわち周囲の無線送信波が妨害波とならない程度弱いときに、無線通信装置10が変調データを無線送信することができる。
【0036】
ステップS15においてCCA判定結果が送信不可判定である場合には、制御部17は、変調データの送信開始指示を通信部11に与えず、RSSI取込命令をシフトレジスタ21に与える。シフトレジスタ21は、RSSI取込命令に応じて、RSSI値生成部20からRSSI値を1つ取り込む(ステップS18)。なお、当該1つのRSSI値はシフトレジスタ21−1に保持され、当該取り込み前に最終段のシフトレジスタ21−8に保持されていたRSSI値は破棄される。
【0037】
平均値算出部22は、当該1つのRSSI値がシフトレジスタ21に取り込まれた後、レジスタ21−1〜21−nの各々から供給されたRSSI値の平均値を再び算出する(ステップS19)。そして、RSSI平均値が所定の閾値以下となるまで上記と同様の処理を反復する(ステップS15、S18及びS19)。
【0038】
上記したように、本実施例の無線通信装置10においては、RSSI値を間欠的に取り込んでこれをシフトレジスタ21に時系列的に保持し、当該保持しているRSSI値の平均値を算出する。そして、所定個数のRSSI値をシフトレジスタ21に取り込んだ後に、RSSI平均値が所定閾値以下であるかを判定する。RSSI平均値が所定閾値以下である場合には変調データの無線送信を開始する。一方、RSSI平均値が所定閾値を上回る場合にはRSSI値をシフトレジスタ21に1つ取り込み、RSSI平均値を再び算出する。そして、同様にRSSI平均値が所定閾値以下であるかについて判定し、所定閾値以下である場合には変調データの無線送信を開始する。
【0039】
図5には、CCA処理部15によるCCA判定タイミングが示されている。RSSI値がシフトレジスタ21に所定数(図5においては8個)取り込まれ、CCA処理部15が取り込み完了通知を受けた時点から、CCA判定結果を出力する。CCA判定結果が送信不可判定であった場合でも、シフトレジスタ21がRSSI値を更に取り込み、平均値算出部22は当該取り込みがある毎にRSSI平均値を算出する。CCA処理部15は、RSSI平均値の算出がなされる毎にCCA判定結果を出力する。すなわち、CCA処理部15は、9個目のRSSI値が取り込まれた時点や10個目のRSSI値が取り込まれた時点等の各取り込み時点においてCCA判定結果を出力する。そして、CCA判定結果が送信可能判定となった場合には、変調データの無線送信を直ぐに開始する。
【0040】
このように、RSSI平均値が所定閾値以上であると一旦判定された場合でも、取り込んだRSSI値を所定数以上保持し、後続のRSSI値を取り込んだ際に直ちに判定することとしているので、その直後にRSSI値が低下してRSSI平均値が所定閾値以下となった場合には、変調データの無線送信を直ぐに開始することができる。故に、本実施例の無線通信装置10によれば、キャリアセンスを行なった場合でも送信遅れ量を小さくすることができる。
【0041】
また、RSSI値がシフトレジスタ21に所定数取り込まれてからRSSI平均値を算出することにより、IEEE802.15.4等の通信規格に適合するキャリアセンス処理を行なうことができる。
【0042】
また、RSSI値の保持をシフトレジスタによって行なうことにより、最新のRSSI平均値を算出することができ、CCA判定の精度を向上させることができる。
<第2の実施例>
以下、第1緒実施例と異なる部分について主に説明する。
【0043】
図6には、本実施例におけるRSSI処理部12の構成が示されている。
【0044】
判定回路24は、RSSI値生成部20から供給されるRSSI値と、制御部17から供給される強入力判定閾値とを比較し、その判定結果を示す判定結果データをシフトレジスタ25に供給する。強入力判定閾値は、変調部14からの変調データを通信部11が無線送信した場合に、その無線送信が妨害されると考えられるレベルの値に適宜設定される。判定結果データは、例えば、RSSI値が強入力判定閾値以下である場合には論理値”0”であり、RSSI値が強入力判定閾値を上回る場合には論理値”1”である。
【0045】
シフトレジスタ25は、判定回路24から供給される判定結果データを順次取り込み、これをレジスタ25−1〜25−nに時系列順に保持する。シフトレジスタ25は、制御部17(図1)からRSSI取込命令が供給される毎に判定結果データを取り込む。レジスタ25−1〜25−nの個数は、レジスタ21−1〜21−nの個数と同じである。以下、レジスタ25−1〜25−8の場合について説明する。この場合、シフトレジスタ25は、最大で8個の判定結果データを同時に保持できる。
【0046】
判定出力部26は、レジスタ25−1〜25−8に保持されている全ての判定結果データが論理値”0”を示す場合には、レジスタ21−1〜21−nに保持されている全てのRSSI値が強入力判定閾値以下であること示す強入力判定結果(以下、強入力不検出判定と称する)を出力してCCA処理部15(図7)に与える。強入力不検出判定は例えば論理値”0”で示される。
【0047】
また、判定出力部26は、レジスタ25−1〜25−8に保持されている判定結果データのうちの少なくとも1つが論理値”1”を示す場合には、レジスタ21−1〜21−nに保持されているRSSI値のうちの少なくとも1つが強入力判定閾値を上回ること示す強入力判定結果(以下、強入力検出判定と称する)を出力してCCA処理部15(図7)に与える。強入力検出判定は例えば論理値”1”で示される。
【0048】
以下、判定回路24、シフトレジスタ25、及び判定出力部26をまとめて強入力判定部と称する。
【0049】
図7には、本実施例におけるCCA処理部15の構成が示されている。
【0050】
判定許可通知発行部34は、取込完了通知、及び強入力不検出判定を示す強入力判定結果がRSSI処理部12(図6)から供給された場合にCCA判定許可通知を出力する。一方、判定許可通知発行部34は、取込完了通知が供給されない場合、又は強入力検出判定示す強入力判定結果が供給された場合にはCCA判定不可通知を出力する。
【0051】
判定許可通知発行部34は、例えばAND回路によって構成され得る。この場合、取込完了通知を一方の入力とし、強入力判定結果を他方の入力とし、CCA判定許可通知/CCA判定不可通知を出力とすることができる。例えば、一方に論理値”1”の取込完了通知が入力され、他方に強入力不検出判定を示す論理値”0”の強入力判定結果の反転論理値”1”が入力された場合には、論理値”1”のCCA判定許可通知が出力される。
【0052】
CCA判定レジスタ33は、判定許可通知発行部34からCCA判定許可通知を受けている場合に、比較部31による比較結果を取り込み、これをCCA判定結果として出力する。CCA判定結果は、制御部17(図1)に供給される。
【0053】
以下、図8を参照しつつ、無線通信装置10によるデータ送信処理の動作について説明する。
【0054】
先ず、制御部17が受信命令を通信部11、RSSI処理部12、復調部13、データ処理部16に対して発する(ステップS21)。
【0055】
次に、RSSI処理部12のRSSI値生成部20は、受信命令に応じて通信部11によって現在受信されている無線信号の信号強度を示すRSSI値を生成する。そして、RSSI処理部12のシフトレジスタ21は、制御部17からRSSI取込命令が供給される毎に、RSSI値生成部20によって生成されたRSSI値を取り込む(ステップS22)。シフトレジスタ21のレジスタ21−1〜21−nには、時系列順にRSSI値が保持される。レジスタ21−1〜21−nの各々は、自身が保持しているRSSI値を平均値算出部22に供給する。
【0056】
平均値算出部22は、レジスタ21−1〜21−nの各々から供給されたRSSI値の平均値を算出する(ステップS23)。
【0057】
RSSIカウンタ23は、制御部17からRSSI取込命令が発せられた回数をカウントしている。そして、RSSIカウンタ23は、そのカウント値が所定値に達したときに、RSSI値を所定個数取得したと判定し、取込完了通知をCCA処理部に供給する(ステップS24)。
【0058】
次に、判定出力部26は、レジスタ21−1〜21−nに保持されている全てのRSSI値が強入力判定閾値以下であるか否かを判定する(ステップS25)。判定出力部26は、レジスタ25−1〜25−8に保持されている全ての判定結果データが論理値”0”を示す場合には、全てのRSSI値が強入力判定閾値以下であると判定する。この場合、判定出力部26は、強入力不検出判定を示す強入力判定結果をCCA処理部15に与える。
【0059】
次に、CCA処理部15の比較部31は、RSSI処理部12によって算出されたRSSI平均値が、閾値格納レジスタ32に保持されている所定の閾値以下であるか比較判定する(ステップS26)。CCA判定レジスタ33は、取込完了通知、及び強入力不検出判定を示す強入力判定結果に応じて、比較部31による比較判定結果を取り込み、これをCCA判定結果として出力する。CCA判定結果は、制御部17に供給される。
【0060】
CCA判定結果が送信可能判定である場合には、制御部17は、基地局(図示せず)への変調データの無線送信を許可する通知を通信部11に与える(ステップS27)。
【0061】
通信部11は、制御部17からデータ送信完了の通知を受けるまで変調データを送信し、当該通知を受けたときにデータ送信処理を終了する(ステップS28)。
【0062】
ステップS25において、判定出力部26が、レジスタ21−1〜21−nに保持されているRSSI値のうちの少なくとも1つは強入力判定閾値を上回ると判定した場合、強入力検出判定を示す強入力判定結果をCCA処理部15及び制御部17に与える。なお、判定出力部26は、レジスタ25−1〜25−8に保持されている判定結果データのうちの少なくとも1つが論理値”1”を示すと判別した場合に強入力検出判定をする。
【0063】
この場合、制御部17は、変調データの送信開始指示を通信部11に与えず、RSSI取込命令をシフトレジスタ21に与える。シフトレジスタ21は、RSSI取込命令に応じて、RSSI値生成部20からRSSI値を1つ取り込む(ステップS29)。
【0064】
平均値算出部22は、当該1つのRSSI値がシフトレジスタ21に取り込まれた後、レジスタ21−1〜21−nの各々から供給されたRSSI値の平均値を再び算出する(ステップS30)。そして、強入力不検出判定となるまで上記と同様の処理を反復する(ステップS25、S29及びS30)。
【0065】
ステップS26においてCCA判定結果が送信不可判定である場合には、制御部17は、変調データの送信開始指示を通信部11に与えず、RSSI取込命令をシフトレジスタ21に与える。シフトレジスタ21は、RSSI取込命令に応じて、RSSI値生成部20からRSSI値を1つ取り込む(ステップS29)。
【0066】
平均値算出部22は、当該1つのRSSI値がシフトレジスタ21に取り込まれた後、レジスタ21−1〜21−nの各々から供給されたRSSI値の平均値を再び算出する(ステップS30)。そして、RSSI平均値が所定の閾値以下となるまで上記と同様の処理を反復する(ステップS26、S29及びS30)。
【0067】
上記したように、本実施例の無線通信装置10は、RSSI値を時系列的に保持するシフトレジスタ21とレジスタ数が同数のシフトレジスタ25を有する。シフトレジスタ25には、RSSI値と強入力判定閾値との比較結果が時系列的に保持される。シフトレジスタ21に保持されている全てのRSSI値が強入力判定閾値以下である場合には、変調データの無線送信を開始する。一方、シフトレジスタ21に保持されているRSSI値のうちの少なくとも1つが強入力判定閾値以上である場合には、RSSI値をシフトレジスタ21に1つ取り込み、RSSI平均値を再び算出する。そして、同様にRSSI平均値が所定閾値以下であるかについて判定し、所定閾値以下である場合には変調データの無線送信を開始する。
【0068】
図9には、電波強度、判定回路24の出力、及び強入力判定結果の時間軸上の変化が示されている。時刻T1以前においては電波強度が強入力判定閾値以下であり、判定回路24の出力論理値は”0”である。時刻T1までは、シフトレジスタ25には判定回路24から論理値”0”が供給され続けるので、判定出力部26の出力である強入力判定結果は強入力不検出判定を示す論理値”0”となっている。
【0069】
時刻T1における電波強度は強入力判定閾値を上回るので、判定回路24は、時刻T1において強入力電波の検出を示す論理値”1”を出力する。時刻T1以降、シフトレジスタ25には8サイクルに亘って論理値”1”が保持されるので、判定出力部26は強入力検出判定を示す論理値”1”の強入力判定結果を出力する。これにより、強電波検出後8サイクルの期間中においては変調データは送信されない。
【0070】
このように、本実施例の無線通信装置10においては、RSSI平均値が閾値以下の場合であっても、瞬間的に強い電波が発生している不安定な電波状況あることを検出したときには、当該検出時点から一定期間に亘って変調データを送信しない。かかる動作により、キャリアセンス実行による送信遅れ量を小さくしつつも、変調データの無線送信をより安定的に行なうことができる。
【0071】
上記した各実施例は、RSSIデータをシフトレジスタ21に取り込む毎に平均値を算出し、平均値の算出毎に当該平均値と閾値とを比較する場合の例であるが、これに限られない。例えば、RSSIデータをm回(mは2以上の整数)取り込む毎に平均値を1回算出する等、RSSIデータの取込頻度に応じた頻度にて平均値を算出することができる。また、例えば、平均値をm回算出する毎に平均値と閾値とを1回比較する等、平均値の算出頻度に応じた頻度にて平均値と閾値とを比較することができる。
【符号の説明】
【0072】
10 無線通信装置
11 通信部
12 RSSI処理部
13 復調部
14 変調部
15 CCA処理部
16 データ処理部
17 制御部
20 RSSI値生成部
21 シフトレジスタ
21−1〜21−n レジスタ
22 平均値算出部
23 RSSIカウンタ
24 判定回路
25 シフトレジスタ
25−1〜25−n レジスタ
26 判定出力部
31 比較部
32 閾値格納レジスタ
33 CCA判定レジスタ
34 判定許可通知発行部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線信号により無線通信を行なう無線通信方法であって、
受信された無線信号の電波強度を示す強度表示データを生成する強度表示データ生成ステップと、
前記強度表示データを間欠的に取り込んでこれを保持するデータ保持ステップと、
前記データ保持ステップにおいて保持された強度表示データの平均値を算出する平均値算出ステップと、
前記平均値が閾値以下である場合に無線送信動作を可とする比較ステップと、を含み、
前記平均値算出ステップにおいては、前記データ保持ステップにおける前記強度表示データの取込頻度に応じた頻度にて前記平均値を算出し、
前記比較ステップにおいては、前記平均値の算出頻度に応じた頻度にて前記平均値と前記閾値とを比較することを特徴とする無線通信方法。
【請求項2】
前記平均値算出部ステップにおいては、前記データ保持ステップにおいて所定個数の前記強度表示データの取り込みが完了したときに前記平均値を算出することを特徴とする請求項1に記載の無線通信方法。
【請求項3】
前記データ保持ステップにおいては、前記強度表示データを時系列的に取り込むことを特徴とする請求項1に記載の無線通信方法。
【請求項4】
前記データ保持ステップにおいては、前記強度表示データの保持数が所定数に達した場合には後続の前記強度表示データを取り込む毎に既に保持している前記強度表示データの1つを破棄することを特徴とする請求項3に記載の無線通信方法。
【請求項5】
前記データ保持ステップにおいて保持された強度表示データのうちの少なくとも1つによって示される強度が強入力閾値を上回るか否かを判定する強入力判定ステップを更に含み、
前記比較送信ステップにおいては、前記強入力判定ステップにおいて当該強度が前記強入力閾値を上回ると判定された場合に、当該判定時点から一定期間経過した後に前記無線送信を行なうことを特徴とする請求項1に記載の無線通信方法。
【請求項6】
無線信号により無線通信を行なう無線通信装置であって、
受信された無線信号の電波強度を示す強度表示データを生成する強度表示データ生成部と、
前記強度表示データを間欠的に取り込んでこれを保持するデータ保持部と、
前記データ保持部に保持されている強度表示データの平均値を算出する平均値算出部と、
前記平均値が閾値以下である場合に無線送信動作を可とする比較部と、を含み、
前記平均値算出部は、前記データ保持部への前記強度表示データの取込頻度に応じた頻度にて前記平均値を算出し、
前記比較部は、前記平均値の算出頻度に応じた頻度にて前記平均値と前記閾値とを比較することを特徴とする無線通信装置。
【請求項7】
前記平均値算出部は、前記データ保持部に所定個数の前記強度表示データの取り込みが完了したときに前記平均値を算出することを特徴とする請求項6に記載の無線通信装置。
【請求項8】
前記データ保持部はシフトレジスタであり、前記強度表示データを時系列的に取り込むことを特徴とする請求項6に記載の無線通信装置。
【請求項9】
前記データ保持部は、前記強度表示データの保持数が所定数に達した場合には後続の前記強度表示データを取り込む毎に既に保持している前記強度表示データの1つを破棄することを特徴とする請求項8に記載の無線通信方法。
【請求項10】
前記データ保持部に保持されている強度表示データのうちの少なくとも1つによって示される強度が強入力閾値を上回るか否かを判定する強入力判定部を更に含み、
前記比較送信部は、前記強入力判定部によって当該強度が前記強入力閾値を上回ると判定された場合に、当該判定時点から一定期間経過した後に前記無線送信を行なうことを特徴とする請求項6に記載の無線通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−253728(P2012−253728A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127236(P2011−127236)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(308033711)ラピスセミコンダクタ株式会社 (898)
【Fターム(参考)】