説明

無線通信端末および通信制御方法

【課題】複数の通信方式に対応した無線通信端末において、電池を長く持たせる無線通信端末と、通信制御方法を提供する。
【解決手段】複数の通信方式に対応した無線通信端末において、通信方式それぞれに対応して、送信データを蓄積してデータ出力するバッファメモリを備える。バッファメモリからのデータ出力にかかる信号は、無線通信部により増幅して無線信号として送出される。無線通信端末は、いずれかの通信方式によりデータ送信中は、他の通信方式に対応したバッファメモリからのデータ出力を停止させるようデータ出力を制御する。これにより、複数の通信方式により同時にデータ出力がなされるのを抑止して、無線通信部による信号の増幅等が複数の通信方式により同時になされないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の無線通信システムに対応した無線通信端末および通信制御方法に関するものであり、特に、消費電力の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の無線通信方式に対応した無線通信端末が広く用いられている。例えば、CDMA(Code Division Multiple Access)方式により音声通信を行い、LTE (Long Term Evolution)やWiFiによりデータ通信を行う無線通信端末がある。無線通信端末は、各通信方式に対応してアンテナや増幅器などの構成を備える。
【0003】
このような複数の通信方式を同時に使用する例も増えている。例えば、音声通信とデータ通信を同時に実行できるSV−LTE(Simultaneous Voice-Long Term Evolution)に対応した無線通信端末が世界的に増えつつある。この場合は、無線通信端末は、データ通信(LTEなど)によりダウンロード等したまま音声通信(CDMAなど)をすることができる。
【0004】
また、無線通信端末をPC(Personal Computer)やタブレット端末、携帯型ゲーム機などの複数台の情報通信機器とWiFiにより接続し、無線通信端末をモバイルルーターとして機能させる例もある(非特許文献1参照)。これは、WiFiテザリング機能とも称されている。これにより、ユーザは、無線通信端末の通信方式を利用して、これら情報通信機器をインターネット接続させることができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】KDDI株式会社 プレスリリース(2011年9月28日)「auの携帯電話を使ったテザリングサービス「アタッチWiFi」提供開始」、[平成23年11月1日検索]、インターネット(http://www.kddi.com/corporate/news_release/2011/0928/index.html)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、このように複数の通信方式を同時に使用すると、それぞれの通信方式に対応した構成(RF部、パワーアンプなど)が同時に動作し、消費電力が増大するため早期に電池の充電が切れる場合がある。
【0007】
そこで、本発明は、複数の通信方式に対応した無線通信端末において、電池の充電を長く持たせることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の構成を備える。本発明は、複数の通信方式に対応した無線通信端末であって、第1の通信方式による送信データを蓄積してデータ出力する第1のバッファメモリと、第2の通信方式による送信データを蓄積してデータ出力する第2のバッファメモリと、データ出力にかかる信号を増幅して無線信号として送出する無線通信部と、第1および第2のバッファメモリのうち、いずれか一方がデータ出力中はもう一方のバッファメモリからのデータ出力を停止させるバッファ制御部と、を備える。
【0009】
また、バッファ制御部は、第1および第2のバッファメモリのうち、データ出力をするバッファメモリを周期的に切り替えることとしてもよい。
【0010】
また、バッファ制御部は、複数の通信方式のうち低速のものに対応したバッファメモリにかかるデータ出力期間を、高速の通信方式に対応したバッファメモリのデータ出力期間よりも長くして切り替えを行うこととしてもよい。
【0011】
また、バッファ制御部は、通信方式それぞれの無線通信の実効速度に応じて、所定時間内における各通信方式のデータ送信量が同等となるよう第1および第2のバッファメモリそれぞれのデータ出力期間を設定して切り替えを行うこととしてもよい。
【0012】
また、無線通信端末は、通信方式のいずれかにより、他の1以上の情報通信機器と接続して情報通信機器のモバイルルーターとして機能するテザリング機能を有しており、バッファ制御部は、接続する情報通信機器の種類または数の少なくともいずれか一方に応じて、第1および第2のバッファメモリそれぞれのデータ出力期間を設定して切り替えを行うこととしてもよい。
【0013】
また、通信方式には、IEEE802.11規格による無線通信が含まれ、無線通信端末は、IEEE802.11規格の通信方式により他の複数の情報通信機器と接続して情報通信機器のモバイルルーターとして機能するものであることとしてもよい。
【0014】
また、バッファ制御部は、各通信方式の通信量の履歴に応じて第1および第2のバッファメモリそれぞれのデータ出力期間を設定して切り替えを行うこととしてもよい。
【0015】
また、バッファ制御部は、第1および第2のバッファメモリそれぞれのデータ蓄積量に応じて、第1および第2のバッファメモリそれぞれのデータ出力期間を設定して切り替えを行うこととしてもよい。
【0016】
また、通信方式にはIEEE802.11規格による無線通信が含まれ、無線通信端末は、他の複数の情報通信機器とIEEE802.11規格の通信方式により接続して情報通信機器のモバイルルーターとして機能するものであり、バッファ制御部は、モバイルルーターとしての動作開始時に、第1および第2のバッファメモリのうち、いずれか一方がデータ出力中はもう一方のバッファメモリからのデータ出力を停止させるバッファ出力制限処理を開始することとしてもよい。
【0017】
また、本発明は、複数の通信方式に対応し、第1の通信方式による送信データを蓄積してデータ出力する第1のバッファメモリと、第2の通信方式による送信データを蓄積してデータ出力する第2のバッファメモリと、データ出力にかかる信号を増幅して無線信号として送出する無線通信部とを備えている無線通信端末における通信制御方法であって、第1および第2のバッファメモリのうち、いずれか一方がデータ出力中はもう一方のバッファメモリからのデータ出力を停止させるバッファ制御ステップを含む、通信制御方法でもある。
【発明の効果】
【0018】
無線通信端末では、通常、通信方式それぞれについて無線通信のためパワーアンプ等を備えて信号増幅などを行う無線通信部がある。無線通信部は、パワーアンプ等を備えることにより電力の消費が比較的大きい。
【0019】
一方、本発明によると、通信に要する電力を制御することで電池の充電が長時間持続させることができる無線通信端末、および、通信制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明にかかる無線通信端末100を含む移動体通信システム1の構成例を示す図である。
【図2】本発明の無線通信端末100の機能ブロック図である。
【図3】WiFiテザリング機能を発揮させる際の無線通信端末100の動作を示すフローチャートである。
【図4】LTEバッファ34とWiFiバッファ44のデータ出力期間を固定周期とする場合を示す図である。
【図5】LTEバッファ34とWiFiバッファ44のデータ出力期間を、通信方式の通信速度に応じて固定周期とする場合を示す図である。
【図6】LTEバッファ34とWiFiバッファ44のデータ出力期間が、通信環境に応じて変更される場合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
1 全体構成
以下、本発明にかかる無線通信端末100について図面を用いて説明する。
【0022】
図1は、本発明にかかる無線通信端末100を含む移動体通信システム1の構成例を示す図である。
【0023】
図1に示すように、移動体通信システム1は、無線通信端末100と、CDMA基地局200と、LTE基地局300と、無線通信機器群400とからなる。
【0024】
CDMA基地局200は、CDMA 1x方式に対応した無線基地局である。CDMA基地局200は、無線通信端末100と通信経路201(CDMA 1x方式)で接続され、無線通信端末100による音声通信方式に対応している。
【0025】
LTE基地局300は、LTE方式に対応した無線基地局である。LTE基地局300は、無線通信端末100と通信経路301(LTE方式)で接続され、無線通信端末100によるデータ通信に対応している。
【0026】
無線通信機器群400は、WiFi方式(例えばIEEE 802.11n規格)により無線通信可能な情報通信機器である。情報通信機器とは、例えば、同図に示すように、ゲームハード411や、モバイルPC412や、モバイルゲーム機413などである。無線通信機器群400に含まれる情報通信機器は、無線通信端末100とWiFiにより通信可能であり、無線通信端末100がモバイルルーターとして機能することで(WiFiテザリング)、通信経路401を介してインターネット接続することができる。
【0027】
2 無線通信端末100の構成
図2は、無線通信端末100の機能ブロック図である。
【0028】
2.1 無線通信端末100の構成
図2に示すように、無線通信端末100は、CDMA無線通信部21と、CDMAアンテナ22と、LTE無線通信部31と、LTEアンテナ32と、WiFi無線通信部41と、WiFiアンテナ42と、ベースバンド部10と、表示部6と、音声出力部7と、音声入力部8と、操作部9と、を備える。
【0029】
CDMA無線通信部21は、音声用RF_IC25を含む。音声用RF_IC25は、ベースバンド部10からの信号をアンテナ送信周波数へと変換し、また、アンテナ受信信号をベースバンド部10で処理できる周波数へと変換する。
【0030】
CDMA無線通信部21は、CDMAによる通信方式に対応している。CDMA基地局200を介して他の無線通信端末やインターネットに接続されたWebサーバ等からのデータ通信にかかる無線信号をCDMAアンテナ22で受信すると、CDMA無線通信部21は、この受信信号に対して音声用RF_IC25により信号処理等を行ってベースバンド部10に出力する。
【0031】
また、CDMA無線通信部21は、ベースバンド部10で生成された送信信号に対して音声用RF_IC25により信号処理等を行って、処理後の送信信号を、CDMAアンテナ22を通じて、CDMA基地局200を介して他の無線通信端末やインターネットに接続された通信装置に対して送信する。
【0032】
LTE無線通信部31やWiFi無線通信部41は、CDMA無線通信部21とほぼ同様の機能を発揮する。CDMA無線通信部21との相違点は、LTE無線通信部31がLTE方式に対応していること、WiFi無線通信部41がWiFiに対応していることである。それぞれ詳しく説明すると、LTE無線通信部31は、データ通信用RF_IC35を含む。データ通信用RF_IC35は、ベースバンド部10からの信号をアンテナ送信周波数へと変換し、また、アンテナ受信信号をベースバンド部10で処理できる周波数へと変換する。
【0033】
LTE無線通信部31は、LTEによる通信方式に対応している。LTE基地局300を介してデータ通信にかかる無線信号をLTEアンテナ32で受信すると、LTE無線通信部31は、この受信信号に対してデータ通信用RF_IC35により信号処理等を行ってベースバンド部10に出力する。
【0034】
また、LTE無線通信部31は、ベースバンド部10で生成された送信信号に対してデータ通信用RF_IC35により信号処理等を行って、処理後の送信信号を、LTEアンテナ32を通じて、LTE基地局300を介して送信する。
【0035】
同様に、WiFi無線通信部41は、WiFi用RF_IC45を含む。WiFi用RF_IC45は、ベースバンド部10からの信号をアンテナ送信周波数へと変換し、また、アンテナ受信信号をベースバンド部10で処理できる周波数へと変換する。
【0036】
WiFi無線通信部41は、WiFiによる通信方式に対応している。無線通信機器群400からの無線信号をWiFiアンテナ42で受信すると、WiFi無線通信部41は、この受信信号に対してWiFi用RF_IC45により信号処理等を行ってベースバンド部10に出力する。
【0037】
また、WiFi無線通信部41は、ベースバンド部10で生成された送信信号に対してWiFi用RF_IC45により信号処理等を行って、処理後の送信信号を、WiFiアンテナ42を通じて送信する。
【0038】
また、CDMA無線通信部21、LTE無線通信部31、WiFi無線通信部41には、それぞれ図示しないパワーアンプが含まれており、各アンテナより信号を送信するため信号を増幅する。
【0039】
ベースバンド部10は、記憶部13、バッファ制御部16、CDMA処理部23、LTE処理部33、LTEバッファ34、WiFi処理部43、WiFiバッファ44を含む。ベースバンド部10は、図示しないCPU(Central Processing Unit)を備えている。このCPUが記憶部13に格納されたプログラムを読み出して実行することにより、ベースバンド部10は、バッファ制御部16等の機能を発揮して無線通信端末100の動作を統括的に管理する。
【0040】
記憶部13は、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等で構成されている。
【0041】
CDMA処理部23は、CDMA方式による通信に対応しており、送受信されるデータについて変調処理および復調処理を行う。
【0042】
LTE処理部33は、LTE方式による通信に対応しており、送受信されるデータについて変調処理および復調処理を行う。
【0043】
WiFi処理部43は、IEEE802.11規格による通信に対応しており、送受信されるデータについて変調処理および復調処理を行う。
【0044】
LTEバッファ34は、LTE無線通信部31により送信するデータを格納するためのバッファメモリである。
【0045】
WiFiバッファ44は、WiFi無線通信部41により送信するデータを格納するためのバッファメモリである。
【0046】
バッファ制御部16は、データ送信の際に、LTE無線通信部31およびWiFi無線通信部41による送信が同時になされないよう、LTEバッファ34およびWiFiバッファ44のデータ出力を制御する。詳しくは後述する。
【0047】
表示部6は、ディスプレイ等を備え、ベースバンド部10によって制御されることによって、文字、記号、図形などの各種情報を表示する。
【0048】
音声出力部7は、スピーカ等を備え、ベースバンド部10からの音声データを音声に変換して外部に出力する。
【0049】
音声入力部8は、マイク等を備え、外部から入力される音声を音声データに変換してベースバンド部10に出力する。
【0050】
操作部9は、キーパッド等を備えて、ユーザからの操作を検出してベースバンド部10に出力する。
【0051】
3 無線通信端末100の動作
次に、無線通信端末100の動作について説明する。
【0052】
本実施形態の説明では、無線通信端末100がWiFiテザリングによって無線通信機器群400の情報通信機器のモバイルルーターとして機能する場合に、無線通信端末100からのデータ送信時にデータ通信用RF_IC35とWiFi用RF_IC45のうちいずれか一方を使用し、他方の使用を制限することで、主にLTE無線通信部31およびWiFi無線通信部41における所定時間内の電力の消費量の低減を図る。これを実現するため、バッファ制御部16は、データを送信するための送信バッファ(LTEバッファ34およびWiFiバッファ44)のデータ出力を所定間隔で切り替えていく。
【0053】
以下、具体的に説明する。
3.1 WiFiテザリングアプリ起動時の動作
無線通信端末100は、ユーザの操作等によりWiFiテザリング機能を発揮させるための設定を受け付けると、上記のLTEバッファ34およびWiFiバッファ44のデータ出力制御をする。
【0054】
図3は、WiFiテザリング機能を発揮させる際の無線通信端末100の動作を示すフローチャートである。
【0055】
図3に示すように、ベースバンド部10は、ユーザの操作等によりWiFiテザリング機能の設定を開始すると、無線通信端末100をモバイルルーターとして機能させるための設定をユーザから受け付ける(S301)。例えば、外部の情報通信機器がWiFiにより無線通信端末100と接続するため、無線通信端末100がモバイルルーターとして機能するためのルーター名(SSID:Service Set ID)や暗号化方式、パスワード等を設定する。
【0056】
ベースバンド部10は、WiFiテザリングにより接続する情報通信機器を管理するため、どの情報通信機器との接続を許可するかの設定を受け付ける(S303)。また、ベースバンド部10は、インターネットに接続する情報通信機器の最大数(上限)の設定を受け付ける。
【0057】
ベースバンド部10は、WiFiテザリングの設定が完了すると、バッファ制御部16により、LTEバッファ34とWiFiバッファ44のバッファのデータ出力を所定周期で切り替えてWiFiテザリングによる通信を実行する(S305)。詳しくは後述する。
【0058】
ベースバンド部10は、WiFiテザリングによる通信が終了するまで(S307:NO)は上記のステップS305によりLTEバッファ34とWiFiバッファ44のデータ出力を制御する。ベースバンド部10は、WiFiテザリングによる通信が終了すると(例えば、ユーザがWiFiテザリングを終了させる操作を行う)、バッファ制御部16によるLTEバッファ34とWiFiバッファ44のデータ出力の制御を終了する(S309)。
【0059】
4 各バッファの出力制御
次に、上記ステップS305におけるバッファ制御部16の処理について説明する。ベースバンド部10は、バッファ制御部16により、LTEバッファ34とWiFiバッファ44のいずれか一方から送信データが出力されるようバッファからのデータ出力を制御する。データを出力させたりデータ出力を停止させたりする周期の定め方は様々ある。
【0060】
例えば、(1)通信環境等にかかわらず周期を固定してもよい。
また、(2)各通信方式による通信がどの程度の通信速度でなされているか、また、WiFiにより無線通信端末100と接続する情報通信機器の種類や数がどれだけあるか、など無線通信端末100の外部の通信環境に応じて周期を定めてもよい。
【0061】
また、(3)LTEバッファ34やWiFiバッファ44の使用状況など無線通信端末100の内部状況に応じて周期を定めてもよい。
【0062】
4.1 周期を固定する場合
図4は、LTEバッファ34とWiFiバッファ44のデータ出力期間を固定周期とする場合を示す図である。
【0063】
同図に示すように、ベースバンド部10は、バッファ制御部16により、LTEバッファ34とWiFiバッファ44のバッファメモリからのデータ出力を、周期Tpで交互に切り替えることとしてもよい。バッファ制御部16は、LTEバッファ34とWiFiバッファ44のうち、いずれか一方のバッファメモリからのデータ出力となるよう、周期Tpごとにバッファメモリからデータを出力させたり、データ出力を停止させる。
【0064】
図5は、LTEバッファ34とWiFiバッファ44のデータ出力期間を、通信方式の通信速度に応じて固定周期とする場合を示す図である。
【0065】
同図では、LTEバッファ34からのデータ出力の一区間の長さをTAとし、WiFiバッファ44からのデータ出力の一区間の長さをTBとしている。期間TA>TBである。各通信方式のデータ出力の一区間の長さは、予め記憶部13に保持しておく。この例では、LTE方式とWiFiのうち、LTE方式による通信の場合のバッファメモリからのデータ送信の一区間を長くしている。
【0066】
4.2 外部の通信環境に応じて周期を変更する場合
(通信速度等に応じた制御)
無線通信端末の通信環境は刻一刻と変化するため、各通信方式の通信速度も、時間や場所等に応じて変化していく。そこで、無線通信端末100に各通信方式の通信速度を測定する構成を備えさせることで、バッファ制御部16によるバッファからのデータ出力切り替えのタイミングも通信環境に応じたものとすることができる。例えば、より通信速度が遅い通信方式ほどバッファメモリからデータを送信する一区間の期間を長くすることが考えられる。
【0067】
図6は、LTEバッファ34とWiFiバッファ44のデータ出力期間が、通信環境に応じて変更される場合を示す図である。
【0068】
同図では、LTEバッファ34とWiFiバッファ44のデータ出力期間の比がT1:T2であったのが、時間t1において、T3:T4となり、LTEバッファ34のデータ出力期間が相対的に長くなったことを示している。例えば(1)LTE方式による通信速度が所定値以下に低下した、(2)LTE基地局300からの信号受信強度が所定値以下に低下した等の測定結果を受けて、同図に示すようにバッファメモリからのデータ出力期間を通信方式ごとに変更している。
【0069】
同図に示すように、複数の通信方式による同時通信を開始した後においても、動的にバッファメモリからのデータ出力期間を変更することとしてもよい。
【0070】
(情報通信機器の種類や数に応じた制御)
この他に、無線通信端末100をモバイルルーターとして使用する場合は、複数の情報通信機器をWiFiにより無線通信端末100と接続することができる。ここで、WiFiにより接続する情報通信機器がどれだけ通信を行うか、情報通信機器に応じて定まる場合もある。例えば動画等を再生するための情報通信機器であれば、通信量は比較的大きくなる。
【0071】
そのため、WiFiにより無線通信端末100と接続する情報通信機器の種類に応じて、バッファ制御部16によるバッファからのデータ出力切り替えのタイミングを設定することとしてもよい。すなわち、WiFiにより無線通信端末100と接続する情報通信機器の種類に応じて、バッファ制御部16がWiFiバッファ44によりデータ出力をする一区間の長さを定める。例えば、PCをWiFiにより無線通信端末100と接続する場合は、WiFiバッファ44のデータ出力をする一区間を比較的長くする。一方、比較的データ通信量の少ない端末をWiFiにより無線通信端末100と接続する場合は、WiFiバッファ44のデータ出力をする一区間を短縮する、等としてもよい。
【0072】
また、上記のようにWiFiにより情報通信機器を無線通信端末100と接続する場合、無線通信端末100と接続する情報通信機器の数によってもWiFiによる通信量が定まることがある。そのため、WiFiにより無線通信端末100と接続する情報通信機器の数に応じて、バッファ制御部16によるバッファからのデータ出力切り替えのタイミングを設定することとしてもよい。例えば、WiFiにより無線通信端末100と接続する情報通信機器の数ごとに、バッファ制御部16がWiFiバッファ44によりデータ送信する期間の一区間の長さを設定しておく。
【0073】
上記のようなバッファメモリからデータ送信する期間を設定する処理は、情報通信機器が新たに接続されたり接続が解除されるたびに実行することとしてもよい。
【0074】
4.3 無線通信端末100におけるデータ送信状況に応じて周期を定める場合
各バッファメモリに蓄積されているデータ量が大きいほど送信すべきデータが残っていることになる。また、過去の通信量が大きい通信方式ほど頻繁に利用されていることになる。そこで、このようなデータ送信状況に応じてバッファ制御部16によるバッファメモリのデータ送信間隔を定めることとしてもよい。
【0075】
(過去の通信実績に応じた制御)
この他にも、通信方式の通信の履歴に基づいて、バッファメモリからのデータ出力の期間を設定することとしてもよい。例えば、LTE方式による通信量と、WiFiによる通信量の履歴に応じてバッファ制御部16によるバッファからのデータ出力切り替えのタイミングを変更することとしてもよい。
【0076】
例えば、通信量の実績が大きいほど、よく利用されている通信方式とみなしてバッファ制御部16による各バッファメモリのデータ送信期間を長くする等としてもよい。
【0077】
(バッファ蓄積量に応じた制御)
また、LTEバッファ34およびWiFiバッファ44において、バッファメモリに蓄積されているデータ量が大きいほど、送信すべきデータが残されていることとなるので、各バッファメモリのデータ蓄積量に応じてバッファ制御部16によるバッファからのデータ出力切り替えのタイミングを変更することとしてもよい。
【0078】
例えば、バッファメモリのデータ蓄積量が所定の閾値を越えた場合は、そのバッファメモリのデータ送信の一区間を長くする。例えば、LTEバッファ34のデータ蓄積量が所定割合を超えると、バッファ制御部16は、LTEバッファ34からデータを送信する期間の一区間を長くする。図6の例のように、LTEバッファ34からデータを送信する期間の一区間をT1からT3へと長くする(LTEバッファ34のWiFiバッファ44に対するデータ送信期間の一区間の長さの比率を大きくする)。
【0079】
(具体的な状況)
上記のように各バッファメモリのデータ送信期間を制御する場合、具体的には、下記のような状況がある。例えば、無線通信端末100が、(1)LTEによりインターネットに接続してファイルをダウンロードしつつ、(2)Wifiテザリング機能によりプリンタと接続してプリントアウトを実行する状況を想定する。
【0080】
上記(1)のダウンロードに要する時間と、(2)のプリントアウトのためにプリンタにファイル送信する時間とを比較し、早く処理が完了する方に、より長いバッファ出力期間を与えるようバッファメモリからのデータ送信の期間を長くしてもよい。
【0081】
また、予め優先度の高い処理の設定を受け付けておいて、優先度に従ってバッファメモリからのデータ送信の期間を設定してもよい。例えば、プリントアウトの処理を優先することとしている場合は、(1)のダウンロード中であっても、(2)のプリントアウトのためにWifiによるデータ送信の期間を長くしてもよい。
【0082】
<変形例>
上述のように本発明の実施形態について説明してきたが、上記の例に限らず、例えば下記のようにすることもできる。
【0083】
(バッファ制御部16によるバッファ出力制御開始のトリガー)
上記実施形態では、無線通信端末100がWiFiテザリングを開始することをトリガーとしてバッファ制御部16によるバッファ出力制御を開始することとしている(S305)。これに限らず、常にバッファ出力制御することとしてもよいし、新たに情報通信機器とWiFiにより接続した際にLTEバッファ34等のバッファ出力制御することとしてもよい。
【0084】
(バッファ出力制御する通信方式)
上記実施形態では、LTEとWiFiにより同時にデータ送信する可能性がある場合に、バッファ制御部16によるバッファ出力制御をしている。通信方式の組み合わせはLTEとWiFiの場合に限らず、他の通信方式の組み合わせであってもよい。
【0085】
例えばCDMAとLTEの組み合わせの場合においても、CDMAによるデータ送信のためのバッファを設け、上述のように各通信方式によるデータの送信が同時になされないようバッファからのデータ送信を周期的に停止させる等により、消費電力を減少させることができる。
【0086】
上記のように本発明の実施の形態について説明してきた。本発明によると、各通信方式に対応したバッファメモリのうちいずれかからデータが出力されるように制御され、複数のバッファメモリから同時にデータが出力されることがない。すなわち通信方式それぞれに対応した無線通信部が、データ送信時に同時に動作することがなく、通信に要する電力を制御することができる。
【0087】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものでないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、移動体通信システムなどにおける無線通信端末に用いることができる。
【符号の説明】
【0089】
1 移動体通信システム、6 表示部、7 音声出力部、8 音声入力部、9 操作部、10 ベースバンド部、13 記憶部、16 バッファ制御部、21 CDMA無線通信部、31 LTE無線通信部、41 WiFi無線通信部、22 CDMAアンテナ、32 LTEアンテナ、42 WiFiアンテナ、23 CDMA処理部、33 LTE処理部、43 WiFi処理部、34 LTEバッファ、44 WiFiバッファ、25 音声用RF_IC、35 データ通信用RF_IC、45 WiFi用RF_IC、100 無線通信端末、200 CDMA基地局、300 LTE基地局、201,301,401 通信経路、400 無線通信機器群、411 ゲームハード、412 モバイルPC、413 モバイルゲーム機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の通信方式に対応した無線通信端末であって、
第1の通信方式による送信データを蓄積してデータ出力する第1のバッファメモリと、
第2の通信方式による送信データを蓄積してデータ出力する第2のバッファメモリと、
前記データ出力にかかる信号を増幅して無線信号として送出する無線通信部と、
前記第1および第2のバッファメモリのうち、いずれか一方がデータ出力中はもう一方のバッファメモリからのデータ出力を停止させるバッファ制御部と、
を備える無線通信端末。
【請求項2】
前記バッファ制御部は、前記第1および第2のバッファメモリのうち、データ出力をするバッファメモリを周期的に切り替える、
請求項1記載の無線通信端末。
【請求項3】
前記バッファ制御部は、前記複数の通信方式のうち低速のものに対応した前記バッファメモリにかかるデータ出力期間を、高速の通信方式に対応したバッファメモリのデータ出力期間よりも長くして前記切り替えを行う、
請求項2記載の無線通信端末。
【請求項4】
前記バッファ制御部は、前記通信方式それぞれの無線通信の実効速度に応じて、所定時間内における各通信方式のデータ送信量が同等となるよう前記第1および第2のバッファメモリそれぞれのデータ出力期間を設定して前記切り替えを行う、
請求項2記載の無線通信端末。
【請求項5】
前記無線通信端末は、前記通信方式のいずれかにより、他の1以上の情報通信機器と接続して前記情報通信機器のモバイルルーターとして機能するテザリング機能を有しており、
前記バッファ制御部は、前記接続する情報通信機器の種類または数の少なくともいずれか一方に応じて、前記第1および第2のバッファメモリそれぞれのデータ出力期間を設定して前記切り替えを行う、
請求項2記載の無線通信端末。
【請求項6】
前記通信方式には、IEEE802.11規格による無線通信が含まれ、前記無線通信端末は、IEEE802.11規格の通信方式により他の複数の情報通信機器と接続して前記情報通信機器のモバイルルーターとして機能するものである、
請求項5記載の無線通信端末。
【請求項7】
前記バッファ制御部は、各通信方式の通信量の履歴に応じて前記第1および第2のバッファメモリそれぞれのデータ出力期間を設定して前記切り替えを行う、
請求項2記載の無線通信端末。
【請求項8】
前記バッファ制御部は、前記第1および第2のバッファメモリそれぞれのデータ蓄積量に応じて、前記第1および第2のバッファメモリそれぞれのデータ出力期間を設定して前記切り替えを行う、
請求項2記載の無線通信端末。
【請求項9】
前記通信方式にはIEEE802.11規格による無線通信が含まれ、前記無線通信端末は、他の複数の情報通信機器とIEEE802.11規格の通信方式により接続して前記情報通信機器のモバイルルーターとして機能するものであり、
前記バッファ制御部は、前記モバイルルーターとしての動作開始時に、前記第1および第2のバッファメモリのうち、いずれか一方がデータ出力中はもう一方のバッファメモリからのデータ出力を停止させるバッファ出力制限処理を開始する、
請求項1記載の無線通信端末。
【請求項10】
複数の通信方式に対応し、第1の通信方式による送信データを蓄積してデータ出力する第1のバッファメモリと、第2の通信方式による送信データを蓄積してデータ出力する第2のバッファメモリと、前記データ出力にかかる信号を増幅して無線信号として送出する無線通信部とを備えている無線通信端末における通信制御方法であって、
前記第1および第2のバッファメモリのうち、いずれか一方がデータ出力中はもう一方のバッファメモリからのデータ出力を停止させるバッファ制御ステップを含む、
通信制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−115543(P2013−115543A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258704(P2011−258704)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】