説明

無線通信装置、情報処理装置および同装置のアンテナ制御方法

【課題】アンテナの受信感度について、省電力化を考慮した適応的な制御を行うことを実現した無線通信装置を提供する。
【解決手段】実施形態によれば、無線通信装置は、アンテナが各々接続される複数のコネクタと、前記複数のコネクタと一対に設けられ、各々のコネクタに接続されたアンテナの出力を増幅する複数のアンプと、前記複数のアンプと一対に設けられ、各々のアンプのゲイン値を制御する複数のアンプ制御手段とを具備する。前記複数のアンプ制御手段は、自身に接続されているアンテナの受信状態を判定する判定手段と、前記判定手段の判定結果を他のアンプ制御手段に通知する通知手段と、他のアンプ制御手段から通知される当該他のアンプ制御手段に接続されているアンテナの受信状態に応じて、自身に接続されているアンプのゲイン値を調整するゲイン値調整手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、例えば、無線LAN(Local area network)の一規格であるIEEE802.11nで採用されるMIMO(Multiple input output multiple output)技術を適用する無線通信装置、情報処理装置および同装置のアンテナ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、バッテリ駆動可能で携行容易なノートブックタイプのパーソナルコンピュータが広く普及している。また、公衆無線LANサービス等も充実してきており、無線LAN機能を搭載するパーソナルコンピュータを用いれば、屋外でも電子メールの送受信やWebページの閲覧などを行うことが可能である。
【0003】
無線LANは、電波を利用して通信を行うものなので、データを安定して受信できるレベルにアンテナの受信感度を維持する必要がある。このようなことから、アンテナの受信感度を向上させるための仕組みが、これまでも種々提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−308636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ノートブックタイプ等の可搬型のパーソナルコンピュータでは、バッテリ駆動時における連続稼働可能時間も非常に重要である。そのため、省電力化のための仕組みが数多く組み込まれている。
【0006】
従って、アンテナの受信感度についても、一律に向上させるのではなく、データの受信に必要とされる最低限の受信感度となるように調整する等、省電力化を考慮した適応的な制御を行うことが好ましい。
【0007】
本発明は、アンテナの受信感度について、省電力化を考慮した適応的な制御を行うことを実現した無線通信装置、情報処理装置および同装置のアンテナ制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態によれば、無線通信装置は、アンテナが各々接続される複数のコネクタと、前記複数のコネクタと一対に設けられ、各々のコネクタに接続されたアンテナの出力を増幅する複数のアンプと、前記複数のアンプと一対に設けられ、各々のアンプのゲイン値を制御する複数のアンプ制御手段とを具備する。前記複数のアンプ制御手段は、自身に接続されているアンテナの受信状態を判定する判定手段と、前記判定手段の判定結果を他のアンプ制御手段に通知する通知手段と、他のアンプ制御手段から通知される当該他のアンプ制御手段に接続されているアンテナの受信状態に応じて、自身に接続されているアンプのゲイン値を調整するゲイン値調整手段とを有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態の情報処理装置の外観を示す図。
【図2】実施形態の情報処理装置のシステム構成を示す図。
【図3】実施形態の情報処理装置が搭載する無線通信モジュールの構成を示す図。
【図4】実施形態の情報処理装置が搭載する無線通信モジュールの動作を示す第1の図。
【図5】実施形態の情報処理装置が搭載する無線通信モジュールの動作を示す第2の図。
【図6】実施形態の情報処理装置が搭載する無線通信モジュール内のMACコントローラが実行するパワーアンプのゲイン値設定処理手順の一例を示すフローチャート。
【図7】実施形態の情報処理装置が搭載する無線通信モジュール内のMACコントローラが実行するパワーアンプのゲイン値適正化処理の概念を示す図。
【図8】実施形態の情報処理装置が搭載する無線通信モジュール内のMACコントローラが実行するパワーアンプのゲイン値適正化処理手順の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態について図面を参照して説明する。
【0011】
図1は、実施形態の情報処理装置の外観を示す図である。本情報処理装置は、無線LAN機能を搭載する、例えば、バッテリ駆動可能なノートブッックタイプのパーソナルコンピュータ10として実現されている。
【0012】
図1は、このコンピュータ10のディスプレイユニットを開いた状態における斜視図である。コンピュータ10は、コンピュータ本体11と、ディスプレイユニット12とから構成される。ディスプレイユニット12には、LCD(Liquid crystal display)17が組み込まれており、LCD17の表示画面はディスプレイユニット12のほぼ中央に位置されている。
【0013】
ディスプレイユニット12は、コンピュータ本体11にヒンジ部20を介して回動自在に取り付けられている。ヒンジ部20はコンピュータ本体11にディスプレイユニット12を連結する連結部である。即ち、ディスプレイユニット12は、コンピュータ本体11の後端部に配置されたヒンジ部20によって支持されている。ディスプレイユニット12は、コンピュータ本体11に対してコンピュータ本体11の上面が露出される開放位置とコンピュータ本体11の上面がディスプレイユニット12によって覆われる閉塞位置との間をヒンジ部20によって回動自在に取り付けられている。
【0014】
コンピュータ本体11は、薄い箱形の筐体を有するベースユニットであり、その上面には、キーボード13、本コンピュータ10をパワーオン/パワーオフするためのパワーボタン14、入力操作パネル15、タッチパッド16、スピーカ18A,18Bなどが配置されている。入力操作パネル15上には、各種操作ボタンが設けられている。また、コンピュータ本体11内部には、各種電子部品が設けられたシステム基板(マザーボードともいう)が設けられている。そして、このシステム基板上に、無線LAN機能を提供する無線通信モジュール112が設けられている。無線通信モジュール112は、例えば、無線LANの一規格であるIEEE802.11nで採用されるMIMO技術を適用して外部デバイスとの無線通信を実行するモジュールである。無線通信モジュール112は、無線信号(RF信号)を送受信するためのアンテナ端子を有しており、このアンテナ端子と、ディスプレイユニット12内の例えば上端部に設けられるアンテナ1a,1bとが、ヒンジ部20を介してコンピュータ本体11からディスプレイユニット12内に導かれる信号線2a,2bによって結合されている。アンテナ1a,1bがディスプレイユニット12内の上端部に設けられることで、無線通信モジュール112は、アンテナ1a,1bが比較的高い位置に配置された状態で外部デバイスとの無線通信を実行することができる。
【0015】
また、コンピュータ本体11の右側面には、例えばUSB(Universal serial bus)2.0規格に対応したUSBケーブルやUSBデバイスを接続するためのUSBコネクタ19が設けられている。
【0016】
図2は、コンピュータ10のシステム構成を示す図である。
【0017】
コンピュータ10は、図2に示されているように、CPU(Central processing unit)101、ノースブリッジ102、主メモリ103、サウスブリッジ104、GPU(Graphics processing unit)105、VRAM(ビデオRAM:Random access memory)105A、サウンドコントローラ106、BIOS−ROM(Basic input/output system-read only memory)107、LANコントローラ108、ハードディスクドライブ(HDD:Hard disk drive)109、光ディスクドライブ(ODD:Optical disc drive)110、USBコントローラ111、無線通信モジュール112、各種周辺機器113、エンベデッドコントローラ/キーボードコントローラ(EC/KBC:Embedded controller/keyboard controller)114、EEPROM(electrically erasable programmable ROM)115等を備える。
【0018】
CPU101は、コンピュータ10内の各部の動作を制御するプロセッサである。CPU101は、HDD109から主メモリ103にロードされる、オペレーティングシステム(OS)や各種アプリケーションプログラム等を実行する。また、CPU101は、BIOS−ROM107に格納されたBIOSも実行する。BIOSは、ハードウェア制御のためのプログラムである。
【0019】
ノースブリッジ102は、CPU101のローカルバスとサウスブリッジ104との間を接続するブリッジデバイスである。ノースブリッジ102には、主メモリ103をアクセス制御するメモリコントローラも内蔵されている。また、ノースブリッジ102は、例えばPCI EXPRESS規格のシリアルバスなどを介してGPU105との通信を実行する機能も有している。
【0020】
GPU105は、コンピュータ10のディスプレイモニタとして使用されるLCD17を制御する表示コントローラである。GPU105によって生成される表示信号がLCD17に送られる。
【0021】
サウスブリッジ104は、PCI(Peripheral component interconnect)バス上の各種周辺機器113を制御する。また、サウスブリッジ104は、HDD109およびODD110を制御するためのIDE(Integrated drive electronics)コントローラを内蔵している。さらに、サウスブリッジ104は、サウンドコントローラ106、LANコントローラ108、USBコントローラ111および無線通信モジュール112との通信を実行する機能も有している。
【0022】
サウンドコントローラ106は音源デバイスであり、再生対象のオーディオデータをスピーカ18A,18Bに出力する。LANコントローラ108は、例えばIEEE 802.3規格の有線通信を実行する有線通信デバイスである。USBコントローラ111は、(USBコネクタ19を介して接続される)例えばUSB 2.0規格に対応した外部機器(USBデバイス)との通信を実行する。
【0023】
EC/KBC114は、電力管理のためのエンベデッドコントローラと、キーボード13およびタッチパッド16を制御するためのキーボードコントローラとが集積された1チップマイクロコンピュータである。EC/KBC114は、ユーザによるパワーボタン14の操作に応じてコンピュータ10をパワーオン/パワーオフする機能を有している。
【0024】
図3は、無線通信モジュール112の構成を示す図である。
【0025】
図3に示すように、無線通信モジュール112は、2つのパワーアンプ1121a,1121bと、2つのMAC(Media access control)コントローラ1122a,1122bと、制御モジュール1123とを有している。また、図3に示すように、アンテナ1a,1bは、パワーアンプ1121a,1121bにそれぞれ接続されている。なお、以下では、アンテナ1a,1bをアンテナ1、パワーアンプ1121a,1121bをパワーアンプ1121、MACコントローラ1122a,1122bをMACコントローラ1122と総称することがある。
【0026】
パワーアンプ1121a,1121bは、受信感度調整用のAGC(Auto gain control;受信用アンプ)を内蔵している。従って、パワーアンプ1121a,1121bのゲイン値を制御することで、アンテナ1a,1bの受信感度を個別に向上させることができる。通常、無線通信モジュールのパワーアンプは、ゲイン設定を、例えば強、中、弱の3段階程度で大まかに行えるように構成されているが、本無線通信モジュール112のパワーアンプ1121a,1121bは、ゲイン値を1〜2dB毎のステップで細かく上げ下げすることのできるタイプのものを採用する。
【0027】
MACコントローラ1122a,1122bは、このパワーアンプ1121a,1121bのゲイン値をそれぞれ制御する。また、MACコントローラ1122a,1122bは、互いに通信する機能を有している。無線通信モジュール112の消費電力量は、パワーアンプ1121a,1121bの消費電力量に支配される。そこで、本無線通信モジュール112は、2つのMACコントローラ1122a,1122bが協調しながら、(ゲイン値を1〜2dB毎のステップで細かく上げ下げすることのできる)パワーアンプ1121a,1121bのゲイン値をそれぞれ制御することにより、アンテナの受信感度について、省電力化を考慮した適応的な制御を行うことを実現したものであり、以下、この点について詳述する。
【0028】
なお、制御モジュール1123は、省電力設定を受け付けて、その設定内容をMACコントローラ1122a,1122bに伝達するインタフェース部である。省電力設定がなされていない場合、無線通信モジュール112は、省電力よりもデータ通信の高速化を優先し、2つのアンテナ1a,1bを用いてデータの送受信を実行する。一方、省電力設定がなされた場合、無線通信モジュール112は、データ通信の高速化よりも省電力を優先し、2つのアンテナ1a,1bの中の1つを用いてデータの送受信を実行する。MACコントローラ1122a,1122bは、パワーアンプ1121a,1121bを制御する際、この省電力設定も考慮する。
【0029】
無線通信モジュール112が電源オン状態になると、MACコントローラ1122a,1122bは、パワーアンプ1121a,1121bのゲイン値を、予め定められた初期値にそれぞれ設定する。この初期値は、様々な状況(例えば通信相手までの距離)を想定して統計的に算出された値であって、アンテナ1の受信感度がデータを受信できるか否かの平均的な閾値レベル、または、それよりもやや低いレベルとなる程度の値とする。
【0030】
ここでは、パワーアンプ1121a,1121bの2つのパワーアンプのうち、パワーアンプ1121aの方に主導権が与えられているものと想定する。無線通信モジュール112が電源オン状態となって、MACコントローラ1122a,1122bによってパワーアンプ1121a,1121bのゲイン値が初期値に設定された後、無線通信モジュール112が通信を開始した時、主導権が与えられたパワーアンプ1121aが、まず、アンテナ1aの電波受信状況(感度)を確認する。図4は、この時の無線通信モジュール112の動作を示す図である。
【0031】
いま、(初期値が比較的低いレベルの値であるため)アンテナ1aが電波を受信できていないものとする。この場合、MACコントローラ1122aは、MACコントローラ1122bに対し、”NG”を通知する(図4のa1)。一方、この”NG”の通知を受け取ったMACコントローラ1122bは、パワーアンプ1121bのゲイン値を1ステップ上げる(図4のa2)。
【0032】
また、”NG”の通知を受け取って、パワーアンプ1121bのゲイン値を1ステップ上げたMACコントローラ1122bは、MACコントローラ1122aと同様に、アンテナ1bの電波受信状況(感度)を確認する。図5は、この時の無線通信モジュール112の動作を示す図である。
【0033】
ここでも、アンテナ1bが電波を受信できていないものとすると、今度は、MACコントローラ1122bが、MACコントローラ1122aに対し、”NG”を通知する(図5のb1)。そして、今度は、この”NG”の通知を受け取ったMACコントローラ1122aが、パワーアンプ1121aのゲイン値を1ステップ上げる(図5のa2)。
【0034】
以降、MACコントローラ1122a,1122bが協働して、この図4および図5に示した動作を継続することにより、パワーアンプ1121a,1122bのゲイン値が交互に1ステップずつ上がっていくことになる。そうすると、アンテナ1a,1bの一方が電波を受信できる状態となる(初期値のゲイン値で電波を受信できた場合には両方)。
【0035】
自身に接続されたアンテナ1が受信可能となった側のMACコントローラ1122は、”OK”の通知を他方のMACコントローラ1122に通知する。例えばアンテナ1bが受信可能となったとすると、MACコントローラ1122bが、MACコントローラ1122aに対し、”OK”を通知することになる。
【0036】
この”OK”の通知を受け取った時、アンテナ1aは、いまだ受信できていない状態にある。ここで、MACコントローラ1122aは、無線通信モジュール112が省電力設定されているか否かを調べる。もし、省電力設定がなされていたら、MACコントローラ1122aは、(アンテナ1aが受信不可の状態であるにも関わらず)パワーアンプ1121aのゲイン値を上げることなく、MACコントローラ1122bに対し、”NG”を通知する。MACコントローラ1122bは、アンテナ1bが受信可能であることを認識しているので、この”NG”の通知を受け取っても、パワーアンプ1121bのゲイン値を上げることはしない。
【0037】
この結果、アンテナ1a,1bの一方(この例ではアンテナ1b)を用いた通信が確立することになる。つまり、2つのアンテナ1a,1bの中の1つを用いてデータの送受信を実行する体制が整えられることになる。また、受信可能となったアンテナ1側のパワーアンプ1121のゲイン値も、必要最低限の値に設定されることになる。このように、無線通信モジュール112は、省電力設定がなされている場合に、最低限の消費電力で通信することを実現する。
【0038】
一方、省電力設定がなされていなければ、MACコントローラ1122aは、アンテナ1aが受信可能となるまで、パワーアンプ1121aのゲイン値を、1ステップずつ継続的に上げていく。これにより、アンテナ1a,1bの両方を用いた通信が確立することになる。つまり、2つのアンテナ1a,1bを用いてデータの送受信を実行する体制が整えられることになる。この場合も、受信可能となった2つのアンテナ1それぞれのパワーアンプ1121のゲイン値は、必要最低限の値に設定されることになり、データ通信の高速化を優先しつつ、最低限の消費電力で通信することを実現する。
【0039】
このように、(アンテナ1a,1bが接続される)本無線通信モジュール112は、MACコントローラ1122a,1122bが、互いに接続されたアンテナの受信感度を確認し合いながら、受信可能な最低限のゲイン値をパワーアンプ1121a,1121bに設定し、かつ、アンテナ1本のみかアンテナ2本で受信するのかを確認した上で、パワーアンプ1121a,1121bのゲイン値を決定することにより、必要最低限の消費電力でパワーアンプ1121a,1121bを動作させることを可能とする。
【0040】
図6は、MACコントローラ1122が実行するパワーアンプ1121のゲイン値設定処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0041】
無線通信モジュール112が電源オン状態になると、MACコントローラ1122は、パワーアンプ1121のゲイン値を初期値に設定する(ステップA1)。その後、無線通信モジュール112が通信を開始すると、(主導権が与えられた)MACコントローラ1122は、アンテナ1の電波受信状況を確認する(ステップA2)。
【0042】
もし、電波受信可能な状態であれば(ステップA2のYES)、MACコントローラ1122は、”OK”を他方のMACコントローラに通知して(ステップA3)、パワーアンプ1121のゲイン値設定処理を終了する。一方、電波受信可能な状態でない場合(ステップA3のNO)、MACコントローラ1122は、”NG”を他方のMACコントローラに通知して(ステップA5)、他方のMACコントローラ1122からの通知を待機する(ステップA6)。主導権が与えられていないMACコントローラ1122は、ステップA1でパワーアンプ1121のゲイン値を初期値に設定した後、このステップA6の通知待機に移行する。このステップA6の通知待機以降は、すべてのMACコントローラ1122において処理手順が同じとなる。
【0043】
他方のMACコントローラ1122からの通知が”NG”であったならば(ステップA7のNO)、MACコントローラ1122は、パワーアンプ1121のゲイン値を1段階上げて(ステップA8)、アンテナ1の電波受信状況を確認する(ステップA2)。そして、MACコントローラ1122は、電波受信可能な状態であれば(ステップA2のYES)、”OK”を他方のMACコントローラ1122に通知して(ステップA4)、パワーアンプ1121のゲイン値設定処理を終了し、電波受信可能な状態でなければ(ステップA3のNO)、”NG”を他方のMACコントローラ1122に通知して(ステップA5)、他方のMACコントローラ1122からの通知を待機する(ステップA6)。
【0044】
つまり、いずれかのMACコントローラ1122が”OK”の通知を行うまで、ステップA6〜ステップA5(ステップA6,A7のNO,A8,A2,A3のNO,A5)の処理がMACコントローラ1122間で交互に実行されることになり、パワーアンプ1121のゲイン値がそれぞれ1段階ずつ上がっていくことになる。
【0045】
他方のMACコントローラ1122からの通知が”OK”であった場合(ステップA7のYES)、MACコントローラ1122は、無線通信モジュール112が省電力設定されているか否かを調べる(ステップA9)。省電力設定がなされていたならば(ステップA9のYES)、MACコントローラ1122は、(アンテナ1が電波受信不可の状態であるにも関わらず)パワーアンプ1121のゲイン値を上げることなく、”NG”を他方のMACコントローラ1122に通知して(ステップA5)、パワーアンプ1121のゲイン値設定処理を終了する。これにより、無線通信モジュール112による通信は、(必要最低限の受信感度に設定された)1本のアンテナ1によって実行されることとなる。
【0046】
一方、省電力設定がなされていなければ(ステップA9のNO)、MACコントローラ1122は、パワーアンプ1121のゲイン値を1段階上げて(ステップA11)、アンテナ1の電波受信状況を確認する(ステップA12)。MACコントローラ1122は、このステップA11,A12の処理を、アンテナ1が電波受信可能な状態となるまで繰り返し、電波受信可能な状態となったら(ステップA13のYES)、”OK”を他方のMACコントローラ1122に通知して(ステップA14)、パワーアンプ1121のゲイン値設定処理を終了する。これにより、無線通信モジュール112による通信は、(必要最低限の受信感度に設定された)2本のアンテナ1によって実行されることとなる。
【0047】
このように、本無線通信モジュール112は、第1に、ゲイン値を1〜2dB毎のステップで細かく上げ下げすることのできるパワーアンプ1121を採用し、第2に、このパワーアンプ1121のゲイン値を制御するMACコントローラ1122が協調的にゲイン値を上げていくこと仕組みを持つことにより、アンテナの受信感度について、省電力化を考慮した適応的な制御を行うことを可能とする。
【0048】
また、本無線通信モジュール112のMACコントローラ1122は、更なる省電力化を図るために、所定の間隔で、パワーアンプ1121のゲイン値を適正化するための処理を実行する。図7は、MACコントローラ1122が実行するパワーアンプ1121のゲイン値適正化処理の概念を示す図である。
【0049】
ここでは、MACコントローラ1122が、5分毎に、パワーアンプ1121のゲイン値適正化処理を実行するものと想定する。例えば、5分前と比較して、通信相手との距離が短縮された等の状況変化が発生していた場合、パワーアンプ1121のゲイン値を下げてもアンテナ1を受信可能な状態に維持し得ることが考えられる。そこで、MACコントローラ1122は、アンテナ1が受信可能な状態にある場合には、パワーアンプ1121のゲイン値を1ステップずつ下げる処理を実行する。
【0050】
また、MACコントローラ1122は、アンテナ1が受信不可の状態にある場合、パワーアンプ1121のゲイン値を1ステップずつ上げる処理を実行する。省電力設定がなされている最中に、例えば、5分前と比較して、通信相手との距離が延長された等の状況変化が発生していた場合を考える。このような場合、通信の確立に用いられているアンテナ1については、パワーアンプ1121のゲイン値が当該状況変化に即応して上げられるので、2本のアンテナ1の受信感度が乖離する。そこで、例えばこの乖離を解消すべく、MACコントローラ1122は、アンテナ1が受信不可の状態にある場合、パワーアンプ1121のゲイン値を1ステップずつ上げる処理を実行する。これによって、例えば、省電力設定が解除された場合の移行(2本のアンテナ1を必要最低限の受信感度で受信可能な状態にする)を速やかに完了させることを可能とする。
【0051】
つまり、MACコントローラ1122がパワーアンプ1121のゲイン値適正化処理を定期的に実行することによって、図7に示すように、受信可能な状態のアンテナ1については、省電力効果を期待することができ、受信不可の状態のアンテナ1については、受信感度向上を期待することができる。
【0052】
図8は、MACコントローラ1122が実行するパワーアンプ1121のゲイン値適正化処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0053】
MACコントローラ1122は、ゲイン値適正化処理の実行時、アンテナ1が電波受信可能な状態であった場合(ステップB1のYES)、パワーアンプ1121のゲイン値を1段階下げ(ステップB2)、アンテナ1の電波受信状況を確認する(ステップB3)。MACコントローラ1122は、このステップB2,B3の処理を、アンテナ1が電波不可の状態となるまで繰り返す。そして、電波受信不可の状態となったら(ステップB4のNO)、MACコントローラ1122は、続いて、無線通信モジュール112が省電力設定されているか否かを調べる(ステップB5)。
【0054】
省電力設定がなされていた場合(ステップB5のYES)、MACコントローラ1122は、”NG”を他方のMACコントローラ1122に通知して(ステップB6)、パワーアンプ1121のゲイン値適正化処理を終了する。一方、省電力設定がなされていない場合には(ステップB5のNO)、パワーアンプ1121のゲイン値を1段階上げ(ステップB7)、アンテナ1の電波受信状況を確認する(ステップB8)。MACコントローラ1122は、このステップB7,B8の処理を、アンテナ1が電波可能な状態となるまで繰り返す。そして、電波受信可能な状態となったら(ステップB9のYES)、MACコントローラ1122は、”OK”を他方のMACコントローラ1122に通知して(ステップB10)、パワーアンプ1121のゲイン値適正化処理を終了する。
【0055】
また、MACコントローラ1122は、ゲイン値適正化処理の実行時、アンテナ1が電波受信不可の状態であった場合も(ステップB1のNO)、パワーアンプ1121のゲイン値を1段階上げ(ステップB7)、アンテナ1の電波受信状況を確認する(ステップB8)。MACコントローラ1122は、このステップB7,B8の処理を、アンテナ1が電波可能な状態となるまで繰り返す。そして、電波受信可能な状態となったら(ステップB9のYES)、MACコントローラ1122は、”OK”を他方のMACコントローラ1122に通知して(ステップB10)、パワーアンプ1121のゲイン値適正化処理を終了する。
【0056】
以上の適正化処理により、省電力化設定がなされていた場合には、(通信の確立に用いられる)1本のアンテナ1が必要最低限の受信感度に設定され、かつ、(通信の確立に用いられない)他方のアンテナ1の受信感度も近傍のレベルに維持されることになり、省電力化設定がなされていない場合には、2本のアンテナ1それぞれが必要最低限の受信感度に設定されることになる。
【0057】
このように、本無線通信モジュールによれば、アンテナの受信感度について、省電力化を考慮した適応的な制御を行うことが実現される。
【0058】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0059】
1a,1b…アンテナ、2a.2b…信号線、10…パーソナルコンピュータ、11…コンピュータ本体、12…ディスプレイユニット、13…キーボード、14…パワーボタン、15…入力操作パネル、16…タッチパッド、17…LCD、18A,18B…スピーカ、19…USBコネクタ、20…ヒンジ部、101…CPU、102…ノースブリッジ、103…主メモリ、104…サウスブリッジ、105…GPU、106…サウンドコントローラ、107…BIOS−ROM、108…LANコントローラ、109…ハードディスクドライブ(HDD)、110…光ディスクドライブ(ODD)、111…USBコントローラ、112…無線通信モジュール、113…各種周辺機器、114…エンベデットコントローラ/キーボードコントローラ(EC/KBC)、1121a,1121b…パワーアンプ、1122a,1122b…MACコントローラ、1123…制御モジュール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナが各々接続される複数のコネクタと、
前記複数のコネクタと一対に設けられ、各々のコネクタに接続されたアンテナの出力を増幅する複数のアンプと、
前記複数のアンプと一対に設けられ、各々のアンプのゲイン値を制御する複数のアンプ制御手段と、
を具備し、
前記複数のアンプ制御手段は、
自身に接続されているアンテナの受信状態を判定する判定手段と、
前記判定手段の判定結果を他のアンプ制御手段に通知する通知手段と、
他のアンプ制御手段から通知される当該他のアンプ制御手段に接続されているアンテナの受信状態に応じて、自身に接続されているアンプのゲイン値を調整するゲイン値調整手段と、
を有する無線通信装置。
【請求項2】
前記複数のアンプ制御手段は、自身に接続されているアンテナの受信状態を互いに通知し合いながら、いずれかのアンプ制御手段によってアンテナが受信可能状態であることを示す通知が行われるまで、自身に接続されているアンプのゲイン値を初期値から1段階ずつ交互に上げていく請求項1記載の無線通信装置。
【請求項3】
省電力設定手段をさらに具備し、
前記複数のアンプ制御手段は、自身に接続されているアンテナが受信不可状態にある中で他のアンプ制御手段に接続されているアンテナが受信可能状態であることを示す通知を受けた場合、省電力設定手段によって省電力設定がなされていたならば、自身に接続されているアンプのゲイン値を上げることなく、自身に接続されているアンテナが受信不可状態であることを他のアンプ制御手段に通知する請求項2記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記複数のアンプ制御手段は、自身に接続されているアンテナが受信不可状態にある中で他のアンプ制御手段に接続されているアンテナが受信可能状態であることを示す通知を受けた場合、前記省電力設定手段によって省電力設定がなされていなければ、自身に接続されているアンテナが受信可能状態になるまで、自身に接続されているアンプのゲイン値を1段階ずつ上げていき、自身に接続されているアンテナが受信可能状態となったら、自身に接続されているアンテナが受信可能状態であることを他のアンプ制御手段に通知する請求項3記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記複数のアンプ制御手段は、所定の間隔で、自身に接続されているアンテナが受信可能状態にある場合、自身に接続されているアンプのゲイン値を1段階ずつ下げ、自身に接続されているアンテナが受信不可状態にある場合、自身に接続されているアンプのゲイン値を1段階ずつ上げていくゲイン値適正化手段をさらに有する請求項4記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記ゲイン値適正化手段は、前記省電力設定手段によって省電力設定がなされていない場合、受信可能状態にあるアンテナの出力を増幅するアンプのゲイン値を、当該アンテナが受信可能状態を維持可能な範囲内で下げる請求項5記載の無線通信装置。
【請求項7】
前記ゲイン値適正化手段は、前記省電力設定手段によって省電力設定がなされている場合、受信可能状態にあるアンテナの出力を増幅するアンプのゲイン値を当該アンテナが受信不可状態になるまで下げ、受信不可状態にあるアンテナの出力を増幅するアンプのゲイン値を当該アンテナが受信可能状態になるまで上げる請求項6記載の無線通信装置。
【請求項8】
複数のアンテナと、
前記複数のアンテナと一対に設けられ、各々のアンテナの出力を増幅する複数のアンプと、
前記複数のアンプと一対に設けられ、各々のアンプのゲイン値を制御する複数のアンプ制御手段と、
を具備し、
前記複数のアンプ制御手段は、
自身に接続されているアンテナの受信状態を判定する判定手段と、
前記判定手段の判定結果を他のアンプ制御手段に通知する通知手段と、
他のアンプ制御手段から通知される当該他のアンプ制御手段に接続されているアンテナの受信状態に応じて、自身に接続されているアンプのゲイン値を調整するゲイン値調整手段と、
を有する情報処理装置。
【請求項9】
前記複数のアンプ制御手段は、自身に接続されているアンテナの受信状態を通知し合いながら、いずれかのアンプ制御手段によってアンテナが受信可能状態であることを示す通知が行われるまで、自身に接続されているアンプのゲイン値を初期値から1段階ずつ交互に上げていく請求項8記載の情報処理装置。
【請求項10】
省電力設定手段をさらに具備し、
前記複数のアンプ制御手段は、自身に接続されているアンテナが受信不可状態にある中で他のアンプ制御手段に接続されているアンテナが受信可能状態であることを示す通知を受けた場合、省電力設定手段によって省電力設定がなされていたならば、自身に接続されているアンプのゲイン値を上げることなく、自身に接続されているアンテナが受信不可状態であることを他のアンプ制御手段に通知する請求項9記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記複数のアンプ制御手段は、自身に接続されているアンテナが受信不可状態にある中で他のアンプ制御手段に接続されているアンテナが受信可能状態であることを示す通知を受けた場合、前記省電力設定手段によって省電力設定がなされていなければ、自身に接続されているアンテナが受信可能状態になるまで、自身に接続されているアンプのゲイン値を1段階ずつ上げていき、自身に接続されているアンテナが受信可能状態となったら、自身に接続されているアンテナが受信可能状態であることを他のアンプ制御手段に通知する請求項10記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記複数のアンプ制御手段は、所定の間隔で、自身に接続されているアンテナが受信可能状態にある場合、自身に接続されているアンプのゲイン値を1段階ずつ下げ、自身に接続されているアンテナが受信不可状態にある場合、自身に接続されているアンプのゲイン値を1段階ずつ上げていくゲイン値適正化手段をさらに有する請求項11記載の情報処理装置。
【請求項13】
前記ゲイン値適正化手段は、前記省電力設定手段によって省電力設定がなされていない場合、受信可能状態にあるアンテナの出力を増幅するアンプのゲイン値を、当該アンテナが受信可能状態を維持可能な範囲内で下げる請求項12記載の情報処理装置。
【請求項14】
前記ゲイン値適正化手段は、前記省電力設定手段によって省電力設定がなされている場合、受信可能状態にあるアンテナの出力を増幅するアンプのゲイン値を当該アンテナが受信不可状態になるまで下げ、受信不可状態にあるアンテナの出力を増幅するアンプのゲイン値を当該アンテナが受信可能状態になるまで上げる請求項13記載の情報処理装置。
【請求項15】
複数のアンテナと、前記複数のアンテナに一対に設けられ、各々のアンテナの出力を増幅する複数のアンプと、前記複数のアンプと一対に設けられ、各々のアンプのゲイン値を制御する複数のアンプ制御手段とを具備する情報処理装置におけるアンテナ制御方法であって、
前記複数のアンプ制御手段が、自身に接続されているアンテナの受信状態を通知し合いながら、いずれかのアンプ制御手段によってアンテナが受信可能状態であることを示す通知が行われるまで、自身に接続されているアンプのゲイン値を初期値から1段階ずつ交互に上げていくアンテナ制御方法。
【請求項16】
前記複数のアンプ制御手段が、自身に接続されているアンテナが受信不可状態にある中で他方のアンプ制御手段に接続されているアンテナが受信可能状態であることを示す通知を受けた場合、省電力設定がなされていたならば、自身に接続されているアンプのゲイン値を上げることなく、自身に接続されているアンテナが受信不可状態であることを他のアンプ制御手段に通知する請求項15記載のアンテナ制御方法。
【請求項17】
前記複数のアンプ制御手段が、自身に接続されているアンテナが受信不可状態にある中で他方のアンプ制御手段に接続されているアンテナが受信可能状態であることを示す通知を受けた場合、省電力設定がなされていなければ、自身に接続されているアンテナが受信可能状態になるまで、自身に接続されているアンプのゲイン値を1段階ずつ上げていき、自身に接続されているアンテナが受信可能状態となったら、自身に接続されているアンテナが受信可能状態であることを他のアンプ制御手段に通知する請求項16記載のアンテナ制御方法。
【請求項18】
前記複数のアンプ制御手段が、所定の間隔で、自身に接続されているアンテナが受信可能状態にある場合、自身に接続されているアンプのゲイン値を1段階ずつ下げ、自身に接続されているアンテナが受信不可状態にある場合、自身に接続されているアンプのゲイン値を1段階ずつ上げていく適正化を実行する請求項17記載のアンテナ制御方法。
【請求項19】
省電力設定がなされていない場合、受信可能状態にあるアンテナの出力を増幅するアンプのゲイン値を、当該アンテナが受信可能状態を維持可能な範囲内で下げる請求項18記載のアンテナ制御方法。
【請求項20】
省電力設定がなされている場合、受信可能状態にあるアンテナの出力を増幅するアンプのゲイン値を当該アンテナが受信不可状態になるまで下げ、受信不可状態にあるアンテナの出力を増幅するアンプのゲイン値を当該アンテナが受信可能状態になるまで上げる請求項19記載のアンテナ制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−156931(P2012−156931A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16319(P2011−16319)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】