説明

無線通信装置、無線モジュール切り替え方法および制御プログラム

【課題】異種無線システムの冗長な切り替え動作を回避する。
【解決手段】複数種類の通信方式からいずれかを選定して無線通信を行なう無線通信装置であって、それぞれ異なる通信方式で通信を行なう複数の無線モジュール14a〜14cと、各無線モジュールの通信品質情報に基づいて、無線モジュール毎に伝送レートの瞬時値および平均値から評価関数を算出し、前記算出した評価関数に基づいて、いずれかの無線モジュールを選定する無線環境認識部15と、選定結果に応じて無線モジュールを切り替えるスイッチ部13と、を備える。無線環境認識部15は、過去の伝送レートの瞬時値から伝送レートの予測値を算出し、予測値を伝送レートの平均値で除算することにより、前記評価関数を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数種類の通信方式からいずれかを選定して無線通信を行なう無線通信装置、無線モジュール切り替え方法および制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1には、ピコセル、マイクロセル、マクロセルなる異なるセルサイズを有する異種無線システムを、コグニティブ基地局、コグニティブ端末を用いて統合する技術が開示されている。これらのコグニティブ基地局、コグニティブ端末は、スイッチ、複数の無線モジュール、無線環境認識部を備えており、無線環境認識部は、無線環境を認識して、その認識結果に基づき、スイッチに対してリンクフレームの分配先である無線モジュールを指示する。リンクフレームは指示された無線モジュールを介して送受信される。
【0003】
また、特許文献2に開示されている技術は、既存の無線メディアの無線リソース制御方式に修正を加えずに、複数の無線メディアをスイッチにより統合して、QoS要求を満たす伝送レートを確保し、セル外周部等の低レートにならざるを得ない通信を避けるように、動的に無線メディアを選択して通信する。
【0004】
また、非特許文献1に開示されている技術は、一無線メディアのみに対応した一般端末、複数無線メディアに対応したコグニティブ端末、基地局を対象とする。基地局は、複数無線メディアの無線I/Fとパケットをそれらに振り分けるパケットバッファから構成される。非特許文献1では、一般端末、コグニティブ端末間で無線リソースのバランスを保つために、無線I/F(EV−DO方式)の無線リソース制御方式を提案している。
【0005】
また、非特許文献2では、携帯電話システムにおいて、複数端末間の公平性と高スループットを両立させるスケジューラが提案されている。端末は、通信可能な伝送速度を測定して基地局へ報告する。基地局は、“瞬時伝送速度÷平均伝送速度”が最大値をとる端末を選択して、パケットを送信する。
【0006】
また非特許文献3では、無線LANを対象として、混雑度の実測値の時系列変化をARモデルで回帰分析することで、近い未来の混雑度を予測する技術を提案している。この技術は、通信品質の未来予測に利用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−085759号公報
【特許文献2】特願2008−283146号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】松本謙尚他“コグニティブ無線のための無線下りパケットスケジューリング方式の提案”、電子情報通信学会技術報告 NS2006-102
【非特許文献2】A. Jalali他“Data Throughput of CDMA-HDR a High Efficiency-High Data Rate Personal Communication Wireless System”、Proc. of IEEE VTC2000 Spring
【非特許文献3】“Experimental Verification on the Prediction of the Trend in Radio Resource Availability in Cognitive Radio”, Proc. VTC2007 Fall, pp.1568-1572
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1記載の技術は、複数無線システムの切り替え判断を、基地局主体で行なうものである。この技術は、ネットワーク構成に関するものであり、無線環境認識部がスイッチを制御する具体的な制御方式に触れていない。また、非特許文献1は、異種無線システムを切り替える制御方式を提案している。ただし、各無線システムのスケジューラを改修するアプローチを取っており、既存システムへの影響が生じる問題がある。
【0010】
また、非特許文献2は、公平性とスループットを両立させるスケジューラ方式を提案するものであるが、その適用先は一無線システムであり、異種無線システム切り替えを対象としていない。また、非特許文献3は、通信品質の変化を、自己回帰分析により数式化することで、近未来の通信品質を予測できることを示している。
【0011】
特許文献2記載の技術は、低い伝送レートしか得られない無線メディアを積極的に回避して、評価関数(瞬時伝送レート÷平均伝送レート)が高い無線メディアを積極的に選択することを特徴とする。しかし、瞬時値および平均値に基づく選択を行なっているために、その効果が得られない状況が発生する。例えば、切り替え先候補である無線システムA、Bが存在し、それらの(特許文献2における評価関数)FA、FBが各々、100、90である例を考える。さらに、FAの変化率が−10/100ms毎、FBの変化率が+10/100ms毎であった場合、瞬時値を用いる特許文献2の無線システム選択では、無線システムAが選択される。
【0012】
しかしながら、無線システムAへ切り替えた100ms後に、FB>FAと評価関数値の上下関係が逆転するため、無線システムBへの切り替えが起動される。評価関数の変化の傾向を把握していない為に、2回の切り替えが発生している。この例では、無線システム切り替え回数を、無線システムBへの1回に削減して、制御負荷を軽減することが可能である。
【0013】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、異種無線システムの冗長な切り替え動作を回避することができる無線通信装置、無線モジュール切り替え方法および制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1)上記の目的を達成するために、本発明は、以下のような手段を講じた。すなわち、本発明の無線通信装置は、複数種類の通信方式からいずれかを選定して無線通信を行なう無線通信装置であって、それぞれ異なる通信方式で通信を行なう複数の無線モジュールと、前記各無線モジュールの通信品質情報に基づいて、無線モジュール毎に伝送レートの瞬時値および平均値から評価関数を算出し、前記算出した評価関数に基づいて、いずれかの無線モジュールを選定する無線環境認識部と、前記選定結果に応じて無線モジュールを切り替えるスイッチ部と、を備えることを特徴としている。
【0015】
このように、各無線モジュールの通信品質情報に基づいて、無線モジュール毎に伝送レートの瞬時値および平均値から評価関数を算出し、算出した評価関数に基づいて、いずれかの無線モジュールを選定するので、評価関数値が近接している場合であっても、不要な無線システムの切り替え動作を削減することが可能となる。
【0016】
(2)また、本発明の無線通信装置において、前記無線環境認識部は、過去の伝送レートの瞬時値から伝送レートの予測値を算出し、前記予測値を伝送レートの平均値で除算することにより、前記評価関数を算出することを特徴としている。
【0017】
このように、過去の伝送レートの瞬時値から伝送レートの予測値を算出し、前記予測値を伝送レートの平均値で除算することにより、評価関数を算出するので、評価関数値が近接している場合であっても、不要な無線システムの切り替え動作を削減することが可能となる。
【0018】
(3)また、本発明の無線通信装置において、前記無線環境認識部は、伝送レートの平均値の変化の傾きを予測値として算出し、伝送レートの瞬時値を前記予測値で累乗した値を伝送レートの平均値で除算することにより、前記評価関数を算出することを特徴としている。
【0019】
このように、伝送レートの平均値の変化の傾きを予測値として算出し、伝送レートの瞬時値を前記予測値で累乗した値を伝送レートの平均値で除算することにより、評価関数を算出するので、評価関数値が近接している場合であっても、不要な無線システムの切り替え動作を削減することが可能となる。
【0020】
(4)また、本発明の無線通信装置において、前記無線環境認識部は、伝送レートの平均値の変化の傾きを予測値として算出し、伝送レートの平均値を前記予測値で累乗した値を算出することにより、前記評価関数を算出することを特徴としている。
【0021】
このように、伝送レートの平均値の変化の傾きを予測値として算出し、伝送レートの平均値を前記予測値で累乗した値を算出することにより、前記評価関数を算出するので、評価関数値が近接している場合であっても、不要な無線システムの切り替え動作を削減することが可能となる。
【0022】
(5)また、本発明の無線通信装置において、前記無線環境認識部は、伝送レートの平均値の変化の傾きを予測値として算出し、伝送レートの瞬時値を伝送レートの平均値で除算した値に前記予測値を乗算することにより、前記評価関数を算出することを特徴としている。
【0023】
このように、伝送レートの平均値の変化の傾きを予測値として算出し、伝送レートの瞬時値を伝送レートの平均値で除算した値に前記予測値を乗算することにより、前記評価関数を算出するので、評価関数値が近接している場合であっても、不要な無線システムの切り替え動作を削減することが可能となる。
【0024】
(6)また、本発明の無線通信装置において、前記無線環境認識部は、前記評価関数が最大となる無線モジュールを選択することを特徴としている。
【0025】
このように、評価関数が最大となる無線モジュールを選択するので、瞬時的に伝搬路状況が良い無線モジュールを選択することが可能となる。
【0026】
(7)また、本発明の無線通信装置において、前記無線環境認識部は、伝送レートの平均値が、予め定められた閾値以上である無線モジュールを選択することを特徴としている。
【0027】
このように、伝送レートの平均値が、予め定められた閾値以上である無線モジュールを選択するので、極端に伝搬路状況が悪い無線モジュールを選択候補から除外することができる。これにより、無線モジュールを選択する精度を向上させることが可能となる。
【0028】
(8)また、本発明の無線通信装置において、前記無線環境認識部は、要求伝送レートを満たす無線モジュールを選択することを特徴としている。
【0029】
このように、要求伝送レートを満たす無線モジュールを選択するので、一定の伝送レートを確保することが可能となる。
【0030】
(9)また、本発明の無線モジュール切り替え方法は、複数種類の通信方式からいずれかを選定して無線通信を行なう無線通信システムの無線モジュール切り替え方法であって、無線環境認識部において、それぞれ異なる通信方式で通信を行なう複数の無線モジュールの通信品質情報を取得するステップと、前記取得した通信品質情報に基づいて、無線モジュール毎に伝送レートの瞬時値および平均値から評価関数を算出するステップと、前記算出した評価関数に基づいて、いずれかの無線モジュールを選定するステップと、スイッチ部において、前記選定結果に応じて無線モジュールを切り替えるステップと、を少なくとも含むことを特徴としている。
【0031】
このように、各無線モジュールの通信品質情報に基づいて、無線モジュール毎に伝送レートの瞬時値および平均値から評価関数を算出し、算出した評価関数に基づいて、いずれかの無線モジュールを選定するので、評価関数値が近接している場合であっても、不要な無線システムの切り替え動作を削減することが可能となる。
【0032】
(10)また、本発明の制御プログラムは、複数種類の通信方式からいずれかを選定して無線通信を行なう無線通信装置の制御プログラムであって、無線環境認識部において、それぞれ異なる通信方式で通信を行なう複数の無線モジュールの通信品質情報に基づいて、無線モジュール毎に伝送レートの瞬時値および平均値から評価関数を算出する処理と、前記算出した評価関数に基づいて、いずれかの無線モジュールを選定する処理と、スイッチ部において、前記選定結果に応じて無線モジュールを切り替える処理と、の一連の処理を、コンピュータに読み取り可能および実行可能にコマンド化したことを特徴としている。
【0033】
このように、各無線モジュールの通信品質情報に基づいて、無線モジュール毎に伝送レートの瞬時値および平均値から評価関数を算出し、算出した評価関数に基づいて、いずれかの無線モジュールを選定するので、評価関数値が近接している場合であっても、不要な無線システムの切り替え動作を削減することが可能となる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、各無線モジュールの通信品質情報に基づいて、無線モジュール毎に伝送レートの瞬時値および平均値から評価関数を算出し、算出した評価関数に基づいて、いずれかの無線モジュールを選定するので、評価関数値が近接している場合であっても、不要な無線システムの切り替え動作を削減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】第1の実施形態に係る無線通信システムの概略構成を示す図である。
【図2】基地局の概略構成を示す図である。
【図3】端末の概略構成を示す図である。
【図4】基地局10と端末100が対向して接続する様子を示す図である。
【図5】基地局10から端末100方向の下り方向送受信(基地局から端末)で用いる無線モジュールを切り替える手順を示すシーケンスチャートである。
【図6】無線環境認識部105が無線モジュールを選択する動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る無線通信システムの概略構成を示す図である。この無線通信システムのネットワークは、マクロセル無線モジュール14aによるマクロセル、マイクロセル無線モジュール14b、ピコセル無線モジュール14c、(コグニティブ)端末100、スイッチ13から構成される。
【0037】
図2は、基地局の概略構成を示す図である。基地局10は、コア網側インタフェイス11、仮想MAC処理部12、スイッチ部13、マクロセル無線モジュール14a、マイクロセル無線モジュール14b、ピコセル無線モジュール14c、無線環境認識部15、センサ16から構成される。図3は、端末の概略構成を示す図である。端末100は、ユーザ網側インタフェイス101、仮想MAC処理部102、スイッチ部103、マクロセル無線モジュール104a、マイクロセル無線モジュール104b、ピコセル無線モジュール104c、無線環境認識部105、センサ106から構成される。図4は、基地局10と端末100が対向して接続する様子を示す図である。
【0038】
図5は、基地局10から端末100方向の下り方向送受信(基地局から端末)で用いる無線モジュールを切り替える手順を示すシーケンスチャートである。端末100では、無線環境認識部105が各無線モジュール104a〜104cの品質情報を取得して、無線モジュール毎の評価関数を更新する(ステップS1)。また、それらの情報を用いて、最も条件を満たす無線モジュールを切り替え先モジュールとして判定する(ステップS2)。
【0039】
切り替え先無線モジュールが現在の無線モジュールと異なるかどうかを判断し(ステップS3)、切り替え先無線モジュールが現在の無線モジュールと異なる場合、無線モジュール切り替えが発生するため、端末100は、基地局10宛に、切り替え先無線モジュールID、その瞬時品質、その平均品質を通知する(「無線モジュール切り替え要求」メッセージ)。基地局10の無線環境認識部15は、切り替え先無線モジュールに切り替えるタイミングを定めて(ステップS4)、端末100の無線環境認識部105宛てに、使用中の無線モジュールを介して通知する。無線環境認識部105、無線環境認識部15は各々、スイッチ103、スイッチ13に指示を出して(ステップS5−1、S5−2)、共に、無線モジュールを切り替える(ステップS6−1、S6−2)。
【0040】
ここで、評価関数の算出例を説明する。ここでは、無線モジュール1を例として示す。端末100の無線環境認識部105が監視する同モジュールの瞬時レートをR(t)とする。過去の瞬時レートR(t)から、統計分析を介して求めたΔT後の瞬時レートをR1pとする。R(t)を用いて、平均レートavgR(t)を求める。そして、評価関数を、F(t)=R1p/avgR(t)とする。
【0041】
瞬時レート:R(t)
予測レート:R1p;過去の瞬時レートR(t)から求めたΔT後の瞬時レート
平均レートavgR(t)=avgR(t−1)*{1−1/tc1}+1/tc1*R(t)
評価関数F(t)=R1p/avgR(t)
なお、瞬時レートR(t)は、当該時刻tの下りパケット送信の有無にかかわらず、監視された値を設定する。Proportional Fairnessスケジューラでは、下りパケットが送信されたときのみ、R(t)にそのレートが設定されるが、それと異なる処理である。平均レートavgR(t)の算出における時定数は、無線システム固有のスケジューラの制御周期よりも長い時間を設定する。同様に、無線モジュール選択を実施する時間スケールとして、無線システム固有のスケジューラの制御周期よりも長い期間を設定する。これは、無線システム固有のスケジューラがフェージングに追従する等の高速制御を既に行なっているため、その動作を妨げない為である。
【0042】
図6は、無線環境認識部105が無線モジュールを選択する動作を示すフローチャートである。ここでは、平均伝送レートavgR(t)が閾値Rith以上であるかどうか、および、平均伝送レートavgR(t)が閾値RQoS以上であるかを判断する。平均伝送レートavgR(t)が閾値Rith以上の無線モジュールを選ぶことで、極端に状況が悪い無線モジュールを選択候補から除外する(セル外周部の通信を避ける対策)。また、平均伝送レートavgR(t)が閾値RQoS以上の無線モジュールを選ぶことで、一定以上の伝送レートを確保する(QoS要求対応)。上記2点の組み合わせにより、十分な伝送レートを確保できない無線モジュールを除外した後に、評価関数F(t)が最大値をとる無線モジュールを切り替え先無線モジュールとする。
【0043】
図6において、平均伝送レートavgR(t)が閾値Rith以上であり、かつ、平均伝送レートavgR(t)が閾値RQoS以上であるかどうかを判断し(ステップS10)、このステップS10に該当する無線モジュールが存在する場合、平均伝送レートavgR(t)>Rith(当該端末をセル外周部に位置させる無線モジュールを避ける)、かつ、平均伝送レートavgR(t)>RQoS(一定の伝送レートを確保)かつ、評価関数F(t)が最大である(瞬時的に状況がよい)無線モジュールを切り替え先無線モジュールとして選択する(ステップS11)。
【0044】
次に、ステップS10を満たす無線モジュールが存在しない場合、平均伝送レートavgR(t)>RQoS(一定の伝送レートを確保)を満たす無線モジュールが存在するかどうかを判断する(ステップS12)。このステップS12に該当する無線モジュールが存在する場合、平均伝送レートavgR(t)>RQoS(一定の伝送レートを確保)かつ、評価関数F(t)が最大である(瞬時的に状況がよい)無線モジュールを切り替え先無線モジュールとして選択する(ステップS13)。
【0045】
次に、ステップS12を満たす無線モジュールが存在しない場合、平均伝送レートavgR(t)>Rith(当該端末をセル外周部に位置させる無線モジュールを避ける)を満たす無線モジュールが存在するかどうかを判断する(ステップS14)。このステップS14に該当する無線モジュールが存在する場合、平均伝送レートavgR(t)>Rith(当該端末をセル外周部に位置させる無線モジュールを避ける)かつ、評価関数F(t)が最大である(瞬時的に状況がよい)無線モジュールを切り替え先無線モジュールとして選択する(ステップS15)。
【0046】
全ての無線モジュールがステップS10、12、14の全てに該当しない場合、平均伝送レートavgR(t)が最大である無線モジュールを切り替え先無線モジュールとする(ステップS16)。これは、利用可能な無線モジュールが存在しない状況を避ける為である。
【0047】
なお、閾値Rithは、無線モジュール毎に設定する。さらに、端末毎、QoSクラス毎に設定できてもよい。閾値RQoSは、QoSクラス毎に設定する。これらの閾値は、コグニティブ基地局10の無線環境認識部15から、いずれかの無線モジュール14a〜14cを通じて、(コグニティブ)端末100の無線環境認識部105に通知される。
【0048】
[第2の実施形態]
第2の実施形態では、第1の実施形態の評価関数を、平均レートavgR(t)の変化の傾きAを用いる式に変更したものである。すなわち、
瞬時レート:R(t)
平均レートavgR(t)=avgR(t−1)*{1−1/tc1}+1/tc1*R(t)
平均レートの変化の傾き:A
評価関数F1第2の実施形態(t)=R(t)/avgR(t)
ここで、瞬時レートR(t)を“A乗”する目的は、増加傾向が強い無線システムを積極的に選択するためである。第2の実施形態は、第1の実施形態と比較して、切り替え回数の削減効果を積極的に狙う評価関数である。
【0049】
[第3の実施形態]
第3の実施形態は、第1の実施形態の評価関数を、平均レートavgR(t)を平均レートの傾きA乗に変更したものである。
【0050】
瞬時レート:R1(t)
平均レートavgR(t)=avgR(t−1)*{1−1/tc1}+1/tc1*R(t)
平均レートの変化の傾き:A
評価関数F1第3の実施形態(t)=avgR(t)
評価関数の算出に瞬時レートを用いない為、第1、第2の実施形態と比較して、END TO END区間の伝送レートの低下が見込まれる反面、より長い時間レンジを対象として、切り替え回数を削減する効果を得る。無線メディア切り替え回数の削減効果として、第1、第2の実施形態の間の効果を得る。
【0051】
[第4の実施形態]
無線システム切り替えに伴う遅延時間変動に敏感なアプリケーションに第3の実施形態を適用し、WEBブラウジング等のベストエフォート的なアプリケーションに第2の実施形態、中間のインタラクティブ型アプリケーションに第1の実施形態を適応する。アプリケーションの特徴に応じた無線システムの切り替えを行なう評価関数を以下のように算出する。
【0052】
瞬時レート:R(t)
平均レートavgR(t)=avgR(t−1)*{1−1/tc1}+1/tc1*R(t)
平均レートの変化の傾き:A
評価関数F1第4の実施形態(t)={R(t)/avgR(t)}*A
以上説明したように、本実施形態によれば、各無線モジュールの通信品質情報に基づいて、無線モジュール毎に伝送レートの瞬時値および平均値から評価関数を算出し、算出した評価関数に基づいて、いずれかの無線モジュールを選定するので、評価関数値が近接している場合であっても、不要な無線システムの切り替え動作を削減することが可能となる。
【符号の説明】
【0053】
10 (コグニティブ)基地局
11 コア網側インタフェイス
12 仮想MAC処理部
13 スイッチ部
14a マクロセル無線モジュール
14b マイクロセル無線モジュール
14c ピコセル無線モジュール
15 無線環境認識部
16 センサ
100 (コグニティブ)端末
101 ユーザ網側インタフェイス
102 仮想MAC処理部
103 スイッチ部
104a マクロセル無線モジュール
104b マイクロセル無線モジュール
104c ピコセル無線モジュール
105 無線環境認識部
106 センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類の通信方式からいずれかを選定して無線通信を行なう無線通信装置であって、
それぞれ異なる通信方式で通信を行なう複数の無線モジュールと、
前記各無線モジュールの通信品質情報に基づいて、無線モジュール毎に伝送レートの瞬時値および平均値から評価関数を算出し、前記算出した評価関数に基づいて、いずれかの無線モジュールを選定する無線環境認識部と、
前記選定結果に応じて無線モジュールを切り替えるスイッチ部と、を備えることを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
前記無線環境認識部は、過去の伝送レートの瞬時値から伝送レートの予測値を算出し、前記予測値を伝送レートの平均値で除算することにより、前記評価関数を算出することを特徴とする請求項1記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記無線環境認識部は、伝送レートの平均値の変化の傾きを予測値として算出し、伝送レートの瞬時値を前記予測値で累乗した値を伝送レートの平均値で除算することにより、前記評価関数を算出することを特徴とする請求項1記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記無線環境認識部は、伝送レートの平均値の変化の傾きを予測値として算出し、伝送レートの平均値を前記予測値で累乗した値を算出することにより、前記評価関数を算出することを特徴とする請求項1記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記無線環境認識部は、伝送レートの平均値の変化の傾きを予測値として算出し、伝送レートの瞬時値を伝送レートの平均値で除算した値に前記予測値を乗算することにより、前記評価関数を算出することを特徴とする請求項1記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記無線環境認識部は、前記評価関数が最大となる無線モジュールを選択することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の無線通信装置。
【請求項7】
前記無線環境認識部は、伝送レートの平均値が、予め定められた閾値以上である無線モジュールを選択することを特徴とする請求項6記載の無線通信装置。
【請求項8】
前記無線環境認識部は、要求伝送レートを満たす無線モジュールを選択することを特徴とする請求項6または請求項7記載の無線通信装置。
【請求項9】
複数種類の通信方式からいずれかを選定して無線通信を行なう無線通信システムの無線モジュール切り替え方法であって、
無線環境認識部において、
それぞれ異なる通信方式で通信を行なう複数の無線モジュールの通信品質情報を取得するステップと、
前記取得した通信品質情報に基づいて、無線モジュール毎に伝送レートの瞬時値および平均値から評価関数を算出するステップと、
前記算出した評価関数に基づいて、いずれかの無線モジュールを選定するステップと、
スイッチ部において、
前記選定結果に応じて無線モジュールを切り替えるステップと、を少なくとも含むことを特徴とする無線モジュール切り替え方法。
【請求項10】
複数種類の通信方式からいずれかを選定して無線通信を行なう無線通信装置の制御プログラムであって、
無線環境認識部において、
それぞれ異なる通信方式で通信を行なう複数の無線モジュールの通信品質情報に基づいて、無線モジュール毎に伝送レートの瞬時値および平均値から評価関数を算出する処理と、
前記算出した評価関数に基づいて、いずれかの無線モジュールを選定する処理と、
スイッチ部において、
前記選定結果に応じて無線モジュールを切り替える処理と、の一連の処理を、コンピュータに読み取り可能および実行可能にコマンド化したことを特徴とする無線通信装置の制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−226530(P2010−226530A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−72875(P2009−72875)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、総務省、「電波資源拡大のための研究開発」のうち「異種無線システム動的利用による信頼性向上技術の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(599108264)株式会社KDDI研究所 (233)
【Fターム(参考)】