無線通信装置、無線通信装置における位置測位方法、及び無線通信システム
【課題】端末の位置を高精度に測定できるようにする。
【解決手段】端末装置と無線通信を行う無線通信装置において、第1及び第2の経路により端末装置から送信された無線信号を受信したとき、第1及び第2の経路に対する第1及び第2の伝搬距離を夫々算出する算出部と、第1及び第2の伝搬距離に基づいて、第1及び第2の受信波が第1及び第2の反射点で反射した反射波か、第1及び第2の反射点を介さない直接波かを夫々判定し、第1又は第2の受信波を反射波と判定したとき、第1又は第2の経路において端末装置から最も近い第1又は第2の反射点までの距離を夫々示す第1又は第2の端末反射点間距離を出力し、第1又は第2の受信波を直接波と判定したとき、第1又は第2の伝搬距離を出力する決定部と、決定部から出力された、第1又は第2の端末反射点間距離、又は、第1又は第2の伝搬距離に基づいて端末装置の位置を測位する位置測位部とを備える。
【解決手段】端末装置と無線通信を行う無線通信装置において、第1及び第2の経路により端末装置から送信された無線信号を受信したとき、第1及び第2の経路に対する第1及び第2の伝搬距離を夫々算出する算出部と、第1及び第2の伝搬距離に基づいて、第1及び第2の受信波が第1及び第2の反射点で反射した反射波か、第1及び第2の反射点を介さない直接波かを夫々判定し、第1又は第2の受信波を反射波と判定したとき、第1又は第2の経路において端末装置から最も近い第1又は第2の反射点までの距離を夫々示す第1又は第2の端末反射点間距離を出力し、第1又は第2の受信波を直接波と判定したとき、第1又は第2の伝搬距離を出力する決定部と、決定部から出力された、第1又は第2の端末反射点間距離、又は、第1又は第2の伝搬距離に基づいて端末装置の位置を測位する位置測位部とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置、無線通信装置における位置測位方法、及び無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、基地局と端末との間で無線通信を行う無線通信システムにおいて、例えば、基地局は端末の位置を測位することで、端末の方向にアンテナを向けて無線通信を行うことができる。
【0003】
このような位置測位に関して、例えば、基地局は2以上のアンテナから第1、第2の信号を送信し、移動局は受信した第1、第2の信号間の位相差を求め、当該位相差に基づいて基地局から見た移動局の方位を算出して基地局に送信するようにしたものが知られている。
【0004】
また、例えば、電波の到来方向を推定し、推定した電波到来方向と3次元地図データとに基づきレイトレース法により無線局の位置を推定する無線局方向推定装置も知られている。
【0005】
更に、例えば、基地局は、ノードから送信された観測信号の識別情報と観測信号の間隔とに基づいて観測信号が直接波か反射波かを判定し、判定結果に基づいてノードと基地局との距離を補正するようにしたものも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−237755号公報
【特許文献2】特開2006−170698号公報
【特許文献3】特開2007−155523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、直接波と反射波とが混在するようなマルチパス環境では、例えば、基地局は直接波と反射波の双方を受信する場合もある。上述した従来技術において、2つの信号間の位相差を求めたり、電波の到来方向を推定するものでは、マルチパス環境について考慮されておらず、端末の位置を高精度に測定することはできない。
【0008】
また、上述した従来技術において直接波と反射波とを判定するものは、直接波と反射波とを判定した結果に基づいて基地局とノードとの距離を求めるものであって、ノードの位置を求めることに関しては考慮されていない。従って、かかる従来技術においても、端末の位置を高精度に測定することはできない。
【0009】
そこで、本発明の一目的は、端末の位置を高精度に測定できるようにした無線通信装置、無線通信装置における位置測位方法、及び無線通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一態様によれば、端末装置と無線通信を行う無線通信装置において、少なくとも第1及び第2の経路により前記端末装置から送信された無線信号を夫々第1及び第2の受信波として受信したとき、前記第1及び第2の経路に対する経路長を示す第1及び第2の伝搬距離を夫々算出する算出部と、前記第1及び第2の伝搬距離に基づいて、前記第1及び第2の受信波が第1及び第2の反射点で反射した反射波か、前記第1及び第2の反射点を介さない直接波かを夫々判定し、前記第1又は第2の受信波を前記反射波と判定したとき、前記第1又は第2の経路において前記端末装置から最も近い前記第1又は第2の反射点までの距離を夫々示す第1又は第2の端末反射点間距離を出力し、前記第1又は第2の受信波を前記直接波と判定したとき、前記第1又は第2の伝搬距離を出力する決定部と、前記決定部から出力された、前記第1又は第2の端末反射点間距離、又は、前記第1又は第2の伝搬距離に基づいて前記端末装置の位置を測位する位置測位部とを備える。
【発明の効果】
【0011】
端末の位置を高精度に測定できるようにした無線通信装置、無線通信装置における位置測位方法、及び無線通信システムを提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は無線通信システムの構成例を示す図である。
【図2】図2はAPの構成例を示す図である。
【図3】図3(A)と図3(B)は同期信号の例を夫々し示す図であり、図3(C)は受信レベルと伝搬距離との関係例を示すグラフである。
【図4】図4は受信波の伝搬経路の例を示す図である。
【図5】図5は受信波の伝搬経路の例を示す図である。
【図6】図6は受信波の伝搬経路の例を示す図である。
【図7】図7は受信波の伝搬経路の例を示す図である。
【図8】図8は受信波の伝搬経路の例を示す図である。
【図9】図9は受信波の伝搬経路の例を示す図である。
【図10】図10は受信波の伝搬経路の例を示す図である。
【図11】図11は受信波の伝搬経路の例を示す図である。
【図12】図12は受信波の伝搬経路の例を示す図である。
【図13】図13は動作例を示すフローチャートである。
【図14】図14は受信波の伝搬経路の例を示す図である。
【図15】図15は動作例を示すフローチャートである。
【図16】図16は受信レベルと到来角の関係例を示すグラフである。
【図17】図17はAP200の他の構成例を示す図である。
【図18】図18はAP200の他の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態について以下説明する。
【0014】
<構成例>
図1は無線通信システム10の構成例を示す図である。無線通信システム10は、端末装置(以下、「端末」)100と、無線通信装置(又はアクセスポイント、以下「AP」)200とを備える。また、無線通信システム10において、2つの反射点P1,P2が配置される。
【0015】
端末100とAP200は、無線信号を送受信することで無線通信を行うことができる。また、端末100は、移動可能でAP200の電波到達可能範囲内において、AP200と無線通信を行うことができる。端末100は、送受信部110とアンテナ120とを備える。
【0016】
送受信部110は、例えば、所定の変調方式でデータを変調等して無線信号としてアンテナ120に出力し、アンテナ120で受信したAP200からの無線信号を所定の復調方式で復調等してデータを抽出することができる。
【0017】
アンテナ120は、送受信部110から出力された無線信号をAP200に送信し、AP200から送信された無線信号を受信して送受信部110に出力する。アンテナ120は複数のアンテナでもよい。また、端末100は複数台でもよい。
【0018】
AP200は、複数のアレイアンテナ210‐1〜210‐n(nは2以上の整数)を備える。各アレイアンテナ210‐1〜210‐nはビーム角度を変えて、端末100に無線信号を送信し、端末100から送信された無線信号を受信できる。
【0019】
また、AP200と端末100は、複数の経路からの無線信号を受信できる。図1の例では、AP200は、反射点P1,P2を介さずに直接、端末100から送信された無線信号を受信できる。一方、AP200は、反射点P1,P2を介した経路により無線信号を受信できる。AP200は、このように直接波と反射波との経路により、端末100から送信された無線信号を受信波として受信できる。端末100も同様である。
【0020】
反射点P1,P2は、例えば、本無線通信システム10が病院内等で用いられる場合、壁、パーティション等、電波を反射する障害物等の固定点である。従って、本実施例において、反射点P1,P2の位置座標は予め決められており、AP200内において記憶されているものとする。図1の例では、2つの反射点P1,P2の例が示されるが、反射点が1つの場合や、3つ以上の場合でもよい。
【0021】
図2はAP200の構成例を示す図である。AP200は、複数のアレイアンテナ210‐1〜210‐nと、ビーム走査部211と、走査角制御部212と、受信部213と、デジタル変換部214と、復調部215と、受信レベル検知部216と、伝搬時間測定部217と、伝搬距離算出部218と、AP及び反射点位置情報記憶部(以下、「記憶部」)219と、反射点距離算出部220と、判定部及び距離決定部(以下、「決定部」)221と、位置測位部222とを備える。
【0022】
ビーム走査部211は、走査角制御部212からの制御信号に基づいて、複数のアレイアンテナ210‐1〜210‐nに対して一定の走査角でビーム走査(ビームスキャン)を行う。また、ビーム走査部211は、複数のアレイアンテナ210‐1〜210‐nで受信した無線信号を受信部213に出力する。
【0023】
走査角制御部212は、一定の走査角でアレイアンテナ210‐1〜210‐nが動作するように制御信号をビーム走査部211に出力する。また、走査角制御部212は、現在のアレイアンテナ210‐1〜210‐nの走査角度(又は到来角度)に関する情報を保持し、当該情報を到来角度情報として反射点距離算出部220に出力する。
【0024】
受信部213は、無線信号に対して、例えば、電力増幅及びダウンコンバート等の処理を行い、受信信号Rpaに変換する。
【0025】
デジタル変換部214は、アナログの受信信号Rpaをデジタルの受信信号Rpdに変換する。
【0026】
復調部215は、受信信号Rpdを予め決められた復調方式(例えば、QPSK、16QAM等)で復調し、復調信号Sdを出力する。
【0027】
受信レベル検知部216は、アナログ受信信号Rpa及びデジタル受信信号Rpdを入力し、いずれか一方を用いて、AP200が受信した無線信号の受信レベル(例えば、受信電力レベル)を検知する。
【0028】
伝搬時間測定部217は、復調信号Sdを用いて、端末100から送信された無線信号がAP200に到達するまでの伝搬時間を測定する。伝搬時間は例えば以下のようにして測定される。図3(A)は端末100から送信される送信信号(例えば変調前の信号)の例、図3(B)はAP200で復調された復調信号Sdの例を夫々示す図である。同図(A)に示すように、送信信号には、例えば所定の送信タイミングTで送信されるべき同期信号rsが含まれる。伝搬時間測定部217は、予め同期信号rsの送信タイミングTを記憶し、復調信号Sdに含まれる同期信号rsの送信間隔Tに対する遅延時間tを測定し、当該遅延時間tを伝搬時間として出力する。
【0029】
伝搬距離算出部218は、受信レベル検知部216から出力された受信レベル、又は、伝搬時間測定部217から出力された伝搬時間に基づいて、伝搬距離dθを測定する。伝搬距離dθは、例えば、端末100(又はAP200)から送信された無線信号がAP200(又は端末100)において受信されるまでの経路(パス)上の距離である。例えば、図1において、端末100から送信された無線信号が反射点P1を介してAP200に至る経路上の距離が伝搬距離dθである。また、直接波による経路において当該経路上の距離も伝搬距離dθとなる。
【0030】
伝搬距離算出部218は、受信レベルから伝搬距離dθを算出する場合は、例えば以下のようにして行う。伝搬距離算出部218は、受信レベルと伝搬距離dθとの関係を示すテーブルを保持し、当該テーブルに基づいて受信レベルに対応する伝搬距離dθを選択する。図3(C)は、受信レベルと伝搬距離dθとの関係例を示す図である。同図(C)に示すグラフは減衰曲線と呼ばれ、受信レベルがRp0>Rp1のとき、伝搬距離はdθ0<dθ1の関係を有する。伝搬距離算出部218はかかる減衰曲線に対応したテーブルを保持し、当該テーブルに基づいて受信レベルに対応する伝搬距離dθを読み出し、当該伝搬距離dθを出力する。
【0031】
一方、伝搬距離算出部218は、伝搬時間に基づいて伝搬距離dθを算出する場合は、例えば以下のようにして行う。即ち、伝搬距離算出部218は、伝搬時間tに対して電波速度(又は光の速度)をc、伝搬距離をdθとすると、
dθ=t×c ・・・(1)
を演算することで伝搬距離dθを算出する。
【0032】
尚、伝搬距離算出部218は、受信レベル又は伝搬時間のいずれか一方で伝搬距離dθを算出できるため、図2において、受信レベル検知部216又は伝搬時間測定部217の一方がなくてもよい。このような場合のAP200の構成例は後述する。伝搬距離算出部218は、算出した伝搬距離dθを決定部221に出力する。
【0033】
記憶部219は、AP200の位置及び反射点の位置に関する情報、例えばAP200のビーム走査角と位置座標を保持する。AP200及び反射点の位置座標は、例えば、地図、図面、実測等により記憶部219に予め保持される。
【0034】
反射点距離算出部220は、記憶部219に記憶されたAP200及び反射点の各位置情報と、走査角制御部212からの到来角度情報とに基づいて、AP200と反射点との距離(以下、反射点距離)Drθ、及び各反射点間の距離を算出する。反射点距離算出部220は、反射点距離Drθ等を決定部221に出力する。尚、反射点距離算出部220は、記憶部219においてAP200等の位置情報を予め保持しているため、決定部221等が動作する前に、反射点距離Drθを予め算出するようにしてもよい。
【0035】
決定部221は、伝搬距離dθと反射点距離Drθとに基づいて、受信した無線信号が直接波により受信した無線信号か又は反射波により受信した無線信号かを判別する。決定部221は、反射波と判定したとき伝搬距離Drθを減算した距離を位置測位部222に出力し、直接波と判定したとき伝搬距離dθを位置測位部22に出力する。決定部221の詳細は後述する。
【0036】
位置測位部222は、決定部221で決定した距離に基づいて、端末100の位置を測位する。位置測位の詳細も後述する。
【0037】
<位置測位の例>
次に、AP200における位置測位の詳細について説明する。まず、位置関係について説明する。図4は、図1に示す無線通信システム10において、反射点P1,P2と端末100、及びAP200との位置関係の例を示す図である。尚、以下に示す例は、端末100からAP200へ無線信号が送信される例で説明する。
【0038】
AP200と反射点P1,P2の位置は、予めAP200に記憶され、例えば、各々(x1,y1),(x2,y2),(x3,y3)とする。AP200は、端末100の位置座標(a,b)を測位することになる。
【0039】
ここで、端末100が座標位置(a,b)に位置したとき、AP200のアレイアンテナ210‐1〜210‐nは、X軸に対して方位角θ1の方向に向けると、反射点P1に反射した反射波を受信できる。また、アレイアンテナ210‐1〜210‐nは、方位角θ0に対して、端末100からの直接波を受信できる。更に、アレイアンテナ210‐1〜210‐nは、方位角θ2に対して、反射点P2で反射した反射波を受信できる。このように、AP200のアレイアンテナ210‐1〜210‐nは、固定位置に配置された反射点P1,P2の方位角に向けると、端末100からの受信波のうち、反射波を受信できる。
【0040】
次に、端末100の位置座標(a,b)の演算について説明する。図5〜図7は、図4に示す反射点P1,P2等に対して、座標位置と各距離との関係例を示す図である。図5で、AはAP200の位置座標(x1,y1)、Tは端末100の位置座標(a,b)を示す。
【0041】
上述したように反射点P1,P2とAP200は予め決められた固定位置にある。AP200と反射点P1との距離をDrθ1、反射点P2との距離をDrθ2とすると、各距離Drθ1,Drθ2は固定値である。一方、端末100の位置T(a,b)は、端末100の移動に伴い変化する。端末100が位置T(a,b)に位置するとき、反射点P1を介した経路(パス)において、端末100とAP200との間の伝搬距離dθ1は、図6に示すように、
dθ1=Drθ1+dθ1−1 ・・・(2)
となる。ここで、dθ1−1は、例えば、反射点P1から端末100の位置T(a,b)までの距離である。
【0042】
また、反射点P2の経路において、端末100とAP200との伝搬距離dθ2は、図7に示すように、
dθ2=Drθ2+dθ2−1 ・・・(3)
となる。ここで、dθ2−1は、例えば、反射点P2から端末100の位置(a,b)までの距離である。
【0043】
更に、直接波の経路において、端末100とAP200との伝搬距離は図5よりdθ0となる。
【0044】
上述したように、伝搬距離算出部218は伝搬距離dθ1を算出し、また、反射点距離算出部220は、反射点P1の位置座標(x2,y2)と、AP200の位置座標(a,b)に基づいて固定値Drθ1を予め算出する。決定部221は、式(2)に伝搬距離dθ1と距離Drθ1とを代入することで、端末100と反射点P1との距離dθ1−1を算出できる。
【0045】
同様に、伝搬距離算出部218は、反射点P2の経路に対して、伝搬距離dθ2を算出し、反射点距離算出部220は距離Drθ2を予め算出し、決定部221は、算出した伝搬距離dθ2と距離Drθ2とを式(3)に代入することで、反射点P2から端末100までの距離dθ2−1を算出する。
【0046】
そして、位置測位部222は、反射波については、端末100と反射点P1,P2までの距離dθ1−1,dθ2−1を用い、直接波については端末100とAP200までの伝搬距離dθ0を用いて、以下の連立方程式を解くことで、端末100の位置T(a,b)を演算する。
【0047】
【数1】
【0048】
位置測位部222は、式(4)〜式(6)の連立方程式を解くことで位置T(a,b)を演算する。例えば、図5に示すように、式(4)は弧d’θ0により示される円を表わし、式(5)は弧d’θ1‐1に示される円を表わし、式(6)は弧d’θ2‐1に示される円を表わしている。位置測位部222は、3つの連立方程式を解くことで、3つの弧d’θ0,d’θ1‐1,d’θ2‐1の交点座標、即ち端末100の位置T(a,b)を求めている。
【0049】
<反射波と直接波について>
ここで、図5に示すように、端末100がAP200と反射点P1とを結ぶ経路上の位置T’に位置したとき、AP200は端末100からの反射波ではなく、直接波を受信する。図8はかかる場合の端末100とAP200との位置関係の例を示す図である。このとき、位置測位部222は、式(5)を用いて演算しても反射波として演算しているものではないため、図5における位置T’(a’,b’)を演算していることにはならない。このような場合、位置測位部222は、反射波ではなく直接波として、すなわち、端末100とAP200との伝搬距離dθ1そのものを式(5)の右辺に代入して演算する。
【0050】
従って、AP200が端末100からの受信波が直接波か反射波かを判定することが重要である。本実施例では、決定部221がかかる判定を行う。即ち、決定部221は、反射波と判定したときは、反射点P1から端末100までの距離dθ1−1(式(2)を用いて算出したもの)を位置測位部222に出力する。位置測位部222は、式(5)の右辺に距離dθ1‐1を代入して演算する。
【0051】
一方、決定部221は、直接波と判定したときは、伝搬距離算出部218で算出した伝搬距離dθ1そのものを位置測位部222に出力する。位置測位部222は、決定部221から出力された伝搬距離dθ1を式(4)の右辺dθ0に代入し演算する。
【0052】
判定は、例えば以下のようにして行う。図8に示すように、端末100が反射点P1とAP200との経路上に位置するとき、AP200と反射点P1との距離Drθ1と、伝搬距離dθ1との関係は、
dθ1<Drθ1
となる。一方、図6等に示すように、反射点P1を介して反射波がAP200に到来するとき、距離Drθ1と、伝搬距離dθ1との関係は、
dθ1>Drθ1
となる。従って、決定部221は、伝搬距離算出部218で算出した伝搬距離dθ1と、反射点距離算出部220で算出された距離Drθ1とを比較して、例えば、
dθ1≦Drθ1を満たすとき直接波
dθ1>Drθ1を満たすとき反射波
と判定する。
【0053】
反射点P2に対しても同様である。図9は、端末100が反射点P2とAP200とを結ぶ経路上の位置T’’(a’’,b’’)に位置したときの例を示す図である。決定部221は、例えば、dθ2≦Drθ2を満たすとき直接波、dθ2>Drθ2を満たすとき反射波と判定する。決定部221は、直接波と判定したとき、伝搬距離算出部218で算出した伝搬距離dθ2そのものを位置測位部222に出力する。位置測位部222は、伝搬距離dθ2を式(4)の右辺に代入して演算する。
【0054】
また、決定部221は、反射波と判定したとき、反射点P2と端末100との距離dθ2−1を位置測位部222に出力する。位置測位部222は、式(6)の右辺に距離dθ2−1を代入して演算する。
【0055】
このように、決定部221は直接波と反射波とを判別し、位置測位部222は式(4)〜式(6)の右辺に伝搬距離dθ1及びAP200(x1,y1)と反射点P1(x2,y2)、P2(x3,y3)等を夫々代入し、式(4)〜式(6)の連立方程式を解くことで、端末100の位置座標を演算できる。図8の例では、決定部221は直接波と判定して伝搬距離dθ1を位置測位部222に出力し、位置測位部222は式(4)の右辺に伝搬距離dθ1を代入して演算する。この場合、決定部221等は、他の反射波、例えば反射点P2を介した経路の反射波からの受信レベル等に基づいて、反射点P2と端末100との距離dθ2−1を演算し、位置測位部221は式(6)を演算する。位置測位部221は、式(4)と式(6)とから端末100の位置(a,b)を測位する。例えば、更に他の反射点からの反射波があれば、位置測位部221は、式(5)又は式(6)のx1,y1等を適宜他の反射点の位置座標に代えて、3つの連立方程式を演算することになる。
【0056】
尚、図4等において、AP200は端末100から、伝搬経路をdθ0とする直接波を受信している。決定部221は、かかる場合以下のように判定する。すなわち、決定部221は、反射点距離算出部220から距離Drθ1,Drθ2とともに、各距離Drθ1,Drθ2に夫々対応する角度(到来角度)θ1,θ2を入力する。一方、受信レベル検知部216はアレイアンテナ210‐1〜210‐nの角度を変えたときの受信レベルを検知する。従って、決定部221は、到来角度θ1,θ2と、当該角度の各受信レベルに対して、当該角度以外のピーク受信レベルを入力して検知したとき、端末100から直接波を受信していると判定できる。角度θ1,θ2の方向には反射点P1,P2が配置されるため、受信レベル検知部216がその方向以外でピーク受信レベルを検知したとき、反射点P1,P2を介さずに受信した受信波であり、決定部221は当該受信波を直接波と判定できるからである。伝搬距離算出部218は、当該ピーク受信レベルでの伝搬距離dθを算出し、当該ピーク受信レベルでの角度(図4の例ではθ0)と伝搬距離dθとを決定部221に出力する。決定部221は、反射点距離算出部220からの角度θ1,θ2以外の角度(例えば、θ0)を、伝搬距離算出部218から入力したときは、当該角度の受信波は直接波と判定して、伝搬距離dθ0を位置測位部222に出力する。
【0057】
このように、決定部221は、角度θ1,θ2に対して測定した伝搬距離dθ1,dθ2に対して、距離Drθ1,Drθ2を夫々比較して、受信波が直接波(例えば、図8,図9)か、反射波か(例えば、図6,図7)を判定する。判定は上述した通りである。一方、決定部221は、角度θ1,θ2以外の角度θ0に対する伝搬距離dθ0は、直接波として位置測位部222に出力することになる。
【0058】
<端末100が他の位置に移動したときの位置測位の例>
図4等の例では、端末100が位置T(a,b)に位置したときの例を説明した。例えば、端末100が、T’,T’’以外の他の位置T’’’に移動したとき、AP200は同様に端末100の位置T’’’を測位できる。図10は、かかる場合の受信波の経路の例を示す図である。
【0059】
伝搬距離算出部218は、反射点P1,P2に対する角度θ1,θ2に対して、伝搬距離dθ1,dθ2を算出する。また、受信レベル検知部216は、角度θ0’でピーク受信レベルを検知し、伝搬距離算出部218は、角度θ0’に対して伝搬距離dθ0’を算出する。
【0060】
決定部221は、伝搬距離dθ1と、AP200と反射点P1との距離Drθ1とを比較して、到来角θ1における受信波が直接波か反射波を判定する。決定部221は、反射波と判定したとき、式(2)を用いて反射点P1と端末100との距離dθ1−1’を演算し、当該距離dθ1‐1’を位置測位部222に出力する。位置測位部222は、距離dθ1‐1’を式(5)の右辺に代入して式(5)を演算する。決定部221は、受信波が直接波と判定したとき、伝搬距離dθ1を位置測位部222に出力し、位置測位部222は伝搬距離dθ1を式(4)の右辺に代入して演算する。
【0061】
反射点P2に対する経路についても同様である。決定部221は、到来角θ2における受信波を反射波と判定したとき、式(3)を用いて、反射点P2と端末100との距離dθ2‐1’を演算し、位置測位部222に出力する。位置測位部222は、式(6)の右辺に距離dθ2‐1’を代入して演算する。決定部221は、到来角θ2における受信波が直接波と判定したとき、伝搬距離dθ2を位置測位部222に出力する。位置測位部222は、式(4)の右辺に伝搬距離dθ2を代入して演算する。
【0062】
更に、受信レベル検知部216は、到来角θ0’で受信レベルのピークを検知し、伝搬距離算出部218は到来角θ0’での伝搬距離dθ0’を算出する。決定部221は、θ1,θ2以外の到来角θ0’からの受信波なので、当該受信波を直接波と判定して(反射点の存在しない角度からの受信波と判定して)、伝搬距離dθ0’を位置測位部222に出力する。位置測位部222は、式(4)の右辺に伝搬距離dθ0’を代入し、式(4)〜式(6)の連立方程式を演算し、端末100の位置T’’’(a’’’,b’’’)を演算する。この場合、位置測位部222は、式(4)〜式(6)のa,bをa’’’,b’’’として演算することになる。
【0063】
このように、本AP200は端末100が他の位置T’’’に移動したときでも、位置Tに位置するときと同様に、端末100の位置を測位できる。
【0064】
<障害物がある場合の位置測位の例>
上述した例は、AP200は3つの経路から無線信号を入力した例を説明した。例えば、障害物により、AP200はある経路の無線信号を受信できない場合もある。図11はかかる場合の例を示す図である。
【0065】
図11において、障害物300は端末100とAP200とを結ぶ線分上に位置している。障害物300は直接波の経路上に位置するため、AP200は端末100からの直接波を受信できない。かかる場合、AP200は2つの経路からの受信波(図11の例では、ともに反射波)を用いて、端末100の位置T(a,b)を演算する。
【0066】
この場合、上述した例と同様に、伝搬距離算出部218は、反射点P1を介した反射波の伝搬距離dθ1(=Drθ1+dθ1−1)と、反射点P2を介して反射波の伝搬距離dθ2(=Drθ2+dθ2‐1)とを算出する。
【0067】
決定部221は、2つの経路からの受信波が直接波か反射波かを判定し、この場合はいずれも反射波と判定して、式(2)と式(3)とを用いて、反射点P1,P2と端末100との距離dθ1−1,dθ2−1を演算し、位置測位部222に出力する。
【0068】
位置測位部222は、式(5)と式(6)とを用いて、端末100の位置座標(a,b)とを演算する。このとき、演算した位置座標(a,b)は2つの解が存在する。しかし、他方の解は、例えば図11に示す位置関係から存在しえない位置を示す解となる。位置測位部222は、このように2つの受信波で測位する場合、予め座標位置(a,b)の予測範囲を保持しておき、式(4)〜式(6)のうち2つの連立方程式による解が当該範囲内のものを選択するようにすればよい。
【0069】
例えば、障害物300が反射点P1とAP200とを結ぶ線分上に位置したときも、決定部221等は同様に演算等を行うことができる。
【0070】
<反射点の他の例>
反射点P1,P2についても種々のバリエーションがある。図12は、更に反射点P0が配置された場合における反射点P0等の位置関係の例を示す図である。図12に示す例は、図4等で示す角度θ0の方向に反射点P0が位置する例である。反射点距離算出部220は、予め、反射点P0の位置P0(x0,y0)を算出し、更に、反射点P0との距離Drθ0、角度θ0を算出しているものとする。
【0071】
反射点P0とAP200とを結ぶ線分上の位置T1(a1,b2)に端末100が位置するときは、例えば以下のようになる。角度θ0において反射点P0が位置するため、伝搬距離算出部218は角度θ0における伝搬距離dθ0を算出する。そして、決定部221は、AP200と反射点P0との距離Drθ0と、伝搬距離dθ0とを比較する。図12の例では、dθ0<Drθ0のため、決定部221は直接波と判定して、伝搬距離dθ0を位置測位部222に出力する。位置測位部222は、伝搬距離dθ0を式(4)の右辺に代入して式(4)を演算する。位置測位部222等は、端末100から送信された無線信号の他の経路を用いて同様に処理し、例えば、式(4)〜式(6)の連立方程式を演算する。
【0072】
一方、端末100がAP200と反射点P0とを結ぶ線分上ではない位置T2(a2,b2)に位置したとき、反射波の経路において伝搬距離dθ0は、
dθ0=Drθ0+dθ0−1 ・・・(7)
となる。AP200は、到来角θ0で所定レベルの受信波を受信する。決定部221は、伝搬距離dθ0と距離Drθ0との関係がdθ0>Drθ0となるため、反射波と判定し、反射点P0と端末100との距離dθ0−1 を式(7)により演算し、当該距離dθ0−1 を位置測位部222に出力する。
【0073】
また、受信レベル検知部216と伝搬距離算出部218は、到来角θ3でピーク受信レベルを検知し、決定部221は、角度θ0以外の角度で検知したため、当該角度θ3での受信波を直接波と判定する。決定部221は、伝搬距離算出部218で算出された伝搬距離dθ3を位置測位部222に出力する。
【0074】
位置測位部222は、2つの受信波に基づいて、距離dθ0−1を式(5)の右辺((x2,y2)は(x0,y0)とする)、伝搬距離dθ3を式(4)の右辺に代入して、位置(a2,b2)を演算する。他の経路からの反射波があれば、位置測位部222は、その距離を式(6)((x3,y3)はその反射波の反射点の座標とする)の右辺に代入する等して、位置(a2,b2)を演算すればよい。
【0075】
<動作例>
図13はAP200で行われる動作例を示すフローチャートである。詳細は説明したため、簡単に説明する。
【0076】
まず、AP200は、処理を開始すると(S10)、所定角度ずつアレイアンテナ210‐1〜210‐nを走査しながら、各角度における受信波の受信レベルを検知するか、又は伝搬時間を測定する(S11)。例えば、受信レベル検知部216が受信レベルを検知し、伝搬時間測定部217が伝搬時間を測定する。
【0077】
次いで、AP200は伝搬距離dθを算出する(S12)。例えば、伝搬距離算出部218は、受信レベルに基づいて、テーブルを検索して伝搬距離dθを算出する(図3(C))。或いは、伝搬距離算出部218は、伝搬時間tに電波速度cを乗算して伝搬距離dθを算出する。
【0078】
次いで、AP200は、受信波が直接波か反射波かを判定する(S13)。例えば、決定部221は、反射点P1,P2の角度θ1,θ2に対する受信波の伝搬距離dθ1,dθ2と、AP200と反射点P1,P2までの距離Drθ1,Drθ2とを比較して判定する。
【0079】
次いで、AP200は、受信波を直接波と判定したとき(S13で「直接波」)、伝搬距離を位置測位部222に出力する(S14)。例えば、決定部221は、直接波と判定したとき、伝搬距離dθ0を位置測位部222に出力する。
【0080】
一方、AP200は、受信波を反射波と判定したとき(S13で「反射波」)、反射点と端末100との距離を演算し、位置測位部222に当該距離を出力する(S15)。例えば、決定部221は、反射波と判定したとき、式(2)等を用いて、反射点P1,P2と端末100との距離dθ1−1,dθ2−1を演算し、位置測位部222に出力する。
【0081】
次いで、AP200は、端末100の位置を測定する(S16)。例えば、位置測位部222は、伝搬距離dθ1やAP200(x1,y1)と反射点P1(x2,y2)、P2(x3,y3)等を式(4)〜式(6)の右辺に代入して連立方程式を解くことで、端末100の位置を測位する。
【0082】
そして、一連の処理を終了する(S17)。
【0083】
このように、本AP200は、反射点P0〜P2等からの受信波を直接波か反射波かを判定し、その結果に基づいて、式(4)〜式(6)の右辺(反射点の座標は適宜その反射点に合った座標を用いる)に伝搬距離dθ1や距離Drθ1等を代入して演算し、端末100の位置座標を測位している。従って、本AP200は、端末100の位置座標を測定できるため、高精度に端末100の位置を測定できる。
【0084】
<他の実施例>
次に他の実施例を説明する。上述した例では、反射回数が「1回」の場合で説明した。例えば、部屋の形状、計器等の配置などにより反射回数が複数回の多重反射の場合もある。図14は多重反射が行われる場合の受信波の経路例を示す図である。図14の例は、反射点P1,P3〜P5まで4つの反射点が配置され、反射点P4と反射点P5とを結ぶ経路上に端末100が位置するときの例である。
【0085】
図14において、AP200と反射点P1までの距離をDr1θ1、反射点P1とP3の距離をDr2θ1、反射点P3とP4の距離をDr3θ1、反射点P4とP5の距離をDr4θ1とする。また、各反射点P3〜P5の位置座標を、夫々(x4,y4),(x5,y5),(x6,y6)とする。また、端末100が図14に示す位置(a,b)に位置するときの伝搬距離をdθ0とする。
【0086】
AP200は、受信波を反射波と判定したとき、端末100がAP200に至る経路において最も近い反射点までの距離D1を求めることになる。図14の例では、AP200は、反射点P4と端末100との距離dθ1−4(=D1)を求める。そして、AP200は、求めた距離D1(図14の例では距離dθ1−4)を式(5)又は式(6)の右辺に代入し演算する。なお、式(5)又は式(6)の(x2,y2)あるいは(x3,y3)は(x5,y5)とする。他の反射波や直接波があれば、位置測位部222等は、それを用いて式(4)〜式(6)の右辺に適宜代入し、且つ、(x1,y1),(x2,y2),(x3,y3)を適宜その反射点の座標に応じて変更して、連立方程式を演算する。
【0087】
この距離D1の求め方については以下のようになる。図15は、距離D1の求め方の例を示すフローチャートである。例えば、図15のフローチャートは、図13に示すS13及びS14に対応する。
【0088】
AP200の伝播距離算出部218は、端末100との伝播距離dθ1を算出し(S12)、次いで、決定部221は、反射回数nに「1」を代入する(S131)。
【0089】
次いで、決定部221は、伝播距離dθ1が以下の式(8)を満たすか否かを判別する(S132)。
【0090】
【数2】
【0091】
式(8)は、例えば、AP200と反射点との間、又は各反射点間において、端末100がどの間に位置しているかを判定する式である。例えば、図14において、端末100がAP200と反射点P1との間の経路上に位置するとき、伝播距離dθ1は、AP200と反射点P1との距離Drθ1に対して、dθ1<Drθ1を満たし、S132はYesと判定される。また、端末100が反射点P1,P3間に位置するとき、dθ1>Dr1θ1であるが(S132でNo)、dθ1<(Dr1θ1+Dr2θ1)となる(S132でYes)。図14の例では、dθ1>(Dr1θ1+Dr2θ1+Dr3θ1)であるが(S132でNo)、dθ1<(Dr1θ1+Dr2θ1+Dr3θ1+Dr4θ1)となる(S132でYes)。
【0092】
決定部221は、式(8)を満たさないと(S132でNo)、nに「1」を加算して(S133)、式(8)を満たすか否かを判定する。
【0093】
決定部221は、式(8)を満たすとき、nは「1」か否かを判定する(S134)。例えば、決定部221は、AP200と反射点P1とを結ぶ経路上に端末100が位置し、端末100から直接波を受信したか否かを判定する。
【0094】
決定部221は、nが「1」のとき(S134でYes)、受信波は直接波と判定し、距離D1は以下の式(9)を満たす値とする(S141)。
【0095】
【数3】
【0096】
一方、決定部221は、nは「1」でないとき(S134でNo)、受信波は反射波と判定し、距離D1は以下の式(10)を満たす値とする。
【0097】
【数4】
【0098】
図14の例では、
D1=dθ1−(Dr1θ1+Dr2θ1+Dr3θ1)
となり、基点となる反射点は反射点P4となる。
【0099】
決定部221は、S141及びS142の処理が終了すると、図13に示すS16の処理へ移行し、位置測位部222は距離D1を式(4)〜式(6)のいずれかの式の右辺に代入して処理を行う。図14の例では経路は1つであるが、例えば、複数の経路があってもよく、他の経路の受信波を受信した場合、この受信波を用いて上述した処理を行い、式(4)〜式(6)に代入して処理を行う。
【0100】
このように端末100からの反射波が複数回反射を繰り返した場合でも、AP200は、端末100がAP200に至る経路において最も近い反射点までの距離D1を求めることで、上述した例と同様に処理を行うことができる。よって、本AP200は、複数回反射を繰り返す場合でも、高精度に端末100の位置を測定できる。
【0101】
また、上述した例において、AP200は、3つ又は2つの経路の受信波を受信することで、式(4)〜式(6)に各々値を代入して、端末100の位置を測位した。例えば、AP200は3つ以上の受信波を受信して、端末100の位置を測位してもよい。或いは、AP200は、アレイアンテナ210‐1〜210‐nの走査角毎に受信レベルを検出することもできる。図16は、受信レベルと到来角θとの関係例を示す図である。受信レベル検知部216は走査角毎に受信レベルを検知する。このとき、受信レベル検知部216は、受信レベルの高い順に例えば3つ(又は2つ)を選択して、伝搬距離算出部218に算出する。図4等の例では、このうち2つは、予め保持した反射点P1,P2のある角度θ1,θ2からの受信レベルとなる。当該角度θ1,θ2には予め反射点P1,P2が配置され、AP200は反射点P1,P2からの反射波を受信するからである。例えば、受信レベル検知部216は、反射点が3つ以上あるときでも、上位3つの受信レベルを選択して距離算出部218に出力してもよい。決定部221は、3つの受信波が直接波か反射波かを判定し、位置測位部222は、上位3つの受信レベルに基づいて、上述した例と同様に式(4)〜式(6)を演算することで、端末100の位置を測位する。
【0102】
更に、上述した例において、AP200は受信レベル検知部216と伝播時間測定部217の双方を備える例について説明した。例えば、図17に示すように、AP200は伝播時間測定部217を備えていなくてもよい。また、図18に示すようにAP200は受信レベル検知部216を備えていなくてもよい。
【0103】
更に、上述した例では、予め決められた反射点が配置され、AP200はその反射点の角度で受信レベル等を検知するものとして説明した。例えば、アレイアンテナ210‐1〜210-nの所定角度範囲内において、走査角度毎に反射点の位置、反射点距離等が算出されるようにすることもできる。例えば、図14の範囲Lにおいて、走査角度毎にm個の反射点P1〜Pmが設けられていてもよい。AP200は、上述したように、上位3つの受信レベルに基づいて伝播距離dθを算出し、反射波か直接波かを判定し、その結果に基づいて式(4)〜式(6)の右辺にdθおよびAP200の位置座標、各反射点の位置座標を代入して、端末100の位置を測位できる。例えば、図14の例において、病院内における範囲Lの長さを有する壁等に対して反射点が予め算出されるようにしておき、AP200は、範囲L内の各反射点への各角度において受信レベル等を測定することで上述した例と同様に実施できる。
【0104】
更に、上述した例は無線通信装置としてAP200を例にして説明した。例えば、無線通信装置として、無線基地局装置、又は中継局装置等でもよい。無線基地局装置等でも上述した例を実施することができる。
【0105】
以上まとめると付記のようになる。
【0106】
(付記1)
端末装置と無線通信を行う無線通信装置において、
少なくとも第1及び第2の経路により前記端末装置から送信された無線信号を夫々第1及び第2の受信波として受信したとき、前記第1及び第2の経路に対する経路長を示す第1及び第2の伝搬距離を夫々算出する算出部と、
前記第1及び第2の伝搬距離に基づいて、前記第1及び第2の受信波が第1及び第2の反射点で反射した反射波か、前記第1及び第2の反射点を介さない直接波かを夫々判定し、前記第1又は第2の受信波を前記反射波と判定したとき、前記第1又は第2の経路において前記端末装置から最も近い前記第1又は第2の反射点までの距離を夫々示す第1又は第2の端末反射点間距離を出力し、前記第1又は第2の受信波を前記直接波と判定したとき、前記第1又は第2の伝搬距離を出力する決定部と、
前記決定部から出力された、前記第1又は第2の端末反射点間距離、又は、前記第1又は第2の伝搬距離に基づいて前記端末装置の位置を測位する位置測位部と
を備えることを特徴とする無線通信装置。
【0107】
(付記2)
前記決定部は、前記第1又は第2の伝搬距離が、前記第1又は第2の経路において前記無線通信装置から最も近い前記第1又は第2の反射点までの距離を示す第1又は第2の反射点距離と夫々同じか長いとき、前記第1又は第2の受信波は夫々前記反射波と判定し、前記第1又は第2の伝搬距離が前記第1又は第2の反射点距離よりも夫々短いとき、前記第1又は第2受信波は夫々前記直接波と判定することを特徴とする付記1記載の無線通信装置。
【0108】
(付記3)
前記位置測位部は、前記決定部が前記第1及び第2の受信波を共に反射波と判定したとき、前記第1及び第2の反射点間距離に基づいて前記端末装置の位置を測位することを特徴とする付記1記載の無線通信装置。
【0109】
(付記4)
前記算出部は、前記第1及び第2の受信波の受信電力レベル、又は、前記第1及び第2の受信波の伝搬時間に基づいて、前記第1及び第2の伝搬距離を夫々算出することを特徴とする付記1記載の無線通信装置。
【0110】
(付記5)
更に、一定の走査角で走査することで前記無線信号を受信するアレイアンテナを備え、
前記算出部は、前記走査角毎に受信電力レベルを算出し、このうち上位2つの前記受信電力レベルに基づいて前記第1及び第2の伝搬距離を算出することを特徴とする付記1記載の無線通信装置。
【0111】
(付記6)
前記位置測位部は、前記第1又は第2の端末反射点間距離、又は、前記第1又は第2の伝搬距離に基づいて前記端末装置の位置座標を演算し、更に、所定範囲内にある前記端末装置の位置座標を前記端末装置の位置として測位することを特徴とする付記1記載の無線通信装置。
【0112】
(付記7)
前記算出部は、更に、第3の経路による第3の受信波を受信したとき、前記第3の受信波に対する第3の伝搬距離を算出し、
前記決定部は、前記第3の伝搬距離に基づいて、前記第3の受信波が前記反射波か前記直接波かを判定し、前記第3の受信波を前記反射波と判定したとき、前記第3の経路において前記端末装置から最も近い前記第1又は第2の反射点までの距離を示す第3の端末反射点間距離を出力し、前記第3の受信波を前記直接波と判定したとき、前記第3の伝搬距離を出力し、
前記位置測位部は、前記第1又は第2の端末反射点間距離、又は、前記第2又は第1の伝搬距離、或いは、前記第3の端末反射点間距離又は前記第3の伝搬距離、に基づいて前記端末装置の位置を測位することを特徴とする付記1記載の無線通信装置。
【0113】
(付記8)
更に、一定の走査角で走査することで前記無線信号を受信するアレイアンテナを備え、
前記算出部は、前記走査角毎に受信電力レベルを算出し、このうち上位3つの前記受信電力レベルに基づいて前記第1乃至第3の伝搬距離を算出することを特徴とする付記7記載の無線通信装置。
【0114】
(付記9)
前記位置測位部は、前記第1又は第2の端末反射点間距離、又は、前記第2又は第1の伝搬距離、或いは、前記第3の端末反射点間距離又は前記第3の伝搬距離、に基づいて前記端末装置の位置座標を演算することを特徴とする付記7記載の無線通信装置。
【0115】
(付記10)
前記無線通信装置は、無線基地局装置又はアクセスポイントであることを特徴とする請求項1記載の無線通信装置。
【0116】
(付記11)
算出部と決定部、及び位置測位部とを備え、
端末装置と無線通信を行う無線通信装置における位置測位方法であって、
少なくとも第1及び第2の経路により前記端末装置から送信された無線信号を夫々第1及び第2の受信波として受信したとき、前記第1及び第2の経路に対する経路長を示す第1及び第2の伝搬距離を前記算出部により夫々算出し、
前記第1及び第2の伝搬距離に基づいて、前記第1及び第2の受信波が第1及び第2の反射点で反射した反射波か、前記第1及び第2の反射点を介さない直接波かを夫々判定し、前記第1又は第2の受信波を前記反射波と判定したとき、前記第1又は第2の経路において前記端末装置から最も近い前記第1又は第2の反射点までの距離を夫々示す第1又は第2の端末反射点間距離を前記決定部により出力し、前記第1又は第2の受信波を前記直接波と判定したとき、前記第1又は第2の伝搬距離を前記決定部により出力し、
前記第1又は第2の端末反射点間距離、又は、前記第1又は第2の伝搬距離に基づいて前記端末装置の位置を前記位置測位部により測位する
ことを特徴とする位置測位方法。
【0117】
(付記12)
端末装置と無線通信装置との間で無線通信を行う無線通信システムにおいて、
前記端末装置は、無線信号を前記無線通信装置に送信する送信部を備え、
前記無線通信装置は、
少なくとも第1及び第2の経路により前記端末装置から送信された無線信号を夫々第1及び第2の受信波として受信したとき、前記第1及び第2の経路に対する経路長を示す第1及び第2の伝搬距離を夫々算出する算出部と、
前記第1及び第2の伝搬距離に基づいて、前記第1及び第2の受信波が夫々第1及び第2の反射点で反射した反射波か、前記第1及び第2の反射点を介さない直接波かを判定し、 前記第1又は第2の受信波を前記反射波と判定したとき、前記第1又は第2の経路において前記端末装置から最も近い前記第1又は第2の反射点までの距離を夫々示す第1又は第2の端末反射点間距離を出力し、前記第1又は第2の受信波を前記直接波と判定したとき、前記第1又は第2の伝搬距離を出力する決定部と、
前記決定部から出力された、前記第1又は第2の端末反射点間距離、又は、前記第1又は第2の伝搬距離に基づいて前記端末装置の位置を測位する位置測位部と
を備えることを特徴とする無線通信システム。
【符号の説明】
【0118】
10:無線通信システム 100:端末装置
200:AP 210‐1〜210‐n:アレイアンテナ
211;ビーム走査部 212:走査角制御部
213:受信部 214:デジタル変換部
215:復調部 216:受信レベル検知部
217:伝播時間測定部 218:伝搬距離算出部
219:AP及び反射点位置情報記憶部(記憶部)
220:反射点距離算出部 221:判定部及び距離決定部(決定部)
222:位置測位部
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置、無線通信装置における位置測位方法、及び無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、基地局と端末との間で無線通信を行う無線通信システムにおいて、例えば、基地局は端末の位置を測位することで、端末の方向にアンテナを向けて無線通信を行うことができる。
【0003】
このような位置測位に関して、例えば、基地局は2以上のアンテナから第1、第2の信号を送信し、移動局は受信した第1、第2の信号間の位相差を求め、当該位相差に基づいて基地局から見た移動局の方位を算出して基地局に送信するようにしたものが知られている。
【0004】
また、例えば、電波の到来方向を推定し、推定した電波到来方向と3次元地図データとに基づきレイトレース法により無線局の位置を推定する無線局方向推定装置も知られている。
【0005】
更に、例えば、基地局は、ノードから送信された観測信号の識別情報と観測信号の間隔とに基づいて観測信号が直接波か反射波かを判定し、判定結果に基づいてノードと基地局との距離を補正するようにしたものも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−237755号公報
【特許文献2】特開2006−170698号公報
【特許文献3】特開2007−155523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、直接波と反射波とが混在するようなマルチパス環境では、例えば、基地局は直接波と反射波の双方を受信する場合もある。上述した従来技術において、2つの信号間の位相差を求めたり、電波の到来方向を推定するものでは、マルチパス環境について考慮されておらず、端末の位置を高精度に測定することはできない。
【0008】
また、上述した従来技術において直接波と反射波とを判定するものは、直接波と反射波とを判定した結果に基づいて基地局とノードとの距離を求めるものであって、ノードの位置を求めることに関しては考慮されていない。従って、かかる従来技術においても、端末の位置を高精度に測定することはできない。
【0009】
そこで、本発明の一目的は、端末の位置を高精度に測定できるようにした無線通信装置、無線通信装置における位置測位方法、及び無線通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一態様によれば、端末装置と無線通信を行う無線通信装置において、少なくとも第1及び第2の経路により前記端末装置から送信された無線信号を夫々第1及び第2の受信波として受信したとき、前記第1及び第2の経路に対する経路長を示す第1及び第2の伝搬距離を夫々算出する算出部と、前記第1及び第2の伝搬距離に基づいて、前記第1及び第2の受信波が第1及び第2の反射点で反射した反射波か、前記第1及び第2の反射点を介さない直接波かを夫々判定し、前記第1又は第2の受信波を前記反射波と判定したとき、前記第1又は第2の経路において前記端末装置から最も近い前記第1又は第2の反射点までの距離を夫々示す第1又は第2の端末反射点間距離を出力し、前記第1又は第2の受信波を前記直接波と判定したとき、前記第1又は第2の伝搬距離を出力する決定部と、前記決定部から出力された、前記第1又は第2の端末反射点間距離、又は、前記第1又は第2の伝搬距離に基づいて前記端末装置の位置を測位する位置測位部とを備える。
【発明の効果】
【0011】
端末の位置を高精度に測定できるようにした無線通信装置、無線通信装置における位置測位方法、及び無線通信システムを提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は無線通信システムの構成例を示す図である。
【図2】図2はAPの構成例を示す図である。
【図3】図3(A)と図3(B)は同期信号の例を夫々し示す図であり、図3(C)は受信レベルと伝搬距離との関係例を示すグラフである。
【図4】図4は受信波の伝搬経路の例を示す図である。
【図5】図5は受信波の伝搬経路の例を示す図である。
【図6】図6は受信波の伝搬経路の例を示す図である。
【図7】図7は受信波の伝搬経路の例を示す図である。
【図8】図8は受信波の伝搬経路の例を示す図である。
【図9】図9は受信波の伝搬経路の例を示す図である。
【図10】図10は受信波の伝搬経路の例を示す図である。
【図11】図11は受信波の伝搬経路の例を示す図である。
【図12】図12は受信波の伝搬経路の例を示す図である。
【図13】図13は動作例を示すフローチャートである。
【図14】図14は受信波の伝搬経路の例を示す図である。
【図15】図15は動作例を示すフローチャートである。
【図16】図16は受信レベルと到来角の関係例を示すグラフである。
【図17】図17はAP200の他の構成例を示す図である。
【図18】図18はAP200の他の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態について以下説明する。
【0014】
<構成例>
図1は無線通信システム10の構成例を示す図である。無線通信システム10は、端末装置(以下、「端末」)100と、無線通信装置(又はアクセスポイント、以下「AP」)200とを備える。また、無線通信システム10において、2つの反射点P1,P2が配置される。
【0015】
端末100とAP200は、無線信号を送受信することで無線通信を行うことができる。また、端末100は、移動可能でAP200の電波到達可能範囲内において、AP200と無線通信を行うことができる。端末100は、送受信部110とアンテナ120とを備える。
【0016】
送受信部110は、例えば、所定の変調方式でデータを変調等して無線信号としてアンテナ120に出力し、アンテナ120で受信したAP200からの無線信号を所定の復調方式で復調等してデータを抽出することができる。
【0017】
アンテナ120は、送受信部110から出力された無線信号をAP200に送信し、AP200から送信された無線信号を受信して送受信部110に出力する。アンテナ120は複数のアンテナでもよい。また、端末100は複数台でもよい。
【0018】
AP200は、複数のアレイアンテナ210‐1〜210‐n(nは2以上の整数)を備える。各アレイアンテナ210‐1〜210‐nはビーム角度を変えて、端末100に無線信号を送信し、端末100から送信された無線信号を受信できる。
【0019】
また、AP200と端末100は、複数の経路からの無線信号を受信できる。図1の例では、AP200は、反射点P1,P2を介さずに直接、端末100から送信された無線信号を受信できる。一方、AP200は、反射点P1,P2を介した経路により無線信号を受信できる。AP200は、このように直接波と反射波との経路により、端末100から送信された無線信号を受信波として受信できる。端末100も同様である。
【0020】
反射点P1,P2は、例えば、本無線通信システム10が病院内等で用いられる場合、壁、パーティション等、電波を反射する障害物等の固定点である。従って、本実施例において、反射点P1,P2の位置座標は予め決められており、AP200内において記憶されているものとする。図1の例では、2つの反射点P1,P2の例が示されるが、反射点が1つの場合や、3つ以上の場合でもよい。
【0021】
図2はAP200の構成例を示す図である。AP200は、複数のアレイアンテナ210‐1〜210‐nと、ビーム走査部211と、走査角制御部212と、受信部213と、デジタル変換部214と、復調部215と、受信レベル検知部216と、伝搬時間測定部217と、伝搬距離算出部218と、AP及び反射点位置情報記憶部(以下、「記憶部」)219と、反射点距離算出部220と、判定部及び距離決定部(以下、「決定部」)221と、位置測位部222とを備える。
【0022】
ビーム走査部211は、走査角制御部212からの制御信号に基づいて、複数のアレイアンテナ210‐1〜210‐nに対して一定の走査角でビーム走査(ビームスキャン)を行う。また、ビーム走査部211は、複数のアレイアンテナ210‐1〜210‐nで受信した無線信号を受信部213に出力する。
【0023】
走査角制御部212は、一定の走査角でアレイアンテナ210‐1〜210‐nが動作するように制御信号をビーム走査部211に出力する。また、走査角制御部212は、現在のアレイアンテナ210‐1〜210‐nの走査角度(又は到来角度)に関する情報を保持し、当該情報を到来角度情報として反射点距離算出部220に出力する。
【0024】
受信部213は、無線信号に対して、例えば、電力増幅及びダウンコンバート等の処理を行い、受信信号Rpaに変換する。
【0025】
デジタル変換部214は、アナログの受信信号Rpaをデジタルの受信信号Rpdに変換する。
【0026】
復調部215は、受信信号Rpdを予め決められた復調方式(例えば、QPSK、16QAM等)で復調し、復調信号Sdを出力する。
【0027】
受信レベル検知部216は、アナログ受信信号Rpa及びデジタル受信信号Rpdを入力し、いずれか一方を用いて、AP200が受信した無線信号の受信レベル(例えば、受信電力レベル)を検知する。
【0028】
伝搬時間測定部217は、復調信号Sdを用いて、端末100から送信された無線信号がAP200に到達するまでの伝搬時間を測定する。伝搬時間は例えば以下のようにして測定される。図3(A)は端末100から送信される送信信号(例えば変調前の信号)の例、図3(B)はAP200で復調された復調信号Sdの例を夫々示す図である。同図(A)に示すように、送信信号には、例えば所定の送信タイミングTで送信されるべき同期信号rsが含まれる。伝搬時間測定部217は、予め同期信号rsの送信タイミングTを記憶し、復調信号Sdに含まれる同期信号rsの送信間隔Tに対する遅延時間tを測定し、当該遅延時間tを伝搬時間として出力する。
【0029】
伝搬距離算出部218は、受信レベル検知部216から出力された受信レベル、又は、伝搬時間測定部217から出力された伝搬時間に基づいて、伝搬距離dθを測定する。伝搬距離dθは、例えば、端末100(又はAP200)から送信された無線信号がAP200(又は端末100)において受信されるまでの経路(パス)上の距離である。例えば、図1において、端末100から送信された無線信号が反射点P1を介してAP200に至る経路上の距離が伝搬距離dθである。また、直接波による経路において当該経路上の距離も伝搬距離dθとなる。
【0030】
伝搬距離算出部218は、受信レベルから伝搬距離dθを算出する場合は、例えば以下のようにして行う。伝搬距離算出部218は、受信レベルと伝搬距離dθとの関係を示すテーブルを保持し、当該テーブルに基づいて受信レベルに対応する伝搬距離dθを選択する。図3(C)は、受信レベルと伝搬距離dθとの関係例を示す図である。同図(C)に示すグラフは減衰曲線と呼ばれ、受信レベルがRp0>Rp1のとき、伝搬距離はdθ0<dθ1の関係を有する。伝搬距離算出部218はかかる減衰曲線に対応したテーブルを保持し、当該テーブルに基づいて受信レベルに対応する伝搬距離dθを読み出し、当該伝搬距離dθを出力する。
【0031】
一方、伝搬距離算出部218は、伝搬時間に基づいて伝搬距離dθを算出する場合は、例えば以下のようにして行う。即ち、伝搬距離算出部218は、伝搬時間tに対して電波速度(又は光の速度)をc、伝搬距離をdθとすると、
dθ=t×c ・・・(1)
を演算することで伝搬距離dθを算出する。
【0032】
尚、伝搬距離算出部218は、受信レベル又は伝搬時間のいずれか一方で伝搬距離dθを算出できるため、図2において、受信レベル検知部216又は伝搬時間測定部217の一方がなくてもよい。このような場合のAP200の構成例は後述する。伝搬距離算出部218は、算出した伝搬距離dθを決定部221に出力する。
【0033】
記憶部219は、AP200の位置及び反射点の位置に関する情報、例えばAP200のビーム走査角と位置座標を保持する。AP200及び反射点の位置座標は、例えば、地図、図面、実測等により記憶部219に予め保持される。
【0034】
反射点距離算出部220は、記憶部219に記憶されたAP200及び反射点の各位置情報と、走査角制御部212からの到来角度情報とに基づいて、AP200と反射点との距離(以下、反射点距離)Drθ、及び各反射点間の距離を算出する。反射点距離算出部220は、反射点距離Drθ等を決定部221に出力する。尚、反射点距離算出部220は、記憶部219においてAP200等の位置情報を予め保持しているため、決定部221等が動作する前に、反射点距離Drθを予め算出するようにしてもよい。
【0035】
決定部221は、伝搬距離dθと反射点距離Drθとに基づいて、受信した無線信号が直接波により受信した無線信号か又は反射波により受信した無線信号かを判別する。決定部221は、反射波と判定したとき伝搬距離Drθを減算した距離を位置測位部222に出力し、直接波と判定したとき伝搬距離dθを位置測位部22に出力する。決定部221の詳細は後述する。
【0036】
位置測位部222は、決定部221で決定した距離に基づいて、端末100の位置を測位する。位置測位の詳細も後述する。
【0037】
<位置測位の例>
次に、AP200における位置測位の詳細について説明する。まず、位置関係について説明する。図4は、図1に示す無線通信システム10において、反射点P1,P2と端末100、及びAP200との位置関係の例を示す図である。尚、以下に示す例は、端末100からAP200へ無線信号が送信される例で説明する。
【0038】
AP200と反射点P1,P2の位置は、予めAP200に記憶され、例えば、各々(x1,y1),(x2,y2),(x3,y3)とする。AP200は、端末100の位置座標(a,b)を測位することになる。
【0039】
ここで、端末100が座標位置(a,b)に位置したとき、AP200のアレイアンテナ210‐1〜210‐nは、X軸に対して方位角θ1の方向に向けると、反射点P1に反射した反射波を受信できる。また、アレイアンテナ210‐1〜210‐nは、方位角θ0に対して、端末100からの直接波を受信できる。更に、アレイアンテナ210‐1〜210‐nは、方位角θ2に対して、反射点P2で反射した反射波を受信できる。このように、AP200のアレイアンテナ210‐1〜210‐nは、固定位置に配置された反射点P1,P2の方位角に向けると、端末100からの受信波のうち、反射波を受信できる。
【0040】
次に、端末100の位置座標(a,b)の演算について説明する。図5〜図7は、図4に示す反射点P1,P2等に対して、座標位置と各距離との関係例を示す図である。図5で、AはAP200の位置座標(x1,y1)、Tは端末100の位置座標(a,b)を示す。
【0041】
上述したように反射点P1,P2とAP200は予め決められた固定位置にある。AP200と反射点P1との距離をDrθ1、反射点P2との距離をDrθ2とすると、各距離Drθ1,Drθ2は固定値である。一方、端末100の位置T(a,b)は、端末100の移動に伴い変化する。端末100が位置T(a,b)に位置するとき、反射点P1を介した経路(パス)において、端末100とAP200との間の伝搬距離dθ1は、図6に示すように、
dθ1=Drθ1+dθ1−1 ・・・(2)
となる。ここで、dθ1−1は、例えば、反射点P1から端末100の位置T(a,b)までの距離である。
【0042】
また、反射点P2の経路において、端末100とAP200との伝搬距離dθ2は、図7に示すように、
dθ2=Drθ2+dθ2−1 ・・・(3)
となる。ここで、dθ2−1は、例えば、反射点P2から端末100の位置(a,b)までの距離である。
【0043】
更に、直接波の経路において、端末100とAP200との伝搬距離は図5よりdθ0となる。
【0044】
上述したように、伝搬距離算出部218は伝搬距離dθ1を算出し、また、反射点距離算出部220は、反射点P1の位置座標(x2,y2)と、AP200の位置座標(a,b)に基づいて固定値Drθ1を予め算出する。決定部221は、式(2)に伝搬距離dθ1と距離Drθ1とを代入することで、端末100と反射点P1との距離dθ1−1を算出できる。
【0045】
同様に、伝搬距離算出部218は、反射点P2の経路に対して、伝搬距離dθ2を算出し、反射点距離算出部220は距離Drθ2を予め算出し、決定部221は、算出した伝搬距離dθ2と距離Drθ2とを式(3)に代入することで、反射点P2から端末100までの距離dθ2−1を算出する。
【0046】
そして、位置測位部222は、反射波については、端末100と反射点P1,P2までの距離dθ1−1,dθ2−1を用い、直接波については端末100とAP200までの伝搬距離dθ0を用いて、以下の連立方程式を解くことで、端末100の位置T(a,b)を演算する。
【0047】
【数1】
【0048】
位置測位部222は、式(4)〜式(6)の連立方程式を解くことで位置T(a,b)を演算する。例えば、図5に示すように、式(4)は弧d’θ0により示される円を表わし、式(5)は弧d’θ1‐1に示される円を表わし、式(6)は弧d’θ2‐1に示される円を表わしている。位置測位部222は、3つの連立方程式を解くことで、3つの弧d’θ0,d’θ1‐1,d’θ2‐1の交点座標、即ち端末100の位置T(a,b)を求めている。
【0049】
<反射波と直接波について>
ここで、図5に示すように、端末100がAP200と反射点P1とを結ぶ経路上の位置T’に位置したとき、AP200は端末100からの反射波ではなく、直接波を受信する。図8はかかる場合の端末100とAP200との位置関係の例を示す図である。このとき、位置測位部222は、式(5)を用いて演算しても反射波として演算しているものではないため、図5における位置T’(a’,b’)を演算していることにはならない。このような場合、位置測位部222は、反射波ではなく直接波として、すなわち、端末100とAP200との伝搬距離dθ1そのものを式(5)の右辺に代入して演算する。
【0050】
従って、AP200が端末100からの受信波が直接波か反射波かを判定することが重要である。本実施例では、決定部221がかかる判定を行う。即ち、決定部221は、反射波と判定したときは、反射点P1から端末100までの距離dθ1−1(式(2)を用いて算出したもの)を位置測位部222に出力する。位置測位部222は、式(5)の右辺に距離dθ1‐1を代入して演算する。
【0051】
一方、決定部221は、直接波と判定したときは、伝搬距離算出部218で算出した伝搬距離dθ1そのものを位置測位部222に出力する。位置測位部222は、決定部221から出力された伝搬距離dθ1を式(4)の右辺dθ0に代入し演算する。
【0052】
判定は、例えば以下のようにして行う。図8に示すように、端末100が反射点P1とAP200との経路上に位置するとき、AP200と反射点P1との距離Drθ1と、伝搬距離dθ1との関係は、
dθ1<Drθ1
となる。一方、図6等に示すように、反射点P1を介して反射波がAP200に到来するとき、距離Drθ1と、伝搬距離dθ1との関係は、
dθ1>Drθ1
となる。従って、決定部221は、伝搬距離算出部218で算出した伝搬距離dθ1と、反射点距離算出部220で算出された距離Drθ1とを比較して、例えば、
dθ1≦Drθ1を満たすとき直接波
dθ1>Drθ1を満たすとき反射波
と判定する。
【0053】
反射点P2に対しても同様である。図9は、端末100が反射点P2とAP200とを結ぶ経路上の位置T’’(a’’,b’’)に位置したときの例を示す図である。決定部221は、例えば、dθ2≦Drθ2を満たすとき直接波、dθ2>Drθ2を満たすとき反射波と判定する。決定部221は、直接波と判定したとき、伝搬距離算出部218で算出した伝搬距離dθ2そのものを位置測位部222に出力する。位置測位部222は、伝搬距離dθ2を式(4)の右辺に代入して演算する。
【0054】
また、決定部221は、反射波と判定したとき、反射点P2と端末100との距離dθ2−1を位置測位部222に出力する。位置測位部222は、式(6)の右辺に距離dθ2−1を代入して演算する。
【0055】
このように、決定部221は直接波と反射波とを判別し、位置測位部222は式(4)〜式(6)の右辺に伝搬距離dθ1及びAP200(x1,y1)と反射点P1(x2,y2)、P2(x3,y3)等を夫々代入し、式(4)〜式(6)の連立方程式を解くことで、端末100の位置座標を演算できる。図8の例では、決定部221は直接波と判定して伝搬距離dθ1を位置測位部222に出力し、位置測位部222は式(4)の右辺に伝搬距離dθ1を代入して演算する。この場合、決定部221等は、他の反射波、例えば反射点P2を介した経路の反射波からの受信レベル等に基づいて、反射点P2と端末100との距離dθ2−1を演算し、位置測位部221は式(6)を演算する。位置測位部221は、式(4)と式(6)とから端末100の位置(a,b)を測位する。例えば、更に他の反射点からの反射波があれば、位置測位部221は、式(5)又は式(6)のx1,y1等を適宜他の反射点の位置座標に代えて、3つの連立方程式を演算することになる。
【0056】
尚、図4等において、AP200は端末100から、伝搬経路をdθ0とする直接波を受信している。決定部221は、かかる場合以下のように判定する。すなわち、決定部221は、反射点距離算出部220から距離Drθ1,Drθ2とともに、各距離Drθ1,Drθ2に夫々対応する角度(到来角度)θ1,θ2を入力する。一方、受信レベル検知部216はアレイアンテナ210‐1〜210‐nの角度を変えたときの受信レベルを検知する。従って、決定部221は、到来角度θ1,θ2と、当該角度の各受信レベルに対して、当該角度以外のピーク受信レベルを入力して検知したとき、端末100から直接波を受信していると判定できる。角度θ1,θ2の方向には反射点P1,P2が配置されるため、受信レベル検知部216がその方向以外でピーク受信レベルを検知したとき、反射点P1,P2を介さずに受信した受信波であり、決定部221は当該受信波を直接波と判定できるからである。伝搬距離算出部218は、当該ピーク受信レベルでの伝搬距離dθを算出し、当該ピーク受信レベルでの角度(図4の例ではθ0)と伝搬距離dθとを決定部221に出力する。決定部221は、反射点距離算出部220からの角度θ1,θ2以外の角度(例えば、θ0)を、伝搬距離算出部218から入力したときは、当該角度の受信波は直接波と判定して、伝搬距離dθ0を位置測位部222に出力する。
【0057】
このように、決定部221は、角度θ1,θ2に対して測定した伝搬距離dθ1,dθ2に対して、距離Drθ1,Drθ2を夫々比較して、受信波が直接波(例えば、図8,図9)か、反射波か(例えば、図6,図7)を判定する。判定は上述した通りである。一方、決定部221は、角度θ1,θ2以外の角度θ0に対する伝搬距離dθ0は、直接波として位置測位部222に出力することになる。
【0058】
<端末100が他の位置に移動したときの位置測位の例>
図4等の例では、端末100が位置T(a,b)に位置したときの例を説明した。例えば、端末100が、T’,T’’以外の他の位置T’’’に移動したとき、AP200は同様に端末100の位置T’’’を測位できる。図10は、かかる場合の受信波の経路の例を示す図である。
【0059】
伝搬距離算出部218は、反射点P1,P2に対する角度θ1,θ2に対して、伝搬距離dθ1,dθ2を算出する。また、受信レベル検知部216は、角度θ0’でピーク受信レベルを検知し、伝搬距離算出部218は、角度θ0’に対して伝搬距離dθ0’を算出する。
【0060】
決定部221は、伝搬距離dθ1と、AP200と反射点P1との距離Drθ1とを比較して、到来角θ1における受信波が直接波か反射波を判定する。決定部221は、反射波と判定したとき、式(2)を用いて反射点P1と端末100との距離dθ1−1’を演算し、当該距離dθ1‐1’を位置測位部222に出力する。位置測位部222は、距離dθ1‐1’を式(5)の右辺に代入して式(5)を演算する。決定部221は、受信波が直接波と判定したとき、伝搬距離dθ1を位置測位部222に出力し、位置測位部222は伝搬距離dθ1を式(4)の右辺に代入して演算する。
【0061】
反射点P2に対する経路についても同様である。決定部221は、到来角θ2における受信波を反射波と判定したとき、式(3)を用いて、反射点P2と端末100との距離dθ2‐1’を演算し、位置測位部222に出力する。位置測位部222は、式(6)の右辺に距離dθ2‐1’を代入して演算する。決定部221は、到来角θ2における受信波が直接波と判定したとき、伝搬距離dθ2を位置測位部222に出力する。位置測位部222は、式(4)の右辺に伝搬距離dθ2を代入して演算する。
【0062】
更に、受信レベル検知部216は、到来角θ0’で受信レベルのピークを検知し、伝搬距離算出部218は到来角θ0’での伝搬距離dθ0’を算出する。決定部221は、θ1,θ2以外の到来角θ0’からの受信波なので、当該受信波を直接波と判定して(反射点の存在しない角度からの受信波と判定して)、伝搬距離dθ0’を位置測位部222に出力する。位置測位部222は、式(4)の右辺に伝搬距離dθ0’を代入し、式(4)〜式(6)の連立方程式を演算し、端末100の位置T’’’(a’’’,b’’’)を演算する。この場合、位置測位部222は、式(4)〜式(6)のa,bをa’’’,b’’’として演算することになる。
【0063】
このように、本AP200は端末100が他の位置T’’’に移動したときでも、位置Tに位置するときと同様に、端末100の位置を測位できる。
【0064】
<障害物がある場合の位置測位の例>
上述した例は、AP200は3つの経路から無線信号を入力した例を説明した。例えば、障害物により、AP200はある経路の無線信号を受信できない場合もある。図11はかかる場合の例を示す図である。
【0065】
図11において、障害物300は端末100とAP200とを結ぶ線分上に位置している。障害物300は直接波の経路上に位置するため、AP200は端末100からの直接波を受信できない。かかる場合、AP200は2つの経路からの受信波(図11の例では、ともに反射波)を用いて、端末100の位置T(a,b)を演算する。
【0066】
この場合、上述した例と同様に、伝搬距離算出部218は、反射点P1を介した反射波の伝搬距離dθ1(=Drθ1+dθ1−1)と、反射点P2を介して反射波の伝搬距離dθ2(=Drθ2+dθ2‐1)とを算出する。
【0067】
決定部221は、2つの経路からの受信波が直接波か反射波かを判定し、この場合はいずれも反射波と判定して、式(2)と式(3)とを用いて、反射点P1,P2と端末100との距離dθ1−1,dθ2−1を演算し、位置測位部222に出力する。
【0068】
位置測位部222は、式(5)と式(6)とを用いて、端末100の位置座標(a,b)とを演算する。このとき、演算した位置座標(a,b)は2つの解が存在する。しかし、他方の解は、例えば図11に示す位置関係から存在しえない位置を示す解となる。位置測位部222は、このように2つの受信波で測位する場合、予め座標位置(a,b)の予測範囲を保持しておき、式(4)〜式(6)のうち2つの連立方程式による解が当該範囲内のものを選択するようにすればよい。
【0069】
例えば、障害物300が反射点P1とAP200とを結ぶ線分上に位置したときも、決定部221等は同様に演算等を行うことができる。
【0070】
<反射点の他の例>
反射点P1,P2についても種々のバリエーションがある。図12は、更に反射点P0が配置された場合における反射点P0等の位置関係の例を示す図である。図12に示す例は、図4等で示す角度θ0の方向に反射点P0が位置する例である。反射点距離算出部220は、予め、反射点P0の位置P0(x0,y0)を算出し、更に、反射点P0との距離Drθ0、角度θ0を算出しているものとする。
【0071】
反射点P0とAP200とを結ぶ線分上の位置T1(a1,b2)に端末100が位置するときは、例えば以下のようになる。角度θ0において反射点P0が位置するため、伝搬距離算出部218は角度θ0における伝搬距離dθ0を算出する。そして、決定部221は、AP200と反射点P0との距離Drθ0と、伝搬距離dθ0とを比較する。図12の例では、dθ0<Drθ0のため、決定部221は直接波と判定して、伝搬距離dθ0を位置測位部222に出力する。位置測位部222は、伝搬距離dθ0を式(4)の右辺に代入して式(4)を演算する。位置測位部222等は、端末100から送信された無線信号の他の経路を用いて同様に処理し、例えば、式(4)〜式(6)の連立方程式を演算する。
【0072】
一方、端末100がAP200と反射点P0とを結ぶ線分上ではない位置T2(a2,b2)に位置したとき、反射波の経路において伝搬距離dθ0は、
dθ0=Drθ0+dθ0−1 ・・・(7)
となる。AP200は、到来角θ0で所定レベルの受信波を受信する。決定部221は、伝搬距離dθ0と距離Drθ0との関係がdθ0>Drθ0となるため、反射波と判定し、反射点P0と端末100との距離dθ0−1 を式(7)により演算し、当該距離dθ0−1 を位置測位部222に出力する。
【0073】
また、受信レベル検知部216と伝搬距離算出部218は、到来角θ3でピーク受信レベルを検知し、決定部221は、角度θ0以外の角度で検知したため、当該角度θ3での受信波を直接波と判定する。決定部221は、伝搬距離算出部218で算出された伝搬距離dθ3を位置測位部222に出力する。
【0074】
位置測位部222は、2つの受信波に基づいて、距離dθ0−1を式(5)の右辺((x2,y2)は(x0,y0)とする)、伝搬距離dθ3を式(4)の右辺に代入して、位置(a2,b2)を演算する。他の経路からの反射波があれば、位置測位部222は、その距離を式(6)((x3,y3)はその反射波の反射点の座標とする)の右辺に代入する等して、位置(a2,b2)を演算すればよい。
【0075】
<動作例>
図13はAP200で行われる動作例を示すフローチャートである。詳細は説明したため、簡単に説明する。
【0076】
まず、AP200は、処理を開始すると(S10)、所定角度ずつアレイアンテナ210‐1〜210‐nを走査しながら、各角度における受信波の受信レベルを検知するか、又は伝搬時間を測定する(S11)。例えば、受信レベル検知部216が受信レベルを検知し、伝搬時間測定部217が伝搬時間を測定する。
【0077】
次いで、AP200は伝搬距離dθを算出する(S12)。例えば、伝搬距離算出部218は、受信レベルに基づいて、テーブルを検索して伝搬距離dθを算出する(図3(C))。或いは、伝搬距離算出部218は、伝搬時間tに電波速度cを乗算して伝搬距離dθを算出する。
【0078】
次いで、AP200は、受信波が直接波か反射波かを判定する(S13)。例えば、決定部221は、反射点P1,P2の角度θ1,θ2に対する受信波の伝搬距離dθ1,dθ2と、AP200と反射点P1,P2までの距離Drθ1,Drθ2とを比較して判定する。
【0079】
次いで、AP200は、受信波を直接波と判定したとき(S13で「直接波」)、伝搬距離を位置測位部222に出力する(S14)。例えば、決定部221は、直接波と判定したとき、伝搬距離dθ0を位置測位部222に出力する。
【0080】
一方、AP200は、受信波を反射波と判定したとき(S13で「反射波」)、反射点と端末100との距離を演算し、位置測位部222に当該距離を出力する(S15)。例えば、決定部221は、反射波と判定したとき、式(2)等を用いて、反射点P1,P2と端末100との距離dθ1−1,dθ2−1を演算し、位置測位部222に出力する。
【0081】
次いで、AP200は、端末100の位置を測定する(S16)。例えば、位置測位部222は、伝搬距離dθ1やAP200(x1,y1)と反射点P1(x2,y2)、P2(x3,y3)等を式(4)〜式(6)の右辺に代入して連立方程式を解くことで、端末100の位置を測位する。
【0082】
そして、一連の処理を終了する(S17)。
【0083】
このように、本AP200は、反射点P0〜P2等からの受信波を直接波か反射波かを判定し、その結果に基づいて、式(4)〜式(6)の右辺(反射点の座標は適宜その反射点に合った座標を用いる)に伝搬距離dθ1や距離Drθ1等を代入して演算し、端末100の位置座標を測位している。従って、本AP200は、端末100の位置座標を測定できるため、高精度に端末100の位置を測定できる。
【0084】
<他の実施例>
次に他の実施例を説明する。上述した例では、反射回数が「1回」の場合で説明した。例えば、部屋の形状、計器等の配置などにより反射回数が複数回の多重反射の場合もある。図14は多重反射が行われる場合の受信波の経路例を示す図である。図14の例は、反射点P1,P3〜P5まで4つの反射点が配置され、反射点P4と反射点P5とを結ぶ経路上に端末100が位置するときの例である。
【0085】
図14において、AP200と反射点P1までの距離をDr1θ1、反射点P1とP3の距離をDr2θ1、反射点P3とP4の距離をDr3θ1、反射点P4とP5の距離をDr4θ1とする。また、各反射点P3〜P5の位置座標を、夫々(x4,y4),(x5,y5),(x6,y6)とする。また、端末100が図14に示す位置(a,b)に位置するときの伝搬距離をdθ0とする。
【0086】
AP200は、受信波を反射波と判定したとき、端末100がAP200に至る経路において最も近い反射点までの距離D1を求めることになる。図14の例では、AP200は、反射点P4と端末100との距離dθ1−4(=D1)を求める。そして、AP200は、求めた距離D1(図14の例では距離dθ1−4)を式(5)又は式(6)の右辺に代入し演算する。なお、式(5)又は式(6)の(x2,y2)あるいは(x3,y3)は(x5,y5)とする。他の反射波や直接波があれば、位置測位部222等は、それを用いて式(4)〜式(6)の右辺に適宜代入し、且つ、(x1,y1),(x2,y2),(x3,y3)を適宜その反射点の座標に応じて変更して、連立方程式を演算する。
【0087】
この距離D1の求め方については以下のようになる。図15は、距離D1の求め方の例を示すフローチャートである。例えば、図15のフローチャートは、図13に示すS13及びS14に対応する。
【0088】
AP200の伝播距離算出部218は、端末100との伝播距離dθ1を算出し(S12)、次いで、決定部221は、反射回数nに「1」を代入する(S131)。
【0089】
次いで、決定部221は、伝播距離dθ1が以下の式(8)を満たすか否かを判別する(S132)。
【0090】
【数2】
【0091】
式(8)は、例えば、AP200と反射点との間、又は各反射点間において、端末100がどの間に位置しているかを判定する式である。例えば、図14において、端末100がAP200と反射点P1との間の経路上に位置するとき、伝播距離dθ1は、AP200と反射点P1との距離Drθ1に対して、dθ1<Drθ1を満たし、S132はYesと判定される。また、端末100が反射点P1,P3間に位置するとき、dθ1>Dr1θ1であるが(S132でNo)、dθ1<(Dr1θ1+Dr2θ1)となる(S132でYes)。図14の例では、dθ1>(Dr1θ1+Dr2θ1+Dr3θ1)であるが(S132でNo)、dθ1<(Dr1θ1+Dr2θ1+Dr3θ1+Dr4θ1)となる(S132でYes)。
【0092】
決定部221は、式(8)を満たさないと(S132でNo)、nに「1」を加算して(S133)、式(8)を満たすか否かを判定する。
【0093】
決定部221は、式(8)を満たすとき、nは「1」か否かを判定する(S134)。例えば、決定部221は、AP200と反射点P1とを結ぶ経路上に端末100が位置し、端末100から直接波を受信したか否かを判定する。
【0094】
決定部221は、nが「1」のとき(S134でYes)、受信波は直接波と判定し、距離D1は以下の式(9)を満たす値とする(S141)。
【0095】
【数3】
【0096】
一方、決定部221は、nは「1」でないとき(S134でNo)、受信波は反射波と判定し、距離D1は以下の式(10)を満たす値とする。
【0097】
【数4】
【0098】
図14の例では、
D1=dθ1−(Dr1θ1+Dr2θ1+Dr3θ1)
となり、基点となる反射点は反射点P4となる。
【0099】
決定部221は、S141及びS142の処理が終了すると、図13に示すS16の処理へ移行し、位置測位部222は距離D1を式(4)〜式(6)のいずれかの式の右辺に代入して処理を行う。図14の例では経路は1つであるが、例えば、複数の経路があってもよく、他の経路の受信波を受信した場合、この受信波を用いて上述した処理を行い、式(4)〜式(6)に代入して処理を行う。
【0100】
このように端末100からの反射波が複数回反射を繰り返した場合でも、AP200は、端末100がAP200に至る経路において最も近い反射点までの距離D1を求めることで、上述した例と同様に処理を行うことができる。よって、本AP200は、複数回反射を繰り返す場合でも、高精度に端末100の位置を測定できる。
【0101】
また、上述した例において、AP200は、3つ又は2つの経路の受信波を受信することで、式(4)〜式(6)に各々値を代入して、端末100の位置を測位した。例えば、AP200は3つ以上の受信波を受信して、端末100の位置を測位してもよい。或いは、AP200は、アレイアンテナ210‐1〜210‐nの走査角毎に受信レベルを検出することもできる。図16は、受信レベルと到来角θとの関係例を示す図である。受信レベル検知部216は走査角毎に受信レベルを検知する。このとき、受信レベル検知部216は、受信レベルの高い順に例えば3つ(又は2つ)を選択して、伝搬距離算出部218に算出する。図4等の例では、このうち2つは、予め保持した反射点P1,P2のある角度θ1,θ2からの受信レベルとなる。当該角度θ1,θ2には予め反射点P1,P2が配置され、AP200は反射点P1,P2からの反射波を受信するからである。例えば、受信レベル検知部216は、反射点が3つ以上あるときでも、上位3つの受信レベルを選択して距離算出部218に出力してもよい。決定部221は、3つの受信波が直接波か反射波かを判定し、位置測位部222は、上位3つの受信レベルに基づいて、上述した例と同様に式(4)〜式(6)を演算することで、端末100の位置を測位する。
【0102】
更に、上述した例において、AP200は受信レベル検知部216と伝播時間測定部217の双方を備える例について説明した。例えば、図17に示すように、AP200は伝播時間測定部217を備えていなくてもよい。また、図18に示すようにAP200は受信レベル検知部216を備えていなくてもよい。
【0103】
更に、上述した例では、予め決められた反射点が配置され、AP200はその反射点の角度で受信レベル等を検知するものとして説明した。例えば、アレイアンテナ210‐1〜210-nの所定角度範囲内において、走査角度毎に反射点の位置、反射点距離等が算出されるようにすることもできる。例えば、図14の範囲Lにおいて、走査角度毎にm個の反射点P1〜Pmが設けられていてもよい。AP200は、上述したように、上位3つの受信レベルに基づいて伝播距離dθを算出し、反射波か直接波かを判定し、その結果に基づいて式(4)〜式(6)の右辺にdθおよびAP200の位置座標、各反射点の位置座標を代入して、端末100の位置を測位できる。例えば、図14の例において、病院内における範囲Lの長さを有する壁等に対して反射点が予め算出されるようにしておき、AP200は、範囲L内の各反射点への各角度において受信レベル等を測定することで上述した例と同様に実施できる。
【0104】
更に、上述した例は無線通信装置としてAP200を例にして説明した。例えば、無線通信装置として、無線基地局装置、又は中継局装置等でもよい。無線基地局装置等でも上述した例を実施することができる。
【0105】
以上まとめると付記のようになる。
【0106】
(付記1)
端末装置と無線通信を行う無線通信装置において、
少なくとも第1及び第2の経路により前記端末装置から送信された無線信号を夫々第1及び第2の受信波として受信したとき、前記第1及び第2の経路に対する経路長を示す第1及び第2の伝搬距離を夫々算出する算出部と、
前記第1及び第2の伝搬距離に基づいて、前記第1及び第2の受信波が第1及び第2の反射点で反射した反射波か、前記第1及び第2の反射点を介さない直接波かを夫々判定し、前記第1又は第2の受信波を前記反射波と判定したとき、前記第1又は第2の経路において前記端末装置から最も近い前記第1又は第2の反射点までの距離を夫々示す第1又は第2の端末反射点間距離を出力し、前記第1又は第2の受信波を前記直接波と判定したとき、前記第1又は第2の伝搬距離を出力する決定部と、
前記決定部から出力された、前記第1又は第2の端末反射点間距離、又は、前記第1又は第2の伝搬距離に基づいて前記端末装置の位置を測位する位置測位部と
を備えることを特徴とする無線通信装置。
【0107】
(付記2)
前記決定部は、前記第1又は第2の伝搬距離が、前記第1又は第2の経路において前記無線通信装置から最も近い前記第1又は第2の反射点までの距離を示す第1又は第2の反射点距離と夫々同じか長いとき、前記第1又は第2の受信波は夫々前記反射波と判定し、前記第1又は第2の伝搬距離が前記第1又は第2の反射点距離よりも夫々短いとき、前記第1又は第2受信波は夫々前記直接波と判定することを特徴とする付記1記載の無線通信装置。
【0108】
(付記3)
前記位置測位部は、前記決定部が前記第1及び第2の受信波を共に反射波と判定したとき、前記第1及び第2の反射点間距離に基づいて前記端末装置の位置を測位することを特徴とする付記1記載の無線通信装置。
【0109】
(付記4)
前記算出部は、前記第1及び第2の受信波の受信電力レベル、又は、前記第1及び第2の受信波の伝搬時間に基づいて、前記第1及び第2の伝搬距離を夫々算出することを特徴とする付記1記載の無線通信装置。
【0110】
(付記5)
更に、一定の走査角で走査することで前記無線信号を受信するアレイアンテナを備え、
前記算出部は、前記走査角毎に受信電力レベルを算出し、このうち上位2つの前記受信電力レベルに基づいて前記第1及び第2の伝搬距離を算出することを特徴とする付記1記載の無線通信装置。
【0111】
(付記6)
前記位置測位部は、前記第1又は第2の端末反射点間距離、又は、前記第1又は第2の伝搬距離に基づいて前記端末装置の位置座標を演算し、更に、所定範囲内にある前記端末装置の位置座標を前記端末装置の位置として測位することを特徴とする付記1記載の無線通信装置。
【0112】
(付記7)
前記算出部は、更に、第3の経路による第3の受信波を受信したとき、前記第3の受信波に対する第3の伝搬距離を算出し、
前記決定部は、前記第3の伝搬距離に基づいて、前記第3の受信波が前記反射波か前記直接波かを判定し、前記第3の受信波を前記反射波と判定したとき、前記第3の経路において前記端末装置から最も近い前記第1又は第2の反射点までの距離を示す第3の端末反射点間距離を出力し、前記第3の受信波を前記直接波と判定したとき、前記第3の伝搬距離を出力し、
前記位置測位部は、前記第1又は第2の端末反射点間距離、又は、前記第2又は第1の伝搬距離、或いは、前記第3の端末反射点間距離又は前記第3の伝搬距離、に基づいて前記端末装置の位置を測位することを特徴とする付記1記載の無線通信装置。
【0113】
(付記8)
更に、一定の走査角で走査することで前記無線信号を受信するアレイアンテナを備え、
前記算出部は、前記走査角毎に受信電力レベルを算出し、このうち上位3つの前記受信電力レベルに基づいて前記第1乃至第3の伝搬距離を算出することを特徴とする付記7記載の無線通信装置。
【0114】
(付記9)
前記位置測位部は、前記第1又は第2の端末反射点間距離、又は、前記第2又は第1の伝搬距離、或いは、前記第3の端末反射点間距離又は前記第3の伝搬距離、に基づいて前記端末装置の位置座標を演算することを特徴とする付記7記載の無線通信装置。
【0115】
(付記10)
前記無線通信装置は、無線基地局装置又はアクセスポイントであることを特徴とする請求項1記載の無線通信装置。
【0116】
(付記11)
算出部と決定部、及び位置測位部とを備え、
端末装置と無線通信を行う無線通信装置における位置測位方法であって、
少なくとも第1及び第2の経路により前記端末装置から送信された無線信号を夫々第1及び第2の受信波として受信したとき、前記第1及び第2の経路に対する経路長を示す第1及び第2の伝搬距離を前記算出部により夫々算出し、
前記第1及び第2の伝搬距離に基づいて、前記第1及び第2の受信波が第1及び第2の反射点で反射した反射波か、前記第1及び第2の反射点を介さない直接波かを夫々判定し、前記第1又は第2の受信波を前記反射波と判定したとき、前記第1又は第2の経路において前記端末装置から最も近い前記第1又は第2の反射点までの距離を夫々示す第1又は第2の端末反射点間距離を前記決定部により出力し、前記第1又は第2の受信波を前記直接波と判定したとき、前記第1又は第2の伝搬距離を前記決定部により出力し、
前記第1又は第2の端末反射点間距離、又は、前記第1又は第2の伝搬距離に基づいて前記端末装置の位置を前記位置測位部により測位する
ことを特徴とする位置測位方法。
【0117】
(付記12)
端末装置と無線通信装置との間で無線通信を行う無線通信システムにおいて、
前記端末装置は、無線信号を前記無線通信装置に送信する送信部を備え、
前記無線通信装置は、
少なくとも第1及び第2の経路により前記端末装置から送信された無線信号を夫々第1及び第2の受信波として受信したとき、前記第1及び第2の経路に対する経路長を示す第1及び第2の伝搬距離を夫々算出する算出部と、
前記第1及び第2の伝搬距離に基づいて、前記第1及び第2の受信波が夫々第1及び第2の反射点で反射した反射波か、前記第1及び第2の反射点を介さない直接波かを判定し、 前記第1又は第2の受信波を前記反射波と判定したとき、前記第1又は第2の経路において前記端末装置から最も近い前記第1又は第2の反射点までの距離を夫々示す第1又は第2の端末反射点間距離を出力し、前記第1又は第2の受信波を前記直接波と判定したとき、前記第1又は第2の伝搬距離を出力する決定部と、
前記決定部から出力された、前記第1又は第2の端末反射点間距離、又は、前記第1又は第2の伝搬距離に基づいて前記端末装置の位置を測位する位置測位部と
を備えることを特徴とする無線通信システム。
【符号の説明】
【0118】
10:無線通信システム 100:端末装置
200:AP 210‐1〜210‐n:アレイアンテナ
211;ビーム走査部 212:走査角制御部
213:受信部 214:デジタル変換部
215:復調部 216:受信レベル検知部
217:伝播時間測定部 218:伝搬距離算出部
219:AP及び反射点位置情報記憶部(記憶部)
220:反射点距離算出部 221:判定部及び距離決定部(決定部)
222:位置測位部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末装置と無線通信を行う無線通信装置において、
少なくとも第1及び第2の経路により前記端末装置から送信された無線信号を夫々第1及び第2の受信波として受信したとき、前記第1及び第2の経路に対する経路長を示す第1及び第2の伝搬距離を夫々算出する算出部と、
前記第1及び第2の伝搬距離に基づいて、前記第1及び第2の受信波が第1及び第2の反射点で反射した反射波か、前記第1及び第2の反射点を介さない直接波かを夫々判定し、前記第1又は第2の受信波を前記反射波と判定したとき、前記第1又は第2の経路において前記端末装置から最も近い前記第1又は第2の反射点までの距離を夫々示す第1又は第2の端末反射点間距離を出力し、前記第1又は第2の受信波を前記直接波と判定したとき、前記第1又は第2の伝搬距離を出力する決定部と、
前記決定部から出力された、前記第1又は第2の端末反射点間距離、又は、前記第1又は第2の伝搬距離に基づいて前記端末装置の位置を測位する位置測位部と
を備えることを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
前記決定部は、前記第1又は第2の伝搬距離が、前記第1又は第2の経路において前記無線通信装置から最も近い前記第1又は第2の反射点までの距離を示す第1又は第2の反射点距離と夫々同じか長いとき、前記第1又は第2の受信波は夫々前記反射波と判定し、前記第1又は第2の伝搬距離が前記第1又は第2の反射点距離よりも夫々短いとき、前記第1又は第2受信波は夫々前記直接波と判定することを特徴とする請求項1記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記位置測位部は、前記決定部が前記第1及び第2の受信波を共に反射波と判定したとき、前記第1及び第2の反射点間距離に基づいて前記端末装置の位置を測位することを特徴とする請求項1記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記算出部は、前記第1及び第2の受信波の受信電力レベル、又は、前記第1及び第2の受信波の伝搬時間に基づいて、前記第1及び第2の伝搬距離を夫々算出することを特徴とする請求項1記載の無線通信装置。
【請求項5】
更に、一定の走査角で走査することで前記無線信号を受信するアレイアンテナを備え、
前記算出部は、前記走査角毎に受信電力レベルを算出し、このうち上位2つの前記受信電力レベルに基づいて前記第1及び第2の伝搬距離を算出することを特徴とする請求項1記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記算出部は、更に、第3の経路による第3の受信波を受信したとき、前記第3の受信波に対する第3の伝搬距離を算出し、
前記決定部は、前記第3の伝搬距離に基づいて、前記第3の受信波が前記反射波か前記直接波かを判定し、前記第3の受信波を前記反射波と判定したとき、前記第3の経路において前記端末装置から最も近い前記第1又は第2の反射点までの距離を示す第3の端末反射点間距離を出力し、前記第3の受信波を前記直接波と判定したとき、前記第3の伝搬距離を出力し、
前記位置測位部は、前記第1又は第2の端末反射点間距離、又は、前記第2又は第1の伝搬距離、或いは、前記第3の端末反射点間距離又は前記第3の伝搬距離、に基づいて前記端末装置の位置を測位することを特徴とする請求項1記載の無線通信装置。
【請求項7】
更に、一定の走査角で走査することで前記無線信号を受信するアレイアンテナを備え、
前記算出部は、前記走査角毎に受信電力レベルを算出し、このうち上位3つの前記受信電力レベルに基づいて前記第1乃至第3の伝搬距離を算出することを特徴とする請求項6記載の無線通信装置。
【請求項8】
前記無線通信装置は、無線基地局装置又はアクセスポイントであることを特徴とする請求項1記載の無線通信装置。
【請求項9】
算出部と決定部、及び位置測位部とを備え、
端末装置と無線通信を行う無線通信装置における位置測位方法であって、
少なくとも第1及び第2の経路により前記端末装置から送信された無線信号を夫々第1及び第2の受信波として受信したとき、前記第1及び第2の経路に対する経路長を示す第1及び第2の伝搬距離を前記算出部により夫々算出し、
前記第1及び第2の伝搬距離に基づいて、前記第1及び第2の受信波が第1及び第2の反射点で反射した反射波か、前記第1及び第2の反射点を介さない直接波かを夫々判定し、前記第1又は第2の受信波を前記反射波と判定したとき、前記第1又は第2の経路において前記端末装置から最も近い前記第1又は第2の反射点までの距離を夫々示す第1又は第2の端末反射点間距離を前記決定部により出力し、前記第1又は第2の受信波を前記直接波と判定したとき、前記第1又は第2の伝搬距離を前記決定部により出力し、
前記第1又は第2の端末反射点間距離、又は、前記第1又は第2の伝搬距離に基づいて前記端末装置の位置を前記位置測位部により測位する
ことを特徴とする位置測位方法。
【請求項10】
端末装置と無線通信装置との間で無線通信を行う無線通信システムにおいて、
前記端末装置は、無線信号を前記無線通信装置に送信する送信部を備え、
前記無線通信装置は、少なくとも第1及び第2の経路により前記端末装置から送信された無線信号を夫々第1及び第2の受信波として受信したとき、前記第1及び第2の経路に対する経路長を示す第1及び第2の伝搬距離を夫々算出する算出部と、前記第1及び第2の伝搬距離に基づいて、前記第1及び第2の受信波が第1及び第2の反射点で反射した反射波か、前記第1及び第2の反射点を介さない直接波かを夫々判定し、前記第1又は第2の受信波を前記反射波と判定したとき、前記第1又は第2の経路において前記端末装置から最も近い前記第1又は第2の反射点までの距離を夫々示す第1又は第2の端末反射点間距離を出力し、前記第1又は第2の受信波を前記直接波と判定したとき、前記第1又は第2の伝搬距離を出力する決定部と、前記決定部から出力された、前記第1又は第2の端末反射点間距離、又は、前記第1又は第2の伝搬距離に基づいて前記端末装置の位置を測位する位置測位部とを備えることを特徴とする無線通信システム。
【請求項1】
端末装置と無線通信を行う無線通信装置において、
少なくとも第1及び第2の経路により前記端末装置から送信された無線信号を夫々第1及び第2の受信波として受信したとき、前記第1及び第2の経路に対する経路長を示す第1及び第2の伝搬距離を夫々算出する算出部と、
前記第1及び第2の伝搬距離に基づいて、前記第1及び第2の受信波が第1及び第2の反射点で反射した反射波か、前記第1及び第2の反射点を介さない直接波かを夫々判定し、前記第1又は第2の受信波を前記反射波と判定したとき、前記第1又は第2の経路において前記端末装置から最も近い前記第1又は第2の反射点までの距離を夫々示す第1又は第2の端末反射点間距離を出力し、前記第1又は第2の受信波を前記直接波と判定したとき、前記第1又は第2の伝搬距離を出力する決定部と、
前記決定部から出力された、前記第1又は第2の端末反射点間距離、又は、前記第1又は第2の伝搬距離に基づいて前記端末装置の位置を測位する位置測位部と
を備えることを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
前記決定部は、前記第1又は第2の伝搬距離が、前記第1又は第2の経路において前記無線通信装置から最も近い前記第1又は第2の反射点までの距離を示す第1又は第2の反射点距離と夫々同じか長いとき、前記第1又は第2の受信波は夫々前記反射波と判定し、前記第1又は第2の伝搬距離が前記第1又は第2の反射点距離よりも夫々短いとき、前記第1又は第2受信波は夫々前記直接波と判定することを特徴とする請求項1記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記位置測位部は、前記決定部が前記第1及び第2の受信波を共に反射波と判定したとき、前記第1及び第2の反射点間距離に基づいて前記端末装置の位置を測位することを特徴とする請求項1記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記算出部は、前記第1及び第2の受信波の受信電力レベル、又は、前記第1及び第2の受信波の伝搬時間に基づいて、前記第1及び第2の伝搬距離を夫々算出することを特徴とする請求項1記載の無線通信装置。
【請求項5】
更に、一定の走査角で走査することで前記無線信号を受信するアレイアンテナを備え、
前記算出部は、前記走査角毎に受信電力レベルを算出し、このうち上位2つの前記受信電力レベルに基づいて前記第1及び第2の伝搬距離を算出することを特徴とする請求項1記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記算出部は、更に、第3の経路による第3の受信波を受信したとき、前記第3の受信波に対する第3の伝搬距離を算出し、
前記決定部は、前記第3の伝搬距離に基づいて、前記第3の受信波が前記反射波か前記直接波かを判定し、前記第3の受信波を前記反射波と判定したとき、前記第3の経路において前記端末装置から最も近い前記第1又は第2の反射点までの距離を示す第3の端末反射点間距離を出力し、前記第3の受信波を前記直接波と判定したとき、前記第3の伝搬距離を出力し、
前記位置測位部は、前記第1又は第2の端末反射点間距離、又は、前記第2又は第1の伝搬距離、或いは、前記第3の端末反射点間距離又は前記第3の伝搬距離、に基づいて前記端末装置の位置を測位することを特徴とする請求項1記載の無線通信装置。
【請求項7】
更に、一定の走査角で走査することで前記無線信号を受信するアレイアンテナを備え、
前記算出部は、前記走査角毎に受信電力レベルを算出し、このうち上位3つの前記受信電力レベルに基づいて前記第1乃至第3の伝搬距離を算出することを特徴とする請求項6記載の無線通信装置。
【請求項8】
前記無線通信装置は、無線基地局装置又はアクセスポイントであることを特徴とする請求項1記載の無線通信装置。
【請求項9】
算出部と決定部、及び位置測位部とを備え、
端末装置と無線通信を行う無線通信装置における位置測位方法であって、
少なくとも第1及び第2の経路により前記端末装置から送信された無線信号を夫々第1及び第2の受信波として受信したとき、前記第1及び第2の経路に対する経路長を示す第1及び第2の伝搬距離を前記算出部により夫々算出し、
前記第1及び第2の伝搬距離に基づいて、前記第1及び第2の受信波が第1及び第2の反射点で反射した反射波か、前記第1及び第2の反射点を介さない直接波かを夫々判定し、前記第1又は第2の受信波を前記反射波と判定したとき、前記第1又は第2の経路において前記端末装置から最も近い前記第1又は第2の反射点までの距離を夫々示す第1又は第2の端末反射点間距離を前記決定部により出力し、前記第1又は第2の受信波を前記直接波と判定したとき、前記第1又は第2の伝搬距離を前記決定部により出力し、
前記第1又は第2の端末反射点間距離、又は、前記第1又は第2の伝搬距離に基づいて前記端末装置の位置を前記位置測位部により測位する
ことを特徴とする位置測位方法。
【請求項10】
端末装置と無線通信装置との間で無線通信を行う無線通信システムにおいて、
前記端末装置は、無線信号を前記無線通信装置に送信する送信部を備え、
前記無線通信装置は、少なくとも第1及び第2の経路により前記端末装置から送信された無線信号を夫々第1及び第2の受信波として受信したとき、前記第1及び第2の経路に対する経路長を示す第1及び第2の伝搬距離を夫々算出する算出部と、前記第1及び第2の伝搬距離に基づいて、前記第1及び第2の受信波が第1及び第2の反射点で反射した反射波か、前記第1及び第2の反射点を介さない直接波かを夫々判定し、前記第1又は第2の受信波を前記反射波と判定したとき、前記第1又は第2の経路において前記端末装置から最も近い前記第1又は第2の反射点までの距離を夫々示す第1又は第2の端末反射点間距離を出力し、前記第1又は第2の受信波を前記直接波と判定したとき、前記第1又は第2の伝搬距離を出力する決定部と、前記決定部から出力された、前記第1又は第2の端末反射点間距離、又は、前記第1又は第2の伝搬距離に基づいて前記端末装置の位置を測位する位置測位部とを備えることを特徴とする無線通信システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2011−153997(P2011−153997A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−17235(P2010−17235)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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