説明

無線通信装置および無線通信ネットワーク並びに通信管理プログラム

【課題】無線通信ネットワークのマルチホップ転送システムにおいて、通信性能を向上し、無線データ伝送の信頼性・安定性を向上する。特に、無線通信装置の性能誤差や要求性能に対応した最適な無線転送経路選択を可能とする。
【解決手段】無線通信装置は計測カウンタとバッファとタイマを備え、計測カウンタは再送計測部と転送計測部を備え、バッファはカウンタテーブル記憶部を備える。計測カウンタでは、無線通信装置がデータ伝送する際に行う再送動作における再送時間および/もしくは再送回数を再送計測部でタイマを用いて計測し、転送動作における転送時間および/もしくは転送回数を転送計測部でタイマを用いて計測する。バッファにおけるカウンタテーブル記憶部では、再送や転送に係る無線通信装置毎の再送計測値および転送計測値をカウンタテーブルに記憶し、このカウンタテーブルを用いて無線通信転送経路の選択を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の無線通信装置から構成される無線通信ネットワークにおいて、最適な無線経路を確保する制御が可能な無線通信装置および無線通信ネットワーク並びに通信管理プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータ技術の急速な進歩により、コンピュータ間をつなぐネットワーク通信に要求される性能も非常に高くなってきている。従来のネットワーク技術は、有線ケーブルを用いたコンピュータ間の接続が主体であるため、要求性能の向上とともに使用されるケーブル数が膨大になりつつある。特に、大規模工場やプラント設備などといった産業インフラ分野においては、一つの施設で用いられるネットワーク通信用のケーブルの総敷設長がkm程度におよぶこともあり、ケーブルの保守・管理が困難かつ高価になりつつある。また、小規模なオフィスやビル・家庭などのコンシューマ分野においては、コンピュータの配置を頻繁に変更し、あるいは追加する要望が高いため、やはりケーブルの敷設作業が困難になりつつある。
【0003】
このようなケーブル敷設の問題を解決する方法として、通信ネットワークを有線ケーブルの代わりに無線技術で構成する手段が注目されている。従来の有線ケーブルによるネットワーク通信では、装置間にケーブルが存在するために外乱による通信環境の変化、特に時間的な変化は少なく、比較的安定した通信性能を確保してきた。一方で無線通信ネットワークでは、ケーブル敷設作業のような煩わしさは無いが、ある一定の空間に無線電波が拡散するために様々な外乱要因の影響を受けやすく、通信環境および通信性能が時間とともに変化する。従って、有線ネットワークに比べて通信障害の発生確率が高い。また、複数の無線通信装置が相互に通信を行う場合、空間を共有するために電波が互いに影響しあい、電波干渉によってビットエラーレート(データ1ビットあたりの伝送エラー確率)などの通信性能が劣化することがある。電波干渉を回避するためには、時分割多重方式・符号分割多重方式・キャリアセンス多重方式といった無線ネットワークシステム上の対策を行うことが可能であるが、その場合にも無線ネットワークが複数存在すると、1ネットワークあたりのデータ伝送にかかるレーテンシ(伝送遅延)やスループット(伝送速度またはデータレート)が下がる、といった弊害がある。
【0004】
つまり、無線通信ネットワークでは、ビットエラーレート、レーテンシ、スループットなどに表わされる通信性能が電波環境の時間・空間的な変化とともに劣化することがあり、データ伝送が不安定(つまりデータ伝送の信頼性が低下)になる。コンシューマ分野でもある程度の安定性・信頼性が要求されるが、産業インフラ分野においては特に、データ伝送の高い安定性・信頼性が要求されるため、信頼性確保が無線通信ネットワーク導入における障壁となっている。
【0005】
以上述べた無線通信ネットワークの不安定性を解決する手段として、無線通信装置(例えばデータ送信元となる端末とデータ送信先となる基地局の組合せ)の間に複数の無線中継器を設置してデータを装置間で無線転送するという、マルチホップ転送技術を採用したアドホックネットワークが提案されている。端末と基地局の間を無線転送する場合に選択される無線中継器や無線転送経路は複数通り選択することが可能であり、ある無線中継器やある無線転送経路における無線通信環境が不安定で無線通信性能が低い場合でも、異なる無線中継器・無線転送経路を選択することで、端末と基地局間のデータ伝送を安定化させることが可能となる。
【0006】
このようなマルチホップ転送技術における一般的な課題は、端末と基地局間のデータ伝送を信頼性・安定性高くかつ効率的に行えるような無線中継器および無線転送経路選択の最適化にある。
【0007】
以下に、特許文献で開示された、マルチホップ転送技術の経路選択手段を説明する。
【0008】
特許文献1では、端末や中継器での再送(リトライ)回数を転送経路に沿って累積し、累積回数の少ない転送経路を選択する手段が開示されている。1対1の装置間における無線通信では、1回の通信でデータを確実に送ることができずにエラーとなる場合もあり、データが確実に送信先に到達するまで何回か同じデータを送信元が送りなおすという、再送通信が用いられる。この再送回数が少ないことが、信頼性・安定性の高いことを示している。転送経路選択の判断基準として、再送回数の他に回線負荷を数値化する手段も開示している。実際に伝送されたデータ速度と、もともと設定していたデータ速度との比を求めることで、再送回数と類似した、無線データ伝送の信頼性・安定性を示す数値を得ることができる。
【0009】
特許文献2では、マルチホップにおいて無線転送回数(中継回数またはホップ数)の少ない経路を優先的に選択する手段が開示されている。この場合はレーテンシ性能を高くすることができる。また、何らかの通信品質を評価して転送経路の回数計測に重みづけを行うこともある。
【0010】
特許文献3では、中継回数が最も少なくなる転送経路選択を行う手段が開示されている。ある特定の信号を用いた試行により通信の混雑状況を判定することもある。
【0011】
特許文献4および5においては、無線の中継回数が小さい経路を良好な経路と判断する手段が開示されている。特許文献6では、無線通信の失敗に応じて中継経路に重みづけをして中継回数を累積し、転送経路判断の基準とする手段が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2001−136178号公報
【特許文献2】特開2010−035068号公報
【特許文献3】特開2008−061227号公報
【特許文献4】特開2000−261360号公報
【特許文献5】特開2005−535235号公報
【特許文献6】特開2001−156849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
複数の無線通信装置からなる無線通信ネットワークでは、ある端末からある基地局へデータを伝えるために無線中継器を経由して無線転送(マルチホップ転送)することが可能であるが、この無線転送経路を複数通り選択可能とすることで、データ伝送の信頼性・安定性を高めることができる。従来は、上記したように、無線通信ネットワークにおいて端末や無線中継器が再送や転送を行った回数をカウントし、無線転送経路のカウント値を累計することで最適な経路選択の判断基準としている。
【0014】
しかしながら、実際には、転送経路に沿った無線信号の空間伝搬時間に比べると、各々の端末や中継器等の無線通信装置(以下、単に通信装置)が再送・中継転送を行うために要する時間の方が大幅に長いことが多い。無線信号の空間伝搬時間はナノ秒(ns)オーダであるのに比べ、通信装置における信号処理時間はマイクロ秒(μs)程度以上必要となる。再送や中継転送にかかる通信装置の処理動作時間は、通信装置が異なることによる誤差がある。例えば、通信装置の機器毎の特性差や性能のバラツキがある。また同じ通信装置においても、通信設定で信号処理時間が異なってくる。さらには、同じ通信装置においても再送にかかる処理時間と中継転送にかかる処理時間は大幅に異なる。
【0015】
従って、マルチホップ無線通信ネットワークにおいて転送経路選択を行う際には、再送や転送回数をカウントしたり任意に重みづけをしたりするだけでは、実際の無線通信ネットワークに採用されている通信装置に即した最適化を行うことができない。通信装置固有の信号処理にかかる動作時間を正確に考慮する必要がある。さらには、実際の無線通信ネットワークシステムにおいては、端末から基地局に至る間のデータ伝送に係るレーテンシやスループットといった通信性能に対して一定の要求が決められる場合があるが、再送・転送回数の累積だけでは、通信性能や信頼性等の要求性能を満足するか判断することが困難である。この点からも、信号処理時間の考慮が有効となる。
【0016】
従って、本発明の目的は、上記した従来のマルチホップ転送技術の問題に鑑み、実際の無線通信ネットワークにおける通信装置の機器毎の性能誤差や要求性能に対応した最適な経路選択を行い、無線データ伝送の信頼性・安定性を向上させることのできる無線通信装置および無線通信ネットワークを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の代表的なものの一例を示すと、次の通りである。本発明の無線通信装置は、通信データを無線により他の無線通信装置との間で送受信もしくは転送する無線通信装置において、上記無線通信装置は、計測カウンタ、バッファおよびタイマ備え、かつ、送信先となる上記他の無線通信装置への上記通信データの伝送に失敗したとき所定の時間間隔後に再度上記通信データ送信を行う再送機能を有しており、上記計測カウンタは再送計測部を有し、上記バッファはカウンタテーブル記憶部を備え、上記再送計測部において、上記無線通信装置における上記通信データの再送に要した時間を、上記タイマにより計測して再送計測値とし、該再送計測値をカウンタテーブルとして上記カウンタテーブル記憶部に記憶することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、無線通信ネットワークにおけるデータ伝送の信頼性・安定性を向上させるために、マルチホップ無線転送を用いるにあたり、無線通信の環境、無線通信装置の個体性能差、無線通信装置の使用設定に依存した性能差などに即して、ユーザ要求に最適化した無線通信転送経路を選択することが可能となる。従って、無線通信によるデータ伝送のレーテンシ、スループットなどの速度性能を劣化させることなく、比較的簡易にビットエラーレートなどの信頼性・安定性を向上できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1A】本発明の実施例1における無線通信装置の構成例を示した図。
【図1B】実施例1におけるセンタの構成例を示した図。
【図2】実施例1における無線通信ネットワークの構成例を示した図。
【図3A】実施例1で用いられるモニタ部の構成例を示した図。
【図3B】実施例1で用いられる駆動制御部の構成例を示した図。
【図4】実施例1で用いられるカウンタテーブルの構成例を示した図。
【図5】実施例1で用いられる通信データフレームフォーマットの構成例を示した図。
【図6】実施例1における、再送動作時間の計測方法を示した図。
【図7】実施例1における、転送動作時間の計測方法を示した図。
【図8】実施例1における、無線通信ネットワークの動作シーケンス図。
【図9】実施例1における、初期アルゴリズムのフロー図。
【図10】実施例1で用いられるルートテーブルの構成例を示した図。
【図11】実施例1において、ルート設定の前提となる、端末と基地局間のデータを伝送経路の一例を示した図。
【図12A】図11の例における、各通信装置間の転送経路の一例を示した図。
【図12B】図12Aの各転送経路の、再送、転送の測定結果の一例を示した図。
【図12C】図12Bの測定結果に基く、ルート設定の説明図。
【図12D】図12Bの測定結果に基く、ルート設定の説明図。
【図13】実施例1における、ルート設定の結果を用いた運用アルゴリズムのフロー図。
【図14】本発明の実施例2における無線通信装置の構成例を示した図。
【図15】実施例2における累積カウンタテーブルの構成例を示した図。
【図16】本発明の実施例3における無線通信装置の構成例を示した図。
【図17】実施例3で用いられる誤差計測方法を示した図。
【図18】実施例3で用いられる誤差テーブルの構成例を示した図。
【図19】実施例3で用いられる通信データフレームフォーマットの構成例を示した図。
【図20】本発明の実施例4におけるルートテーブルの構成例を示した図。
【図21】実施例4で用いられる通信データフレームフォーマットの構成例を示した図。
【図22】本発明の実施例5における、端末追加・削除のアルゴリズムのフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の無線通信装置および無線通信ネットワークの、代表的な実施の形態を示すと以下のようになる。
【0021】
本発明の無線通信装置は、計測カウンタとバッファとタイマを備え、計測カウンタは再送計測部と転送計測部を備え、バッファはカウンタテーブル記憶部を備える。計測カウンタでは、無線通信装置がデータ伝送する際に行う再送動作における再送時間および/もしくは再送回数を再送計測部でタイマを用いて計測し、転送動作における転送時間および/もしくは転送回数を転送計測部でタイマを用いて計測する。バッファにおけるカウンタテーブル記憶部では、再送や転送に係る無線通信装置毎の再送計測値および転送計測値をカウンタテーブルに記憶し、このカウンタテーブルを用いて無線通信転送経路の選択を行う。
【0022】
また、本発明の他の実施形態によれば、無線通信装置は、計測カウンタとバッファとタイマと制御部を備え、計測カウンタは再送計測部と転送計測部を備え、バッファはカウンタテーブル記憶部を備える。計測カウンタでは、無線通信装置がデータ伝送する際に行う再送動作における再送時間および/もしくは再送回数を再送計測部でタイマを用いて計測し、転送動作における転送時間および/もしくは転送回数を転送計測部でタイマを用いて計測する。制御部は、事前に受信した通信データに含まれる累積再送計測値に再送計測値を追加して新たに累積再送計測値とし、累積転送計測値に転送測定値に転送計測値を追加して新たに累積転送計測値とする。バッファにおけるカウンタテーブル記憶部は、累積再送計測値および累積転送計測値をカウンタテーブルに記憶し、このカウンタテーブルを用いて無線通信転送経路の選択を行う。
【0023】
さらに、本発明の他の実施形態によれば、無線通信装置は、計測カウンタに誤差計測部を備え、バッファに誤差テーブル記憶部を備える。誤差計測部が事前に受信した通信データのデータ長と、転送する通信データのデータ長とをタイマを用いて比較し、2つのデータ長の差を誤差として計測する。誤差テーブル記憶部は誤差計測値を誤差テーブルに記憶し、この誤差テーブルを用いて再送計測値や転送計測値の誤差を修正することが可能となる。
【0024】
さらに、本発明の他の実施形態によれば、無線通信装置は、バッファにルートテーブル記憶部を備える。ルートテーブル記憶部は、カウンタテーブルの再送計測値や転送計測値、あるいは累積再送計測値や累積転送計測値を用いてルートテーブルを作成する。無線通信装置は、ルートテーブル上の再送計測値、転送計測値、累積再送計測値、累積転送計測値の合計が最小となるような無線通信転送経路を選択する。
【0025】
さらに、本発明の他の実施形態によれば、無線通信装置は、レーテンシやスループットで表わされる要求性能に対して、ルートテーブル上の再送計測値、転送計測値、累積再送計測値、累積転送計測値の合計が小さくなる複数の無線通信転送経路のうち、再送計測値もしくは累積再送計測値の合計が最小となるような無線通信転送経路を選択する。
【0026】
さらに、本発明の他の実施形態によれば、複数の無線通信装置において通信データに要求される重要度や優先度が異なる場合に、通信データに要求される重要度に応じて計測カウンタの再送計測値と転送計測値を定数倍してカウンタテーブル記憶部に記憶する。無線通信装置は、ルートテーブル上の再送計測値、転送計測値、累積再送計測値、累積転送計測値の合計が最小となるような無線通信転送経路を選択する。
【0027】
また、本発明の他の実施形態によれば、無線通信ネットワークは、前述の無線通信装置を有する複数の端末および中継器および基地局を備える。無線通信装置は外部インタフェースを備える。端末は無線通信装置とモニタ部もしくは駆動制御部で構成され外部インタフェースで接続される。中継器は無線通信装置で構成される。基地局は無線通信装置で構成され外部インタフェースで広域ネットワークと接続される。通信データの無線伝送は、端末と基地局の間を複数の中継器を経由して行われる。
【0028】
以下、本発明に係る無線通信装置および無線通信ネットワークを、図面に示したいくつかの実施形態を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0029】
本発明の実施例1を、図1〜図13を参照しながら説明する。
まず、図1Aに本発明の実施例1における無線通信装置の構成例を示す。図1Bに、実施例1におけるセンタの構成例を示す。さらに、図2に、実施例1における無線通信ネットワークの構成例を示す。
【0030】
本実施例の無線通信ネットワーク1000は、図2に示したように、端末200、中継器300、基地局400、広域ネットワーク500、センタ600、モニタ部700、及び、駆動制御部800で構成される。無線データ伝送は、複数の端末200と基地局400の間で行われ、中継器300を中継転送することでマルチホップ無線転送ネットワークを構成している。端末200、中継器300、基地局400はそれぞれ、無線通信装置100を備える。基地局400はインターネットなどの広域ネットワーク500につながり、センタ600にデータを伝送する。端末200、中継器300、基地局400はコンピュータにより構成される。また、センタ600もサーバなどのデータ処理装置(コンピュータ)により構成される。
【0031】
図1Aは、端末200、中継器300、基地局400がそれぞれ備える無線通信装置100の詳細な構成例を示している。
無線通信装置100は、計測カウンタ110、制御部120、バッファ(又は記憶装置)130、タイマ140、無線送信器150、無線受信器160、切替部170、アンテナ180、外部インタフェース190から構成される。計測カウンタ110は、再送計測部111と転送計測部112から構成される。
【0032】
バッファ130は、送受信データバッファ131、データシーケンス番号バッファ132、IDバッファ133、モニタ・制御信号バッファ134、カウンタテーブル記憶部135、及びルートテーブル記憶部137で構成される。なお、バッファ130に記録される情報の一部は必要に応じてハードディスク等の外部記憶装置に保持される。タイマ140には、端末200に設置された計測用のタイマ141と各通信機器に設置された通信用のタイマ142とがある。計測用のタイマ141は、端末200が所定の時間間隔毎に温度などの測定データをサンプリングして基地局400に送信するためのサンプリング間隔の制御等に使用される。通信用のタイマ142は、各無線通信装置100間での再送信、転送するための時間の測定に使用される。
【0033】
無線通信システムにおいて、無線通信装置100は通信データを送信し、送信先となる無線通信装置へのデータ伝送に失敗すると、一定の時間間隔後に再度データ送信を行う(再送)。また、無線通信装置100は通信データを受信し、同じデータを別の送信先へ中継伝送する(転送)。
【0034】
再送は、データ伝送の速度を劣化させるが、信頼性・安定性を高める。また、転送はデータ伝送の中継を行うことで無線電波が届かない長距離の送信先へのデータ伝送を可能とする。あるいは転送は、データ伝送を行う経路に電波的な障壁がある場合に、迂回経路を設けてデータ伝送を可能とする。そのため転送も、データ伝送速度を劣化させるが、データ伝送の信頼性・安定性を高める。
【0035】
計測カウンタ110に備えられた再送計測部111は、無線通信装置100がデータ伝送において再送を行うと、再送時間あるいは再送回数を通信用のタイマ142により計測して再送計測値とする。また転送計測部112は、無線通信装置100が通信データの転送(中継)を行うと、転送時間あるいは転送回数を通信用のタイマ142により計測して転送計測値とする。
【0036】
制御部120は、CPU、メモリ、及びこのメモリに保持された通信管理プログラム1201を備えており、通信管理プログラムを実行することにより、再送計測値や転送計測値をバッファ130に記憶させるとともに、バッファ130内にカウンタテーブルを生成し、カウンタテーブル記憶部135に記憶させる。カウンタテーブルに記憶させる値は、無線通信装置100の再送計測値や転送計測値だけでなく、無線通信装置100が事前に受信した通信データに含まれる他の無線通信装置の再送計測値および転送計測値を記憶させても良い。
【0037】
また、通信管理プログラムは、カウンタテーブルの情報を利用して、無線通信経路における再送計測値および転送計測値を持つルートテーブルを生成し、ルートテーブル記憶部137に記憶する。なお、無線通信においては、通信障害の発生などに伴い通信環境や通信性能等の無線電波環境が時間とともに変化するため、ルートテーブルの生成に当たっては、これら無線電波環境の時間的変化が反映されるようにして、最適の通信ルートを設定する。
【0038】
例えば、カウンタテーブル(若しくはルートテーブル)に記憶される再送計測値、すなわち再送にかかる時間や再送回数が多いということは、無線電波環境が良好ではないことを示す。また、このような場合に一定量のデータが送信元から最終送信先へ伝送されるためにかかる時間(レーテンシ)は大きくなり、一定時間に伝送することができるデータ量(スループットまたはデータレート)は小さくなり、全体の無線通信性能としても劣化していることになる。
【0039】
同様に、転送計測値、すなわち転送にかかる時間や転送回数が多いということは、レーテンシが大きく、スループットは小さくなり、全体の無線通信性能として良くないことになる。
【0040】
従って、無線通信装置100が他の複数の無線通信装置との間の通信にかかる再送計測値や転送計測値をカウンタテーブルとして持ち、このカウンタテーブルのデータを遂次更新することにより、時間的に変化する無線電波環境の状態を判断し常に最適な無線通信転送経路を選択することができるようになる。このように、無線通信装置100を用いることで、無線データ伝送の信頼性・安定性を向上することが可能となる。なお、カウンタテーブルを用いたルートテーブル生成法の詳細については、後で述べる。また、カウンタテーブルやルートテーブルは、遂次更新すると共に、過去のテーブルも保持することで、無線電波環境が回復した場合などに有効利用できる。
【0041】
次に、無線通信装置100を構成する、上記以外の要素を説明する。
制御部120は、計測カウンタ110、バッファ130、タイマ140、無線送信器150、無線受信器160、切替部170、外部インタフェース190と接続され、通信管理プログラム1201の機能により、これらの動作を制御する。
【0042】
バッファ130はデータを記憶させる部分で、例えば送受信データバッファ131は無線通信装置100が受信した通信データや送信する通信データが記憶されている。データシーケンス番号バッファ132やIDバッファ133は、通信装置が送信するデータと組み合わせることで、データに属性を持たすことができる。
【0043】
タイマ140は、制御部120の他に計測カウンタ110とも接続され、制御部120のクロック信号を供給しつつ、計測カウンタ110での時間や回数計測用を行う。
【0044】
無線送信器150は、通信データを送信し、無線受信器160は通信データを受信する機能を有する。切替部170は、制御部120で制御され、データ送信時には無線送信器150とアンテナ180を接続し、データ受信時には無線受信器160とアンテナ180を接続することで、無線通信装置100の送信状態・受信状態を切り替える。
【0045】
外部インタフェース190は、有線で他の装置類とデータ授受を行う場合に用いられる。
【0046】
図1Bに示したように、センタ600は、サーバなどのデータ処理装置122、バッファ130、及び外部インタフェース190から構成される。データ処理装置122は、CPU、メモリ、及びこのメモリに保持されたシステム制御プログラム1220及び通信管理プログラム1221を備えている。システム制御プログラム1220は、各種のモニタ部700及び駆動制御部800を備えたロボットやプラント設備などの機器システムの動作を制御する機能を有し、通信管理プログラム1221は、機器システムで用いられる無線通信を主体としたネットワーク通信を制御する機能を有する。
【0047】
図3Aにモニタ部700の構成を示す。モニタ部700はセンサ702とセンサインタフェース701から構成され、センサインタフェース701が無線通信装置100の外部インタフェース180とつながる。図3Bに駆動制御部800の構成を示す。駆動制御部800は、駆動装置802と駆動インタフェース801から構成され、駆動インタフェース801が無線通信装置100の外部インタフェース180とつながる。
【0048】
図2において、端末200とモニタ部700が接続している場合、モニタ部700がセンシングを行い、端末200はセンシング情報をデータとして基地局400もしくはセンタ600までデータ伝送する。端末200と駆動制御部800が接続している場合、センタ600もしくは基地局400からの制御情報や制御コマンドが端末200に送られ、駆動制御部800が機械装置類を制御する。
【0049】
端末200、中継器300、基地局400は、それぞれ再送計測部111、転送計測部112を持ち、カウンタテーブル、ルートテーブルを生成することが可能である。センタ600もしくは基地局400が無線通信ネットワーク1000における無線転送経路を選択する場合、ルートテーブルはセンタ600もしくは基地局400が持つと良い。端末200、中継器300、基地局400の間の各無線リンクにおいて無線転送経路を判断する場合は、各無端末200、中継器300、基地局400がルートテーブルを持つと良い。
【0050】
基地局400もしくはセンタ600が経路選択をする場合は、センタや基地局が管理する無線通信ネットワーク全体の運用を最適化、信頼性向上することができる。しかしながら、最適化に時間を要することと、ある端末では電波環境が著しく悪く通信性能が低くなっているという現象が起きやすい。
一方で、各無線通信装置で経路選択をする場合は、ネットワーク全体の最適化が不可能であるが、個々の端末で通信性能が著しく劣化するという状態にはなりにくい。
【0051】
端末200は中継器機能を兼ねることができる。中継器300および基地局400は端末機能を兼ねることができる。
【0052】
図4は、カウンタテーブル記憶部135に記憶される、カウンタテーブルT100の構成例を示す。カウンタテーブルT100は、送信元ID番号T101、送信先ID番号T102、再送計測値T103、転送計測値T104から構成される。
【0053】
無線通信ネットワークシステムでは、複数の無線通信装置100(端末200、中継器300、基地局400)が用いられる。端末200は、直接センサデータを収集したり、機器への制御信号を伝えるようなシステムの末端に配置される無線通信装置である。基地局400は、端末200のデータを収集してインターネットのような広域ネットワークに伝えたり、あるいは広域ネットワーク上のセンタ(サーバ)から制御信号を送って端末を制御するような、ゲートウェイ的な役割を持つ無線通信装置である。端末200と基地局400の間には複数の中継器300が配置される。
【0054】
このような無線通信ネットワークシステムにおいて、データ通信の大元である端末を「データ元」と表現することにする。またデータ通信で最終的にデータを送りたい基地局を「データ先」と表現する。データ元とデータ先の間には、複数の中継器があり、マルチホップ無線ネットワークを形成する。一方で、転送を含まない、直接1対1で無線通信を行う送信側を「送信元」、受信側を「送信先」と表現することにする。データ元からデータ先に通信データが伝わる間には、複数の送信元と送信先が存在することで、転送を行っている。
【0055】
カウンタテーブルT100は、送信元ID番号T101と送信先ID番号T102を一つの組みとし、T101に相当する無線通信装置がT102に相当する装置に対して無線データ伝送を行う場合の再送計測値T103と転送計測値T104を記載している。複数の組合せが一つのカウンタテーブルT100となっており、必ずしも送信元ID番号T101が実際にカウンタテーブルT100を記憶している自己の無線通信装置とは限らない。無線通信装置が受信する通信データ上に、他の組合せのカウンタテーブルT100があれば、そのテーブルに自己のIDをT101に持つ再送計測値や転送計測値をカウンタテーブルに追加すればよい。
【0056】
カウンタテーブルT100に自己の無線通信装置以外の情報も含まれている場合は、無線通信ネットワークシステムにおいて全ての無線通信装置がカウンタテーブルT100を持つ必要は無い。ルートテーブルについても同様である。
【0057】
再送計測値T103や転送計測値T104は、無線通信装置の通信パラメータ設定によって異なることがあるので、送信元ID番号T101に通信設定情報を含めると良い。
【0058】
カウンタテーブルT100やルートテーブルは必ずしも全ての無線通信端末が持つ必要は無く、基地局400に全て集約することもできる。これにより、バッファ130を効率的に活用できるようになる。さらには、無線通信ネットワーク上の無線通信装置ではなく、インターネットに代表される広域ネットワークで無線通信ネットワークと接続されているセンタ600のサーバ上に、カウンタテーブルやルートテーブルが配置されても良い。
【0059】
図5に、通信データフレームフォーマットF100の構成を示す。
通信データフレームフォーマットF100は、プリアンブルF010、SFD F102 、ヘッダF103、ペイロードF104、CRC F105、及び、ルートテーブル情報F110から構成される。
【0060】
プリアンブルF101は、信号に対して受信装置が同期をとるために用いられる。SFD F012(Start of Flame Delimiter)は、SFDの次からデータ列となることを意味している。ヘッダF103はデータ以外の設定情報などが含まれている。F105 CRC F105(Cyclic Redundancy Check)はエラーチェックに用いられる。ペイロードF104がデータを示しているが、ペイロードF104内はデータF106、データシーケンス番号F107、モニタ・制御信号F108とカウンタテーブル情報F109から構成される。カウンタテーブル情報やルートテーブル情報を無線通信のデータフレームに取り込むことで、自己の無線通信装置100以外の無線環境情報を得ることができる。
【0061】
図6に、再送動作時間の計測方法を示す。
再送動作時間は、無線通信装置100が送信フレームを一度送信し、再度同じフレームを再送フレームとして送信する時に計測できる。F402やF403のデータフレームで、例えばSFD F102とヘッダF103の間のタイミングを利用して、送信フレームF402と再送フレームF403の時間間隔をタイマで計測すればよい。F401が再送時間(再送計測値)に相当する。
【0062】
図7に、転送動作時間の計測方法を示す。
転送動作時間は、無線通信装置が受信フレームを受信し、転送フレームを送信するまでの時間を計測する。F501が転送時間(転送計測値)に相当する。
【0063】
図8は、本実施例による無線通信ネットワークの動作シーケンスS100を示す。ここでは、端末200、中継器300、基地局400という構成の無線通信ネットワークを仮定する。この場合、端末200はデータ元、中継器300は送信先または送信元、基地局400はデータ先となる。
【0064】
端末200が定期的に起動してセンサデータを取得、送信する場合、動作シーケンスS100に沿って動作する。端末200は、測定用のタイマ141により一定期間(S101)毎で端末200はデータ取得を行い(S102)、データを含む通信フレームを作成し、さらに、例えば自端末あるいは基地局400のバッファにあるルートテーブルのデータを参照しその伝送経路の情報に基づき、所定の中継器300を経て基地局400へ送信する(S103)。この時、再送計測値は再送時間・再送回数ともに0(転送計測値も0)である。この後、端末200は、中継器300からのAck(acknowledge)信号返信を待つために、Ack受信待機となる(S104)。ここで、通信用のタイマ142はあらかじめ受信待機時間の最大値を決めておき(S105)、所定の時間を過ぎてもAckが戻らない場合は通信に失敗したとみなして再送を行う(S106)。この場合、端末200の1回目の再送計測値はS103からS106の間の再送時間F401となり、再送時間x秒・再送回数1回となる。S107からS109では、通信用のタイマ142であらかじめ設定された受信待機時間(S108)にAck信号の返信が届かないため、再度、再送を行う(S109)。この時、端末200の2回目の再送計測値はS103からS109の間の再送時間F402となり、再送時間2・x秒、再送回数2(転送0)となる。この後、中継器がデータを受信し(S111)、Ackを返信し(S112)、端末200はAckを受信する(S110)。この時、端末の送信計測値は、最終の値が用いられる。
【0065】
中継器300では、データを受信すると(S111)、Ack返信行い(S112)、ただちに基地局400に対して転送を行う(S113)。中継器300の転送計測値F501はS111からS113の転送時間となる。この時、再送計測は0、転送計測はy秒または1(=転送回数1)となる。この例においても、中継器が転送一回目ではデータ通信に失敗しており、再送を行っている。通信用のタイマ142はあらかじめ受信待機時間の最大値を決めておき(S115)、この時間を過ぎてもAckが戻らない場合は通信に失敗したとみなして中継器300が再送を行う(S116)。S113からS116 が中継器300の再送時間F401に相当する。この再送計測は、z秒または1(=再送回数1)、転送計測もy秒または1となる。この後、基地局400がデータを受信し(S118)、Ackを返信し(S119)、中継器300はAckを受信する(S117)。
【0066】
再送計測および転送計測では、実際の動作時間をタイマで計測する場合と、再送動作や転送動作を行う回数を計測する場合がありうる。時間計測を行う方法は、無線通信の環境、無線通信装置の個体性能差、無線通信の使用設定に依存した性能差などに即して対応できる。回数を計測する方法は、計測カウンタの仕組みを簡易化できる。ただし、回数計測のみでは上記各種の性能差は検出できない。
【0067】
また前記したように、無線信号の空間伝搬時間はナノ秒(ns)オーダなのに対して無線通信装置100における信号処理時間はマイクロ秒(μs)程度以上必要となり、再送や中継転送にかかる無線通信装置の処理動作時間は、個々の無線通信装置の個体性能差等に大きく依存する。また、無線電波環境も時間的に変化する。
【0068】
さらにまた、図8の動作シーケンスS100からもわかる通り、再送の場合(S106, S109, S116)は通信用のタイマ142を使った待ち時間があるため、再送時間F401は転送時間F501より長くなることが多い。また再送計測値は通信用のタイマの設定に応じても変化する。
【0069】
このように再送計測および転送計測において、回数計測に加えて、個々の無線通信装置における実際の再送時間や転送時間を計測することで、無線電波環境の時間的な変化の情報に加えて、個々の無線通信装置の個体性能や設定条件の差も含む情報を取得できる。このようなことから、個々の無線通信装置に関して、再送時間および転送時間、少なくとも再送時間をタイマで実際に計測することが重要である。
【0070】
上述のようにして計測した再送計測値や転送計測値は、計測直後の送信データフレームのカウンタテーブル情報F109に入れることも可能であるが、複数回送信後のデータフレームのカウンタテーブル情報F109に入れても良い。
【0071】
図9に、センタ600にある通信管理プログラム1221による無線通信ネットワークの初期設定アルゴリズムA100を示す。
初期の設定では、まず基地局を設置(A102)し、要求に応じて端末を設置(A103)する。端末と基地局の間の無線性能を計測し、性能が不足している端末あるいは複数の無線転送経路が無い端末と基地局の間に中継器を設置(A105)していく。設置が終わり次第、テスト信号などを用いてルートテーブルを作成し、無線転送経路を選択(A107)する。作成されたルートテーブルの情報は、関係する基地局、あるいはさらに中継器や端末のバッファにも保持される。
【0072】
図10に、ルートテーブルT400の例を示す。ルートテーブルには、データ元(端末相当の無線通信装置)からデータ先(基地局相当の無線通信装置)まで、各通信機器間の送受信の区間毎に、送信に関する情報、すなわち、データ元ID番号、送信元ID番号、データ先ID番号と、各無線通信区間でデータ伝送を行う場合の再送計測値、及び、転送計測値が記載されている。これらの計測値は例えば、図4のカウンタテーブルT100の再送計測値T103や転送計測値T104を集めることにより形成される。
【0073】
次に、ルートテーブルT400の生成方法について、図11〜図12Dで説明する。なお、この処理は、基地局やセンタにある通信管理プログラムによってなされる。まず、図11に、ルート設定の前提となる、端末と基地局間のデータを伝送経路の一例を示す。ここでは、端末200Aから基地局400へデータを伝送する場合を想定する。この例では、端末200Aから基地局400に至る中継経路として、300A、300Bを経由する場合と、300Cを経由する場合が矢印で示されている。(実際には、経路の可能性、すなわち組合せはもっと多い)
図12Aのルートテーブルにおいて、縦方向「送信」の200A、300A、300C、300B、400、横方向「受信」の200A、300A、300C、300B、400の順序は、図11に示したシステムを前提として、端末200Aから基地局400の方向で、実際の物理的な位置関係が端末200Aから近い順に表記される。
【0074】
まず、端末200Aが直接通信する相手の可能性は中継器300A、300B、300C、および基地局400すべてである。また、中継器300Aが直接通信する相手の可能性は端末200A、中継器300B、300C、および基地局400のすべてである。
【0075】
これを具体的に示すと、まず、図12Aのルートテーブルにおいて、例えば、端末200A→中継器300Aの通信経路の再送計測値や転送計測値の測定結果をRET01/TRN01と記載する。同様にして記載すると、端末200Aから基地局400までの通信経路の組合せの可能性は、RET01/TRN01からRET20/TRN20までの20通りがあり得る。
【0076】
この中で、図12Aの破線より下側すなわち図の左下の組合せ(RET05/TRN05、09、10、13、14、15、17、18、19、20)は、希望する伝達方向(端末から基地局への方向)と通信方向が逆になるので、選択される可能性は低い。また、端末200A→基地局400の直接ルートの経路は、距離が遠いので計測できない場合も多い。よって、これらの通信経路の組合せは、以下の処理では、転送ルートの候補からは除外される。なお、システム内で可能性のある全てのルートの中から予め転送ルートの候補を絞り込むために、無線通信装置100が受信した通信データ等からデータ伝送遅延性能や受信信号の強度などを求め、要求される所定の基準値を満たすルートのみを予め選択し図12Aのルートテーブルにリストアップする。また、これらの伝送遅延性能や基準値はシステム内の個々の端末20と基地局400の間で送受信する信号の重要度に応じて、適宜、異なった値が設定される。これらは、図9のルートテーブル、無線転送経路選択のステップ(A107)等での処理される。
【0077】
ここで、例えば、図12Bのルートテーブルのような実測データが得られたとする。
この場合、端末200Aから中継器300Aや中継器300Cへは、再送無しで伝わるとする。転送も無いので、再送計測値RETや転送計測値TRNは0(μs)である。
また、中継器300Aから中継器300Bや中継器300C、中継器300Bから中継器300Cや基地局400、中継器300Cから基地局400といった経路は、中継を一番近くの相手に行うため、再送無し、転送には200(μs)かかるとする。
さらに、端末200Aから中継器300B、中継器300Aから基地局400と少し距離が遠い場合には、再送数回と転送で、それぞれ300(μs)、200(μs)かかるとする。
これらの実測データは、無線通信における無線電波環境の時間的変化に加えて、個々の無線通信装置の個体性能や設定条件の差をも反映したものであることは、先に述べた通りである。
【0078】
このようなデータが得られた場合に、とりうる経路に沿って再送計測値RET及び転送計測値TRNを加算していく。
【0079】
図12Cに示したルートテーブルでは、端末200A→中継器300A→中継器300B→基地局400の場合、各エリアの合計として、RET=0、TRN=400、合計400(μs)となる。
【0080】
一方、図12Dに示したルートテーブルでは、端末200A→中継器300C→基地局400の場合、各エリアの合計として、RET=0、TRN=200、合計200(μs)となる。
【0081】
従って、この想定例では、端末200A→中継器300C→基地局400の転送ルートのほうが、端末200A→中継器300A→中継器300B→基地局400の転送ルートよりも適切な経路であると判定される。このように、ルートテーブルのデータに基づき、端末200Aから基地局400までのとりうる複数の無線通信経路の中で、各エリアの再送計測値RETと転送計測値TRNの合計が少なくなり、かつRETも少なくなるように経路を転送ルートに選ぶことが最適になる。従って、ルートテーブルの再送計測値RETの合計、あるいはこれと転送計測値TRNの合計が、要求されるデータ伝送遅延性能よりも小さくなる無線通信転送経路のうち、再送計測値の合計もしくはこれと累積再送計測値の合計が最も小さくなる無線通信転送経路を選択することにより、転送ルートを決定すればよい。RETが少ないということは、再送回数が少ないことを意味し、信頼性が高いことにつながる。
【0082】
図9の初期アルゴリズムでは、ステップA103が図12Aルートテーブルの各計測値を計測することになり、ステップA107が図12BのルートテーブルT400を完成させることになる。無線通信装置100は、完成した図12B(あるいは図12C、図12D)のルートテーブルT400から、初期設定として、最適な経路を選択する。
【0083】
図13に、基地局やセンタにある通信管理プログラムによる無線通信ネットワークの運用アルゴリズムを示す。
定常状態で運用している間は、無線電波環境の変化を監視(ステップA202)する。選択された無線転送経路の無線電波環境が変化した場合には、過去のカウンタテーブルやルートテーブルを用いて別の無線転送経路を選択(ステップA203)し、無線性能を評価する。このような無線転送経路の変更によりルートテーブルT400を修正(ステップA205)して、最適経路選択に落ち着くまで繰り返す。この運用アルゴリズムにおいて、運用中に計測値が変化した場合(ステップA202)とは、これはルートテーブルT400のどこかの計測値要素、例えば、いずれかの無線転送経路の環境の変化に伴い対応する無線通信装置の処理動作時間の値、が変化したことを意味する。その場合は、ルートテーブルT400から無線転送経路を変えた次の最適条件を選択し(ステップA203)、ルートテーブルを修正しながら(ステップA205)、通信ルートの最適化を図る(ステップA204)。
【0084】
なお、無線転送経路の電波環境の変化が、送信元と送信先のローカルなリンクだけの変更であれば、該当無線通信装置間で変更進める。大きな経路変更などの場合は、基地局、中継器、端末の順に指示もしくはブロードキャストで変更を伝える。無線電波環境の監視(ステップA202)は、常時行う場合と、調査フレームを用意して定期的に行う場合がある。再送計測値や転送計測値は一瞬だけ急激に変化する場合もあるので、経路変更するには、計測値変化に閾値を設けるか、もしくは計測値の移動平均をとって判断する。
【0085】
以上述べた実施例1の構成によると、再送および転送を行うマルチホップ無線無線通信装置で、個々の無線通信装置の実際の再送時間や転送時間を計測することで、無線電波環境の時間的な変化の情報に加えて、個々の無線通信装置の個体性能や設定条件の差も含む情報を取得できる。この情報を用いてルートテーブルを生成することで、無線通信端末や無線転送経路選択の最適化を図ることが可能となる。従って、時間的に変化する無線電波環境の下で、マルチホップ無線通信によるデータ伝送のレーテンシ、スループットなどの通信性能を劣化させることなく、比較的簡易にビットエラーレートなどの信頼性・安定性を向上できるという利点がある。
【実施例2】
【0086】
本発明の実施例2を、図14、図15を参照しながら説明する。
実施例2において、端末200、中継器300、あるいは基地局400を構成する無線通信装置100は、そのバッファ130に、送受信データバッファ131、データシーケンス番号バッファ132、IDバッファ133、モニタ・制御信号バッファ134、及び累積カウンタテーブル記憶部138を備えている。また、センタ600もそのバッファ130に、送受信データバッファ131、データシーケンス番号バッファ132、IDバッファ133、モニタ・制御信号バッファ134、及び累積カウンタテーブル記憶部138を備えている。累積カウンタテーブル記憶部138には、累積カウンタテーブルT200が保持される。
【0087】
図15に、実施例2の累積カウンタテーブルの構成例を示す。
累積カウンタテーブルT200は、送信元ID番号T101、転送経路T201、データ元ID番号T202、累積再送計測値T203、累積転送計測値T204から構成される。この累積カウンタテーブルT200は、実施例1におけるカウンタテーブル及びルートテーブルに代わるものである。
【0088】
累積カウンタテーブルT200の生成に際しては、通信管理プログラムが、端末200Aから基地局400までのとりうる複数の経路の中で、データ元である端末からデータ先である基地局までの転送経路に沿って、再送計測値および転送計測値を加算していく。すなわち、累積カウンタテーブルには、端末から基地局までの無線転送経路の全体における、再送計測値および転送計測値の合計値が記載される。通信管理プログラムは、この累積カウンタテーブルの累積値に基づき、無線通信端末や無線転送経路選択の最適化を図る。すなわち、ルートテーブルの再送計測値RET、転送計測値TRN、上記累積再送計測値、上記累積転送計測値の合計が要求されるデータ伝送遅延性能よりも小さくなる無線通信転送経路のうち、上記再送計測値もしくは上記累積再送計測値の合計が最も小さくなる無線通信転送経路を選択するようにすれば良い。
【0089】
この実施例においても、累積カウンタテーブルは自己の無線通信装置を送信元とした計測値だけでなく、受信した通信データに含まれる情報も追加してよい。
【0090】
本実施例の累積カウンタテーブルは、計測値を累計していくため、経路が増えてもテーブル自体のデータ量が増えたりテーブルの構成が複雑になることは無い。しかしながら、ルートテーブルと異なり、個々の無線通信装置、換言すると個々の通信区間に関する情報は無くなり、無線転送経路を通した状況だけを把握できるものになる。
【0091】
累積カウンタテーブルのリストは、自己の無線通信装置を送信元として含むデータだけに限らず、無線通信装置が受信する通信データに情報を含めることで、他の無線通信装置における計測値をリスト化することができる。
【0092】
再送計測値や転送計測値は、無線通信装置の設定条件で異なる場合がある。そのため、送信元ID番号T101などに設定条件情報を含ませることもある。
【0093】
累積カウンタテーブルは、無線通信ネットワークの全ての無線通信装置が所有しても良い。あるいは基地局(データ先)に相当する無線通信装置が所有しても良い。さらには、無線通信ネットワーク上の無線通信装置ではなく、インターネットに代表される広域ネットワークで無線通信ネットワークと接続されているサーバ上に配置されても良い。
【0094】
以上述べた実施例2の構成によれば、再送および転送を行うマルチホップ無線無線通信装置で、再送計測および転送計測において、回数計測に加えて実際の装置の再送時間や転送時間を計測し累積することで、無線電波環境の時間的な変化の情報に加えて、個々の無線通信装置の個体性能や設定条件の差も含む情報を取得できる。これにより、無線通信端末や無線転送経路選択の最適化を図ることが可能となる。従って、マルチホップ無線通信によるデータ伝送のレーテンシ、スループットなどの通信性能を劣化させることなく、比較的簡易にビットエラーレートなどの信頼性・安定性を向上できる。
【実施例3】
【0095】
本発明の実施例3を、図16乃至図19を参照しながら説明する。
図16に実施例3の無線通信装置の構成例を示す。
端末200、中継器300、あるいは基地局400を構成する各無線通信装置100の計測カウンタ110は、誤差計測部113を備え、バッファ130は誤差テーブル記憶部136を備え、カウンタテーブル、誤差テーブルを生成することが可能である。制御部120は、この誤差テーブルを用いてカウンタテーブルの再送計測値や転送計測値の誤差を修正する。
【0096】
再送計測や転送計測では、無線通信装置100が備えるタイマ140の中の通信用タイマ(図1A参照)を用いるが、この通信用タイマの時間カウントは、通信装置個体によってばらつきがある。そのため、再送計測値や転送計測値を比較あるいは累計する場合に、通信用タイマの誤差が大きいと、正確な判断ができなくなる。
【0097】
そこで、誤差計測部113において、受信データフレームのデータ長と送信もしくは転送データフレームのデータ長を通信用タイマで計測して比較することで、自己無線通信装置を送信先とした場合の送信元の通信用タイマと自己の通信用タイマとの誤差を計測できる。この誤差をデータ元からデータ先まで集積することで、無線転送経路のすべての無線通信装置が有するタイマ信号の誤差を求め誤差テーブルを得ることができる。
【0098】
無線通信装置毎に、誤差テーブルらにより再送計測値や転送計測値の誤差修正を行うことで、より正確な計測値が得られ、経路選択等の最適化が図れる。
【0099】
図17に、誤差計測方法を示す。
フレームのSFD F102終了時t3からフレーム終了時(CRC F105終了時)t4までを通信用タイマを用いて計測して、受信データフレームF502のデータ長F601とする。このデータ長F601は、受信データを送信した送信元の通信用タイマでフレームが作られている。一方、転送フレームF503のデータ長F602(フレーム開始時t5からフレーム終了時t6まで)は、転送データを送信する自己の無線通信装置の通信用タイマでフレームが作られている。従って、両者のデータ長F601、F602を比較することで、タイマ誤差を知ることができる。
【0100】
図18に、誤差テーブルの構成例を示す。
誤差テーブルT300は、送信元ID番号T101、送信先ID番号T102、誤差計測値T301から構成される。
【0101】
誤差テーブルのリストは、自己の無線通信装置を送信先として含むデータだけに限らず、無線通信装置が受信する通信データに情報を含めることで、他の無線通信装置における誤差計測値をリスト化することができる。
誤差計測値が、無線通信装置の設定条件で異なるような場合には、送信先ID番号T102などに設定条件情報を含ませることもできる。
【0102】
誤差テーブルT300は、無線通信ネットワークの全ての無線通信装置が所有しても良い。あるいは基地局(データ先)に相当する無線通信装置が所有しても良い。さらには、無線通信ネットワーク上の無線通信装置ではなく、インターネットに代表される広域ネットワークで無線通信ネットワークと接続されているサーバ上に配置されても良い。
【0103】
図19に、通信データフレームフォーマットを示す。
ペイロードF104は、誤差テーブル情報F201を備える。通信データのフレームに誤差テーブル情報F201を含めることで、自己の無線通信装置以外の誤差計測値を含んだ誤差テーブルリストが作成可能となる。また、誤差テーブルによりカウンタテーブルの誤差を修正した情報から、各転送経路の無線通信性能を把握することができる。カウンタテーブルに記憶される再送計測値、すなわち再送にかかる時間や再送回数が多いということは、無線電波環境が良好ではないことを示す。従って、カウンタテーブルの誤差を修正した情報を持つことで、無線電波環境の時間的な変化をより正確に個々の無線通信装置の個体性能差等に反映させた時間情報を取得できる。
【0104】
以上述べた実施例3の構成によれば、再送および転送を行うマルチホップ無線無線通信装置で、実際の装置の再送時間や転送時間をより正確に計測することで、無線電波環境の時間的な変化の情報に加えて、個々の無線通信装置の個体性能差や設定条件の差も含むより正確な情報を取得できる。これにより、無線通信端末や無線転送経路選択の最適化を図ることが可能となる。
【実施例4】
【0105】
実施例2で述べた累積カウンタテーブルT200を集めると、ルートテーブルT500を作成することができる。すなわち、データ元(端末相当の無線通信装置)からデータ先(基地局相当の無線通信装置)まで、任意の送信元(中継器相当の無線通信装置)を経由してデータ伝送行う場合、経路上の再送計測値および転送計測値を全て加算すると、累積再送計測値および累積転送計測値を求めることができ、ルートテーブルT500を求めることができる。
【0106】
さらに、実施例3で述べた、誤差テーブルによりカウンタテーブルの誤差修正した情報から、ルートテーブルを作成することもできる。
【0107】
これらのルートテーブルは、無線通信ネットワークの全ての無線通信装置が所有しても良い。あるいは基地局(データ先)に相当する無線通信装置が所有しても良い。さらには、無線通信ネットワーク上の無線通信装置ではなく、インターネットに代表される広域ネットワークで無線通信ネットワークと接続されているサーバ上に配置されても良い。
【0108】
再送計測値および転送計測値は、無線通信装置の使用(設定)条件で異なる場合がある。ルートテーブルの各ID番号に、使用条件を含めると良い。
無線転送経路の選択にあたっては、累積再送計測値および累積転送計測値の合計が最小になる経路を選択すると、データ伝送の信頼性・安定性を確保したまま、レーテンシもしくはスループット性能を向上することができる。
また、レーテンシやスループットなどの無線通信性能に一定の要求がある場合、その要求値よりも、累積再送計測値と累積転送計測値の合計が小さくなる経路の中で、累積再送計測値が最も小さい経路を選択すると、要求性能を満たしつつ、信頼性・安定性を向上することができる。
【0109】
さらに、複数のデータ元となる無線通信装置において、データに要求される重要度もしくは優先度が異なる場合は、データ元となる無線通信装置の再送計測値と転送計測値を定数倍することもできる。この時、重要度が高い無線通信装置ほど、定数を小さくする。累積再送計測値と累積転送計測値の合計が最小となる無線通信転送経路を選択すると、重要度の高いデータ元・無線通信装置が選択されやすくなる。重要度に応じた定数値は、例えば無線通信装置100のバッファ130に備えられたIDバッファ133に記憶させる方法がある。計測カウンタ110に含めてもよい。計測値の定数倍は制御部が行っても良い。
【0110】
図21に、実施例4の通信データフレームフォーマットを示す。
フレームフォーマットF300のペイロードF104は、ルートテーブル情報F301を備える。
【0111】
このようなフレームを用いることで、無線通信ネットワークの広い範囲で精度の高いルートテーブルを容易に構成することができる。
【0112】
本実施例によれば、再送および転送を行うマルチホップ無線無線通信装置で、実際の装置の再送時間や転送時間をより正確に計測することで、無線電波環境の時間的な変化の情報に加えて、個々の無線通信装置の個体性能差や設定条件の差も含む情報を取得できる。これにより、無線通信端末や無線転送経路選択の最適化を図ることが可能となる。
【実施例5】
【0113】
本発明の実施例5として、ネットワークへの端末の追加・削除の処理を、図22を参照しながら説明する。
図22は、無線通信ネットワークにおける端末の追加・削除アルゴリズムを示す。端末の追加・削除の処理(A301)は、基本的には、図9に示した、無線通信ネットワークの初期設定アルゴリズムA100のステップのA103〜107における「端末の設置」と同様にして、端末の追加・削除の処理がなされ、ルートテーブル等の修正がなされる。端末の追加・削除後の運用は、図13の通常運用A200と同じである。
【0114】
ある特定の端末についてネットワークリンクが完全に切れると、削除と同じ状態になる。その場合は、基地局もしくはセンタにアラームをあげることで、判断可能となる。
【符号の説明】
【0115】
100…無線通信装置、110…計測カウンタ、111…再送計測部、112…転送計測部、120…制御部、130…バッファ(記憶装置)、135…カウンタテーブル記憶部、137…ルートテーブル記憶部、140…タイマ、141…計測用のタイマ、142…通信用のタイマ、150…無線送信器、160…無線受信器、170…切替部、180…アンテナ、190…外部インタフェース、200…端末、300…中継器、400…基地局、500…広域ネットワーク、600…センタ、700…モニタ部、800…駆動制御部、1000…無線通信ネットワーク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信データを無線により他の無線通信装置との間で送受信もしくは転送する無線通信装置において、
上記無線通信装置は、計測カウンタ、バッファおよびタイマ備え、かつ、送信先となる上記他の無線通信装置への上記通信データの伝送に失敗したとき所定の時間間隔後に再度上記通信データの送信を行う再送機能を有しており、
上記計測カウンタは再送計測部を有し、
上記バッファはカウンタテーブル記憶部を備え、
上記再送計測部において、上記無線通信装置における上記通信データの再送に要した時間を、上記タイマにより計測して再送計測値とし、
該再送計測値をカウンタテーブルとして上記カウンタテーブル記憶部に記憶する
ことを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記計測カウンタは転送計測部を備え、
上記無線通信装置は受信した上記通信データを送信先となる上記他の無線通信装置への伝送する転送機能を有しており、
上記転送計測部は上記無線通信装置における上記通信データの転送時間を上記タイマにより計測して転送計測値とし、
上記転送計測値を上記カウンタテーブルとして上記カウンタテーブル記憶部に記憶する
ことを特徴とする無線通信装置。
【請求項3】
請求項1において、
上記再送計測部は、上記無線通信装置における上記通信データの上記再送時間と共に再送回数を上記タイマにより計測して上記再送計測値とし、
該再送計測値を上記カウンタテーブルとして上記カウンタテーブル記憶部に記憶する
ことを特徴とする無線通信装置。
【請求項4】
請求項2において、
上記再送計測部は、上記無線通信装置における上記通信データの上記転送時間と共に転送回数を上記タイマにより計測して上記転送計測値とし、
該転送計測値を上記カウンタテーブルとして上記カウンタテーブル記憶部に記憶する
ことを特徴とする無線通信装置。
【請求項5】
請求項1において、
上記無線通信装置は制御部を備え、
上記バッファは累積カウンタテーブル記憶部を備え、
上記通信データは、上記再送計測値を含み、
上記制御部は受信した上記通信データに含まれる上記再送計測値を累積して累積再送計測値とし、上記通信データに上記累積再送計測値が含まれる場合には該累積再送計測値に上記再送計測値を追加して新たに累積再送計測値とし、
該新たな累積再送計測値を上記累積カウンタテーブルとして上記累積カウンタテーブル記憶部に記憶する
ことを特徴とする無線通信装置。
【請求項6】
請求項5において、
上記通信データは、上記転送計測値を含み、
上記制御部は受信した上記通信データに含まれる上記転送計測値を累積して累積転送計測値とし、上記通信データに上記累積転送計測値が含まれる場合には該累積転送計測値に上記転送計測値を追加して新たに累積転送計測値とし、
該新たな累積転送計測値と上記累積再送計測値とを上記累積カウンタテーブルとして上記累積カウンタテーブル記憶部に記憶する
ことを特徴とする無線通信装置。
【請求項7】
請求項2において、
上記無線通信装置は制御部を備え、
上記計測カウンタは誤差計測部を備え、
上記バッファは誤差テーブル記憶部を備え、
上記誤差計測部は受信した上記通信データのデータ長と上記無線通信装置が転送する上記通信データのデータ長とを上記タイマにより比較して誤差を計測して誤差計測値とし、
上記誤差計測値を誤差テーブルとして上記誤差テーブル記憶部に記憶し、
上記制御部は、上記誤差テーブルを用いて上記再送計測値および上記転送計測値の誤差を修正する
ことを特徴とする無線通信装置。
【請求項8】
請求項1において、
上記無線通信装置は、複数の上記他の無線通信装置と共に無線通信ネットワークを構成するものであり、
上記無線通信装置は制御部を備え、
上記バッファがルートテーブル記憶部を備え、
上記ルートテーブル記憶部は、上記カウンタテーブルの上記再送計測値を用いて、上記複数の他の無線通信装置との間の各無線通信経路における上記再送計測値を持つルートテーブルを作成し、
上記制御部は、上記ルートテーブルの上記再送計測値の合計が最も小さくなる上記無線通信経路を転送ルートとして選択する
ことを特徴とする無線通信装置。
【請求項9】
請求項2において、
上記無線通信装置は、複数の上記他の無線通信装置と共に無線通信ネットワークを構成する基地局であって、
上記基地局は制御部を備え、
上記バッファがルートテーブル記憶部を備え、
上記ルートテーブル記憶部は、上記カウンタテーブルの上記再送計測値および上記転送計測値を用いて、上記複数の他の無線通信装置との間の各無線通信経路における上記再送計測値および上記転送計測値を持つルートテーブルを作成し、
上記制御部は、上記ルートテーブルの上記再送計測値もしくは上記転送計測値の合計が最も小さくなる上記無線通信経路を転送ルートとして選択する
ことを特徴とする無線通信装置。
【請求項10】
請求項6において、
上記無線通信装置は、複数の上記他の無線通信装置と共に無線通信ネットワークを構成する基地局であって、
上記バッファがルートテーブル記憶部を備え、
上記ルートテーブル記憶部は、上記カウンタテーブルの上記累積再送計測値もしくは上記累積転送計測値を用いて、上記通信データの送信元から送信先までの上記各無線通信経路に沿った上記累積再送計測値もしくは上記累積転送計測値の合計値を持つルートテーブルを作成し、
上記制御部は、上記ルートテーブルの上記累積再送計測値もしくは上記累積転送計測値の合計が最も小さくなる上記無線通信経路を転送ルートとして選択する
ことを特徴とする無線通信装置。
【請求項11】
請求項9において、
上記制御部は、上記ルートテーブルの上記再送計測値および上記転送計測値の合計が要求される所定のデータ伝送遅延性能を満たす上記無線通信経路のうち、上記再送計測値もしくは上記転送計測値の合計が最も小さくなる上記無線通信経路を上記転送ルートとして選択する
ことを特徴とする無線通信装置。
【請求項12】
請求項10において、
上記制御部は、
上記ルートテーブルの上記累積再送計測値もしくは上記累積転送計測値の合計が要求される所定のデータ伝送遅延性能を満たす上記無線通信経路のうち、上記累積再送計測値もしくは上記累積転送計測値の合計が最も小さくなる上記無線通信経路を上記転送ルートとして選択する
ことを特徴とする無線通信装置。
【請求項13】
請求項9において、
上記通信データの要求される重要度に応じて上記計測カウンタの上記再送計測値および上記転送計測値を定数倍して、上記カウンタテーブル記憶部に記憶し、
上記ルートテーブルの上記再送計測値もしくは上記転送計測値の合計が最も小さくなる上記無線通信経路を上記転送ルートとして選択する
ことを特徴とする無線通信装置。
【請求項14】
請求項9において、
上記通信データの要求される重要度に応じて上記計測カウンタの上記累積再送計測値および上記累積転送計測値を定数倍して、上記カウンタテーブル記憶部に記憶し、
上記制御部は、上記ルートテーブルの上記累積再送計測値もしくは上記累積転送計測値の合計が最も小さくなる上記無線通信経路を上記転送ルートとして選択する
ことを特徴とする無線通信装置。
【請求項15】
複数の端末および複数の中継器および基地局により構成され、上記各端末と上記基地局との間で上記各中継器を経由した転送ルートを介して通信データの伝送が行われ、上記基地局は上位のセンタに接続される無線通信ネットワークであって、
上記端末、上記中継器および上記基地局は、各々、無線通信装置を備えており、
上記各無線通信装置は制御部及び外部インタフェースを備え、
上記センタは制御部及び外部インタフェースを備え、
上記中継器は上記無線通信装置から構成され、
上記各無線通信装置は、計測カウンタ、バッファおよびタイマ備え、かつ、送信先となる他の上記無線通信装置への上記通信データの伝送に失敗したとき所定の時間間隔後に再度上記通信データの送信を行う再送機能を有しており、
上記計測カウンタは再送計測部を有し、
上記バッファはカウンタテーブル記憶部及びルートテーブル記憶部を備え、
上記再送計測部において、上記各無線通信装置における上記通信データの再送に要した時間を、上記タイマにより計測して再送計測値とし、
該再送計測値をカウンタテーブルとして上記カウンタテーブル記憶部に記憶し、
上記ルートテーブル記憶部は、上記カウンタテーブルの上記再送計測値を用いて、上記複数の他の無線通信装置との間の各無線通信経路における上記再送計測値を持つルートテーブルを作成し、
上記センタもしくは上記基地局の制御部は、上記ルートテーブルの上記再送計測値の合計が最も小さくなる上記無線通信経路を上記転送ルートとして選択する
ことを特徴とする無線通信ネットワーク。
【請求項16】
請求項15において、
上記計測カウンタは転送計測部を備え、
上記無線通信装置は受信した上記通信データを送信先となる上記他の無線通信装置への伝送する転送機能を有しており、
上記転送計測部は上記無線通信装置における上記通信データの転送時間を上記タイマにより計測して転送計測値とし、
上記転送計測値を上記カウンタテーブルとして上記カウンタテーブル記憶部に記憶し、
上記ルートテーブル記憶部は、上記カウンタテーブルの上記再送計測値および上記転送計測値を用いて、上記複数の他の無線通信装置との間の各無線通信経路における上記再送計測値および上記転送計測値を持つルートテーブルを作成し、
上記センタもしくは上記基地局の制御部は、上記ルートテーブルの上記再送計測値もしくは上記転送計測値の合計が最も小さくなる上記無線通信経路を上記転送ルートとして選択する
ことを特徴とする無線通信ネットワーク。
【請求項17】
請求項16において、
上記ルートテーブル記憶部は、上記カウンタテーブルの上記再送計測値および上記転送計測値を用いて、上記通信データの送信元から送信先までの上記各無線通信経路に沿った累積再送計測値もしくは累積転送計測値を持つルートテーブルを作成し、
上記センタもしくは上記基地局の制御部は、上記ルートテーブルの上記累積再送計測値もしくは上記累積転送計測値の合計が最も小さくなる上記無線通信経路を上記転送ルートとして選択する
ことを特徴とする無線通信ネットワーク。
【請求項18】
無線通信ネットワークにおける通信管理プログラムであって、
上記無線通信ネットワークは、各々コンピュータを有する無線通信装置を備えた複数の端末および複数の中継器および基地局により構成され、上記各端末と上記基地局との間で上記各中継器を経由した無線通信経路を介してマルチホップ無線通信による通信データの転送が行われるものにおいて、
上記無線通信装置は、再送計測部を有する計測カウンタ、バッファおよびタイマ備えており、
上記コンピュータに、
上記各端末と上記基地局の間の上記各無線通信経路の無線電波環境を測定し所定の基準を満たす複数の無線通信経路を設定するステップ、
上記無線通信装置における、上記通信データの再送に要した時間を上記タイマにより計測して再送計測値とし、上記通信データの転送時間を上記タイマにより計測して転送計測値とし、該再送計測値及び該転送計測値をカウンタテーブルとして上記バッファに記憶するステップ、
上記カウンタテーブルの上記再送計測値及び転送計測値を用いて、上記通信データの送信元から送信先までの上記各無線通信経路に沿った上記再送計測値及び転送計測値の合計値を持つルートテーブルを作成して上記バッファに記憶するステップ、
上記ルートテーブルの上記再送計測値及び転送計測値の合計が最も小さくなる無線通信経路を転送ルートとして選択するステップ、
上記選択された無線通信経路の上記無線電波環境の変化を監視するステップ、及び
上記選択された無線通信経路の無線電波環境が変化した場合には、上記ルートテーブルを用いて次の最適条件を選択して新たな無線通信経路を選択するステップ
を実行させるための通信管理プログラム。
【請求項19】
請求項18において、
上記コンピュータに、
上記カウンタテーブルの上記再送計測値及び上記転送計測値を用いて、上記通信データの送信元から送信先までの上記各無線通信経路に沿った上記再送計測値の累積値である累積再送計測値及び上記転送計測値の累積値である累積転送計測値の合計値を持つルートテーブルを作成するステップ、及び
上記ルートテーブルの上記累積再送計測値もしくは上記累積転送計測値の合計が最も小さくなる上記無線通信経路を転送ルートとして選択するステップ
を実行させるための通信管理プログラム。
【請求項20】
請求項18において、
上記コンピュータに、
受信した上記通信データのデータ長と上記無線通信装置が転送する上記通信データのデータ長とを上記タイマにより比較して誤差を計測して誤差計測値とし、上記誤差計測値を誤差テーブルとして誤差テーブル記憶部に記憶するステップ、及び
上記誤差テーブルを用いて上記再送計測値および上記転送計測値の誤差を修正するステップ
を実行させるための通信管理プログラム。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図12D】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−19323(P2012−19323A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−154700(P2010−154700)
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】