説明

無線通信装置及びそのアンテナ選択方法

【課題】 複数のアンテナを用いて通信する際に、各アンテナ間の結合度の小さいアンテナの組み合わせを選択する。
【解決手段】 複数のアンテナを用いて通信を行う無線通信装置において、通信を開始する前に複数のアンテナ間の結合度を判定し、該結合度に応じて、前記通信に用いるアンテナの組み合わせを選択する。そして、選択されたアンテナを用いて通信を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のアンテナを有する無線通信装置及びそのアンテナ選択方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無線LANでは、IEEE 802.11b/g/nなどのISM(Industry-Science-Medical)バンドを使用している。この周波数帯は、無線認可を受けることによって自由に使用可能な周波数帯であるため、使用する端末数も増加し、込み合った状況にある。
【0003】
この周波数帯域内で使用する無線通信システムの帯域を広帯域化するには、周波数利用効率を上げる必要がある。
【0004】
現在、無線LANの方式として、2.4GHz帯で使用されているIEEE 802.11b/g/nや5GHz帯で使用されているIEEE 802.11aなどがある。また、2.4GHz帯では周波数ホッピング方式のBluetoothもある。
【0005】
これらの通信方式の中で、2.4GHz帯のIEEE 802.11gと5GHz帯のIEEE 802.11aなどは通信の伝送レートが54Mbpsで高速な伝送を行うことができる。しかし、最近ではこれらの伝送レートを超える通信方式の開発が盛んになってきている。
【0006】
単に、データの伝送速度を高速化するのであれば、キャリアの周波数を更に高周波帯に持って行き、例えば60GHz帯での無線通信やUWBのように3GHz帯から10GHz帯までの広範囲な周波数を使用する無線通信もある。
【0007】
特に、周波数利用効率を上げる意味での広帯域化を実現する無線通信方式として、現在標準化が進められているIEEE 802.11n規格で使用される予定のMIMO(Multi Input Multi Output)通信がある。
【0008】
MIMO通信では、送信側と受信側双方で複数のアンテナを具備し、複数の固有パス(伝送路)を用いて異なる送信データを同時に同一周波数で重畳して送信(空間分割多重)するものである。
【0009】
このように、複数のアンテナを用いて空間分割多重によるデータ通信を行うことにより、周波数帯域を増大させることなく、伝送レートをあげることができる。
【0010】
また、上記複数の固有パスを用いて同一のデータを重複して送出することにより、データの伝送レートは増大しないが、信頼性の向上を図ることも可能となる。
【0011】
ここで、複数のアンテナからそれぞれ送出されるデータは、それぞれ異なる伝搬チャネルを介して受信側に到達する。
【0012】
MIMO通信において高い伝送特性を得るためには、複数の伝搬チャネル間の相関が低いことが要求される。そして、複数の伝搬チャネルの低相関性を妨げる一要因として複数の送信アンテナ間の結合が挙げられる。ここで、アンテナ間の結合度(結合量)とは、あるアンテナAから送信された信号が別のアンテナBにどれくらい吸収されたかを示す値のことである。
【0013】
現在、MIMO通信を行う無線LAN製品が登場してきているが、アクセスポイントなど、アンテナの実装領域が比較的大きい機器がほとんどである。
【0014】
ここで、無線LANシステムのアクセスポイントなど比較的アンテナ実装領域の大きい無線機器に複数のアンテナを実装した場合を説明する。
【0015】
図1は、無線LANのアクセスポイントに複数のアンテナを実装した例を示す図である。図1において、100はアクセスポイント、101〜103はMIMO通信に使用する複数のダイポールアンテナである。複数のダイポールアンテナ101〜103はそれぞれのアンテナの結合度を小さくするために、実装の間隔を1/2波長以上に保っている。
【0016】
このように、アンテナの設置間隔が大きくなれば、アンテナ結合度は小さくなり、通常アンテナの実装間隔を1/2波長程度確保することで、マルチパスの伝搬環境下での伝搬チャネル間の相関をほぼ無相関として扱うことができる。
【0017】
図2は、無線カードモジュールに複数のアンテナを実装した例を示す図である。ノートパソコンなどに接続される無線カードモジュールの場合、図1に示すアクセスポイントへの実装に比べて比較的アンテナの実装領域が狭い領域に実装される。
【0018】
図2において、200はノートパソコンであり、201は無線カードモジュールである。202及び203は無線カードモジュール201の無線基板上にパターン印刷によって実装されたプリントアンテナパターンである。
【0019】
無線カードモジュール201の無線基板サイズは、複数のアンテナを実装するには領域が狭く、各アンテナ202及び203の実装間隔を半波長保つことができない。そこで、アンテナの結合度を小さくするために、アンテナの偏波面が互いに直交するように配置している。
【0020】
こうすることにより、水平偏波と垂直偏波は互いに偏波面が直交するため、それぞれのアンテナの配置間隔を半波長にすることなく、フェージングの大きい電波伝搬環境下での伝搬チャネル間の相関を小さくすることができる。
【特許文献1】特開2007−142878号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
上記従来例における複数のアンテナの配置方法は、配置する複数のアンテナの周辺環境がアンテナ特性(入力反射特性、放射特性)に影響を与えない位の十分な自由空間が確保できる場合に限定される。
【0022】
周辺環境が自由空間であることで配置間隔を離したり、互いのアンテナの偏波面を直交させることにより、アンテナ間の結合を小さくすることができる。
【0023】
しかし、複数のアンテナを小型無線機器に内蔵する場合、アンテナ周辺に存在する樹脂部材、金属部材等によりアンテナ周辺の自由空間を十分に確保できなくなってしまうため、上記従来例のような実装方法を適用することは難しい。
【0024】
図3は、小型無線携帯端末に複数のアンテナを実装した例を示す図である。図3に示すように、300は小型無線携帯端末の筐体である。301〜306はチップアンテナなどの小型アンテナであり、例えば6つのアンテナを実装する場合の例を示している。
【0025】
図3に示すような小型無線携帯端末に複数のアンテナを実装する場合は、デザイン上の要求やメカ的強度などの制限からロッドアンテナのような突起した形状のアンテナを実装することができない。そのため、複数のアンテナを機器内部に実装することが要求される。
【0026】
これにより、小型無線携帯端末内部の金属部材、樹脂部材に近接したアンテナの実装を余儀なくされる。
【0027】
アンテナ近傍に金属部材、樹脂部材が存在すると、良好なアンテナ特性を得ることは難しくなってしまう。
【0028】
例えば、、周辺の金属部材によって指向性が特定方向となり、樹脂部材による共振周波数のずれなどが生じてしまう可能性がある。
【0029】
また、周辺金属部材の近接により偏波面の直交性は維持できなくなってしまう。
【0030】
よって、図3に示すような小型無線携帯端末に複数アンテナを実装する場合、実装筐体が小型であるがゆえにアンテナ間隔を半波長以上に確保して実装することができず、近接するアンテナ間の結合度が大きくなってしまう。
【0031】
MIMO通信は複数のアンテナで通信を行うので、複数のアンテナ同士の結合度が大きくなると、最適なMIMO通信を行うための基本的な条件となる各ストリームの無相関が維持できなくなる。
【0032】
よって、受信部における各ストリームの分離処理が難しくなり、BERの劣化を招き、MIMOの特徴である高速、高信頼性が失われる。
【0033】
また、複数の送信アンテナ間の結合により送信電力が低下するので、そのままでは通信距離が短くなるなど、通信距離を維持しようとすると電力を余計に消費する、などの不都合が生じることにもなる。
【0034】
本発明は、複数のアンテナ有する無線通信装置が通信する際に、各アンテナ間の結合度を考慮して使用するアンテナを選択することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0035】
本発明は、複数のアンテナを有する無線通信装置であって、前記複数のアンテナにおける各アンテナ間の結合度を判定する判定手段と、前記判定手段による判定の結果に基づいて、前記複数のアンテナの中から、通信に用いるアンテナを選択する選択手段と、前記選択手段によって選択されたアンテナを用いて通信を行う通信手段と、を有することを特徴とする。
【0036】
また、本発明は、複数のアンテナを有する無線通信装置におけるアンテナ選択方法であって、前記複数のアンテナにおける各アンテナ間の結合度を判定する判定工程と、前記判定工程における判定の結果に基づいて、前記複数のアンテナの中から、通信に用いるアンテナを選択する選択工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、複数のアンテナにおける各アンテナ間の結合度に応じて、使用するアンテナを選択することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、図面を参照しながら発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0039】
図4は、本実施形態における小型無線端末に複数のアンテナを実装した場合の配置の例を示す図である。図4において、400は小型無線携帯端末の概略形状を示し、例えば、画像撮影装置である。401〜403は画像撮影装置400の筐体内部に実装された小型チップアンテナである。404はユーザへのメッセージなどを通知するための表示部である。
【0040】
このように、アンテナが機器内部に実装された場合、複数のアンテナの放射パターンはアンテナ周囲に存在する金属部材の影響を受けて複雑なパターンとなる。
【0041】
また、特に小型の画像撮像装置の場合、人間が手で持つことによっても、各アンテナに近接する人間の手の影響でその放射パターンも変化してしまう。
【0042】
図5は、小型無線端末に複数のアンテナを実装した場合の各アンテナの指向性の様子を概念的に示す図である。501〜503はそれぞれアンテナ、504はアンテナ501の概略指向性、505はアンテナ502の概略指向性、506はアンテナ503の概略指向性である。
【0043】
図5に示す状態では、アンテナ502とアンテナ503との指向性は互いに向き合った指向性を示し、アンテナ501に対してアンテナ502とアンテナ503の指向性は互いに異なる方向を向いた指向性を示している。
【0044】
実際の各アンテナの指向性は、このような単純な指向性パターンとはならないが、説明の都合上、単純なパターンとしている。
【0045】
このような指向性のパターンを有する3つのアンテナを用いる場合、同一方向の指向性を有するアンテナ502とアンテナ503の結合度が最も強くなることが推定できる。
【0046】
また、アンテナ501とアンテナ502、503の指向性は、同一方向を向いていないことからそれぞれの結合度は弱いことが推定される。
【0047】
このような3つのアンテナの結合度を知るために、各々のアンテナから時系列的に順次参照信号を送信する。
【0048】
1つのアンテナから送信された参照信号を他のアンテナで受信し、その受信信号の信号レベルを検出して記憶する。3つのアンテナから参照信号の送信が終了した段階で、各アンテナにおける受信信号レベルを比較することにより、各アンテナ間の結合度を知ることができる。
【0049】
ここで、アンテナ間の結合度を判定する方法について詳細に説明する。
【0050】
図6は、本実施形態における参照信号の送出タイミングを示す図である。まず、通信を開始する前段階において、アンテナ501から参照信号を送信する。このアンテナ501から送信された参照信号を他のアンテナ502、503で受信し、受信した受信レベルをそれぞれDET12、DET13として、不図示の記憶部にそれぞれ記憶する。
【0051】
DET12=30は、アンテナ501から送信された参照信号の受信レベルがアンテナ502で30であることを示し、DET13=5は、アンテナ501から送信された参照信号の受信レベルがアンテナ503で5であることを示す。また、アンテナ501から参照信号を送出する際に、アンテナ501から反射される信号の受信レベル(以降、反射レベルと呼ぶ)をDET11として不図示の記憶部に記憶する。
【0052】
次に、アンテナ502から参照信号を送信する。このアンテナ502から送信した参照信号を他のアンテナ501、503で受信し、受信レベルを不図示の記憶部にそれぞれ記憶する。
【0053】
DET21=30は、アンテナ502から送信された参照信号の受信レベルがアンテナ501で30であることを示し、DET23=60は、アンテナ502から送信された参照信号の受信レベルがアンテナ503で60であることを示す。また、アンテナ502から参照信号を送出する際に、アンテナ502から反射される信号の反射レベルをDET22として不図示の記憶部に記憶する。
【0054】
また同様に、アンテナ503から参照信号を送信する。このアンテナ503から送信した参照信号を他のアンテナ501、503で受信し、受信レベルを不図示の記憶部にそれぞれ記憶する。
【0055】
DET31=5は、アンテナ503から送信された参照信号の受信レベルがアンテナ501で5であることを示し、DET32=60は、アンテナ503から送信された参照信号の受信レベルがアンテナ502で60であることを示す。また、アンテナ503から参照信号を送出する際に、アンテナ503から反射される信号の反射レベルをDET33として不図示の記憶部に記憶する。
【0056】
DET12とDET21は、アンテナ間の環境が瞬時には変化しない場合にはほぼ同一の受信レベルとなる。また同様に、DET23とDET32、DET13とDET31の受信レベルはほぼ同一の受信レベルとなる。
【0057】
3つのアンテナの中で互いの受信レベルが最も小さいのは、アンテナ501から参照信号を送信した時のアンテナ503の受信レベルDET13とアンテナ503から参照信号を送信した時のアンテナ501の受信レベルDET31であることがわかる。
【0058】
よって、3つのアンテナの中で結合度が最も小さいアンテナ同士の組み合わせは、アンテナ501とアンテナ503であると判定し、この組み合わせのアンテナを選択して通信を開始する。
【0059】
ここで、各アンテナから参照信号を送出する際に、各アンテナから反射される信号の反射レベルが予め設定された値(閾値レベルDETth)以上となるアンテナが存在する場合、そのアンテナを選択しないこととする。
【0060】
尚、反射レベルが閾値レベル以上のアンテナ数が2の場合は、残りの1本のアンテナを用いて通信を行う。また、反射レベルが閾値レベル以上のアンテナ数が3の場合は、一定時間の経過を待って再度各アンテナから順次参照信号を送出し、反射レベルと受信レベルを検出して同様のアンテナ選択動作を行う。再度の測定処理を行っても、反射レベルが閾値レベル以上のアンテナ数が3の場合は、ユーザに通信開始を見合わせる旨の通知を行い、通信を開始しない。
【0061】
なお、ユーザへの通知は、画像撮影装置400の筐体に設けられた表示部404に警告メッセージを表示するなどによって行う。
【0062】
図7は、本実施形態における複数のアンテナ間の結合度を判定(測定)する判定部の構成の一例を示す図である。尚、図7に示す例では、無線RF部において結合度を検出する例を示している。
【0063】
まず、アンテナ701より各アンテナ間の結合度を算出するための参照信号を送出するために、通信を開始する前段階で制御部729は参照信号をTXSig1として送出する。送出された参照信号TXSig1は、変調部721によって所定の変調処理が行われ、増幅器705によって増幅された後、方向性結合器703に供給される。そして、不図示の送受切替信号によって送信動作モードに切替られている送受切替SW702に供給され、そのままアンテナ701に供給されて空中に放射される。
【0064】
この際に、アンテナ701による参照信号の反射が存在する場合、その反射信号は送受切替SW702を介して方向性結合器703に供給される。この方向性結合器703に供給された反射信号は、検波器704に供給され、検波処理が行われて、電圧レベル(DET1)として制御部729内の検波レベル格納部726に格納される。
【0065】
また、他のアンテナ706及び711から送出される参照信号TXSig2及びTXSig3を受信する場合、不図示の送受切替信号で受信動作モードに切替られている。
【0066】
この状態で参照信号TXSig2又はTXSig3が送受切替SW702に供給され、そのまま方向性結合器703に供給され、一定のレベルが検波器704に供給される。そして、検波器704で検波処理が行われ、電圧レベル(DET1)としてそれぞれ制御部729内の検波レベル格納部726に格納される。
【0067】
ここで、TXSig1は通信開始前段階では参照信号であるが、通信開始時には、通常の送信データとなる。また、RXSig1はアンテナ701からの受信データ信号である。
【0068】
また同様に、アンテナ706より各アンテナ間の結合度を算出するための参照信号を送出するために、通信を開始する前段階で制御部729は参照信号TXSig2として送出する。送出された参照信号TXSig2は、変調部723により所定の変調処理が行われ、増幅器710によって増幅された後に方向性結合器708に供給される。そして、不図示の送受切替信号によって送信動作モードに切替られている送受切替SW707に供給され、そのままアンテナ706に供給されて空中に放射される。
【0069】
この際に、アンテナ706による参照信号の反射が存在する場合、その反射信号もアンテナ701からの反射信号と同様に、電圧レベル(DET2)として制御部729内の検波レベル格納部726に格納される。
【0070】
また、他のアンテナ701及び711から送出される参照信号TXSig1及びTXSig3を受信する場合、不図示の送受切替信号で受信動作モードに切替られている。
【0071】
この状態で参照信号TXSig1又はTXSig3が送受切替SW707に供給され、そのまま方向性結合器708に供給され一定のレベルが検波器709に供給される。そして、検波器709で検波処理が行われ、電圧レベル(DET2)としてそれぞれ制御部729内の検波レベル格納部726に格納される。
【0072】
ここで、TXSig2は通信開始前段階では参照信号であるが、通信開始時には、通常の送信データとなる。また、RXSig2はアンテナ706からの受信データ信号である。
【0073】
また同様に、アンテナ711より各アンテナ間の結合度を算出するための参照信号を送出するために、通信を開始する前段階で制御部729は参照信号をTXSig3として送出する。送出された参照信号TXSig3は、変調部725により所定の変調処理が行われ、増幅器715によって増幅されてから方向性結合器713に供給される。そして、不図示の送受切替信号によって送信動作モードに切替られている送受切替SW712に供給され、そのままアンテナ711に供給されて空中に放射される。
【0074】
この際に、アンテナ711による参照信号の反射が存在する場合、その反射信号もアンテナ701からの反射信号と同様に、電圧レベル(DET3)として制御部729内の検波レベル格納部726に格納される。
【0075】
また、他のアンテナ701及び706から送出される参照信号TXSig1及びTXSig2を受信する場合、不図示の送受切替信号で受信動作モードに切替られている。
【0076】
この状態で参照信号TXSig1又はTXSig2が送受切替SW712に供給され、そのまま方向性結合器713に供給され一定のレベルが検波器714に供給される。そして、検波器714により検波され、電圧レベル(DET3)としてそれぞれ制御部729内の検波レベル格納部726に格納される。
【0077】
ここで、TXSig3は通信開始前段階では参照信号であるが、通信開始時には、通常の送信データとなる。また、RXSig3はアンテナ711からの受信データ信号である。
【0078】
このように、各アンテナ701、706、711で受信し、検波された受信レベルDET1、DET2、DET3を制御部729内の検波レベル格納部726に格納する。次に、検波レベル比較部727が、格納部726に格納されている電圧レベルDET1、DET2、DET3を比較し、電圧レベルの最も小さい送信アンテナと受信アンテナの組み合わせを選択する。
【0079】
通信を開始する際には、選択されたアンテナの組み合わせを用いて送受信を行う。
【0080】
例えば、図6に示す例では、3つのアンテナの中で受信レベルの最も小さいアンテナの組み合わせは受信レベルがDET13=5とDET31=5であり、通信に使用するアンテナは図7に示すアンテナ701及び711となる。
【0081】
そして、通信を開始する場合、2つのアンテナ701及び711から異なる送信データ若しくは同一の送信データを同時に送信する。
【0082】
制御部729から送信されるデータTXSig1は、増幅器705で所望の増幅率で増幅され、方向性結合器703を介して送受切替SW702に供給され、アンテナ701から空中に放射される。また、制御部729から送信されるデータTXSig3は増幅器715で所望の増幅率で増幅され、方向性結合器713を介して送受切替SW712に供給され、アンテナ711から空中に放射される。
【0083】
尚、728は信号処理部であり、送信データ及び受信データに対して所定の信号処理を行う。また、730は第1の無線RF部で、731は第2の無線RF部で、732は第3の無線RF部である。
【0084】
図8は、本実施形態におけるアンテナ選択処理を示すフローチャートである。上述したように、ステップS801でアンテナ701から参照信号を送出する。そして、ステップS802で、アンテナ701から送出された参照信号の反射レベルを検出すると同時に他のアンテナ706、711でアンテナ701から送出された参照信号を受信し、受信レベルを検波レベル格納部726に格納する。
【0085】
次に、ステップS803でアンテナ706から参照信号を送出する。そして、ステップS804で、アンテナ706から送出された参照信号の反射レベルを検出すると同時に他のアンテナ701、711でアンテナ706から送出された参照信号を受信し、受信レベルを検波レベル格納部726に格納する。
【0086】
次に、ステップS805でアンテナ711から参照信号を送出する。そして、ステップS806で、アンテナ711から送出された参照信号の反射レベルを検出すると同時に他のアンテナ701、706でアンテナ711から送出された参照信号を受信し、受信レベルを検波レベル格納部726に格納する。
【0087】
次に、ステップS807で、3つのアンテナ701、706、711からの反射があるか否かを判定するために、検波レベル判定部727で送出された参照信号の反射レベルを閾値レベルと比較する。ここで、3つのアンテナ全てからの反射レベルが閾値レベル以上であれば、反射ありと判定し、ステップS808へ処理を進める。このステップS808では、一定時間経過後、再度ステップS801〜S806の処理を行い、全てのアンテナからの反射レベルを検出する。以降の説明においても、各アンテナにおいて反射があるか否かは、反射レベルが閾値レベル以上であるか否かによって判定するものとする。
【0088】
次に、ステップS809で、上述のステップS807と同様に判定し、3つのアンテナ全てからの反射がある(Yes)と判定した場合は、ステップS810へ処理を進める。ステップS810では、ユーザに警告を通知して通信可能状態でない旨を知らせる。
【0089】
一方、ステップS807で、Noと判定した場合は、ステップS811へ処理を進め、2つのアンテナから反射があるか否かを判定する。判定の結果、2つのアンテナから反射がある(Yes)と判定した場合は、ステップS812へ処理を進める。このステップS812では、反射のないアンテナを特定するために、アンテナ701から反射があるか否かを判定する。ここで、反射がないと判定した場合は、ステップS813へ処理を進め、送受信アンテナにアンテナ701のみを選択する。
【0090】
また、ステップS812でアンテナ701から反射があると判定した場合は、ステップS814へ処理を進め、アンテナ706から反射があるか否かを判定する。ここで、反射がないと判定した場合は、ステップS815へ処理を進め、送受信アンテナにアンテナ706を選択する。また、反射があると判定した場合は、アンテナ711のみ反射がないということなので、ステップS816へ処理を進め、送受信アンテナにアンテナ711を選択する。
【0091】
一方、ステップS811で、Noと判定した場合は、反射の無い2つのアンテナを特定するために、ステップS817へ処理を進め、まずアンテナ701から反射があるか否かを判定する。ここで、反射があると判定した場合は、ステップS818へ処理を進め、送受信アンテナにアンテナ706とアンテナ711の2つを選択する。
【0092】
また、ステップS817でアンテナ701から反射がないと判定した場合は、ステップS819へ処理を進め、アンテナ706から反射があるか否かを判定する。ここで、反射があると判定した場合は、ステップS820へ処理を進め、送受信アンテナにアンテナ701とアンテナ711の2つを選択する。
【0093】
また、ステップS819でアンテナ706から反射がないと判定した場合は、ステップS821へ処理を進め、アンテナ711から反射があるか否かを判定する。ここで、反射があると判定した場合は、ステップS822へ処理を進め、送受信アンテナにアンテナ701とアンテナ706の2つを選択する。
【0094】
また、ステップS821でアンテナ711からも反射がないと判定した場合は、全てのアンテナから反射が無いと判定し、ステップS823へ処理を進める。ステップS823では、3つのアンテナの中から結合度の最も小さいアンテナの組み合わせを選択し、送受信アンテナとして使用する。
【0095】
本実施形態によれば、複数のアンテナを用いて通信する際に、各アンテナ間の結合度の小さいアンテナの組み合わせを選択することができる。
【0096】
なお、本実施形態では、3本のアンテナの中から、結合度の低い2本のアンテナを選択する場合について説明したが、3本のアンテナ間の結合度が所定の閾値よりも小さいと判定された場合は、3本全てを使用するようにしてもよい。
【0097】
また、本実施形態では、アンテナが3本の場合について説明したが、4本以上の場合にでも適用できることは言うまでもない。この場合でも、各アンテナにおける受信レベルと反射レベルを測定し、反射レベルが閾値レベル以下のアンテナの中から、結合度の低いアンテナの組み合わせを選択するようにすればよい。この場合も、結合度の最も低い2本のアンテナの組み合わせだけを選択するようにしてもよいし、所定の閾値よりも結合度が低い3本以上のアンテナの組み合わせを選択するようにしてもよい。
[他の実施形態]
次に、図面を参照しながら本発明に係る他の実施の形態を詳細に説明する。
【0098】
他の実施形態では、アンテナの本数を増やし、3つの高周波部に対してそれぞれ2つのアンテナを設け、アンテナ切替SWで2つのアンテナを切り替えて通信を行うものである。例えば、図3に示す小型無線携帯端末300にアンテナ301〜306を実装した場合の各アンテナ間の結合度を検出するものである。
【0099】
図9は、他の実施形態における複数のアンテナ間の結合度を検出する検出部の構成の一例を示す図である。901及び902はアンテナであり、907のアンテナ切替SWによって切り替えられる。903及び904はアンテナであり、908のアンテナ切替SWによって切り替えられる。905及び906はアンテナであり、909のアンテナ切替SWによって切り替えられる。また、他の構成は、図7に示す本実施形態の構成と同じであり、その説明は省略する。
【0100】
以上の構成において、通信を開始する前に、各アンテナから参照信号を送出する際に、不図示のアンテナ切替信号によって2つのアンテナを切り替えて図7と同様な動作を行う。そして、図7と同様な動作を行った結果、6つのアンテナの中から結合度の小さい順に複数のアンテナの組み合わせを選択し、送受信アンテナとして使用する。
【0101】
尚、本発明は複数の機器(例えば、ホストコンピュータ、インターフェース機器、リーダ、プリンタなど)から構成されるシステムに適用しても、1つの機器からなる装置(例えば、複写機、ファクシミリ装置など)に適用しても良い。
【0102】
また、前述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記録媒体を、システム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(CPU若しくはMPU)が記録媒体に格納されたプログラムコードを読出し実行する。これによっても、本発明の目的が達成されることは言うまでもない。
【0103】
この場合、コンピュータ読み取り可能な記録媒体から読出されたプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコードを記憶した記録媒体は本発明を構成することになる。
【0104】
このプログラムコードを供給するための記録媒体として、例えばフレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROMなどを用いることができる。
【0105】
また、コンピュータが読出したプログラムコードを実行することにより、前述した実施形態の機能が実現されるだけでなく、次の場合も含まれることは言うまでもない。即ち、プログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼働しているOS(オペレーティングシステム)などが実際の処理の一部又は全部を行い、その処理により前述した実施形態の機能が実現される場合である。
【0106】
更に、記録媒体から読出されたプログラムコードがコンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書込む。その後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部又は全部を行い、その処理により前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】無線LANのアクセスポイントに複数のアンテナを実装した例を示す図である。
【図2】無線カードモジュールに複数のアンテナを実装した例を示す図である。
【図3】小型無線携帯端末に複数のアンテナを実装した例を示す図である。
【図4】本実施形態における小型無線端末に複数のアンテナを実装した場合の配置の例を示す図である。
【図5】小型無線端末に複数のアンテナを実装した場合の各アンテナの指向性の様子を概念的に示す図である。
【図6】本実施形態における参照信号の送出タイミングを示す図である。
【図7】本実施形態における複数のアンテナ間の結合度を検出する検出部の構成の一例を示す図である。
【図8】本実施形態におけるアンテナ選択処理を示すフローチャートである。
【図9】他の実施形態における複数のアンテナ間の結合度を検出する検出部の構成の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0108】
400 画像撮影装置
401 アンテナ
402 アンテナ
403 アンテナ
404 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナを有する無線通信装置であって、
前記複数のアンテナにおける各アンテナ間の結合度を判定する判定手段と、
前記判定手段による判定の結果に基づいて、前記複数のアンテナの中から、通信に用いるアンテナを選択する選択手段と、
前記選択手段によって選択されたアンテナを用いて通信を行う通信手段と、
を有することを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
前記複数のアンテナの各々から順次参照信号を送信する送信手段と、
前記送信手段により送信した参照信号を、前記複数のアンテナの各々で受信する受信手段と、を有し、
前記判定手段は、前記受信手段により受信した結果に基づいて、前記複数のアンテナにおける各アンテナ間の結合度を判定することを特徴とする請求項1記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記判定手段は、前記受信手段により前記複数のアンテナの各々で受信した参照信号の受信レベルに基づいて、参照信号を送信したアンテナと該参照信号を受信したアンテナ間の結合度を判定することを特徴とする請求項2記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記送信手段により各アンテナから参照信号を送信する際に、各アンテナにおいて反射される反射信号を検出する検出手段を有し、
前記選択手段は、前記判定手段により判定した結合度と、前記検出手段により検出した反射信号と、に基づいて、通信に用いるアンテナを選択することを特徴とする請求項2又は3記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記検出手段により検出した反射信号の受信レベルが所定の閾値よりも大きいアンテナを、前記選択手段で選択しないことを特徴とする請求項4記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記複数のアンテナ全てにおける反射信号の受信レベルが所定の閾値よりも大きい場合、前記送信手段により再度、参照信号を送信し、前記検出手段により反射信号を検出することを特徴とする請求項4又は5記載の無線通信装置。
【請求項7】
前記複数のアンテナ全てにおける反射信号の受信レベルが所定の閾値よりも大きい場合、ユーザに対する警告を通知する通知手段を有することを特徴とする請求項4又は5記載の無線通信装置。
【請求項8】
前記選択手段は、各アンテナ間の結合度が最も低いアンテナの組み合わせを選択することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の無線通信装置。
【請求項9】
複数のアンテナを有する無線通信装置におけるアンテナ選択方法であって、
前記複数のアンテナにおける各アンテナ間の結合度を判定する判定工程と、
前記判定工程における判定の結果に基づいて、前記複数のアンテナの中から、通信に用いるアンテナを選択する選択工程と、
を有することを特徴とするアンテナ選択方法。
【請求項10】
コンピュータを請求項1から8のいずれか1項に記載の無線通信装置として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−21955(P2010−21955A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−183020(P2008−183020)
【出願日】平成20年7月14日(2008.7.14)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】