説明

無線通信装置及び無線通信方法

【課題】 他ノードからの電波を受信し選択したアンテナ(受信時点で無線品質が最も良いアンテナ)と同一のアンテナを使用して、当該他ノードに電波を送信することができ、無線品質の良い通信を行なうことができる無線通信装置及び無線通信方法を提供する。
【解決手段】 無線通信装置11は、他ノード12との間で電波を送受信する複数のアンテナ1と、他ノード12からの電波を受信したアンテナ1のうち、電波強度に応じて一のアンテナ1を選択するアンテナ選択部2aと、アンテナ選択部2aにより選択された一のアンテナ1により電波が受信された他ノード12と当該一のアンテナ1とを対応付ける経路決定部4aと、経路決定部4aにより対応付けられた他ノード12及びアンテナ1の情報に基づき、他ノード12に電波を送信するアンテナ1を決定する使用アンテナ決定部4dと、を備えているものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、アクセスポイントを必要とせず、無線で接続できるノードのみで構成されたネットワーク(以下、アドホックネットワークと称す)における、他のノードに対する最適なアンテナを選択する無線通信装置及び無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アドホックネットワークにおける複数のノード間では、変化する電波状態の中で、最適な通信ルートを選択し、ゲートウェイの経路を確保している。特に、複数のアンテナを備えた1台のノードにおける、使用するアンテナの選択は、ゲートウェイの経路を確保するうえで重要である。
【0003】
例えば、従来の無線通信網は、送信側に互いに異なる方向への指向性を持つ複数のアンテナをそなえ、通信相手毎に最適のアンテナを選択して送信する。最適のアンテナは受信側での受信信号レベルが最大となるように選択する。また最適のアンテナを選択する処理をデータ伝送とは別の処理で行なう(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−276124号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の無線通信網は、ワークステーションが、各サーバーとの最適な送信アンテナをそれぞれ決定し、送信アンテナテーブルに格納(固定)した後は、サーバー毎に固定した送信アンテナを使用して、無線通信を行っている。このため、ワークステーション及びサーバー間の電波状態が変化し、固定された送信アンテナによる無線品質が悪くなった場合(他の送信アンテナを使用した方が無線品質の良い場合)であっても、無線品質の悪い送信アンテナを使用し続けることになるという課題があった。
【0005】
また、従来の無線通信網は、無線品質の悪い送信アンテナを使用し続けることにより、サーバーへの不達の発生やこれに伴う再送が発生し易くなり、ユーザにとって快適な通信を行なうことができないという課題があった。
【0006】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、他のノードからの電波を受信し選択したアンテナ(受信時点で無線品質が最も良いアンテナ)と同一のアンテナを使用して、当該他のノードに電波を送信することができ、無線品質の良い通信を行なうことができる無線通信装置及び無線通信方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る無線通信装置は、他のノードとの間で電波を送受信する複数のアンテナと、前記他のノードからの電波を受信したアンテナのうち、電波強度に応じて一のアンテナを選択するアンテナ選択部と、前記アンテナ選択部により選択された一のアンテナにより電波が受信された前記他のノードと当該一のアンテナとを対応付けるアンテナ情報対応付部と、前記アンテナ情報対応付部により対応付けられた他のノード及びアンテナの情報に基づき、他のノードに電波を送信するアンテナを決定する使用アンテナ決定部と、を備えているものである。これにより、開示の無線通信装置は、他のノードからの電波を受信し選択したアンテナ(受信時点で無線品質が最も良いアンテナ)と同一のアンテナを使用して、当該他のノードに電波を送信することができ、無線品質の良い通信を行なうことができるという効果を奏する。
【0008】
また、この発明に係る無線通信装置は、前記アンテナ情報対応付部が、他のノードからの電波を受信する度に、前記他のノードと前記一のアンテナとを対応付けるものである。これにより、開示の無線通信装置は、電波受信毎に最適なアンテナを使用して、他のノードに電波を送信することができ、さらに無線品質の良い通信を行なうことができるという効果を奏する。
【0009】
また、この発明に係る無線通信装置は、前記使用アンテナ決定部が、前記アンテナ情報対応付部により対応付けられた他のノード及びアンテナの情報に基づき、当該他のノードからの電波を受信した各アンテナの出現頻度を演算し、当該出現頻度に基づき、前記送信するアンテナを決定するものである。これにより、開示の無線通信装置は、電波状態の揺らぎによるアンテナ選択の影響を抑制することができ、より有効なアンテナを選択することができるという効果を奏する。
【0010】
さらに、この発明に係る無線通信装置は、前記アンテナ情報対応付部が、前記アンテナの電波受信時における電波強度の値を、当該アンテナに対応付け、前記使用アンテナ決定部が、前記アンテナ情報対応付部により対応付けられた他のノード、アンテナ及び電波強度の情報に基づき、前記送信するアンテナを決定するものである。これにより、開示の無線通信装置は、受信する電波強度が安定したアンテナを選択することができるという効果を奏する。
【0011】
また、この発明に係る無線通信方法は、アドホックネットワークを構成する複数のノードのうち、他のノードとの間で電波を送受信する複数のアンテナを備えた一のノードによる無線通信方法において、前記他のノードからの電波を受信したアンテナのうち、電波強度に応じて一のアンテナを選択するアンテナ選択ステップと、前記アンテナ選択ステップにより選択された一のアンテナにより電波が受信された前記他のノードと当該一のアンテナとを対応付けるアンテナ情報対応付ステップと、前記アンテナ情報対応付ステップにより対応付けられた他のノード及びアンテナの情報に基づき、他のノードに電波を送信するアンテナを決定する使用アンテナ決定ステップと、を含む。これにより、開示の無線通信方法は、他のノードからの電波を受信し選択したアンテナ(受信時点で無線品質が最も良いアンテナ)と同一のアンテナを使用して、当該他のノードに電波を送信することができ、無線品質の良い通信を行なうことができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
ここで、本発明は多くの異なる形態で実施可能である。したがって、下記の各実施形態の記載内容のみで解釈すべきではない。また、各実施形態の全体を通して同じ要素には同じ符号を付けている。
【0013】
各実施形態では、主にシステムについて説明するが、いわゆる当業者であれば明らかな通り、本発明はコンピュータで使用可能なプログラム、方法としても実施できる。また、本発明は、ハードウェア、ソフトウェア、又は、ソフトウェア及びハードウェアの実施形態で実施可能である。プログラムは、ハードディスク、CD−ROM、DVD−ROM、光記憶装置又は磁気記憶装置等の任意のコンピュータ可読媒体に記録できる。さらに、プログラムはネットワークを介した他のコンピュータに記録することができる。
【0014】
(本発明の第1の実施形態)
図1(a)は第1の実施形態に係る無線アドホック通信システムの主要な構成を示す概略図、図1(b)は図1(a)に示すノードのアンテナを説明するための説明図、図2は図1に示す無線通信装置の主要な構成を示す概略図、図3は図2に示すアンテナ情報記憶部に記録されるアンテナ情報の一例を示す説明図、図4は図2に示す無線通信装置における処理手順を示すフローチャートである。
【0015】
図1(a)において、無線アドホック通信システム100は、主要な構成として、無線通信可能なノード10のみで構成されるアドホックネットワーク101と、媒体やプロトコルが異なるデータを相互に変換して通信を可能にするゲートウェイ102と、各ノード10の状態を収集し、収集した情報を管理するサーバー103とから構成される。
【0016】
なお、本実施形態に係るアドホックネットワーク101は、全てのノード10を、複数のアンテナを備えた無線通信装置11として説明するが、全てのノード10を無線通信装置11にする必要はなく、無線通信装置11である自ノード以外の他のノード(以下、他ノード12と称す)が、パソコン(personal computer)、携帯情報端末(personal digital assistant:PDA)又は携帯電話などの1本のアンテナを備えたノード10であってもよい。
【0017】
図2において、無線通信装置11は、本発明に関連する部位として、大別すると、アンテナ1、複数のアンテナ1を適宜使用して電波の送信又は受信(送受信)を行なう無線モジュール2、無線モジュール2のハード制御を行なうドライバ部3、後述するプロトコル処理部4及びデータ処理部5を備えている。
【0018】
アンテナ1は、無線通信装置11の本体に固定され、目的方向(主方向)が異なる複数の指向性アンテナからなる。なお、図1(b)及び図2においては、無線通信装置11がm本(mは2以上の自然数)のアンテナ1を備え、第1のアンテナ1、第2のアンテナ1、・・・、第mのアンテナ1として図示している。
無線モジュール2は、複数のアンテナ1を適宜使用して、電波の送受信を行なう部位であり、後述するアンテナ選択部2a、受信部2b及び送信部2cを備えている。
【0019】
アンテナ選択部2aは、他ノード12からの電波を受信したアンテナ1のうち、電波強度に応じて(ここでは、電波強度の値が最高値である)一のアンテナ1を選択し、当該一のアンテナ1を識別する情報である後述する自アンテナ識別子(アンテナ番号)と共に、当該一のアンテナ1により受信した電波を無線信号として受信部2bに出力する。
【0020】
また、アンテナ選択部2aは、送信部2cから無線信号と共に自アンテナ識別子が入力され、当該自アンテナ識別子に基づき、一のアンテナ1を選択して、当該一のアンテナ1に無線信号を出力する。
【0021】
受信部2bは、アンテナ選択部2aから入力された無線信号を復調処理して、物理層のデータに変換し、後述するドライバ部3に出力する。
【0022】
送信部2cは、ドライバ部3から後述するデータ処理部5により処理されたデータ(以下、処理データと称す)が入力され、物理層として必要な信号処理及び変調処理を行ない、無線信号に乗せて、アンテナ選択部2aに出力する。
【0023】
ドライバ部3は、無線モジュール2のハード制御を行なうと共に、無線モジュール2と後述するプロトコル処理部4との間のインターフェースとして機能する。
【0024】
プロトコル処理部4は、後述する経路決定部4a、アンテナ情報記憶部4b、経路情報記憶部4c及び使用アンテナ決定部4dを備えている。
【0025】
アンテナ情報記憶部4bは、一のアンテナ1を識別する情報である自アンテナ識別子、及び当該一のアンテナ1に電波が受信され、アンテナ選択部2aにより選択された他ノード12を識別する情報である他ノード識別子を対応付けて格納する。
【0026】
例えば、アンテナ情報記憶部4bは、図3に示すように、複数の他ノード12にそれぞれ割り振られた識別子(A、B、C、・・・)と、複数のアンテナ1にそれぞれ割り振られた識別子(1、2、3、・・・)とをそれぞれ対応付け、アンテナ情報として、アンテナ情報管理テーブルに保持するものである。
【0027】
経路情報記憶部4cは、他ノード12毎の次の経路先ノード(経路として設定している他ノード12)の経路情報を記憶しておくルート管理テーブルを保持しており、このルート管理テーブルに、通信相手の他ノード12と通信する場合に要する中継回数(ホップ数)や、直近の経路先となる他ノード12の情報などを記録している。
【0028】
なお、アドホックネットワーク101を構成する各ノード10(無線通信装置11、他ノード12)は、定期的に他のノード10に対して信号を送信し、他のノード10から応答がない場合に、応答がなかったノード10に対して、図示しない統合監視サーバーにより、生存確認を行なう。そして、無線通信装置11は、応答がなかった他ノード12の情報を、アンテナ情報管理テーブル及びルート管理テーブルから削除する。
【0029】
経路決定部4aは、ドライバ部3を介して入力されたデータに基づき、経路制御パケットから情報を取り出して処理し、経路情報記憶部4cに経路情報を記録すると共に、対応する自アンテナ識別子及び他ノード識別子をアンテナ情報記憶部4bに記録する。すなわち、経路決定部4aは、アンテナ選択部2aにより選択された一のアンテナ1により電波が受信された他ノード12と、当該一のアンテナ1と、を対応付けるアンテナ情報対応付部としての機能を有する。
【0030】
なお、経路決定部4aは、同一の他ノード12から電波を複数回受信した場合に、アンテナ情報記憶部4bにおける、当該他ノード12に対応する既に記録されている自アンテナ識別子に対して、最新の自アンテナ識別子を上書きするものである。
【0031】
また、経路決定部4aは、データ処理部5にデータを出力し、データ処理部5から処理データが入力されると、経路情報記憶部4cのルート管理テーブルを参照して、送信先の他ノード12を決定する。
【0032】
使用アンテナ決定部4dは、経路決定部4aから処理データが入力されると、アンテナ情報記憶部4bのアンテナ情報管理テーブルを参照して、送信先の他ノード12に対応するアンテナ1の自アンテナ識別子を抽出して、ドライバ部3に出力する。
【0033】
つぎに、本実施形態に係る無線通信装置11による処理手順について、図4を用いて説明する。
まず、各アンテナ1は、他ノード12からの電波を受信し(ステップS1)、アンテナ選択部2aに出力する。
【0034】
アンテナ選択部2aは、各アンテナ1における電波強度を比較し(ステップS2)、電波強度の値が最大値である一のアンテナ1を選択する(ステップS3)。
そして、アンテナ選択部2aは、選択したアンテナ1が受信した無線信号及び当該アンテナ1の自アンテナ識別子を受信部2bに出力する(ステップS4)。
【0035】
受信部2bは、アンテナ選択部2aから入力された無線信号を復調処理して(ステップS5)、物理層のデータに変換し、ドライバ部3を介して、経路決定部4aに出力する。
【0036】
経路決定部4aは、経路制御パケットから情報を取り出して処理し、経路情報記憶部4cに経路情報を記録すると共に、自アンテナ識別子及び他ノード識別子を対応付けたアンテナ情報をアンテナ情報記憶部4bに記録する(ステップS6)。
【0037】
また、経路決定部4aは、データ処理部5にデータを出力し、データ処理部5は、当該データに対して、所定の処理を行ない(ステップS7)、経路決定部4aに処理データを出力する。
【0038】
そして、経路決定部4aは、データ処理部5からの処理データが入力されると、経路情報記憶部4cのルート管理テーブルを参照し(ステップS8)、送信先の他ノード12(ここでは、当該データの基である電波を送信した他ノード12)を決定して(ステップS9)、送信先の情報(他ノード識別子を含む)及び処理データを使用アンテナ決定部4dに出力する。
【0039】
そして、使用アンテナ決定部4dは、データ処理部5からの送信先の情報及び処理データが入力されると、アンテナ情報記憶部4bのアンテナ情報管理テーブルを参照する(ステップS10)。
【0040】
そして、使用アンテナ決定部4dは、送信先の他ノード識別子に基づき、該当する自アンテナ識別子を抽出して、送信先に対して電波を送信するために使用するアンテナを決定し(ステップS11)、ドライバ部3を介して、自アンテナ識別子、送信先の情報及び処理データを送信部2cに出力する(ステップS12)。
【0041】
送信部2cは、ドライバ部3から入力された送信先の情報及び処理データに対して、物理層として必要な信号処理及び変調処理を行ない(ステップS13)、無線信号に乗せて、自アンテナ識別子と共に、アンテナ選択部2aに出力する。
【0042】
アンテナ選択部2aは、送信部2cから入力された自アンテナ識別子に基づき、当該自アンテナ識別子に対応するアンテナ1を選択し(ステップS14)、当該アンテナ1に無線信号を出力する。
アンテナ1は、入力された無線信号を該当する他ノード12に対して送信する(ステップS15)。
【0043】
以上のように、本実施形態に係る無線通信装置11においては、他ノード12からの電波を受信し選択したアンテナ1の自アンテナ識別子と当該他ノード12の他ノード識別子とを、他ノード12毎に対応付けて記憶し、他ノード12への送信時に使用するアンテナの選択に、このアンテナ情報(自アンテナ識別子、他ノード識別子)を使用する。これにより、無線通信装置11は、他ノード12からの電波を受信し選択したアンテナ1(受信時点で無線品質が最も良いアンテナ1)と同一のアンテナ1を使用して、当該他ノード12に電波を送信することができ、無線品質の良い通信を行なうことができるという作用効果を奏する。
【0044】
また、本実施形態に係る無線通信装置11においては、無線品質の向上により、他ノード12への送信の失敗を抑制することができ、他ノード12への送信に失敗したアンテナ1に換えて他のアンテナ1を使用することによる再送などの通信トラフィックの低減を図ることができるという作用効果を奏する。
【0045】
(本発明の第2の実施形態)
図5(a)は図2に示すアンテナ情報記憶部に記録されるアンテナ情報の他の例を示す説明図、図5(b)は図4に示すフローチャートのステップS11の詳細な内容を示すフローチャートである。図5において、図1〜図4と同じ符号は、同一又は相当部分を示し、その説明を省略する。
【0046】
本実施形態に係る無線通信装置11においては、経路決定部4aが対応付ける他ノード識別子及び自ノード識別子を、順次、アンテナ情報記憶部4bに格納し、アンテナ情報記憶部4bがバッファとして機能して、自アンテナ識別子が所定の数に達するまで保持する。これに対し、前述した第1の実施形態に係る無線通信装置11においては、経路決定部4aが、同一の他ノード12から電波を複数回受信した場合に、アンテナ情報記憶部4bにおける、当該他ノード12に対応する既に記録されている自アンテナ識別子に対して、最新の自アンテナ識別子を上書きするものである。
【0047】
アンテナ情報記憶部4bは、例えば、図5(a)に示すように、他ノード識別子毎に、複数(ここでは、n個であり、nは1以上の自然数)の自アンテナ識別子を対応付けて格納する。
【0048】
使用アンテナ決定部4dは、送信先の他ノード12の他ノード識別子に対応する自アンテナ識別子のうち、最新の自アンテナ識別子と当該最新の自アンテナ識別子から過去に記録された所定の数(ここでは、k個(k<=n))までの自アンテナ識別子とを対象にする統計により、当該自アンテナ識別子毎の出現頻度を演算し、当該出現頻度が最大となる自アンテナ識別子に基づき、当該送信先の他ノード12に使用するアンテナ1を決定する。
【0049】
なお、ここでの統計による処理として、アンテナ情報記憶部4bにおける、最新の自アンテナ識別子の重要度(重み付け)を高くし、1つ過去に遡る毎に、自アンテナ識別子の重要度を徐々に低くしたうえで、各自アンテナ識別子の出現頻度を演算することが考えられる。
【0050】
また、他の統計処理としては、最新の自アンテナ識別子の記録により、同一の自アンテナ識別子が連続して記録された場合に、当該最新の自アンテナ識別子の出現頻度を最大とすることが考えられる。
【0051】
つぎに、本実施形態に係る無線通信装置11による処理手順のうち、本実施形態の特徴である、前述した統計処理を考慮したステップ(図4のステップS11に相当)についてのみ、図5(b)を用いて説明する。
【0052】
まず、使用アンテナ決定部4dは、他ノード識別子に基づき、該当する自アンテナ識別子のうち、最新の自アンテナ識別子と当該最新の自アンテナ識別子の1つ前に記録された自アンテナ識別子とを比較し、一致(連続)しているか否かを判定する(ステップS101)。
【0053】
ステップS101において、一致(連続)していると判断した場合には、使用アンテナ決定部4dは、該当する自アンテナ識別子のうち、最新の自アンテナ識別子を抽出し(ステップS102)、送信先に対して電波を送信するために使用するアンテナを決定する。
【0054】
また、ステップS101において、一致(連続)していないと判断した場合には、使用アンテナ決定部4dは、該当する自アンテナ識別子のうち、最新の自アンテナ識別子と当該最新の自アンテナ識別子から過去に記録された所定の数までの自アンテナ識別子とを対象にして、各自アンテナ識別子に重み付けを行なう(ステップS103)。
【0055】
そして、使用アンテナ決定部4dは、該当する自アンテナ識別子のうち、最新の自アンテナ識別子と当該最新の自アンテナ識別子から過去に記録された所定の数までの自アンテナ識別子に対して、自アンテナ識別子毎の出現頻度を演算する(ステップS104)。
【0056】
そして、使用アンテナ決定部4dは、出現頻度が最大である自アンテナ識別子を抽出し(ステップS105)、送信先に対して電波を送信するために使用するアンテナを決定する。
【0057】
なお、この第2の実施形態に係る無線通信装置11においては、他ノード識別子毎に複数の自アンテナ識別子を対応付けて格納し、当該複数の自アンテナ識別子に基づき、使用アンテナを決定するところのみが第1の実施形態と異なるところであり、複数の自アンテナ識別子を判断材料とすることによる作用効果以外は、第1の実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0058】
本実施形態においては、複数の自アンテナ識別子に基づき、送信先に対して電波を送信するために使用するアンテナ1を決定することで、第1の実施形態と比較して、電波状態の揺らぎによるアンテナ選択の影響を抑制することができ、より有効なアンテナ1を選択することができるという作用効果を奏する。
【0059】
(本発明の第3の実施形態)
図6(a)は図2に示すアンテナ情報記憶部に記録されるアンテナ情報の他の例を示す説明図、図6(b)は図4に示すフローチャートのステップS11の詳細な内容を示すフローチャートである。図6において、図1〜図5と同じ符号は、同一又は相当部分を示し、その説明を省略する。
【0060】
前述した第2の実施形態においては、アンテナ情報記憶部4bがバッファとして機能し、自アンテナ識別子が所定の数に達するまで保持していたが、本実施形態においては、各自アンテナ識別子と共に、各アンテナ1による電波受信時の電波強度(以下、受信電波強度と称す)も保持する。
【0061】
アンテナ情報記憶部4bは、例えば、図6(a)に示すように、他ノード識別子毎に、複数(ここでは、n個であり、nは1以上の自然数)の自アンテナ識別子と、当該自アンテナ識別子に対応する受信電波強度とを対応付けて格納する。
【0062】
使用アンテナ決定部4dは、送信先の他ノード12の他ノード識別子に対応し、自アンテナ識別子に対応する受信電波強度のうち、最新の自アンテナ識別子に対応する受信電波強度と当該最新の自アンテナ識別子から過去に記録された所定の数(ここでは、k個(k<=n))までの自アンテナ識別子に対応する受信電波強度とを対象にする統計により、当該自アンテナ識別子毎の受信電波強度を演算し、当該受信電波強度が最大となる自アンテナ識別子に基づき、当該送信先の他ノード12に使用するアンテナ1を決定する。
【0063】
なお、ここでの統計による処理として、アンテナ情報記憶部4bにおける、最新の自アンテナ識別子に対応する受信電波強度の重要度(重み付け)を高くし、1つ過去に遡る毎に、自アンテナ識別子に対応する受信電波強度の重要度を徐々に低くしたうえで、各自アンテナ識別子の受信電波強度を演算することが考えられる。
【0064】
つぎに、本実施形態に係る無線通信装置11による処理手順のうち、本実施形態の特徴である、前述した統計処理を考慮したステップ(図4のステップS11に相当)についてのみ、図6(b)を用いて説明する。
【0065】
まず、使用アンテナ決定部4dは、他ノード識別子に基づき、該当する自アンテナ識別子のうち、最新の自アンテナ識別子と当該最新の自アンテナ識別子の1つ前に記録された自アンテナ識別子とを比較し、一致(連続)しているか否かを判定する(ステップS201)。
【0066】
ステップS201において、一致(連続)していると判断した場合には、使用アンテナ決定部4dは、該当する自アンテナ識別子のうち、最新の自アンテナ識別子を抽出し(ステップS202)、送信先に対して電波を送信するために使用するアンテナ1を決定する。
【0067】
また、ステップS201において、一致(連続)していないと判断した場合には、使用アンテナ決定部4dは、該当する自アンテナ識別子に対応する受信電波強度のうち、最新の自アンテナ識別子に対応する受信電波強度と当該最新の自アンテナ識別子から過去に記録された所定の数までの自アンテナ識別子に対応する受信電波強度とを対象にして、各自アンテナ識別子に対応する受信電波強度に重み付けを行なう(ステップS203)。
【0068】
そして、使用アンテナ決定部4dは、該当する自アンテナ識別子に対応する受信電波強度のうち、最新の自アンテナ識別子に対応する受信電波強度と当該最新の自アンテナ識別子から過去に記録された所定の数までの自アンテナ識別子に対応する受信電波強度に対して、自アンテナ識別子毎の受信電波強度を演算する(ステップS204)。
【0069】
そして、使用アンテナ決定部4dは、受信電波強度が最大である自アンテナ識別子を抽出し(ステップS205)、送信先に対して電波を送信するために使用するアンテナ1を決定する。
【0070】
なお、この第3の実施形態に係る無線通信装置11においては、他ノード識別子毎に複数の自アンテナ識別子と当該自アンテナ識別子に対応する受信電波強度とを対応付けて格納し、当該受信電波強度に基づき、使用アンテナ1を決定するところのみが第2の実施形態と異なるところであり、受信電波強度を判断材料とすることによる作用効果以外は、第1の実施形態及び第2の実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0071】
本実施形態においては、各アンテナ1による電波受信時の電波強度に基づき、送信先に対して電波を送信するために使用するアンテナ1を決定することで、第2の実施形態と比較して、受信する電波強度が安定したアンテナ1の選択を行なうことができるという作用効果を奏する。
【0072】
なお、第2の実施形態は、自アンテナ識別子毎の出現頻度を考慮し、第3の実施形態は、自アンテナ識別子毎の受信電波強度を考慮して、それぞれの判断材料に基づき、使用アンテナ1を決定しているが、これらの判断材料を併用して、使用アンテナ1を決定してもよい。
【0073】
すなわち、図5(b)のステップS105において、出現頻度が最大である自アンテナ識別子が複数存在する場合に、受信電波強度を判断材料として、使用アンテナ1を一つに絞り込むことが考えられる。同様に、図6(b)のステップS205において、受信電波強度が最大である自アンテナ識別子が複数存在する場合に、出現頻度を判断材料として、使用アンテナ1を一つに絞り込むことが考えられる。
【0074】
[付記] 以上の実施例を含む実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1) アドホックネットワークを構成する複数のノードのうち、一のノードである無線通信装置において、他のノードとの間で電波を送受信する複数のアンテナと、前記他のノードからの電波を受信したアンテナのうち、電波強度に応じて一のアンテナを選択するアンテナ選択部と、前記アンテナ選択部により選択された一のアンテナにより電波が受信された前記他のノードと当該一のアンテナとを対応付けるアンテナ情報対応付部と、前記アンテナ情報対応付部により対応付けられた他のノード及びアンテナの情報に基づき、他のノードに電波を送信するアンテナを決定する使用アンテナ決定部と、を備えている無線通信装置。
【0075】
(付記2) 前記アンテナ情報対応付部が、他のノードからの電波を受信する度に、前記他のノードと前記一のアンテナとを対応付ける無線通信装置。
【0076】
(付記3) 前記使用アンテナ決定部が、前記アンテナ情報対応付部により対応付けられた他のノード及びアンテナの情報に基づき、当該他のノードからの電波を受信した各アンテナの出現頻度を演算し、当該出現頻度に基づき、前記送信するアンテナを決定する無線通信装置。
【0077】
(付記4) 前記アンテナ情報対応付部が、前記アンテナの電波受信時における電波強度の値を、当該アンテナに対応付け、前記使用アンテナ決定部が、前記アンテナ情報対応付部により対応付けられた他のノード、アンテナ及び電波強度の情報に基づき、前記送信するアンテナを決定する無線通信装置。
【0078】
(付記5) アドホックネットワークを構成する複数のノードのうち、他のノードとの間で電波を送受信する複数のアンテナを備えた一のノードによる無線通信方法において、前記他のノードからの電波を受信したアンテナのうち、電波強度に応じて一のアンテナを選択するアンテナ選択ステップと、前記アンテナ選択ステップにより選択された一のアンテナにより電波が受信された前記他のノードと当該一のアンテナとを対応付けるアンテナ情報対応付ステップと、前記アンテナ情報対応付ステップにより対応付けられた他のノード及びアンテナの情報に基づき、他のノードに電波を送信するアンテナを決定する使用アンテナ決定ステップと、を含む無線通信方法。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】(a)は第1の実施形態に係る無線アドホック通信システムの主要な構成を示す概略図であり、(b)は図1(a)に示すノードのアンテナを説明するための説明図である。
【図2】図1に示す無線通信装置の主要な構成を示す概略図である。
【図3】図2に示すアンテナ情報記憶部に記録されるアンテナ情報の一例を示す説明図である。
【図4】図2に示す無線通信装置における処理手順を示すフローチャートである。
【図5】(a)は図2に示すアンテナ情報記憶部に記録されるアンテナ情報の他の例を示す説明図であり、(b)は図4に示すフローチャートのステップS11の詳細な内容を示すフローチャートである。
【図6】(a)は図2に示すアンテナ情報記憶部に記録されるアンテナ情報の他の例を示す説明図であり、(b)は図4に示すフローチャートのステップS11の詳細な内容を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0080】
1 アンテナ
2 無線モジュール
2a アンテナ選択部
2b 受信部
2c 送信部
3 ドライバ部
4 プロトコル処理部
4a 経路決定部
4b アンテナ情報記憶部
4c 経路情報記憶部
4d 使用アンテナ決定部
5 データ処理部
10 ノード
11 無線通信装置
12 他ノード
100 無線アドホック通信システム
101 アドホックネットワーク
102 ゲートウェイ
103 サーバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アドホックネットワークを構成する複数のノードのうち、一のノードである無線通信装置において、
他のノードとの間で電波を送受信する複数のアンテナと、
前記他のノードからの電波を受信したアンテナのうち、電波強度に応じて一のアンテナを選択するアンテナ選択部と、
前記アンテナ選択部により選択された一のアンテナにより電波が受信された前記他のノードと当該一のアンテナとを対応付けるアンテナ情報対応付部と、
前記アンテナ情報対応付部により対応付けられた他のノード及びアンテナの情報に基づき、他のノードに電波を送信するアンテナを決定する使用アンテナ決定部と、
を備えている無線通信装置。
【請求項2】
前記請求項1に記載の無線通信装置において、
前記アンテナ情報対応付部が、他のノードからの電波を受信する度に、前記他のノードと前記一のアンテナとを対応付ける無線通信装置。
【請求項3】
前記請求項1又は2に記載の無線通信装置において、
前記使用アンテナ決定部が、前記アンテナ情報対応付部により対応付けられた他のノード及びアンテナの情報に基づき、当該他のノードからの電波を受信した各アンテナの出現頻度を演算し、当該出現頻度に基づき、前記送信するアンテナを決定する無線通信装置。
【請求項4】
前記請求項1乃至3のいずれかに記載の無線通信装置において、
前記アンテナ情報対応付部が、前記アンテナの電波受信時における電波強度の値を、当該アンテナに対応付け、
前記使用アンテナ決定部が、前記アンテナ情報対応付部により対応付けられた他のノード、アンテナ及び電波強度の情報に基づき、前記送信するアンテナを決定する無線通信装置。
【請求項5】
アドホックネットワークを構成する複数のノードのうち、他のノードとの間で電波を送受信する複数のアンテナを備えた一のノードによる無線通信方法において、
前記他のノードからの電波を受信したアンテナのうち、電波強度に応じて一のアンテナを選択するアンテナ選択ステップと、
前記アンテナ選択ステップにより選択された一のアンテナにより電波が受信された前記他のノードと当該一のアンテナとを対応付けるアンテナ情報対応付ステップと、
前記アンテナ情報対応付ステップにより対応付けられた他のノード及びアンテナの情報に基づき、他のノードに電波を送信するアンテナを決定する使用アンテナ決定ステップと、
を含む無線通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−98595(P2010−98595A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−268827(P2008−268827)
【出願日】平成20年10月17日(2008.10.17)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】