説明

無線LANモジュールの電源制御方法および無線LANモジュールの電源制御プログラム

【課題】無線端末装置の現在位置に応じて、無線LANモジュールの電源を制御する。
【解決手段】無線LAN(Local Area Network)モジュールおよび前記無線LAN以外の無線通信方式を採る少なくとも一つの無線モジュールを有する無線端末装置における前記無線LANモジュールの電源制御方法であって、地理的領域を複数の領域に分割したメッシュを一単位として、前記メッシュ毎に前記無線端末装置が接続可能なAP(Wireless LAN Access Point)を示すリストを、管理サーバから取得するステップと、前記リストに基づいて、接続可能なAPが存在するかどうかを判断するステップと、前記判断の結果、接続可能な前記APが存在する場合は、前記無線LANモジュールの電源をオンとする一方、接続可能な前記APが存在しない場合は、前記無線LANモジュールの電源をオフとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線LANモジュールの電源を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
無線端末装置に無線LAN(Local Area Network)インタフェースを搭載することによって、セルラネットワークや広域無線ネットワークに比べて省電力かつ高速伝送が可能となる。しかし、無線LANのAP(Wireless LAN Access Point)がカバーする範囲は、3GやWiMAX(商標登録出願中)などに比べて限られたエリアである。そのため、無線端末装置は、常時無線LANインタフェースを起動している場合であっても、無線LANの利用可能な時間帯は限られており、電力を浪費してしまうという問題がある。
【0003】
そこで、例えば、特許文献1では、無線移動端末の低消費電力化を実現すると共に、無線移動端末の利用者に対して無線LANシステムの存在を通知する技術が開示されている。この技術では、無線移動端末は、無線LANシステムと送受信可能な無線インタフェース、およびPHSシステムと送受信可能な無線インタフェースとを備えている。そして、この無線移動端末は、加入者情報と検出情報とを無線LANエリア通知サーバに送信する。無線LANエリア通知サーバは、受信した加入者情報と検出情報とからPHS基地局と無線LANシステムの設置場所とを関連付けて保持するデータベース等の構築を行なう。また、無線LANエリア通知サーバは、無線基地局の通信可能範囲内に利用者が利用可能な無線LANシステムが存在するとき、その無線LANシステムの存在を利用者に対して通知する。
【0004】
また、特許文献2では、複数の無線インタフェースを搭載した移動機が、位置情報を定期的に報告することなく、また無線インタフェース全てを常時起動状態にすることなく、適切な無線インタフェースを選択することで、適切に通信網への接続を継続することを目的としている。これを実現するため、別途、ローミング支援サーバを設置し、移動機が保有しない広範囲のエリア情報を移動機に提供する。移動機は位置情報と提供されたエリア情報に基づいて、利用可能な無線インタフェースのみを起動し、省電力化を実現する。なお、提供されたエリア情報に含まれないエリアに移動する場合には、ローミング支援サーバに改めてエリア情報要求信号を送出し、移動先のエリア情報を得る。ここで提供されるエリア情報は移動機の位置情報と移動速度からエリアの範囲を決定した上で決定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−086451号公報
【特許文献2】特開2006−254063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の技術において、無線LANシステムのカバレッジと、PHSシステムのカバレッジとは根本的に異なるため、PHSシステムのセルと無線LANシステムのアクセスポイントとを対応付けようとしても、誤差を小さくすることは困難である。また、PHSシステムの圏外では、無線LANシステムのアクセスポイントの場所が全く不明となってしまう。さらに、PHSシステムの圏外では、常に無線移動端末の無線LANモジュールの電源をオンとしておかなければならず、低消費電力化は容易ではない。
【0007】
また、特許文献2記載の技術では、移動機の移動速度が非常に大きい場合、提供するエリア情報が大規模となるため、エリア情報の提供に遅延が生じ、エリア情報が得られた時点ではすでに移動機が大幅に移動しまう。その結果、頻繁なエリア情報の要求が発生してする場合がある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、無線端末装置の現在位置に応じて、無線LANモジュールの電源を制御することができる無線LANモジュールの電源制御方法および無線LANモジュールの電源制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記の目的を達成するために、本発明は、以下のような手段を講じた。すなわち、本発明の無線LANモジュールの電源制御方法は、無線LAN(Local Area Network)モジュールおよび前記無線LAN以外の無線通信方式を採る少なくとも一つの無線モジュールを有する無線端末装置における前記無線LANモジュールの電源制御方法であって、地理的領域を複数の領域に分割したメッシュを一単位として、前記メッシュ毎に前記無線端末装置が接続可能なAP(Wireless LAN Access Point)を示すリストを、管理サーバから取得するステップと、前記リストに基づいて、接続可能なAPが存在するかどうかを判断するステップと、前記判断の結果、接続可能な前記APが存在する場合は、前記無線LANモジュールの電源をオンとする一方、接続可能な前記APが存在しない場合は、前記無線LANモジュールの電源をオフとすることを特徴とする。
【0010】
このように、地理的領域を複数の領域に分割したメッシュを一単位として、メッシュ毎に無線端末装置が接続可能なAPを示すリストを、管理サーバから取得するので、無線端末装置は、APの存在の有無を事前に把握することができるため、無線LANモジュールの電源の制御を容易に行なうことが可能となる。その結果、消費電力を削減することが可能となる。
【0011】
(2)また、本発明の無線LANモジュールの電源制御方法において、前記接続可能なAPが存在するかどうかを判断するステップでは、前記リストに基づいて、前記無線端末装置の移動に従って受信電力が大きくなるAPを接続候補として認識する一方、前記無線端末装置の移動に従って受信電力が小さくなるAPを接続候補から除外することを特徴とする。
【0012】
このように、リストに基づいて、無線端末装置の移動に従って受信電力が大きくなるAPを接続候補として認識する一方、無線端末装置の移動に従って受信電力が小さくなるAPを接続候補から除外するので、安定的に利用可能なAPを選択することが可能となる。その結果、無線端末装置の動線に従って、無線LANモジュールを起動するタイミングを動的に制御することが可能となる。
【0013】
(3)また、本発明の無線LANモジュールの電源制御方法において、前記接続可能なAPが存在するかどうかを判断するステップでは、前記リストに基づいて、前記無線端末装置の移動に従って物理的な距離が小さくなるAPを接続候補として認識する一方、前記無線端末装置の移動に従って物理的な距離が大きくなるAPを接続候補から除外することを特徴とする。
【0014】
このように、リストに基づいて、無線端末装置の移動に従って物理的な距離が小さくなるAPを接続候補として認識する一方、無線端末装置の移動に従って物理的な距離が大きくなるAPを接続候補から除外するので、安定的に利用可能なAPを選択することが可能となる。その結果、無線端末装置の動線に従って、無線LANモジュールを起動するタイミングを動的に制御することが可能となる。
【0015】
(4)また、本発明の無線LANモジュールの電源制御方法において、前記無線LAN以外の無線通信方式を採る少なくとも一つの無線モジュールで前記リストを取得することを特徴とする。
【0016】
このように、無線LAN以外の無線通信方式を採る少なくとも一つの無線モジュールでリストを取得するので、無線LANモジュールがオンであっても、オフであっても、上記リストを取得することが可能となる。
【0017】
(5)また、本発明の無線LANモジュールの電源制御方法において、前記判断の結果、接続可能な前記APが存在しない場合は、接続可能なAPが前記リストに出現するまでの期間、前記無線LANモジュールの電源をオフとすることを特徴とする。
【0018】
このように、接続可能なAPが存在しない場合は、接続可能なAPがリストに出現するまでの期間、無線LANモジュールの電源をオフとするので、状況の変化が発生するまで、すなわち、接続可能なAPが出現するまで、タイマを設定することが可能となる。その結果、無線LANモジュールの不要な起動を回避することができ、省電力効果を向上させることが可能となる。
【0019】
(6)また、本発明の無線LANモジュールの電源制御方法において、前記無線端末装置の測位精度、移動速度、移動方向および前記APの場所に基づいて前記管理サーバが算出した参照値を取得するステップと、前記取得した参照値を、バッテリ残量または前記管理サーバとの通信時の消費電力量に応じて補正するステップと、前記補正後の参照値を用いて、前記無線LANモジュールの電源をオフとする時間間隔をタイマに設定するステップと、を含むことを特徴とする。
【0020】
このように、管理サーバから取得した参照値をバッテリ残量または前記管理サーバとの通信時の消費電力量に応じて補正し、補正後の参照値を用いて、無線LANモジュールの電源をオフとする時間間隔をタイマに設定するので、無線端末装置の状況に応じた柔軟な電源制御を行なうことが可能となる。その結果、ユーザに対して、快適な通信環境を長時間提供することが可能となる。
【0021】
(7)また、本発明の無線LANモジュールの電源制御プログラムは、無線LAN(Local Area Network)モジュールおよび前記無線LAN以外の無線通信方式を採る少なくとも一つの無線モジュールを有する無線端末装置における前記無線LANモジュールの電源制御プログラムであって、地理的領域を複数の領域に分割したメッシュを一単位として、前記メッシュ毎に前記無線端末装置が接続可能なAP(Wireless LAN Access Point)を示すリストを、管理サーバから取得する処理と、前記リストに基づいて、接続可能なAPが存在するかどうかを判断する処理と、前記判断の結果、接続可能な前記APが存在する場合は、前記無線LANモジュールの電源をオンとする一方、接続可能な前記APが存在しない場合は、前記無線LANモジュールの電源をオフとする処理と、の一連の処理をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0022】
このように、地理的領域を複数の領域に分割したメッシュを一単位として、メッシュ毎に無線端末装置が接続可能なAPを示すリストを、管理サーバから取得するので、無線端末装置は、APの存在の有無を事前に把握することができるため、無線LANモジュールの電源の制御を容易に行なうことが可能となる。その結果、消費電力を削減することが可能となる。
【0023】
(8)また、本発明の無線LANモジュールの電源制御プログラムにおいて、前記接続可能なAPが存在するかどうかを判断する処理では、前記リストに基づいて、前記無線端末装置の移動に従って受信電力が大きくなるAPを接続候補として認識する一方、前記無線端末装置の移動に従って受信電力が小さくなるAPを接続候補から除外することを特徴とする。
【0024】
このように、リストに基づいて、無線端末装置の移動に従って受信電力が大きくなるAPを接続候補として認識する一方、無線端末装置の移動に従って受信電力が小さくなるAPを接続候補から除外するので、無線端末装置の動線に従って、無線LANモジュールを起動するタイミングを動的に制御することが可能となる。
【0025】
(9)また、本発明の無線LANモジュールの電源制御プログラムにおいて、前記接続可能なAPが存在するかどうかを判断する処理では、前記リストに基づいて、前記無線端末装置の移動に従って物理的な距離が小さくなるAPを接続候補として認識する一方、前記無線端末装置の移動に従って物理的な距離が大きくなるAPを接続候補から除外することを特徴とする。
【0026】
このように、リストに基づいて、無線端末装置の移動に従って物理的な距離が小さくなるAPを接続候補として認識する一方、無線端末装置の移動に従って物理的な距離が大きくなるAPを接続候補から除外するので、安定的に利用可能なAPを選択することが可能となる。その結果、無線端末装置の動線に従って、無線LANモジュールを起動するタイミングを動的に制御することが可能となる。
【0027】
(10)また、本発明の無線LANモジュールの電源制御プログラムにおいて、前記無線LAN以外の無線通信方式を採る少なくとも一つの無線モジュールで前記リストを取得することを特徴とする。
【0028】
このように、無線LAN以外の無線通信方式を採る少なくとも一つの無線モジュールでリストを取得するので、無線LANモジュールがオンであっても、オフであっても、上記リストを取得することが可能となる。
【0029】
(11)また、本発明の無線LANモジュールの電源制御プログラムにおいて、前記判断の結果、接続可能な前記APが存在しない場合は、接続可能なAPが前記リストに出現するまでの期間、前記無線LANモジュールの電源をオフとすることを特徴とする。
【0030】
このように、接続可能なAPが存在しない場合は、接続可能なAPがリストに出現するまでの期間、無線LANモジュールの電源をオフとするので、状況の変化が発生するまで、すなわち、接続可能なAPが出現するまで、タイマを設定することが可能となる。その結果、無線LANモジュールの不要な起動を回避することができ、省電力効果を向上させることが可能となる。
【0031】
(12)また、本発明の無線LANモジュールの電源制御プログラムにおいて、前記無線端末装置の測位精度、移動速度、移動方向および前記APの場所に基づいて前記管理サーバが算出した参照値を取得する処理と、前記取得した参照値を、バッテリ残量または前記管理サーバとの通信時の消費電力量に応じて補正する処理と、前記補正後の参照値を用いて、前記無線LANモジュールの電源をオフとする時間間隔をタイマに設定する処理と、をさらに含むことを特徴とする。
【0032】
このように、管理サーバから取得した参照値をバッテリ残量または前記管理サーバとの通信時の消費電力量に応じて補正し、補正後の参照値を用いて、無線LANモジュールの電源をオフとする時間間隔をタイマに設定するので、無線端末装置の状況に応じた柔軟な電源制御を行なうことが可能となる。その結果、ユーザに対して、快適な通信環境を長時間提供することが可能となる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、地理的領域を複数の領域に分割したメッシュを一単位として、メッシュ毎に無線端末装置が接続可能なAPを示すリストを、管理サーバから取得するので、無線端末装置は、APの存在の有無を事前に把握することができるため、無線LANモジュールの電源の制御を容易に行なうことが可能となる。その結果、消費電力を削減することが可能となる。また、無線端末装置の状況に応じた柔軟な電源制御を行なうことが可能となる。その結果、ユーザに対して、快適な通信環境を長時間提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】WiFiシステムのAPの電波をセンシングおよび調査する概念を示す図である。
【図2】APリストを示す図である。
【図3】本実施形態に係る管理サーバ16の管理領域をメッシュに分割した様子を示す図である。
【図4】本実施形態に係る移動機および管理サーバの動作を示すフローチャートである。
【図5】WiFiモジュールの起動タイミング制御の概念を示す図である。
【図6】WiFiモジュールの起動タイミング制御の概念を示す図である。
【図7】補正値の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態では、移動機(無線端末装置)の地理的な位置情報から利用可能なAPを算出し、無線LANインタフェースを制御する。これにより、他のシステムへの依存性が低く、より高精度かつ効率的に無線LANインタフェースを制御することが可能となる。さらに、移動機に提供する情報を利用可能なAPの問い合わせ間隔の参照値のみに限定することで、回線負荷や移動機の負荷を削減することが可能である。さらにサーバより提供された参照値に対して移動機側で補正を行うことにより、状況に応じて問い合わせ間隔を柔軟に制御することが可能となる。なお、本実施形態では、無線LANの一形態として、「WiFi(登録商標)」を例にとって説明するが、本発明はこれに限定されるわけではない。
【0036】
図1は、WiFiシステムのAP(Access Point、Wireless LAN Access Pointとも呼称する。)の電波をセンシングおよび調査する概念を示す図である。センシング端末10aおよび10bは、周辺のAPに関する情報を収集し、管理サーバに登録する。無線端末装置と同一の構成を採っても良い。すなわち、センシング端末10aは、AP1の電波をセンシングし、AP1のMAC(Media Access Control )アドレス、ESSID(Extended Service Set Identifier)、RSSI(Received Signal Strength Indicator)等の情報を取得する。取得した情報を、GPS(Global Positioning System)情報、センシング端末10aのIDと共に、例えば、セルラーシステムの基地局14を介して、管理サーバ16に登録する。また、センシング端末10bは、AP2、AP3の電波をセンシングし、AP2、AP3のMACアドレス、ESSID、RSSI等の情報を取得する。取得した情報を、GPS情報、センシング端末10bのIDと共に、WiFiシステムを介して、管理サーバ16に登録する。
【0037】
管理サーバ16は、各APから取得した情報を一括して管理する。無線端末装置からの位置情報の報告を受け付け、当該箇所で利用可能なAPのリストを作成し、無線端末装置に通知する。また、センシング端末10aおよび10bからAPに関する情報を受信し、管理およびAPの位置推定を実行する。すなわち、センシング端末10aおよび10bから取得した情報を蓄積し、「どこで(場所)」、「どのAPの電波を受信したか」について、データベースを構築する。例えば、図2に示すように、APのID番号と、センシング端末の座標と、センシング端末で観測された電波の受信強度(RSSI)とから構成されるAPデータベースを構築する。そして、無線端末装置としての移動機が、このAPデータベースに基づいて作成されたリストを取得し、接続可能なAPを把握する。
【0038】
本実施形態では、無線端末装置の位置情報に含まれる誤差を考慮し、管理サーバ16において、一定の広がりをもった範囲(以下、「メッシュ」と呼称する。)において該当APが利用可能であるとする。ここで、メッシュとしては、緯度経度情報の有効桁数を限定した形式でも良く、○○県○○市○○xx-yy-zzなどの住所表記を用いても良い。従って、必ずしも矩形である必要は無く、センシング端末における位置情報の粒度などを考慮して多角形であっても良い。管理サーバではセンシング端末から受信した情報からセンシング端末と各APとの距離を算出し、これらを統合することでAPの位置を推定、情報を保存する。
【0039】
図3は、本実施形態に係る管理サーバ16の管理領域をメッシュに分割した様子を示す図である。図3に示すように、メッシュAには、AP1、2、3が存在する。メッシュBには、AP2、3が存在する。メッシュCには、APは存在しない。メッシュDには、AP3が存在する。移動機30は、メッシュCにいることを、座標(x1,y1,z1)を用いて管理サーバ16に報告する。管理サーバ16は、メッシュCにはAPは存在しないため、それを示す情報(APリスト)として、AP={NULL}を移動機30に通知する。移動機30は、管理サーバ16からAP={NULL}という情報を取得したため、WiFiモジュールの電源をオフとする。これにより、移動機30の消費電力を低減させることが可能となる。次に、移動機30がメッシュDに移動したとする。移動機30は、メッシュDにいることを、座標(x2,y2,z2)を用いて管理サーバ16に報告する。管理サーバ16は、メッシュDにはAP3が存在するため、それを示す情報(APリスト)として、AP={3}を移動機30に通知する。移動機30は、管理サーバ16からAP={3}という情報を取得したため、WiFiモジュールの電源をオンとし、AP3に接続する。
【0040】
図4は、本実施形態に係る移動機および管理サーバの動作を示すフローチャートである。まず、移動機がタイマをオンとする(ステップS0)。このタイマをオンとするタイミングは、別途定めるものとする。次に、移動機は、管理サーバに対して、利用可能なAPリストを要求し(ステップS1)、管理サーバからの応答待ち状態となる。本要求には、移動機の現在地の位置情報を記録する。一方、管理サーバでは、移動機からAPリスト要求を受信すると(ステップS2)、移動機からの要求に応じて、位置情報が所属するメッシュを計算し(ステップS3)、該当メッシュ内で利用可能なAPリストを作成する(ステップS4)。このAPは、上述したセンシング端末が当該メッシュで検出したAPである。次に、管理サーバは、該当メッシュ内のAPリストを移動機に送信して(ステップS5)、終了する(ステップS6)。
【0041】
移動機は、管理サーバからの応答を待機し(ステップS7)、利用可能なAPリストを取得すると、利用可能なAPが存在するかどうかを判断する(ステップS8)。この判断の結果、利用可能なAPが存在する場合は、WiFiモジュールをオンとして(ステップS9)、タイマを設定する(ステップS11)。一方、ステップS8における判断の結果、利用可能なAPが存在しない場合は、WiFiモジュールをオフとして(ステップS10)、タイマを設定する(ステップS11)。
【0042】
以上のように、移動機から管理サーバへの問い合わせ自体は、既に接続中の無線インタフェースを介して実施されるため、新規の無線インタフェースを起動するための消費電力を最小限に抑えることが可能である。ただし、頻繁な問い合わせは回線への負荷及び管理サーバへの負荷となることも想定されるため、上記したタイマ値によって最適な間隔に制御する必要がある。
【0043】
本実施形態では、移動機に対して、より安定して利用できるAPを提示する。このために、メッシュを更に四分割して、APの存在箇所を分類する。すなわち、サブメッシュ化である。そして、管理サーバは、APが存在するメッシュと、そのAPが存在するサブメッシュに隣接するメッシュに移動する場合に、APリストに掲載することとする。一方、APが存在するメッシュと、そのAPが存在するサブメッシュに隣接しないメッシュに移動する場合に、APリストに掲載しない。これにより、移動機が、接続可能なAPから離れて行く場合に確立される不安定な接続を回避することが可能となる。また、移動機が、接続可能なAPから離れて行く場合にAPリストに掲載されないことによって、WiFiモジュールをオフにする際に設定するタイマの時間を長く設定することが可能となるので、省電力効果を高めることが可能となる。
【実施例1】
【0044】
図5は、WiFiモジュールの起動タイミング制御の概念を示す図である。図5は、メッシュが四分割され、サブメッシュでAPが分類されている。そして、サブメッシュの一つにAP1が存在し、サブメッシュの他の一つにAP2が存在する。移動機30は、AP1とAP2に割り当てられたESSIDにアクセス可能である。移動機30が、APが存在するサブメッシュに隣接するメッシュに移動する場合は、APリストに掲載する。例えば、図5において、移動機30が、紙面に向かって右矢印方向へ移動する場合、AP1が存在するサブメッシュに隣接するメッシュに移動することになるため、管理サーバは、APリストとして、AP={1}を移動機に通知する。また、移動先のメッシュでAP2の電波が受信されたとしても、移動機30はAP2から離れて行くため、APリストにAP2は掲載しない。
【0045】
一方、図5において、移動機30が、紙面に向かって左矢印方向へ移動する場合、AP2が存在するサブメッシュに隣接するメッシュに移動することになるため、管理サーバは、APリストとして、AP={2}を移動機に通知する。また、移動先のメッシュでAP1の電波が受信されたとしても、移動機30はAP1から離れて行くため、APリストにAP1は掲載しない。これにより、不安定な接続の確立を回避することが可能となる。
【実施例2】
【0046】
移動機の動線上において、しばらくの間、WiFi(無線LAN)が利用できないことが管理サーバで把握出来ている場合には、管理サーバにおいて、その継続時間を予測し、さらに補正係数を乗算した上で基準タイマ値とし、移動機に通知する。移動機では基準タイマ値に対してさらに補正係数を乗算することで実際のタイマ値とする。
【0047】
図6は、WiFiモジュールの起動タイミング制御の概念を示す図である。図6では、移動機の状況変化が発生するまでタイマを延長する様子を示している。移動機30がメッシュFに存在する場合に、APリストの問い合わせを行なうと、移動機30の移動方向が、図6の紙面に向かって右矢印方向であるため、管理サーバは、APが存在するメッシュと、そのAPが存在するサブメッシュに隣接しないメッシュに移動するため、APリストに掲載しない。すなわち、管理サーバは、AP={NULL}を移動機30に通知する。ここで、移動機30は、WiFiモジュールの電源をオフとし、タイマを発火(オンに)する。図6中の※で示したように、次にアクセス可能なAP3の配下に到達するまでの空白期間(単位:[km])、WiFiモジュールをオフとする。ここで、基準タイマ値は、以下の数式で定めることが可能である。
(基準タイマ値)=(空白期間)/(速度)×(補正係数)…(1)
【0048】
ここで空白期間は、移動機より通知される移動方向に基づいて、現在地から次に移動機がAPリストを入手可能なメッシュに最初に進入するまでの物理的な距離である。なお、補正係数は移動機における測位誤差を考慮して設定される値である。例えばGPS(Global Positioning System)におけるDOP(Dilution Of Precision)値などに基づいて算出される。DOP値は、GPS衛星の配置を示す値であり、1〜5である場合には大きな支障は生じないが、10以上であった場合には測位の精度は大幅に低下する。従って、定数としてDOP値の逆数を用いることで、移動機の測位精度が高い場合には、比較的長い基準タイマ値を通知する一方、測位精度が低い場合には、短い基準タイマ値を通知することによって、移動機に対して異なる時刻、場所での再測位を促す。
【0049】
図6に示すように、管理サーバより受信した利用可能APリストが空であった場合、移動機は無線LANインタフェースの電源をオフとする。この際には管理サーバより通知された基準タイマ値に基づいて、次式に従ってタイマ値を設定する。
(タイマ値)=(基準タイマ値)×(補正係数)…(2)
補正係数としては、移動局におけるバッテリの残量を用いる。
(補正係数)=(問い合わせに必要な消費電力量)/(バッテリ残量)…(3)
【0050】
図7は、補正値の一例を示す図である。バッテリ残量に比べて、問い合わせに必要な消費電力量(放電する電気量)が小さい場合には、短い間隔で管理サーバに問い合わせを行うこととなり、より高精度な無線LANインタフェース制御が可能となる。一方、元々バッテリ容量が小さい移動機やバッテリ残量が低下した移動機においては、相対的に問い合わせに必要な消費電力量が大きくなるため、タイマ値が大きく設定され、問い合わせに関する電力消費を軽減することが可能となる。また、補正係数については、移動機内での「無線LAN優先モード」や「通常モード」、「広域無線システム優先モード」などの設定によっても変更が可能である。
【0051】
以上のような本発明の特徴的な動作は、コンピュータにプログラムを実行させることによっても実現することが可能である。すなわち、本発明の無線LANモジュールの電源制御プログラムは、無線LAN(Local Area Network)モジュールおよび前記無線LAN以外の無線通信方式を採る少なくとも一つの無線モジュールを有する無線端末装置における前記無線LANモジュールの電源制御プログラムであって、地理的領域を複数の領域に分割したメッシュを一単位として、前記メッシュ毎に前記無線端末装置が接続可能なAP(Wireless LAN Access Point)を示すリストを、管理サーバから取得する処理と、前記リストに基づいて、接続可能なAPが存在するかどうかを判断する処理と、前記判断の結果、接続可能な前記APが存在する場合は、前記無線LANモジュールの電源をオンとする一方、接続可能な前記APが存在しない場合は、前記無線LANモジュールの電源をオフとする処理と、の一連の処理をコンピュータに実行させる。
【0052】
また、本発明の無線LANモジュールの電源制御プログラムにおいて、前記接続可能なAPが存在するかどうかを判断する処理では、前記リストに基づいて、前記無線端末装置の移動に従って受信電力が大きくなるAPを接続候補として認識する一方、前記無線端末装置の移動に従って受信電力が小さくなるAPを接続候補から除外する。
【0053】
また、本発明の無線LANモジュールの電源制御プログラムにおいて、前記無線LAN以外の無線通信方式を採る少なくとも一つの無線モジュールで前記リストを取得する。
【0054】
また、本発明の無線LANモジュールの電源制御プログラムにおいて、前記判断の結果、接続可能な前記APが存在しない場合は、接続可能なAPが前記リストに出現するまでの期間、前記無線LANモジュールの電源をオフとする。
【0055】
以上説明したように、本実施形態によれば、地理的領域を複数の領域に分割したメッシュを一単位として、メッシュ毎に移動機が接続可能なAPを示すリストを、管理サーバから取得するので、移動機は、APの存在の有無を事前に把握することができるため、WiFiモジュールの電源の制御を容易に行なうことが可能となる。その結果、消費電力を削減することが可能となる。
【符号の説明】
【0056】
10a センシング端末
10b センシング端末
14 基地局
16 管理サーバ
30 移動機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線LAN(Local Area Network)モジュールおよび前記無線LAN以外の無線通信方式を採る少なくとも一つの無線モジュールを有する無線端末装置における前記無線LANモジュールの電源制御方法であって、
地理的領域を複数の領域に分割したメッシュを一単位として、前記メッシュ毎に前記無線端末装置が接続可能なAP(Wireless LAN Access Point)を示すリストを、管理サーバから取得するステップと、
前記リストに基づいて、接続可能なAPが存在するかどうかを判断するステップと、
前記判断の結果、接続可能な前記APが存在する場合は、前記無線LANモジュールの電源をオンとする一方、接続可能な前記APが存在しない場合は、前記無線LANモジュールの電源をオフとすることを特徴とする無線LANモジュールの電源制御方法。
【請求項2】
前記接続可能なAPが存在するかどうかを判断するステップでは、前記リストに基づいて、前記無線端末装置の移動に従って受信電力が大きくなるAPを接続候補として認識する一方、前記無線端末装置の移動に従って受信電力が小さくなるAPを接続候補から除外することを特徴とする請求項1記載の無線LANモジュールの電源制御方法。
【請求項3】
前記接続可能なAPが存在するかどうかを判断するステップでは、前記リストに基づいて、前記無線端末装置の移動に従って物理的な距離が小さくなるAPを接続候補として認識する一方、前記無線端末装置の移動に従って物理的な距離が大きくなるAPを接続候補から除外することを特徴とする請求項1記載の無線LANモジュールの電源制御方法。
【請求項4】
前記無線LAN以外の無線通信方式を採る少なくとも一つの無線モジュールで前記リストを取得することを特徴とする請求項1記載の無線LANモジュールの電源制御方法。
【請求項5】
前記判断の結果、接続可能な前記APが存在しない場合は、接続可能なAPが前記リストに出現するまでの期間、前記無線LANモジュールの電源をオフとすることを特徴とする請求項1記載の無線LANモジュールの電源制御方法。
【請求項6】
前記無線端末装置の測位精度、移動速度、移動方向および前記APの場所に基づいて前記管理サーバが算出した参照値を取得するステップと、
前記取得した参照値を、バッテリ残量または前記管理サーバとの通信時の消費電力量に応じて補正するステップと、
前記補正後の参照値を用いて、前記無線LANモジュールの電源をオフとする時間間隔をタイマに設定するステップと、を含むことを特徴とする請求項1記載の無線LANモジュールの電源制御方法。
【請求項7】
無線LAN(Local Area Network)モジュールおよび前記無線LAN以外の無線通信方式を採る少なくとも一つの無線モジュールを有する無線端末装置における前記無線LANモジュールの電源制御プログラムであって、
地理的領域を複数の領域に分割したメッシュを一単位として、前記メッシュ毎に前記無線端末装置が接続可能なAP(Wireless LAN Access Point)を示すリストを、管理サーバから取得する処理と、
前記リストに基づいて、接続可能なAPが存在するかどうかを判断する処理と、
前記判断の結果、接続可能な前記APが存在する場合は、前記無線LANモジュールの電源をオンとする一方、接続可能な前記APが存在しない場合は、前記無線LANモジュールの電源をオフとする処理と、の一連の処理をコンピュータに実行させることを特徴とする無線LANモジュールの電源制御プログラム。
【請求項8】
前記接続可能なAPが存在するかどうかを判断する処理では、前記リストに基づいて、前記無線端末装置の移動に従って受信電力が大きくなるAPを接続候補として認識する一方、前記無線端末装置の移動に従って受信電力が小さくなるAPを接続候補から除外することを特徴とする請求項7記載の無線LANモジュールの電源制御プログラム。
【請求項9】
前記接続可能なAPが存在するかどうかを判断する処理では、前記リストに基づいて、前記無線端末装置の移動に従って物理的な距離が小さくなるAPを接続候補として認識する一方、前記無線端末装置の移動に従って物理的な距離が大きくなるAPを接続候補から除外することを特徴とする請求項7記載の無線LANモジュールの電源制御プログラム。
【請求項10】
前記無線LAN以外の無線通信方式を採る少なくとも一つの無線モジュールで前記リストを取得することを特徴とする請求項7記載の無線LANモジュールの電源制御プログラム。
【請求項11】
前記判断の結果、接続可能な前記APが存在しない場合は、接続可能なAPが前記リストに出現するまでの期間、前記無線LANモジュールの電源をオフとすることを特徴とする請求項7記載の無線LANモジュールの電源制御プログラム。
【請求項12】
前記無線端末装置の測位精度、移動速度、移動方向および前記APの場所に基づいて前記管理サーバが算出した参照値を取得する処理と、
前記取得した参照値を、バッテリ残量または前記管理サーバとの通信時の消費電力量に応じて補正する処理と、
前記補正後の参照値を用いて、前記無線LANモジュールの電源をオフとする時間間隔をタイマに設定する処理と、をさらに含むことを特徴とする請求項7記載の無線LANモジュールの電源制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−216958(P2012−216958A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80142(P2011−80142)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、総務省、「電波資源拡大のための研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(599108264)株式会社KDDI研究所 (233)
【Fターム(参考)】