説明

焼結構造体の製造方法

【課題】セラミック積層基板のような焼結構造体を製造する際に、生積層体を焼成する過程において、セラミックグリーンシートが15〜30%程度収縮するため、焼結構造体の寸法精度を高めることが難しいという課題があった。
【解決手段】本発明の一態様に係る焼結構造体の製造方法は、第1セラミック部材および第2セラミック部材を準備する準備工程と、第2セラミック部材の2次元配列された開口部が第1セラミック部材の2次元配列された基体領域と上下に重なり合うように、これらのセラミック部材を交互に積層して積層体を得る積層工程と、積層体を焼成一体化する焼成工程と、個片に分割する分割工程とを有しており、第1セラミック部材に含まれる第1焼結材料と同じ焼成条件における焼結収縮率が第1焼結材料よりも小さい第2焼結材料を第2セラミック部材が含んでいることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックス材料からなるセラミック積層基板のような焼結構造体の製造方法に関するものである。焼結構造体は、例えば、多層配線回路基板、電子部品収納用パッケージまたは圧力センサなどに用いられる。
【背景技術】
【0002】
一般に、セラミック積層基板のような焼結構造体は、複数のセラミックグリーンシートを積層してなる生積層体を焼成することによって作製される。しかしながら、生積層体を焼成する過程において、セラミックグリーンシートが10〜25%程度収縮するため、焼結構造体の寸法精度を高めることが難しい。特に、電子部品収納用パッケージおよび圧力センサのような、板状の部分および枠状の部分を有する構造とする場合には、板状の部分に大きな反り、あるいは撓みが生じる可能性があった。
【0003】
特許文献1には、上記枠状の部分を有する基盤の焼成収縮率を、上記板状の部分である膜板の焼成収縮率よりも小さくした、すなわち基盤よりも膜板が大きく収縮する膜型電圧セラミック素子の製造方法が記載されている。特許文献1に記載の製造方法によれば、これらの焼成収縮率の差によって焼成時に膜板が相対的に大きく収縮することから、膜板が張力を受けて平滑に形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−352111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の製造方法においては、基盤の焼成収縮率を膜板の焼成収縮率よりも小さくするため、異種材料を用いて基盤および膜板を作製している。そのため、焼結構造体における枠状の部分の熱膨張係数と板状の部分の熱膨張係数との間に差異が生じる。結果、焼結構造体の使用時において、枠状の部分と板状の部分との間に応力が集中して耐久性が低下する可能性がある。また、これらの部分の熱膨張係数の差を小さくするためには、熱膨張係数を調整する必要があるので、煩雑である、あるいは材料選択の自由度が狭まるといった課題が生じていた。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、高い耐久性を有する焼結構造体を容易に製造できる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に基づく焼結構造体の製造方法は、第1焼結材料を含み、複数の基体領域を2次元配列して設けるとともに、互いに隣り合う前記基体領域の間および最外周側に捨て代領域を設けた第1セラミック部材、ならびに前記第1焼結材料と同じ焼成条件における焼結収縮率が前記第1焼結材料よりも小さい第2焼結材料を含み、前記複数の基体領域に対応する複数の開口部を2次元配列して設けた第2セラミック部材を準備する準備工程と、前記開口部が前記基体領域と上下に重なり合うように複数の前記第1セラミック部材および複数の前記第2セラミック部材を交互に積層して積層体を得る積層工程と、前記積層体を焼成一体化する焼成工程と、焼成一体化された前記積層体を前記捨て代領域および前記第2セラミック部材の部位で分断して、前記基体領域に対応する個片に分割する分割工程とを有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
上記態様の焼結構造体の製造方法においては、第2セラミック部材の開口部が第1セラミック部材の基体領域と上下に重なり合うように、第1セラミック部材および第2セラミック部材を交互に積層している。すなわち、焼結構造体の個片を異種材料の部材を組み合わせることによって作製するのではなく、焼結構造体の個片となる材料(第1セラミック部材)と、積層方向に隣り合う焼結構造体の個片の間に位置する部分となる材料(第2セラミック材料)とを異種材料としている。
【0009】
そして、第1焼結材料と同じ焼成条件における第2焼結材料の焼結収縮率が第1焼結材料よりも小さいことから、焼結構造体の個片となる部分が張力を受けて平滑に形成される。以上の通り、上記態様の焼結構造体の製造方法によれば、耐久性が高く良好な平坦性を有する焼結構造体を容易に製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態の焼結構造体の製造方法における準備工程を示す斜視図である。
【図2】図1に示す製造方法におけるA−A断面の断面図である。
【図3】図2に示す製造方法における積層工程を示す断面図である。
【図4】図2に示す製造方法における分割工程を示す断面図である。
【図5】図4に示す製造方法における分割工程によって個片化された焼結構造体を示す断面図である。
【図6】第2の実施形態の焼結構造体の製造方法における準備工程を示す斜視図である。
【図7】図6に示す製造方法における積層工程を示す断面図である。
【図8】図6に示す製造方法における分割工程によって個片化された焼結構造体を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、第1の実施形態の焼結構造体の製造方法(以下、便宜的に、焼結構造体の製造方法を単に製造方法ともいう)について、図面を用いて詳細に説明する。但し、以下で参照する各図は、説明の便宜上、下記の実施形態を構成する部材のうち、特徴的な構成を説明するために必要な主要部材のみを簡略化して示したものである。したがって、下記の実施形態の焼結構造体は、本明細書が参照する各図に示されていない任意の構成部材を備え得る。また、各図中の部材の寸法は、実際の構成部材の寸法および各部材の寸法比率等を忠実に表したものではない。
【0012】
図1〜5に示すように、本実施形態の製造方法は、第1セラミック部材3および第2セラミック部材5を準備する準備工程と、これらのセラミック部材を積層する積層工程と、これらのセラミック部材を焼成一体化する焼成工程と、個片に分割する分割工程とを有している。
【0013】
準備工程では、第1セラミック部材3および第2セラミック部材5をそれぞれ複数準備する。第1セラミック部材3においては、複数の基体領域7が2次元配列されて設けられるとともに、互いに隣り合う基体領域7の間および最外周側に捨て代領域9、いわゆるダミー領域が設けられる。第2セラミック部材5においては、複数の開口部11が2次元配列されて設けられる。
【0014】
第2セラミック部材5の開口部11は、第1セラミック部材3の基体領域7に対応するように設けられている。具体的には、後に詳述する積層工程において、それぞれの開口部
11がそれぞれの基体領域7と上下に重なり合うように第2セラミック部材5の開口部11が設けられている。
【0015】
第1セラミック部材3は、第1焼結材料を含んでいる。第2セラミック部材5は、第1焼結材料と同じ焼成条件における焼結収縮率が第1焼結材料よりも小さい第2焼結材料を含んでいる。積層工程では、開口部11が基体領域7と上下に重なり合うように、第1セラミック部材3および第2セラミック部材5が交互に積層されて積層体が作製される。そのため、複数の開口部11が第1のセラミック材料の基体領域7によって塞がれる。
【0016】
焼成工程において、第1セラミック部材3および第2セラミック部材5を積層してなる積層体を焼成一体化することによって、複数の基体領域7を有する焼成積層体、いわゆる多数個取り基板が作製される。
【0017】
この焼成工程の後、分割工程において、焼成一体化されたこれらのセラミック部材からなる積層体を捨て代領域9および第2セラミック部材5において分断して、それぞれの基体領域7に対応する個片に分割している。
【0018】
なお、本実施形態における焼結収縮率とは、焼結前の大きさに対する焼結後の大きさの比率を意味している。例えば、焼結前の1辺の長さが10mmであるセラミック部材が、焼成工程を経て、焼結後に1辺の長さが8mmとなった場合、焼結収縮率が80%であるということができる。
【0019】
本実施形態の製造方法においては、複数の開口部11を2次元配列して設けた第2セラミック部材5を用いて、複数の焼結構造体1が製造される。すなわち、基体領域7が2次元配列された第1セラミック部材3のみを用いて焼結構造体1を作製するのではなく、それぞれの第1セラミック部材3の積層方向の間に第2のセラミック部材が挟まれた状態で焼結構造体1が作製される。
【0020】
そのため、焼結構造体1の個片となる部分、すなわちそれぞれの基体領域7が張力を受けて平滑に形成される。しかも、第1セラミック部材3および第2セラミック部材5が交互に積層された状態で第1セラミック部材3および第2セラミック部材5を焼成一体化することから、積層方向での上記張力のばらつきが軽減される。そのため、複数の第1セラミック部材3の一部に応力が集中して、クラックが生じる、あるいは第2セラミック部材5が第1セラミック部材3から剥離するといったことを抑制できる。
【0021】
また、本実施形態の製造方法においては、第2セラミック部材5における、隣接する開口部11間の隔壁13の厚さを等しくしている。言い換えれば、第1セラミック部材3における、基体領域7の間に位置する捨て代領域9の幅を等しくしている。そのため、一つの第1セラミック部材3における複数の基体領域7のうち、特定のものに張力が集中することを抑制できる。従って、各基体領域7の平滑性を良好なものにできる。
【0022】
第1セラミック部材3の形状としては、例えば、図1に示すように四角板形状とすることができる。第1セラミック部材3の大きさは個片化される焼結構造体1の数、すなわち基体領域7の数によって異なるが、焼結構造体1の状態での第1セラミック部材3の部分は、例えば平面視した場合の1辺の大きさを20〜150mmに設定することができる。
【0023】
例えば、焼結構造体1の個片化された状態での第1セラミック部材3の部分における1辺の大きさを10mmとして、図1に示すように、個片化される焼結構造体1が上下方向に3個ずつ、左右方向に4個ずつで2次元配列される場合、焼結後の第1セラミック部材3の上下方向の1辺の大きさが40mm程度、左右方向の1辺の大きさが50mm程度と
なるように設定すればよい。また、焼結後の第1セラミック部材3の厚みとしては、例えば、0.2〜1.3mmに設定することができる。
【0024】
第2セラミック部材5の形状としては、例えば複数の開口部11を有する四角板形状であって、平面視した場合の外周が第1セラミック部材3の外周と重なり合う形状とすることができる。従って、例えば上記のように焼結後の第1セラミック部材3が40×50mm程度となるように設定されている場合、第2セラミック部材5は、焼結後の1辺の大きさが同様に40×50mm程度となるように設定されればよい。
【0025】
第2セラミック部材5には、複数の開口部11が2次元配列されて設けられている。それぞれの開口部11は、図1,2に示すように、第2セラミック部材5の上面および下面にそれぞれ開口する貫通孔の形状となっている。また、複数の開口部11は、積層工程において複数の基体領域7とそれぞれ上下に重なり合うように2次元配列している。具体的には、本実施形態の製造方法においては、開口部11間の隔壁13が格子状となるように、図2における上下方向および左右方向にそれぞれ開口部11が等間隔で設けられている。
【0026】
なお、本実施形態の製造方法においては、隔壁13が、捨て代領域9の全体と上下に重なり合った形状となっているがこれに限られるものではない。例えば、隔壁13の一部に切り欠きを設けて、隔壁13が、捨て代領域9の一部と上下に重なり合った形状となっていても良い。
【0027】
本実施形態における基体領域7は、平面視した場合の外周が四角である形状となっている。そのため、開口部11は、平面視した場合の内周が四角である形状となっている。このとき、内周の1辺の大きさは、例えば3〜18mmに設定できる。本実施形態における開口部11は四角形状であるが、開口部11は基体領域7の形状に対応する形状であれば良いので、四角形状に限られるものではない。
【0028】
本実施形態における第2セラミック部材5は、上面視して最外周側に位置する捨て代領域9と上下に重なり合う第2セラミック部材5の幅を、互いに隣り合う基体領域7の間に位置する捨て代領域9と上下に重なり合う前記第2セラミック部材5の幅よりも大きくしたものを用いている。言い換えれば、上面視して最外周側に位置する開口部11と第2セラミック部材5の最外周との間の隔壁13の厚さが、隣接する開口部11同士の間の隔壁13の厚さよりも厚いものを用いている。
【0029】
これによって、上面視して最外周側に位置する開口部11と第2セラミック部材5の最外周との間に位置する隔壁13において焼成工程時に基体の形状を安定して保持することができる。そのため、焼成工程において第1セラミック部材3に生じる反り、あるいは撓みをさらに抑制することができる。また、上記の隔壁13を除くそれぞれの隔壁13に加わる応力を低減できるので、第1セラミック部材3と第2セラミック部材5との接合性を良好なものにできる。
【0030】
第1セラミック部材3および第2セラミック部材5としては、高い絶縁性を有する部材を用いることができる。絶縁性を有する部材としては、例えば、酸化アルミニウム質焼結体、窒化アルミニウム質焼結体、ムライト質焼結体、炭化珪素質焼結体、窒化珪素質焼結体またはガラスセラミックスのような部材を用いることができる。
【0031】
上記の部材を含有する原料粉末、有機溶剤およびバインダを混ぜることによって混合部材が作製される。混合部材をシート状に成形することによってグリーンシートが作製される。シート状に成形する方法としては、例えばドクターブレード法を用いればよい。
【0032】
これらのグリーンシートの単層または積層体を焼成前の第1セラミック部材3および第2セラミック部材5として用いることができる。また、グリーンシート自体を用いてもよいが、後述する焼成工程において第1セラミック部材3と第2セラミック部材5とを焼結一体化することが可能であれば、グリーンシートを仮焼成した状態のものを第1セラミック部材3および第2セラミック部材5として用いてもよい。
【0033】
本実施形態における第1セラミック部材3は、第1焼結材料を含んでいる。また、第2セラミック部材5は、第1焼結材料と同じ焼成条件における焼結収縮率が第1焼結材料よりも小さい第2焼結材料を含んでいる。第1焼結材料および第2焼結材料としては、上記の絶縁性を有する部材から選択することができる。上記の絶縁性を有する部材から所望の焼結収縮率を有する部材を選択することによって、第1焼結材料と同じ焼成条件における第2焼結材料の焼結収縮率を第1焼結材料よりも小さくできる。
【0034】
また、グリーンシートの収縮率は、上記の絶縁性を有する部材に混ぜられる有機溶剤およびバインダの種類あるいは混合量によっても調整することができる。従って、第1焼結材料および第2焼結材料として、同じ絶縁性を有する部材を含むとともに、有機溶剤およびバインダの種類を調整することによって、第1焼結材料と同じ焼成条件における第2焼結材料の焼結収縮率を第1焼結材料よりも小さくしてもよい。
【0035】
また、第1セラミック部材3および第2セラミック部材5として、焼成工程において焼成一体化させるときに等しい熱膨張係数を有するものを用いることが好ましい。第1セラミック部材3および第2セラミック部材5における上記の熱膨張係数が異なると、焼成工程での焼結後における熱膨張係数の差に起因する収縮差による第1セラミック部材3と第2セラミック部材5との大きさの変化に違いが生じる。そのため、焼成工程を経た後に第1セラミック部材3と第2セラミック部材5との間に大きな残有応力が生じる可能性がある。
【0036】
しかしながら、第1セラミック部材3および第2セラミック部材5として、焼成工程において焼成一体化させるときに等しい熱膨張係数を有するものを用いることによって、上記の残有応力を低減できるので、焼結構造体1の耐久性を向上させることができる。
【0037】
本実施形態の製造方法によって作製される焼結構造体1を、例えばセラミック積層基板として用いる場合には、基体領域7の表面および内部に、配線回路となる金属部材を配設すればよい。焼成工程を経て、このような金属部材を配線回路とすることができる。
【0038】
金属部材としては、例えば、銅、銀、金、白金、ニッケル、タングステンおよびモリブデンのような金属粉末に、有機バインダ、溶剤、可塑剤および分散剤等を添加混合して得た金属ペーストを用いることができる。このような金属ペーストを基体領域7の表面に、例えばスクリーン印刷法を用いて印刷すればよい。また、基体領域7にビアホールを形成するとともに、このビアホールに上記の金属ペーストを充填することによって、基体領域7の内部に配線回路を配設することができる。印刷もしくは充填された金属ペーストは、焼成工程を経て所定の配線回路となる。
【0039】
また、本実施形態の製造方法によって作製される焼結構造体1を、例えば圧力センサとして用いる場合には、それぞれの基体領域7の内部に空洞を形成するとともに、この空洞の上面および下面に、互いに対向する金属層(不図示)を形成すればよい。焼成工程を経て、このような金属層を一対の対向電極とすることができる。
【0040】
一対の対向電極となる金属層としては、配線回路となる金属ペーストと同様のものを用
いればよい。上記の金属ペーストを空洞の上面および下面に、例えばスクリーン印刷法を用いて印刷すればよい。印刷された金属ペーストは、焼成工程を経て一対の対向電極となる。
【0041】
本実施形態の積層工程では、第2セラミック部材5が第1セラミック部材3の捨て代領域9と上下に重なり合うとともに第2セラミック部材5の開口部11が第1セラミック部材3の基体領域7と上下に重なり合うように、第1セラミック部材3および第2セラミック部材5が交互に積層される。そのため、複数の第1セラミック部材3それぞれの基体領域7もまた、上下に重なり合うように積層されている。このように、第1セラミック部材3に第2セラミック部材5を重ねて配置することによって生積層体が作製される。
【0042】
なお、本実施形態の製造方法においては2つの第1セラミック部材3と、3つの第2セラミック部材5とが積層されているが、第1セラミック部材3および第2セラミック部材5の積層される数としては、これに限られるものではない。第1セラミック部材3および第2セラミック部材5が交互に積層されるためには、少なくとも1つの第1セラミック部材3および2つ以上の第2セラミック部材5が交互に積層される形態、あるいは、少なくとも1つの第2セラミック部材5および2つ以上の第1セラミック部材3が交互に積層される形態であればよい。
【0043】
本実施形態の焼成工程では、上記の生積層体を焼成することによって、第1セラミック部材3および第2セラミック部材5を焼成一体化している。最適な焼成温度は第1セラミック部材3および第2セラミック部材5として用いる材料によって異なるが、例えば酸化アルミニウムのような高温焼成のセラミックス材料を用いる場合は1550℃〜1600℃にて第1セラミック部材3および第2セラミック部材5を焼成すればよい。また、例えばガラスセラミックスのような低温焼成のセラミックス材料を用いる場合は1350℃〜1400℃にて第1セラミック部材3および第2セラミック部材5を焼成すればよい。
【0044】
本実施形態の製造方法においては、複数の開口部11が2次元配列されて設けられ、複数の焼結構造体1が同時に作製されている。そのため、第1セラミック部材3と第2セラミック部材5との焼結収縮率の差に起因する張力が第1セラミック部材3に加わった状態で第1セラミック部材3が焼成される。従って、耐久性が高く良好な平坦性を有する焼結構造体1を作製することができる。
【0045】
また、第1セラミック部材3における、分割工程によって個片化した場合に隣り合う焼結構造体1にそれぞれ位置する部分の間にも互いに引っ張り合う力として働く。
【0046】
このとき、第1セラミック部材3が平面的であって、複数の開口部11が2次元配列されていることから、第1セラミック部材3における互いに隣接する基体領域7の間に平面的に分散される。そのため、図3における上下方向に働く張力および左右方向に働く張力のそれぞれに関して第1セラミック部材3と第2セラミック部材5との境界に応力が集中することを抑制できる。また更に、隣接する開口部11間の隔壁13の厚さが等しくされていることから、複数の焼結構造体1の一部に応力が過度に集中することを抑制できる。
【0047】
本実施形態の分割工程では、図4,5に示すように、焼成一体化された第1セラミック部材3および第2セラミック部材5を捨て代領域9および第2セラミック部材5において分断して、基体領域7を一つずつ含む個片に分割している。具体的には、図4において一点鎖線Xで示すように、積層方向に平行な方向では、捨て代領域9において分断している。また、積層方向に垂直な水平方向では、第2セラミック部材5において分断している。
【0048】
本実施形態の製造方法においては、図4に示す一点鎖線Xに沿って第1セラミック部材
3および第2セラミック部材5を分断することでそれぞれ基体領域7を一つずつ含む個片に分割できる。なお、第1セラミック部材3の基体領域7がセラミック積層基板として用いられることから、図5に示すように、個片化された焼結構造体1から第2セラミック部材5を除去しても良い。
【0049】
本実施形態の製造方法に基づいて作製された複数の焼結構造体1は、上述のように応力が分散されるとともに、複数の焼結構造体1の一部に応力が過度に集中することが抑制されている。そのため、それぞれの焼結構造体1の耐久性が良好であるとともに、複数の焼結構造体1それぞれにおける焼結後の第1セラミック部材3の平坦性、大きさ、耐久性などの品質のバラつきを低減できる。
【0050】
次に、第2の実施形態の焼結構造体1の製造方法について、図面を用いて詳細に説明する。なお、本実施形態にかかる各構成において、第1の実施形態と同様の機能を有する構成については同じ参照符号を付記し、その詳細な説明を省略する。また、第1の実施形態と同様の工程についても、その詳細な説明を省略する。
【0051】
図6〜8に示すように、本実施形態の製造方法は、第1の実施形態の製造方法と同様に、第1セラミック部材3および第2セラミック部材5を準備する準備工程と、これらのセラミック部材を積層する積層工程と、これらのセラミック部材を焼成一体化する焼成工程と、個片に分割する分割工程とを有している。
【0052】
第1の実施形態の製造方法においては、第1セラミック部材3が四角板形状であって、それぞれの基体領域7もまた四角板形状となっているが、本実施形態の製造方法においては、それぞれの基体領域7が上面側に開口する凹部15を有している。このように基体領域7が凹部15を有している場合には、個片化された焼結構造体1を、例えば電子部品収納用パッケージなどに用いることができる。
【0053】
本実施形態における焼結構造体1は第1セラミック部材3の平坦性が良好である、すなわち、凹部15の底面の平坦性が良好であることから、焼結構造体1を電子部品収納用パッケージとして用いる場合には、コンデンサ、IC素子のような電子部品を凹部15の底面に安定して載置することができる。
【0054】
また、焼結構造体1を電子部品収納用パッケージとして用いる場合には、電子部品を凹部15に載置した後に、蓋材を焼結構造体1に接合することによって電子部品を封止することができる。また、電子部品を封止する方法としては、樹脂ポッティングや樹脂モールドを行ってもよい。
【0055】
尚、第2の実施形態の変形例として、個片化後に第1セラミック部材3に形成される基体領域7の凹部15の構成が、凹部の壁面に当る枠体部分の収縮率が凹部の底面に当る平板部分の収縮率より大きく、且つ、第2のセラミック部材5の収縮率と同等である部分からなる構成であっても良い。
【0056】
上述の通り、各実施形態の焼結構造体の製造方法について説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。すなわち、本発明の要旨を逸脱しない範囲内であれば、種々の変更や実施の形態の組み合わせを施すことは何等差し支えない。
【0057】
例えば、図6〜8に示す積層体は、第1セラミック部材3に形成された凹部15がいずれも上面側に開口しているが、第2セラミック部材5の上面に、上面側に凹部15が開口する第1セラミック部材3を、第2セラミック部材5の下面に下面側に凹部15が開口する第1セラミック部材3をそれぞれ積層した構成としてもよい。
【0058】
また、さらに、この積層体における上面側の第1セラミック部材3の上面および下面側の第1セラミック部材3の下面にそれぞれ第2セラミック部材5を積層した構成としてもよい。
【0059】
また、焼成工程後において、焼成積層体における上面側に開口する凹部15および下面側に開口する凹部15の表面における所定領域にめっき加工を行ってもよい。
【符号の説明】
【0060】
1・・・焼結構造体
3・・・第1セラミック部材
5・・・第2セラミック部材
7・・・基体領域
9・・・捨て代領域
11・・・開口部
13・・・隔壁
15・・・凹部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1焼結材料を含み、複数の基体領域を2次元配列して設けるとともに、互いに隣り合う前記基体領域の間および最外周側に捨て代領域を設けた第1セラミック部材、ならびに前記第1焼結材料と同じ焼成条件における焼結収縮率が前記第1焼結材料よりも小さい第2焼結材料を含み、前記複数の基体領域に対応する複数の開口部を2次元配列して設けた第2セラミック部材を準備する準備工程と、
前記開口部が前記基体領域と上下に重なり合うように複数の前記第1セラミック部材および複数の前記第2セラミック部材を交互に積層して積層体を得る積層工程と、
前記積層体を焼成一体化する焼成工程と、
焼成一体化された前記積層体を前記捨て代領域および前記第2セラミック部材の部位で分断して、前記基体領域に対応する個片に分割する分割工程とを有する焼結構造体の製造方法。
【請求項2】
前記第1セラミック部材および前記第2セラミック部材に、熱膨張係数が等しいものを用いる、請求項1に記載の焼結構造体の製造方法。
【請求項3】
前記第2セラミック部材について、上面視して最外周側に位置する前記捨て代領域と上下に重なり合う部位の幅を、互いに隣り合う前記基体領域の間に位置する前記捨て代領域と上下に重なり合う部位の幅よりも大きくする、請求項1または請求項2に記載の焼結構造体の製造方法。
【請求項4】
前記第2セラミック部材の積層方向の厚みを前記第1セラミック部材の積層方向の厚みよりも薄くする、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の焼結構造体の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−115325(P2013−115325A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261952(P2011−261952)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】