説明

煉瓦積み外壁施工用配筋バンド金具

【課題】煉瓦積み外壁の補強用に外壁内に配置される鉄筋を躯体に固定するための配筋バンド金具であって、鉄筋への取り付け、及び当該金具の躯体への固定作業が容易で、且つ、取り付け耐久性が高く、地震発生時の外壁倒壊を防止しうるバンド金具を提供する。
【解決手段】上下に重なった2枚のL字片20,30が水平辺部21,31の端部の連結部40において連結された二重構造を有し、該連結部40を横筋の遊貫部41とし、垂直辺部23,33がそれぞれ互いに重なる凸部24,34、凹部25,35、取り付け孔26,36を有し、該取り付け孔26,36を介して内側の躯体にネジ止め固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は家屋の外壁として煉瓦を用いた煉瓦積み外壁の補強のために、該外壁内に配置される鉄筋を該外壁の内側の躯体に固定するために用いられる配筋バンド金具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、木造家屋の外壁の施工に際しては、外板下地を貼ってモルタルを塗る工法や、下地をしてタイルを貼る工法、サイディングを貼る工法等が一般的であったが、近年、施工後のメンテナンスが不要で風合いに優れた化粧煉瓦積み工法が広く用いられるようになってきた。
【0003】
往年の煉瓦積み外壁は単に煉瓦を積み上げただけであったため耐震性に劣っていたが、近年の煉瓦積み外壁は外壁内に鉄筋を縦横に走らせ、該外壁の内側の躯体と該鉄筋とを金具で連結することにより、優れた耐震性を持たせている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特許第3686346号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1にも開示されているように、外壁の補強用に外壁内に配置された鉄筋はバンド金具を用いて内側の躯体に取り付けられる。
【0006】
本発明の課題は、上記煉瓦積み外壁の補強用に外壁内に配置される鉄筋を躯体に固定するための配筋バンド金具であって、鉄筋への取り付け、及び当該金具の躯体への固定作業が容易で、且つ、取り付け耐久性が高く、地震発生時の外壁倒壊を防止しうるバンド金具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
煉瓦積み外壁の施工時に垂直方向及び/または水平方向に配置された鉄筋を、該外壁の内側に配置した躯体に固定するための配筋バンド金具であって、
垂直方向断面がL字形で、該L字の水平辺部に鉄筋を通す遊貫部を有し、L字の垂直辺部に該垂直辺部を躯体にネジ止めするための取り付け孔を有し、該垂直辺部が躯体との間に弾性構造を有することを特徴とする。
【0008】
本発明の配筋バンド金具としては、下記の態様を好ましく含む。
【0009】
垂直方向断面がL字の2枚のL字片を上下に重ね、該L字の水平辺部末端において互いに連結した二重構造を有し、該連結箇所を鉄筋の遊貫部とし、
上側及び下側のL字の垂直辺部にそれぞれ、L字の内側に向かって突出する凸部と、該凸部の中央からL字の外側に向かって突出する凹部と、該凹部の中央に形成された取り付け孔とを有し、
上記上側及び下側の垂直辺部の凸部、凹部、取り付け孔が互いに重なり合う構成である。
【0010】
垂直方向断面がL字のL字片であり、該L字の垂直辺部が外側にバネを有する構成である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、外壁の補強用鉄筋を躯体に固定するための配筋バンド金具が、該躯体に弾性構造を介して取り付けられるため、該バンド金具が躯体からはずれにくく、長期にわたって外壁の倒壊防止効果が継続する。
【0012】
また、配筋バンド金具が躯体との間に弾性構造を有し、さらに、鉄筋が該配筋バンド金具の遊貫部において余裕を持って取り付けられていることから、地震発生時には躯体の揺れを該弾性構造及び遊貫部の遊びが緩和するため、外壁に伝わる揺れが低減して地震による外壁の倒壊を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の煉瓦積み外壁用配筋バンド金具を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
図1は本発明の配筋バンド金具を用いて施工した外壁構造の一例を示す斜視図であり、図中、1は外壁、2は煉瓦、3は躯体、4は水抜き用モルタル、5は通気層、6は縦筋、7は縦バンド金具、8は横筋、9は横バンド金具、10は通気口、11は目地である。
【0015】
本例は、外壁1の内側に通気層5を介して躯体3を配置することで断熱性を高めた構造である。通気層3の下方には外側に向かって上面が下方に傾むくように水抜き用モルタル4が埋め込まれており、該通気層4内に侵入した雨水などを外壁1側に集め、外壁1の目地の一部を欠いて形成した通気口10より外壁1の外側に排出するように構成されている。
【0016】
外壁1は煉瓦2を千鳥配列で互いに目地11を介して積み上げて構成される。各煉瓦2には垂直方向に貫通する配筋孔2aが形成されており、所定の間隔をおいて垂直に立てられた縦筋6を該配筋孔2aに通すことで外壁1の強度を高めている。尚、縦筋6はさらに下方の基礎部分を構成するベースコンクリート(不図示)等に強固に取り付けられている。縦筋6には所定の高さごとに縦バンド金具7の一端が嵌め込まれ、該縦バンド金具7の他端は内側に配置された躯体3に固定されている。さらに外壁1には、所定の高さごとに水平方向に横筋8が介在し、該横筋8は横バンド金具9によって、縦筋7と同様に躯体3に連結されている。
【0017】
このように、縦筋6と横筋8とを外壁1内に縦横に走らせることにより、外壁1の強度が飛躍的に向上する。また、縦バンド金具7と横バンド金具9によってそれぞれ、縦筋6と横筋8とが躯体3に連結されていることによって、外壁1が外側に倒壊するのが防止される。また、縦バンド金具7及び横バンド金具9はそれぞれ、遊びを有して縦筋6と横筋8とに取り付けられていることと、外壁1と躯体3との間に通気層5が介在していることから、地震発生時などにおいては躯体3の揺れが外壁1に直接伝わらずに緩和されるため、外壁1の倒壊がより良く防止される。
【0018】
図1に示したように、本発明にかかる煉瓦積み外壁においては縦筋6と横筋8とを縦横に介在させながら煉瓦2を積み上げて外壁1を構成する。尚、煉瓦2の配置は図1に示した千鳥配列に限定されるものではなく、碁盤状に配列させても良く、また、煉瓦2の大きさや形状も場所によって適宜変更することで美観に優れた外壁1とすることができる。
【0019】
本発明の配筋バンド金具は図1の縦バンド金具7及び横バンド金具9の少なくとも一方に適用される。
【0020】
図2に本発明の配筋バンド金具の好ましい実施形態を示す。本例は横筋を固定するための横バンド金具であり、(a)は全体の斜視図であり、(b)は垂直辺部の垂直方向断面模式図である。図中、20,30はL字片、21,31は水平辺部、22,32はV字部、23,33は垂直辺部、24,34は凸部、25,35は凹部、26,36は取り付け孔、40は連結部、41は遊貫部である。
【0021】
本発明の配筋バンド金具は弾性素材を用いて構成され、図2の例においては、所定の形状に切断した後、凸部や孔部等必要な部位を形成した後、中央部で折り曲げて二重構造としている。弾性素材として具体的には金属や合成樹脂が挙げられるが、図1に示す如く外部に露出する場合があり、耐久性、耐候性に優れた素材が望ましい。具体的には金属、特に亜鉛メッキ材やステンレスが好ましく用いられる。
【0022】
図2のバンド金具は垂直方向断面がL字である2枚のL字片20,30を上下方向に重ね、水平辺部21,31の末端において連結部40によって連結した構造を有している。連結部40は図2に示すように、横筋よりも直径の大きな円弧状に形成して内側を横筋を通すための遊貫部41とする。
【0023】
また、垂直辺部23,33はそれぞれ、中央にL字の内側に突出する凸部24,34と、該凸部24,34の中央部からL字の外側に突出する凹部25,35と、該凹部25,35の中央に形成された取り付け孔26,36を有している。当該バンド金具は取り付け孔26,36を介して躯体にネジ止めされる。
【0024】
本例のバンド金具においては、垂直辺部23と33とが互いに重なり合うことが必要である。そのため、垂直辺部23に形成された凸部24、凹部25、取り付け孔26は、垂直辺部33に形成された凸部34、凹部35、取り付け孔36と全く同じサイズで形成してもかまわないが、凸部24を34より若干大きく、凹部25を35より若干小さく、取り付け孔26を36より若干小さく形成することにより、垂直辺部23と33との重合が容易になるため好ましい。
【0025】
本例のバンド金具は、図2に示すように垂直辺部23,33を重ねた状態で、取り付け孔26,36より躯体にネジ止めする。その結果、該凸部23,33が弾性力を発揮してネジを引き抜く方向に応力が働く。さらに、連結部40の弾性力によって重なったL字片20と30とが互いに離れる方向に応力が働くことによって、垂直辺部23が垂直辺部30から離れる方向、即ち、ネジを引き抜く方向に応力が働く。その結果、ネジには常に引き抜く方向の応力がかかるために、躯体との摩擦力によって経時的なネジの緩みが防止される。
【0026】
このように、本例においては、凸部23,33をそれぞれ形成した垂直辺部23,33を重ねたことで躯体との間に弾性構造を構成しており、当該弾性構造により躯体と垂直辺部との固定が補強されている上、地震発生時に生じる躯体の揺れが該弾性構造によって緩和される。
【0027】
さらに、本例のバンド金具は横筋を遊貫部41に遊貫して取り付けるため、横筋と遊貫部41との間に空間的な遊びが有り、地震発生時に強い揺れが生じた場合でも、躯体からバンド金具を介して伝わる揺れが該遊びによって緩和される。
【0028】
よって、上記弾性構造による揺れの緩和効果と相俟って、躯体から横筋に伝わる揺れが大幅に緩和され、外壁の倒壊防止が図られる。
【0029】
また、本例のバンド金具は二重になったL字片20,30の連結部40において横筋を遊貫し、L字片20,30の端部である垂直辺部23,33はいずれも躯体に固定される。よって、一端遊貫された横筋が当該バンド金具より外れることがない。
【0030】
図2のバンド金具は、一連の金属片の両端にそれぞれ、凸部24,34、凹部25,35、取り付け孔26,36を成形した後、中央で折り曲げて形成することにより、所定の弾性力が付与される。当該バンド金具は図2の状態で垂直辺部33の凸部34が垂直辺部23の凸部24の裏側に入り込んで互いに掛止しているが、L字片20,30に弾性があり、連結部40が円弧状に形成されているため、容易に外すことができる。従って、施工前には図2の状態で供給し、施工時に垂直辺部23を上部に引き上げることでL字片20と30との間隙を広げ、該間隙に横筋を挟むように通して遊貫部41に横筋を配置すればよい。次いで、水平辺部21が水平辺部31に接するように垂直辺部23を下げると、垂直辺部23の凸部24の裏側に垂直辺部33の凸部34が入り込んで互いに掛止し、作業者が手を添えていなくてもこの状態が保持される。また、この状態で、垂直辺部23の取り付け孔26は垂直辺部33の取り付け孔36に重なっているため、垂直辺部33を躯体の所定の位置に当接させて取り付け孔26よりネジ止めすることで当該バンド金具が容易に躯体に固定される。
【0031】
図2のバンド金具においては、水平辺部21,31の途中に、該水平辺部21,31の幅方向両端部が近接するように長手方向に沿って折り曲げて該幅方向の断面をV字状に成形したV字部22,32を形成することにより、水平辺部21,31の強度向上を図っている。
【0032】
図3,図4は本発明の配筋バンド金具の他の実施形態であり、縦筋用のバンド金具の構成例である。図中、51は水平辺部、52は遊貫部、53は垂直辺部、54,54’は取り付け孔、55,56はバネである。
【0033】
図3,図4においては、L字片の水平辺部51の一端側に縦筋よりも直径が大きい孔を形成して縦筋を遊貫するための遊貫部52とし、垂直辺部53には躯体に固定するための取り付け孔54が形成されている。さらに、本例においては、垂直辺部53の外側に弾性構造としてバネを配置しており、図3においては螺旋状バネ55、図4においては板バネ56を用いて構成した例である。尚、図4の板バネ56には、取り付け孔54に重なる取り付け孔54’が形成されている。
【0034】
図3,図4の例においては、取り付け孔54を介して垂直辺部53を躯体にネジ止めした場合、垂直辺部53の背後に配置したバネ55,56の弾性により、垂直辺部53は躯体より離す方向に応力を受け、その結果、ネジには常に引き抜く方向の応力がかかり、躯体との摩擦力によって経時的なネジの緩みが防止される。また、地震発生時に生じる躯体の揺れは、当該金具に伝わる際に該弾性構造によって緩和される。
【0035】
さらに、本例においても、縦筋の遊貫部52は縦筋との間に空間的な遊びが有るため、地震発生時に生じた躯体の揺れが当該金具を介して縦筋に伝わる際に、当該遊びによって緩和され、上記した弾性構造による揺れの緩和と相俟って、該揺れが大幅に低減されて外壁の倒壊が防止される。
【0036】
図3,図4のバンド金具は、少なくともバネは弾性素材で構成されるが、全体を耐久性、耐候性に優れた素材で構成することが好ましく、図2のバンド金具と同様に金属、特に亜鉛メッキ材やステンレスで好ましく構成される。
【0037】
上記図2〜図4の実施形態は本発明の好ましい構成例であるが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではなく、例えば、図2において、垂直辺部33の背面に図3,図4に用いたバネ55或いは56を取り付けて弾性構造とすることもできる。また、図3,図4において、図2に例示したようなL字片20,30を用いて垂直辺部23,33において弾性構造を構成する形態を取ることもできる。さらに、図5に、図2のバンド金具を縦バンド金具としても用いることができるように応用した形態を示す。図5のバンド金具においては、図2のバンド金具の水平辺部21,31の幅を広げ、それぞれに縦筋を遊貫するための遊貫部52a,52bを形成することにより、一種類のバンド金具で縦筋、横筋の両方の固定に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の配筋バンド金具を用いた煉瓦積み外壁の一例を示す斜視図である。
【図2】本発明の配筋バンド金具を横バンド金具に適用した実施形態を示す斜視図である。
【図3】本発明の配筋バンド金具を縦バンド金具に適用した実施形態を示す斜視図である。
【図4】本発明の配筋バンド金具を縦バンド金具に適用した実施形態を示す斜視図である。
【図5】本発明の配筋バンド金具を横バンド金具、縦バンド金具に併用しうる実施形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0039】
1 外壁
2 煉瓦
2a 配筋孔
3 躯体
4 水抜き用モルタル
5 通気層
6 縦筋
7 縦バンド金具
8 横筋
9 横バンド金具
10 通気口
11 目地
20,30 L字片
21,31,51 水平辺部
22,32 V字部
23,33,53 垂直辺部
24,34 凸部
25,35 凹部
26,36,54,54’ 取り付け孔
40 連結部
41,52,52a,52b 遊貫部
55,56 バネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
煉瓦積み外壁の施工時に垂直方向及び/または水平方向に配置された鉄筋を、該外壁の内側に配置した躯体に固定するための配筋バンド金具であって、
垂直方向断面がL字形で、該L字の水平辺部に鉄筋を通す遊貫部を有し、L字の垂直辺部に該垂直辺部を躯体にネジ止めするための取り付け孔を有し、該垂直辺部が躯体との間に弾性構造を有することを特徴とする煉瓦積み外壁施工用配筋バンド金具。
【請求項2】
垂直方向断面がL字の2枚のL字片を上下に重ね、該L字の水平辺部末端において互いに連結した二重構造を有し、該連結箇所を鉄筋の遊貫部とし、
上側及び下側のL字の垂直辺部にそれぞれ、L字の内側に向かって突出する凸部と、該凸部の中央からL字の外側に向かって突出する凹部と、該凹部の中央に形成された取り付け孔とを有し、
上記上側及び下側の垂直辺部の凸部、凹部、取り付け孔が互いに重なり合う請求項1に記載の煉瓦積み外壁施工用配筋バンド金具。
【請求項3】
垂直方向断面がL字のL字片であり、該L字の垂直辺部が外側にバネを有する請求項1に記載の煉瓦積み外壁施工用配筋バンド金具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−132105(P2007−132105A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−327034(P2005−327034)
【出願日】平成17年11月11日(2005.11.11)
【特許番号】特許第3860600号(P3860600)
【特許公報発行日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【出願人】(502280337)株式会社ライフ・モア (1)
【Fターム(参考)】