説明

照明付キーボード装置

【課題】導光板とキーキャップとの間に介在する部材の影響を受けることなく、輝度の均一性に優れたキーキャップの発光表示が可能な照明付キーボード装置を提供する。
【解決手段】照明付キーボード装置10において、キーキャップ12は透光性材料から形成されており、導光板22の出射面22aと対向する裏面22bには、キーキャップ12のつば部15の底面15bに対応付けて、導光板22の出射面22aからの光をつば部15の底面15bから入射させるための光路変換手段25が形成されており、光源から発せられた光を導光板22を介してキーキャップ12の方向に出射させるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の入力装置として用いられるキーボード装置に関し、特に、キーボード装置が有する各キーをその背面側から照明するバックライトユニットを備えた照明付キーボード装置に関する。
【背景技術】
【0002】
照明付キーボード装置は、暗い使用環境でもキーキャップ上の表示を明瞭に視認すること、あるいは、イルミネーションによる高級感を演出すること等を目的として、キーキャップの裏面側(すなわち、ユーザーに対して文字、符号等を表示する面の裏面側)から照明光を照射するバックライトユニットを備えたキーボード装置である(以下、ユーザーに対して文字、符号等を表示する面を文字等表示面ともいう)。
【0003】
従来、このような照明付キーボード装置として、各キー毎に発光デバイス(例えば、発光ダイオード)を設置するのではなく、キー数と比べて少数の発光デバイスからの出射光を案内する導光板を備えたバックライトユニットにより、導光板からの出射光によって各キーキャップを照明する構成が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
このような照明付キーボード装置は、各キー毎に発光デバイスを設置した構成と比較して、発光デバイスの使用量及び消費電力を削減することが可能であるため、特に、パーソナルコンピュータ用のキーボード装置等の比較的キー数の多いキーボード装置として有利なものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−260478号公報
【特許文献2】特開2010−129374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2に記載されているような従来の照明付キーボード装置において、導光板とキーキャップとの間には、通常、スイッチ押下機構(例えば、ラバースプリング)及びキー可動機構(例えば、スタビライザー)等を構成する各種部材が介在するため、これらの部材が照明装置からの照明光の障害物となり、導光板からの出射光の輝度を均一に設定しても、キーキャップを照らす照明光の輝度にばらつきが生じ、キーキャップの発光表示の品質を損なうという問題があった。
【0007】
また、このような従来の照明付キーボード装置において、輝度の均一な発光表示を得るためには、装置の開発段階において、部品組立状態での輝度の均一性の検証と、その結果に応じた導光板等の再設計が(場合によっては何度も)必要となり、開発期間の長期化及び開発コストの増大を招くといった問題があった。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、導光板とキーキャップとの間に介在する部材の影響を受けることなく、輝度の均一性に優れたキーキャップの発光表示が可能な照明付キーボード装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、または、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0010】
(1)光源から発せられた光を導光板を介してキーキャップの方向に出射させる照明付キーボード装置であって、前記キーキャップは透光性材料から形成されており、前記導光板の出射面に対向する裏面には前記キーキャップのつば部の底面に対応付けて、前記導光板の光を前記キーキャップのつば部の底面に向けて出射させるための光路変換手段が形成されていることを特徴とする照明付キーボード装置(請求項1)。
【0011】
(2)(1)項に記載の照明付キーボード装置において、前記キーキャップの前記つば部は、前記キーキャップの操作部の周囲から下方に広がるように傾斜させて設けられることを特徴とする照明付キーボード装置(請求項2)。
【0012】
(3)(1)または(2)項に記載の照明付キーボード装置において、前記光路変換手段は、光反射性の顔料を含む反射パターンからなることを特徴とする照明付キーボード装置(請求項3)。
【0013】
(4)(1)または(2)項に記載の照明付キーボード装置において、前記光路変換手段は、前記導光板に設けられた溝部からなり、前記溝部は、前記つば部の底面に向けて光路を変換させるための傾斜面を有することを特徴とする照明付キーボード装置(請求項4)。
【0014】
(5)(1)から(4)のいずれか1項に記載の照明付キーボード装置において、前記キーキャップの表面及び裏面の少なくとも一部に反射層を配置したことを特徴とする照明付キーボード装置(請求項5)。
【0015】
(6)(5)項に記載の照明付キーボード装置において、前記反射層は、光反射性の顔料を含む反射パターンからなることを特徴とする照明付キーボード装置(請求項6)。
【0016】
(7)(1)から(6)のいずれか1項に記載の照明付キーボード装置において、前記キーキャップの文字等表示面の裏面に凹凸部が形成されていることを特徴とする照明付キーボード装置(請求項7)。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、以上のように構成したため、導光板から出射した光を、キーキャップのつば部の底面に入射させ、キーキャップ自体を導光体として文字等表示面に導くことにより、導光板とキーキャップとの間に介在する部材の影響を受けることなく、輝度の均一性に優れた文字等の発光表示を得ることが可能となる。
【0018】
また、照明付キーボード装置の開発段階において、文字等の発光表示の輝度均一性の調整が不要となるか、または大幅に簡素化されるため、照明付キーボード装置の開発期間の短縮及び開発コストの低減に寄与するものとなる。
【0019】
また、このようにキーキャップ自体を導光体として利用する構成は、キーキャップに対して反射層を設ける等の手段により導光体としての機能を向上させ、容易に光の利用効率を向上させることが可能な点で、キーキャップと導光板との間の空間を導光路として利用する従来の構成と比較して有利なものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態における照明付キーボード装置の要部を示す断面図である。
【図2】図1に示す照明付キーボード装置において、導光板を裏面側から(図1に示す白抜き矢印A方向から)見た平面図である。
【図3】図1に示す照明付キーボード装置において、キーキャップの構成例を示す図である。
【図4】本発明の第1実施形態における照明付きキーボード装置の別の例の要部を示す断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態における照明付キーボード装置の要部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。図1は、本発明の第1実施形態における照明付キーボード装置10において、一つのキーに対応する部分を用いて、その要部を示す断面図である。
図1において、キーキャップ12は、パンタグラフ型のキー可動機構であるスタビライザー14を介して、バックプレート16上に支持されている。また、照明付キーボード装置10は、キーキャップ12の押し下げを電気的に検知するメンブレンシート20を備えており、メンブレンシート20が備える接点(図示は省略する)上には、スイッチ押下機構であるラバースプリング18が配置されている。そして、メンブレンシート20上には導光板22が配置されており、この導光板22は、その側端面に配置される発光ダイオード等の光源(図示は省略する)及び光源の駆動装置(図示は省略する)等とともに、照明付キーボード装置10のバックライトユニットを構成する。
【0022】
本実施形態において、バックプレート16からキーキャップ12へ向かう方向を上方、逆に、キーキャップ12からバックプレート16へ向かう方向を下方という。
【0023】
キーキャップ12は、透明合成樹脂等の透光性材料から形成されており、ユーザーの指等により押圧される操作部13と、操作部13の周囲から下方に広がるように傾斜させて設けられるつば部15とを有している。照明付キーボード装置10において、つば部15の底面15bは、キーキャップ12の静止状態において導光板22の上面である出射面22aと略平行となるように形成されている。そして、操作部13の表面13aは、後述するように、ユーザーに対して文字または符号等が発光表示される文字等表示面として形成される。
【0024】
導光板22には、図2にその態様の一例を詳細に示すように、出射面22aと対向する裏面22bに、キーキャップ12のつば部15の底面15bに対応づけて、光路変換手段が設けられている(図2に示す破線28は、つば部15の底面15bの中心線に相当する)。本実施形態において、光路変換手段は、光反射性の顔料を含む光学白色インクを印刷してなる反射パターン25である。
【0025】
尚、照明付キーボード装置10では、メンブレンシート20上に導光板22を配置する構成としたため、導光板22には、ラバースプリング18用の逃げ孔31、及び、スタビライザー14をバックプレート16上に係止するためのツメ部用の逃げ孔32等の必要な開口部が設けられている。また、導光板22は、図1に示すように、キーキャップ12の周囲の隙間に対応する領域に、例えば黒色インクを印刷してなる遮光パターン27が形成されていてもよい。
【0026】
さらに、照明付キーボード装置10において、キーキャップ12は、透明合成樹脂等の透光性材料から形成されており、キーキャップ12のつば部15には、図3の拡大図Bに示すように、その表面15aに反射層34が形成されている。照明付キーボード装置10では、さらに、反射層34上に遮光層35が形成されている。本実施形態において、反射層34は、光反射性の顔料を含む光学白色インクを印刷してなる反射パターンであり、遮光層35は、黒色インクを印刷してなる遮光パターンである。
【0027】
また、本発明は、キーキャップ12の文字等表示面13aの構成によって限定されるものではないが、例えば、図3の拡大図Cに示すように、光透過性の白色インクにより下地層36を印刷形成した上に黒色インクにより遮光層35を印刷して形成され、その際、遮光層35の開口部37により、発光表示する文字等のパターンが形成されるものであってもよい。
【0028】
以上のように構成された照明付キーボード装置10では、図1に黒矢印で模式的示すように、図示を省略する光源から発せられ、導光板22に入射してその内部を伝播する光が、反射パターン25によって反射されて出射面22aから出射する。そして、この出射光は、キーキャップ12のつば部15の底面15bからキーキャップ12内に入射し、つば部15の表面15aでの反射等を介してキーキャップ12の内部を伝播し、操作部13に導かれる。そして、操作部13に導かれた光は、操作部13の裏面13b等から上方に散乱され、操作部13の表面13aに設けられた遮光層35の開口部37から出射することによって、文字等の発光表示が実現する。
【0029】
このように、照明付キーボード装置10では、キーキャップ12自体を導光体として機能させることにより、導光板22からの出射光を、ラバースプリング18、スタビライザー14等の導光板22とキーキャップ12との間に介在する部材の影響を受けることなく、操作部13に導くことができるため、文字等の輝度均一性に優れた発光表示が可能となる。
【0030】
その際、照明付キーボード装置10では、つば部15が操作部13の周囲から下方に広がるにように傾斜させて設けられており、かつ、つば部15の表面15aに反射層34を設けたことにより、つば部15の底面15bから入射した光を、効率良く操作部13に導くことが可能となり、ひいては発光表示の表示品質を向上させることができる。
【0031】
また、図2に示す反射パターン25の形状及び配置構成等はその可能な態様の一例であって、照明付キーボード装置10の光路変換手段として機能する反射パターン25は、キーキャップ12のつば部15の底面15bに対応付けて形成され、導光板22内を伝播する光の光路を変換して導光板22の出射面22aから出射させ、その出射光をつば部15の底面15bから入射させるものである限り、その形状及び配置構成等は任意の適切なものとすることができる。
【0032】
ここで、照明付キーボード装置10では、導光板22をメンブレンシート20上に配置する構成とした。この構成は、導光板22からの出射光を、容易かつ直接的にキーキャップ12に入射させることが可能である点で有利なものであるが、本実施形態における照明付キーボード装置10は、図4に示す照明付キーボード装置10´のように、導光板22をバックプレート16の下側に配置する構成としてもよい。
【0033】
この場合でも、例えば、バックプレート16及びメンブレンシート20に、反射パターン25によって上方に向けられる光の通過部(開口部)を設けることによって、導光板22からの出射光を直接キーキャップ12に入射させることができる。また、設計上の理由等により、例えばメンブレンシート20にそのような通過部を設けることができず、導光板22からの出射光をメンブレンシート20に透過させた後、キーキャップ12に入射させる場合でも、照明付キーボード装置10´は、導光板22からの出射光を、ラバースプリング18、スタビライザー14等の導光板22とキーキャップ12との間に介在する部材の影響を受けることなく、操作部13に導くことができる点で、図1に示す照明付キーボード装置10と同様の作用効果を奏するものである。
【0034】
次に、図5を参照して、本発明の第2実施形態における照明付キーボード装置40について説明する。但し、照明付キーボード装置40は、図1に示す照明付キーボード装置10に対して、導光板42の光路変換手段の構成及びキーキャップ52の操作部43の裏面43bの構成が相違するのみであるため、対応する構成要素には同一の符号を付すとともに、重複する部分の説明は適宜省略して、主としてその相違点について説明する。
【0035】
図5に示す照明付キーボード装置40において、導光板42の裏面42bに、キーキャップ52のつば部15の底面15bと対応付けて設けられる光路変換手段は、導光板42に設けられた溝部45からなる。溝部45は、導光板42内を伝播する光をつば部15の底面15bに向けて光路変換させるために、導光板42の出射面42aに対して傾斜する傾斜面45aを有するように設けられる。
【0036】
また、照明付キーボード装置40では、キーキャップ52の文字等表示面(操作部43の表面)43aの裏面43bに凹凸部44が形成されており、さらに、凹凸部44を含む裏面43bに対して、光反射性の顔料を含む光学白色インクが印刷されている(拡大図D参照)。
【0037】
本実施形態における照明付キーボード装置40は、以上の構成をもって、第1実施形態における照明付キーボード装置40と同等の作用効果を奏することに加えて、光路変換手段を導光板42に設けられる溝部45により構成したことにより、傾斜面45aの角度等を調整することによって、導光板42の出射面42aからの出射光の、キーキャップ52への入射効率を最適化することが可能となる。
尚、溝部45の形状は、図5に示す形状に限定されるものではなく、任意のプリズム形状等の適切な形状とすることができる。
【0038】
さらに、キーキャップ52の文字等表示面43aの裏面43bを、上記のように構成したことによって、凹凸部44単独での散乱作用と凹凸部44を含む裏面43bに白色印刷を施したことによる相乗効果をもって白色ドット印刷と同等の散乱作用を有するため、操作部43に導かれた光を文字等表示面43aに向けて効果的に散乱し、より表示品質の高い文字等の発光表示を実現することができる。
【0039】
以上、本発明を好ましい実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述した構成に限定されるものではない。例えば、図5に示す照明付キーボード装置40において、キーキャップ52の文字等表示面43aの裏面43bは、凹凸部44のみを備えるものであってもよく、また、凹凸部44を有することなく、光学白色インクが(例えばドット状に)印刷されるものであってもよい。また、このような照明付キーボード装置40に係る文字等表示面43aの裏面43bの構成は、全て図1及び図4に示す照明付キーボード10、10´に対しても適用可能である。
【0040】
また、図4に示す照明付キーボード装置10´の導光板22の配置構成は、図5に示す照明付キーボード装置40に対しても適用可能である。さらに、本発明に係る照明付キーボード装置において、メンブレンシート20を、導光板22、42として兼用することも可能である。
【符号の説明】
【0041】
10,10´,40:照明付キーボード装置、12,52:キーキャップ、15:つば部、15b:底面、22,42:導光板、22a,42a:出射面、22b,42b:裏面、25:反射パターン(光路変換手段)、45:溝部(光路変換手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から発せられた光を導光板を介してキーキャップの方向に出射させる照明付キーボード装置であって、前記キーキャップは透光性材料から形成されており、前記導光板の出射面に対向する裏面には前記キーキャップのつば部の底面に対応付けて、前記導光板の光を前記キーキャップのつば部の底面に向けて出射させるための光路変換手段が形成されていることを特徴とする照明付キーボード装置。
【請求項2】
前記キーキャップの前記つば部は、前記キーキャップの操作部の周囲から下方に広がるように傾斜させて設けられることを特徴とする請求項1に記載の照明付キーボード装置。
【請求項3】
前記光路変換手段は、光反射性の顔料を含む反射パターンからなることを特徴とする請求項1または2に記載の照明付キーボード装置。
【請求項4】
前記光路変換手段は、前記導光板に設けられた溝部からなり、前記溝部は、前記つば部の底面に向けて光路を変換させるための傾斜面を有することを特徴とする請求項1または2に記載の照明付キーボード装置。
【請求項5】
前記キーキャップの表面及び裏面の少なくとも一部に反射層を配置したことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の照明付キーボード装置。
【請求項6】
前記反射層は、光反射性の顔料を含む反射パターンからなることを特徴とする請求項5に記載の照明付キーボード装置。
【請求項7】
前記キーキャップの文字等表示面の裏面に凹凸部が形成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の照明付キーボード装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−186122(P2012−186122A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−50237(P2011−50237)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(000114215)ミネベア株式会社 (846)
【Fターム(参考)】