説明

照明器具

【課題】トンネルの内壁に取り付けられるような照明器具において、雰囲気温度によらず、トンネル内部の照度を維持する。
【解決手段】器具本体2内に収納した放電ランプ4は制御盤により調光信号が指示されていても、周囲温度が所定の温度よりの低い場合は調光信号を無視して点灯させる。こうすることによって、周囲温度が低くランプの効率が低下する場合であっても、所望の照度でトンネルを照明することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寒冷地に使用される照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネル用照明器具は、光源として例えば低圧ナトリウムランプや蛍光ランプなどがよく知られている。そして、比較的少数の照明器具によって、主として路面を効率よくかつ、その通行方向に沿ってなるべく連続する一様な明るさで照明できるように設計されている。このため、近年では長手方向により効率よく照明するために光源に比較的長い蛍光ランプを用いる照明器具が用いられる。
【0003】
しかしながら、蛍光ランプは周囲温度によって効率が異なることが知られている。例えば、周囲温度が20〜25℃において最も効率よく発光することができるが、周囲温度が高いときや低い時ではランプ光束が非常に低下する。特に、トンネル照明器具のように屋外で用いられる器具においては、周囲温度の影響を受けやすく、ランプ効率が変化しやすいという問題があった。特に、ランプを調光点灯して使用する場合では、ランプへの入力電力が小さいため、ランプ自身も発熱しにくく、所定の照度を得られない問題があった。
【0004】
このため特開2004−259669号公報には、トンネル用照明器具のように密閉型の器具であって、雰囲気温度によらず、光源ランプの照度を維持し、照明効率を向上させることを目的として、放電ランプの最冷部の近傍にパネルヒータを設け、パネルヒータは放電ランプが調光点灯のときのみ動作させる照明器具が開示されている。
【特許文献1】特開2004−259669号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような照明器具のように、ヒータを取付けることによって器具内の配線が煩雑になり、部品が増加するため経済的に好ましくない。
【0006】
そこで、本発明は、周囲温度によらずに照明効率を維持することのできる照明器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明の照明器具は、開口端を有するシャーシ、このシャーシに装着される投光開口を有する蓋体およびこの蓋体の投光開口に配設される透光性カバーを備えた器具本体と;器具本体内に配設された放電ランプと;器具本体内に配設され、外部からの調光信号によって放電ランプを調光点灯可能な点灯装置と;を具備した照明器具であって、器具内部が所定温度より低下したときには、調光信号を無視する制御を行うこと特徴とする。
【0008】
本発明および以下の各発明において、特に指定しない限り、用語の定義および技術的な意味は次による。
【0009】
放電ランプは、蛍光ランプ、水銀灯、メタルハライドランプおよび無電極放電ランプなどの放電によって光を放射するランプであることを許容する。特に、低温時に効率の低下する蛍光ランプおよび無電極放電ランプに適応する事が好適である。
【0010】
器具内部の温度の低下は例えば、例えばバイメタルなどの熱応動素子のような温度スイッチまたは温度センサとスイッチを組み合わせたものにて検知する。そうして、所定温度以下であることが検知されると調光信号を無視するように制御を行う。この制御は器具内部に温度スイッチを備えて行うことや、器具外部に設置される制御盤などで行うこともできる。このとき、器具内部に温度スイッチなどが無くても器具外部の温度などを検知して器具内部の温度とみなして制御することも許容する。
【0011】
請求項2の発明の照明器具は、開口端を有するシャーシ、このシャーシに装着される投光開口を有する蓋体およびこの蓋体の投光開口に配設される透光性カバーを備えた器具本体と;器具本体内に配設された放電ランプと;器具本体内に配設され、外部からの調光信号によって放電ランプを段階的に調光点灯可能な点灯装置と;を具備した照明器具であって、器具内部が所定温度より低下したときには、調光信号よりも段階的に調光出力を大きくした制御を行うこと特徴とする。
【0012】
段階的に調光可能とは、例えば安定器の出力が100%、75%、50%、25%となるように段階的に制御できるような点灯装置を用いて、例えば、調光信号が50%の出力を要求している場合に器具内部の温度が規定値よりも低くなっていた場合に点灯装置はランプの出力が75%となるように制御するものである。この制御もまた器具内部で行っても、器具外部に設置される制御盤などで複数台一括に制御を行っても構わない。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、周囲が低温であって器具内部の温度が上昇しないときには、ランプの調光点灯信号を無視して、または、調光信号よりも一段高出力のレベルでランプを点灯させるので、ランプの温度特性による効率の低下を見込んでランプを点灯させているため、季節に因らず所望の照度で照明することができる照明器具を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のトンネル用照明器具の実施形態を図1および図2を参照して説明する。なお、これらの図中、同一または相当部分には同一符号を付して、重複した説明の記載は省略または簡略化している。
【0015】
図1は本発明の実施形態に係る例えばトンネル用の照明器具の正面図、図2は、器具本体2内部の配線図である。この図1に示すように照明器具は、例えばステンレス製等の密閉形の器具本体2内に、その投光開口に対向するように反射体3を配設し、この反射体3に光学的に対向するように屈曲形蛍光ランプ4を配設している。
【0016】
上記器具本体2は、例えばJIS C8140で規定する防噴流用器具本体等の密閉形に構成されており、如何なる方向からの水の直接噴流を受けても有害な影響が出ないように構成されており、複数の取付脚2a,2a,…を備えたシャーシ2bの投光開口端に、パッキン2cを介してほぼ長方形の投光開口を有する蓋体2dを装着し、この蓋体2dの投光開口に透光性カバー2eを水密かつ気密に嵌合させ、シリコン系等の接着剤2fにより固着している。
【0017】
蓋体2cは、ヒンジ2gによりシャーシ2bに開閉可能に取り付けられ、ヒンジ2fの反対側にシャーシ2bに設けられたラッチ2hによって閉塞された状態が保持される。このとき、蓋体2cによる閉塞縁はパッキンにより水気や粉塵が浸入しないような処理が施されている。また、透光性カバー2eには、透明なガラス板が使用されている。
【0018】
シャーシ2bの各取付脚2aには、ネジ穴2e1が形成されており、このネジ穴2e1を利用してトンネル内壁6などに設けられたステー等の取り付け装置6aにネジ止めによって固定される。
【0019】
そして、このように構成された器具本体2内部には、主反射体3を配設している。主反射体3は長手方向横断面が凹弧面をなす内面を細長い反射面に形成している。なお、主反射面の長手方向横断面の形状は、凹状であればよく、曲面状、平面の組合せまたは曲面と平面の組合せ等どのような形状であってもよい。但し、長手方向に亘ってその主たる部分が同じ断面形状になっていることが好ましい。また、反射面は鏡面または梨地などに仕上げられており設置場所などに応じて所望の配光が得られるような形状をなしている。
【0020】
さらに、主反射体3の内側には、屈曲形蛍光ランプ4を配設している。屈曲形蛍光ランプ4は、その軸方向一端側に設けられた片口金4aをランプソケットに嵌め込むことで固定されている。
【0021】
屈曲形蛍光ランプ4は、ガラス製等の放電容器、蛍光体層、一対の電極、片口金4a等により構成されている。放電容器は、ソーダライムガラス、鉛ガラス等の軟質ガラスや硬質ガラス、石英ガラス等の例えば1本のガラス製円管を一平面上でU字状に折曲して1本のU字状放電路を形成しており、一対の管状部4b,4bおよび連結部4cを有し、1つの連続放電路の両端をフレアステムによって封止して軸方向一端部に片口金4aを形成している。したがって、これら管状部4b,4bと連結部4cは一平面上に形成されている。
【0022】
また、器具本体2内部の主反射体3の配設されていない場所には、安定器6および端子台7が配置される。端子台7は、通常トンネル外部に設置されている電源盤10からの200V電源10aの供給、調光信号10bおよび点滅信号10cの入出力がされる。安定器6は、電源端子6a、6bに電源電圧200Vが供給され、点滅信号10cによってリレーR1がオンしているときにランプ4を点灯させる。調光信号10bが供給されるとサーマルスイッチSを介して調光リレーR2をオンさせることによって、安定器の調光端子6c、6dが短絡され安定器6は調光動作を行う。本実施形態の場合、調光とは50%の出力を得るための制御の場合の例である。また、端子台7を介して調光信号10b、点滅信号10cは隣の器具2�に送信される。
【0023】
電源盤10はトンネル外に設置され、時刻や交通状況などによってトンネルの各照明器具に点灯・消灯および調光の支持を行う。例えば、昼間は、トンネル内の全ての照明器具を点灯させるようにして、トンネル内外の照度差を最小限として運転者へのトンネル挿入の違和感が低減できるようにし、夜などは、トンネル内の照明器具を間引き点灯や調光点灯をして省エネするようにし、更には、交通量の少ない場合であっても最小限の照明にとどめるためランプを調光させて点灯するなどしてトンネル全体の照明器具の照明制御を行っている。
【0024】
サーマルスイッチSは、器具内部の温度が5℃以下であると開放するものを使用している。図3に本実施形態で使用している屈曲形蛍光ランプ4の周囲温度―全光束の温度特性グラフを示す。図3によれば、ランプ最冷部の周囲温度が20〜40℃において全光束が高く効率が最適となるが、温度が5℃以下となると全光束は最適温度の50%以下となっている。このため、トンネル電源盤からの調光信号が50%の調光信号を入力されたときでも、器具内の温度が5℃以下であるときにはランプを調光させない制御を行うことによって、ランプの出力光束が50%程度を得ることができ、所望の明るさでトンネルを照明することを可能とした。
【0025】
これまでは周囲温度低下し、さらに、調光点灯によってランプや安定器からの発熱が期待できないような場合、ランプの光束が著しく低下してしまい、所望の照度が得られない虞があったが、本実施形態によれば簡単な方法で、所望の照度を得ることができる。また、周囲温度が低下しているときでも、調光制御を行わず、全光点灯している場合であっては、ランプや安定器からの発熱が見込まれ、密閉された器具内においては、周囲温度が徐々に上昇していき最適温度での点灯が期待できる。
【0026】
さらに、他の実施形態として、器具本体2の内部やサーマルスイッチS設けず、例えば電源盤10の内部に温度センサを設け、調光信号端子の間に温度センサを接続して温度が所定温度以下の場合で、調光信号の発振を停止する制御を行うこともできる。
【0027】
また、温度センサを設置することのほか、カレンダー機能やタイマ機能を利用して周囲温度が低下する時期や時間を予測して、例えば冬期の夜間には調光動作を禁止するなどの制御を行うことによっても実施することができる。
【0028】
次に、第二の実施形態を図4を参照して説明する。図4のトンネル器具は、内部に2灯の蛍光ランプ41,42を備えている。外部の電源盤10からは、調光信号として2灯を全点灯する(100%調光)、一方のランプのみを点灯させる(50%調光)、一方のみのランプを50%調光にて点灯させる(25%調光)の3段階の調光レベルにて調光を行うことができる。これらの調光レベルは交通量や時間帯によって電源盤にて調光レベルが決められる。そうして、電源盤内部に温度センサ(図示しない)を設けこの温度を器具内部の温度とみなして制御を行い、そうして例えば、調光レベルが25%調光の時間帯であって、温度センサの検知温度が5℃以下であった場合には、実際の調光レベルを50%調光となるように調光制御を行う。このように調光制御することによって、ランプの温度特性による効率の低下を見込んでランプを点灯させることができ、所望の明るさを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1の実施形態照明器具の正面図。
【図2】同じく照明器具内部の回路配線を示す図。
【図3】屈曲形蛍光ランプの周囲温度―全光束の温度特性グラフ。
【図4】本発明の第2の実施形態照明器具の正面図。
【符号の説明】
【0030】
2…器具本体 3…主反射体 4…光源ランプ(屈曲形蛍光ランプ) 6・・・安定器 S・・・サーマルスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口端を有するシャーシ、このシャーシに装着される投光開口を有する蓋体およびこの蓋体の投光開口に配設される透光性カバーを備えた器具本体と;
器具本体内に配設された放電ランプと;
器具本体内に配設され、外部からの調光信号によって放電ランプを調光点灯可能な点灯装置と;
を具備した照明器具であって、器具内部が所定温度より低下したときには、調光信号を無視する制御を行うこと特徴とする照明器具。
【請求項2】
開口端を有するシャーシ、このシャーシに装着される投光開口を有する蓋体およびこの蓋体の投光開口に配設される透光性カバーを備えた器具本体と;
器具本体内に配設された放電ランプと;
器具本体内に配設され、外部からの調光信号によって放電ランプを段階的に調光点灯可能な点灯装置と;
を具備した照明器具であって、器具内部が所定温度より低下したときには、調光信号よりも一段調光出力を大きくした制御を行うこと特徴とする照明器具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−216498(P2006−216498A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−30557(P2005−30557)
【出願日】平成17年2月7日(2005.2.7)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】