説明

照明装置及びプロジェクタ

【課題】小型な構成により効果的にスペックルノイズを低減させるための照明装置等を提供すること。
【解決手段】コヒーレント光を供給する光源部11と、第1偏光を反射させ、第2偏光を透過させる偏光分離部である偏光ビームスプリッタ12と、偏光分離部から照明方向以外の方向へ進行した光を反射させる反射部である反射ミラー18と、偏光分離部及び反射部の間に設けられ、入射する光のうちの一部を透過させ、他の一部を反射させる部分反射部である部分反射ミラー16と、偏光分離部及び部分反射部の間に設けられ、入射する光の偏光状態を変化させる波長板である1/4波長板15と、を有し、部分反射部及び反射部は、部分反射部から偏光分離部を経て照明方向へ出射される光と、部分反射部から反射部、部分反射部及び偏光分離部を順次経て照明方向へ出射される光との間で光路差を生じさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明装置及びプロジェクタ、特に、レーザ光を用いる照明装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
コヒーレント光であるレーザ光を拡散面に照射させると、明点及び暗点がランダムに分布するスペックルノイズと呼ばれる干渉模様が現れることがある。スペックルノイズは、拡散面の各点で拡散した光同士がランダムに干渉し合うことにより発生する。画像を表示する際にスペックルノイズが認識されると、ぎらぎらとするちらつき感を観察者へ与えるため、画像観賞へ悪影響を及ぼすこととなる。スペックルノイズを低減させるための技術は、例えば、特許文献1及び特許文献2に提案されている。特許文献1にて提案される技術は、光路中に設けられた拡散板を高速回転させることにより、スペックルパターンを変化させるものである。複数のスペックルパターンを重畳させることで、特定のスペックルパターンの認識をさせにくくする。特許文献2にて提案される技術は、略平行に配置された反射ミラーと部分反射ミラーとの間で光を往復させることにより互いに異なる光路長を経た光を出射させるものである。コヒーレント長に相当する光路差を持たせた光を出射させることにより、光の干渉性を低下させる。
【0003】
【特許文献1】特開平7−297111号公報
【特許文献2】特開平5−196869号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光路中に拡散板を設ける構成の場合、拡散板での拡散によって光の損失が生じることとなる。特許文献1に提案される技術では比較的大型な拡散板を高速回転させることから、消費電力の増大、駆動音の増大も生じることとなる。このため、拡散板を高速回転させる技術は、特に民生用の機器に対してそのまま適用することは困難である。特許文献2に提案される技術の場合、ミラーの垂線に対して傾きを持たせた光を入射させることにより、2枚のミラーの間において光は斜めに進行しながら往復する。2枚のミラーの間において斜めに光を進行させながら光束を分割していくことで、光束を分割させるに従い光の出射領域が増大することとなる。光の出射領域が増大すると、照明光を利用する装置全体を大型化させる必要が生じる。特に、光束の分割数を多くするほど、効果的にスペックルノイズを低減させることが可能となる一方で、構成が大型化することとなる。従来、光路差を持たせた光を出射させる構成は、特許文献2にて提案される構成以外にも種々提案されている。例えば、互いに異なる長さのフライアイレンズを用いる構成(特公昭60−230629号公報参照)、ステップ型の反射ミラーを用いる構成(特開2000−199872号公報参照)、ビームスプリッタ及びプリズムからなるユニットを並列させる構成(特開2001−296503号公報参照)、ファイババンドルを用いる構成等がある。これらのいずれの場合も、光束の分割数の増加とともに光学素子の増加或いは大型化が必要になるため、スペックルノイズを効果的に低減可能であってかつ小型な構成を実現することが困難である。以上のように、従来の技術によると、小型な構成により効果的なスペックルノイズの低減を図ることが困難であるという問題を生じる。本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、小型な構成により効果的にスペックルノイズを低減させるための照明装置、及びその照明装置を用いるプロジェクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明によれば、コヒーレント光を供給する光源部と、第1の振動方向を有する第1偏光を反射させ、第1の振動方向に略直交する第2の振動方向を有する第2偏光を透過させることで第1偏光と第2偏光とを分離させる偏光分離部と、偏光分離部から特定の照明方向以外の方向へ進行した光を反射させる反射部と、偏光分離部及び反射部の間に設けられ、入射する光のうちの一部を透過させ、他の一部を反射させる部分反射部と、偏光分離部及び部分反射部の間に設けられ、入射する光の偏光状態を変化させる波長板と、を有し、偏光分離部及び反射部は、部分反射部から偏光分離部を経て照明方向へ出射される光と、部分反射部から反射部、部分反射部及び偏光分離部を順次経て照明方向へ出射される光との間で光路差を生じさせることを特徴とする照明装置を提供することができる。
【0006】
偏光分離部及び反射部の間に部分反射部を設けることで、偏光分離部から部分反射部へ入射する光束、及び反射部から部分反射部へ入射する光束を分割させる。部分反射部から直接照明方向へ出射する光と、部分反射部から反射部を経た後照明方向へ出射する光とで光路差を生じさせるため、光の干渉性を低下させることができる。本発明では部分反射部の透過反射特性に応じて光束の分割数を決定できるため、小型な構成において光束の分割数を増加させることができる。分割された光束はいずれも偏光分離部の出射面から出射させるため、効果的なスペックルノイズの低減と、照明領域の拡大の低減とが可能となる。これにより、小型な構成により効果的にスペックルノイズを低減させるための照明装置を得られる。
【0007】
また、本発明の好ましい態様としては、偏光分離部及び反射部は、コヒーレント光が持つコヒーレント長の半分の長さ又はそれ以上の間隔で配置されることが望ましい。かかる構成により、コヒーレント長に相当する光路差を持たせた光を出射させることが可能となる。これにより、さらに効果的にスペックルノイズを低減させることができる。
【0008】
また、本発明の好ましい態様としては、偏光分離部及び反射部は、共通の光軸上に配置されることが望ましい。光軸に沿って光を進行させることが可能であれば、光の出射領域の拡大をさらに低減できる。光を進行させる領域も小さくできるため、照明装置全体を小型にすることができる。これにより、さらに小型な構成とし、かつ照明領域の拡大を低減できる。
【0009】
また、本発明の好ましい態様としては、部分反射部及び反射部の間で光を伝播させる導光部を有することが望ましい。これにより、部分反射部及び反射部の間で伝播させる光の損失を低減できる。
【0010】
また、本発明の好ましい態様としては、導光部は、ロッドインテグレータを備えることが望ましい。これにより、ロッドインテグレータ内部において光を伝播させることができる。
【0011】
また、本発明の好ましい態様としては、部分反射部及び反射部の間で伝播させる光を透過させ、かつ屈折率が可変である屈折率可変素子を有することが望ましい。屈折率可変素子にて屈折率を変化させながら部分反射部及び反射部の間にて光を伝播させることで、さらに光路差に変化を持たせることが可能となる。これにより、さらに効果的にスペックルノイズを低減させることができる。
【0012】
また、本発明の好ましい態様としては、複数の部分反射部を有することが望ましい。複数の部分反射部を用いることにより、各光束の強度を平坦化させることも可能となる。これにより、さらに効果的にスペックルノイズを低減させることができる。
【0013】
また、本発明の好ましい態様としては、反射部は、光を全反射させるプリズム部を備えることが望ましい。プリズム部を用いることで、偏光分離部から特定の照明方向以外の方向へ進行した光を反射させることができる。全反射を用いることにより、反射による光の損失を低減させることが可能となる。これにより、高い効率で光を出射可能な照明装置を得られる。
【0014】
さらに、本発明によれば、上記の照明装置と、照明装置からの光を画像信号に応じて変調する空間光変調装置と、を有することを特徴とするプロジェクタを提供することができる。上記の照明装置を用いることにより、小型な構成により効果的にスペックルノイズを低減させることが可能となる。これにより、小型な構成によりスペックルノイズが少なく高品質な画像を表示することが可能なプロジェクタを得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に図面を参照して、本発明の実施例を詳細に説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は、本発明の実施例1に係る照明装置10の概略構成を示す。照明装置10は、白抜き矢印で示す照明方向へ光を出射させる。光源部11は、照明方向に略直交する方向へ向けて配置されている。光源部11は、コヒーレント光であるレーザ光を供給する。光源部11により供給されるレーザ光は、例えばs偏光である。s偏光は、第1の振動方向を有する第1偏光である。光源部11としては、半導体レーザ、半導体レーザ励起固体(Diode Pumped Solid State、DPSS)レーザや、固体レーザ、液体レーザ、ガスレーザ等を用いることができる。光源部11は、レーザ光の波長を変換する波長変換素子、例えば、第二高調波発生(Second−Harmonic Generation、SHG)素子を備える構成としても良い。
【0017】
偏光ビームスプリッタ12は、光源部11からのレーザ光が入射する位置に設けられている。偏光ビームスプリッタ12は、2つの直角プリズムを貼り合わせて構成されている。2つの直角プリズムの間には、誘電体多層膜13がコーティングされている。偏光ビームスプリッタ12は、誘電体多層膜13において、s偏光を反射させ、p偏光を透過させることで、s偏光とp偏光とを分離させる偏光分離部である。p偏光は、第1の振動方向に略直交する第2の振動方向を有する第2偏光である。なお、偏光ビームスプリッタ12の入射面及び出射面には、反射防止膜(ARコート)をコーティングしても良い。
【0018】
偏光ビームスプリッタ12から見て照明方向とは逆側には、1/4波長板15、部分反射ミラー16、ロッドインテグレータ17、及び反射ミラー18が設けられている。偏光ビームスプリッタ12から反射ミラー18までの各部は、いずれも共通の光軸AX上に配置されている。偏光ビームスプリッタ12は、光軸AXに対して誘電体多層膜13が略45度をなすように配置されている。部分反射ミラー16は、偏光ビームスプリッタ12及び反射ミラー18の間に設けられている。1/4波長板15は、偏光ビームスプリッタ12及び部分反射ミラー16の間に設けられている。ロッドインテグレータ17は、部分反射ミラー16及び反射ミラー18の間に設けられている。
【0019】
1/4波長板15は、p偏光とs偏光との間で90度(π/2)の位相差を生じさせる波長板であって、入射する光の偏光状態を直線偏光から円偏光へ、円偏光から直線偏光へ変化させる。1/4波長板15は、直線偏光の偏光軸に対して光学軸が45度をなすように配置されている。部分反射ミラー16は、入射する光のうちの一部を透過させ、他の一部を反射させる部分反射部である。例えば、部分反射ミラー16は、入射する光のうちの50%を透過させ、他の50%を反射させるハーフミラーである。部分反射ミラー16は、ガラス等の透明部材からなる平行平板に誘電体多層膜を成膜することにより形成できる。
【0020】
ロッドインテグレータ17は、部分反射ミラー16及び反射ミラー18の間で光を伝播させる導光部である。ロッドインテグレータ17は、ガラスや樹脂等の透明部材からなる柱状体を備える。ロッドインテグレータ17は、透明部材と空気との界面において光を全反射させることで、光を伝播させる。光軸AXから離れる方向へ進行する光を光軸AXに沿う方向へ進行させることで、部分反射ミラー16及び反射ミラー18の間で伝播させる光の損失を防止することができる。ロッドインテグレータ17の光軸AX方向の長さhは、光源部11からのレーザ光が持つコヒーレント長の半分に相当する。
【0021】
なお、ロッドインテグレータ17は、透明部材からなる柱状体とする他、反射性部材を用いた中空の筒状体としても良い。反射性部材としては、アルミニウム等の金属部材や誘電体多層膜等を用いることができる。この場合も、反射性部材における反射により光を伝播させることができる。部分反射ミラー16及び反射ミラー18の間における光の損失が少なければ、ロッドインテグレータ17を省略しても良い。特に、光源部11からのレーザ光が高い指向性を有し、光路中におけるレーザ光の拡散をほとんど生じさせないような場合は、ロッドインテグレータ17を省略することができる。この場合も、部分反射ミラー16及び反射ミラー18は、コヒーレント長の半分に相当する間隔で配置される。
【0022】
長さhのロッドインテグレータ17を設けることで、部分反射ミラー16及び反射ミラー18は、レーザ光のコヒーレント長の半分の長さの間隔で配置されている。反射ミラー18は、偏光ビームスプリッタ12から照明方向とは逆方向へ進行し、偏光ビームスプリッタ12から反射ミラー18までの各部を透過した光を照明方向へ反射させる反射部である。反射ミラー18は、平行平板に高反射性部材、例えばアルミニウム等からなる金属膜や誘電体多層膜をコーティングすることにより構成されている。
【0023】
図2は、照明装置10における光の振舞いを説明する模式図である。ここでは説明に不要な構成の図示を省略している。以下、レーザ光の強度とは、光源部11からのレーザ光L1の強度が100%であるものとして表す。レーザ光L1は、光源部11から光軸AXに略直交する方向へ進行し、偏光ビームスプリッタ12へ入射する。s偏光であるレーザ光L1は、偏光ビームスプリッタ12の誘電体多層膜13における反射により、略90度折り曲げられる。略90度折り曲げられたレーザ光L1は、光軸AXに沿って照明方向とは逆の方向へ進行し、1/4波長板15へ入射する。s偏光であるレーザ光L1は、1/4波長板15を透過することにより、円偏光に変換される。
【0024】
1/4波長板15で円偏光に変換されたレーザ光L1は、部分反射ミラー16へ入射する。部分反射ミラー16は、強度100%のレーザ光L1のうち強度50%のレーザ光L2を反射させ、強度50%のレーザ光L3を透過させる。部分反射ミラー16で反射したレーザ光L2は、それまでの進行方向とは逆の方向である照明方向へ進行し、再び1/4波長板15へ入射する。円偏光であるレーザ光L2は、1/4波長板15を透過することにより、p偏光に変換される。p偏光に変換されたレーザ光L2は、偏光ビームスプリッタ12の誘電体多層膜13を透過した後、照明方向へ出射される。
【0025】
レーザ光L1のうち部分反射ミラー16を透過したレーザ光L3は、それまでの進行方向と同じ方向へ進行した後、反射ミラー18へ入射する。レーザ光L3は、反射ミラー18における反射により、それまでの進行方向とは逆の方向である照明方向へ進行し、再び部分反射ミラー16へ入射する。部分反射ミラー16は、強度50%のレーザ光L3のうち強度25%のレーザ光L5を反射させ、強度25%のレーザ光L4を透過させる。部分反射ミラー16を透過したレーザ光L4は、1/4波長板15でp偏光に変換された後、照明方向へ出射される。
【0026】
部分反射ミラー16で最初に分割されたレーザ光L2は、部分反射ミラー16から偏光ビームスプリッタ12を経て照明方向へ出射される。2番目に分割されたレーザ光L4は、部分反射ミラー16から反射ミラー18、部分反射ミラー16、偏光ビームスプリッタ12を順次経て照明方向へ出射される。反射ミラー18を経るレーザ光L4は、反射ミラー18を経ないレーザ光L2に対して、部分反射ミラー16及び反射ミラー18の間を1往復する分長い光路を経ることとなる。部分反射ミラー16及び反射ミラー18の間にコヒーレント長の半分に相当する長さhのロッドインテグレータ17(図1参照)を設けることで、両レーザ光L2、L4の間にはコヒーレント長に相当する光路差が生じる。
【0027】
レーザ光L3のうち部分反射ミラー16で反射されたレーザ光L5は、反射ミラー18で反射した後、部分反射ミラー16へ入射する。部分反射ミラー16は、強度25%のレーザ光L5のうち強度12.5%のレーザ光L7を反射させ、強度12.5%のレーザ光L6を透過させる。部分反射ミラー16を透過したレーザ光L6は、1/4波長板15でp偏光に変換された後、照明方向へ出射される。部分反射ミラー16で2番目に分割されたレーザ光L4と3番目に分割されたレーザ光L6の間にも、コヒーレント長に相当する光路差が生じる。レーザ光L5のうち部分反射ミラー16で反射されたレーザ光L7は、上述の循環を繰り返す。
【0028】
照明装置10は、このようにしてコヒーレント長に相当する光路差の光を出射させることにより、光の干渉性を低下させることができる。部分反射ミラー16を用いることによる光束の分割数は、部分反射ミラー16の透過反射特性に応じて決定できるため、小型な構成において光束の分割数を増加させることができる。分割された光束はいずれも偏光ビームスプリッタ12の出射面から出射させるため、効果的なスペックルノイズの低減と、照明領域の拡大の低減とが可能となる。
【0029】
光軸AXに沿ってレーザ光を進行させることで、照明領域の拡大をさらに低減できる。レーザ光を進行させる領域も小さくできるため、照明装置10全体を小型にすることができる。これにより、小型な構成により効果的にスペックルノイズを低減させるという効果を奏する。本発明の照明装置10は、特定の振動方向の直線偏光を供給可能であることから、液晶表示装置と組み合わせて用いる場合に有用である。部分反射ミラー16は、ハーフミラーである場合に限られない。部分反射ミラー16は、透過反射特性が適宜設定された調光ミラーであっても良い。部分反射ミラー16の透過反射特性に応じて、照明装置10から出射させる各光束の強度を適宜決定できる。部分反射ミラー16は、光源部11からのレーザ光の波長に適宜応じた透過反射特性を持たせた構成とすることができる。
【0030】
部分反射ミラー16及び反射ミラー18は、レーザ光のコヒーレント長の半分の長さの間隔で配置する場合に限らず、コヒーレント長の半分の長さ以上の間隔で配置しても良い。これにより、コヒーレント長以上に相当する光路差を経たレーザ光を出射させることができる。部分反射ミラー16及び反射ミラー18の間隔を大きくするほどスペックルノイズを効果的に低減可能にできる利点がある。
【0031】
スペックルノイズを低減可能であれば、部分反射ミラー16及び反射ミラー18の間隔はコヒーレント長の半分の長さ以下としても良い。この場合、部分反射ミラー16及び反射ミラー18の間を複数回往復させ、コヒーレント長と同じ又はそれ以上に相当する光路差を経たレーザ光を出射させることにより、スペックルノイズの低減を図れる。部分反射ミラー16及び反射ミラー18の間隔を小さくするほど照明装置10を小型にできる利点がある。なお、光源部11は、s偏光を供給するものである他、p偏光を供給するものであっても良い。この場合、偏光ビームスプリッタ12は、第1偏光であるp偏光を反射させ、第2偏光であるs偏光を出射させる。照明装置10は、照明方向へs偏光を出射させる。
【0032】
図3は、本実施例の変形例1に係る照明装置20の概略構成を示す。本変形例の照明装置20は、光軸AXに略直交する照明方向へ光を出射させる。照明装置20の光源部11は、光軸AX上に設けられている。光源部11は、光軸AXに沿って例えばp偏光を供給する。偏光ビームスプリッタ12は、第1偏光であるs偏光を反射させ、第2偏光であるp偏光を透過させる。光源部11からのp偏光は、偏光ビームスプリッタ12を透過する。偏光ビームスプリッタ12を透過したp偏光は、1/4波長板15で円偏光に変換される。
【0033】
部分反射ミラー16又は反射ミラー18で反射した後1/4波長板15へ入射した円偏光は、s偏光に変換される。1/4波長板15から偏光ビームスプリッタ12へ入射したs偏光は、誘電体多層膜13における反射により略90度折り曲げられる。略90度折り曲げられたレーザ光は、照明方向へ進行する。この場合も、小型な構成により効果的にスペックルノイズを低減できる。
【0034】
図4は、本実施例の変形例2に係る照明装置30の概略構成を示す。本変形例の照明装置30は、2つの部分反射ミラー31、33を備える。第1部分反射ミラー31、第2部分反射ミラー33は、入射する光のうちの一部を透過させ、他の一部を反射させる部分反射部である。第1部分反射ミラー31は、上記の照明装置10における部分反射ミラー16(図1参照)と同様の位置に設けられている。第1部分反射ミラー31は、例えば、入射する光のうちの90%を透過させ、他の10%を反射させる。
【0035】
第1部分反射ミラー31と反射ミラー18との間には、第1ロッドインテグレータ32、第2部分反射ミラー33、第2ロッドインテグレータ34が設けられている。第2部分反射ミラー33は、第1ロッドインテグレータ32及び第2ロッドインテグレータ34の間に設けられている。例えば、第2部分反射ミラー33は、入射する光のうちの50%を透過させ、他の50%を反射させるハーフミラーである。
【0036】
第1ロッドインテグレータ32及び第2ロッドインテグレータ34は、第1部分反射ミラー31及び反射ミラー18の間で光を伝播させる導光部である。第1ロッドインテグレータ32及び第2ロッドインテグレータ34は、いずれもガラス等の透明部材からなる柱状体、又は反射部材を用いた中空の筒状体とすることができる。第1ロッドインテグレータ32及び第2ロッドインテグレータ34は、いずれもコヒーレント長の半分に相当する長さで形成されている。
【0037】
図5は、照明装置30における光の振舞いを説明する模式図である。第1部分反射ミラー31では、偏光ビームスプリッタ12からの強度100%のレーザ光L1のうち強度10%のレーザ光L2を反射させ、強度90%のレーザ光L3を透過させる。第1部分反射ミラー31で反射されたレーザ光L2は、p偏光に変換された後、照明方向へ出射する。第1部分反射ミラー31を透過したレーザ光L3は、第2部分反射ミラー33へ入射する。
【0038】
第2部分反射ミラー33は、強度90%のレーザ光L3のうち強度45%のレーザ光L4を反射させ、強度45%のレーザ光L5を透過させる。第2部分反射ミラー33で反射したレーザ光L4は、第1部分反射ミラー31へ入射する。第1部分反射ミラー31は、強度45%のレーザ光L4のうち強度40.5%(=45%×0.9)のレーザ光L6を透過させ、強度4.5%(=45%×0.1)のレーザ光L7を反射させる。第1部分反射ミラー31を透過したレーザ光L6は、p偏光に変換された後、照明方向へ出射する。第1部分反射ミラー31で反射したレーザ光L7は、上述の循環を繰り返す。
【0039】
第2部分反射ミラー33を透過したレーザ光L5は、反射ミラー18で反射した後、第2部分反射ミラー33へ入射する。第2部分反射ミラー33は、強度45%のレーザ光L5のうち22.5%(=45%×0.5)のレーザ光L8を透過させ、強度22.5%のレーザ光L9を反射させる。第2部分反射ミラー33を透過したレーザ光L8は、第1部分反射ミラー31へ入射する。第1部分反射ミラー31は、強度22.5%のレーザ光L8のうち強度20.25%(=22.5%×0.9)のレーザ光L10を透過させ、強度2.25%(=22.5%×0.1)のレーザ光L11を反射させる。第1部分反射ミラー31を透過したレーザ光L10は、p偏光に変換された後、照明方向へ出射する。第1部分反射ミラー31で反射したレーザ光L11は、上述の循環を繰り返す。
【0040】
第2部分反射ミラー33で反射されたレーザ光L9は、反射ミラー18で反射した後、第2部分反射ミラー33へ入射する、第2部分反射ミラー33は、強度22.5%のレーザ光L9のうち強度11.25%(=22.5%×0.5)のレーザ光L12を透過させ、強度11.25%のレーザ光L13を反射させる。第2部分反射ミラー33を透過したレーザ光L12は、第1部分反射ミラー31へ入射する。第1部分反射ミラー31は、強度11.25%のレーザ光L12のうち強度10.125%(=11.25%×0.9)のレーザ光L14を透過させ、強度1.125%(11.25%×0.1)のレーザ光L15を反射させる。第1部分反射ミラー31を透過したレーザ光L14は、p偏光に変換された後、照明方向へ出射する。第2部分反射ミラー33で反射したレーザ光L13、第1部分反射ミラー31で反射したレーザ光L15は、いずれも上述の循環を繰り返す。
【0041】
上記の照明装置10は、出射させるレーザ光の強度は50%、25%、12.5%といずれも半減している。これに対して、本変形例の照明装置30は、出射させるレーザ光の強度は10%、40.5%、20.25%、10.125%と平坦化される。このように、各光束の強度を平坦化させることにより、さらに効果的にスペックルノイズを低減させることができる。照明装置30から出射させる各光束の強度は、第1部分反射ミラー31、第2部分反射ミラー33の透過反射特性に応じて適宜決定できる。第1部分反射ミラー31、第2部分反射ミラー33の透過反射特性は、出射させるレーザ光の強度をできるだけ平坦化可能なものであることが望ましい。
【0042】
なお、照明装置30は、2つの部分反射ミラー31、33を設ける構成である場合に限られず、3つ以上の部分反射ミラーを設けることとしても良い。反射ミラー18と1/4波長板15との間の光路中における部分反射ミラー及びロッドインテグレータの組を増加させることで、部分反射ミラーの数を増加させることができる。
【0043】
図6は、本実施例の変形例3に係る照明装置40の概略構成を示す。本変形例の照明装置40は、液晶素子41を有する。液晶素子41は、屈折率が可変である屈折率可変素子である。液晶素子41は、第1ロッドインテグレータ32及び第2ロッドインテグレータ34の間に設けられている。液晶素子41は、部分反射ミラー16及び反射ミラー18の間で伝播させるレーザ光を透過させる。
【0044】
液晶素子41は、平行平板内に液晶分子を分散させて構成されている。液晶素子41は、液晶分子の配向状態に応じて光の屈折率を変化させる。液晶素子41は、電圧の制御により液晶分子の配向状態を容易に変化させることが可能である。液晶素子41にて屈折率を変化させながら部分反射ミラー16及び反射ミラー18の間にてレーザ光を伝播させることで、さらに光路差に変化を持たせることが可能となる。これにより、さらに効果的にスペックルノイズを低減させることができる。
【0045】
図7は、本実施例の変形例4に係る照明装置50の斜視概略構成を示す。本変形例の照明装置50は、プリズム部51を有することを特徴とする。プリズム部51は、直角三角形を持つ三角柱形状を備える。プリズム部51は、ガラスや樹脂等の透明部材により構成されている。プリズム部51は、光軸AXに対して略45度傾けられた2つの斜面52を備える。ロッドインテグレータ17内を伝播したレーザ光は、透明部材と空気との界面である斜面52で全反射させる。プリズム部51は、偏光ビームスプリッタ12から照明方向とは逆の方向へ進行した光を反射させる反射部である。
【0046】
プリズム部51における全反射を用いることにより、反射によるレーザ光の損失を低減させることが可能となる。これにより、高い効率で光を出射させることができる。なお、照明装置50は、三角柱形状のプリズム部51を備える構成に限られない。例えば、図8に示す照明装置60は、四角錐形状のプリズム部61を備える。プリズム部61は、光軸AXに対して略45度傾けられた4つの斜面62を備える。四角錐形状のプリズム部61を備える照明装置60の場合も、高い効率で光を出射させることができる。プリズム部は、照明方向以外の方向へ進行したレーザ光を反射可能であれば良く、三角柱形状、四角錐形状以外の立体形状であっても良い。
【実施例2】
【0047】
図9は、本発明の実施例2に係るプロジェクタ70の概略構成を示す。プロジェクタ70は、スクリーン76に光を供給し、スクリーン76で反射する光を観察することで画像を鑑賞するフロント投写型のプロジェクタである。プロジェクタ70は、赤色(R)光用照明装置10R、緑色(G)光用照明装置10G、青色(B)光用照明装置10Bを有する。
【0048】
R光用照明装置10Rは、R光用光源部11Rを有する。R光用光源部11Rは、R光であるレーザ光を供給する光源部である。G光用照明装置10Gは、G光用光源部11Gを有する。G光用光源部11Gは、G光であるレーザ光を供給する光源部である。B光用照明装置10Bは、B光用光源部11Bを有する。B光用光源部11Bは、B光であるレーザ光を供給する光源部である。各色光用照明装置10R、10G、10Bは、上記実施例1の照明装置10と同様の構成を有する照明装置である。
【0049】
R光用照明装置10RからのR光は、R光用空間光変調装置71Rへ入射する。R光用空間光変調装置71Rは、R光用照明装置10RからのR光を画像信号に応じて変調する空間光変調装置であって、透過型の液晶表示装置である。R光用空間光変調装置71Rで変調された光は、クロスダイクロイックプリズム72へ入射する。G光用照明装置10GからのG光は、G光用空間光変調装置71Gへ入射する。G光用空間光変調装置71Gは、G光用照明装置10GからのG光を画像信号に応じて変調する空間光変調装置であって、透過型の液晶表示装置である。G光用空間光変調装置71Gで変調された光は、R光とは異なる側からクロスダイクロイックプリズム72へ入射する。
【0050】
B光用照明装置10BからのB光は、B光用空間光変調装置71Bへ入射する。B光用空間光変調装置71Bは、B光用照明装置10BからのB光を画像信号に応じて変調する空間光変調装置であって、透過型の液晶表示装置である。B光用空間光変調装置71Bで変調された光は、R光、G光とは異なる側からクロスダイクロイックプリズム72へ入射する。
【0051】
クロスダイクロイックプリズム72は、互いに略直交するように配置された2つのダイクロイック膜73、74を有する。第1ダイクロイック膜73は、R光を反射し、G光及びB光を透過する。第2ダイクロイック膜74は、B光を反射し、G光及びR光を透過する。このように、クロスダイクロイックプリズム72は、各空間光変調装置71R、71G、71Bでそれぞれ変調されたR光、G光及びB光を合成する。投写レンズ75は、クロスダイクロイックプリズム72で合成された光をスクリーン76へ投写する。
【0052】
プロジェクタは、3つの透過型液晶表示装置を用いる構成に限られない。例えば、図10に示すように、2つの透過型液晶表示装置を用いる構成としても良い。プロジェクタ80は、2つの空間光変調装置71G、71RBを有する。RB光用空間光変調装置71RBは、R光及びB光を変調する。ダイクロイックプリズム82は、G光を透過させ、R光及びB光を反射させるダイクロイック膜81を備える。
【0053】
プロジェクタ80は、空間光変調装置に対応して2つの照明装置10G、10RBを有する。RB光用照明装置10RBは、R光用光源部11R及びB光用光源部11Bを有する。RB光用照明装置10RBは、R光用光源部11R、B光用光源部11Bを順次点灯させる。RB光用空間光変調装置71RBは、RB光用照明装置10RBからのR光、B光の供給に同期して駆動する。このように、照明装置は、それぞれ異なる色光を供給する複数の光源部を用いる構成としても良い。
【0054】
さらに、プロジェクタは、1つの透過型液晶表示装置を備える構成であっても良い。空間光変調装置は透過型液晶表示装置を用いる場合に限られず、反射型液晶表示装置(Liquid Crystal On Silicon;LCOS)を用いても良い。プロジェクタは、スクリーンの一方の面にレーザ光を供給し、スクリーンの他方の面から出射される光を観察することで画像を鑑賞する、いわゆるリアプロジェクタであっても良い。さらに、本発明の照明装置は、プロジェクタに適用する場合に限られず、例えば露光装置に適用することとしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上のように、本発明に係る照明装置は、コヒーレント光を用いて画像を表示する場合に適している。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施例1に係る照明装置の概略構成を示す図。
【図2】照明装置における光の振舞いを説明する模式図。
【図3】実施例1の変形例1に係る照明装置の概略構成を示す図。
【図4】実施例1の変形例2に係る照明装置の概略構成を示す図。
【図5】照明装置における光の振舞いを説明する模式図。
【図6】実施例1の変形例3に係る照明装置の概略構成を示す図。
【図7】実施例1の変形例4に係る照明装置の斜視概略構成を示す図。
【図8】四角錐形状のプリズム部を備える構成を示す図。
【図9】本発明の実施例2に係るプロジェクタの概略構成を示す図。
【図10】2つの透過型液晶表示装置を用いる構成を示す図。
【符号の説明】
【0057】
10 照明装置、11 光源部、12 偏光ビームスプリッタ、13 誘電体多層膜、15 1/4波長板、16 部分反射ミラー、17 ロッドインテグレータ、18 反射ミラー、AX 光軸、20 照明装置、30 照明装置、31 第1部分反射ミラー、32 第1ロッドインテグレータ、33 第2部分反射ミラー、34 第2ロッドインテグレータ、40 照明装置、41 液晶素子、50 照明装置、51 プリズム部、52 斜面、60 照明装置、61 プリズム部、62 斜面、70 プロジェクタ、10R R光用照明装置、10G G光用照明装置、10B B光用照明装置、11R R光用光源部、11G G光用光源部、11B B光用光源部、71R R光用空間光変調装置、71G G光用空間光変調装置、71B B光用空間光変調装置、72 クロスダイクロイックプリズム、73 第1ダイクロイック膜、74 第2ダイクロイック膜、75 投写レンズ、76 スクリーン、80 プロジェクタ、10RB RB光用照明装置、71RB RB光用空間光変調装置、81 ダイクロイック膜、82 ダイクロイックプリズム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コヒーレント光を供給する光源部と、
第1の振動方向を有する第1偏光を反射させ、前記第1の振動方向に略直交する第2の振動方向を有する第2偏光を透過させることで前記第1偏光と前記第2偏光とを分離させる偏光分離部と、
前記偏光分離部から照明方向以外の方向へ進行した光を反射させる反射部と、
前記偏光分離部及び前記反射部の間に設けられ、入射する光のうちの一部を透過させ、他の一部を反射させる部分反射部と、
前記偏光分離部及び前記部分反射部の間に設けられ、入射する光の偏光状態を変化させる波長板と、を有し、
前記部分反射部及び前記反射部は、前記部分反射部から前記偏光分離部を経て前記照明方向へ出射される光と、前記部分反射部から前記反射部、前記部分反射部及び前記偏光分離部を順次経て前記照明方向へ出射される光との間で光路差を生じさせることを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記部分反射部及び前記反射部は、前記コヒーレント光が持つコヒーレント長の半分の長さ又はそれ以上の間隔で配置されることを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記偏光分離部及び前記反射部は、共通の光軸上に配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の照明装置。
【請求項4】
前記部分反射部及び前記反射部の間で光を伝播させる導光部を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項5】
前記導光部は、ロッドインテグレータを備えることを特徴とする請求項4に記載の照明装置。
【請求項6】
前記部分反射部及び前記反射部の間で伝播させる光を透過させ、かつ屈折率が可変である屈折率可変素子を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項7】
複数の前記部分反射部を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項8】
前記反射部は、光を全反射させるプリズム部を備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の照明装置と、
前記照明装置からの光を画像信号に応じて変調する空間光変調装置と、を有することを特徴とするプロジェクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−134271(P2008−134271A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−318113(P2006−318113)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】