説明

照明装置

【課題】少ない種類の調光用インク、少ない印刷工数で表示部の輝度を調整することが可能な照明装置を提供する。
【解決手段】
基板71に印刷を施して地色層(地色部)74と第2,第3の意匠部(第1,第2の表示部)77,78とを設けてなる表示板7と、この表示板7の背後で各意匠部77,78に対応した位置に配置される第3,第4の発光ダイオード(第1,第2の光源)53,54とを備え、第1,第2の発光ダイオード53,54の点灯により第2,第3の意匠部77,78を発光させる照明装置において、第2の意匠部77と第3の意匠部78の各々に対応する領域には、同一のインクを用いて透過率が第2の意匠部77と第3の意匠部78とで異なるように調整するドット層からなる第1の調光層721と第2の調光層722とを設けた

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車やオートバイに搭載され、表示板に形成された複数の表示部を対応する個々の光源の点灯により発光表示する照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の照明装置として例えば下記特許文献1に記載されたものが知られている。この照明装置は、回路基板と、この回路基板に搭載された光源と、この光源に対応する位置に透光性の表示部を備えた表示板とを有しており、光源の点灯により透光性の表示部を発光表示させるものである。
【0003】
そして表示板は、透光性の基板と、この基板の背面側に形成された遮光層と、この遮光層の一部をインジケータマークの形状に抜き形成してなる表示部と、この表示部に対応した抜き部を有して基板の前面に形成された遮光性を有する地色層と、抜き部を覆うように基板の前面側に形成される光吸収性層(スモーク層)とを備えており、光源の消灯時は、光吸収性層の作用により表示部が殆ど見えなくなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−082275号公報(図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで特許文献1に記載の照明装置にあっては、板面が傾斜や段差を有するように絞り成形した表示板を用いることがあり、例えば視線方向に対して前後に段差を有する複数の板面の各々に表示部を設ける場合は、光源と表示部との距離が表示部の形成位置に応じて異なるため、表示部の発光輝度のバラツキを抑えるため、光源と表示部との距離に応じて光吸収性層の積層数を変化させたり、透過率の異なる光吸収性インクを用いたりして、透過光の強度を調整する手法が用いられていた。しかしながらこれらの手法は、光吸収性層を印刷するにあたり複数の印刷工程を要するため、コスト上昇を招いていた。
【0006】
そこで、本発明は前述した問題点に着目し、少ない種類の調光用インク、少ない印刷工数で表示部の輝度を調整することが可能な照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、基板に印刷を施して地色部とこの地色部内で所定の透光性意匠を形成するよう互いに離間形成される第1の表示部及び第2の表示部とを設けてなる表示板と、この表示板の背後で前記各表示部に対応した位置に配置される第1の光源及び第2の光源とを備え、前記第1,第2の光源の点灯により前記第1,第2の表示部を発光させる照明装置において、前記第1の表示部と前記第2の表示部の各々に対応する領域には、同一のインクを用いて透過率が前記第1の表示部と前記第2の表示部とで異なるように調整するドット層からなる第1の調光層と第2の調光層とを設けたことを特徴とする。
このように構成することにより、少ない種類の調光用インク、少ない印刷工数で表示部の輝度を調整することがきるため、コストダウンを達成することができる。
【0008】
また本発明は、前記ドット層が遮光性もしくは光吸収性のインクを用いて形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、少ない種類の調光用インク、少ない印刷工数で表示部の輝度を調整することが可能な照明装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態による照明装置の正面図。
【図2】図1のA−A断面図(ハッチング省略)。
【図3】図1のB−B断面図(ハッチング省略)。
【図4】図2のP1箇所を拡大して示す断面図。
【図5】図3のP2箇所を拡大して示す断面図。
【図6】本発明の他の実施形態を示す拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態による照明装置は、例えば車両用計器からなるものであり、遮光性合成樹脂からなる背面カバー1と、透明合成樹脂からなる前面カバー2との間に、回路基板3と指針式計器4と発光ダイオード5とフレーム6と表示板7とでなる表示ユニットUを配置してなる。
【0012】
回路基板3は、例えば紙フェノールやエポキシ樹脂からなる硬質の配線基板であり、指針式計器の後述する駆動本体や発光ダイオード5を実装してなる。
【0013】
指針式計器4は、駆動本体41と、指針42とでなり、駆動本体41はその指針軸43が回路基板3を貫通するように本体部が回路基板3の背面に取り付けられ、また指針42は指針軸43と連結され、表示板7の前面に沿って延びている。なお指針42は少なくともその指示部が透光材で形成され、発光ダイオード(後述する第1の発光ダイオード)5からの光を受けて発光するようになっている。
【0014】
またこのように形成される指針式計器4は、2つ組み込まれ、表示板7と組み合わされて図1中、左側に位置する速度計と右側に位置する燃料計を構成する。
【0015】
発光ダイオード5は、指針42を発光させる第1の発光ダイオード51と、表示板7の後述する第1の意匠部を発光させる第2の発光ダイオード52と、表示板7の後述する第2の意匠部を発光させる第3の発光ダイオード(第1の光源)53(図2参照)と、表示板7の後述する第3の意匠部を発光させる第4の発光ダイオード(第2の光源)54(図3参照)とで構成されている。
【0016】
フレーム6は、例えば乳白色の合成樹脂からなり、回路基板3と表示板7とを結合すると共に、各発光ダイオード51〜54の光を指針42や前記第1の意匠部〜第3の意匠部に導く機能も有しており、特に前記第2,第3の意匠部に対応する箇所には、第3,第4の発光ダイオード53,54を収納する照明室61を有している。
【0017】
表示板7は、図4、図5に示すように、基板71と、この基板71の背面に形成された遮光層72と、基板71の前面に形成された着色層73と、この着色層73の前面に形成された地色層74と、この地色層(地色部)74と着色層73とを覆う保護層75とで構成されている。
【0018】
基板71は、例えば無色透明な合成樹脂のシート材からなり、このシート材は、遮光層72と、着色層73と、地色層74と、保護層75とを形成した後に後述する立体形状となるよう絞り成形される。
【0019】
遮光層72は、例えばスクリーン印刷によりベタ塗り形成された遮光性を有する黒色インク層からなり、その一部は後述する意匠部に対応した形に部分的に抜き形成され第1の透光部21を形成すると共に、第1の透光部21内に複数のドット層からなる第1,第2の調光層721,722を形成している。第1,第2の調光層721,722のうち、第1の調光層721は、後述する第2の意匠部を透過する第3の発光ダイオード53の光の透過率を調整するもので、第2の調光層722は、後述する第3の意匠部を透過する第4の発光ダイオード54の光の透過率を調整するもので、ドット層からなる第1,第2の調光層721,722とベタ塗り層からなる遮光層72とは、同一のインクを用いて同一工程にて印刷形成されている。
【0020】
着色層73は、例えばスクリーン印刷によりベタ塗り形成された透光性を有する乳白色層からなり、基板71の全面を覆っている。
【0021】
地色層74は、表示板7の地色(背景色)を決めるもので、例えば図1中、左側に位置する速度計対応の第1の領域R1と図1中、右側に位置する燃料計対応の第2の領域R2は黒色、これら領域外となる第3の領域R3は大理石模様(石目模様)に設定されている。
【0022】
この場合、第1,第2の領域R1,R2と、第3の領域R3は、異なるインクにより印刷形成され、第1,第2の領域R1,R2は、例えばスクリーン印刷によりベタ塗り形成された遮光性を有する黒色インクよりなる地色層74でなり、第3の領域R3は、例えばY,M,C,K(イエロー,マゼンダ,シアン,ブラック)からなる4色の独立した基本色ドット層を完全もしくは部分的に積層することにより大理石模様を形成する地色層74でなり、これら4色の基本色ドット層は、スクリーン印刷、オフセット印刷、インクジェット等のデジタル印刷を用いて形成することができる。
【0023】
そして地色層74には、第1の透光部21に対応した形状の第2の透光部741が抜き印刷により形成され、これら第1の透光部21と第2の透光部741とによって第1〜第3の意匠部76,77,78が形成されている。
【0024】
第1の意匠部76は、指針42の指示対象となる目盛、数字、文字からなり、速度計と燃料計に応じた透光性の意匠を形成し、第2の発光ダイオード52によって発光表示される。
【0025】
第2の意匠部(第1の表示部)77は、第1の領域R1内において、車両状態、例えば前照灯の光軸向きを表示するインジケータマークからなり、第3の発光ダイオード53によって発光表示される。
【0026】
第3の意匠部(第2の表示部)78は、第3の領域R3内において、第2の意匠部77とは異なる車両状態、例えばギヤポジションを表示するインジケータマークからなり、第4の発光ダイオード54によって発光表示される。
【0027】
このように基板71に遮光層72、着色層73、地色層74、保護層75の各層を印刷してなる表示板7は、第2の領域R2と第3の領域R3が互いに同一平面となる平板状であるが、第1の領域R1は、平板状の第3の領域R3を基準としたときに背後側(回路基板側)に窪む凹状に絞り加工されている。これにより、第1の領域R1に位置する第2の意匠部77と第3の発光ダイオード53との距離D1(図2参照)は、第3の領域R3に位置する第3の意匠部78と第4の発光ダイオード54との距離D2(図3参照)よりも小さく、第2の意匠部77の方が第3の意匠部78よりも発光ダイオード5に近い構成となっている。
【0028】
このような距離D1,D2の相違に応じて本実施形態では、第1,第2の調光層721,722を構成するドット層は、その形成密度や濃度、サイズ(被覆面積)を異ならせてあり、これにより光源5からの光の透過率が第2の意匠部77と第3の意匠部78とで相違するように設けられている。
【0029】
すなわち、第1の調光層721は、第2の意匠部77が(第3の意匠部78よりも)発光ダイオード5に近い分、第2の調光層722よりも透過率を低くし、第2の調光層722は、第3の意匠部78が(第2の意匠部77よりも)発光ダイオード5から遠い分、第1の調光層721より透過率を高くし、これにより第2の意匠部77と第3の意匠部78の各発光輝度が見た目上、違和感がない程度に近づくように調整している。
【0030】
以上のように、本実施形態では、基板71に印刷を施して地色層(地色部)74とこの地色部74内で所定の透光性意匠を形成するよう互いに離間形成される第2の意匠部(第1の表示部)77及び第3の意匠部(第2の表示部)78とを設けてなる表示板7と、この表示板7の背後で各意匠部77,78に対応した位置に配置される第3の発光ダイオード(第1の光源)53及び第4の発光ダイオード(第2の光源)54とを備え、第1,第2の発光ダイオード53,54の点灯により第2,第3の意匠部77,78を発光させる照明装置において、第2の意匠部77と第3の意匠部78の各々に対応する領域には、同一のインクを用いて透過率が第2の意匠部77と第3の意匠部78とで異なるように調整するドット層からなる第1の調光層721と第2の調光層722とを設けたことにより、少ない種類の調光用インク、少ない印刷工数で第2,第3の意匠部77,78の輝度を調整することがきるため、コストダウンを達成することができる。
【0031】
なお本実施形態では、前記ドット層を遮光性インクを用いて形成したが、第2,第3の意匠部77,78の輝度を調整することがきれば、スモーク等の光吸収性インクや任意色のインクを用いてもよい。
【0032】
また本実施形態では、基板71の背面に第1,第2の調光層721,722を設けたが、本発明の他の実施形態として図6に示すように、調光専用の層として基板71の前面側に目視可能に設けたり、基板71の両面に設けてもよい。
【0033】
また本実施形態では、第2,第3の意匠部77,78と光源5との距離D1,D2に応じて前記ドット層の形成密度を異ならせたが、使用する光源5の輝度や個数に応じて透過率が異なるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 背面カバー
2 前面カバー
3 回路基板
4 指針式計器
5 発光ダイオード
6 フレーム
7 表示板
21 第1の透光部
41 駆動本体
42 指針
43 指針軸
51 第1の発光ダイオード
52 第2の発光ダイオード
53 第3の発光ダイオード(第1の光源)
54 第4の発光ダイオード(第2の光源)
61 照明室
71 基板
72 遮光層
73 着色層
74 地色層
75 保護層
721,722 第1,第2の調光層
76,77,78 第1〜第3の意匠部
R1 第1の領域
R2 第2の領域
R3 第3の領域
U 表示ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に印刷を施して地色部とこの地色部内で所定の透光性意匠を形成するよう互いに離間形成される第1の表示部及び第2の表示部とを設けてなる表示板と、この表示板の背後で前記各表示部に対応した位置に配置される第1の光源及び第2の光源とを備え、前記第1,第2の光源の点灯により前記第1,第2の表示部を発光させる照明装置において、前記第1の表示部と前記第2の表示部の各々に対応する領域には、同一のインクを用いて透過率が前記第1の表示部と前記第2の表示部とで異なるように調整するドット層からなる第1の調光層と第2の調光層とを設けたことを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記ドット層が遮光性もしくは光吸収性のインクを用いて形成されていることを特徴とする請求項1記載の照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−196976(P2011−196976A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−67349(P2010−67349)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000231512)日本精機株式会社 (1,561)
【Fターム(参考)】