説明

照明装置

【課題】光取り出し効率が高く、且つ製造コストが低い照明装置を提供する。
【解決手段】照明装置に、内面がマイナスフレネルレンズ形状である領域を含む構造体と、当該内面に密接する高屈折率材料層と、を設ける。なお、当該高屈折率材料層は、当該内面に密接する領域においてフレネルレンズ形状となる。これにより、当該高屈折率材料層を介して当該構造体上に設けられた面発光体の光取り出し効率を向上させることが可能である。また、当該高屈折率材料層は、少なくとも当該構造体のマイナスフレネルレンズ形状を埋めることで、当該構造体との界面においてフレネルレンズ形状である領域を含む面を備える。したがって、当該照明装置においては、高屈折率材料層の使用量を低減することが可能である。以上により、光取り出し効率が高く、且つ製造コストが低い照明装置を提供することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明装置に関する。特に、面発光体を光源とする照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機ELともいう)を利用する光源を備えた照明装置の開発が活発に行われている。なお、当該光源は、面発光体であり、発光される光の指向性が弱い。また、一般的に当該光源に含まれる発光領域の屈折率は、大気の屈折率よりも高い。したがって、当該光源から発光される光の一部は、大気との界面において全反射することになる。その結果、当該光源が発する光のうち、外部(大気中)へと放出される光の割合(以下、光取り出し効率ともいう)が低下してしまうという問題がある。
【0003】
この問題を解決するために、光源の表面に構造体を設ける構成が開示されている。例えば、非特許文献1では、高屈折率ガラス基板と高屈折率レンズとを組み合わせる構成、及び高屈折率ガラス基板と大気の界面に凹凸構造を設ける構成が開示されている。当該構成によって、光取り出し効率の改善を図ることが可能である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「White organic light−emitting diodes with fluorescent tube efficiency」,Nature,14 May 2009,Vol.459,p.234−239
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ただし、非特許文献1で開示される構成に含まれる、透光性及び高屈折率を備えた材料(例えば、ガラスや樹脂など)は種類が少なく高価である。そのため、照明装置において当該構成を適用した場合、当該照明装置の製造コストが高くなるという問題がある。
【0006】
上述した問題に鑑み、本発明の一態様は、光取り出し効率が高く、且つ製造コストが低い照明装置を提供することを目的の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、照明装置における光取り出し効率の向上を少量の高屈折率材料層を用いて実現することを要旨とする。
【0008】
具体的には、本発明の一態様は、内面がマイナスフレネルレンズ形状である領域を含み、且つ外面が凹凸形状である領域を含む構造体と、構造体の内面に密接する高屈折率材料層と、高屈折率材料層を介して構造体上に設けられた面発光体と、を有し、構造体及び高屈折率材料層は、透光性を有し、高屈折率材料層の屈折率、及び面発光体に含まれる発光領域の屈折率は、構造体の屈折率よりも0.1以上高い(高屈折率材料層の屈折率をn、面発光体に含まれる発光領域の屈折率をn、構造体の屈折率をnとした時に、n≧n+0.1且つn≧n+0.1)ことを特徴とする照明装置である。
【0009】
なお、上記構成において、高屈折率材料層の屈折率が面発光体に含まれる発光領域の屈折率から0.1低い値以上である(n≧n−0.1)ことが好ましい。さらに、高屈折率材料層の屈折率が面発光体に含まれる発光領域の屈折率以上である(n≧n)ことがより好ましい。
【0010】
ただし、高屈折率材料層の屈折率が面発光体に含まれる発光領域の屈折率と比較して高すぎる場合、屈折率段差に起因する当該高屈折率材料層界面における反射の影響が大きくなる。したがって、上記構成において、高屈折率材料層の屈折率が面発光体に含まれる発光領域の屈折率から0.1高い値以下である(n+0.1≧n)ことが好ましい。
【0011】
以上のことから、上記構成において、高屈折率材料層の屈折率が面発光体に含まれる発光領域の屈折率から0.1低い値以上であり、且つ0.1高い値以下である(n+0.1≧n≧n−0.1)ことが好ましい。さらに、高屈折率材料層の屈折率が面発光体に含まれる発光領域の屈折率以上であり、且つ0.1高い値以下である(n+0.1≧n≧n)ことがより好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様の照明装置は、内面がマイナスフレネルレンズ形状である領域を含む構造体と、当該内面に密接する高屈折率材料層と、を有する。なお、当該高屈折率材料層は、当該内面に密接する領域においてフレネルレンズ形状となる。これにより、当該高屈折率材料層を介して当該構造体上に設けられた面発光体の光取り出し効率を向上させることが可能である。また、当該高屈折率材料層は、少なくとも当該構造体のマイナスフレネルレンズ形状を埋めることで、当該構造体との界面においてフレネルレンズ形状である領域を含む面を備える。したがって、当該照明装置においては、高屈折率材料層の使用量を低減することが可能である。以上により、光取り出し効率が高く、且つ製造コストが低い照明装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】照明装置の構成例を示す図。
【図2】(A)、(B)照明装置の構成例を示す図。
【図3】(A)〜(C)光源の構成例を示す図。
【図4】(A)〜(C)照明装置の構成例を示す図。
【図5】(A)、(B)電子機器の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨およびその範囲から逸脱することなくその形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。したがって、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0015】
<照明装置の構成例>
図1は、本発明の一態様の照明装置の構成例を示す図である。図1に示す照明装置は、透光性を備えた構造体10と、構造体10上に設けられ且つ透光性を備えた高屈折率材料層20と、高屈折率材料層20上に設けられ且つ面発光を行うことが可能な面発光体30とを有する。さらに、高屈折率材料層20の屈折率及び面発光体30に含まれる発光領域の屈折率は、構造体10の屈折率よりも0.1以上高い(高屈折率材料層の屈折率をn、面発光体に含まれる発光領域の屈折率をn、構造体の屈折率をnとした時に、n≧n+0.1且つn≧n+0.1)。なお、図1に示す照明装置は、面発光体30が発する光を高屈折率材料層20及び構造体10を介して外部へと放射する照明装置である。
【0016】
なお、図1に示す照明装置において、高屈折率材料層20の屈折率が面発光体30に含まれる発光領域の屈折率から0.1低い値以上である(n≧n−0.1)ことが好ましい。さらに、高屈折率材料層20の屈折率が面発光体30に含まれる発光領域の屈折率以上である(n≧n)ことがより好ましい。
【0017】
ただし、高屈折率材料層20の屈折率が面発光体30に含まれる発光領域の屈折率と比較して高すぎる場合、屈折率段差に起因する高屈折率材料層20界面における反射の影響が大きくなる。したがって、図1に示す照明装置において、高屈折率材料層20の屈折率が面発光体30に含まれる発光領域の屈折率から0.1高い値以下である(n+0.1≧n)ことが好ましい。
【0018】
以上のことから、図1に示す照明装置において、高屈折率材料層20の屈折率が面発光体30に含まれる発光領域の屈折率から0.1低い値以上であり、且つ0.1高い値以下である(n+0.1≧n≧n−0.1)ことが好ましい。さらに、高屈折率材料層20の屈折率が面発光体30に含まれる発光領域の屈折率以上であり、且つ0.1高い値以下である(n+0.1≧n≧n)ことがより好ましい。
【0019】
構造体10は、内面(第1の面)がマイナスフレネルレンズ形状である領域を含み、且つ外面(第1の面と反対側の第2の面)がフレネルレンズ形状である領域を含む。また、高屈折率材料層20は、少なくとも構造体10の内面のマイナスフレネルレンズ形状である領域を埋めて設けられる。したがって、高屈折率材料層20は、構造体10との界面においてフレネルレンズ形状となる領域を含むことになる。なお、高屈折率材料層20の面発光体30側の面の形状は、特定の形状に限定されない。ただし、当該面上に面発光体30が設けられるため、当該面は平面形状又は略平面形状であることが好ましい。
【0020】
なお、構造体10の外面は、フレネルレンズ形状である領域を含む面である必要はない。例えば、当該外面が、マイクロレンズアレイ形状である領域を含む面であるなど各種の凹凸形状である領域を含む面とすることが可能である。他方、構造体10の内面は、マイナスフレネルレンズ形状である領域を含む面であることが好ましい。例えば、当該内面がマイクロレンズアレイ形状である領域を含む面である場合は、面発光体30と比較して高屈折率材料層20からなる各マイクロレンズのサイズが小さくなる。そのため、そのような場合には、当該各マイクロレンズにおいて面発光体30から発せられる光の一部が反射され、光取り出し効率が低下する可能性がある。
【0021】
また、図1に示すように、高屈折率材料層20のフレネルレンズ形状である領域(Area20)が面発光体30に含まれる発光領域(Area30に含まれる領域)よりも広いことが好ましい。これにより、面発光体30の光取り出し効率を向上させることが可能である。同様の理由から、構造体10のフレネルレンズ形状である領域(Area10)が高屈折率材料層20のフレネルレンズ形状である領域(Area20)よりも広いことが好ましい。
【0022】
図1に示す照明装置は、フレネルレンズ形状となる領域を含む面を備えた高屈折率材料層20を有する。これにより、高屈折率材料層20を介して構造体10上に設けられた面発光体30の光取り出し効率を向上させることが可能である。また、高屈折率材料層20のフレネルレンズ形状となる面は、構造体10のマイナスフレネルレンズ形状を高屈折率材料層20で埋めることによって設けられる。したがって、当該照明装置においては、高屈折率材料層の使用量を低減することが可能である。以上により、光取り出し効率が高く、且つ製造コストが低い照明装置を提供することが可能となる。
【0023】
<具体例>
次いで、図1に示した照明装置の構成要素の具体例について述べる。
【0024】
<構造体10の具体例>
構造体10は、ガラス又は樹脂などを適用することができる。なお、当該樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリアクリルニトリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアミド樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、またはポリ塩化ビニル樹脂などを用いることができる。これらの材料は、種類が豊富なため安価での入手が可能であり、且つ材料選択の自由度も高い。また、材料選択の自由度が高いため、製造方法の選択の自由度も高い。
【0025】
また、構造体10の内面形状及び外面形状の形成方法としては、金型を用いる方法を適用することができる。特に、同一の材料を用いて射出成型法等により一体成型すると、それぞれの構造の間に屈折率段差が生じ難く、迷光の発生を抑制することができる。これにより、面発光体30の光取り出し効率を向上することが可能である。また、構造体10の内面形状及び外面形状の形成方法として、エッチング法、砥粒加工法(サンドブラスト法)、マイクロブラスト加工法、液滴吐出法、印刷法(スクリーン印刷やオフセット印刷などパターンが形成される方法)及びスピンコート法などの塗布法、ディッピング法、ディスペンサ法、インプリント法、ナノインプリント法などを適用することもできる。
【0026】
また、構造体10は単層であっても、複数の層を積層したものであってもよい。例えば、透光性とバリア性を有する無機材料膜を高屈折率材料層20との界面に備える構成とすることが好ましい。なお、当該無機材料膜としては、酸化珪素膜、酸化窒化珪素膜を適用することが可能である。当該無機材料膜は、光取り出し効率を低下させることなく、面発光体30への不純物の拡散を防ぐことができる。例えば、面発光体30が有機ELを利用して発光する場合、水分等の不純物が面発光体30内部へ侵入することを抑制し、当該照明装置の信頼性を向上することが可能である。
【0027】
また、構造体10は、複数の部材を組み合わせた構成であってもよい。例えば、図2(A)に示すように、当該構造体をフレネルレンズ形状である領域を含む面を備えた部材11と、マイナスフレネルレンズ形状である領域を含む面を備えた部材12とによって構成すること、又は図2(B)に示すように、当該構造体をフレネルレンズ形状である領域を含む面を備えた部材11と、マイナスフレネルレンズ形状である領域を含む面を備えた部材12と、部材11及び部材12に挟持された部材13とによって構成することなどが可能である。なお、複数の部材を貼り合わせた構成とする場合、各部材及び接着剤の屈折率を実質的に同じ(屈折率の差が0.1未満)とする構成が好ましい。これにより、構造体10内部の屈折率段差を抑制できる。その結果、迷光を減らすことができ、面発光体30が発する光の取り出し効率を向上できる。
【0028】
<高屈折率材料層20の具体例>
高屈折率材料層20は、高屈折率のガラス又は樹脂などを適用することができる。なお、高屈折率の樹脂としては、臭素が含まれる樹脂、硫黄が含まれる樹脂などが挙げられる。具体的には、含硫黄ポリイミド樹脂、エピスルフィド樹脂、チオウレタン樹脂、又は臭素化芳香族樹脂などを用いることができる。また、PET(ポリエチレンテレフタラート)、TAC(トリアセチルセルロース)なども用いることができる。
【0029】
また、高屈折率材料層20の形成方法としては、接着強度や加工のしやすさなどを考慮し、材料にあった種々の方法を適宜選択すればよい。例えば、上記樹脂などをスピンコート法、スクリーン印刷法を用いて成膜し、熱または光によって硬化することで高屈折率材料層20を形成することができる。
【0030】
また、高屈折率材料層20は単層であっても、複数の層を積層したものであってもよい。ここで、高屈折率材料層20を複数の層の積層によって構成する場合、当該積層が無機材料膜(特に窒化膜)を含む構成とすることが好ましい。例えば、当該無機材料膜としては窒化珪素膜、窒化アルミ膜、窒化酸化珪素膜、酸化アルミ膜等を適用することができる。当該無機材料膜は、光取り出し効率を低下させることなく、面発光体30への不純物の拡散を防ぐことができる。例えば、面発光体30が有機ELを利用して発光する場合、水分等の不純物が面発光体30内部へ侵入することを抑制し、当該照明装置の信頼性を向上することが可能である。
【0031】
<面発光体30の具体例>
面発光体30としては、有機ELを利用した光源を備える構成とすることが可能である。当該光源は、第1の電極、第2の電極、並びに発光物質を含む有機層を備える。第1の電極と第2の電極は一方が陽極として機能し、他方が陰極として機能する。発光物質を含む有機層は第1の電極と第2の電極の間に設けられ、当該有機層の構成は第1の電極と第2の電極の極性、及び材質に合わせて適宜選択すればよい。以下に、当該光源の構成の一例を例示するが、面発光体30の構成がこれに限定されないことは言うまでもない。
【0032】
(光源の構成例1)
図3(A)は、光源の構成例を示す図である。図3(A)に示す光源は、陽極31と陰極32の間に発光物質を含む有機層33が挟んで設けられている。
【0033】
陽極31と陰極32の間に、閾値電圧より高い電圧を印加すると、発光物質を含む有機層33に陽極31の側から正孔(ホール)が注入され、陰極32の側から電子が注入される。注入された電子と正孔は発光物質を含む有機層33において再結合し、当該発光物質が発光する。
【0034】
発光物質を含む有機層33は、少なくとも発光物質を含む発光層を備えていればよく、発光層以外の層と積層された構造であっても良い。発光層以外の層としては、例えば正孔注入性の高い物質、正孔輸送性の高い物質、電子輸送性の高い物質、電子注入性の高い物質、並びにバイポーラ性(電子及び正孔の輸送性の高い)の物質等を含む層が挙げられる。具体的には、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、正孔阻止層(ホールブロッキング層)、電子輸送層、電子注入層等が挙げられ、これらを陽極31側から適宜積層して用いることができる。
【0035】
(光源の構成例2)
図3(B)は、図3(A)に示した光源とは異なる構成を有する光源の構成例を示す図である。図3(B)に示す光源は、陽極31と陰極32の間に発光物質を含む有機層33が挟んで設けられている。さらに、陰極32と発光物質を含む有機層33との間には中間層34が設けられている。なお、当該光源の発光物質を含む有機層33には、上述の光源の構成例1と同様の構成を適用することが可能であり、詳細については、光源の構成例1の記載を参酌できる。
【0036】
中間層34は少なくとも電荷発生領域を含んで形成されていればよく、電荷発生領域以外の層と積層された構成であってもよい。例えば、電荷発生領域34c、電子リレー層34b、及び電子注入バッファー34aが陰極32側から順次積層された構造を適用することができる。
【0037】
中間層34における電子と正孔の挙動について説明する。陽極31と陰極32の間に、閾値電圧より高い電圧を印加すると、電荷発生領域34cにおいて、正孔(ホール)と電子が発生し、正孔は陰極32へ移動し、電子は電子リレー層34bへ移動する。電子リレー層34bは電子輸送性が高く、電荷発生領域34cで生じた電子を電子注入バッファー34aに速やかに受け渡す。電子注入バッファー34aは発光物質を含む有機層33に電子を注入する障壁を緩和し、発光物質を含む有機層33への電子注入効率を高める。従って、電荷発生領域34cで発生した電子は、電子リレー層34bと電子注入バッファー34aを経て、発光物質を含む有機層33のLUMO準位に注入される。
【0038】
また、電子リレー層34bは、電荷発生領域34cを構成する物質と電子注入バッファー34aを構成する物質が界面で反応し、互いの機能が損なわれてしまう等の相互作用を防ぐことができる。
【0039】
(光源の構成例3)
図3(C)は、図3(A)、(B)に示した光源とは異なる構成を有する光源の構成例を示す図である。図3(C)に示す光源は、陽極31と陰極32の間に発光物質を含む有機層33a、33bが2つ挟んで設けられている。さらに、発光物質を含む有機層33aと、発光物質を含む有機層33bとの間には中間層34が設けられている。なお、陽極31と陰極32に挟持される発光物質を含む有機層は二つに限定されない。すなわち、発光物質を含む有機層の間に中間層を挟んで、発光物質を含む有機層を陽極31と陰極32の間に三つ以上積層してもよい。なお、当該光源の構成例3の発光物質を含む有機層33a、33bには、上述の光源の構成例1と同様の構成を適用することが可能である。また、当該光源の構成例3の中間層34には、上述の光源の構成例2と同様の構成を適用することが可能である。よって、これらの詳細については、光源の構成例1、又は光源の構成例2の記載を参酌できる。
【0040】
発光物質を含む有機層の間に設けられた中間層34における電子と正孔の挙動について説明する。陽極31と陰極32の間に、閾値電圧より高い電圧を印加すると、中間層34において正孔(ホール)と電子が発生し、正孔は陰極32側に設けられた発光物質を含む有機層33bへ移動し、電子は陽極31側に設けられた発光物質を含む有機層33aへ移動する。発光物質を含む有機層33bに注入された正孔は、陰極32側から注入された電子と再結合し、当該発光物質が発光する。また、発光物質を含む有機層33aに注入された電子は、陽極31側から注入された正孔と再結合し、当該発光物質が発光する。すなわち、中間層34において発生した正孔と電子は、それぞれ異なる発光物質を含む有機層において発光に至る。
【0041】
なお、発光物質を含む有機層同士を接して設けることで、両者の間に中間層と同じ構成が形成される場合は、発光物質を含む有機層同士を接して設けることができる。具体的には、発光物質を含む有機層の一方の面に電荷発生領域が形成されていると、当該電荷発生領域は中間層の電荷発生領域として機能するため、発光物質を含む有機層同士を接して設けることができる。
【0042】
光源の構成例1乃至構成3は、互いに組み合わせることができる。例えば、光源の構成例3の陰極32と発光物質を含む有機層33bの間に中間層を設けることもできる。
【0043】
(光源に用いることができる材料)
次いで、上述した構成を備える光源に用いることができる具体的な材料について、陽極31、陰極32、発光物質を含む有機層33、電荷発生領域34c、電子リレー層34b、並びに電子注入バッファー34aの順に説明する。
【0044】
(陽極31に用いることができる材料)
陽極31は、仕事関数の大きい(具体的には4.0eV以上が好ましい)金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることが好ましい。具体的には、例えば、酸化インジウム−酸化スズ(ITO:Indium Tin Oxide)、珪素若しくは酸化珪素を含有した酸化インジウム−酸化スズ、酸化インジウム−酸化亜鉛(Indium Zinc Oxide)、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム等が挙げられる。
【0045】
これらの導電性金属酸化物膜は、通常スパッタリング法により成膜されるが、ゾル−ゲル法などを応用して作製しても構わない。例えば、酸化インジウム−酸化亜鉛膜は、酸化インジウムに対し1〜20wt%の酸化亜鉛を加えたターゲットを用いてスパッタリング法により形成することができる。また、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム膜は、酸化インジウムに対し酸化タングステンを0.5〜5wt%、酸化亜鉛を0.1〜1wt%含有したターゲットを用いてスパッタリング法により形成することができる。
【0046】
この他、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、チタン(Ti)、または金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン等)、モリブデン酸化物、バナジウム酸化物、ルテニウム酸化物、タングステン酸化物、マンガン酸化物、チタン酸化物等が挙げられる。また、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)、ポリアニリン/ポリ(スチレンスルホン酸)(PAni/PSS)等の導電性ポリマーを用いても良い。
【0047】
但し、陽極31と接して電荷発生領域を設ける場合には、仕事関数を考慮せずに様々な導電性材料を陽極31に用いることができる。具体的には、仕事関数の大きい材料だけでなく、仕事関数の小さい材料を用いることもできる。
【0048】
(陰極32に用いることができる材料)
陰極32に接して電荷発生領域を、発光物質を含む有機層33との間に設ける場合、陰極32は仕事関数の大小に関わらず様々な導電性材料を用いることができる。
【0049】
なお、陰極32および陽極31のうち少なくとも一方を、透光性を備えた導電膜を用いて形成する。透光性を備えた導電膜としては、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などを挙げることができる。また、光を透過する程度(好ましくは、5nm〜30nm程度)の金属薄膜を用いることもできる。
【0050】
(発光物質を含む有機層33に用いることができる材料)
上述した発光物質を含む有機層33を構成する各層に用いることができる材料について、以下に具体例を示す。
【0051】
正孔注入層は、正孔注入性の高い物質を含む層である。正孔注入性の高い物質としては、例えば、モリブデン酸化物やバナジウム酸化物、ルテニウム酸化物、タングステン酸化物、マンガン酸化物等を用いることができる。この他、フタロシアニン(略称:HPc)や銅フタロシアニン(略称:CuPc)等のフタロシアニン系の化合物、或いはポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)等の高分子等によっても正孔注入層を形成することができる。
【0052】
なお、電荷発生領域を用いて正孔注入層を形成してもよい。正孔注入層に電荷発生領域を用いると、仕事関数を考慮せずに様々な導電性材料を陽極31に用いることができるのは前述の通りである。
【0053】
正孔輸送層は、正孔輸送性の高い物質を含む層である。正孔輸送性の高い物質としては、例えば、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPBまたはα−NPD)やN,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(略称:TPD)、4−フェニル−4’−(9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)、4,4’,4’’−トリス(カルバゾール−9−イル)トリフェニルアミン(略称:TCTA)、4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’−ビス[N−(スピロ−9,9’−ビフルオレン−2−イル)−N―フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)などの芳香族アミン化合物、3−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)、3,6−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)、3−[N−(1−ナフチル)−N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)等が挙げられる。その他、4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、1,3,5−トリス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]ベンゼン(略称:TCPB)、9−[4−(10−フェニル−9−アントラセニル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPA)等のカルバゾール誘導体、等を用いることができる。ここに述べた物質は、主に10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質である。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。なお、正孔輸送性の高い物質を含む層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。
【0054】
これ以外にも、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(略称:PVK)、ポリ(4−ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)、ポリ[N−(4−{N’−[4−(4−ジフェニルアミノ)フェニル]フェニル−N’−フェニルアミノ}フェニル)メタクリルアミド](略称:PTPDMA)、ポリ[N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)ベンジジン](略称:Poly−TPD)などの高分子化合物を正孔輸送層に用いることができる。
【0055】
発光層は、発光物質を含む層である。発光物質としては、以下に示す蛍光性化合物を用いることができる。例えば、N,N’−ビス[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N,N’−ジフェニルスチルベン−4,4’−ジアミン(略称:YGA2S)、4−(9H−カルバゾール−9−イル)−4’−(10−フェニル−9−アントリル)トリフェニルアミン(略称:YGAPA)、4−(9H−カルバゾール−9−イル)−4’−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)トリフェニルアミン(略称:2YGAPPA)、N,9−ジフェニル−N−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:PCAPA)、ペリレン、2,5,8,11−テトラ−tert−ブチルペリレン(略称:TBP)、4−(10−フェニル−9−アントリル)−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBAPA)、N,N’’−(2−tert−ブチルアントラセン−9,10−ジイルジ−4,1−フェニレン)ビス[N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン](略称:DPABPA)、N,9−ジフェニル−N−[4−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCAPPA)、N−[4−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)フェニル]−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPAPPA)、N,N,N’,N’,N’’,N’’,N’’’,N’’’−オクタフェニルジベンゾ[g,p]クリセン−2,7,10,15−テトラアミン(略称:DBC1)、クマリン30、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCAPA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−2−アントリル]−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCABPhA)、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPAPA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−2−アントリル]−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPABPhA)、9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−N−[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N−フェニルアントラセン−2−アミン(略称:2YGABPhA)、N,N,9−トリフェニルアントラセン−9−アミン(略称:DPhAPhA)、クマリン545T、N,N’−ジフェニルキナクリドン(略称:DPQd)、ルブレン、5,12−ビス(1,1’−ビフェニル−4−イル)−6,11−ジフェニルテトラセン(略称:BPT)、2−(2−{2−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル}−6−メチル−4H−ピラン−4−イリデン)プロパンジニトリル(略称:DCM1)、2−{2−メチル−6−[2−(2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ[ij]キノリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン−4−イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCM2)、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)テトラセン−5,11−ジアミン(略称:p−mPhTD)、7,14−ジフェニル−N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)アセナフト[1,2−a]フルオランテン−3,10−ジアミン(略称:p−mPhAFD)、2−{2−イソプロピル−6−[2−(1,1,7,7−テトラメチル−2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ[ij]キノリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン−4−イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCJTI)、2−{2−tert−ブチル−6−[2−(1,1,7,7−テトラメチル−2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ[ij]キノリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン−4−イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCJTB)、2−(2,6−ビス{2−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル}−4H−ピラン−4−イリデン)プロパンジニトリル(略称:BisDCM)、2−{2,6−ビス[2−(8−メトキシ−1,1,7,7−テトラメチル−2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ[ij]キノリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン−4−イリデン}プロパンジニトリル(略称:BisDCJTM)、SD1(商品名;SFC Co., Ltd製)などが挙げられる。
【0056】
また、発光物質としては、以下に示す燐光性化合物を用いることもできる。例えば、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)テトラキス(1−ピラゾリル)ボラート(略称:FIr6)、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:FIrpic)、ビス[2−(3’,5’−ビストリフルオロメチルフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:Ir(CFppy)(pic))、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:FIracac)、トリス(2−フェニルピリジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(ppy))、ビス(2−フェニルピリジナト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(ppy)(acac))、ビス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(bzq)(acac))、ビス(2,4−ジフェニル−1,3−オキサゾラト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(dpo)(acac))、ビス[2−(4’−パーフルオロフェニルフェニル)ピリジナト]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(p−PF−ph)(acac))、ビス(2−フェニルベンゾチアゾラト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(bt)(acac))、ビス[2−(2’−ベンゾ[4,5−α]チエニル)ピリジナト−N,C3’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(btp)(acac))、ビス(1−フェニルイソキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(piq)(acac))、(アセチルアセトナト)ビス[2,3−ビス(4−フルオロフェニル)キノキサリナト]イリジウム(III)(略称:Ir(Fdpq)(acac))、(アセチルアセトナト)ビス(2,3,5−トリフェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(tppr)(acac))、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィリン白金(II)(略称:PtOEP)、トリス(アセチルアセトナト)(モノフェナントロリン)テルビウム(III)(略称:Tb(acac)(Phen))、トリス(1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオナト)(モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(DBM)(Phen))、トリス[1−(2−テノイル)−3,3,3−トリフルオロアセトナト](モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(TTA)(Phen))、(ジピバロイルメタナト)ビス(2,3,5−トリフェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(tppr)(dpm))などが挙げられる。
【0057】
なお、これらの発光物質は、ホスト材料に分散させて用いるのが好ましい。ホスト材料としては、例えば、NPB(略称)、TPD(略称)、TCTA(略称)、TDATA(略称)、MTDATA(略称)、BSPB(略称)などの芳香族アミン化合物、PCzPCA1(略称)、PCzPCA2(略称)、PCzPCN1(略称)、CBP(略称)、TCPB(略称)、CzPA(略称)、9−フェニル−3−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:PCzPA)、4−フェニル−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBA1BP)などのカルバゾール誘導体、PVK(略称)、PVTPA(略称)、PTPDMA(略称)、Poly−TPD(略称)などの高分子化合物を含む正孔輸送性の高い物質や、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(略称:BAlq)など、キノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンズオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX))、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ))などのオキサゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体、さらに、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)や、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、9−[4−(5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)フェニル]カルバゾール(略称:CO11)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)などの電子輸送性の高い物質を用いることができる。
【0058】
電子輸送層は、電子輸送性の高い物質を含む層である。電子輸送性の高い物質としては、例えば、Alq(略称)、Almq(略称)、BeBq(略称)、BAlq(略称)など、キノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体等を用いることができる。また、この他Zn(BOX)(略称)、Zn(BTZ)(略称)などのオキサゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体なども用いることができる。さらに、金属錯体以外にも、PBD(略称)や、OXD−7(略称)、CO11(略称)、TAZ(略称)、BPhen(略称)、BCP(略称)、2−[4−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]−1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール(略称:DBTBIm−II)なども用いることができる。ここに述べた物質は、主に10−6cm/Vs以上の電子移動度を有する物質である。なお、正孔よりも電子の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。また、電子輸送層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層を二層以上積層したものを用いてもよい。
【0059】
また、高分子化合物を用いることもできる。例えば、ポリ[(9,9−ジヘキシルフルオレン−2,7−ジイル)−co−(ピリジン−3,5−ジイル)](略称:PF−Py)、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−co−(2,2’−ビピリジン−6,6’−ジイル)](略称:PF−BPy)などが挙げられる。
【0060】
電子注入層は、電子注入性の高い物質を含む層である。電子注入性の高い物質としては、リチウム(Li)、セシウム(Cs)、カルシウム(Ca)、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF)等のアルカリ金属、アルカリ土類金属、またはこれらの化合物が挙げられる。また、電子輸送性を有する物質中にアルカリ金属又はアルカリ土類金属又はそれらの化合物を含有させたもの、例えばAlq中にマグネシウム(Mg)を含有させたもの等を用いることもできる。この様な構造とすることにより、陰極32からの電子注入効率をより高めることができる。
【0061】
これらの層を適宜組み合わせて発光物質を含む有機層33を形成する方法としては、種々の方法(例えば、乾式法や湿式法等)を適宜選択することができる。例えば、用いる材料に応じて真空蒸着法、インクジェット法またはスピンコート法などを選んで用いればよい。また、各層で異なる方法を用いて形成してもよい。
【0062】
(電荷発生領域34cに用いることができる材料)
電荷発生領域34cは、正孔輸送性の高い物質とアクセプター性物質を含む領域である。なお、電荷発生領域34cは、同一膜中に正孔輸送性の高い物質とアクセプター性物質を含有する場合だけでなく、正孔輸送性の高い物質を含む層とアクセプター性物質を含む層とが積層されていても良い。但し、電荷発生領域34cを陰極32側に設ける積層構造の場合には、正孔輸送性の高い物質を含む層が陰極32と接する構造となり、電荷発生領域34cを陽極31側に設ける積層構造の場合には、アクセプター性物質を含む層が陽極31と接する構造となる。
【0063】
なお、電荷発生領域34cにおいて、正孔輸送性の高い物質に対して質量比で、0.1以上4.0以下の比率でアクセプター性物質を添加することが好ましい。
【0064】
電荷発生領域34cに用いるアクセプター性物質としては、遷移金属酸化物や元素周期表における第4族乃至第8族に属する金属の酸化物を挙げることができる。具体的には、酸化モリブデンが特に好ましい。なお、酸化モリブデンは、吸湿性が低いという特徴を有している。
【0065】
また、電荷発生領域34cに用いる正孔輸送性の高い物質としては、芳香族アミン化合物、カルバゾール誘導体、芳香族炭化水素、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)など、種々の有機化合物を用いることができる。具体的には、10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質であることが好ましい。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。
【0066】
(電子リレー層34bに用いることができる材料)
電子リレー層34bは、電荷発生領域34cにおいてアクセプター性物質がひき抜いた電子を速やかに受け取ることができる層である。従って、電子リレー層34bは、電子輸送性の高い物質を含む層であり、そのLUMO準位は、電荷発生領域34cにおけるアクセプター性物質のアクセプター準位と、発光物質を含む有機層33のLUMO準位との間に位置する。具体的には、およそ−5.0eV以上−3.0eV以下とするのが好ましい。
【0067】
電子リレー層34bに用いる物質としては、ペリレン誘導体や、含窒素縮合芳香族化合物が挙げられる。なお、含窒素縮合芳香族化合物は、安定な化合物であるため電子リレー層34bに用いる物質として好ましい。さらに、含窒素縮合芳香族化合物のうち、シアノ基やフルオロ基などの電子吸引基を有する化合物を用いることにより、電子リレー層34bにおける電子の受け取りがさらに容易になるため、好ましい。
【0068】
ペリレン誘導体の具体例としては、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物(略称:PTCDA)、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボキシリックビスベンゾイミダゾール(略称:PTCBI)、N,N’−ジオクチルー3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸ジイミド(略称:PTCDI−C8H)、N,N’−ジヘキシルー3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸ジイミド(略称:Hex PTC)等が挙げられる。
【0069】
また、含窒素縮合芳香族化合物の具体例としては、ピラジノ[2,3−f][1,10]フェナントロリン−2,3−ジカルボニトリル(略称:PPDN)、2,3,6,7,10,11−ヘキサシアノ−1,4,5,8,9,12−ヘキサアザトリフェニレン(略称:HAT(CN))、2,3−ジフェニルピリド[2,3−b]ピラジン(略称:2PYPR)、2,3−ビス(4−フルオロフェニル)ピリド[2,3−b]ピラジン(略称:F2PYPR)等が挙げられる。
【0070】
その他にも、7,7,8,8,−テトラシアノキノジメタン(略称:TCNQ)、1,4,5,8,−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(略称:NTCDA)、パーフルオロペンタセン、銅ヘキサデカフルオロフタロシアニン(略称:F16CuPc)、N,N’−ビス(2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−ペンタデカフルオロオクチル)−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド(略称:NTCDI−C8F)、3’,4’−ジブチル−5,5’’−ビス(ジシアノメチレン)−5,5’’−ジヒドロ−2,2’:5’,2’’−テルチオフェン(略称:DCMT)、メタノフラーレン(例えば[6,6]−フェニルC61酪酸メチルエステル)等を電子リレー層34bに用いることができる。
【0071】
(電子注入バッファー34aに用いることができる材料)
電子注入バッファー34aは、電荷発生領域34cから発光物質を含む有機層33への電子の注入を容易にする層である。電子注入バッファー34aを電荷発生領域34cと発光物質を含む有機層33の間に設けることにより、両者の注入障壁を緩和することができる。
【0072】
電子注入バッファー34aには、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、およびこれらの化合物(アルカリ金属化合物(酸化リチウム等の酸化物、ハロゲン化物、炭酸リチウムや炭酸セシウム等の炭酸塩を含む)、アルカリ土類金属化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む)、または希土類金属の化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む))等の電子注入性の高い物質を用いることが可能である。
【0073】
また、電子注入バッファー34aが、電子輸送性の高い物質とドナー性物質を含んで形成される場合には、電子輸送性の高い物質に対して質量比で、0.001以上0.1以下の比率でドナー性物質を添加することが好ましい。なお、ドナー性物質としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、およびこれらの化合物(アルカリ金属化合物(酸化リチウム等の酸化物、ハロゲン化物、炭酸リチウムや炭酸セシウム等の炭酸塩を含む)、アルカリ土類金属化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む)、または希土類金属の化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む))の他、テトラチアナフタセン(略称:TTN)、ニッケロセン、デカメチルニッケロセン等の有機化合物を用いることもできる。なお、電子輸送性の高い物質としては、先に説明した発光物質を含む有機層33の一部に形成することができる電子輸送層の材料と同様の材料を用いて形成することができる。
【0074】
以上のような材料を組み合わせることにより、光源を作製することができる。この光源からは、上述した発光物質からの発光が得られ、その発光色は発光物質の種類を変えることにより選択できる。また、発光色の異なる複数の発光物質を用いることにより、発光スペクトルの幅を拡げて、白色発光を得ることもできる。なお、白色発光を得る場合には、互いに補色となる発光色を呈する発光物質を用いればよい。具体的な補色の関係としては、青色と黄色、又は青緑色と赤色等が挙げられる。
【0075】
<応用例>
本明細書で開示される照明装置は、図1に示した構成要素のみによって構成することも可能であるが、図1に示した構成要素を複数用いて照明装置を構成することも可能である。当該照明装置の構成例を図4に示す。なお、図4(A)は、当該照明装置の断面図であり、図4(B)は、当該照明装置の上面図である。なお、図4(A)に示す断面図は、図4(B)に示されたM−N線における断面図に相当する。
【0076】
図4(A)、(B)に示す照明装置は、内面がマイナスフレネルレンズ形状である複数の領域を含み、且つ外面がフレネルレンズ形状である複数の領域を含む構造体100と、構造体100の内面に密接する高屈折率材料層200と、高屈折率材料層200を介して構造体100上に設けられた複数の面発光体300a〜300cと、隣接する面発光体間のそれぞれに設けられた複数の隔壁400a〜400cと、を有する。すなわち、図4(A)、(B)に示す照明装置は、複数の隔壁400a〜400cによって分離された複数の面発光体300a〜300cが発する光を高屈折率材料層200及び構造体100を介して外部へと放射する照明装置である。当該照明装置においては、各面発光体300a〜300cの光取り出し効率を向上させることが可能であり、発光効率を向上させることが可能である。
【0077】
なお、構造体、高屈折率材料層、及び面発光体の詳細な説明については、上述の内容を援用することとする。また、複数の隔壁400a〜400cは、アクリル、シロキサン、酸化シリコン等を用いて構成することが可能である。なお、複数の隔壁400a〜400cは、無機膜と有機膜のどちらか一方で形成されたものでもよいし、両方を用いて形成されたものでもよい。
【0078】
また、図4(A)においては逆テーパー形状の複数の隔壁400a〜400cが設けられる照明装置について示したが、当該隔壁として順テーパー形状の隔壁を適用することも可能である。
【0079】
また、図4(B)においては円形状の複数の面発光体300a〜300c及び複数の隔壁400a〜400cが設けられる照明装置について示したが、当該面発光体及び当該隔壁として多角形状又は楕円形状の面発光体及び隔壁を適用することも可能である。
【0080】
また、面発光体300a〜300cとして有機ELを利用した光源を適用する場合、図4(C)に示すように当該照明装置を構成することも可能である。具体的には、図4(C)に示す照明装置は、面発光体300a〜300cのそれぞれが、高屈折率材料層200を介して構造体100上に設けられた陽極及び陰極の一方310と、陽極及び陰極の一方310上に設けられた複数の発光物質を含む有機層330a〜330cのいずれか一と、複数の発光物質を含む有機層330a〜330cのいずれか一上に設けられた複数の陽極及び陰極の他方320a〜320cのいずれか一と、を有する。さらに、図4(C)に示す照明装置においては、複数の隔壁400a〜400cが陽極及び陰極の一方310上に設けられている。なお、複数の隔壁400a〜400c上にも発光物質を含む有機層330a〜330c及び陽極及び陰極の他方320a〜320cと同じ層が設けられている。
【0081】
すなわち、図4(C)に示す照明装置は、以下の順序によって作製される照明装置である。まず、高屈折率材料層200上に陽極及び陰極の一方310を形成する。次いで、複数の隔壁400a〜400cを形成する。次いで、陽極及び陰極の一方310及び複数の隔壁400a〜400c上に発光物質を含む有機層を形成する。この時、陽極及び陰極の一方310と複数の隔壁400a〜400cの段差において、当該有機層が段切れする。これにより、分離された陽極及び陰極の一方310上の複数の発光物質を含む有機層330a〜330c並びに複数の隔壁400a〜400cのそれぞれ上の発光物質を含む有機層が形成される。次いで、発光物質を含む有機層上に陽極及び陰極の他方を形成する。この時、同様に、当該陽極及び陰極の他方が段切れする。これにより、分離された複数の発光物質を含む有機層330a〜330cのいずれか一上の陽極及び陰極の他方320a〜320cのいずれか一並びに複数の隔壁400a〜400cのそれぞれ上に発光物質を含む有機層を介して陽極及び陰極の他方が形成される。
【0082】
なお、陽極及び陰極、並びに発光物質を含む有機層の詳細な説明については、上述の内容を援用することとする。
【実施例】
【0083】
本実施例では、本発明の一態様の照明装置を備えた電子機器の一例について説明する。
【0084】
図5(A)は、本発明の一態様の照明装置を電気スタンドとして用いた例である。電気スタンドは、筐体1001と、照明部1003とを有している。そして、照明部1003として、本発明の一態様の照明装置が用いられている。
【0085】
図5(B)は、本発明の一態様の照明装置を、室内用照明装置として用いた例である。室内用照明装置は、筐体1004と、照明部1006とを有している。そして、照明部1006として、本発明の一態様の照明装置が用いられている。
【符号の説明】
【0086】
10 構造体
11 部材
12 部材
13 部材
20 高屈折率材料層
30 面発光体
31 陽極
32 陰極
33 発光物質を含む有機層
33a 発光物質を含む有機層
33b 発光物質を含む有機層
34 中間層
34a 電子注入バッファー
34b 電子リレー層
34c 電荷発生領域
100 構造体
200 高屈折率材料層
300a 面発光体
300b 面発光体
300c 面発光体
310 陽極及び陰極の一方
320a 陽極及び陰極の他方
320b 陽極及び陰極の他方
320c 陽極及び陰極の他方
330a 発光物質を含む有機層
330b 発光物質を含む有機層
330c 発光物質を含む有機層
400a 隔壁
400b 隔壁
400c 隔壁
1001 筐体
1003 照明部
1004 筐体
1006 照明部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内面がマイナスフレネルレンズ形状である領域を含み、且つ外面が凹凸形状である領域を含む構造体と、
前記構造体の内面に密接する高屈折率材料層と、
前記高屈折率材料層を介して前記構造体上に設けられた面発光体と、を有し、
前記構造体及び前記高屈折率材料層は、透光性を有し、
前記高屈折率材料層の屈折率、及び前記面発光体に含まれる発光領域の屈折率は、前記構造体の屈折率よりも0.1以上高いことを特徴とする照明装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記高屈折率材料層の屈折率が、前記面発光体に含まれる発光領域の屈折率から0.1低い値以上であることを特徴とする照明装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記高屈折率材料層の屈折率が、前記面発光体に含まれる発光領域の屈折率以上であることを特徴とする照明装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項において、
前記高屈折率材料層の屈折率が、前記面発光体に含まれる発光領域の屈折率から0.1高い値以下であることを特徴とする照明装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項において、
前記構造体が、前記マイナスフレネルレンズ形状である領域を含む面を備えた第1の部材と、前記凹凸形状である領域を含む面を備えた第2の部材と、を有することを特徴とする照明装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項において、
前記高屈折率材料層の前記面発光体側の面が、平面形状又は略平面形状であることを特徴とする照明装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項において、
前記凹凸形状である領域が、前記マイナスフレネルレンズ形状である領域よりも広いことを特徴とする照明装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか一項において、
前記凹凸形状が、フレネルレンズ形状であることを特徴とする照明装置。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか一項において、
前記面発光体が、有機エレクトロルミネッセンスを利用して発光を行うことを特徴とする照明装置。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれか一項において、
前記発光領域が、前記マイナスフレネルレンズ形状である領域よりも狭いことを特徴とする照明装置。
【請求項11】
複数の請求項10に記載の照明装置が配設されることを特徴とする照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−124154(P2012−124154A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244766(P2011−244766)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】