説明

熱交換器

【課題】熱交換効率の低下を防ぎつつ、生産性の向上を実現できると共に、部品点数の増加及びろう付け部分の増大を少なく抑えることができ、製造時の熱による歪みがほとんどない熱交換器を提供する。
【解決手段】互いに平行を成した状態で左右方向に沿って配置された上下のヘッダパイプ3U,3Lと、これらのヘッダパイプ3U,3L間で上下方向に沿って配置されてヘッダパイプ3U,3Lの双方と連通する複数のチューブ4と、隣接するチューブ4,4間に配置されたフィン5を具備して、ヘッダパイプ3U,3Lの長さ寸法がチューブ4の長さ寸法とほぼ同等に設定された熱交換器構成体2を2個備え、2個の熱交換器構成体2,2は左右方向に並べて配置され、隣接する熱交換器構成体2,2の上側ヘッダパイプ3U,3Uの各端部3b,3b同士が嵌め合いにより接続され、下側ヘッダパイプ3L,3Lの各端部3b,3b同士が嵌め合いにより接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、コンデンサ及びエバポレータの双方の機能を有する車両空調ヒートポンプシステムの室外熱交換器として用いられる熱交換器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、上記した熱交換器としては、例えば、間隔をおいて互いに平行に配置された一対のヘッダパイプと、これらのヘッダパイプ間において僅かな間隔をおいて互いに平行に配置されて上記ヘッダパイプの双方と連通する複数のチューブと、隣接するチューブ間に配置されたフィンを備えたものがある。この熱交換器は、一対のヘッダパイプを上下方向に沿わせると共に、複数のチューブを左右方向に沿わせるようにして設置される、いわゆる冷媒横流れタイプの熱交換器であり、通常、ヘッダパイプの長さ寸法(縦寸法)に比してチューブの長さ寸法(横寸法)が大きくなる関係を成している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような冷媒横流れタイプの熱交換器において、冷媒の蒸発時には、左右方向に沿う複数のチューブの各表面に凝縮水が生じてチューブ上に保水し、ひいては着霜現象が発生して、この霜の層が成長することで熱交換効率が低下してしまう可能性がある。
【0004】
上記着霜現象の発生を抑える、すなわち、複数のチューブの各表面に生じる凝縮水の排除を促し得る熱交換器として、複数のチューブを上下方向に沿わせるようにして配置する、いわゆる冷媒縦流れタイプの熱交換器が開発されている。この冷媒縦流れタイプの熱交換器では、冷媒横流れタイプの熱交換器と比べて、左右方向に沿って配置されるヘッダパイプの長さ寸法(横寸法)が大きくなると共に上下方向に沿うチューブの長さ寸法(縦寸法)が小さくなり、これに伴ってチューブの本数が大幅に増加している(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第2558472号公報
【特許文献2】特許第4052706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記した冷媒縦流れタイプの熱交換器では、チューブの本数が大幅に増加する都合上、複数のチューブ及びフィン個々に対して高い寸法精度が求められ、加えて、ヘッダパイプに多数のチューブ接続孔を所定のピッチで形成する際には、厳しい加工精度が要求され、その結果、生産性が良いとは言えないという問題がある。
【0007】
この場合、ろう付けで装着される別の部品を介してヘッダパイプにチューブを接続する手法も考えられるが、部品点数の増加及びろう付け部分の増大を招くうえ、ヘッダパイプの長さ寸法に合わせて別の部品が長尺化する分だけ、炉内におけるろう付けの際に熱交換器全体に熱による歪みが生じてしまうという問題を有しており、これらの問題を解決することが従来の課題となっていた。
【0008】
本発明は、上記した従来の課題に着目してなされたもので、熱交換効率の低下を防いだうえで、生産性の向上を実現することができると共に、部品点数の増加及びろう付け部分の増大を少なく抑えることが可能であり、加えて、製造時における熱による歪みがほとんどない熱交換器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成するために、本発明の請求項1に係る熱交換器は、互いに平行を成した状態で左右方向に沿ってそれぞれ配置された上下のヘッダパイプと、これらのヘッダパイプ間において上下方向に沿って配置されて該上下のヘッダパイプの双方と連通する複数のチューブと、隣接するチューブ間に配置されたフィンを具備した熱交換器構成体を複数備え、前記複数の熱交換器構成体は左右方向に並べて配置され、互いに隣接する前記熱交換器構成体における前記上側ヘッダパイプの各端部同士が嵌め合いにより接続されていると共に、前記下側ヘッダパイプの各端部同士が嵌め合いにより接続されている構成としたことを特徴としており、この熱交換器の構成を前述した従来の課題を解決するための手段としている。
【0010】
本発明に係る熱交換器では、上下のヘッダパイプ間において多数のチューブが上下方向に沿ってそれぞれ配置されているので、従来の冷媒縦流れタイプの熱交換器と同様に、これら多数のチューブの各表面に生じる凝縮水の排除が促進されて、熱交換効率の低下が少なく抑えられることとなる。
【0011】
このとき、本発明に係る熱交換器は、複数の熱交換器構成体を左右方向に並べて配置して成っているので、上下のヘッダパイプ,多数のチューブ及びフィンは、複数の熱交換器構成体の数に区分けされているので、熱交換器構成体一つひとつが有するチューブの数は全体数に比べて当然少ない。
【0012】
つまり、熱交換器構成体を製作するにあたって、チューブ及びフィンの数量が全体数に比べて少ない分だけ、長さ寸法の管理がし易いのに加えて、上下のヘッダパイプに所定のピッチで形成するチューブ接続孔の孔開け作業が容易である。そして、このように製作が容易な熱交換器構成体を左右方向に並べて配置して、互いに隣接する熱交換器構成体における上下のヘッダパイプの各端部同士を嵌め合いにより接続すれば、熱交換器の製造が完了するので、生産性が向上することとなる。
【0013】
加えて、熱交換器の製造に際して、ヘッダパイプにろう付けで装着される別部品を使用したりしないので、部品点数の増加及びろう付け部分の増大を招くことがなく、熱による歪みの発生も回避されることとなる。
【0014】
また、本発明の請求項2に係る熱交換器は、前記熱交換器構成体における前記ヘッダパイプの長さ寸法が前記チューブの長さ寸法と同等ないし同等以下に設定されている構成としている。
【0015】
このような構成の熱交換器では、熱交換器構成体における上下のヘッダパイプの各長さ寸法が、チューブの長さ寸法よりも短くなればなるほど、熱交換器構成体一つひとつが有するチューブの数は当然少なくなる。
【0016】
つまり、熱交換器構成体を製作するにあたって、上下のヘッダパイプの各長さ寸法をチューブの長さ寸法よりも短くすれば、チューブ及びフィンの数量が少なくなる分だけ、長さ寸法の管理がより一層し易いのに加えて、上下のヘッダパイプに所定のピッチで形成するチューブ接続孔の孔開け作業もより一層容易である。
【0017】
さらに、本発明の請求項3に係る熱交換器は、互いに隣接する前記熱交換器構成体のうちのいずれか一方の熱交換器構成体における前記上下のヘッダパイプの各端部が拡管端部としてそれぞれ形成され、これらのヘッダパイプの各拡管端部に対して、互いに隣接する前記熱交換器構成体のうちのいずれか他方の熱交換器構成体における前記上下のヘッダパイプの各端部が嵌合して接続されている構成としている。
【0018】
このような構成の熱交換器では、互いに隣接する熱交換器構成体における上下のヘッダパイプの各端部同士を嵌め合いにより接続するに際して、ヘッダパイプの各端部間に、双方にろう付けされるような別部品である連結部材を介在させる必要がないので、部品点数及び作業工程の増加が抑えられることとなり、作業工程を少なく抑え得る分だけ、生産性がより向上することとなる。
【0019】
さらにまた、本発明の請求項4に係る熱交換器は、前記いずれか一方側のヘッダパイプにおける拡管端部の内側嵌合面及びこの拡管端部と嵌合して接続されるいずれか他方側のヘッダパイプにおける端部の外側嵌合面が互いにろう付けにより接合される構成としている。
【0020】
このような構成とすると、炉内におけるヘッダパイプとチューブとのろう付けによる接続に際して、ヘッダパイプの端部同士のろう付けによる接続も同時に成されることとなり、加えて、一方側のヘッダパイプにおける拡管端部の内側嵌合面と他方側のヘッダパイプにおける端部の外側嵌合面とが密に接合することとなり、シール性の向上も図られることとなる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の請求項1に係る熱交換器は、上記した構成としているので、熱交換効率の低下を防いだうえで、生産性を向上させることが可能であると共に、部品点数の増加及びろう付け部分の増大を少なく抑えることができ、加えて、熱による歪みがほとんど生じない製造が可能であるという非常に優れた効果がもたらされる。
【0022】
また、本発明の請求項2に係る熱交換器は、上記した構成としているので、生産性の一層の向上を実現させることが可能であり、本発明の請求項3に係る熱交換器は、上記した構成としているので、部品点数及び作業工程の増加を招くことなく、生産性をより一層向上させることが可能であり、本発明の請求項4に係る熱交換器は、上記した構成としているので、生産性のより一層の向上に加えてシール性の向上をも実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係る熱交換器の正面説明図である。
【図2】図1に示した熱交換器の熱交換器構成体同士の連結部分における拡大斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1及び図2は、本発明の一実施形態による熱交換器を示しており、図1に示すように、この熱交換器1は、冷媒縦流れタイプの熱交換器であって、2個の熱交換器構成体2,2を左右方向に並べて配置して成っている。
【0025】
この熱交換器構成体2は、互いに平行を成した状態で左右方向に沿ってそれぞれ配置された上下のヘッダパイプ3U,3Lと、これらのヘッダパイプ3U,3L間において上下方向に沿い且つ僅かな間隔をおいて互いに平行に配置されて該上下のヘッダパイプ3U,3Lの双方と連通する複数のチューブ4と、隣接するチューブ4,4間に配置されたフィン5を具備しており、複数のチューブ4は、ヘッダパイプ3U,3Lにそれぞれ等ピッチで形成されたチューブ接続孔3aにろう付けにより接続されている。
【0026】
この実施形態において、熱交換器構成体2のヘッダパイプ3U,3Lの長さ寸法は、チューブ4の長さ寸法とほぼ同等に設定されており、左右方向に並ぶ2個の熱交換器構成体2,2は、互いに隣接する上側ヘッダパイプ3U,3Uの各端部3b,3b同士を嵌め合いにより接続すると共に、互いに隣接する下側ヘッダパイプ3L,3Lの各端部3b,3b同士を嵌め合いにより接続することで連結されている。
【0027】
この場合、図2にも示すように、左右方向に並ぶ熱交換器構成体2,2のうちの左側の熱交換器構成体2における上下のヘッダパイプ3U,3Lの各端部3b,3bは、拡管端部3B,3Bとしてそれぞれ形成されており、これら左側のヘッダパイプ3U,3Lの各拡管端部3B,3Bと、右側の熱交換器構成体2における上下のヘッダパイプ3U,3Lの各端部3b,3bとが互いに嵌合するようになっている。
【0028】
この際、上記左側のヘッダパイプ3U,3Lにおける拡管端部3B,3Bの各内側嵌合面3c,3c及びこの拡管端部3B,3Bと嵌合する右側のヘッダパイプ3U,3Lにおける端部3b,3bの外側嵌合面3d,3dは、ろう付けで接合されるようになっている。
なお、図中における符号6は、熱交換器構成体2の左右端部に位置するフィン5を押さえるカバーである。
【0029】
このような構成を成す熱交換器1では、上下のヘッダパイプ3U,3L間において多数のチューブ4が上下方向に沿ってそれぞれ配置されているので、従来の冷媒縦流れタイプの熱交換器と同様に、これら多数のチューブ4の各表面に生じる凝縮水の排除が促進されて、熱交換効率の低下が少なく抑えられることとなる。
【0030】
また、この熱交換器1において、2個の熱交換器構成体2,2を左右方向に並べて配置して成っているので、多数のチューブ4及びフィン5は、上下のヘッダパイプ3U,3Lとともにそれぞれ2組に区分けされ、熱交換器構成体2一つひとつが有するチューブ4の数は全体数に比べて半分になる。
【0031】
つまり、熱交換器構成体2を製作するにあたっては、チューブ4及びフィン5の数量が全体数の半分になっている分だけ、長さ寸法の管理がし易いのに加えて、上下のヘッダパイプ3U,3Lに所定のピッチで形成するチューブ接続孔3aの孔開け作業が容易なものとなる。
【0032】
そして、このように製作が容易な熱交換器構成体2,2を左右方向に並べて配置して、上下のヘッダパイプ3U,3Lの互いに隣接する各端部同士3b,3bを嵌め合いにより接続すれば、熱交換器1の製造が完了するので、生産性が向上することとなる。
【0033】
加えて、熱交換器1の製造に際して、ヘッダパイプ3U,3Lにろう付けで装着される別部品を使用したりしないので、部品点数の増加及びろう付け部分の増大を招くことがなく、熱による歪みの発生も回避されることとなる。
【0034】
また、この実施形態に係る熱交換器1では、図示左側の熱交換器構成体2における上下のヘッダパイプ3U,3Lの各端部3b,3bを拡管端部3B,3Bとしてそれぞれ形成し、これらの拡管端部3B,3Bと、図示右側の熱交換器構成体2における上下のヘッダパイプ3U,3Lの各端部3b,3bとを嵌合させるようにしているので、互いに隣接する上下のヘッダパイプ3U,3Lの双方にろう付けされるような別部品である連結部材を介在させる必要がなく、したがって、部品点数及び作業工程の増加が抑えられることとなり、作業工程を少なく抑え得る分だけ、生産性がより向上することとなる。
【0035】
さらに、この実施形態に係る熱交換器1では、上記拡管端部3B,3Bの各内側嵌合面3c,3c及びこの拡管端部3B,3Bと嵌合する図示右側のヘッダパイプ3U,3Lにおける端部3b,3bの外側嵌合面3d,3dが、互いにろう付けで接合されるようになっているので、図外の炉内においてヘッダパイプ3U,3Lとチューブ4とをろう付けにより接続する際に、ヘッダパイプ3U,3Lの端部3B,3b同士のろう付けによる接続も同時に成されることとなり、加えて、拡管端部3Bの内側嵌合面3cと、拡管端部3Bと嵌合する端部3bの外側嵌合面3dとが密に接合することとなって、シール性の向上も図られることとなる。
【0036】
上記した実施形態では、熱交換器1が2個の熱交換器構成体2,2を左右方向に並べて配置して成っている場合を説明したが、これに限定されるものではなく、熱交換器構成体2を3個以上並べる構成としてもよい。
【0037】
また、上記した実施形態では、熱交換器構成体2のヘッダパイプ3U,3Lの長さ寸法が、チューブ4の長さ寸法とほぼ同等の場合を示したが、これに限定されるものではなく、ヘッダパイプ3U,3Lの長さ寸法をチューブ4の長さ寸法よりも小さく設定するようにしてもよい。
【0038】
さらに、上記した実施形態では、上記拡管端部3B,3Bの各内側嵌合面3c,3c及びこの拡管端部3B,3Bと嵌合する端部3b,3bの各外側嵌合面3d,3dの双方をろう付けで接合する構成としているが、この際、拡管端部3Bの内側嵌合面3c及びこの拡管端部3Bと嵌合する端部3bの外側嵌合面3dのうちの少なくともいずれかをろう付け材で形成することが望ましい。
【0039】
さらにまた、本発明に係る熱交換器の構成は、上記した実施形態の構成に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0040】
1 熱交換器
2 熱交換器構成体
3B 拡管端部(ヘッダパイプの端部)
3L 下側のヘッダパイプ
3U 上側のヘッダパイプ
3b ヘッダパイプの端部
3c 拡管端部の内側嵌合面
3d ヘッダパイプの端部の外側嵌合面
4 チューブ
5 フィン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行を成した状態で左右方向に沿ってそれぞれ配置された上下のヘッダパイプと、これらのヘッダパイプ間において上下方向に沿って配置されて該上下のヘッダパイプの双方と連通する複数のチューブと、隣接するチューブ間に配置されたフィンを具備した熱交換器構成体を複数備え、
前記複数の熱交換器構成体は左右方向に並べて配置され、互いに隣接する前記熱交換器構成体における前記上側ヘッダパイプの各端部同士が嵌め合いにより接続されていると共に、前記下側ヘッダパイプの各端部同士が嵌め合いにより接続されている
ことを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
前記熱交換器構成体における前記ヘッダパイプの長さ寸法が前記チューブの長さ寸法と同等ないし同等以下に設定されている請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
互いに隣接する前記熱交換器構成体のうちのいずれか一方の熱交換器構成体における前記上下のヘッダパイプの各端部が拡管端部としてそれぞれ形成され、これらのヘッダパイプの各拡管端部に対して、互いに隣接する前記熱交換器構成体のうちのいずれか他方の熱交換器構成体における前記上下のヘッダパイプの各端部が嵌合して接続されている請求項1又は2に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記いずれか一方側のヘッダパイプにおける拡管端部の内側嵌合面及びこの拡管端部と嵌合して接続されるいずれか他方側のヘッダパイプにおける端部の外側嵌合面が互いにろう付けにより接合される請求項3に記載の熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−145269(P2012−145269A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3963(P2011−3963)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【出願人】(000001845)サンデン株式会社 (1,791)
【Fターム(参考)】