説明

熱交換器

【課題】別体として構成された複数のインナーフィンを熱媒体流路内に積層した熱交換器において、隣り合うインナーフィン間の位置ズレを抑制する。
【解決手段】インナーフィン33を、熱媒体の流れ方向に直交する断面形状が波形状となるように形成するとともに、流路管3と電子部品2との配置方向に複数段積層し、複数段積層されたインナーフィン33のうち、一のインナーフィン33を第1インナーフィン33Aとし、第1インナーフィン33Aに隣り合うインナーフィン33を第2インナーフィン33Bとしたとき、第2インナーフィン33Bに、第1インナーフィン33A側に突出する突出部7を設け、突出部7に、第1インナーフィン33Aの板部331と平行に延びるとともに第1インナーフィン33Aの板部331に接触する突出板部71を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路管内部を流通する熱媒体と、流路管外部に配置された熱交換対象物との間で熱交換を行う熱交換器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の熱交換器において、熱交換性能を向上させるために、熱媒体が流通する流路管内に、熱媒体と流路管との伝熱面積を増大させて熱媒体と熱交換対象物との熱交換を促進するインナーフィンを設けたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載された熱交換器では、1枚の金属板を折り曲げることにより、インナーフィンを流路管の積層方向に2段積層している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−10418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に記載された熱交換器では、1枚の金属板を折り曲げる際の折り曲げ部分を起点として割れが発生する可能性がある。これに対し、インナーフィンを複数段積層する方法として、複数のインナーフィンを別々に形成した後、それらを積層する手法が考えられる。しかしながら、別体として構成されたインナーフィンを、位置ズレが生じないように複数段積層することは非常に困難である。
【0005】
本発明は上記点に鑑みて、別体として構成された複数のインナーフィンを熱媒体流路内に積層した熱交換器において、隣り合うインナーフィン間の位置ズレを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、流路形成部材(3)内には、熱媒体流路(30)を複数の細流路(333)に分割するとともに、熱媒体と熱交換対象物(2)との熱交換を促進するインナーフィン(33)が設けられており、インナーフィン(33)は、熱媒体の流れ方向に延びるとともに細流路(333)を分割する板部(331)と、隣り合う板部(331)間を繋ぐ連結部(332)とを有し、熱媒体の流れ方向に直交する断面形状が波形状となるように形成されるとともに、流路形成部材(3)と熱交換対象物(2)との配置方向に複数段積層されており、複数段積層されたインナーフィン(33)は、別体として構成されており、複数段積層されたインナーフィン(33)のうち、一のインナーフィン(33)を第1インナーフィン(33A)とし、第1インナーフィン(33A)に隣り合うインナーフィン(33)を第2インナーフィン(33B)としたとき、第2インナーフィン(33B)には、第1インナーフィン(33A)側に突出する突出部(7)が設けられており、突出部(7)は、第1インナーフィン(33A)の板部(331)と平行に延びるとともに第1インナーフィン(33A)の板部(331)に接触する突出板部(71)を有していることを特徴としている。
【0007】
このように、第2インナーフィン(33B)に突出板部(71)を有する突出部(7)を設け、第1インナーフィン(33A)の板部(331)と平行に延びる突出板部(71)と、当該第1インナーフィン(33A)の板部(331)とを接触させることで、突出板部(71)により、第1インナーフィン(33A)が熱媒体の流れ方向に直交する方向に移動することを規制できる。このため、第1インナーフィン(33A)が、第2インナーフィン(33B)に対して、熱媒体の流れ方向に直交する方向に位置ズレすることを抑制できる。したがって、隣り合うインナーフィン間の位置ズレを抑制することが可能となる。
【0008】
なお、本発明における「平行」とは、完全に平行となっていることのみを意味するものではなく、製造誤差、組付誤差によって微小に異なるものも「平行」という用語の範囲内に含むものとする。
【0009】
また、請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の熱交換器において、突出部(7)は、第2インナーフィン(33B)における熱媒体の流れ方向の一部を切り起こすことにより形成されていることを特徴としている。
【0010】
このように、突出部(7)を第2インナーフィン(33B)の一部を切り起こすことにより形成すると、第2インナーフィン(33B)における当該切り起こされた部分には切り欠き部(8)が形成されることになる。この場合、熱媒体流路(30)のうち切り欠き部(8)を熱媒体が優先的に流れるので、熱媒体流路(30)におけるインナーフィン(33)が存在する領域を流れる熱媒体の流量が減少し、熱交換効率が低下するおそれがある。
【0011】
これに対し、突出部(7)を第2インナーフィン(33B)における熱媒体の流れ方向の一部にのみ配置することで、第2インナーフィン(33B)に突出部(7)を形成することによる熱交換効率の低下を抑制することが可能となる。
【0012】
また、請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の熱交換器において、熱交換対象物(2)は、流路形成部材(3)の外部における熱媒体の流れ方向の一部に配置されており、突出部(7)は、流路形成部材(3)内における熱交換対象物(2)と対応する部位以外の部位に設けられていることを特徴としている。
【0013】
これによれば、第2インナーフィン(33B)の一部を切り起こすことにより突出部(7)を形成した際にできる切り欠き部(8)を、流路形成部材(3)内における熱交換対象物(2)と対応する部位以外の部位に配置することができる。このため、流路形成部材(3)内における熱交換対象物(2)と対応する部位における熱交換効率の低下を抑制することが可能となる。したがって、第2インナーフィン(33B)に突出部(7)を形成することによる熱交換効率の低下を、より確実に抑制することが可能となる。
【0014】
また、請求項4に記載の発明では、請求項1に記載の熱交換器において、インナーフィン(33)は、配置方向に3段以上積層されており、複数段積層されたインナーフィン(33)のうち、一のインナーフィン(33)を第1インナーフィン(33A)とし、第1インナーフィン(33A)に隣り合うインナーフィン(33)を第2インナーフィン(33B)とし、第2インナーフィン(33B)における第1インナーフィン(33A)と反対側に隣り合うインナーフィン(33)を第3インナーフィン(33C)としたとき、第2インナーフィン(33B)には、第1インナーフィン(33A)側に突出する第1突出部(7A)と、第3インナーフィン(33C)側に突出する第2突出部(7B)とが設けられており、第1突出部(7A)は、第1インナーフィン(33A)の板部(331)と平行に延びるとともに第1インナーフィン(33A)の板部(331)に接触する第1突出板部(71A)を有しており、第2突出板部(7B)は、第3インナーフィン(33C)の板部(331)と平行に延びるとともに第3インナーフィン(33C)の板部(331)に接触する第2突出板部(71B)を有していることを特徴としている。
【0015】
このように、インナーフィン(33)を3段以上積層する場合において、3段のインナーフィン(33)のうちの1つのインナーフィン(33B)のみに突出部(7A、7B)を設けることで、突出部(7)を形成するための加工が必要なインナーフィン(33)の点数を削減できる。このため、生産性を向上することが可能となる。
【0016】
また、請求項5に記載の発明では、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の熱交換器において、インナーフィン(33)は、配置方向から見た際に板部(331)が熱媒体の流れ方向に三角波形状に屈折するウェーブフィンであり、インナーフィン(33)の板部(331)のうち、当該三角波形状の頂点を構成する部位を頂点部(3312)とし、隣り合う頂点部(3312)間に位置する部位を波面部(3313)とするとともに、インナーフィン(33)の板部(331)における1つの頂点部(3312)に接続される2つの波面部(3313)のうち、熱媒体の流れ方向上流側のものを上流側波面部(3314)とし、熱媒体の流れ方向下流側のものを下流側波面部(3315)としたとき、突出部(7)は、第1インナーフィン(33A)の上流側波面部(3314)と平行に延びるとともに第1インナーフィン(33A)の上流側波面部(3314)に接触する上流側突出板部(711)と、第1インナーフィン(33A)の下流側波面部(3315)と平行に延びるとともに第1インナーフィン(33A)の下流側波面部(3315)に接触する下流側突出板部(712)とを有していることを特徴としている。
【0017】
これによれば、第1インナーフィン(33A)はウェーブフィンなので、第1インナーフィン(33A)の上流側波面部(3314)および下流側突出板部(712)は、熱媒体の流れ方向に直交する方向および熱媒体流れ方向に対して共に傾斜している。また、突出部(7)の上流側突出板部(711)は、第1インナーフィン(33A)の上流側波面部(3314)と平行に延びているので、熱媒体の流れ方向に直交する方向および熱媒体流れ方向に対して共に傾斜している。同様に、突出部(7)の下流側突出板部(712)は、第1インナーフィン(33A)の下流側突出板部(712)と平行に延びているので、熱媒体の流れ方向に直交する方向および熱媒体流れ方向に対して共に傾斜している。
【0018】
このため、第2インナーフィン(33B)に設けられた突出部(7)の上流側突出板部(711)と、第1インナーフィン(33A)の上流側波面部(3314)とを接触させるとともに、第2インナーフィン(33B)に設けられた突出部(7)の下流側突出板部(712)と、第1インナーフィン(33A)の下流側波面部(3315)とを接触させることで、上流側突出板部(711)および下流側突出板部(712)により、第1インナーフィン(33A)が熱媒体の流れ方向に直交する方向および熱媒体の流れ方向に移動することを規制できる。これにより、第1インナーフィン(33A)が、第2インナーフィン(33B)に対して、熱媒体の流れ方向に直交する方向および熱媒体の流れ方向に位置ズレすることを抑制できる。したがって、隣り合うインナーフィン間の位置ズレをより確実に抑制することが可能となる。
【0019】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1実施形態に係る積層型熱交換器1を示す正面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】第1実施形態における第2インナーフィン33Bを示す斜視図である。
【図4】第2実施形態における流路管3近傍を示す拡大断面図である。
【図5】第2実施形態における第2インナーフィン33Bを示す斜視図である。
【図6】第3実施形態における流路管3近傍を示す拡大断面図である。
【図7】第3実施形態における第2インナーフィン33Bを示す斜視図である。
【図8】第4実施形態における流路管3近傍を示す拡大断面図である。
【図9】第4実施形態における第2インナーフィン33Bを示す斜視図である。
【図10】(a)は第4実施形態における2段積層されたインナーフィン33を示す模式的な平面図、(b)は第4実施形態における2段積層されたインナーフィン33を流路管長手方向から見た模式的な断面図である。
【図11】第5実施形態に係る熱交換器を示す分解斜視図である。
【図12】第5実施形態に係る熱交換器を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0022】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について図1〜図3に基づいて説明する。図1は、本第1実施形態に係る積層型熱交換器1を示す正面図である。
【0023】
図1に示すように、本実施形態の積層型熱交換器1は、熱交換対象物としての複数の電子部品2を両面から冷却するもので、熱媒体を流通させる熱媒体流路30(図2参照)を形成する流路形成部材としての複数の流路管3と、複数の流路管3を連通する連通部材4とを備えている。複数の流路管3は、扁平形状に形成されており、電子部品2を両面から挟持できるように複数個積層配置されている。
【0024】
本実施形態では、電子部品2として、IGBT等の半導体素子とダイオードとを内蔵した半導体モジュールを用いている。当該半導体モジュールは、自動車用インバータ、産業機器のモータ駆動インバータ、ビル空調用のエアコンインバータ等に用いるものとすることができる。なお、電子部品2としては、上記半導体モジュール以外にも、例えば、パワートランジスタ、パワーFET、IGBT等を用いることもできる。
【0025】
また、熱媒体としては、空気、水、油などの流体を用いている。より具体的には、例えば、この積層型熱交換器1を自動車に搭載した場合、熱媒体としては自動車の冷却水やオイル等を用いることができる。なお、本実施形態では、熱媒体として、エチレングリコール系の不凍液を混入させた水を用いている。
【0026】
図2は図1のA−A断面図である。図2に示すように、本実施形態の流路管3は、いわゆるドロンカップ構造となっている。すなわち、流路管3は、一対の外殻プレート31を有して構成されており、一対の外殻プレート31の間に熱媒体流路30が形成されている。流路管3内には、熱媒体流路30を複数の細流路333に分割し、熱媒体と電子部品2との熱交換を促進するインナーフィン33が設けられている。このインナーフィン33の詳細については後述する。
【0027】
図1に戻り、電子部品2は、流路管3の外部における熱媒体の流れ方向の一部に配置されている。具体的には、電子部品2は、流路管3の一対の外殻プレート31それぞれに対して2個ずつ設けられている。各外殻プレート31に設けられた2つの電子部品2は、それぞれ熱媒体の流れ方向に直列に配置されている。なお、本実施形態では、電子部品2は各外殻プレート31に2個設けられているが、電子部品2は1個であってもよいし、3個以上設けられていてもよい
また、流路管3の外殻プレート31における長手方向両端部には、外側、すなわち隣り合う他の流路管3側に突出する略円筒状のフランジ部300が形成されている。そして、隣り合う流路管3のフランジ部300同士をろう付けにより接合することにより、複数の流路管3を連通する連通部材4が形成されている。
【0028】
複数の流路管3のうち積層方向最外側に配置される流路管3を外側流路管3aとしたとき、2つの外側流路管3aのうち一方の外側流路管3aの長手方向両端部には、熱媒体を積層型熱交換器1に導入するための熱媒体導入口401と、熱媒体を積層型熱交換器1から排出するための熱媒体排出口402とがそれぞれ接続されている。熱媒体導入口401および熱媒体排出口402は、ろう付けにより一方の外側流路管3aに接合されている。なお、本実施形態の流路管3、連通部材4、熱媒体導入口401および熱媒体排出口402は、アルミニウム製である。
【0029】
熱媒体導入口401から導入された熱媒体は、連通部材4を通って長手方向における一方の端部から各流路管3に流入し、それぞれの熱媒体流路30内を他方の端部に向かって流れる。そして、熱媒体は、連通部材4を通って熱媒体排出口402から排出される。このように、熱媒体が熱媒体流路30を流通する間に、電子部品2との間で熱交換を行って、電子部品2を冷却するようになっている。
【0030】
図2に示すように、インナーフィン33は、熱媒体の流れ方向、すなわち流路管3の長手方向に垂直な断面形状が、凸部を一方側と他方側に交互に位置させて曲折する波形状に形成されている。具体的には、インナーフィン33は、流路管長手方向に延びるとともに細流路333を分割する板部331と、隣り合う板部331間を繋ぐ連結部332とを有し、流路管長手方向に直交する断面形状が台形波状に形成されたストレートフィンである。
【0031】
インナーフィン33は、1つの流路管3内に、流路管3と電子部品との配置方向、すなわち、流路管3の積層方向に2段積層されている。各段のインナーフィン33は、別体として形成されている。
【0032】
ここで、インナーフィン33における1つの板部331に接続される2つの連結部332のうち、流路管3と電子部品2との配置方向、すなわち流路管積層方向の一側(図2における上側)に配置されるものを頂部61とし、流路管積層方向の他側(図2における下側)に配置されるものを谷部62とする。また、2段のインナーフィン33のうち、流路管積層方向の一側(図2における上側)に配置されるものを第1インナーフィン33Aといい、流路管積層方向の他側(図4における下側)に配置されるものを第2インナーフィン33Bという。
【0033】
また、流路管長手方向および流路管積層方向に対してともに直交する方向を、流路幅方向とする。また、インナーフィン33における流路幅方向両端部に配置される頂部61を外側頂部610とする。また、インナーフィン33における流路幅方向両端部に配置される谷部62を外側谷部620とする。また、インナーフィン33における流路幅方向両端部に配置される板部331を外側板部3310とする。
【0034】
2段のインナーフィン33は、第1インナーフィン33Aの谷部62と第2インナーフィン33Bの頂部61とが接触するように配置されている。また、2段のインナーフィン33における流路幅方向の両端部には、それぞれ頂部61が配置されている。
【0035】
第2インナーフィン33Bの流路幅方向の長さは、第1インナーフィン33Aの流路幅方向の長さより短くなっている。具体的には、第2インナーフィン33Bの外側頂部610が、第1インナーフィン33Aの外側谷部620に接触している。
【0036】
第2インナーフィン33Bの流路幅方向両端部には、第1インナーフィン33A側に向かって突出する突出部7が設けられている。突出部7は、第2インナーフィン33Bの外側頂部610に接続されている。より詳細には、突出部7は、第2インナーフィン33Bの外側頂部610に接続される突出板部71と、突出板部71に接続される突出頂部72を有して構成されている。
【0037】
突出板部71は、第1インナーフィン33Aの外側板部3310と平行に延びるとともに、当該外側板部3310における流路幅方向外側の面と全面に亘って接触している。突出頂部72は、第1インナーフィン33Aの外側頂部610と平行に延びるとともに、当該外側頂部610における第2インナーフィン33B側の面と全面に亘って接触している。
【0038】
図3は、本第1実施形態における第2インナーフィン33Bを示す斜視図である。図3に示すように、突出部7、すなわち突出板部71および突出頂部72は、第2インナーフィン33Bの長手方向、すなわち熱媒体の流れ方向の全域に亘って設けられている。本実施形態では、突出部7は、第2インナーフィン33Bと一体に形成されている。
【0039】
以上説明したように、第2インナーフィン33Bに突出板部71を有する突出部7を設け、第1インナーフィン33Aの外側板部3310と平行に延びる突出板部71と、当該第1インナーフィン33Aの外側板部3310とを接触させることで、突出板部71により、第1インナーフィン33Aが流路幅方向に移動することを規制できる。このため、第1インナーフィン33Aが、第2インナーフィン33Bに対して、熱媒体の流れ方向に直交する方向に位置ズレすることを抑制できる。したがって、隣り合うインナーフィン33間の位置ズレを抑制することが可能となる。
【0040】
また、突出部7に、第1インナーフィン33Aの外側頂部610と平行に延びる突出頂部72を設け、突出頂部72と当該第1インナーフィン33Aの外側頂部610とを接触させることで、第1インナーフィン33Aと第2インナーフィン33Bとの位置合わせを容易に行うことが可能となる。
【0041】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図4および図5に基づいて説明する。本第2実施形態は、上記第1実施形態と比較して、インナーフィン33の積層段数および突出部7の構成が異なるものである。図4は、本第2実施形態における流路管3近傍を示す拡大断面図であり、第1実施形態の図2に対応する図面である。
【0042】
図4に示すように、本実施形態では、インナーフィン33は、1つの流路管3内に、流路管3と電子部品との配置方向、すなわち、流路管3の積層方向に3段積層されている。各段のインナーフィン33の流路幅方向の長さは、略同一になっている。
【0043】
ここで、3段のインナーフィン33のうち、流路管積層方向の一側(図4における上側)に配置されるものを第1インナーフィン33Aという。また、3段のインナーフィン33のうち、第1インナーフィン33Aに隣り合うものを第2インナーフィン33Bという。また、3段のインナーフィン33のうち、第2インナーフィン33Bにおける第1インナーフィン33Aと反対側(図4における下側)に隣り合うものを第3インナーフィン33Cという。すなわち、第1インナーフィン33Aと第3インナーフィン33Cとの間に、第2インナーフィン33Bが配置されている。
【0044】
3段のインナーフィン33は、第1インナーフィン33Aの谷部62と第2インナーフィン33Bの頂部61とが接触するとともに、第2インナーフィン33Bの谷部62と第3インナーフィン33Cの頂部61とが接触するように配置されている。また、第1インナーフィン33Aおよび第3インナーフィン33Cにおける流路幅方向の両端部には、それぞれ頂部61が配置されている。一方、第2インナーフィン33Bにおける流路幅方向の両端部には、谷部62が配置されている。
【0045】
第2インナーフィン33Bの流路幅方向両端部には、第1インナーフィン33A側に向かって突出する第1突出部7Aが設けられている。第1突出部7Aは、第2インナーフィン33Bの外側頂部610に接続されている。より詳細には、第1突出部7Aは、第2インナーフィン33Bの外側頂部610に接続される第1突出板部71Aと、第1突出板部71Aに接続される第1突出頂部72Aを有して構成されている。
【0046】
第1突出板部71Aは、第1インナーフィン33Aの外側板部3310と平行に延びるとともに、当該外側板部3310における流路幅方向外側の面と全面に亘って接触している。第1突出頂部72Aは、第1インナーフィン33Aの外側頂部610と平行に延びるとともに、当該外側頂部610における第2インナーフィン33B側の面と全面に亘って接触している。
【0047】
第3インナーフィン33Cの流路幅方向両端部には、第2インナーフィン33B側に向かって突出する第2突出部7Bが設けられている。第2突出部7Bは、第2インナーフィン33Bにおける外側頂部610より流路幅方向内側に位置するとともに当該外側頂部610と隣り合う頂部61(以下、第2外側頂部611という)に接続されている。より詳細には、第2突出部7Bは、第2インナーフィン33Bにおける第2外側頂部611に接続される第2突出板部71Bと、第2突出板部71Bに接続される第2突出頂部72Bを有して構成されている。
【0048】
第2突出板部71Bは、第2インナーフィン33Bにおける外側板部3310より流路管幅方向内側に位置するとともに当該外側板部3310と隣り合う板部331(以下、第2外側板部3311という)と平行に延びるとともに、当該第2外側板部3311における流路幅方向外側の面と全面に亘って接触している。第2突出頂部72Bは、第2インナーフィン33Bの外側頂部610と平行に延びるとともに、当該外側頂部610における第3インナーフィン33C側の面と全面に亘って接触している。
【0049】
図5は、本第2実施形態における第2インナーフィン33Bを示す斜視図である。図5に示すように、第1突出部7A、すなわち第1突出板部71Aおよび第1突出頂部72Aは、第2インナーフィン33Bの長手方向、すなわち熱媒体の流れ方向の一部に設けられている。
【0050】
ところで、電子部品2は、流路管3の外部における熱媒体の流れ方向の一部に配置されている。具体的には、電子部品2は、流路管3の外側における熱媒体流れ方向中央部を除く部位、すなわち熱媒体流れ方向上流側の部位と、熱媒体流れ方向下流側の部位に、1つずつ配置されている。
【0051】
図5に示されるように、第1突出部7Aは、第2インナーフィン33Bにおける熱媒体流れ方向の一部である略中央部に設けられている。また、図示を省略しているが、第2突出部7Bは、第3インナーフィン33Cにおける熱媒体流れ方向の一部である略中央部に設けられている。したがって、第1突出部7Aおよび第2突出部7Bは、流路管3内における電子部品2と対応する部位以外の部位に設けられている。
【0052】
本実施形態の第1突出部7Aは、第2インナーフィン33Bの一部を切り起こすことにより形成される。具体的には、まず、第2インナーフィン33Bにおける外側谷部620および外側板部3310に、熱媒体の流れ方向に直交する切り込みを2つ平行に形成する。続いて、第2インナーフィン33Bにおける当該2つの切り込みの間の部分を、第1インナーフィン33A側(図5の紙面上側)に押し上げることにより、第1突出部7Aが形成される。このため、第2インナーフィン33Bの外側谷部620および外側板部3310には、切り欠き部8が形成される。
【0053】
図示を省略しているが、第2突出部7Bは、第3インナーフィン33Cの一部を切り起こすことにより形成される。具体的には、まず、第3インナーフィン33Cにおける外側谷部620および第2外側板部3311に、熱媒体の流れ方向に直交する切り込みを2つ平行に形成する。続いて、第2インナーフィン33Bにおける当該2つの切り込みの間の部分を、第2インナーフィン33B側に押し上げることにより、第2突出部7Bが形成される。このため、第3インナーフィン33Cの外側谷部620および外側板部3310には、切り欠き部が形成される。
【0054】
以上説明したように、第2インナーフィン33Bに第1突出板部71Aを有する第1突出部7Aを設け、第1インナーフィン33Aの外側板部3310と平行に延びる第1突出板部71Aと、当該第1インナーフィン33Aの外側板部3310とを接触させることで、第1突出板部71Aにより、第1インナーフィン33Aが流路幅方向に移動することを規制できる。このため、第1インナーフィン33Aが、第2インナーフィン33Bに対して、熱媒体の流れ方向に直交する方向に位置ズレすることを抑制できる。
【0055】
また、第3インナーフィン33Cに第2突出板部71Bを有する第2突出部7Bを設け、第2インナーフィン33Bの第2外側板部3311と平行に延びる第2突出板部71Bと、当該第2インナーフィン33Bの第2外側板部3311とを接触させることで、第2突出板部71Bにより、第2インナーフィン33Bが流路幅方向に移動することを規制できる。このため、第2インナーフィン33Bが、第3インナーフィン33Cに対して、熱媒体の流れ方向に直交する方向に位置ズレすることを抑制できる。
【0056】
したがって、隣り合うインナーフィン33間の位置ズレを抑制することが可能となる。
【0057】
また、第1突出部7Aに、第1インナーフィン33Aの外側頂部610と平行に延びる第1突出頂部72Aを設け、第1突出頂部72Aと当該第1インナーフィン33Aの外側頂部610とを接触させることで、第1インナーフィン33Aと第2インナーフィン33Bとの位置合わせを容易に行うことが可能となる。
【0058】
また、第2突出部7Bに、第2インナーフィン33Bの外側頂部610と平行に延びる第2突出頂部72Bを設け、第2突出頂部72Bと当該第2インナーフィン33Bの外側頂部610とを接触させることで、第2インナーフィン33Bと第3インナーフィン33Cとの位置合わせを容易に行うことが可能となる。
【0059】
ところで、第1突出部7Aを、第2インナーフィン33Bの一部を切り起こすことにより形成すると、第2インナーフィン33Bにおける当該切り起こされた部分には切り欠き部8が形成されることになる。同様に、第2突出部7Bを、第3インナーフィン33Cの一部を切り起こすことにより形成すると、第3インナーフィン33Cにおける当該切り起こされた部分には切り欠き部が形成されることになる。この場合、熱媒体流路30のうち切り欠き部8を熱媒体が優先的に流れるので、熱媒体流路30におけるインナーフィン33が存在する領域を流れる熱媒体の流量が減少し、熱交換効率が低下するおそれがある。
【0060】
これに対し、本実施形態では、第1突出部7Aを第2インナーフィン33Bにおける熱媒体の流れ方向の一部にのみ配置するとともに、第2突出部7Bを第3インナーフィン33Cにおける熱媒体の流れ方向の一部にのみ配置することで、インナーフィン33B、33Cに突出部7A、7Bを形成することによる熱交換効率の低下を抑制することが可能となる。
【0061】
また、第1突出部7Aおよび第2突出部7Bを、流路管3内における電子部品2と対応する部位以外の部位に設けることで、インナーフィン33B、33Cの一部を切り起こすことにより突出部7A、7Bを形成した際にできる切り欠き部8を、流路管3内における電子部品2と対応する部位以外の部位に配置することができる。このため、流路管3内における電子部品2と対応する部位における熱交換効率の低下を抑制することが可能となる。したがって、インナーフィン33B、33Cに突出部7A、7Bを形成することによる熱交換効率の低下を、より確実に抑制することが可能となる。
【0062】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について図6および図7に基づいて説明する。本第3実施形態は、上記第2実施形態と比較して、第1突出部7Aおよび第2突出部7Bの双方を第2インナーフィン33Bに設けた点が異なるものである。図6は、本第3実施形態における流路管3近傍を示す拡大断面図であり、第1実施形態の図2に対応する図面である。
【0063】
図6に示すように、第2インナーフィン33Bの流路幅方向両端部には、第1インナーフィン33A側に向かって突出する第1突出部7A、および第3インナーフィン33C側に向かって突出する第2突出部7Bが設けられている。第1突出部7Aおよび第2突出部7Bは、第2インナーフィン33Bと一体に形成されている。
【0064】
第1突出部7Aは、第2インナーフィン33Bの外側頂部610に接続されている。より詳細には、第1突出部7Aは、第2インナーフィン33Bの外側頂部610に接続される第1突出板部71Aと、第1突出板部71Aに接続される第2突出頂部72Aを有して構成されている。
【0065】
第1突出板部71Aは、第1インナーフィン33Aの外側板部3310と平行に延びるとともに、当該外側板部3310における流路幅方向外側の面と全面に亘って接触している。第1突出頂部72Aは、第1インナーフィン33Aの外側頂部610と平行に延びるとともに、当該外側頂部610における第2インナーフィン33B側の面と全面に亘って接触している。
【0066】
第2突出部7Bは、第2インナーフィン33Bにおける外側谷部620より流路幅方向内側に位置するとともに当該外側谷部620と隣り合う谷部62(以下、第2外側谷部621という)に接続されている。より詳細には、第2突出部7Bは、第2インナーフィン33Bにおける第2外側谷部621に接続される第2突出頂部72Bと、第2突出頂部72Bに接続される第2突出板部71Bと、第2突出板部71Bに接続される第2突出谷部73Bとを有して構成されている。
【0067】
第2突出頂部72Bは、第3インナーフィン33Cの外側頂部610と平行に延びるとともに、当該外側頂部610における第2インナーフィン33B側の面と全面に亘って接触している。第2突出板部71Bは、第3インナーフィン33Cの外側板部3310と平行に延びるとともに、当該外側板部3310における流路幅方向外側の面と全面に亘って接触している。第2突出谷部73Bは、第3インナーフィン33Cの外側谷部620と平行に延びるとともに、当該外側谷部620における第2インナーフィン33B側の面と全面に亘って接触している。
【0068】
図7は、本第3実施形態における第2インナーフィン33Bを示す斜視図である。図7に示すように、第1突出部7Aおよび第2突出部7Bは、第2インナーフィン33Bの長手方向、すなわち熱媒体の流れ方向の一部に設けられている。本実施形態では、第1突出部7Aは、第2インナーフィン33Bの長手方向における中央部近傍に設けられている。第2突出部7Bは、第2インナーフィン33Bの長手方向における中央部近傍、かつ、第1突出部7Aに対して第2インナーフィン33Bの長手方向にずれた位置に設けられている。したがって、第1突出部7Aおよび第2突出部7Bは、流路管3内における電子部品2と対応する部位以外の部位に設けられている。
【0069】
本実施形態の第1突出部7Aは、第2インナーフィン33Bの一部を切り起こすことにより形成される。具体的には、まず、第2インナーフィン33Bにおける外側谷部620および外側板部3310に、熱媒体の流れ方向に直交する切り込みを2つ平行に形成する。続いて、第2インナーフィン33Bにおける当該2つの切り込みの間の部分を、第1インナーフィン33A側(図5の紙面上側)に押し上げることにより、第1突出部7Aが製造される。このため、第2インナーフィン33Bの外側谷部620および外側板部3310には、第1切り欠き部8Aが形成される。
【0070】
また、第2突出部7Bは、第2インナーフィン33Bの一部を切り起こすことにより形成される。すなわち、まず、第2インナーフィン33Bにおける第2外側板部3311、外側頂部610、外側板部3310および外側谷部620に、熱媒体の流れ方向に直交する切り込みを2つ平行に形成する。続いて、第2インナーフィン33Bにおける当該2つの切り込みの間の部分を、第3インナーフィン33C側に押し下げることにより、第2突出部7Bが製造される。このため、第3インナーフィン33Cにおける第2外側板部3311、外側頂部610、外側板部3310および外側谷部620には、第2切り欠き部8Bが形成される。
【0071】
本実施形態のように、インナーフィン33を3段積層する場合において、3段のインナーフィン33のうちの1つのインナーフィン33Bのみに突出部7A、7Bを設けることで、突出部7A、7Bを形成するための加工が必要なインナーフィン33の点数を削減できる。このため、生産性を向上することが可能となる。
【0072】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について図8〜図10に基づいて説明する。本第4実施形態は、上記第1実施形態と比較して、インナーフィン33としてウェーブフィンを用いた点が異なるものである。図8は本第4実施形態における流路管3近傍を示す拡大断面図であり、第1実施形態の図2に対応する図面である。
【0073】
図8に示すように、本実施形態のインナーフィン33は、流路管長手方向(熱媒体の流れ方向)に延びるとともに細流路333を分割する板部331と、隣り合う板部331間を繋ぐ連結部332とを有し、流路管長手方向に直交する断面形状が矩形波形状となるとともに、流路管積層方向(流路管3と電子部品2との配置方向)から見た際に板部331が熱媒体の流れ方向に三角波形状に屈折するウェーブフィンである。これにより、流路管3内に流路幅方向の熱媒体流れを形成することで熱媒体の混合を促進することができる。
【0074】
上記第1実施形態と同様、インナーフィン33は、1つの流路管3内に、流路管3と電子部品との配置方向、すなわち、流路管3の積層方向に2段積層されている。各段のインナーフィン33は、別体として形成されている。
【0075】
図9は本第4実施形態における第2インナーフィン33Bを示す斜視図、図10(a)は本第4実施形態における2段積層されたインナーフィン33を示す模式的な平面図、図10(b)は本第4実施形態における2段積層されたインナーフィン33を流路管長手方向から見た模式的な断面図である。なお、図10(a)において、実線が第2インナーフィン33Bを示しており、破線が第1インナーフィン33Aを示しており、太実線が後述する突出部7を示している。
【0076】
ここで、インナーフィン33の三角波形状に屈折した板部331のうち、当該三角波形状の頂点を構成する部位を頂点部3312とし、隣り合う頂点部3312間に位置する部位を波面部3313とする。また、インナーフィン33の三角波形状に屈折した板部331における、1つの頂点部3312に接続される2つの波面部3313のうち、熱媒体流れ方向上流側のものを上流側波面部3314とし、熱媒体流れ方向下流側のものを下流側波面部3315とする。
【0077】
図9および図10に示すように、第2インナーフィン33Bの流路幅方向両端部には、第1インナーフィン33A側に向かって突出する突出部7が設けられている。突出部7は、第2インナーフィン33Bと一体に形成されている。
【0078】
突出部7は、第2インナーフィン33Bの外側頂部610に接続されている。本実施形態では、第2インナーフィン33Bの外側頂部610における、1つの上流側波面部3314との接続部分、および当該上流側波面部3314に隣り合う下流側波面部3315との接続部分に、突出部7が接続されている。また、突出部7は、第2インナーフィン33Bの外側頂部610に接続される第1突出板部71と、突出板部71に接続される突出頂部72を有して構成されている。
【0079】
突出板部71は、第1インナーフィン33Aの外側板部3310と平行に延びるとともに、当該外側板部3310における流路幅方向外側の面と全面に亘って接触している。
【0080】
より詳細には、突出板部71は、第1インナーフィン33Aにおける外側板部3310の上流側波面部3314と平行に延びる上流側突出板部711と、第1インナーフィン33Aにおける外側板部3310の下流側波面部3315と平行に延びる下流側突出板部712とを有して構成されている。上流側突出板部711は、当該第1インナーフィン33Aにおける外側板部3310の上流側波面部3314の流路幅方向外側の面と全面に亘って接触している。下流側突出板部712は、当該第1インナーフィン33Aにおける外側板部3310の下流側波面部3315の流路幅方向外側の面と全面に亘って接触している。
【0081】
突出頂部72は、第1インナーフィン33Aの外側頂部610と平行に延びるとともに、当該外側頂部610における第2インナーフィン33B側の面と全面に亘って接触している。
【0082】
突出部7は、第2インナーフィン33Bの長手方向、すなわち熱媒体の流れ方向の一部に設けられている。本実施形態では、突出部7は、第2インナーフィン33Bの長手方向における中央部近傍に1箇所設けられている。したがって、突出部7は、流路管3内における電子部品2と対応する部位以外の部位に設けられている。
【0083】
本実施形態によれば、第1インナーフィン33Aはウェーブフィンなので、第1インナーフィン33Aの上流側波面部3314および下流側突出板部712は、熱媒体の流れ方向に直交する方向および熱媒体流れ方向に対して共に傾斜している。また、突出部7の上流側突出板部711は、第1インナーフィン33Aの上流側波面部3314と平行に延びているので、熱媒体の流れ方向に直交する方向および熱媒体流れ方向に対して共に傾斜している。同様に、突出部7の下流側突出板部712は、第1インナーフィン33Aの下流側突出板部712と平行に延びているので、熱媒体の流れ方向に直交する方向および熱媒体流れ方向に対して共に傾斜している。
【0084】
このため、第2インナーフィン33Bに設けられた突出部7の上流側突出板部711と、第1インナーフィン33Aの上流側波面部3314とを接触させるとともに、第2インナーフィン33Bに設けられた突出部7の下流側突出板部712と、第1インナーフィン33Aの下流側波面部3315とを接触させることで、上流側突出板部711および下流側突出板部712により、第1インナーフィン33Aが流路幅方向に移動することを規制できる。このため、第1インナーフィン33Aが、第2インナーフィン33Bに対して、流路幅方向および熱媒体の流れ方向に位置ズレすることを抑制できる。したがって、隣り合うインナーフィン間の位置ズレをより確実に抑制することが可能となる。
【0085】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について図11および図12に基づいて説明する。本第5実施形態は、本発明の熱交換器を、熱交換対象物としての半導体素子に放熱用の金属体を接続したものを封止材により封止してなる半導体実装体を備え、当該金属体の放熱面を熱媒体で冷却するようにした熱交換器に適用したものである。
【0086】
図11は本第5実施形態に係る熱交換器を示す分解斜視図、図12は本第5実施形態に係る熱交換器を示す断面図である。図12に示すように、半導体実装体51は、半導体素子としての第1半導体チップ511および第2半導体チップ512と、金属体としての下側ヒートシンク520および上側ヒートシンク530と、これらの間に介在する導電性接合部材としての各はんだ541、542と、さらに、封止材としてのモールド樹脂550とを備えて構成されている。
【0087】
本実施形態の半導体実装体51では、第1半導体チップ511と第2半導体チップ12とが互いに並列に平面方向に配置されている。なお、図12では、半導体チップは2個設けられているが、半導体チップは1個であってもよいし、3個以上設けられていてもよい。
【0088】
それぞれの半導体チップ511、512の裏面(図12中の右面)と下側ヒートシンク520の上面との間は、第1はんだ541によって接合されている。また、それぞれの半導体チップ511、512の表面(図12中の左面)と上側ヒートシンク530の下面との間は、第2はんだ542によって接合されている。本実施形態において、これら各はんだ541、542としては、一般的に用いられている各種のはんだ、例えば、Sn−Pb系はんだや、Sn−Ag系はんだなどの鉛フリーはんだを採用することができる。
【0089】
これにより、上記した構成においては、第1半導体チップ511および第2半導体チップ512の表面では、第2はんだ542および上側ヒートシンク530を介して放熱が行われ、第1半導体チップ511および第2半導体チップ512の裏面では、第1はんだ541から下側ヒートシンク520を介して放熱が行われる。
【0090】
このように、下側ヒートシンク520および上側ヒートシンク530は、第1半導体チップ511および第2半導体チップ512と熱的に接続されこれら各半導体チップ511、512からの熱を伝達する金属体として構成されている。そして、下側ヒートシンク520においては、図12中の右面が放熱面521として構成され、上側ヒートシンク530においては、図12中の左面が放熱面531として構成されている。そして、各放熱面521、531は、モールド樹脂550から露出している。
【0091】
ここで、第1半導体チップ11としては、特に限定されるものではないが、例えばIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)やサイリスタ等のパワー半導体素子から構成することができる。また、同じく第2半導体チップ512は、たとえば、FWD(フリーホイールダイオード)等からなるものにできる。また、具体的には、上記第1半導体チップ511および第2半導体チップ512の形状は、たとえば矩形状の薄板状とすることができる。
【0092】
また、本実施形態の各半導体チップ511、512の表面および裏面には、図示しない電極が形成されている。そして、この電極は、各はんだ541、542と電気的に接続されている。
【0093】
このように、本実施形態においては、第1半導体チップ511および第2半導体チップ512の裏面側の電極は、下側ヒートシンク520に対して、第1はんだ541を介して電気的に接続され、第1半導体チップ511および第2半導体チップ512の表面側の電極は、第2はんだ542を介して上側ヒートシンク530に対して、電気的に接続されている。
【0094】
ここで、下側ヒートシンク520および上側ヒートシンク530は、例えば、銅合金もしくはアルミ合金等の熱伝導性および電気伝導性の良い金属で構成されている。また、下側ヒートシンク520および上側ヒートシンク530は、例えば、全体としてほぼ長方形状の板材とすることができる。
【0095】
本実施形態の熱交換器は、上記構成の半導体実装体51におけるヒートシンク520、530の放熱面521、531が熱媒体により冷却されるようになっている。したがって、ヒートシンク520、530の放熱面521、531が、本発明の熱交換対象物に相当している。
【0096】
図12に示されるように、本実施形態の熱交換器は、半導体実装体51におけるモールド樹脂550の一部が、熱媒体冷媒が流れる熱媒体流路30として構成されたものとなっている。モールド樹脂550は、半導体チップ511、512およびヒートシンク520、530を封止する封止部551と、この封止部551の周囲に設けられ先端部がヒートシンク520、530の放熱面521、531よりも突出する壁部552とから構成されている。本実施形態は、壁部552は、放熱面521、531を取り囲むように環状に設けられたものである。
【0097】
また、封止部551のうちヒートシンク520、530の放熱面521、531と壁部552との間の部位に、貫通穴553が設けられており、この貫通穴553が熱媒体流路30として構成されている。
【0098】
図11に示すように、本実施形態の熱交換器は、半導体実装体51が複数個連結されたものとして構成されている。具体的には、半導体実装体51が複数個(図示例では3個)積層されて連結されているとともに、それぞれの貫通穴553は、互いに連通している。
【0099】
積層体における一端側の半導体実装体51には、熱媒体の入口81および出口82を有する第1蓋材80が連結されており、これら入口81および出口82と貫通穴553とが連通している。また、積層体における他端側の半導体実装体51には、第2蓋材90が連結されており、貫通穴553が、この第2蓋材90により閉塞されている。こうして、入口81、出口82および貫通穴553が接続され、入口81から流入した熱媒体が貫通穴553を通って出口82から流出するようになっている。
【0100】
なお、壁部552の端面にて、個々の半導体実装体51の連結および半導体実装体51と蓋材80、90との連結が行われており、この壁部552における各々の連結は、図示しない接着剤を介した接着により行われている。また、蓋材80、90は、ともに、例えば、樹脂、金属、セラミックなどの材料から成形、プレス加工などにより作成することができる。
【0101】
ここで、積層された複数個の半導体実装体51において、互いの放熱面521、531が対向するように配置されており、この対向する放熱面521、531の間も熱媒体流路30として熱媒体が流れるようになっている。また、半導体実装体51の放熱面521、531と蓋材80、90との間にも、熱媒体流路30が形成されている。したがって、対向する放熱面521、531、モールド樹脂550および蓋材80、90が、本発明の流路形成部材に相当している。
【0102】
ヒートシンク520、530の放熱面521、531の表面には、隣り合う半導体実装体51の間、および半導体実装体51と蓋材80、90との間に形成された熱媒体流路30を複数の細流路に分割するとともに、熱媒体とヒートシンク520、530の放熱面521、531との熱交換を促進するインナーフィン33が設けられている。本実施形態では、インナーフィン33として、熱媒体流れ方向に直交する断面形状が三角波形状であるストレートフィンを用いている。
【0103】
より詳細には、隣り合う半導体実装体51同士の間には、インナーフィン33が、半導体実装体51の積層方向に2段積層されている。すなわち、隣り合う半導体実装体51の互いに対向する放熱面521、531間に、インナーフィン33が、半導体実装体51の積層方向に2段積層されている。
【0104】
また、半導体実装体51と蓋材80、90との間にも、インナーフィン33が、半導体実装体51の積層方向に2段積層されている。すなわち、半導体実装体51の積層方向両端部に配置された半導体実装体51の放熱面521、531と蓋材80、90との間に、インナーフィン33が、半導体実装体51の積層方向に2段積層されている。
【0105】
ここで、2段積層されたインナーフィン33のうち、第2蓋材90に近い側(図12中の右側)に位置するインナーフィン33を第1インナーフィン33Aといい、第2蓋材90から遠い側(図12中の左側)に位置するインナーフィン33を第2インナーフィン33Bという。
【0106】
第2インナーフィン33Bの流路幅方向両端部には、第1インナーフィン33A側に向かって突出する突出部7が設けられている。突出部7は、第2インナーフィン33Bの流路幅方向両端部における、三角波形状の頂点(すなわち連結部332)に接続されている。また、突出部7は、第1インナーフィン33Aの流路幅方向両端部の板部331と平行に延びるとともに、当該板部331における流路幅方向外側の面と全面に亘って接触している。
【0107】
突出部7は、第2インナーフィン33Bの熱媒体流れ方向における略中央部に設けられている。本実施形態では、突出部7は、第2インナーフィン33Bと一体に形成されている。
【0108】
本実施形態の突出部7は、第2インナーフィン33Bの一部を切り起こすことにより形成される。具体的には、まず、第2インナーフィン33Bにおける流路幅方向両端部の板部331に、熱媒体の流れ方向に直交する切り込みを2つ平行に形成する。続いて、第2インナーフィン33Bにおける当該2つの切り込みの間の部分を、第1インナーフィン33A側(図11の紙面上側)に押し上げることにより、突出部7が形成される。このため、第2インナーフィン33Bの外流路幅方向両端部の板部331には、切り欠き部8が形成される。
【0109】
以上説明したように、第2インナーフィン33Bに第1インナーフィン33Aの流路幅方向両端部の板部331と平行に延びる突出部7を設けるとともに、突出部7を当該第1インナーフィン33Aの流路幅方向両端部の板部331と接触させることで、突出部7により、第1インナーフィン33Aが熱媒体の流れ方向に直交する方向に移動することを規制できる。このため、第1インナーフィン33Aが、第2インナーフィン33Bに対して、熱媒体の流れ方向に直交する方向に位置ズレすることを抑制できる。したがって、隣り合うインナーフィン33間の位置ズレを抑制することが可能となる。
【0110】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各請求項に記載した範囲を逸脱しない限り、各請求項の記載文言に限定されず、当業者がそれらから容易に置き換えられる範囲にも及び、かつ、当業者が通常有する知識に基づく改良を適宜付加することができる。例えば、以下のように種々変形可能である。
【0111】
(1)上記第1〜第4実施形態では、熱交換対象物として電子部品2を採用した例について説明したが、熱交換対象物はこれに限定されない。例えば、流路管3の外表面に接合されるとともに、流路管3と流路管3外部を流れる外部流体(空気)との伝熱面積を増大させるアウターフィンを熱交換対象物として採用してもよい。
【0112】
(2)上記第1〜第4実施形態では、熱交換器として、流路管3をいわゆるドロンカップ構造とし、隣り合う流路管3のフランジ部300同士をろう付けにより接合することにより複数の流路管3を連通する連通部材4を形成した積層型熱交換器1を採用した例について説明したが、熱交換器はこれに限定されない。例えば、流路形成部材としての複数本のチューブ、この複数本のチューブの両端側に配置されてそれぞれのチューブを流通する熱媒体の集合あるいは分配を行う一対の集合分配用タンク等を有する、いわゆるタンクアンドチューブ型の熱交換器を、熱交換器として採用してもよい。
【0113】
(3)上記第1、第4、第5実施形態では、インナーフィン33を2段積層して配置した例について説明したが、これに限らず、インナーフィン33を3段以上積層してしてもよい。
【0114】
(4)上記第2、第3実施形態では、インナーフィン33を3段積層して配置した例について説明したが、これに限らず、インナーフィン33を4段以上積層してしてもよい。
【0115】
(5)上述の各実施形態は、可能な範囲で適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0116】
2 電子部品(熱交換対象物)
3 流路管(流路形成部材)
7 突出部
30 熱媒体流路
33 インナーフィン
71 突出板部
331 板部
332 連結部
333 細流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒体が流通する熱媒体流路(30)を内部に有する流路形成部材(3)を備え、
前記熱媒体と、前記熱媒体流路(30)の外部または内部に配置された熱交換対象物(2)との間で熱交換を行う熱交換器であって、
前記流路形成部材(3)内には、前記熱媒体流路(30)を複数の細流路(333)に分割するとともに、前記熱媒体と前記熱交換対象物(2)との熱交換を促進するインナーフィン(33)が設けられており、
前記インナーフィン(33)は、前記熱媒体の流れ方向に延びるとともに前記細流路(333)を分割する板部(331)と、隣り合う前記板部(331)間を繋ぐ連結部(332)とを有し、前記熱媒体の流れ方向に直交する断面形状が波形状となるように形成されるとともに、前記流路形成部材(3)と前記熱交換対象物(2)との配置方向に複数段積層されており、
複数段積層された前記インナーフィン(33)は、別体として構成されており、
複数段積層された前記インナーフィン(33)のうち、一の前記インナーフィン(33)を第1インナーフィン(33A)とし、前記第1インナーフィン(33A)に隣り合う前記インナーフィン(33)を第2インナーフィン(33B)としたとき、
前記第2インナーフィン(33B)には、前記第1インナーフィン(33A)側に突出する突出部(7)が設けられており、
前記突出部(7)は、前記第1インナーフィン(33A)の前記板部(331)と平行に延びるとともに前記第1インナーフィン(33A)の前記板部(331)に接触する突出板部(71)を有していることを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
前記突出部(7)は、前記第2インナーフィン(33B)における前記熱媒体の流れ方向の一部を切り起こすことにより形成されていることを特徴とする請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記熱交換対象物(2)は、前記流路形成部材(3)の外部における前記熱媒体の流れ方向の一部に配置されており、
前記突出部(7)は、前記流路形成部材(3)内における前記熱交換対象物(2)と対応する部位以外の部位に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記インナーフィン(33)は、前記配置方向に3段以上積層されており、
前記複数段積層されたインナーフィン(33)のうち、一の前記インナーフィン(33)を第1インナーフィン(33A)とし、前記第1インナーフィン(33A)に隣り合う前記インナーフィン(33)を第2インナーフィン(33B)とし、前記第2インナーフィン(33B)における前記第1インナーフィン(33A)と反対側に隣り合う前記インナーフィン(33)を第3インナーフィン(33C)としたとき、
前記第2インナーフィン(33B)には、前記第1インナーフィン(33A)側に突出する第1突出部(7A)と、前記第3インナーフィン(33C)側に突出する第2突出部(7B)とが設けられており、
前記第1突出部(7A)は、前記第1インナーフィン(33A)の前記板部(331)と平行に延びるとともに前記第1インナーフィン(33A)の前記板部(331)に接触する第1突出板部(71A)を有しており、
前記第2突出板部(7B)は、前記第3インナーフィン(33C)の前記板部(331)と平行に延びるとともに前記第3インナーフィン(33C)の前記板部(331)に接触する第2突出板部(71B)を有していることを特徴とする請求項1に記載の熱交換器。
【請求項5】
前記インナーフィン(33)は、前記配置方向から見た際に前記板部(331)が前記熱媒体の流れ方向に三角波形状に屈折するウェーブフィンであり、
前記インナーフィン(33)の前記板部(331)のうち、当該三角波形状の頂点を構成する部位を頂点部(3312)とし、隣り合う前記頂点部(3312)間に位置する部位を波面部(3313)とするとともに、
前記インナーフィン(33)の前記板部(331)における1つの前記頂点部(3312)に接続される2つの前記波面部(3313)のうち、前記熱媒体の流れ方向上流側のものを上流側波面部(3314)とし、前記熱媒体の流れ方向下流側のものを下流側波面部(3315)としたとき、
前記突出部(7)は、前記第1インナーフィン(33A)の前記上流側波面部(3314)と平行に延びるとともに前記第1インナーフィン(33A)の前記上流側波面部(3314)に接触する上流側突出板部(711)と、前記第1インナーフィン(33A)の前記下流側波面部(3315)と平行に延びるとともに前記第1インナーフィン(33A)の前記下流側波面部(3315)に接触する下流側突出板部(712)とを有していることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の熱交換器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2012−186344(P2012−186344A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48932(P2011−48932)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】