熱交換装置
【課題】伝熱管の温度差による歪みを小さくして、耐火材の割れを防止する。
【解決手段】高温通路形成用筒状壁体11に、壁体11軸方向にのびた複数の低温通路形成用金属製伝熱管13が埋設されている。各伝熱管13をその軸線周りに回転させる駆動手段は、各伝熱管13に固定されている従動外歯小歯車51と、全ての伝熱管13の小歯車51に噛み合わされている駆動内歯大歯車52とよりなる。
【解決手段】高温通路形成用筒状壁体11に、壁体11軸方向にのびた複数の低温通路形成用金属製伝熱管13が埋設されている。各伝熱管13をその軸線周りに回転させる駆動手段は、各伝熱管13に固定されている従動外歯小歯車51と、全ての伝熱管13の小歯車51に噛み合わされている駆動内歯大歯車52とよりなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
この発明は、都市ごみ焼却炉や産業廃棄物焼却炉における廃棄物の焼却処理および焼却炉から排出される灰を溶融処理する過程で発生する高温の燃焼ガス（排ガス）の熱エネルギーを空気と熱交換することにより回収し、熱エネルギーの有効利用を図る熱交換装置に関する。
【背景技術】
【０００２】
この種の熱交換装置としては、高温通路形成用筒状壁体が、耐火材製内壁およびこれの外面を空気層を介して取り囲んでいる断熱材製外壁よりなり、空気層に、内壁軸方向にのびた低温通路形成用金属製伝熱管が通されているものが知られている（例えば、特許文献１参照。）。
【０００３】
このような構造において、熱交換時に発生する耐火材と伝熱管との間の熱膨張差の問題はないが、耐火材と伝熱管との間に空気層があり、熱伝達効率が悪いという問題がある。
【０００４】
また、他の熱交換装置としては、高温通路形成用筒状壁体が、耐火材製内壁および断熱材製外壁よりなる二重壁構造によって形成されており、内壁外面および外壁内面の双方に、切欠が互いに相対させられるように形成されており、双方の切欠の合体によって形成されたスペースに、内壁軸方向にのびた低温通路形成用金属製伝熱管が通されているものが知られている（例えば、特許文献２参照。）。
【０００５】
このような構造において、内壁および外壁の温度差に基づいて、伝熱管の内面側と外面側で温度差が発生し、そのために伝熱管に歪みが生じる。その結果、この歪みを吸収しきれずに耐火材が割れ、耐火材の割れ目から高温ガス（排ガス）が侵入して伝熱管を腐食させるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００６】
【特許文献１】特開２００１−４１６８１号公報
【特許文献２】特開平１０−３２５５２７号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００７】
この発明の目的は、伝熱管の温度差による歪みを小さくすることができ、耐火材の割れを防止できる熱交換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
この発明による熱交換装置は、高温通路形成用筒状壁体に、壁体軸方向にのびた複数の低温通路形成用金属製伝熱管が埋設されており、各伝熱管は、その軸線周りに回転自在であるものである。
【０００９】
この発明による熱交換装置では、各伝熱管の高温にさらされる内側部分が、各伝熱管の回転によって、各伝熱管の周方向に変化させられる。したがって、伝熱管の温度差による歪みを小さくすることができ、耐火材の割れを防止できる。
【００１０】
さらに、熱交換装置には、各伝熱管をその軸線周りに回転させる駆動手段が備わっていることが好ましい。
【００１１】
また、全ての伝熱管は、壁体軸線を中心とする円周上に一列に配列されており、駆動手段は、各伝熱管に固定されている従動外歯小歯車と、全ての伝熱管の小歯車に噛み合わされている駆動内歯大歯車とよりなると、駆動内歯大歯車を回転駆動することによって、従動外歯小歯車を介して、全ての伝熱管を同時に回転させることができる。
【発明の効果】
【００１２】
この発明によれば、伝熱管の温度差による歪みを小さくすることができ、耐火材の割れを防止でき熱交換装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【００１３】
【図１】この発明による熱交換装置の垂直縦断面図斜視図である。
【図２】同熱交換装置の水平横断面図である。
【図３】図２の一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【００１４】
図１および図２を参照すると、熱交換装置は、内側に高温ガスHが流される垂直筒状壁体11と、壁体11外面に被覆されている金属製垂直筒状ケーシング12と、壁体11の周方向に等間隔で並ぶように壁体11に貫通させられかつ内部に低温ガスLが流される複数の金属製垂直状伝熱管13とよりなる。
【００１５】
壁体11は、二重壁構造よりなるものであって、伝熱管13を高温ガスHの腐食成分から保護するための耐火材製内壁21と、伝熱管13を保温するための断熱材製外壁22とよりなる。
【００１６】
ケーシング12外面の上端部を円環状排気ヘッダ31が、その下端部を円環状給気ヘッダ32がそれぞれ取り囲んでいる。排気ヘッダ31および給気ヘッダ32には各伝熱管13の上下に対応する端部が連通させられている。
【００１７】
図３に示すように、内壁21外面の伝熱管13貫通箇所には、内壁21軸方向にのびた横断面輪郭半円弧状の外向き切欠41が形成されている。一方、外向き切欠41に対応して、外壁22外面の伝熱管13貫通箇所には、外壁22軸方向にのびた横断面輪郭半円弧状の内向き切欠42が形成されている。対応する外向き切欠41および内向き切欠42は、相対させられかつ合体させられて１つの横断面輪郭円形状の管挿通孔43を形成している。管挿通孔43に対応する伝熱管13が間隙をおいて通されている。
【００１８】
各伝熱管13の上端部には従動外歯小歯車51が固定されている。全ての伝熱管13の小歯車51には駆動大歯車52の内歯が噛み合わされている。大歯車52の外歯には伝達歯車53が噛み合わされている。伝達歯車53には、互いに噛み合わされた一対の傘歯車54、55を介してモータ56の出力軸が連結されている。
【００１９】
高温ガスHを排気ガス、低温ガスLを空気とした場合について、各部の温度測定を行った。
【００２０】
・伝熱管の回転速度：１rpm
・排ガス温度：９００〜１０００℃
・空気温度：給気ヘッダの温度 ４００℃、排気ヘッダの温度 ５００℃
・伝熱管温度：内壁側５７０℃、ケーシング側５５０℃（温度差２０℃）
・耐火材内面温度（内壁）：６２０℃
・耐火材外面温度、断熱材内面温度：５６０℃
・外壁内面温度（内壁および外壁の境界面）：５４０℃
・断熱材外面温度（ケーシング）：１２０℃
本願発明の熱交換装置での伝熱管を回転させないケースについて、上記と同一条件で測定したところ、その結果は、以下の通りであった。
【００２１】
・排ガス温度：９００〜１０００℃
・空気温度：給気ヘッダの温度 ４００℃、排気ヘッダの温度 ５００℃
・伝熱管温度：内壁側５８０℃、ケーシング側５２０℃（温度差６０℃）
・耐火材内面温度（内壁）：６２０℃
・耐火材外面温度、断熱材内面温度：５６０℃
・外壁内面温度（内壁および外壁の境界面）：５４０℃
・断熱材外面温度（ケーシング）：１２０℃
本願発明の熱交換器において、伝熱管を回転させるケースと、伝熱管を回転させないケースとの温度測定結果を比較すると、伝熱管の内面側および外面側の温度差は、本発明では、２０℃であるのに対し、伝熱管を回転させないケースでは、６０℃であった。したがって、伝熱管を回転させることによる温度差低減効果が見てとれる。
【産業上の利用可能性】
【００２２】
この発明による熱交換装置は、伝熱管の温度差による歪みを小さくすることができ、耐火材の割れを防止できを提供することを達成するのに適している。
【符号の説明】
【００２３】
11 壁体
13 伝熱管
51 小歯車
52 大歯車
【技術分野】
【０００１】
この発明は、都市ごみ焼却炉や産業廃棄物焼却炉における廃棄物の焼却処理および焼却炉から排出される灰を溶融処理する過程で発生する高温の燃焼ガス（排ガス）の熱エネルギーを空気と熱交換することにより回収し、熱エネルギーの有効利用を図る熱交換装置に関する。
【背景技術】
【０００２】
この種の熱交換装置としては、高温通路形成用筒状壁体が、耐火材製内壁およびこれの外面を空気層を介して取り囲んでいる断熱材製外壁よりなり、空気層に、内壁軸方向にのびた低温通路形成用金属製伝熱管が通されているものが知られている（例えば、特許文献１参照。）。
【０００３】
このような構造において、熱交換時に発生する耐火材と伝熱管との間の熱膨張差の問題はないが、耐火材と伝熱管との間に空気層があり、熱伝達効率が悪いという問題がある。
【０００４】
また、他の熱交換装置としては、高温通路形成用筒状壁体が、耐火材製内壁および断熱材製外壁よりなる二重壁構造によって形成されており、内壁外面および外壁内面の双方に、切欠が互いに相対させられるように形成されており、双方の切欠の合体によって形成されたスペースに、内壁軸方向にのびた低温通路形成用金属製伝熱管が通されているものが知られている（例えば、特許文献２参照。）。
【０００５】
このような構造において、内壁および外壁の温度差に基づいて、伝熱管の内面側と外面側で温度差が発生し、そのために伝熱管に歪みが生じる。その結果、この歪みを吸収しきれずに耐火材が割れ、耐火材の割れ目から高温ガス（排ガス）が侵入して伝熱管を腐食させるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００６】
【特許文献１】特開２００１−４１６８１号公報
【特許文献２】特開平１０−３２５５２７号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００７】
この発明の目的は、伝熱管の温度差による歪みを小さくすることができ、耐火材の割れを防止できる熱交換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
この発明による熱交換装置は、高温通路形成用筒状壁体に、壁体軸方向にのびた複数の低温通路形成用金属製伝熱管が埋設されており、各伝熱管は、その軸線周りに回転自在であるものである。
【０００９】
この発明による熱交換装置では、各伝熱管の高温にさらされる内側部分が、各伝熱管の回転によって、各伝熱管の周方向に変化させられる。したがって、伝熱管の温度差による歪みを小さくすることができ、耐火材の割れを防止できる。
【００１０】
さらに、熱交換装置には、各伝熱管をその軸線周りに回転させる駆動手段が備わっていることが好ましい。
【００１１】
また、全ての伝熱管は、壁体軸線を中心とする円周上に一列に配列されており、駆動手段は、各伝熱管に固定されている従動外歯小歯車と、全ての伝熱管の小歯車に噛み合わされている駆動内歯大歯車とよりなると、駆動内歯大歯車を回転駆動することによって、従動外歯小歯車を介して、全ての伝熱管を同時に回転させることができる。
【発明の効果】
【００１２】
この発明によれば、伝熱管の温度差による歪みを小さくすることができ、耐火材の割れを防止でき熱交換装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【００１３】
【図１】この発明による熱交換装置の垂直縦断面図斜視図である。
【図２】同熱交換装置の水平横断面図である。
【図３】図２の一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【００１４】
図１および図２を参照すると、熱交換装置は、内側に高温ガスHが流される垂直筒状壁体11と、壁体11外面に被覆されている金属製垂直筒状ケーシング12と、壁体11の周方向に等間隔で並ぶように壁体11に貫通させられかつ内部に低温ガスLが流される複数の金属製垂直状伝熱管13とよりなる。
【００１５】
壁体11は、二重壁構造よりなるものであって、伝熱管13を高温ガスHの腐食成分から保護するための耐火材製内壁21と、伝熱管13を保温するための断熱材製外壁22とよりなる。
【００１６】
ケーシング12外面の上端部を円環状排気ヘッダ31が、その下端部を円環状給気ヘッダ32がそれぞれ取り囲んでいる。排気ヘッダ31および給気ヘッダ32には各伝熱管13の上下に対応する端部が連通させられている。
【００１７】
図３に示すように、内壁21外面の伝熱管13貫通箇所には、内壁21軸方向にのびた横断面輪郭半円弧状の外向き切欠41が形成されている。一方、外向き切欠41に対応して、外壁22外面の伝熱管13貫通箇所には、外壁22軸方向にのびた横断面輪郭半円弧状の内向き切欠42が形成されている。対応する外向き切欠41および内向き切欠42は、相対させられかつ合体させられて１つの横断面輪郭円形状の管挿通孔43を形成している。管挿通孔43に対応する伝熱管13が間隙をおいて通されている。
【００１８】
各伝熱管13の上端部には従動外歯小歯車51が固定されている。全ての伝熱管13の小歯車51には駆動大歯車52の内歯が噛み合わされている。大歯車52の外歯には伝達歯車53が噛み合わされている。伝達歯車53には、互いに噛み合わされた一対の傘歯車54、55を介してモータ56の出力軸が連結されている。
【００１９】
高温ガスHを排気ガス、低温ガスLを空気とした場合について、各部の温度測定を行った。
【００２０】
・伝熱管の回転速度：１rpm
・排ガス温度：９００〜１０００℃
・空気温度：給気ヘッダの温度 ４００℃、排気ヘッダの温度 ５００℃
・伝熱管温度：内壁側５７０℃、ケーシング側５５０℃（温度差２０℃）
・耐火材内面温度（内壁）：６２０℃
・耐火材外面温度、断熱材内面温度：５６０℃
・外壁内面温度（内壁および外壁の境界面）：５４０℃
・断熱材外面温度（ケーシング）：１２０℃
本願発明の熱交換装置での伝熱管を回転させないケースについて、上記と同一条件で測定したところ、その結果は、以下の通りであった。
【００２１】
・排ガス温度：９００〜１０００℃
・空気温度：給気ヘッダの温度 ４００℃、排気ヘッダの温度 ５００℃
・伝熱管温度：内壁側５８０℃、ケーシング側５２０℃（温度差６０℃）
・耐火材内面温度（内壁）：６２０℃
・耐火材外面温度、断熱材内面温度：５６０℃
・外壁内面温度（内壁および外壁の境界面）：５４０℃
・断熱材外面温度（ケーシング）：１２０℃
本願発明の熱交換器において、伝熱管を回転させるケースと、伝熱管を回転させないケースとの温度測定結果を比較すると、伝熱管の内面側および外面側の温度差は、本発明では、２０℃であるのに対し、伝熱管を回転させないケースでは、６０℃であった。したがって、伝熱管を回転させることによる温度差低減効果が見てとれる。
【産業上の利用可能性】
【００２２】
この発明による熱交換装置は、伝熱管の温度差による歪みを小さくすることができ、耐火材の割れを防止できを提供することを達成するのに適している。
【符号の説明】
【００２３】
11 壁体
13 伝熱管
51 小歯車
52 大歯車
【特許請求の範囲】
【請求項１】
高温通路形成用筒状壁体に、壁体軸方向にのびた複数の低温通路形成用金属製伝熱管が埋設されており、各伝熱管は、その軸線周りに回転自在である熱交換装置。
【請求項２】
各伝熱管をその軸線周りに回転させる駆動手段を備えている請求項１に記載の熱交換装置。
【請求項３】
全ての伝熱管は、壁体軸線を中心とする円周上に一列に配列されており、駆動手段は、各伝熱管に固定されている従動外歯小歯車と、全ての伝熱管の小歯車に噛み合わされている駆動内歯大歯車とよりなる請求項２に記載の熱交換装置。
【請求項１】
高温通路形成用筒状壁体に、壁体軸方向にのびた複数の低温通路形成用金属製伝熱管が埋設されており、各伝熱管は、その軸線周りに回転自在である熱交換装置。
【請求項２】
各伝熱管をその軸線周りに回転させる駆動手段を備えている請求項１に記載の熱交換装置。
【請求項３】
全ての伝熱管は、壁体軸線を中心とする円周上に一列に配列されており、駆動手段は、各伝熱管に固定されている従動外歯小歯車と、全ての伝熱管の小歯車に噛み合わされている駆動内歯大歯車とよりなる請求項２に記載の熱交換装置。
【図１】
【図２】
【図３】
【図２】
【図３】
【公開番号】特開２０１２−２２０１５５（Ｐ２０１２−２２０１５５Ａ）
【公開日】平成２４年１１月１２日（２０１２．１１．１２）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２０１１−８８９９２（Ｐ２０１１−８８９９２）
【出願日】平成２３年４月１３日（２０１１．４．１３）
【出願人】（０００００５１１９）日立造船株式会社 (764)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２４年１１月１２日（２０１２．１１．１２）
【国際特許分類】
【出願日】平成２３年４月１３日（２０１１．４．１３）
【出願人】（０００００５１１９）日立造船株式会社 (764)
【Ｆターム（参考）】
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