説明

熱伝導シート

【課題】熱伝導シートの厚さが薄くなってもハンドリングしやすいものを提供することを目的とするものである。
【解決手段】グラファイトシート11の両面に第1、第2の絶縁シート12、13を設け、さらにその上に第1、第2の剥離シート15、16を設け、第1の絶縁シート12と第1の剥離シート15との粘着力を第2の絶縁シート13と第2の剥離シート16との粘着力よりも強いものとし、第1の剥離シート15には熱伝導シート14が設けられた部分を第1の領域18と第2の領域19とに分割するスリットライン17が設けられ、第1の領域18の面積を第2の領域19の面積の3倍以上とするとともに、熱伝導シート14の外周とスリットライン17とは少なくとも2点で交差し、一方の交点20ではほぼ直角に交差し、他方の交点21では鋭角に交差するようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話、デジタルカメラ等の内部に発熱部品を有する電子機器に用いられる熱伝導シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年電子機器の小型化、高性能化に伴い、半導体部品や電池パック等の発熱部品からの発熱量が大きくなりその対策をとることが必要となり、その熱伝導率の高さによりグラファイトシートが用いられるようになってきている。また小型化と関係して薄型化に対してこの熱伝導シートもさらに薄いものが求められるようになってきている。通常このような熱伝導シートは図4のように、グラファイトシート1の両面に粘着テープ2を貼り合わせたものが用いられ、ハンドリングのためにその両面に保護シート3を貼り合わせたものが用いられている。
【0003】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−149509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の熱伝導シートの厚さが厚いときには特に大きな問題とならなかったが、これが非常に薄くなってくると、保護テープを剥離するときに熱伝導シートが剥離したり、丸まってしまうことにより、使えなくなってしまうことが発生しやすかった。これに対して本発明は、熱伝導シートの厚さが薄くなってもハンドリングしやすい熱伝導シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決するために、グラファイトシートの第1面にこのグラファイトシートを覆う第1の絶縁シートを設け、第1面とは反対側の第2面にグラファイトシートを覆う第2の絶縁シートを設けた熱伝導シートであって、さらに第1の絶縁シートを覆う第1の剥離シートおよび第2の絶縁シートを覆う第2の剥離シートを設け、第1の絶縁シートと第1の剥離シートとの粘着力を第2の絶縁シートと第2の剥離シートとの粘着力よりも強いものとし、第1の剥離シートには熱伝導シートが設けられた部分を第1の領域と第2の領域とに分割するスリットラインが設けられ、第1の領域の面積を第2の領域の面積の3倍以上とするとともに、熱伝導シートの外周とスリットラインとは少なくとも2点で交差し、一方の交点ではほぼ直角に交差し、他方の交点では鋭角に交差するようにしたものである。
【発明の効果】
【0007】
上記構成により、熱伝導シートが薄くなっても、熱伝導シートに損傷や変形を与えることなく剥離シートを剥離することができ、容易に所定の位置に熱伝導シートを設置することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施の形態における熱伝導シートの斜視図
【図2】本発明の一実施の形態における熱伝導シートの分解図
【図3】本発明の一実施の形態における熱伝導シートの作製方法
【図4】従来の熱伝導シートの断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施の形態における熱伝導シートについて、図面を参照しながら説明する。
【0010】
図1は、本発明の一実施の形態における熱伝導シートの斜視図であり、図2は同分解図である。図1、図2において、厚さ約20μmの熱分解グラファイトシート11と、このグラファイトシート11の第1面を覆う厚さ約8μmの両面テープからなる第1の絶縁シート12と、このグラファイトシート11の第2面を覆う厚さ約8μmの絶縁テープからなる第2の絶縁シート13とにより熱伝導シート14が構成されている。さらに熱伝導シート14の第1の絶縁シート12側にはこれを覆う第1の剥離シート15が、第2の絶縁シート13側にはこれを覆う第2の剥離シート16が貼り合せられている。
【0011】
第1の絶縁シート12はPET(ポリエチレンテレフタレート)のシートの両面にアクリル系の粘着材が塗布されたものであり、第2の絶縁シート13はPETシートの片面にアクリル系の粘着材が塗布され、この粘着材が塗布された面でグラファイトシート11に貼り合せられている。第1の剥離シート15はPETを基材とし、第1の絶縁シート12と貼り合わされる面にはシリコーン系の離型材が塗布されている。また第2の剥離シート16はPETを基材とし、第1の絶縁シート12と貼り合わされる面にはアクリル系の粘着材が塗布されている。このようにすることにより、第1の絶縁シート12と第1の剥離シート15との間の単位幅あたりの粘着力を約0.1N/25mm、第2の絶縁シート13と第2の剥離シート16との間の単位幅あたりの粘着力を約0.05N/25mmとなるように構成している。以上のように、第1の絶縁シート12と第1の剥離シート15との間の粘着力を、第2の絶縁シート13と第2の剥離シート16との間の粘着力よりも強くなるようにしている。
【0012】
第1の剥離シート15には、スリットライン17が設けられており、熱伝導シート14と貼り合わせたときに、熱伝導シート14の領域をスリットライン17で分割するようになっている。この分割された領域の面積の大きい方を第1の領域18、小さい方を第2の領域19とし、第1の領域18の面積を第2の領域19の面積の約4倍としている。さらに熱伝導シート14の外形輪郭線とスリットライン17とは2点で交差し、一方の交点20ではほぼ直角に交差し、他方の交点21では約25°で交差している。
【0013】
また第1の剥離シート15は第2の剥離シート16全体を含み、第1の領域18側で第2の剥離シート16よりも大きくなるように形成されている。
【0014】
以上のように構成することにより、熱伝導シートを所定の位置に設置する場合、まず第1の領域18で接着されている部分で熱伝導シート14から第1の剥離シート15を、一方の交点20を始点として剥離する。このとき第2の領域19では第1の剥離シート15から第2の剥離シート16全体を保持し、第2の剥離シート16よりも大きくなっている第1の領域18側の第1の剥離シート15のみを保持して剥離する。ほぼ直角に交わる一方の交点20を始点としているため、第1の絶縁シート12と第1の剥離シート15との間の粘着力が、第2の絶縁シート13と第2の剥離シート16との間の粘着力よりも強くなっていても問題なく剥離することができる。
【0015】
なおここでほぼ直角とは、本実施の形態のような剥離が可能となるものであり、具体的には90±5°である。
【0016】
次に第2の領域19で接着されている部分を他方の交点21を始点として剥離する。ここで第2の剥離シート16には第1の領域18側で熱伝導シート14からはみだしている余白部22が設けられており、第1の領域18側はこの余白部22を保持し、他方の交点21を始点として剥離する。他方の交点21では熱伝導シート14の外形輪郭線とスリットライン17とは鋭角で交差しているため第1の絶縁シート12と第1の剥離シート15との間の粘着力が、第2の絶縁シート13と第2の剥離シート16との間の粘着力よりも強くなっていても問題なく剥離することができる。
【0017】
このように粘着材で貼り合せられたものを剥離する場合、剥離するための力は、剥離する幅に比例するため、剥離するにしたがってその幅が急に広くなると、剥離するための力は急に大きくなるため、そこでシートの破損が発生しやすくなる。そのため第2の領域19を剥離するときに剥離の始点の近くは小さな角度で交差する必要があり、他方の交点21で熱伝導シート14の外形輪郭線とスリットライン17との交わる角度は45°未満が望ましく、さらには30°以下とすることがさらに望ましい。
【0018】
なお、以上の実施の形態では、第1の絶縁シートを両面テープ、第2の絶縁テープを片面粘着テープとしたが、両方が両面テープ、あるいは両方が片面粘着テープであってもよく、剥離シートとの粘着力が強い側の剥離テープにスリットラインを設けることにより、本発明の効果を得ることができる。
【0019】
また本実施の形態では、グラファイトシートに熱分解グラファイトシートを用いたが、これに限らず膨張黒鉛シートのようなものであってもかまわない。
【0020】
図3は、本発明の一実施の形態における熱伝導シートの作製方法を説明する図である。
【0021】
まず、図3(a)のように第1の剥離シート15を構成するためのPETフィルムに微粘着性を有する支持フィルム(図示しない)を貼り合わせたシート材料に対し、スリットライン17と送り穴を形成する。スリットライン17の形成には、抜き型を用いてプレスして行い、第1の剥離シート15を構成するためのPETフィルムのみに切れ目を入れる。送り穴は、パンチ型を用いてプレスして行い、これは支持フィルムも合わせて貫通させる。この送り穴は、順送形成のためにシート材を動かすためのものであり、このようにして第1の剥離シート15を形成する。
【0022】
次に、図3(b)に示すように、第1の剥離シート15の上に、絶縁シートで構成されるシート材料に粘着固定されている剥離シートを剥離して、粘着加工面を露出させ、その粘着加工面を貼り合わせる。その後、加圧し、粘着固定させる。その後、他方の粘着加工面に粘着固定されている剥離シートを剥離して、粘着加工面を露出させて第1の絶縁シート12を形成する。
【0023】
次に図3(c)に示すように、第1の絶縁シート12の所定の位置に、あらかじめ、所定の形状に抜き加工されたグラファイトシート11を乗せる。
【0024】
次に図3(d)に示すように、グラファイトシート11上に、絶縁シートで構成されるシート材料に粘着固定されている剥離シートを剥離して、粘着加工面を露出させ、その粘着加工面を貼り合わせ、加圧し、粘着固定させることにより第2の絶縁シート13を形成する。
【0025】
次に図3(e)に示すように、掴み舌部23となる部分の直下に位置する第1の絶縁シート12および第2の絶縁シート13をあらかじめ除去するために、抜き型を用いてプレスして切断する。
【0026】
次に図3(f)に示すように、図3(d)で形成されたものに、片面に粘着材が塗布された剥離シートを、粘着材を塗布した面を熱伝導シートの方に貼り合せ、加圧し、固定させる。
【0027】
次に図3(g)に示すように、所定の形状に、抜き型を用いてプレスしたあと、不要な部分を取り除くことにより、第2の剥離シート16を形成する。
【0028】
次に図3(h)に示すように、所定の形状に切断して、個片化させ、熱伝導シートが完成される。
【0029】
なお、本実施の形態では順番に積層を行っているが、予めグラファイトシートの両面に絶縁シートを貼り合せたものを、剥離シートに貼り合せてもかまわない。
【0030】
また、図3(g)の状態のものから、1枚ずつ熱伝導シートを取り外しながら所定の位置に貼り合せてもかまわない。
【0031】
次に、本発明の一実施の形態における熱伝導シートの使われ方を説明する。発熱部品の熱対策を行う所定の貼り付ける面に対し、熱伝導シート14に粘着固定されている第1の剥離シート15の第1の領域18を一方の交点20を始点として剥離する。次に、第1の剥離シート15の掴み舌部23を掴み、他方の交点21を始点として剥離させる。これで、熱伝導シート14と第2の剥離シート16の構成物品が、取り出せる。ここで、第2の剥離シート16と第2の絶縁シート13との粘着力が低いにもかかわらず、他方の交点21のスリットライン17と熱伝導シートの外周との交わる角度が鋭角であることで、容易に第1の剥離シート15の第2の領域19からの剥離開始が可能となる。さらには、第2の領域19の面積が小さいことで、剥離開始後から完全剥離までの必要な剥離力を低く抑えることができ、薄い熱伝導シートであっても、第2の剥離シート16からの脱落または熱伝導シート自体の損傷または変形することなく取り出すことができる。ここで、以上の効果を得るためには、第1の領域18の面積は第2の領域19の面積の3倍以上とすることが望ましい。
【0032】
そのあと取り出せた熱伝導シート14と第2の剥離シート16の構成物品を、所定の面に貼り付ける。第2の剥離シート16は、この貼り付ける時に、熱伝導シート14に気泡やシワが発生しないように面精度を保持させている。このようにして貼り付けた後、加圧などで粘着を安定させ、第2の剥離シート16の掴み舌部23を掴み、剥離させる。これで、貼り付けが完了する。熱伝導シートの厚みが薄くなってくるとそのハンドリングが難しくなってくるが、本発明の構成で以上のように貼り付けを行うことにより、熱伝導シート14の総厚みが40μmより薄いものであっても、安定して貼り付けることができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明に係る熱伝導シートは、その厚さが薄くなってもハンドリングしやすい熱伝導シートを提供することができ、産業上有用である。
【符号の説明】
【0034】
11 グラファイトシート
12 第1の絶縁シート
13 第2の絶縁シート
14 熱伝導シート
15 第1の剥離シート
16 第2の剥離シート
17 スリットライン
18 第1の領域
19 第2の領域
20 一方の交点
21 他方の交点
22 余白部
23 掴み舌部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラファイトシートの第1面にこのグラファイトシートを覆う第1の絶縁シートを設け、前記第1面とは反対側の第2面に前記グラファイトシートを覆う第2の絶縁シートを設けた熱伝導シートであって、さらに前記第1の絶縁シートを覆う第1の剥離シートおよび前記第2の絶縁シートを覆う第2の剥離シートを設け、前記第1の絶縁シートと前記第1の剥離シートとの粘着力を前記第2の絶縁シートと前記第2の剥離シートとの粘着力よりも強いものとし、前記第1の剥離シートには前記熱伝導シートが設けられた部分を第1の領域と第2の領域とに分割するスリットラインが設けられ、前記第1の領域の面積を前記第2の領域の面積の3倍以上とするとともに、前記熱伝導シートの外周と前記スリットラインとは少なくとも2点で交差し、一方の交点ではほぼ直角に交差し、他方の交点では鋭角に交差することを特徴とする熱伝導シート。
【請求項2】
前記他方の交点では、45°未満の角度で交差することを特徴とする請求項1記載の熱伝導シート。
【請求項3】
前記第1の剥離シートの面積を前記第2の剥離シートの面積よりも大きくしたことを特徴とする請求項1記載の熱伝導シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−89843(P2013−89843A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230503(P2011−230503)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】