説明

熱伝導性組成物

【課題】
レーザーダイオードの発光点に付着物を誘発する特定のアウトガス成分を発生させず、かつ優れた硬化性を有する、湿気硬化型の熱伝導性組成物を提供すること。
【解決手段】
炭素数4〜8個の炭化水素基を有する金属触媒の含有量が、組成物全質量を基準として0.01質量%以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性組成物、詳しくは、光ピックアップ装置のレーザーダイオードに異物として付着するアウトガスを放出しない、湿気硬化型の熱伝導性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光ディスク読み取り用の光ピックアップ装置に搭載されたレーザーダイオードには、光出力時におけるレーザーダイオードの温度上昇を抑えるために熱伝導率の高い放熱材料が塗布されている(特許文献1)。しかしながら、上記放熱材料がレーザーダイオードの発光により60℃〜90℃に加熱されると、レーザーダイオードの発光点に異物が形成され、レーザーダイオードの出力が不安定となり、光ピックアップ装置の信頼性が大きく低下するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2010/041708号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、レーザーダイオードの発光点に特定のアウトガス成分の付着物を生じさせず、かつ優れた硬化性を有する、湿気硬化型の熱伝導性組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、レーザーダイオードの発光により60℃〜90℃に加熱された熱伝導性組成物から発生した炭素数4〜8個のアルデヒドガスが、レーザーダイオードの発光点に付着して異物を生じさせることを見出した。また、本発明者らは、炭素数4〜8個の炭化水素基を有する有機金属触媒の含有量が、組成物の全質量を基準として0.02質量%以下である場合、熱伝導性組成物が60℃〜90℃に加熱された場合にレーザーダイオードの発光点に炭素数4〜8個のアルデヒドガスに由来する異物が形成されないことを見出した。
すなわち、本発明には、以下の実施態様が含まれる。
[1] (A)架橋性シリル基を有する重合体、
(B)硬化触媒、および
(C)熱伝導性フィラー
を含有する熱伝導性組成物であって、前記硬化触媒(B)のうち、炭素数4〜8個の炭化水素基を有する金属触媒の含有量が、熱伝導性組成物の全質量を基準として0.02質量%以下であることを特徴とする、前記熱伝導性組成物。
[2] 前記硬化触媒(B)は、炭素数1〜3個または炭素数9〜20個の炭化水素基を有する有機金属触媒、および/またはアミン系触媒を含む、[1]に記載の熱伝導性組成物。
[3] 前記架橋性シリル基を有する重合体(A)は、ポリオキシアルキレン重合体である、[1]に記載の熱伝導性組成物。
[4] 前記熱伝導性組成物は、熱伝導性組成物の全質量を基準として0.01質量%〜2.0質量%の硬化触媒(B)を含む、[1]に記載の熱伝導性組成物。
[5] 前記熱伝導性組成物は、熱伝導性組成物の全質量を基準として50質量%〜95質量%の前記熱伝導性フィラー(C)を含む、[1]に記載の熱伝導性組成物。
[6] 光ピックアップ用熱伝導性接着剤である、[1]乃至[5]に記載の熱伝導性組成物。
【発明の効果】
【0006】
本発明の熱伝導性組成物は、炭素数4〜8個のアルデヒドガスを発生させず、かつ優れた硬化性を有するため、特に光ピックアップ用の湿気硬化型熱伝導性組成物に好適に適用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明は、(A)架橋性シリル基を有する重合体、(B)硬化触媒、および(C)熱伝導性フィラーを含有する熱伝導性組成物である。
本発明に用いる上記架橋性シリル基を有する重合体(A)とは、ポリオキシアルキレン、ポリイソブチレン、アクリル酸エステル共重合体等を主鎖骨格とし、かつ末端及び側鎖に架橋性シリル基を有する重合体を意味する。ここで、架橋性シリル基とは、少なくとも1個の水酸基または加水分解性基が結合しているケイ素原子のことである。加水分解性基としては、例えば水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基、カルボキシル基、等が挙げられる。これらの中でも、加水分解性が穏やかで取り扱いやすいという点からアルコキシ基がより好適であり、ジアルコキシ基がさらに好適である。
【0008】
上記架橋性シリル基を有する重合体(A)としては、例えば、架橋性シリル基を有するポリプロピレングリコール、架橋性シリル基を有するポリエチレングリコール、架橋性シリル基を有するプロピレングリコール−エチレングリコール共重合体、架橋性シリル基を有するポリイソブチレン、架橋性シリル基を有するアクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。中でも入手が容易である点で、架橋性シリル基を有するポリアルキレングリコールが好ましい。
【0009】
本発明に用いる架橋性シリル基を有する重合体(A)は、熱伝導性組成物の物性および作業性等の観点から、好ましくは500〜20000、より好ましくは500〜10000の数平均分子量(Mn)を有する。ここで、本発明における数平均分子量(Mn)は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算値である。
【0010】
上記架橋性シリル基を有するオキシアルキレン系重合体(A)は、従来公知の方法で製造することができる。また、本発明の熱伝導性組成物において、架橋性シリル基を有する重合体(A)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。このような架橋性シリル基を有するポリプロピレングリコールとしては、例えば、株式会社カネカ製のMSポリマー、サイリルグレード等が挙げられる。具体的には、MSポリマーS203、サイリルSAT350が挙げられる。
【0011】
上記架橋性シリル基を有する重合体(A)の含有量は通常、熱伝導性組成物全質量を基準として5質量%以上、好ましくは8質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。また、上記架橋性シリル基を有する重合体(A)の含有量は通常、熱伝導性組成物全質量を基準として50質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。成分(A)の含有量が50質量%を越える場合には、十分な熱伝導率向上効果が得られない虞がある。また成分(A)の含有量が5質量%未満の場合には、十分な接着性が得られない虞がある。
【0012】
本発明の熱伝導性組成物は、上記架橋性シリル基を有する重合体(A)に加えて、硬化触媒(B)を含む。
本発明の熱伝導性組成物に用いる硬化触媒(B)としては、有機金属触媒、アミン系触媒、過剰のポリアミンと多塩基酸とから得られる低分子量ポリアミド樹脂、および過剰のポリアミンとエポキシ化合物との反応生成物等の公知のシラノール縮合触媒が挙げられ、これらの中でも、入手容易性及び反応促進性の観点から、有機金属触媒、アミン系触媒が好ましい。
これらの硬化触媒は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0013】
上記有機金属触媒としては、オクチル酸錫、ナフテン酸錫、ネオデカン酸錫、ステアリン酸錫、ジブチル錫ジオクトエート、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジバーサテート、ジブチル錫ビストリエトキシシリケート、ジブチル錫ジオレイルマレート、ジブチル錫ジアセテート、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジラウリルオキシカルボニル−ジスタノキサン、ジブチル錫オキシビスエトキシシリケート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫オキサイドとフタル酸エステルとの反応物、ジブチル錫オキサイドとマレイン酸ジエステルとの反応物、およびジブチル錫ジアセチルアセトナート等の有機錫化合物、ビスマス、バリウム、カルシウム、インジウム、チタン、ジルコニウム、カルシウム、亜鉛、鉄、コバルト、鉛のカルボン酸塩(例えばオクチル酸ビスマス、オクチル酸カルシウム、ビスマストリス(2−エチルヘキサノエート)等)、およびテトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネート等のチタン酸エステル等が挙げられる。また、上記有機金属触媒として、β−ジケトン、β−ケトエステル等のキレート化剤で配位したチタンキレート化合物が挙げられる。β−ジケトンとしては、2,4−ペンタンジオン、2,4−ヘキサンジオン、2,4−ヘプタンジオン、ジベンゾイルメタン、テノイルトリフルオロアセトン、1,3−シクロヘキサンジオン、1−フェニル1,3−ブタンジオン等が挙げられ、β−ケトエステルとしては、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸プロピル、アセト酢酸ブチル、メチルピバロイルアセテート、メチルイソブチロイルアセテート、カプロイル酢酸メチル、ラウロイル酢酸メチル等が挙げられる。
これらの有機金属触媒の中でも、反応促進性の観点から、有機錫化合物が好ましい。上記金属触媒の代表的市販品としては、例えば日東化成株式会社製ネオスタンU−220(ジブチル錫)、U−810(ジオクチル錫)、U−50(ネオデカン酸錫)、ネオスタンU600(ビスマストリス(2−エチルヘキサノエート))等が挙げられる。
【0014】
上記アミン系触媒としては、ブチルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、ジブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、オレイルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、キシリレンジアミン、トリエチレンジアミン、グアニジン、ジフェニルグアニジン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、モルホリン、N−メチルモルホリン、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7(DBU)等のアミン系化合物またはこれらとカルボン酸等との塩が挙げられる。上記アミン系触媒の代表的市販品としては、例えばサンアプロ株式会社製DBU等が挙げられる。
【0015】
ここで、上記有機金属触媒の中でも、オクチル酸錫、ジブチル錫ジオクトエート、ジブチル錫ジラウレート、ビスマストリス(2−エチルヘキサノエート)等の炭素数4〜8個の炭化水素基を有する有機金属触媒は、60℃〜90℃に加熱された場合、炭素数4〜8個のアルデヒドガスを発生させ得る。その結果、該炭素数4〜8個のアルデヒドガスは、レーザーダイオードの発光点に付着し、アルデヒドガスに由来する異物が生じ得る。上記硬化触媒(B)のうち、炭素数4〜8個の炭化水素を有する有機金属触媒の含有量は通常、熱伝導性組成物の全量を基準として0.001〜0.02質量%、好ましくは0.001質量%〜0.01質量%、より好ましくは0.001質量%〜0.008質量%である。炭素数4〜8個の炭化水素基を有する有機金属触媒の含有量が上記範囲内であると、レーザーダイオードが発光することにより本発明の組成物が60℃〜90℃に加熱された場合でも、レーザーダイオードの発光点に炭素数4〜8個のアルデヒドガスに由来する異物が付着しない。
また、上記硬化触媒(B)のうち、炭素数1〜3個もしくは炭素数が9個以上の炭化水素を有する有機金属触媒の含有量は通常、熱伝導性組成物全量を基準として0.01質量%〜2.0質量%である、好ましくは0.01〜1.0質量%、より好ましくは0.01質量%〜0.5質量%である。炭素数1〜3個もしくは炭素数が9個以上の炭化水素基を有する有機金属触媒の含有量が上記範囲内であると、良好な硬化性を得ることができる。
【0016】
本発明の熱伝導性組成物において、上記硬化触媒(B)の全含有量は、熱伝導性組成物の全質量を基準として、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上である。また、上記成分(B)の含有量は、熱伝導性組成物の全重量を基準として、好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下である。上記硬化触媒(B)の含有量が2.0質量%を越える場合には、硬化速度が速くなり作業性に支障をきたす虞がある。また、上記硬化触媒(B)の含有量が0.01質量%未満の場合には、硬化性が著しく低下する虞がある。
【0017】
本発明の熱伝導性組成物は、上記架橋性シリル基を有する重合体(A)および硬化触媒(B)に加えて熱伝導性フィラー(C)を含む。
上記熱伝導性フィラーとしては酸化アルミニウム、アルミニウム粉、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭素繊維、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等が挙げられるが、これらに限定されない。本発明においては、フィラーの安定性(吸湿)及びコスト面の観点から酸化アルミニウムが好ましく、フィラーの高充填化の観点から球状タイプの酸化アルミニウムがより好ましい。また、上記熱伝導性フィラーは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
熱伝導性フィラーの代表的市販品としては、例えば電気化学工業株式会社からDAMシリーズ、DAWシリーズとして市販されている酸化アルミニウム等が挙げられる。
【0018】
上記成分(C)の含有量は通常、熱伝導性組成物全質量を基準として50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上である。また、上記成分(C)の含有量は通常、熱伝導性組成物の全重量を基準として95質量%以下、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下である。上記成分(C)の含有量が95質量%を越える場合には、著しく高粘度化する虞がある。また上記成分(C)の含有量が50質量%未満の場合には、十分な熱伝導率向上効果が得られない虞がある。
【0019】
本発明の熱伝導性組成物は、上記成分(A)〜(C)に加えて、必要に応じて通常の添加剤、例えば接着付与剤、可塑剤および着色剤等を含んでよい。
【0020】
上記接着性付与剤としては、N−(β−アミノエチル)−N’−(γ−トリメトキシシリルプロピル)−エチレンジアミン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノアルコキシシラン;ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシアルコキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプトアルコキシシラン等が挙げられ、中でも、アミノシラン化合物が好適である。本発明の熱伝導性組成物に接着性付与剤を含有させる場合、熱伝導性組成物全質量を基準として0.01質量%〜2.0質量%の接着性付与剤を含有させればよい。
【0021】
上記可塑剤(減粘剤、粘度調整剤)として、公知のパラフィン系、ナフテン系、ポリブテンなどの炭化水素を、引火点、粘度、塗料付着性などに支障のない範囲で使用することができる。また、フタル酸ジエステル類(ジイソノニルフタレート(DINP)など)、エポキシ化ヘキサヒドロフタル酸ジエステル類、アルキレンジカルボン酸ジエステル類、アルキルベンゼン類なども硬化性等に支障のない範囲で使用することができる。
【0022】
その他の添加剤として、必要に応じて、着色剤(ベンガラ、酸化チタン、カーボンブラック、他の着色顔料、染料など)、有機溶剤(アセトン、メチルエチルケトン、リグロイン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、n−ヘキサン、ヘプタンなど)、紫外線吸収剤・光安定剤(ベンゾトリアゾール類、ヒンダードアミン類など)、酸化防止剤(ヒンダードフェノール類など)、揺変剤(コロイダルシリカ、有機ベントナイト、脂肪酸アマイド、水添ひまし油など)、溶剤(脂環族炭化水素、芳香族炭化水素など)等を適量範囲で使用することができる。
【0023】
本発明の熱伝導性組成物は、60℃〜90℃に加熱された場合、炭素数4〜8個のアルデヒドガスが発生しないので、光ピックアップ装置に搭載されたレーザーダイオード用の熱伝導性組成物として好ましく用いることができる。
また、本発明の熱伝導性組成物は、硬化後の表面タック性が良好であるので、作業性に優れている。
【0024】
本発明の熱伝導性組成物はそれぞれ、通常の混練機、例えばプライミクス社T.Kハイビスミックス2P−1等を用い、上記成分(A)〜(C)および必要に応じてその他の添加剤等を混合することによって製造することができる。なお、本発明の熱伝導性組成物の調製方法は、上述したものに何ら限定されるものではない。
【0025】
本発明の熱伝導性組成物は、光ディスク読取装置に搭載されるレーザーダイオード用ホルダーに塗布し、空気中の湿分により硬化させることができる。
【実施例】
【0026】
以下、次に実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれによって何ら限定されるものではない
【0027】
熱伝導性組成物の調製
実施例1乃至5および比較例1乃至4
表1に示す重量の各成分を、混合することにより組成物を得た。
【0028】
【表1】

【0029】
(注1)株式会社カネカ製カネカMSポリマーS203、シリル基を有するポリプロピレングリコール
(注2)電気化学工業株式会社製DAM−07、酸化アルミニウム
(注3)信越化学工業株式会社製KBM−1003、ビニルトリメトキシシラン
(注4)サンアプロ株式会社製DBU
(注5)日東化成株式会社製ネオスタンU−50、ネオデカン酸錫
(注6)日東化成株式会社製ステアリン酸錫
(注7)日東化成株式会社製ネオスタンU220、ジブチル錫ジアセチルアセトナート
(注8)日東化成株式会社製ネオスタン810、ジオクチル錫ジラウレート
(注9)日東化成株式会社製ネオスタンU600、ビスマストリス(2−エチルヘキサノエート)
【0030】
上記のように調製した各熱伝導性組成物について、以下の試験を行った。その結果を表2に示す。
【0031】
[性能試験方法]
1.粘度測定方法
コーンプレート型粘度計(BROOKFIELD VISCOMETER DV−II+Pro)により熱伝導組成物の粘度(Pa・s)を測定した。
測定条件:コーン型番CP52、回転数0.1rpm
【0032】
2.アウトガスの測定方法
上記のように調製した熱伝導性組成物を、レーザーダイオードのホルダーの表面に60mg塗布し、次いでオーブン中において、20℃65%RHで24時間、80℃で24時間硬化させた。次いで、該レーザーダイオードホルダーを10mLバイアル瓶に入れ、完全に密閉し、その後、該10mLバイアル瓶を雰囲気温度50℃のオーブンに設置した。次いで、バイアル瓶内のレーザーダイオードを、ホルダー表面の温度が約80℃〜85℃になるように電圧電流を調整して発光させ、2週間保持した。その後、バイアル瓶内のアウトガスを、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC−MS)を用いて分析した。
GC−MS分析機器:QP2010(島津製作所製)
カラム種類:TC−1(30m×0.25mm ID 1.0μm)
分析条件:40℃で3分間保持した後、10℃/分の昇温速度にて280℃まで昇温し、280℃で8分間保持した。
気化温度:240℃、イオン源230℃EI、注入量1mL
【0033】
3.レーザーダイオード発光点への付着物有無の確認方法
上記2.において2週間発光後のレーザーダイオードの発光点を、マイクロスコープ(KEYENCE VHX−200)を用いて観察し、発光点の付着物の有無を確認した。
【0034】
4.硬化性の評価方法
上記のように調製した熱伝導性組成物を、直径50mmφ×厚み4.0mmのPP性容器に流し込み、20℃・65%RH雰囲気下に放置した。放置24時間後に硬化物表面を指触により確認した。
判定基準:○:指につかない、×:指につく
【0035】
【表2】

【0036】
実施例1乃至5の本発明による熱伝導性組成物の場合には、炭素数4〜8個のアルデヒドガスがアウトガス試験において検出されず、レーザーダイオード発光点への付着物が確認されなかったのに対し、比較例1乃至4の本発明によらない熱伝導性組成物の場合には、ブタナールまたはオクタナールがアウトガス試験において検出され、レーザーダイオード発光点への付着物が確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)架橋性シリル基を有する重合体、
(B)硬化触媒、および
(C)熱伝導性フィラー
を含有する熱伝導性組成物であって、前記硬化触媒(B)のうち、炭素数4〜8個の炭化水素基を有する金属触媒の含有量が、熱伝導性組成物の全質量を基準として0.02質量%以下であることを特徴とする、前記熱伝導性組成物。
【請求項2】
前記硬化触媒(B)は、炭素数1〜3個または炭素数9〜20個の炭化水素基を有する有機金属触媒、および/またはアミン系触媒を含む、請求項1に記載の熱伝導性組成物。
【請求項3】
前記架橋性シリル基を有する重合体(A)は、ポリオキシアルキレン重合体である、請求項1に記載の熱伝導性組成物。
【請求項4】
前記熱伝導性組成物は、熱伝導性組成物の全質量を基準として0.01質量%〜2.0質量%の硬化触媒(B)を含む、請求項1に記載の熱伝導性組成物。
【請求項5】
前記熱伝導性組成物は、熱伝導性組成物の全質量を基準として50質量%〜95質量%の前記熱伝導性フィラー(C)を含む、請求項1に記載の熱伝導性組成物。
【請求項6】
光ピックアップ用熱伝導性接着剤である、請求項1乃至請求項5に記載の熱伝導性組成物。

【公開番号】特開2012−162699(P2012−162699A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−26308(P2011−26308)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(305032254)サンスター技研株式会社 (97)
【Fターム(参考)】