説明

熱伝導率を調整することによって結晶質材料のブロックを製造するための装置

【課題】シリコン、ゲルマニウム等の結晶質材料のブロックを製造するための、伝導による熱除去を精密に調整可能なブリッジマン型の装置を提供する。
【解決手段】溶融材料19の槽から結晶質材料20のブロックを製造するための装置は、底部3を有する坩堝2と、坩堝2の下方に配置された熱除去手段9とを備える。また、装置は、坩堝の底部3と熱除去手段9との間に取り付けられた熱伝導率を調整するための手段7を備える。熱伝導率を調整するための手段7は、低放射率の熱伝導性材料から製造されかつ坩堝の底部3に平行な複数のプレート10と、プレート10がお互いに近づきかつ遠ざかるようにプレート10を移動させるための手段8とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融材料の槽から結晶質材料のブロックを製造するための装置に関し、その装置は、底部を有する坩堝と、坩堝の下方に配置された熱除去手段と、坩堝の底部と熱除去手段との間に取り付けられた熱伝導率を調整するための手段とを備える。
【背景技術】
【0002】
今日、光電池の製造は、主として、シリコンから実施され、そのシリコン自身は、主として、チョクラルスキー(Czochralski)型かまたはブリッジマン(Bridgman)型の炉内において結晶化される。
【0003】
ブリッジマン型の構造においては、熱は、上部または側面を介して坩堝に供給され、底部を介して除去される。炉の加熱は、いくつかの異なるアプローチを用いて、とりわけ、液相においてシリコン結晶化先端部(silicon crystallization front)を前進さるために結晶化プロセスを進行させながら加熱量を調節することによって、実行されてもよい。
【0004】
ブリッジマン型の炉は、とりわけ、結晶化先端部に垂直な柱状粒子によって多結晶インゴットを製造するのを可能にするので、それは、とりわけ、ソーラー産業のためのシリコンを製造するのに適している。
【0005】
ブリッジマン型の炉は、また、製造方法の3つの工程中に、すなわち、
坩堝内においてシリコンが溶融する工程、
成長を開始する工程、
インゴットが結晶化する工程、
において、相坩堝から除去される熱流束を制御するのを可能にする。
【0006】
ブリッジマン型の炉は、さらに、不純物を分離することによって、使用される材料を高純度化するのを可能にし、そして、その不純物は、液相内に排除される。しかしながら、凝固すべき材料を高純度化するために、除去されるべき熱流束は、凝固先端部(solidification front)の形状安定条件を保つように制御されなければならず、これは、凝固速度を制限することがある。
【0007】
さらにまた、結晶シリコンの成長が開始すると、除去される熱流束を徐々に増加させなければならない。もしそうでなければ、成長先端部(growth front)の不安定化が発生し、シリコン内の不純物を十分に分離するのを妨げる。さらに、良好な粒子構造を保証するために、成長開始または接種(seeding)は、凝固速度の制御すなわち熱流束の制御を必要とする。
【0008】
ブリッジマン型の装置は、多くの好ましい特徴を有するが、とりわけ、溶融シリコン結晶化サイクルに関係のある温度および熱交換スループットの正確な制御に関する限り、いくつかの欠点を有する。
【0009】
特許文献1は、坩堝内における断熱性を減少させるために、シリコンの溶融が発生するときに存在する坩堝の下方に配置された断熱部分を取り除くことを提案している。このようにして、加熱量を一定に維持しながら、放射および凝固による放熱を増大させることによって、温度を減少させることができる。この実施形態においては、坩堝の下方に存在する断熱部分は、存在するかまたは取り除かれているので、放射による熱除去は、実際には制御されることはない。
【0010】
また、特許文献2は、坩堝の下方に配置された断熱材を段階的に取り除くことによって、溶融シリコンを冷却することを開示している。この公報においては、温度調整は、放射を制御することによって達成される。しかしながら、この実施形態は、熱流束変動を精密に制御することができない。
【0011】
このように、坩堝内の溶融材料から放射によって熱流束を除去することは多くの欠点を有するので、一般的には、その代わりとして、伝導によって熱流束を除去することが、好まれる。
【0012】
特許文献3は、坩堝の底部の下方に配置された黒鉛プラグを使用することを説明しており、その黒鉛プラグは、組立品の熱伝導率を増加させるのを可能にし、それによって、伝導による熱除去を向上させる。しかしながら、この黒鉛プラグは、坩堝の底部の中央に配置されるので、結晶の中央部分を著しく冷却する。したがって、除去されるべき熱の量が、通過すべき固体シリコンの熱抵抗すなわちシリコンの厚さによって、変化するので、この実施形態は、期待される寸法を有するシリコンインゴットの製造に使用することはできない。
【0013】
特許文献4は、放射による熱除去を主として有する坩堝を使用することを説明しているが、この装置も、坩堝の下方に配置された黒鉛フェルトを圧縮することによって、伝導によって熱除去を調整することを利用するものである。
【特許文献1】欧州特許明細書第141,999号公報
【特許文献2】特開2001−048696号公報
【特許文献3】英国特許出願公開明細書第2041236号公報
【特許文献4】国際特許出願公開明細書題2004/094704号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、結晶質材料のブロックを製造するための装置を提供することであり、その装置は、伝導による熱除去を精密に調整し、かつ、実施するのが容易なものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明による装置は、熱伝導率を調整するための手段が、低放射率の熱伝導性材料から製造されかつ坩堝の底部に平行な複数のプレートと、そのプレートがお互いに近づきかつ遠ざかるように、かつ坩堝の底部に近づきかつ遠ざかるようにそのプレートを移動させるための手段とを備えることを特徴とする。
【0016】
その他の利点および特徴が、限定するものではない単なる例として提供されかつ添付の図面に示される本発明の特定の実施形態の以下の説明からより明確なものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1に示されるように、結晶質材料のブロックを製造するためのブリッジマン型の装置1は、坩堝2を備え、その坩堝2自身は、底部3および側壁4を備える。坩堝2を構成する材料は、坩堝2から取り除かれるほとんどの熱流束が底部3を介して取り除かれるように選択される。したがって、底部3の材料は、好ましくは、坩堝2を構成するその他の材料と比較して優れた熱導体であり、それによって、その底部3から熱流束の大部分を除去することができる。坩堝2の側壁4は、例えば、シリカから製造されるが、坩堝2の底部3は、黒鉛から製造される。坩堝の底部の厚さは、典型的には、数センチメートルであり、例えば、5cmである。坩堝の底部3は、好適には、その外面上に、少なくとも部分的に、スリットがわずかに切り込まれている(底部3の厚さのある程度の深さにまで)。スリットは、坩堝の底部の気密性を維持しながら、坩堝のこの部分において誘導結合を妨害するのを可能にし、種に害を及ぼすことのある坩堝の底部の過熱を防止する。
【0018】
伝導による熱排出を促進するために、坩堝2の底部3の外面は、好適には、熱伝導性材料5の層によって被覆され、あるいは、熱伝導性材料5の層にしっかりと接合される。この熱伝導性材料5は、小さな放射率、好ましくは、0.5以下の放射率、および、大きな熱伝導率、好ましくは、10W・m−1・K−1より大きい熱伝導率を有し、かつ、高い温度、典型的には、凝固すべき材料の溶融温度よりも高い温度、より典型的には、1400℃よりも高い温度に対して耐性がある。熱伝導性材料5の層は、例えば、モリブデン膜によって形成され、例えば、1mmの厚さを備える。したがって、熱伝導性材料5の層は、放射ではなくむしろ伝導によって、坩堝2に含まれる熱を除去するのを助長する。
【0019】
坩堝2は、例えば、正方形、長方形、または、円形の断面形状を有してもよい。好ましくは、正方形の断面形状を有する坩堝2が、使用される場合、その坩堝2は、有利には、約200mmの側壁4を有する。また、坩堝2は、最大で1mの寸法を備える側壁を有してもよい。
【0020】
装置1内おいて、坩堝2は、有利には、熱伝導層5上に配置され、それによって、その熱伝導層5を固定し、そして、この組立品が、熱伝導率を調整するための調整手段7と坩堝2内に含まれる熱を除去するための熱除去手段9の上方に配置される。
【0021】
熱伝導率を調整するための調整手段7は、坩堝2の底部3と熱除去手段9との間に取り付けられ、有利には、固定支持体6の内部に配置される。熱伝導率を調整するための調整手段7は、有利には、制御された雰囲気中において、複数のプレート10と、これらのプレートを移動させるための移動手段とを備え、その移動手段は、それらのプレートがお互いに近づきかつ遠ざかるように、かつ、坩堝2の底部に近づきかつ遠ざかるように、プレートを移動させるのを可能にするように設計される。プレート10を移動させるための移動手段は、例えば、坩堝2の底部3に実質的に垂直でありかつ坩堝2の底部3の中心を通る垂直軸に沿って配置された制御ロッド8を備える。したがって、制御ロッド8は、この垂直軸に沿って垂直に移動することができる。
【0022】
熱除去手段9は、例えば、熱交換器によって形成され、その熱交換器は、有利には、制御ロッド8の上端に取り付けられる。例えば、熱交換器は、例えば27℃の温度にある銅製の水箱(water box)によって形成される。
【0023】
坩堝2の下方に配置された固定支持体6は、有利には、それぞれのプレートと坩堝2の底部との間において許される最大間隔およびそれぞれのプレート10間において許される最大間隔を画定するのに使用される。また、固定支持体6は、プレート間の距離が最大となる断熱位置と、プレート間の距離が最小となりかつスペーサー12によって予め画定された伝導位置との間におけるプレート10の垂直運動を可能にする。
【0024】
図1の断面図において、固定支持体6は、垂直外部側壁と、上から下に次第に減少する断面積を有する実質的に水平ないくつかの平坦支持面11を提供する階段状内部側壁とを備える。したがって、固定支持体6は、それの最下部よりもそれの最上部においてより薄くなる。平坦支持面11は、プレート10と坩堝2の底部との最も遠く離れた位置すなわち個々のプレートの断熱位置を画定する。この構成においては、プレート10は、それらのプレート10が坩堝2の底部から遠く離れれば離れるほど減少する寸法(長さおよび/または幅)を有する断面を有する。固定支持体6は、好ましくは、中空の焼結シリカから製造される。坩堝2、熱伝導層5、および、固定支持体6は、実質的に同じ垂直対称軸を有する。
【0025】
一般的には、熱伝導層5、熱除去手段9、および、個々のプレート10は、同じ形状を有し、また、実質的に、同じ寸法を有する。形状および寸法は、それら自身、本質的に下方向に向かって均一に分布する熱排出を保証するために、坩堝およびインゴットの形状および寸法にきわめて類似している。
【0026】
図示しない別の実施形態においては、内部側壁は、傾斜しており、プレート10を配置するために上方向に向かって細くなる空間を画定する。
【0027】
図1において、坩堝2の底部に実質的に平行な3つのプレート(10a、10b、および、10c)は、平坦支持面11に着座し、したがって、その平坦支持面11は、プレート10が下方向へ移動するとき、移動停止装置(travel stop)の端部の役割をなす。制御ロッド8の上方向への垂直運動は、プレートの断熱位置からプレートの最大伝導位置へのそれらのプレートの垂直運動をもたらし、その最大伝導位置において、それらのプレート10は、坩堝2の底部に最大限に近づく。
【0028】
熱伝導層5、プレート10、および、熱交換器9は、好ましくは、制御された雰囲気中にある。その制御された雰囲気は、例えば0.01W/(m・K)であるしきい値以上である熱伝導率を有する少なくとも1つのガスを備える。このガスは、例えば、アルゴンまたはヘリウムである。
【0029】
例えば、固定支持体6の内部に配置されたプレート10は、最大で1mmの間隔を置いてそれらの断熱位置に配置される。有利には、最も低い位置において、熱交換器9と最下部のプレート10aとを分離する間隔は、2つのプレート間の最大間隔の2倍であり、すなわち、2mmである。
【0030】
プレート10は、強度のあるものであり、10W/(m・K)より大きい熱伝導率および例えば約0.15である小さい放射率を有する材料から製造される。それらのプレートは、例えば、モリブデンかまたはモリブデンベース材料から製造される。また、それらのプレートは、タングステンかまたはニオブから製造されてもよく、あるいは、それらのプレートがあまり高くない温度に維持されてもよい場合、それは坩堝から最も遠く離れた位置にある下部のプレートの場合であるが、タンタル、金、銀、または、ニッケルから製造されてもよい。これらのプレート10は、有利には、それらの放射率を減少させるように研磨され、また、伝導位置において2つの隣接するプレート間の接触を防止するためのスペーサーの役割をなす複数の突起12を有する。突起12は、プレート10の上面および/または下面上に配置されてもよい。突起12は、例えば、断熱材からなる小さなパッドであり、例えば、シリカから製造される。突起12は、プレート10に突き刺されてもよく、あるいは、プレート10にくりぬかれた穴に挿入されてもよい。プレート10は、例えば、約3mmの厚さを有し、そして、突起12は、約0.1mmの最小限の高さを有する。
【0031】
小さな放射率を有する複数のプレート10を使用することは、放射による熱交換を相当に減少させるのを可能にする。さらにまた、プレートのこの配置は、大量のガスではなくむしろ少量のガスを作用させるのを可能にする。それによって、対流による熱伝達を相当に減少させ、そして、装置の熱抵抗を熱伝導抵抗にまで減少させることができる。
【0032】
加熱手段13および側部断熱手段14が、概略的に図1に示される。加熱手段13は、例えば、誘導型であり、好ましくは、液相において対流による攪拌を助長するために、坩堝2の側面の上方に配置され、かつ、坩堝2の側面上に配置される。側部断熱手段14は、公知の形で実現され、除去されるべき熱流束が下方向に向かって単方向となりかつ坩堝2の底部3の平面に実質的に垂直になることを保証する。図1において、それらの側部断熱手段14は、坩堝2、熱伝導層5、および、固定支持体6を全体的に取り囲む。
【0033】
装置1は、さらに、例えば熱電対の形を有する少なくとも3つの温度センサーを備える温度制御手段を備える。2つの温度センサーは、好ましくは、装置の垂直対称軸に沿って配置され、第1のセンサー15は、坩堝2の底部3の上部に配置され、第2のセンサー16は、坩堝2の底部3の下部に配置される。これらの2つのセンサー15および16は、坩堝2内の軸方向温度勾配を測定する。第3のセンサー17が、坩堝2の底部3の周辺かつ上部に配置される。センサー15および17は、坩堝2の底部3の半径方向温度勾配を測定する。
【0034】
例として、結晶質材料インゴットを製造するための装置を使用する方法が、以下で説明される。結晶質材料は、例えば、シリコンであるが、ゲルマニウムであってもよく、あるいは、任意のその他の結晶質材料であってもよい。
【0035】
好ましい実施形態においては、種18が、有利には、坩堝内に配置され、具体的には、坩堝の底部3に接合される。種18は、例えば、原料と同じ材料から製造され、すなわち、シリコンから製造され、約1cmの厚さを有する。
【0036】
そして、結晶質材料の原料が、坩堝2内に配置される。この結晶質材料は、好ましくは、半導体の型を有し、例えば、シリコンである。そして、結晶質材料の原料は、加熱手段13を駆動することによって、種18を溶融させないように注意しながら溶融させられる。このシリコン原料溶融段階において(図1)、装置は、断熱モードにあり、すなわち、プレート10は、固定支持体6の平坦支持面11によって支持されている。この構成において、坩堝の底部3とプレート10との間の間隔およびプレート間の間隔は、最大である。したがって、熱交換器9からの坩堝の断熱は、最大である。そして、制御ロッド8は、それの最も低い位置にあり、すなわち、熱交換器9は、それが坩堝2から最も遠く離れた位置にある。
【0037】
このシリコン溶融段階中、加熱量は、液化先端部(liquefaction front)が有利には種18に向かって下方向へ垂直に前進するように増加する。液化先端部が種18に到達すれば、加熱量は、もはや変化しない。有利には、溶融が発生したとき、例えばアルゴンのような少なくとも6mmの厚さを有するガスが、熱伝導層5と熱交換器9との間に維持される。
【0038】
別の実施形態においては、シリコン19は、溶融状態で直接に坩堝に供給されてもよい。
【0039】
そして、種18の成長を開始するために、すなわち、固体シリコン20と溶融シリコン19との間の界面の移動方向を反転させるために、加熱量は、一定に維持され、プレート10の並進運動が、開始する。第1の段階において、これまでにそれの下部位置に配置されていた制御ロッド8が、熱交換器9を最下部のプレートである第1のプレート10aに向かって動かすように上へ移動する。制御ロッド8の上方向への運動は、熱交換器9を第1のプレート10aに接触させ、その後に、このプレート10aを垂直方向に移動させる。図2に示されるように、制御ロッド8が上方向へ垂直に並進し続けると、第1のプレート10aは、第2のプレート10bに向かって移動し、それによって、その第1のプレート10aは、突起12の高さにおいて、第2のプレート10bに接触する。そして、最後のプレート10cの突起12が、熱伝導層5に接触するまで、プレート10は、坩堝2に向かって少しずつ移動する。
【0040】
制御ロッド8すなわち熱交換器9の並進運動は、熱交換器9と熱伝導層5との間に配置されたガス層の厚さを調整するのを可能にする。それによって、制御ロッド8の並進運動は、坩堝2の下方において、装置1の熱抵抗を調整するのを可能にする。成長を開始するために取り付けられるべきプレート10の数は、装置1において除去されるべき熱流束および使用される材料(および、それらのプレートの厚さ)によって変化する。このように、坩堝2の底部3に向かってプレート10を移動させることによって、坩堝2は、益々、断熱されなくなり、溶融段階のときよりも多くの熱流束を通過させる。それによって、このアプローチは、坩堝2から除去されるべき熱流束の精密できわめて段階的な調整を可能にする。
【0041】
シリコンのある程度の凝固段階から、有利には、加熱量を減少させることが、坩堝2の底部3の熱伝導率を調整することと組み合わせられてもよい。このようにして、熱交換器9の並進運動は、熱流束除去を一定に維持するのを可能にする。並進運動は、坩堝2の下方における装置の熱抵抗を減少させ、結晶化したシリコンすなわちシリコンの固体部分による熱抵抗の増加を相殺する。
【0042】
最終的な状態において、プレート10は、お互いにかつ熱伝導層5に最も近づいた位置にあり、プレート10間および熱伝導層5と熱交換器9との間のガスの全体的な厚さは、最小となる。そして、装置は、最大伝導モードにある。
【0043】
別の実施形態においては、所定の熱流束を除去するのに必要な最終的なガスの厚さが、薄すぎる場合、プレート10の突起12を除去することによって、プレート10同士が直接に接触することを可能にしてもよい。
【0044】
さらに別の実施形態は、成長段階中に固定支持体6の内部のプレート10間に存在するガスを入れ替えることを備える。全体的なガスの厚さが、薄すぎる場合、より大きな熱伝導率を有するガス、例えば、ヘリウムが、使用されてもよい。したがって、熱伝導層5と熱交換器9との間におけるより大きな空間が、使用されてもよい。
【0045】
シリコン結晶化プロセスの全体を通して、第1のセンサー15の温度および第1のセンサー15と第2のセンサー16との温度差は、加熱量および制御ロッド8の移動量を制御するのを可能にする。
【0046】
加熱量は、実際には、第1のセンサー15によって測定された温度が溶融段階において線形に増加し、そして、成長が開始すると安定し、そして、最終的に、インゴットに凝固するときに線形に減少するように、結晶化プロセスの全体を通して変化する。
【0047】
それと同時に、第1のセンサー15と第2のセンサー16との間の温度差が、制御ロッド8の移動に関連づけられる。したがって、投入溶融(charge melting)段階中、しきい値よりも小さい温度センサー15と16との間の温度差が、検出され、その温度差は、装置が断熱モードにあるという事実すなわち制御ロッド8がそれの最も低い位置にあるという事実によって表現される。結晶成長開始段階において、センサー15と16との間の温度差は、第2のしきい値に到達するまで、ゆっくりと減少する。この減少は、熱流束除去を表現する。凝固中、センサー15と16との間の温度差は、第1のセンサー15によって測定された温度の増加にもかかわらず、制御ロッド8の移動によって一定に維持される。
【0048】
センサー15と17との間の温度差は、坩堝2の底部における半径方向温度勾配を表現し、坩堝から除去される熱流束が実際に単方向であることを検査するのを可能にする。このようにして、半径方向の断熱を監視することが、実行され、凝固先端部の形状に関する情報を得ることができる。坩堝2の底部に実質的に平行な等温線が、好ましくは、坩堝2の底部に垂直な凝固を有するように選択される。
【0049】
変形例として、不均一な熱排出が、検出されてもよい。例えば、熱除去が、坩堝2の中央において、優先的に検出される場合、坩堝から最も遠く離れたプレート10は、坩堝よりも小さい寸法を有してもよい(図1のように)。このようにして、凸状の凝固先端部を得ることができる。
【0050】
本発明のさらに別の実施形態においては、プレート10は、不均一な厚さを有する。熱除去が中央において優先的に検出される場合、付加的な厚さを有する材料が使用されてもよい(図3)。そして、付加的な厚さは、何らかの適切な技術によって実現されてもよく、例えば、プレートを機械加工することによって、あるいは、さらなる熱伝導性材料を突き刺すことによって、実現されてもよい。
【0051】
プレートの幾何学的形状は、当然ながら、所定の熱流束分布が得られるように適合される。
【0052】
図4に示される本発明のさらに別の実施形態においては、プレート10は、予め定められた剛性を有する例えばばね型の断熱エレメント21によって、分離されてもよい。したがって、これらのエレメントは、制御ロッド8の移動が発生したとき、プレートがお互いに相対的に移動するのを可能にする。エレメント21は、有利には、プレート10の周辺上に配置される。そして、エレメント21は、プレートの周辺全体を占めてもよく、あるいは、複数のエレメントが、予め定められた領域を占めるように取り付けられる。
【0053】
有利には、坩堝に最も近いプレートに取り付けられたエレメント21は、最も遠く離れたプレートに取り付けられたエレメントよりも小さい剛性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】溶融段階にある本発明による装置の実施形態の概略断面図である。
【図2】結晶化段階にある本発明による装置の実施形態の概略断面図である。
【図3】中央に付加的な厚さを備えるプレートの概略断面図である。
【図4】装置の別の実施形態の概略断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部(3)を有する坩堝(2)と、前記坩堝(2)の下方に配置された熱除去手段(9)と、前記坩堝の前記底部(3)と前記熱除去手段(9)との間に取り付けられた熱伝導率を調整するための手段(7)とを備える、溶融材料(19)の槽から結晶質材料(20)のブロックを製造するための装置において、
熱伝導率を調整するための前記手段(7)が、
低放射率の熱伝導性材料から製造され、かつ、前記坩堝の前記底部(3)に平行な複数のプレート(10)と、
前記プレート(10)がお互いに近づきかつ遠ざかるように、かつ前記坩堝(2)の前記底部に近づきかつ遠ざかるように前記プレート(10)を移動させるための手段と、
を備え、
前記プレート(10)が、0.5以下の放射率を有することを特徴とする装置。
【請求項2】
前記プレート(10)が、10W/(m・K)以上である熱伝導率を有することを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記プレート(10)が、モリブデンに基づいた材料から製造されることを特徴とする請求項1および2のいずれかに記載の装置。
【請求項4】
前記プレート(10)が、付加的な厚さを有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
熱伝導率を調整するための前記手段(7)が、0.01W/(m・K)以上である熱伝導率を有する少なくとも1つのガスを含む制御された雰囲気を備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記制御された雰囲気が、ヘリウムまたはアルゴンを含むことを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
熱伝導率を調整するための前記手段が、前記坩堝の前記底部にしっかりと接合されかつ0.5より小さい放射率を有する熱伝導層(5)を備えることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記熱伝導層(5)が、10W/(m・K)以上である熱伝導率を有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記プレート(10)が、スペーサーを形成する突起(12)を備えることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記プレート(10)間にばね型の断熱エレメント(21)を備えることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記プレートをお互いに近づきかつ遠ざかるように移動させるための前記手段が、前記熱除去手段(9)と一体化された制御ロッド(8)を備えることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−18987(P2009−18987A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−180025(P2008−180025)
【出願日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(502142323)コミサリア、ア、レネルジ、アトミク (195)
【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE
【Fターム(参考)】