説明

熱伝達組成物

【課題】低GWPを有しながらも、既存の冷媒を用いて達成される値の10%以内で(“成績係数”として便宜上表示される)能力およびエネルギー効率を有する、それ自体で使用可能である又は既存の冷却使用の代替物として適した熱伝達組成物を提供すること。
【解決手段】トランス‐1,3,3,3‐テトラフルオロプロペン(R‐1234ze(E))、ジフルオロメタン(R‐32)および1,1‐ジフルオロエタン(R‐152a)を含んでなる、熱伝達組成物。R‐32およびR‐152aおよびR‐1234ze(E)から本質的になり、R‐32を約5〜約12重量%、R‐152aを約10〜約45重量%、R‐1234ze(E)を約43〜約85重量%含んでなる、熱伝達組成物が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝達組成物、特にR‐134a、R‐152a、R‐1234yf、R‐22、R‐410A、R‐407A、R‐407B、R‐407C、R507およびR‐404aのような既存の冷媒の代替物として適しうる熱伝達組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
明細書中における既発表文献または背景の掲載または考察は、文献または背景が最新技術の一部であるか、または一般常識であることを認めるものとして必ずしも受け取るべきでない。
【0003】
機械冷却システムおよび関連熱伝達装置、例えばヒートポンプおよび空調システムは周知である。このようなシステムにおいて、冷媒液は周辺ゾーンから熱を受け取りながら低圧で蒸発する。得られた蒸気は次いで圧縮され、凝縮器へ送られ、そこでそれが凝縮して、第二ゾーンへ熱を放出し、凝縮液は膨張弁を通って蒸発器へ戻され、こうしてサイクルを完了する。蒸気を圧縮して液体を送り出すために要する機械的エネルギーは、例えば電気モーターまたは内燃機関により供給される。
【0004】
適切な沸点および高い蒸発潜熱を有することに加えて、冷媒で好ましい性質としては、低毒性、不燃性、非腐食性、高安定性、および不快臭が無いことが挙げられる。他の望ましい性質は、25バール未満の圧力で速やかな圧縮性、圧縮時の低い排出温度、高い冷却能力、高い効率(高い成績係数)および所望の蒸発温度で1バール超の蒸発器圧力である。
【0005】
ジクロロジフルオロメタン(冷媒R‐12)は性質の適切な組合せを有し、長年にわたり最も広く用いられた冷媒であった。完全および部分的ハロゲン化クロロフルオロカーボンが地球の保護オゾン層を破壊しているという国際的懸念のために、それらの製造および使用が厳しく制限され、最終的には完全に廃止されるという一般協定があった。ジクロロジフルオロメタンの使用は1990年代に段階的に廃止された。
【0006】
クロロジフルオロメタン(R‐22)は、その低いオゾン破壊係数のために、R‐12の代替物として導入された。R‐22が強力な温室効果ガスであるという懸念を受けて、その使用もまた段階的に廃止されつつある。
【発明の開示】
【0007】
本発明に関するタイプの熱伝達装置は本質的に閉鎖系であるが、設備の作動中またはメンテナンス作業中における漏出のために大気への冷媒の損失が生じうる。したがって、ゼロオゾン破壊係数を有する物質で完全および部分的ハロゲン化クロロフルオロカーボン冷媒を置き換えることが重要である。
【0008】
オゾン破壊の可能性に加えて、大気中で有意な濃度のハロカーボン冷媒は地球温暖化(いわゆる温室効果)に関与しているかもしれないと示唆されていた。したがって、ヒドロキシルラジカルのような他の大気成分と反応しうる能力の結果として、または光分解プロセスによる速やかな分解の結果として、比較的短い大気寿命を有する冷媒を用いることが望ましいのである。
【0009】
R‐410AおよびR‐407冷媒(R‐407A、R‐407BおよびR‐407Cを含む)がR‐22の代替冷媒として導入されてきた。しかしながら、R‐22、R‐410AおよびR‐407冷媒はすべて高い地球温暖化係数(GWP、温室温暖化係数としても知られる)を有している。
【0010】
1,1,1,2‐テトラフルオロエタン(冷媒R‐134a)がR‐12の代替冷媒として導入された。しかしながら、有意なオゾン破壊係数を有しないにもかかわらず、R‐134aは1300のGWPを有している。それより低いGWPを有するR‐134aの代替物を見出すことが望まれるのである。
【0011】
R‐152a(1,1‐ジフルオロエタン)がR‐134aの代替物として特定された。それはR‐134aよりやや効率的であり、120の温室温暖化係数を有している。しかしながら、R‐152aの燃焼性は、例えば自動車空調システムにおいてその安全な使用を行う上で、高すぎると判断されている。特に、空気中におけるその可燃下限は低すぎ、その火炎速度は高すぎ、点火エネルギーは低すぎると考えられている。
【0012】
このように、低燃焼性のような改善された性質を有する代替媒体を提供する必要性がある。フルオロカーボン燃焼化学は複雑かつ予測不能である。不燃性フルオロカーボンと可燃性フルオロカーボンとの混合が流体の燃焼性を減らすか又は空気中で可燃性の組成物の範囲を減らすとは、必ずしも限らない。例えば、不燃性R‐134aが可燃性R‐152aと混合されると、該混合物の可燃下限が予測不能な様に変わることを、本発明者らは発見した。三元または四元組成物を考慮すると、状況はより一層複雑で予測しにくくなる。
【0013】
ほとんどまたは全く改修を伴うことなく冷却装置のような既存の装置に用いることができる代替冷媒を提供する必要性もある。
【0014】
R‐1234yf(2,3,3,3‐テトラフルオロプロペン)が、ある種の用途、特に自動車空調またはヒートポンピング用途でR‐134aに置き換わる代替冷媒候補として特定された。そのGWPは約4である。R‐1234yfは可燃性であるが、その燃焼特性は自動車空調またはヒートポンピングを含むいくつかの用途で許容されると一般的にみなされている。特に、R‐152aと比べた場合、その可燃下限は高く、その最小点火エネルギーは高く、空気中の火炎速度はR‐152aの場合よりかなり低い。
【0015】
温室効果ガスの排出に関して、空調または冷却システムを作動した環境影響は、冷媒のいわゆる“直接”GWPに関するのみならず、該システムを作動させる電気または燃料の消費に起因した二酸化炭素の排出を意味する、いわゆる“間接”排出に関しても考慮されねばならない。総等価温暖化影響(TEWI)分析またはライフサイクル炭素排出量(LCCP)分析として知られるものを含めて、この総GWP影響のいくつかの測定基準が開発されてきた。これら測定の双方には、冷媒GWPの効果の試算と、全体温暖化影響に及ぼすエネルギー効率を含む。
【0016】
R‐1234yfのエネルギー効率および冷却能力はR‐134aの場合よりもかなり低いことがわかり、加えて該流体はシステム配管および熱交換器で圧力損失の増大を示すことがわかった。この結論として、R‐1234yfを用いて、R‐134aに匹敵するエネルギー効率および冷却性能を達成するためには、設備の複雑さの増加と配管のサイズの増大が必要とされ、設備に伴う間接的排出の増加に繋がる。さらに、R‐1234yfの生産は、(フッ素化または塩素化された)原料の使用において、R‐134aよりも複雑でより低効率であると思われる。そのようにR‐134aに置き換わるR‐1234yfの採用は、R‐134aの場合より原料を多く消費し、温室効果ガスの間接的排出を多くもたらす。
【0017】
R‐134aに関して設計される一部の既存技術は、一部の熱伝達組成物の低燃焼性すら受け入れることができないことがある(150未満のGWPを有する組成物は、ある程度可燃性であると考えられる)。
【0018】
したがって、本発明の主な目的は、低GWPを有しながらも、例えば既存の冷媒(例えば、134a、R‐152a、R‐1234yf、R‐22、R‐410A、R‐407A、R‐407B、R‐407C、R507およびR‐404a)を用いて達成される値の理想的には10%以内、好ましくはこれら値の10%未満(例えば、約5%)以内で(“成績係数”として便宜上表示される)能力およびエネルギー効率を有する、それ自体で使用可能である又は既存の冷却使用の代替物として適した熱伝達組成物を提供することにある。流体間におけるこの程度の差異は設備およびシステム作動特徴の再設計により通常解決可能であることが、当業界で知られている。組成物は理想的には低毒性および許容しうる燃焼性も有しているべきである。
【0019】
本発明は、トランス‐1,3,3,3‐テトラフルオロプロペン(R‐1234ze(E))、ジフルオロメタン(R‐32)および1,1‐ジフルオロエタン(R‐152a)を含んでなる熱伝達組成物の提供により、上記欠点に取り組んでいる。これは、別記されない限り、以下において本発明の組成物と称される。
【0020】
ここで記載された化学物質のすべてが商業的に入手可能である。例えば、フルオロケミカルはApollo Scientific(UK)から得られる。
【0021】
典型的には、本発明の組成物は約25重量%以下のR‐32を含有している。
【0022】
便宜上、本発明の組成物は約45重量%以下のR‐152aを含有している。
【0023】
好ましい態様において、本発明の組成物は約2〜約25重量%R‐32、約5〜約45重量%R‐152aおよび約60〜約95重量%(例えば約70〜約93%)R‐1234ze(E)を含有している。
【0024】
有利には、本発明の組成物は約4〜約12重量%R‐32、約5〜約10重量%R‐152aおよび約78〜約91重量%R‐1234ze(E)を含有している。
【0025】
好ましい側面において、本発明の組成物は約8〜約12重量%R‐32、約5〜約10重量%R‐152aおよび約78〜約87重量%R‐1234ze(E)を含有している。このような組成物の例は:
約10%R‐32、約5%R‐152aおよび約85%R‐1234ze(E);
約11%R‐32、約6%R‐152aおよび約83%R‐1234ze(E);
約9%R‐32、約6%R‐152aおよび約85%R‐1234ze(E);
約8%R‐32、約5%R‐152aおよび約87%R‐1234ze(E);または
約8%R‐32、約6%R‐152aおよび約86%R‐1234ze(E);
を含有している三元ブレンドである。
【0026】
便宜上、本発明の組成物は約8〜約12重量%R‐32、約3〜約7重量%R‐152aおよび約81〜約89重量%R‐1234ze(E)を含有している。
【0027】
本発明の一側面において、本発明の組成物は約5〜約12重量%R‐32、約10〜約45重量%R‐152aおよび約43〜約85重量%R‐1234ze(E)を含有している。
【0028】
別の好ましい側面において、本発明の組成物は約5〜約12重量%R‐32、約10〜約40重量%R‐152aおよび約48〜約85重量%R‐1234ze(E)を含有している。
【0029】
一態様において、本発明の組成物は約5〜約11重量%R‐32、約10〜約35重量%R‐152aおよび約54〜約85重量%R‐1234ze(E)を含有している。
【0030】
有利には、本発明の組成物は約5〜約10重量%R‐32、約15〜約30重量%R‐152aおよび約60〜約80重量%R‐1234ze(E)を含有している。
【0031】
ここで用いられているように、本組成物で挙げられたすべての%量は、請求項を含めて、別記されない限り、組成物の全重量をベースにした重量によるものである。
【0032】
疑義の回避のために、本発明の組成物で諸成分の量の範囲に関して述べられた上および下限値はとにかく入れ替えられるが、但し得られる範囲は本発明の最も広い範囲内に属すると理解すべきである。例えば、本発明の組成物は約5〜約12重量%R‐32、約5または10〜約35重量%R‐152aおよび約53〜約85または90重量%R‐1234ze(E)を含有している。
【0033】
R‐1234ze(E)、R‐32およびR‐152aを含有する本発明の組成物は、これらの成分から本質的になる(またはからなる)。
【0034】
“から本質的になる”という用語とは、我々は、本発明の組成物が他の成分、特に、熱伝達組成物に用いられることが知られた別の(ヒドロ)(フルオロ)化合物(例えば、(ヒドロ)(フルオロ)アルカンまたは(ヒドロ)(フルオロ)アルケン)を実質的に含有していないことを意味する。我々は、“から本質的になる”の意味内に、用語“からなる”を含めている。このように、本発明の組成物は、好ましくは、R‐1234ze(E)、R‐32およびR‐152aの三元ブレンドである。
【0035】
疑義の回避のために、ここで記載された本発明の組成物はいずれも、成分の具体的に明記された量に関するものを含めて、それらの組成物で明記された成分から本質的になる(またはからなる)。
【0036】
別の側面において、R‐1234ze(E)、R‐32およびR‐152aを含有する本発明の組成物は、1,1,1,2‐テトラフルオロエタン(R‐134a)をさらに含んでなる。R‐134aは、典型的には、本発明の組成物の燃焼性を減らすために含有される。
【0037】
R‐134aが存在するならば、得られる組成物は典型的には約50重量%以下のR‐134a、好ましくは約25%〜約45重量%のR‐134aを含有している。組成物の残部は、適切には上記と類似した好ましい割合で、R‐32、R‐152aおよびR‐1234ze(E)を含有している。
【0038】
R‐32、R‐152a、R‐1234ze(E)およびR‐134aの適切なブレンドは、約2〜約15重量%R‐32、約5〜約45重量%R‐152a、約25〜約50%R‐134aおよび約5〜約70重量%R‐1234ze(E)を含有している。
【0039】
例えば、本発明の組成物は約4〜約12重量%R‐32、約5〜約35重量%R‐152a、約25〜約45%R‐134aおよび残部のR‐1234ze(E)を含有している。
【0040】
組成物中R‐134aの割合が約25重量%であれば、組成物の残部は典型的には約3〜約12重量%(好ましくは約4〜約10%)R‐32、約5〜約45重量%(好ましくは約5〜約40%)R‐152aおよび約20〜約70重量%(好ましくは約25〜約65%)R‐1234ze(E)を含有している。
【0041】
組成物中R‐134aの割合が約35重量%であれば、組成物の残部は典型的には約3〜約11重量%(好ましくは約4〜約10%)R‐32、約5〜約45重量%(好ましくは約5〜約40%)R‐152aおよび約10〜約60重量%(好ましくは約15〜約55%)R‐1234ze(E)を含有している。
【0042】
組成物中R‐134aの割合が約45重量%であれば、組成物の残部は典型的には約3〜約10重量%(好ましくは約3〜約8%)R‐32、約5〜約45重量%(好ましくは約5〜約40%)R‐152aおよび約5〜約50重量%(好ましくは約15〜約45%)R‐1234ze(E)を含有している。
【0043】
好ましくは、R‐134aを含有する本発明の組成物は、ASHRAE34方法論を用いた60℃の試験温度において、不燃性である。有利には、約−20℃〜60℃のどの温度でも本発明の組成物と平衡状態で存在する蒸気の混合物も不燃性である。
【0044】
本発明による組成物は便宜上実質的にR‐1225(ペンタフルオロプロペン)、便宜上実質的にR‐1225ye(1,2,3,3,3‐ペンタフルオロプロペン)またはR‐1225zc(1,1,3,3,3‐ペンタフルオロプロペン)を含有せず、該化合物は毒性問題を伴うことがある。
【0045】
“実質的にせず”とは、我々は、本発明の組成物が組成物の総重量ベースで0.5重量%以下、好ましくは0.1%以下の記述成分を含有していることを意味する。
【0046】
本発明の組成物は実質的に:
(i)2,3,3,3‐テトラフルオロプロペン(R‐1234yf)
(ii)シス‐1,3,3,3‐テトラフルオロプロペン(R‐1234ze(Z))および/または
(iii)3,3,3‐トリフルオロプロペン(R‐1243zf)
を含有しないことがある。
【0047】
本発明の組成物はゼロのオゾン破壊係数を有する。
【0048】
好ましくは、本発明の組成物(例えば、R‐134a、R‐1234yfまたはR‐152aに代わる適切な冷媒代替物であるもの)は、1300未満、好ましくは1000未満、さらに好ましくは500、400、300または200未満、特に150または100未満、さらには一部の場合に50未満であるGWPを有している。別記されない限り、GWPのIPCC(気候変動に関する政府間パネル)TAR(第三次評価報告書)値がここでは用いられていた。
【0049】
有利には、本組成物は、本組成物の個別可燃性成分、例えばR‐32またはR‐152aと比べた場合に、低い燃焼危険性のものである。好ましくは、本組成物はR‐1234yfと比べた場合に低い燃焼危険性のものである。
【0050】
一側面において、本組成物は、R‐32、R‐152aまたはR‐1234yfと比べて、(a)高い可燃下限;(b)高い点火エネルギー;または(c)低い火炎速度のうち1以上を有している。好ましい態様において、本発明の組成物は不燃性である。有利には、約−20℃〜60℃のどの温度でも本発明の組成物と平衡状態で存在する蒸気の混合物も不燃性である。
【0051】
燃焼性は、2004年のAddendum 34p通りの試験方法論でASTM標準E‐681を組み入れたASHRAE標準34に従い調べられ、その全内容が参照によりここに組み込まれる。
【0052】
一部の用途において、ASHRA‐34方法論により不燃性と処方が分類されることは不要かもしれない;例えば冷却設備装填物を周囲へ漏出させることにより可燃性混合物を作ることが物理的に不可能であれば、適用に際し使用上安全とするほど十分に空気中で可燃限界が下げられる流体を開発することが可能である。可燃性冷媒R‐152aへ冷媒R‐32およびR‐1234ze(E)をさらに加える効果が、空気との混合物中における燃焼性をこのように変えることであることを、我々は発見した。
【0053】
ヒドロフルオロカーボン(HFC)またはヒドロフルオロカーボン+ヒドロフルオロオレフィンの混合物の燃焼性は、炭素‐水素結合と比べた炭素‐フッ素結合の割合に関することが知られている。これは比率R=F/(F+H)として表示され、ここではモルベースで、Fは組成物中におけるフッ素原子の総数を表し、Hは水素原子の総数を表す。別記されない限り、これはフッ素比とここでは称される。
【0054】
例えば、Takizawa et al.,Reaction Stoichiometry for Combustion of Fluoroethane Blends,ASHRAE Transactions,112(2),2006(参照によりここに組み込まれる)は、R‐152aを含んでなる混合物のこの比率と火炎速度との間でほぼ直線関係があることを示しており、フッ素比の増加は火炎速度の低下をもたらす。このリファレンスにおけるデータは、ゼロに低下した火炎速度の場合、換言すると不燃性である混合物の場合、フッ素比が約0.65より大きい必要があることを示している。
【0055】
同様に、Minorら(Du Pont特許出願WO2007/053697)は多くのヒドロフルオロオレフィンの燃焼性に関する開示を発表しており、フッ素比が約0.7より大きいならば、このような化合物が不燃性であると予想されることを示している。
【0056】
したがって、オレフィンにいかなる量のR‐152aが加えられても混合物のフッ素比を0.67未満に下げてしまうことから、R‐32(フッ素比0.5)、R‐152a(フッ素比0.33)およびR‐1234ze(E)(フッ素比0.67)を含んでなる混合物は、ほぼ100%R‐1234ze(E)を含んでなる限定組成範囲の場合を除き可燃性であることが、当該技術に基づくと予想される。
【0057】
意外にも、我々はこれがそうではないことを発見したのである。特に、23℃で不燃性である、0.7未満のフッ素比を有した、R‐32、R‐152aおよびR‐1234ze(E)を含んでなる混合物が存在することを、我々は発見した。以下の実施例で示されているように、R‐32、R‐152aおよびR‐1234ze(E)のある混合物は、約0.57のフッ素比へ下がっても不燃性である。
【0058】
さらに、以下の実施例で実証されているように、空気中で7%v/v以上の可燃下限を有し(それにより多くの用途で使用上安全にする)、約0.46もの低いフッ素比を有するR‐32、R‐152aおよびR‐1234ze(E)の混合物を別に確認した。可燃性2,3,3,3‐テトラフルオロプロペン(R‐1234yf)が0.67のフッ素比と23℃で空気中6〜6.5%v/vの測定可燃下限を有するとすれば、これは特に意外である。
【0059】
一態様において、本発明の組成物は約0.42〜約0.7、例として約0.44〜約0.67、例えば約0.57〜約0.65のフッ素比を有する。疑義の回避のために、これらフッ素比範囲の上および下値はとにかく入れ替えられるが、但し得られる範囲は本発明の最も広い範囲内に属すると理解すべきである。
【0060】
予想外に低い量のR‐1234ze(E)を含有した低または不燃性R‐32/R‐152a/R‐1234ze(E)を生産することにより、このような組成物中におけるR‐32および/またはR‐152aの量は増やせる。これは、それより高い量(例えばほぼ100%)のR‐1234ze(E)を含有した相当組成物と比べて、冷却能力の増加、温度勾配の減少および/または圧力損失の減少を示す熱伝達組成物をもたらすと考えられる。
【0061】
このように、本発明の組成物は低/不燃性、低GWPおよび改善された冷却性能の完全に予想外な組合せを示す。これら冷却性能の一部は以下でさらに詳細に説明されている。
【0062】
一定圧力下における共沸(非共沸)混合物の泡立ち点と露点温度との差異と考えられる温度勾配は、冷媒の特徴をなすものである;流体を混合物で置き換えることが望まれるならば、代替流体で類似したまたは低い勾配を有することが多くの場合に好ましい。一態様において、本発明の組成物は共沸性である。
【0063】
蒸気‐圧縮サイクルの蒸発器において、有効な温度勾配は露点と泡立ち点温度との差異より小さく、作動流体が泡立ち点と露点の中間における液体および蒸気の二相混合物として蒸発器へ入るからである。
【0064】
便宜上、本発明の組成物の(蒸発器における)温度勾配は約10K未満、好ましくは約5K未満である。
【0065】
有利には、本発明の組成物の体積冷却能力は、置き換えられるところの既存の冷媒流体の少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%またはさらには少なくとも95%である。
【0066】
本発明の組成物は、典型的にはR‐1234yfの少なくとも90%である、体積冷却能力を有している。好ましくは、本発明の組成物は、R‐1234yfの場合の少なくとも95%、例えばR‐1234yfの場合の約95%〜約120%である、体積冷却能力を有している。
【0067】
一態様において、本発明の組成物のサイクル効率(成績係数、COP)は、置き換えられるところの既存の冷媒流体より約5%以内またはそれ以上で良い。
【0068】
便宜上、本発明の組成物の圧縮器排出温度は、置き換えられるところの既存の冷媒流体の約15K、好ましくは約10Kまたはさらには約5K以内である。
【0069】
本発明の組成物は、好ましくは、R‐134a値の95%以上で低いまたは同等の圧力損失特性および冷却能力を有しながら、同等条件下でR‐134aの少なくとも95%(好ましくは少なくとも98%)のエネルギー効率を有している。有利には、本組成物は同等条件下でR‐134aより高いエネルギー効率と低い圧力損失特性を有している。本組成物は、有利には、R‐1234yf単独より良いエネルギー効率と圧力損失特性も有している。
【0070】
本発明の熱伝達組成物は既存の設計の設備で使用に適し、既定HFC冷媒と一緒に現在用いられている潤滑剤の全種類と適合する。それらは、所望により、適切な添加剤の使用により鉱油で安定化または適合化される。
【0071】
好ましくは、熱伝達設備で用いられる場合、本発明の組成物は潤滑剤と組み合わされる。
【0072】
便宜上、潤滑剤は鉱油、シリコーン油、ポリアルキルベンゼン類(PAB)、ポリオールエステル類(POE)、ポリアルキレングリコール類(PAG)、ポリアルキレングリコールエステル類(PAGエステル)、ポリビニルエーテル類(PVE)、ポリ(アルファ‐オレフィン類)およびそれらの組合せからなる群より選択される。
【0073】
有利には、潤滑剤はさらに安定剤を含んでなる。
【0074】
好ましくは、安定剤はジエン系化合物、ホスフェート類、フェノール化合物およびエポキシドとそれらの混合物からなる群より選択される。
【0075】
便宜上、本発明の組成物は難燃剤と組み合わせてもよい。
【0076】
有利には、難燃剤はトリ(2‐クロロエチル)ホスフェート、(クロロプロピル)ホスフェート、トリ(2,3‐ジブロモプロピル)ホスフェート、トリ(1,3‐ジクロロプロピル)ホスフェート、リン酸二アンモニウム、様々なハロゲン化芳香族化合物、酸化アンチモン、アルミニウム三水和物、ポリ塩化ビニル、フッ素化ヨードカーボン、フッ素化ブロモカーボン、トリフルオロヨードメタン、ペルフルオロアルキルアミン類、ブロモ‐フルオロアルキルアミン類およびそれらの混合物からなる群より選択される。
【0077】
好ましくは、熱伝達組成物は冷媒組成物である。
【0078】
一態様において、本発明は本発明の組成物を含んでなる熱伝達装置を提供する。
【0079】
好ましくは、熱伝達装置は冷却装置である。
【0080】
便宜上、熱伝達装置は自動車空調システム、住宅空調システム、業務用空調システム、住宅用冷蔵庫システム、住宅用冷凍庫システム、業務用冷蔵庫システム、業務用冷凍庫システム、冷却機空調システム、冷却機冷却(chiller refrigeration)システムと、業務用または住宅用ヒートポンプシステムからなる群より選択される。好ましくは、熱伝達装置は冷却装置または空調システムである。
【0081】
有利には、熱伝達装置は遠心型圧縮器を内蔵している。
【0082】
本発明は、ここで記載されているような熱伝達装置における本発明の組成物の使用も提供する。
【0083】
本発明の別の側面によると、本発明の組成物を含んでなる発泡剤が提供される。
【0084】
本発明の他の側面によると、発泡体を形成可能な1種以上の成分と本発明の組成物を含んでなる発泡性組成物が提供される。
【0085】
好ましくは、発泡体を形成可能な1種以上の成分は、ポリウレタン類、熱可塑性ポリマーおよび樹脂、例えばポリスチレンおよびエポキシ樹脂から選択される。
【0086】
本発明の別の側面によると、本発明の発泡性組成物から得られる発泡体が提供される。
【0087】
好ましくは、発泡体は本発明の組成物を含んでなる。
【0088】
本発明の他の側面によると、スプレーされる物質と、本発明の組成物を含んでなる噴射剤とを含んでなる、スプレー用組成物が提供される。
【0089】
本発明の別の側面によると、本発明の組成物を凝縮させ、その後で冷却される物品の近くで該組成物を蒸発させることを含んでなる、物品を冷却するための方法が提供される。
【0090】
本発明の他の側面によると、加熱される物品の近くで本発明の組成物を凝縮させ、その後で該組成物を蒸発させることを含んでなる、物品を加熱するための方法が提供される。
【0091】
本発明の別の側面によると、本発明の組成物を含んでなる溶媒とバイオマスを接触させ、該溶媒から物質を分離することを含んでなる、バイオマスから物質を抽出するための方法が提供される。
【0092】
本発明の他の側面によると、本発明の組成物を含んでなる溶媒と物品を接触させることを含んでなる、物品を清浄化するための方法が提供される。
【0093】
本発明の別の側面によると、本発明の組成物を含んでなる溶媒と水溶液を接触させ、該溶媒から物質を分離することを含んでなる、水溶液から物質を抽出するための方法が提供される。
【0094】
本発明の他の側面によると、本発明の組成物を含んでなる溶媒と粒状固体マトリックスを接触させ、該溶媒から物質を分離することを含んでなる、粒状固体マトリックスから物質を抽出するための方法が提供される。
【0095】
本発明の別の側面によると、本発明の組成物を含有している機械的動力発生装置が提供される。
【0096】
好ましくは、機械的動力発生装置はランキンサイクルまたはその変法を用いて熱から動力を発生するように構成されてなる。
【0097】
本発明の他の側面によると、既存の熱伝達流体を除去して、本発明の組成物を導入する工程を含んでなる、熱伝達装置を改修するための方法が提供される。好ましくは、熱伝達装置は冷却装置または(スタティック)空調システムである。有利には、該方法は温室効果ガス(例えば、二酸化炭素)排出権の割当を得る工程をさらに含んでなる。
【0098】
上記の改修方法によると、既存の熱伝達流体は、本発明の組成物を導入する前に、熱伝達装置から完全に除去される。既存の熱伝達流体は熱伝達装置から一部除去し、その後で本発明の組成物を導入することもできる。
【0099】
既存の熱伝達流体がR‐134aであり、本発明の組成物がR‐134a、R‐1234ze(E)、R‐32およびR‐152a(および潤滑剤、安定剤または追加の難燃剤のような任意成分)を含有している他の態様において、R‐1234ze(E)、R‐32およびR‐152aなどは熱伝達装置でR‐134aへ加えられ、それにより本発明の組成物と、本発明の熱伝達装置をその場で形成することができる。望ましい割合で本発明の組成物の諸成分の提供を容易にするために、R‐1234ze(E)、R‐32およびR‐152aなどを加える前に、既存のR‐134aの一部が熱伝達装置から除去されてもよい。
【0100】
このように、本発明は、R‐1234ze(E)、R‐32およびR‐152aと、任意成分、例えば潤滑剤、安定剤または追加の難燃剤を、R‐134aである既存の熱伝達流体を含有する熱伝達装置へ導入することを含んでなる、本発明の組成物および/または熱伝達装置を製造するための方法を提供する。所望により、R‐134aの少なくとも一部は、R‐1234ze(E)、R‐32、R‐152aなどを導入する前に、熱伝達装置から除去される。
【0101】
もちろん、本発明の組成物は、望ましい割合でR‐1234ze(E)、R‐32、R‐152a、所望によりR‐134a(および潤滑剤、安定剤または追加の難燃剤のような任意成分)を混合することでも、簡単に製造される。本組成物は次いで、R‐134aまたはいずれか他の既存の熱伝達流体を含有しない熱伝達装置、例えばR‐134aまたはいずれか他の既存の熱伝達流体が除去されていた装置へ加えられる(またはここで記載されているようないずれか他の手法で用いられる)。
【0102】
本発明の別の側面において、既存の化合物または組成物を含んでなる製品の作動から生じる環境影響を減らすための方法が提供され、該方法は少なくとも部分的に既存の化合物または組成物を本発明の組成物で置き換えることを含んでなる。好ましくは、この方法は温室効果ガス排出権の割当を得る工程を含んでなる。
【0103】
環境影響とは、我々は製品の作動による温室温暖化ガスの発生および排出を含める。
【0104】
上記のように、この環境影響は、漏出または他の損失から有意な環境影響を有する化合物または組成物の排出を含むのみならず、装置によりその耐用期間中に消費されるエネルギーから生じる二酸化炭素の排出も含めて考えられる。このような環境影響は総等価温暖化影響(TEWI)として知られる測定により定量しうる。この測定は、例えばスーパーマーケット冷却システムを含めた、ある固定冷却および空調設備の環境影響の定量化に用いられてきた(例えばhttp://en.wikipedia.org/wiki/Total equivalent warming impact参照)。
【0105】
環境影響は、化合物または組成物の合成および製造から生じる温室効果ガスの排出を含めて、さらに考えられる。この場合には、ライフサイクル炭素排出量(LCCP、例えばhttp://www.sae.org/events/aars/presentations/2007papasavva.pdf参照)として知られる測定を行うために、製造時排出がエネルギー消費および直接損失効果に加えられる。LCCPの使用は自動車空調システムの環境影響を評価する際に一般的である。
【0106】
排出権は地球温暖化に寄与する汚染物質排出を減らすことに対して与えられ、例えば預けられ、取引され、または販売されることができる。それらは二酸化炭素の換算量で便宜上表示される。そのため、1kgのR‐134aの排出が避けられるとすれば、1×1300=1300kg CO換算の排出権が与えられる。
【0107】
本発明の他の態様において、(i)既存の化合物または組成物を本発明の組成物で置き換え(本発明の組成物は既存の化合物または組成物より低いGWPを有している);および(ii)該置換え工程で温室効果ガス排出権を得ることを含んでなる、温室効果ガス排出権を生み出すための方法が提供される。
【0108】
好ましい態様において、本発明の組成物の使用は、既存の化合物または組成物の使用により達成される場合よりも低い総等価温暖化影響および/または低いライフサイクル炭素排出量を有する設備をもたらす。
【0109】
これらの方法は、いずれか適切な製品で、例えば、空調、冷却(例えば低および中温度冷却)、熱伝達、発泡剤、エアロゾルまたはスプレー用噴射剤、気体誘電体、凍結手術、獣医処置、歯科処置、消火、火炎抑制、溶媒(例えば、フレーバーおよびフレグランスの担体)、クリーナー、エアホーン、ペレットガン、局所麻酔剤および膨張用途の分野で行われる。好ましくは、分野は空調または冷却である。
【0110】
適切な製品の例としては、熱伝達装置、発泡剤、発泡性組成物、スプレー用組成物、溶媒および機械的動力発生装置がある。好ましい態様において、製品は熱伝達装置、例えば冷却装置または空調ユニットである。
【0111】
既存の化合物または組成物は、それに置き換わる本発明の組成物より高い、GWPおよび/またはTEWIおよび/またはLCCPで測定されるような環境影響を有している。既存の化合物または組成物はフルオロカーボン化合物、例えばペルフルオロ‐、ヒドロフルオロ‐、クロロフルオロ‐またはヒドロクロロフルオロ‐カーボン化合物を含んでなるか、またはそれはフッ素化オレフィンを含んでなる。
【0112】
好ましくは、既存の化合物または組成物は冷媒のような熱伝達化合物または組成物である。置き換えられる冷媒の例としては、R‐134a、R‐152a、R‐1234yf、R‐410A、R‐407A、R‐407B、R‐407C、R507、R‐22およびR‐404Aがある。本発明の組成物は、R‐134a、R‐152aまたはR‐1234yfの代替物として特に適している。
【0113】
いかなる量の既存の化合物または組成物も、環境影響を減らせるように置き換えられる。これは、置き換えられる既存の化合物または組成物の環境影響と、本発明の代替組成物の環境影響に依存する。好ましくは、製品中における既存の化合物または組成物は本発明の組成物で完全に置換えられる。
【0114】
本発明は以下の非制限例で実証される。
【実施例】
【0115】
燃焼性
大気圧および制御湿度下で空気中における本発明のある組成物の燃焼性を、ASHRAE標準34の方法論で記載されているような試験フラスコ器具で研究した。用いられた試験温度は23℃であった;湿度は77°F(25℃)の標準温度に対して50%であるように制御した。用いられた希釈剤はR‐1234ze(E)であり、これはこれらの試験条件下で不燃性であることがわかった。用いられた燃料はR‐32およびR‐152aの混合物であった。3種の燃料組成物を試験し、R‐32対R‐152aのモル割合を各燃料で変えた。用いられたR‐32対R‐152aの3種モル比は1:1、1:2および1:3であった。溶存空気または他の不活性ガスを試験前に除去するために、燃料および希釈ガスをシリンダーの真空パージへ付した。これら試験の結果は図1〜3で示されている。これらの三角チャートにおいて、頂点は純粋燃料、空気および希釈剤を表す。可燃性領域は燃料、空気および希釈剤の相対的割合を変えることにより特定され、各チャートにおいてハッチング線としてプロットされている。
【0116】
上記方法論を用いて、我々は下記組成物を23℃で不燃性であると見い出した(関連フッ素比も示されている)。
【表1】

【0117】
混合物のフッ素比が約0.57より大きければ、R‐32、R‐152aおよびR‐1234ze(E)を含んでなる不燃性混合物が作製されうることがわかる。
【0118】
我々は、空気中で7%v/vの可燃下限を有するR‐32、R‐152aおよびR‐1234ze(E)の下記混合物をさらに特定した。
【表2】

【0119】
上記表は、混合物のフッ素比が約0.41より大きければ、7%v/v以上のLFLを有するR‐32、R‐152aおよびR‐1234ze(E)を含んでなる混合物を作製することが可能であることを、我々が発見したことを示している。比較として、同試験器具において同温度で空気中R‐1234yfの可燃下限は、数回の反復試験において6.0〜6.5%v/vと様々であることがわかった。
【0120】
用いられた燃料がR‐32およびR‐152aの等モル混合物であり、希釈剤がモル割合1:2でR‐134aおよびR‐1234ze(E)の混合物である、類似の燃焼実験を次いで行った。可燃性領域を調べるためにASTM燃焼器具を用いたが、それは図4として含まれている。
【0121】
燃料+希釈剤と空気との混合物を得るために必要な希釈剤の最少割合は、約59%v/vであるとわかった。59%v/v希釈剤および41%v/v燃料の不燃性組成物は、R‐32 20.5%、R‐152a 20.5%、R‐134a 19.7%およびR‐1234ze(E) 39.3%の全体組成に相当する(すべて容量)。この組成物は、不燃性組成物の測定のための以前の実験における結果と一致する、0.569のフッ素比を有している。
【0122】
フッ素比が約0.57より大きければ、これら流体の四元混合物は23℃で不燃性であると予想される、と結論づけられた。さらに、R‐134a/R‐1234ze(E)希釈剤とR‐32/R‐152a燃料ミックスのいかなる組合せも、0.4以上のフッ素比に相当する、少なくとも7%v/vの燃焼下限を有することがわかった。
【0123】
用いられた燃料がR‐152aであり、希釈剤がR‐134aである、別の燃焼実験を行った。可燃性領域を調べるためにASTM燃焼器具を用いたが、それは図5として含まれている。この図は燃焼の完全に異なる形態と予想外に広い領域を示し、このような燃焼試験の予測不能性を表している。
【0124】
大気圧および制御湿度下において空気中で本発明のある組成物の燃焼性を以下のような火炎管試験で研究した。
【0125】
試験容器は、2インチの直径を有する直立ガラスシリンダーであった。点火電極をシリンダーの底より60mm上に置いた。シリンダーを圧力解放開口部と合わせた。爆発損害を制限するために器具をシールドした。0.5秒間の定格誘導スパークを点火源として用いた。
【0126】
試験を23℃で行った(以下参照)。空気中既知濃度の燃料をガラスシリンダーへ導入した。スパークを混合物へ入れ、火炎が点火源から自ら離れて自立的に伝播するか否かを観察した。点火が起きるまで(もしあれば)、ガス濃度を1%容量ずつ増加させた。結果が以下で示されている(すべての組成は別記されない限りv/vベースである)。
【表3】

【0127】
再び、試験組成物のLFLは同条件下でR‐1234yfより著しく高い(即ち、低燃焼性)であることがわかった(R‐1234yfを同器具で試験したところ、6%v/vの燃焼下限および15%v/vの燃焼上限を示すことがわかった)。
【0128】
R‐32/R‐152a/R‐1234ze(E)ブレンドの性能
本発明の選択三元組成物の性能を、理想化された蒸気圧縮サイクルと関連した熱力学性質モデルを用いて評価した。熱力学モデルでは、温度に応じた混合物の各成分の理想ガスエンタルピーの変動の多項式相関と一緒に、混合物の蒸気相性質と蒸気‐液体平衡を表すために状態のPeng Robinson方程式を用いた。熱力学性質と蒸気液体平衡をモデル化する際におけるこの状態方程式の使用の背後にある原理は、The Properties of Gases and Liquids (5th edition) by BE Poling,JM Prausnitz and JM O’Connell pub.McGraw Hill 2000、特に第4および8章(参照によりここに組み込まれる)でさらに詳しく説明されている。
【0129】
このモデルを用いるために必要な基本性質データは、臨界温度および臨界圧力;蒸気圧およびPitzer偏心因子の関連性質;理想ガスエンタルピーと、二元系R‐32/R‐152a、R‐152a/R‐1234ze(E)およびR‐32/R‐1234ze(E)に関して測定された蒸気液体平衡データであった。
【0130】
R‐32およびR‐152aに関する基本性質データ(臨界性質、偏心因子、蒸気圧および理想ガスエンタルピー)は、参照によりここに組み込まれるNIST REFPROP Version 8.0ソフトウェアから得た。R‐1234ze(E)に関する臨界点および蒸気圧は実験で測定した。ある範囲の温度にわたるR‐1234ze(E)の理想ガスエンタルピーは、参照によりここに組み込まれる分子モデリングソフトウェアHyperchem 7.5を用いて見積もりした。
【0131】
二元混合物に関する蒸気液体平衡データは、次のようにvan der Waal’s混合則へ組み込まれた二元相互作用定数を用いて、Peng Robinson方程式へ回帰した。R‐32とR‐152aとの二元ペアに関して、データはLee et al.,J.Chem.Eng.Data,1999(44)190-192(参照によりここに組み込まれる)から得た。R‐152aとR‐1234ze(E)に関する蒸気液体平衡データはWO2006/094303の第69頁(参照によりここに組み込まれる)から得、−25℃でこれらのデータにより示唆される共沸組成物を表すように相互作用定数を合致させた。蒸気液体平衡データはR‐32とR‐1234ze(E)には利用できず、そのためこのペアに関する相互作用定数はゼロに定めた。
【0132】
本発明の選択三元組成物の冷却性能は、下記サイクル条件を用いてモデル化した。
凝縮温度(℃) 60
蒸発温度(℃) 0
準冷却(K) 5
過熱(K) 5
吸引温度(℃) 15
等エントロピー効率 65%
クリアランス比 4%
能力(kW) 6
吸引ライン直径(mm) 16.2
【0133】
これら組成物の冷却性能データは表1〜10で掲載されている。
【0134】
R‐1234yfと比べた場合に低燃焼性(または不燃性)を示しながら、近いまたは優れた冷却能力、顕著に高いエネルギー効率および低い圧力損失を有する組成物が製造されうる、とデータは示している。R‐1234yfと比べて本発明の組成物の使用で得られるエネルギー効率の向上は、たとえ該組成物の直接GWPがR‐1234yfの場合よりやや高いとしても、低い全体総等価温暖化影響(または同等に低いLCCP)と低い電力消費を示す空調システムをもたらす。
【0135】
組成物がR‐1234yfに相当する冷却能力を示すことがわかったことに加えて、見積もられた吸引ライン圧力損失はR‐1234yfの場合よりもかなり低く、R‐134aを用いると予想される値に近かった。これは自動車空調システムで重要であり、ここで吸引ガスラインは効率損失の特異点を表す。R‐1234yfは自動車システムでR‐134aの場合より大きな直径の吸引ホースを要することが知られており、これは該システムの配置に不便である。本発明の組成物は、このようなシステムで小さな吸引ラインサイズを用いる、または代わりに同一ラインサイズが用いられるとしても、システムエネルギー効率で更なる向上を実現する機会を供する。
【0136】
R‐32/R‐152a/R‐1234ze(E)/R‐134aブレンドの性能
本発明の選択四元組成物の冷却性能を、本発明の三元組成物に関して上記されたものと同一のモデルおよびサイクル条件を用いてモデル化した。これら組成物の冷却性能データは表11〜37で掲載されている。
【0137】
R‐134aに近い性能を有する完全に不燃性の流体が特に望まれるのであるが、R‐32、R‐152a、R‐134aおよびR‐1234ze(E)の組合せの使用によりGWPの有意な減少(純粋R‐134aと比べて50%以上の減少)を達成しながら、R‐134aの場合に近い能力、COPおよび圧力損失を有することが可能である、とデータは示している。
【0138】
【表4】

【0139】
【表5】

【0140】
【表6】

【0141】
【表7】

【0142】
【表8】

【0143】
【表9】

【0144】
【表10】

【0145】
【表11】

【0146】
【表12】

【0147】
【表13】

【0148】
【表14】

【0149】
【表15】

【0150】
【表16】

【0151】
【表17】

【0152】
【表18】

【0153】
【表19】

【0154】
【表20】

【0155】
【表21】

【0156】
【表22】

【0157】
【表23】

【0158】
【表24】

【0159】
【表25】

【0160】
【表26】

【0161】
【表27】

【0162】
【表28】

【0163】
【表29】

【0164】
【表30】

【0165】
【表31】

【0166】
【表32】

【0167】
【表33】

【0168】
【表34】

【0169】
【表35】

【0170】
【表36】

【0171】
【表37】

【0172】
【表38】

【0173】
【表39】

【0174】
【表40】

【0175】
【表41】

【0176】
【表42】

【0177】
【表43】

【0178】
10重量%R‐32、5重量%R‐152aおよび85重量%R‐1234ze(E)を含有した組成物の性能を、R‐134aとの使用に適した自動車空調システムで試験した。この組成物は、以下で示された結果において、“ブレンド”と表示されている。
【0179】
用いられた試験条件は、参照によりここに組み込まれる、SAE標準J2765で記載されている通りであった。これらの条件が以下でまとめられている。
- 周囲空気条件35℃および40%相対湿度(RH)
- 3℃に制御された蒸発器からのエアオフ(air-off)温度
- 圧縮器排気量0〜175cc/ストローク
- 従来のR‐134a膨張弁は、過熱調整を容易にするために電子膨張弁と置き換えた
- 内部熱交換器なしに、全流体向けの蒸発器出口で同等に過熱して用いられるシステム
【0180】
結果が以下で示されており、そこにおいてI、L、MおよびHはアイドル、低、中および高速に関し、35および45は周囲温度℃に関する。
【表44】

【0181】
【表45】

【0182】
本発明のブレンド組成物は、ある範囲の条件にわたり、R‐134a空調システムでR‐134aと能力および効率の良い対等性を表している。
【0183】
混和性データ
約10重量%R‐32、約5重量%R‐152aおよび約85重量%R‐1234ze(E)を含有した本発明の組成物(以下ブレンドと称される)の混和性をポリアルキレングリコール(PAG)潤滑剤ND8およびYN12で試験した。これら実験の結果を純粋R‐1234yfと同潤滑剤との混和性と比べた。結果が以下で示されている。
【0184】
【表46】

【0185】
【表47】

【0186】
【表48】

【0187】
【表49】

【0188】
結果は、本発明の組成物が純粋流体R‐1234yfと比べて改善された潤滑剤との混和性を有することを示している。
【0189】
要するに、本発明は、既存の冷媒、例えばR‐134aおよび提案される冷媒R‐1234yfと比べて、良好な冷却性能、低い燃焼性、低いGWP、および/または潤滑剤との混和性を含めて、有利な性質の意外な組合せを示す新規組成物を提供する。
【0190】
本発明は以下の特許請求の範囲によって規定される。
【図面の簡単な説明】
【0191】
【図1】23℃および50%のRHにおけるR32:R152a 1:3/R1234ze(E)/空気の燃焼性図である。
【図2】23℃および50%のRHにおけるR32:R152a 1:2/R1234ze(E)/空気の燃焼性図である。
【図3】23℃および50%のRHにおけるR32:R152a 1:1/R1234ze(E)/空気の燃焼性図である。
【図4】23℃および50%のRHにおけるR32:R152a 1:1/R134a:R1234ze(E) 1:2/空気の燃焼性図である。
【図5】周囲条件における、R152a R134a/空気の燃焼性図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランス‐1,3,3,3‐テトラフルオロプロペン(R‐1234ze(E))、ジフルオロメタン(R‐32)および1,1‐ジフルオロエタン(R‐152a)を含んでなる、熱伝達組成物。
【請求項2】
約25重量%以下のR‐32を含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
約45重量%以下のR‐152aを含んでなる、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
R‐32を約5〜約12重量%、R‐152aを約10〜約45重量%、R‐1234ze(E)を約43〜約85重量%含んでなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
R‐32を約8〜約12重量%、R‐152aを約5〜約10重量%、R‐1234ze(E)を約78〜約87重量%含んでなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
R‐32およびR‐152aおよびR‐1234ze(E)から本質的になる、上記請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
1,1,1,2‐テトラフルオロエタン(R‐134a)をさらに含んでなる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
約50重量%以下のR‐134aを含んでなる、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
R‐32を約2〜約15重量%、R‐152aを約5〜約45重量%、R‐134aを約25〜約50%、R‐1234ze(E)を約5〜約70重量%含んでなる、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
R‐32、R‐152a、R‐1234ze(E)およびR‐134aから本質的になる、請求項7〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
組成物が1000未満、好ましくは150未満のGWPを有している、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
温度勾配が約10K未満、好ましくは約5K未満である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
組成物が、置き換えようと意図される既存の冷媒の約15%以内、好ましくは約10%以内で、体積冷却能力を有している、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
組成物がR‐32単独、R‐152a単独またはR‐1234yf単独よりも燃えにくい、請求項1〜13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
組成物が、R‐32単独、R‐152a単独またはR‐1234yf単独と比べて、
(a)より高い可燃限界、
(b)より高い点火エネルギー、および/または
(c)より低い火炎速度
を有している、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
約0.42〜約0.7、好ましくは約0.44〜約0.67のフッ素比(F/(F+H))を有している、請求項1〜15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
不燃性である、請求項1〜16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
組成物が、置き換えようと意図される既存の冷媒の約5%以内のサイクル効率を有している、請求項1〜17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
組成物が、置き換えようと意図される既存の冷媒の約15K以内、好ましくは約10K以内の圧縮器排出温度を有している、請求項1〜18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
潤滑剤と、請求項1〜19のいずれか一項に記載の組成物とを含んでなる、組成物。
【請求項21】
潤滑剤が、鉱油、シリコーン油、ポリアルキルベンゼン類(PABs)、ポリオールエステル類(POEs)、ポリアルキレングリコール類(PAGs)、ポリアルキレングリコールエステル類(PAGエステル)、ポリビニルエーテル類(PVEs)、ポリ(アルファ‐オレフィン類)およびそれらの組合せから選択される、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
安定剤をさらに含んでなる、請求項20または21に記載の組成物。
【請求項23】
安定剤が、ジエン系化合物類、ホスフェート類、フェノール化合物類およびエポキシド類とそれらの混合物から選択される、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
難燃剤と、請求項1〜23のいずれか一項に記載の組成物とを含んでなる、組成物。
【請求項25】
難燃剤が、トリ(2‐クロロエチル)ホスフェート、(クロロプロピル)ホスフェート、トリ(2,3‐ジブロモプロピル)ホスフェート、トリ(1,3‐ジクロロプロピル)ホスフェート、リン酸二アンモニウム、様々なハロゲン化芳香族化合物、酸化アンチモン、アルミニウム三水和物、ポリ塩化ビニル、フッ素化ヨードカーボン、フッ素化ブロモカーボン、トリフルオロヨードメタン、ペルフルオロアルキルアミン類、ブロモ‐フルオロアルキルアミン類およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
冷媒組成物である、請求項1〜25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
請求項1〜26のいずれか一項に記載の組成物を含有している、熱伝達装置。
【請求項28】
熱伝達装置における、請求項1〜26いずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項29】
冷却装置である、請求項27または28に記載の熱伝達装置。
【請求項30】
自動車空調システム、住宅空調システム、業務用空調システム、住宅用冷蔵庫システム、住宅用冷凍庫システム、業務用冷蔵庫システム、業務用冷凍庫システム、冷却機空調システム、冷却機冷却システムと、業務用または住宅用ヒートポンプシステムからなる群より選択される、請求項29に記載の熱伝達装置。
【請求項31】
圧縮器を内蔵している、請求項29または30に記載の熱伝達装置。
【請求項32】
請求項1〜26のいずれか一項に記載の組成物を含んでなる、発泡剤。
【請求項33】
発泡体を形成可能な1種以上の成分と請求項1〜26のいずれか一項に記載の組成物とを含んでなる発泡性組成物であって、発泡体を形成可能な1種以上の成分が、ポリウレタン類、熱可塑性ポリマーおよび樹脂、例えばポリスチレン、およびエポキシ樹脂、ならびにそれらの混合物から選択される、発泡性組成物。
【請求項34】
請求項33に記載の発泡性組成物から得られる、発泡体。
【請求項35】
請求項1〜26のいずれか一項に記載の組成物を含んでなる、請求項34に記載の発泡体。
【請求項36】
スプレーされるべき物質と、請求項1〜26のいずれか一項に記載の組成物を含んでなる噴射剤とを含んでなる、スプレー用組成物。
【請求項37】
請求項1〜26のいずれか一項に記載の組成物を凝縮させ、その後、冷却されるべき物品の近くで該組成物を蒸発させることを含んでなる、物品を冷却するための方法。
【請求項38】
加熱されるべき物品の近くで請求項1〜26のいずれか一項に記載の組成物を凝縮させ、その後、該組成物を蒸発させることを含んでなる、物品を加熱するための方法。
【請求項39】
バイオマスを請求項1〜26のいずれか一項に記載の組成物を含んでなる溶媒と接触させ、該溶媒から物質を分離することを含んでなる、バイオマスから物質を抽出するための方法。
【請求項40】
物品を請求項1〜26のいずれか一項に記載の組成物を含んでなる溶媒と接触させることを含んでなる、物品を清浄化するための方法。
【請求項41】
水溶液を請求項1〜26のいずれか一項に記載の組成物を含んでなる溶媒と接触させ、該溶媒から物質を分離することを含んでなる、水溶液から物質を抽出するための方法。
【請求項42】
粒状固体マトリックスを請求項1〜26のいずれか一項に記載の組成物を含んでなる溶媒と接触させ、該溶媒から物質を分離することを含んでなる、粒状固体マトリックスから物質を抽出するための方法。
【請求項43】
請求項1〜26のいずれか一項に記載の組成物を含有している、機械的動力発生装置。
【請求項44】
ランキンサイクルまたはその変法を用いて熱から動力を発生するように構成されてなる、請求項43に記載の機械的動力発生装置。
【請求項45】
既存の熱伝達流体を除去して、請求項1〜26のいずれか一項に記載の組成物を導入する工程を含んでなる、熱伝達装置を改修するための方法。
【請求項46】
熱伝達装置が冷却装置である、請求項45の方法。
【請求項47】
熱伝達装置が空調システムである、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
既存の化合物または組成物を含んでなる製品の作動から生じる環境影響を減らすための方法であって、少なくとも部分的に既存の化合物または組成物を請求項1〜26のいずれか一項に記載の組成物で置き換えることを含んでなる、方法。
【請求項49】
R‐134aを含有する、請求項1〜26のいずれか一項に記載の組成物、および/または請求項27および29〜31のいずれか一項に記載の熱伝達装置を製造するための方法であって、R‐1243ze(E)、R‐32およびR‐152aと、所望により潤滑剤、安定剤および/または難燃剤を、R‐134aである既存の熱伝達流体を含有する熱伝達装置へ導入することを含んでなる、方法。
【請求項50】
R‐1243ze(E)、R‐32およびR‐152a、ならびに所望により潤滑剤、安定剤および/または難燃剤を導入する前に、既存のR‐134aの少なくとも一部を熱伝達装置から除去する工程を含んでなる、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
(i)既存の化合物または組成物を請求項1〜26のいずれか一項に記載の組成物で置き換え、このとき請求項1〜26のいずれか一項に記載の組成物は既存の化合物または組成物より低いGWPを有するものとし、(ii)該置換え工程で温室効果ガス排出権を得ることを含んでなる、温室効果ガス排出権を生み出すための方法。
【請求項52】
本発明の組成物の使用が、既存の化合物または組成物の使用により達成される場合よりも低い総等価温暖化影響および/または低いライフサイクル炭素排出量をもたらす、請求項51の方法。
【請求項53】
空調、冷却、熱伝達、発泡剤、エアロゾルまたはスプレー用噴射剤、気体誘電体、凍結手術、獣医処置、歯科処置、消火、火炎抑制、溶媒、クリーナー、エアホーン、ペレットガン、局所麻酔剤および膨張用途の分野からの製品で行われる、請求項51または52の方法。
【請求項54】
製品が熱伝達装置、発泡剤、発泡性組成物、スプレー用組成物、溶媒または機械的動力発生装置から選択される、請求項48または53に記載の方法。
【請求項55】
製品が熱伝達装置である、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
既存の化合物または組成物が熱伝達組成物である、請求項48または51〜55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
熱伝達組成物が、R‐134a、R‐1234yfおよびR‐152aから選択される冷媒である、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
所望により実施例を参照しつつ、実質的にここまでに記載されているような、あらゆる新規の熱伝達組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−168771(P2011−168771A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−8478(P2011−8478)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(505353319)イネオス、フラウアー、ホールディングス、リミテッド (13)
【氏名又は名称原語表記】INEOS FLUOR HOLDINGS LIMITED
【Fターム(参考)】