説明

熱処理ローラ用温度検出装置

【課題】 熱処理ローラの表面温度の変動を±0.1℃以内とすることのできる温度検出装置を提供すること。
【解決手段】 ローラの回転側Aに、ローラの表面温度を検知する温度検知器1、温度検知器1の検知を増幅変換する信号変換回路2、信号変換回路2のアナログ出力信号をデジタル信号に変換するアナログ・デジタル変換器3、温度検知器1の検知特性の歪を修正し、変調するマイクロコンピュータ4、送信回路5および送信アンテナ6を配置し、固定側Bに、受信アンテナ7および受信回路8、送信されたデジタル信号を読み取るマイクロコンピュータ9、読み取ったデジタル信号をアナログ信号に変換し、温度制御装置へ送るデジタル・アナログ変換器10を配置して構成する。これにより、きわめて精度の高い温度検出信号を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローラの表面を所定の温度に維持するために用いる熱処理ローラの表面温度を検出するローラ用温度検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
誘導加熱コイルあるいは熱媒体の通流でローラを所定の温度に加熱または冷却し、ローラに当接して通過する処理物を熱処理するローラ装置は周知である。このようなローラ装置では、ローラに熱電対などの温度検知器を設け、その温度検知器の検知信号を回転変圧器で固定側に導出して温度制御装置に入力し、予め設定した所定の温度と比較し、その偏差で誘導コイルに流す電流または熱媒体の温度を制御し、この制御によりローラの表面温度を所定の温度に維持することが行われている。
【特許文献1】特開2003−178862号公報
【特許文献2】特開2004−195888号公報
【0003】
ところで、以上のようなローラ装置でローラの表面温度の変動を±0.1℃以内に収めたいとの要求がある。しかし、温度検知器の検知信号を、回転変圧器を介して固定側の温度制御装置へ伝達する温度検出装置では、検知精度の高い温度検知器を用いても、回転変圧器の伝達精度などに左右されローラの表面温度の変動を±0.1℃以内に収めることができないという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、ローラの表面温度の変動を±0.1℃以内とすることのできる温度検出装置を提供し、斯かる問題を解消する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、回転するローラの回転側に設置された温度検知器の検知信号を、前記ローラ外の固定側に設置された前記ローラの表面温度を制御する温度制御装置に伝送してなるローラ用温度検出装置において、前記ローラの回転側に前記温度検知器の温度検知信号を増幅変換する変換回路と変換されたアナログ信号をデジタル信号に変換するアナログ・デジタル変換器と、前記デジタル信号に変換後の信号を前記温度検知器の特性による誤差を修正して変調するマイクロコンピュータと、前記マイクロコンピュータによる変調後のデジタル信号を送信する無線送信器とを設け、固定側に前記送信器で送信されたデジタル信号を受信する受信手段と、受信したデジタル信号を復元するマイクロコンピュータと、復元したデジタル信号をアナログ信号に変換するデジタル・アナログ変換器とを設け、アナログ信号に変換した信号を前記温度検知器の温度検知信号として前記温度制御装置に入力してなることを主な特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明では、ローラの回転側で温度検知器の検知信号をデジタル信号に変換し、デジタル信号に変換後の信号を温度検知器の特性による誤差を修正して無線送信し、固定側で送信されたデジタル信号を受信しアナログ信号に変換し、そのアナログ信号を温度検知器の温度検出信号として温度制御装置に入力するので、回転側で温度検知器の検知信号を固定側に送るための回転変圧器を要さず、また、温度検知器の特性による誤差を修正した信号であることと相俟ってきわめて精度の高い温度検出信号を得ることができる。
【0007】
この場合、温度検知器の温度検知信号を増幅器で0〜2Vに変換し、変換した信号を16ビットのアナログ・デジタル変換器で変換すると最も精度の高い温度検出信号が得られ、また、回転側の増幅器、デジタル・アナログ変換器、マイクロコンピュータおよび無線送信手段に供給する電源用の電源コイルを+側と−側に分離すると、電源による検出信号のフラツキを防止し、温度検出の精度をより高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
ローラの表面温度の変動を±0.1℃以内とすることのできる温度検出装置を提供する目的を、ローラの回転側で温度検知器の検知信号をデジタル信号に変換し、デジタル信号に変換後の信号を温度検知器の特性による誤差を修正して無線送信し、固定側で送信されたデジタル信号を受信しアナログ信号に変換し、そのアナログ信号を温度検知器の温度検出信号として温度制御装置に入力することにより実現した。
【実施例1】
【0009】
図1は、本発明の実施例に係るローラ用温度検出装置の構成を示すブロック図で、図1において、Aはローラの回転側、Bはステータなどの固定側を示し、回転側Aには、ローラの表面温度を検知する白金(Pt)100Ωからなる温度検知器1、信号変換回路2、アナログ・デジタル変換器3、マイクロコンピュータ4、送信回路5および送信アンテナ6が配置され、固定側には受信アンテナ7および受信回路8、マイクロコンピュータ9、デジタル・アナログ変換器10が配置され、デジタル・アナログ変換器10のアナログ出力は温度検知器1の検出信号として図示しない温度制御装置へ送られる。
【0010】
本実施例では、信号変換回路2は、温度検知器1に一定電流(1mA)を流し、降下電圧を50倍増幅し、0〜2Vの変化を0〜100℃の変化に対応させて出力する。アナログ・デジタル変換器3は100mSごとに信号変換回路2の出力であるアナログ信号をサンプリングし、その出力を16ビットに換算してデジタル信号(数値信号)に変換してマイクロコンピュータ4に送る。マイクロコンピュータ4は、温度検知器1の特性がリニア(線形)でなく約0.3℃の誤差が発生するため、入力したデジタル信号をリニアライズ(線形化)して約0.019℃の誤差に修正し、修正した16ビットのデジタル信号を2.4GHz域の電流信号にデジタル変調して送信回路5に送り、送信回路5はデジタル変調した電流信号を、アンテナ6を介して、固定側に送信する。
【0011】
回転側のアンテナ6から送信された信号を固定側のアンテナ7を介して受信回路8で受信し、受信した信号をマイクロコンピュータ9に送る。マイクロコンピュータ9は16ビットのデジタル電流信号を読み取り、そのデジタル信号をデジタル・アナログ変換器10に送り、デジタル・アナログ変換器10で変換したアナログ信号を図示しない温度制御装置へ送る。
【0012】
ところで、回転側に信号変換回路2、アナログ・デジタル変換器3、マイクロコンピュータ4、送信回路5を配置するとこれらに電力を供給する通常+10V、0V、−10Vの直流電源が必要である。本実施例では、固定側に交流20Vの電圧を印加するコイル11を配置し、回転側にコイル11と電磁結合して交流14Vの電圧を誘起する二つの独立したコイル12−1、12−2を配置する。そして二つの独立したコイル12−1と12−2の誘起電圧を夫々に整流回路13−1、13−2を経て、+10Vと0V、0Vと−10Vの直流電源を作成し、この直流電源を適宜、回転側の信号変換回路2、アナログ・デジタル変換器3、マイクロコンピュータ4、送信回路5に供給する。このように電源コイルを分離すると、電源による検出信号のフラツキによる誤差の発生を防止することができる。
【0013】
以上のように構成したローラ用温度検出装置は、表1に示すように温度範囲0〜100℃で最大誤差0.019℃ときわめて高い精度となり、ローラの表面温度を±0.1℃以内の精度に保持することができる。
【0014】
【表1】

【0015】
なお、以上の説明は、ローラに一個の温度検知器を配置したものについて説明するものであるが、ローラに複数の温度検知器を設けた場合にも適用される。この場合、図2に示すように、温度検知器1aと信号変換回路2aを追加し、アナログ・デジタル変換器3以降の回路などは各温度検知器と対応させて時分割や変調周波数を変えるなどによって共通に使用すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例に係るローラ用温度検出装置の構成を示すブロック回路図である。
【図2】本発明の他の実施例に係るローラ用温度検出装置の構成を示すブロック回路図である。
【符号の説明】
【0017】
1、1a 温度検知器
2,2a 信号変換回路(増幅器)
3 アナログ・デジタル変換器
4 マイクロコンピュータ
5 送信回路5
8 受信回路
9 マイクロコンピュータ
10 デジタル・アナログ変換器
11 固定側電源コイル
12−1、12−2 回転側電源コイル
13−1、13−2 整流回路
A 回転側
B 固定側

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転するローラの回転側に設置された温度検知器の検知信号を、前記ローラ外の固定側に設置された前記ローラの表面温度を制御する温度制御装置に伝送してなるローラ用温度検出装置において、前記ローラの回転側に前記温度検知器の温度検知信号を増幅変換する変換回路と変換されたアナログ信号をデジタル信号に変換するアナログ・デジタル変換器と、前記デジタル信号に変換後の信号を前記温度検知器の特性による誤差を修正して変調するマイクロコンピュータと、前記マイクロコンピュータによる変調後のデジタル信号を送信する無線送信器とを設け、固定側に前記送信器で送信されたデジタル信号を受信する受信手段と、受信したデジタル信号を復元するマイクロコンピュータと、復元したデジタル信号をアナログ信号に変換するデジタル・アナログ変換器とを設け、アナログ信号に変換した信号を前記温度検知器の温度検知信号として前記温度制御装置に入力してなることを特徴とする熱処理ローラ用温度検出装置。
【請求項2】
固定側に一つの電源コイルを配置し、回転側に前記電源コイルと電磁結合する二つの独立した電源コイルを配置し、前記二つの独立した電源コイルの出力を回転側の変換回路、アナログ・デジタル変換器、マイクロコンピュータおよび無線送信器に印加してなることを特徴とする請求項1に記載の熱処理ローラ用温度検出装置。
【請求項3】
アナログ・デジタル変換器は、16ビット構成であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の熱処理ローラ用温度検出装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−218708(P2007−218708A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−38786(P2006−38786)
【出願日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(000110158)トクデン株式会社 (91)
【Fターム(参考)】