説明

熱処理設備のコンベヤ蛇行補正制御方法

【課題】炉内コンベヤの搬送帯の蛇行を適確に補正できるようにする。
【解決手段】支持ローラ10上に無端帯状の搬送帯6が支持された炉内コンベヤにおいて、該搬送帯の左右への片寄りを検出する検出装置11a,11bを設け、該支持ローラを進行方向に対して左右に傾斜させるアクチュエータ16,17を設け、前記検出装置により搬送帯6の片寄りが検知されたら該アクチュエータにより支持ローラ10をその片寄りと反対方向に向くように傾斜させると共に、その所定時間後に該支持ローラ10の傾斜角度を小さくするようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被熱物を支持し搬送するために炉内に設けられるコンベヤの搬送帯が運転中に蛇行しないようにする蛇行補正制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に示されたような熱処理設備において、炉内に設けられる耐熱性のキャストリンクコンベヤは、例えば、耐熱鋳鋼製のリンクを帯状に多数連鎖して無端帯状の搬送帯を形成し、ローラ上に該搬送帯を支持してなるものであるが、多数あるローラの芯があっていないことにより、該搬送帯が長時間かけて左右いずれかに次第に片寄ってゆきローラ取付部等を破損させるおそれがある。そのため、設備の据付完了後に、搬送帯が蛇行しなくなるまで、ローラの位置調整を行わなければならない。
下記特許文献2は、このようなコンベヤにおける搬送ベルトの蛇行を修正する従来の調整装置を開示したものである。
【特許文献1】特開昭49−16610号公報
【特許文献2】実開平6−39827号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし一般に炉内コンベヤでは搬送帯の移動速度はゆっくり設定されているので、蛇行修正操作がされても数十時間のタイムスパンがあってから該搬送帯の一方向への片寄りが修正され、またその修正が確認される頃にはすでに該搬送帯が反対側に片寄り始めているおそれがあることから、蛇行修正が従来のフィードバック制御方法のみによっては適確に行われないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に係る熱処理設備のコンベヤ蛇行補正制御方法は、上記のような技術的課題を解決しようとするもので、支持ローラ上に無端帯状の搬送帯が支持された炉内コンベヤにおいて、該搬送帯の左右への片寄りを検出する検出装置を設け、該支持ローラを進行方向に対して左右に傾斜させるアクチュエータを設け、前記検出装置により搬送帯の片寄りが検知されたら該アクチュエータにより支持ローラをその片寄りと反対方向に向くように傾斜させると共に、その所定時間後に該支持ローラの傾斜角度を小さくするようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明の制御方法によれば、炉内コンベヤの搬送帯の蛇行を適確に補正することにより、ローラ取付部の破損を防止できると共に、時間のかかっていたローラの位置調整を短時間で行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図1は本発明の実施形態を示す熱処理炉1の縦断面図、図2はその水平断面平面図である。1a、1bは該熱処理炉1の端部に設けられた装入口と抽出口、2は該熱処理炉1内に設けられた炉内コンベヤである。装入口1aから装入された被熱物3は該コンベヤ2に乗って矢印の方向に搬送され、その搬送中に該被熱物3が高温度に加熱されることにより、焼鈍,焼結等の熱処理がされて、抽出口1bより抽出される。該コンベヤ2は、図3、図4にその一部を示したように、耐熱鋳鋼製のリンク4に連結軸5を貫挿し、該リンク4を多数連鎖することにより無端帯状の搬送帯6を形成し、該搬送帯6を始端部ローラ7と終端部ローラ8との間に周回させてなる耐熱性のキャストリンクコンベヤである。また、9は該搬送帯6の往行側を支持するために適宜間隔で設けた複数本の支持ローラ、10は該搬送帯6の帰戻側を支持するために適宜間隔で設けた複数本の支持ローラである。
【0007】
また、11a,11bは抽出口1b寄りで搬送帯6を挟む左右両側に配置され、該搬送帯6の左右への片寄りを検出する検出装置で、該検出装置は、図5に示したように、軸状の検出ドグ12を炉側壁を貫通するように回転自在に設け、該検出ドグ12の内端部に前記搬送帯6の連結軸5の両端突出部に当接し得る当板13を形成すると共に、該検出ドグ12の外端部に折曲部14を形成し、該折曲部14を近接スイッチ15と対峙させてなる。このため、図6に示したように搬送帯6が片寄って来ると、該搬送帯6の連結軸5の両端突出部に当板13が当接し、検出ドグ12を間歇的に回転させることから折曲部14が近接スイッチ15から接離し、該近接スイッチ15がパルス信号を発信するようになる。また、図7に示したように搬送帯6がさらに片寄って来ると、当板13が該搬送帯6上に乗り上げ、折曲部14が近接スイッチ15から離れたままとなり、該近接スイッチ15をオフさせる。これによって搬送帯6の片寄り状態を段階的に検出することができる。
【0008】
16は装入口1a寄りにて搬送帯6の帰戻側を支持する3本の支持ローラ10の一端部に設けられ、該各支持ローラを一纏めとして該搬送帯6の進行方向に対して左右に傾動させるパワーシリンダからなるアクチュエータ、17は抽出口1b寄りにて搬送帯6の帰戻側を支持する3本の支持ローラ10の一端部に設けられ、該各支持ローラを一纏めとして該搬送帯6の進行方向に対して左右に傾動させるパワーシリンダからなるアクチュエータである。なお、18は上記検出装置11a,11bからの信号を受信するように配線された制御装置で、該制御装置18からの指令によりアクチュエータ16とアクチュエータ17とは同時に作動し、該各支持ローラ10を傾動させ得る。なお、アクチュエータ16とアクチュエータ17の移動量と移動時間とは個別に調整できる。
【0009】
図8は本発明に係る熱処理設備のコンベヤ蛇行補正制御方法を示すフローチャート、図9はその作動状態を示す概略図で、図8のステップ(1)にて上記検出装置11aにより図9(イ)に示したように搬送帯6が一方に片寄って来たことが検出されると、ステップ(2)にてアクチュエータ16,17を所定量伸張させる指令が出されて支持ローラ10を図9(ロ)に示したようにその片寄りと反対方向に向くように傾動させる。そして、ステップ(3)にて搬送帯6の片寄検出がOFFされるとステップ(4)にてタイマーがカウント開始され、ステップ(5)にてそのタイマーによる所定の数十時間が経過するのが計測された後、ステップ(6)により図9(ハ)に示したようにアクチュエータ16,17を収縮させ該支持ローラ10の傾斜角度を小さくする。
ここで、検出装置11aの検出後、搬送帯6が中央に戻る角度(比較的小さな角度)だけ支持ローラ10を傾斜させてもよいが、そうすると搬送帯6は直ぐには反対方向へ移動せず、そのままローラ取付部等を破壊してしまうおそれがある。よって、検出装置11aの検出後に支持ローラ10を比較的大きく傾斜させて、搬送帯6を反対方向へ移動させる。また、そのままの角度では、搬送帯6は逆側の検出装置11bへ蛇行してしまい、蛇行補正を頻繁に行わなければならなくなる。そのため、検出装置11aのOFFを検出後に支持ローラ10の傾斜角度を小さくして搬送帯6が直ぐに逆の方向(検出装置11bの方向)に蛇行しないようにしている。なお、上記タイマーは、搬送帯6の速度が遅いほど長時間となるように予め時間設定をする。
【0010】
一方、図10(イ)に示したように、検出装置11bにより搬送帯6が他方に片寄って来たことが検出されると、アクチュエータ16,17を所定量収縮させる指令が出され、支持ローラ10を図10(ロ)に示したようにその片寄りと反対方向に向くように傾動させる。そして、同様にタイマーにより所定時間後に図10(ハ)に示したようにアクチュエータ16,17を伸張させ該支持ローラ10の傾動を戻す。ここでも支持ローラ10を図10の(イ)に示した傾動角度から(ロ)に示した傾動角度に変化させた変動量と、支持ローラ10を(ロ)に示した傾動角度から(ハ)に示した傾動角度に戻す変動量との大小は問わない。
なおこの実施形態では、搬送帯6の帰戻側を支持する支持ローラ10を傾動させるようにしたが、搬送帯6の往行側を支持する支持ローラ9を傾動することで蛇行を防止するようにしてもよい。
【0011】
このように、検出装置11aまたは検出装置11bにより搬送帯6の片寄りが検出されると、その片寄りが解消されるように支持ローラ10を傾動させ所定時間後にその傾動を戻すことにより、搬送帯6は異常に片寄ることなく安定して運行させることができ、蛇行を適確に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態を示す熱処理炉の縦断面図。
【図2】図1の熱処理炉の水平断面平面図。
【図3】コンベヤの搬送帯の拡大図。
【図4】コンベヤの一部の拡大側面図。
【図5】図2のA−A線断面拡大図。
【図6】図5の検出装置の作動状態図。
【図7】図5の検出装置の作動状態図。
【図8】本発明に係るコンベヤ蛇行補正制御方法のフローチャート。
【図9】本発明に係る支持ローラの作動を示す概略図。
【図10】本発明に係る支持ローラの作動を示す概略図。
【符号の説明】
【0013】
1 熱処理炉
2 炉内コンベヤ
3 被熱物
6 搬送帯
9,10 支持ローラ
11a,11b 検出装置
16,17 アクチュエータ
18 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持ローラ上に無端帯状の搬送帯が支持された炉内コンベヤにおいて、該搬送帯の左右への片寄りを検出する検出装置を設け、該支持ローラを進行方向に対して左右に傾斜させるアクチュエータを設け、前記検出装置により搬送帯の片寄りが検知されたら該アクチュエータにより支持ローラをその片寄りと反対方向に向くように傾斜させると共に、その所定時間後に該支持ローラの傾斜角度を小さくするようにしたことを特徴とする熱処理設備のコンベヤ蛇行補正制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−290795(P2008−290795A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−135243(P2007−135243)
【出願日】平成19年5月22日(2007.5.22)
【出願人】(000003713)大同特殊鋼株式会社 (916)
【Fターム(参考)】