説明

熱分解温度向上剤並びに当該熱分解温度向上剤を含有する重合性組成物及び樹脂組成物

【課題】樹脂の使用時あるいは成型加工時における熱分解温度を高めることにより樹脂の耐熱性を向上させ、かつ、イオウのような臭気発生へテロ元素を有しない熱分解温度向上剤並びに当該熱分解向上剤を含有する重合性組成物及び樹脂組成物を提供する。
【解決手段】アントラセン誘導体を側鎖に保持する特定のジ(メタ)アクリレート単量体からなる熱分解温度向上剤であり、熱分解温度向上剤及び重合性化合物からなる重合性組成物をを熱又は活性エネルギー線により重合させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種樹脂組成物の使用時や成型加工時における樹脂の熱分解の防止に有効な熱分解温度向上剤並びに当該熱分解温度向上剤を含有する重合性組成物及び樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、樹脂の用途分野で各種樹脂組成物の使用時や成型加工時における耐熱性向上が求められている。使用時における耐熱性では、たとえば、集積回路、発光素子等発熱デバイスの高密度化、電子部品の車載化等、使用環境の広範化、過酷化により耐熱性が求められる。一方、成型加工時では高温粘度低減化による精密溶融成型が重要となってきている。また、プリント基板などの電子部品ではリフローはんだが用いられ、基板樹脂などの耐はんだリフロー性が求められている。また環境保護の観点から樹脂がリサイクルされているが、熱可塑性樹脂の溶融リサイクル性の向上という観点からも、樹脂の耐熱性向上が求められている。
【0003】
使用時、成型加工時いずれにおいても熱分解温度の向上、すなわち熱分解温度を高めることにより耐熱性を高めることができる。一般に、このような樹脂の熱分解温度の向上を達成するには、樹脂組成物に安定剤を添加する方法と樹脂自体を改良する方法が用いられる。
【0004】
安定剤を添加する方法のひとつとして従来、樹脂に混練り等で無機添加剤を加えることが行われてきた(特許文献1)。しかしこの手法では樹脂の透明性、成形性、軽量性、表面平滑性等の物性を損なう欠点がある。従って樹脂の物性を損なうことなく熱分解温度の向上できる手法が求められてきた。
【0005】
また、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤などの各種酸化防止剤を樹脂に添加することも試みられている。しかし、特に問題となる成型加工時の熱分解温度の向上には、このような酸化防止剤は効果が少ないといわれている。その原因は、このような酸化防止剤は、樹脂中に生成したパーオキシラジカルを捕捉し、安定化するものであるが、成型加工機内等では、酸素濃度は低いため、熱分解によって生成した炭素ラジカルは酸素と結合してパーオキシラジカルになることなく存在しているからである。よって、加工機内等における安定化を図るためには、炭素ラジカルの安定化を考える必要がある。このような炭素ラジカルにも効果のあるフェノール系酸化防止剤として、住友化学工業社製「スミライザーGM」および「スミライザーGS」が知られている(スミライザーは、住友化学工業社の登録商標)(特許文献2)。
【0006】
このものは、分子内にアクリル基とフェノール基を有し、アクリル基で捕捉された炭素ラジカルが活性なエノレートラジカルとなり、分子内水素結合を通して隣接するフェノール性OH基により安定化されるものである。しかし、この場合も、炭素ラジカルによるポリマーからの水素引き抜きなどの劣化反応が競争的に起こっているため、アクリル基の反応性、ポリマー中でのラジカル捕捉剤の分布状態などが熱分解温度に大きく影響することが知られている。
【0007】
一方、樹脂の熱分解機構についての研究も進められてきた。一般に、樹脂の熱分解は、ポリマー中の弱い結合部分から始まる。加熱に対して樹脂は、自ら分子運動により、外部エネルギーを吸収して緩和するが、この分子運動が最も激しいのは末端である。よって、末端の弱い結合部分から熱分解が起こることが多い。非特許文献1には、ラジカル重合により合成された樹脂の熱分解の引き金は重合停止反応の際の不均化に伴い生成する末端二重結合によることが示されている。すなわち、末端二重結合を有する樹脂はそこが分解開始点となり300℃以下で発熱を伴う分解反応を起こし、熱分解温度を低下させることが明らかにされた。一方、末端二重結合のない樹脂は300℃以下の分解開始点が存在しないため、熱分解温度の向上が見られることも確認された。末端二重結合の有無はDTA測定等による300℃以下の発熱ピークの有無に対応することも明らかになった。そして、通常のラジカル重合では重合停止反応の不均化に伴う末端二重結合が不可避であることも示されている。
【0008】
これらの研究を鑑み、末端基を安定な基に変える方法など樹脂自体を改良する種々の熱分解温度向上手法の検討もなされてきた。たとえば、非特許文献1は原理的に末端二重結合の残らないイオン重合を提案している。確かにこの手法により、熱分解温度を向上することができる。しかし、イオン重合はその重合条件管理の煩雑さ、適応できる重合性化合物が制限される、更に製造コストが高い等の欠点を有するため、イオン重合自体、スチレン系の一部を除いて工業化されていないのが実情である。
【0009】
特許文献3にはチオール添加系、また非特許文献2にはラクタム/チオール系で熱分解温度向上の提案がある。しかしながらこの手法は生成物にチオール由来の臭気、腐食性が避けられないという欠点を有する。
【0010】
また、活性水素を有するポリフェニレンエーテルやポリブタジエンがラジカル捕捉剤としてポリスチレンを熱安定化することが知られている (特許文献4)。
【0011】
ポリスチレンの熱分解によって生じた炭素ラジカルがポリフェニレンエーテルのベンジル水素、あるいはポリブタジエンのアリル位の水素を引き抜くことにより、ベンジルあるいはアリルラジカルとなり安定化するためと考えられる(非特許文献3)。しかし、これらの方法も熱安定化が十分ではなく、また汎用性のある方法ではない。
【0012】
一方、本発明者らは、本発明記載の化合物について、耐熱性ポリマー、高屈折率ポリマーの原料として、又光重合増感剤として有用であることを示している(特許文献5〜8)。今回、本発明者らは、当該化合物が、樹脂の熱分解温度向上剤としても有用であることを見出したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2007−39675号公報
【特許文献2】特開平6−172602号公報
【特許文献3】特開平9−165486号公報
【特許文献4】特開平6−345935号公報
【特許文献5】特開2007−99637号公報
【特許文献6】特開2008−1637号公報
【特許文献7】特開2008−169324号公報
【特許文献8】特開2010−18745号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】「マクロモレキュールズ (Macromolecules)」、1986年、第19巻、第2160頁〜2168頁
【非特許文献2】「ポリマー デグラディション アンド スタビリティ (Polymer Degradation and Stability)、2004年、第84巻、第505頁〜514頁
【非特許文献3】「ジャーナル オブ アプライド ポリマー サイエンス(J.Appl.Polm.Sci.)、1994年、第53巻、第121頁〜129頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従って本発明の目的は、樹脂の使用時あるいは成型加工時における熱分解温度を高めることにより樹脂の耐熱性を向上させ、かつ、イオウのような臭気発生へテロ元素を有しない熱分解温度向上剤並びに当該熱分解向上剤を含有する重合性組成物及び樹脂組成物の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは上記課題を鑑み、鋭意検討した結果、アントラセン骨格、ジヒドロアントラセン骨格又はテトラヒドロアントラセン骨格を有する(メタ)アクリレート化合物の存在下で重合させることにより製造された樹脂の熱分解温度が上昇することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
即ち、本発明の第1の要旨は、下記一般式(1)で示される熱分解温度向上剤に存する。
【0018】
【化1】


(一般式(1)中、R,Rは、各々、水素原子又はメチル基を示し、両者は同一であっても異なってもよい。A環は炭化水素によって構成された芳香族又は非芳香族の6員環を示す。X,Yは、各々、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、チオアルコキシ基、水酸基又はハロゲン原子を示し、両者は同一であっても異なってもよい。)
【0019】
本発明の第2の要旨は、一般式(1)が、下記一般式(2)で示される1 ,4−ジヒドロ−9 ,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン化合物である熱分解温度向上剤に存する。
【0020】
【化2】

【0021】
(一般式(2)中、R,Rは、各々、水素原子又はメチル基を示し、両者は同一であっても異なってもよい。X、Yは、各々、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、チオアルコキシ基、水酸基又はハロゲン原子を示し、両者は同一であっても異なってもよい。)
【0022】
本発明の第3の要旨は、一般式(1)が下記一般式(3)で示される1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン化合物である熱分解温度向上剤に存する。
【0023】
【化3】



【0024】
(一般式(3)中、R,Rは、各々、水素原子又はメチル基を示し、両者は同一であっても異なってもよい。X、Yは、各々、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、チオアルコキシ基、水酸基又はハロゲン原子を示し、両者は同一であっても異なってもよい。)
【0025】
本発明の第4の要旨は、一般式(1)が下記一般式(4)で示される9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン化合物である熱分解温度向上剤に存する。
【0026】
【化4】

【0027】
(一般式(4)中、R,Rは、各々、水素原子又はメチル基を示し、両者は同一であっても異なってもよい。X、Yは、各々、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、チオアルコキシ基、水酸基又はハロゲン原子を示し、両者は同一であっても異なってもよい。)
【0028】
本発明の第5の要旨は、少なくとも上記一般式(1)乃至(4)のいずれかで示される熱分解温度向上剤及び重合性化合物からなる重合性組成物に存する。
【0029】
さらに本発明の第6の要旨は、重合性化合物がラジカル重合性化合物である上記第5の要旨に記載の重合性組成物に存する。
【0030】
さらに本発明の第7の要旨は、上記第5の要旨又は第6の要旨に記載の重合性組成物を重合してなる樹脂組成物に存する。
【0031】
また、さらに本発明の第8の要旨は、第5の要旨又は第6の要旨に記載の重合性組成物を熱又は活性エネルギー線により重合させることを特徴とする樹脂組成物の製造方法に存する。
【0032】
なお、本発明において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートを総称し、(メタ)アクリロイルとは、アクリロイル及びメタクリロイルを総称し、(メタ)アクリロイルオキシとは、アクリロイルオキシ及びメタクリロイルオキシを総称したものである。
【発明の効果】
【0033】
本発明の効果は重合、特にラジカル重合によって得られる樹脂に関してその存在下で重合することにより製造された樹脂の熱分解温度を向上させることのできる樹脂添加剤を提供したことにある。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の熱分解温度向上剤は、下記一般式(1)で表されるアントラセン骨格を有する(メタ)アクリレート化合物である。R,Rは、各々、水素原子又はメチル基を示し、両者は同一であっても異なってもよく、A環は炭化水素によって構成された芳香族又は非芳香族の6員環を示す。X,Yは、各々、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、チオアルコキシ基、水酸基又はハロゲン原子を示し、両者は同一であっても異なってもよい。
【0035】
【化5】

【0036】
詳しくは、一般式(1)が、下記一般式(2)で示される1 ,4−ジヒドロ−9 ,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン化合物であり、R,Rは、各々、水素原子又はメチル基を示し、両者は同一であっても異なってもよい。X、Yは、各々、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、チオアルコキシ基、水酸基又はハロゲン原子を示し、両者は同一であっても異なってもよい。
【0037】
【化6】

【0038】
詳しくは、一般式(1)が下記一般式(3)で示される1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン化合物であり、R,Rは、各々、水素原子又はメチル基を示し、両者は同一であっても異なってもよい。X、Yは、各々、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、チオアルコキシ基、水酸基又はハロゲン原子を示し、両者は同一であっても異なってもよい。
【0039】
【化6】

【0040】
詳しくは、一般式(1)が下記一般式(4)で示される9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン化合物であり、R,Rは、各々、水素原子又はメチル基を示し、両者は同一であっても異なってもよい。X、Yは、各々、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、チオアルコキシ基、水酸基又はハロゲン原子を示し、両者は同一であっても異なってもよい。
【0041】
【化7】

【0042】
一般式(1)、(2)、(3)及び(4)中の、X、X、X、X及びY、Y、Y、Yで表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、4−メチルペンチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、4−メチル−3−ペンテニル基等が挙げられる。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、t−ブトキシ基等が挙げられる。アリールオキシ基としては、フェノキシ基、ナフトキシ基、4−メチルフェノキシ基、2−エチルフェノキシ基、2−エチルナフチルオキシ基、4−クロロフェノキシ基等が挙げられる。アルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、ヘキシルチオ基等が挙げられる。アリールチオ基としては、フェニルチオ基、4−メチルフェニルチオ基、4−クロロフェニルチオ基等が挙げられる。ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等が挙げられる。
【0043】
一般式(1)又は(2)で表される代表的な1 ,4−ジヒドロ−9
,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン化合物としては、1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−メチル−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−エチル−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−(n−プロピル)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−(i−プロピル)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−(n−ブチル)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−(i−ブチル)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−(t−ブチル)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−ヘキシル−1,4−ジヒドローテトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−(n−ペンチル)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−(i−ペンチル)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−(4−メチルペンチル)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−(n−オクチル)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−(2−エチルヘキシル)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−(4−メチル−3−ペンテニル)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−メトキシ−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−エトキシ−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−(n−プロポキシ)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−(i−プロポキシ)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−(n−ブトキシ)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−(i−ブトキシ)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−(t−ブトキシ)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−フェノキシ−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−ナフトキシ−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−(4−メチルフェノキシ)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−(2−エチルフェノキシ)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−(2−エチルナフチルオキシ)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−(4−クロロフェノキシ)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−メチルチオ−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−エチルチオ−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−プロピルチオ−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−ブチルチオ−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−ヘキシルチオ−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−フェニルチオ−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−(4−メチルフェニルチオ)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−(4−クロロフェニルチオ)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−クロロ−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−ブロモ−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−フルオロ−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2,6−ジメチル−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2,7−ジメチル−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン等が挙げられる。
【0044】
一般式(1)又は(3)で表される代表的な1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン化合物としては、1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−エチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−(n−プロピル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−(i−プロピル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−(n−ブチル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−(i−ブチル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−(t−ブチル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−ヘキシル−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−(n−ペンチル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−(i−ペンチル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−(4−メチルペンチル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−(n−オクチル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−(2−エチルヘキシル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−(4−メチル−3−ペンテニル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−メトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−エトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−(n−プロポキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−(i−プロポキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−(n−ブトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−(i−ブトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−(t−ブトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−フェノキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−ナフトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−(4−メチルフェノキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−(2−エチルフェノキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−(2−エチルナフチルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−(4−クロロフェノキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−メチルチオ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−エチルチオ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−プロピルチオ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−ブチルチオ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−ヘキシルチオ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−フェニルチオ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−(4−メチルフェニルチオ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−(4−クロロフェニルチオ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−ヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−クロロ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−ブロモ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−フルオロ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2,6−ジメチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2,7−ジメチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン等が挙げられる。
【0045】
一般式(1)又は(4)で表される代表的な9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン化合物としては、9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−メチル−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−メチル−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−エチル−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−(n−プロピル)−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−(n−プロピル)−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−(i−プロピル)−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−(i−プロピル)−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−(n−ブチル)−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−(n−ブチル)−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−(i−ブチル)−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−(i−ブチル)−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−(t−ブチル)−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−ヘキシル−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−ヘキシル−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−(n−ペンチル)−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−(n−ペンチル)−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−(i−ペンチル)−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−(i−ペンチル)−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−(4−メチルペンチル)−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−(4−メチルペンチル)−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−(n−オクチル)−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−(n−オクチル)−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−(2−エチルヘキシル)−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−(2−エチルヘキシル)−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−(4−メチル−3−ペンテニル)−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−(4−メチル−3−ペンテニル)−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−メトキシ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−メトキシ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−エトキシ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−エトキシ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−(n−プロポキシ)−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−(n−プロポキシ)−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−(i−プロポキシ)−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−(i−プロポキシ)−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−(n−ブトキシ)−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−(n−ブトキシ)−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−(t−ブトキシ)−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−(t−ブトキシ)−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−フェノキシ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−フェノキシ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−ナフトキシ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−(4−メチルフェノキシ)−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−(2−エチルフェノキシ)−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−(2−エチルナフチルオキシ)−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−(4−クロロフェノキシ)−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−メチルチオ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−メチルチオ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−エチルチオ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−エチルチオ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−プロピルチオ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−プロピルチオ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−ブチルチオ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−ブチルチオ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−ヘキシルチオ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−フェニルチオ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−フェニルチオ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−(4−メチルフェニルチオ)−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−(4−メチルフェニルチオ)−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−(4−クロロフェニルチオ)−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−(4−クロロフェニルチオ)−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−ヒドロキシ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−ヒドロキシ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−クロロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−クロロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−ブロモ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−フルオロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2,6−ジメチル−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2,7−ジメチル−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1,5−ジメチル−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン等が挙げられる。
【0046】
上記の他、一般式(1)で表される代表的なアントラセン骨格を有する(メタ)アクリレート化合物としては、1−メチル−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−エチル−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−(n−プロピル)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−(i−プロピル)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−(n−ブチル)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−(i−ブチル)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−(t−ブチル)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−ヘキシル−1,4−ジヒドローテトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−(n−ペンチル)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−(i−ペンチル)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−(4−メチルペンチル)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−(n−オクチル)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−(2−エチルヘキシル)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−(4−メチル−3−ペンテニル)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−メトキシ−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−エトキシ−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−(n−プロポキシ)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−(i−プロポキシ)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−(n−ブトキシ)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−(i−ブトキシ)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−(t−ブトキシ)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−フェノキシ−1,4−ジヒドロー9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−ナフトキシ−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−(4−メチルフェノキシ)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−(2−エチルフェノキシ)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−(2−エチルナフチルオキシ)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−(4−クロロフェノキシ)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−メチルチオ−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−エチルチオ−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−プロピルチオ−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−ブチルチオ−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−ヘキシルチオ−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−フェニルチオ−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−(4−メチルフェニルチオ)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−(4−クロロフェニルチオ)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−クロロ−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−ブロモ−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−フルオロ−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1,6−ジメチル−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1,7−ジメチル−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1,5−ジメチル−1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン等が挙げられる。
【0047】
更に、1−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−エチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−(n−プロピル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−(i−プロピル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−(n−ブチル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−(i−ブチル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−(t−ブチル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−ヘキシル−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−(n−ペンチル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−(i−ペンチル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、2−(4−メチルペンチル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−(n−オクチル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−(2−エチルヘキシル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−(4−メチル−3−ペンテニル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−メトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−エトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−(n−プロポキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−(i−プロポキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−(n−ブトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−(i−ブトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−(t−ブトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−フェノキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−ナフトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−(4−メチルフェノキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−(2−エチルフェノキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−(2−エチルナフチルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−(4−クロロフェノキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−メチルチオ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−エチルチオ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−プロピルチオ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−ブチルチオ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−ヘキシルチオ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−フェニルチオ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−(4−メチルフェニルチオ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−(4−クロロフェニルチオ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−ヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−クロロ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−ブロモ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1−フルオロ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1,6−ジメチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1,7−ジメチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1,5−ジメチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン等が挙げられる。
【0048】
これらの化合物のうち、1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン、9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセンが特に好ましい。
【0049】
(製造方法)
本発明の1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセンは、塩基性化合物の存在下また又は非存在下、対応する1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物と塩化アクリロイル又は塩化メタクリロイルを反応させることによって得ることが出来る。
【0050】
1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物は、1,4−ナフトキノンと置換ブタジエンのディールス・アルダー反応により得られる1,4,4a,9a−テトラヒドロ−9,10−アントラキノン化合物を原料とし、酸触媒または塩基性触媒存在下に異性化することにより得ることができる。
【0051】
酸触媒としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸のような液状の酸性化合物の他、固体酸であるイオン交換性樹脂、酸化アルミ、酸化マグネシウム等が挙げられる。また、塩基性触媒としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、α−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリン、ピペリジン等が挙げられる。アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩も塩基性異性化触媒として使用可能である。
【0052】
異性化触媒の使用量は、1,4,4a,9a−テトラヒドロ−9,10−アントラキノン化合物に対し、通常0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%である。異性化触媒の使用量が0.1重量%未満の条件では反応速度が遅くなり、10重量%を超える条件では副反応が起きて生成物の純度が低下する。
【0053】
通常、異性化は溶媒の存在下に行われ、溶媒としては、酸触媒や塩基性触媒と反応する官能基を持たなければ特に種類を選ばない。酸触媒を使用する場合は、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、クロルベンゼン、t−ブチルベンゼン等の芳香族系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、ジクロロエタン、ジクロロエチレン等のハロゲン系溶媒が好適に使用される。また、塩基性触媒を使用する場合は、上記溶媒以外に、メタノール、エタノール,2−プロパノール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒、更には、水も使用可能である。特に異性化触媒として、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ金属塩を用いる場合は、溶媒として水が好適に使用される。
【0054】
溶媒の使用量は、溶媒の種類にもよるが、1,4,4a,9a−テトラヒドロ−9,10−アントラキノン化合物の濃度が5〜25重量%程度になるように調節する。1,4,4a,9a−テトラヒドロ−9,10−アントラキノン化合物が溶媒に完全に溶解せずにスラリー状となる場合でも反応は問題なく進行する。
【0055】
異性化の反応温度は、通常80〜150℃、好ましくは90〜120℃である。反応温度が80℃未満の条件では、反応の進行が遅くなり、150℃を超える条件では生成物の純度が低下する。
【0056】
1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物としては、例えば、1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−メチル−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−エチル−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−(n−プロピル)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−(i−プロピル)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−(n−ブチル)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−(i−ブチル)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−(t−ブチル)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−ヘキシル−1,4−ジヒドローテトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−(n−ペンチル)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−(i−ペンチル)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−(4−メチルペンチル)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−(n−オクチル)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−(2−エチルヘキシル)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−(4−メチル−3−ペンテニル)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−メトキシ−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−エトキシ−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−(n−プロポキシ)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−(i−プロポキシ)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−(n−ブトキシ)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−(i−ブトキシ)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−(t−ブトキシ)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−フェノキシ−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−ナフトキシ−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−(4−メチルフェノキシ)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−(2−エチルフェノキシ)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−(2−エチルナフチルオキシ)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−(4−クロロフェノキシ)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−メチルチオ−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−エチルチオ−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−プロピルチオ−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−ブチルチオ−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−ヘキシルチオ−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−フェニルチオ−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−(4−メチルフェニルチオ)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−(4−クロロフェニルチオ)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−クロロ−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−ブロモ−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−フルオロ−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2,6−ジメチル−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2,7−ジメチル−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン等が挙げられる。
【0057】
更に、1−メチル−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−エチル−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−(n−プロピル)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−(i−プロピル)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−(n−ブチル)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−(i−ブチル)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−(t−ブチル)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−ヘキシル−1,4−ジヒドローテトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−(n−ペンチル)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−(i−ペンチル)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−(4−メチルペンチル)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−(n−オクチル)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−(2−エチルヘキシル)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−(4−メチル−3−ペンテニル)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−メトキシ−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−エトキシ−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−(n−プロポキシ)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−(i−プロポキシ)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−(n−ブトキシ)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−(i−ブトキシ)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−(t−ブトキシ)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−フェノキシ−1,4−ジヒドロー9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−ナフトキシ−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−(4−メチルフェノキシ)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−(2−エチルフェノキシ)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−(2−エチルナフチルオキシ)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−(4−クロロフェノキシ)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−メチルチオ−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−エチルチオ−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−プロピルチオ−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−ブチルチオ−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−ヘキシルチオ−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−フェニルチオ−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−(4−メチルフェニルチオ)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−(4−クロロフェニルチオ)−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−クロロ−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−ブロモ−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−フルオロ−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1,6−ジメチル−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1,7−ジメチル−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1,5−ジメチル−1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン等が挙げられる。
【0058】
1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物と塩化アクリロイル又は塩化メタクリロイルを反応させて(メタ)アクリル化する際に任意に使用される塩基性化合物としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、α−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリン、ピペリジン等が挙げられる。塩基性化合物の使用量は、1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物に対する割合として、通常0.2〜3倍モル、好ましくは0.5〜1倍モルである。アルカリ性化合物の使用量が0.2倍モル未満の場合は反応速度が遅く、3倍モルを超える場合は副反応が起きて目的物の純度が低下する。
【0059】
上記の(メタ)アクリル化の際に使用される反応溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族系溶媒、塩化メチレン、ジクロロエタン、ジクロロエチレン等のハロゲン化炭素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒が挙げられる。反応溶媒の使用量は、1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物の濃度が通常5〜20重量%になる量である。
【0060】
上記の(メタ)アクリル化においては、1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物に対する塩化アクリロイル又は塩化メタクリロイルの使用量は、通常2〜3倍モル倍、好ましくは2.2〜2.4倍モルである。反応温度は、通常0〜80℃、好ましくは10〜20℃である。本反応は、発熱反応であり、冷却が必要である。反応時間は通常15〜60分である。反応終了後、析出した塩酸塩を濾過して除去し、次いで、濾液に水を添加するか又は濃縮して晶析させ、析出した結晶を濾過して黄白色粉末を得る。反応終了後、水またはメタノールを加えて未反応の塩化アクリロイル又は塩化メタクリロイルを水和してもよい。次いで、例えば、塩化メチレン/メタノールから再結晶し、白黄色の結晶を得ることが出来る。
【0061】
次に、本発明の1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン化合物は、1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン化合物と同様に、1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物を塩化アクリロイル又は塩化メタアクリロイルと反応させることによって工業的に容易に得ることが出来る。
【0062】
1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物は、上記反応で得られた1,4−ジヒド−9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物を水素化することにより得ることができる。
【0063】
水素化反応は、溶媒中、貴金属触媒存在下に1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物を水素ガスにより水素化することにより得ることができる。
【0064】
原料の1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物としては、上記記載の1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物と同様のものが挙げられる。
【0065】
水素化反応に用いられる溶媒としては、水素化される官能基を持たなければ特に種類を選ばない。特に、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、クロルベンゼン、t−ブチルベンゼン等の芳香族系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、ジクロロエタン、ジクロロエチレン等のハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、2−プロパノール等のアルコール系溶媒、メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒が挙げられる。また、反応原料が1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物のナトリウム塩などのアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩である場合は、これらが水に可溶であるので水または水と水可溶性溶媒の混合溶媒も反応溶媒として好適に使用される。
【0066】
水素化触媒としては、例えば、パラジウム担持活性炭、パラジウム担持アルミナ、白金担持活性炭、白金担持アルミナ等の白金属(遷移金属)触媒が挙げられる。通常、5%パラジウム担持活性炭が好適に使用される。
【0067】
水素化触媒の使用量は、1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物に対し、通常0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜1重量%である。水素化触媒の使用量が0.01重量%未満の条件では反応速度が遅くなり、10重量%を超える条件では副反応が起きて生成物の純度が低下する。
【0068】
水素化反応の反応温度は、通常0〜100℃、好ましくは20〜50℃である。反応温度が0℃よりも低い条件では反応の進行が遅くなり、100℃を越える条件では生成物の純度が低下する。
【0069】
水素化反応終了後、窒素雰囲気下に水素化触媒を濾別して除き、濾液を濃縮して、1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物を得ることが出来る。
【0070】
1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン化合物は、塩基性化合物の存在下又は非存在下、1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物を塩化アクリロイルもしくは塩化メタアクリロイルと反応させることにより得ることができる。
【0071】
1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物としては、例えば、1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−エチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−(n−プロピル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−(i−プロピル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−(n−ブチル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−(i−ブチル)−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−(t−ブチル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−ヘキシル−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−(n−ペンチル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−(i−ペンチル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−(4−メチルペンチル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−(n−オクチル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−(2−エチルヘキシル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−(4−メチル−3−ペンテニル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−メトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−エトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−(n−プロポキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−(i−プロポキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−(n−ブトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−(i−ブトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−(t−ブトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−フェノキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−ナフトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−(4−メチルフェノキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−(2−エチルフェノキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−(2−エチルナフチルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−(4−クロロフェノキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−メチルチオ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−エチルチオ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−プロピルチオ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−ブチルチオ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−ヘキシルチオ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−フェニルチオ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−(4−メチルフェニルチオ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−(4−クロロフェニルチオ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−ヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−クロロ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−ブロモ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−フルオロ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2,6−ジメチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2,7−ジメチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン等が挙げられる。
【0072】
また、更に、1−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−エチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−(n−プロピル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−(i−プロピル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−(n−ブチル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−(i−ブチル)−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−(t−ブチル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−ヘキシル−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−(n−ペンチル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−(i−ペンチル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−(4−メチルペンチル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−(n−オクチル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−(2−エチルヘキシル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−(4−メチル−3−ペンテニル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−メトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−エトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−(n−プロポキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−(i−プロポキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−(n−ブトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−(i−ブトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−(t−ブトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−フェノキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−ナフトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−(4−メチルフェノキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−(2−エチルフェノキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−(2−エチルナフチルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−(4−クロロフェノキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−メチルチオ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−エチルチオ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−プロピルチオ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−ブチルチオ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−ヘキシルチオ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−フェニルチオ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−(4−メチルフェニルチオ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−(4−クロロフェニルチオ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−ヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−クロロ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−ブロモ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−フルオロ−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1,6−ジメチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1,7−ジメチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1,5−ジメチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン等が挙げられる。
【0073】
塩基性化合物としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、α−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリン、ピペリジン等が挙げられる。塩基性化合物の使用量は、1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセンに対し、通常2.0〜4.5モル倍、好ましくは2.2〜3.6モル倍である。塩基性化合物の使用量が2.0モル倍未満の場合は反応が遅く、また、4.5モル倍を超える場合は副反応が起きて生成物の純度が低下する。
【0074】
(メタ)アクリル化反応は、通常は溶媒の存在下に行われ、溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族系溶媒、塩化メチレン、ジクロロエタン、ジクロロエチレン等のハロゲン化炭素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒が挙げられる。
【0075】
1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物に対する塩化アクリロイル又は塩化メタクリロイルの使用量は、通常2〜3モル倍、好ましくは2.2〜2.4モル倍である。反応温度は、通常0〜80℃、好ましくは10〜20℃である。本反応は発熱反応であり、冷却が必要である。反応時間は15〜60分程度である。
【0076】
有機溶媒中で反応を行った場合は、反応終了後、反応液に水を加えて析出した塩酸塩を溶解し、有機分を酢酸エチルで抽出後、有機層を純水で洗浄する。洗浄後の有機層を濃縮して得られるオイル状物質をシリカゲルカラムクロマトグラフィー法によって精製して目的物を得ることが出来る。一方、水中で反応を行った場合は、反応終了後、析出した結晶を濾過し、水やメタノールで洗浄することにより目的物を得ることが出来る。
【0077】
次に、本発明の9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン化合物は、相当する9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物に塩基存在下又は塩基非存在下、塩化アクリロイル又は塩化メタアクリロイルを作用させることにより得られる。
【0078】
9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物としては、例えば、9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−メチル−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−メチル−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−エチル−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−(n−プロピル)−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−(n−プロピル)−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−(i−プロピル)−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−(i−プロピル)−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−(n−ブチル)−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−(n−ブチル)−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−(i−ブチル)−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−(i−ブチル)−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−(t−ブチル)−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−ヘキシル−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−ヘキシル−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−(n−ペンチル)−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−(n−ペンチル)−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−(i−ペンチル)−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−(i−ペンチル)−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−(4−メチルペンチル)−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−(4−メチルペンチル)−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−(n−オクチル)−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−(n−オクチル)−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−(2−エチルヘキシル)−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−(2−エチルヘキシル)−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−(4−メチル−3−ペンテニル)−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−(4−メチル−3−ペンテニル)−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−メトキシ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−メトキシ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−エトキシ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−エトキシ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−(n−プロポキシ)−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−(n−プロポキシ)−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−(i−プロポキシ)−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−(i−プロポキシ)−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−(n−ブトキシ)−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−(n−ブトキシ)−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−(t−ブトキシ)−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−(t−ブトキシ)−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−フェノキシ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−フェノキシ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−ナフトキシ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−(4−メチルフェノキシ)−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−(2−エチルフェノキシ)−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−(2−エチルナフチルオキシ)−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−(4−クロロフェノキシ)−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−メチルチオ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−メチルチオ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−エチルチオ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−エチルチオ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−プロピルチオ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−プロピルチオ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−ブチルチオ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−ブチルチオ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−ヘキシルチオ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−フェニルチオ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−フェニルチオ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−(4−メチルフェニルチオ)−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−(4−メチルフェニルチオ)−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−(4−クロロフェニルチオ)−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−(4−クロロフェニルチオ)−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−クロロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−クロロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−ブロモ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−フルオロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2,6−ジメチル−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2,7−ジメチル−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1,5−ジメチル−9,10−ジヒドロキシアントラセン等が挙げられる。
【0079】
塩基としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、α−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリン、ピペリジン等が挙げられる。
【0080】
反応に用いる溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼンのような芳香族系溶媒、塩化メチレン、ジクロロエタン、ジクロロエチレンのようなハロゲン化炭素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン系溶媒、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミドのようなアミド系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンのようなエーテル系溶媒が好適に用いられる。
【0081】
9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物に対する塩化アクリロイル又は塩化メタクリロイルの添加量は、2モル倍から3モル倍、好ましくは2.2モル倍から2.4モル倍である。反応温度は0℃から80℃、好ましくは0℃から20℃である。本反応は発熱反応であり、冷却が必要である。反応時間は15分から60分程度である。反応終了後、水又はメタノールを加えて未反応の塩化アクリロイル又は塩化メタクリロイルを水和した後、塩酸塩を濾過して除去し、次いで濾液に水を添加して晶析し、析出した結晶を濾過して黄白色粉末を得る。さらに、例えば、塩化メチレン/メタノールから再結晶し、白黄色の結晶を得ることが出来る。
【0082】
(熱分解温度向上剤)
本発明の熱分解温度向上剤は他の化合物、組成物、資材に配合したり、施すことによって被配合物の熱分解温度を向上させることができる。特に、樹脂を調製する際に、重合性組成物中に本発明の熱分解温度向上剤をあらかじめ配合しておくことが望ましい。本発明のアントラセン骨格、ジヒドロアントラセン骨格又はテトラヒドロアントラセン骨格を有する(メタ)アクリレート化合物は、分子内に(メタ)アクリロイルオキシ基を持ち、その基の反応性、あるいは他化合物、他資材と親和性等の化学特性を活用することにより、樹脂組成物中での固定化が可能であり、単に添加した場合と異なりブリードアウト防止も期待できる。同様に、クリーンルーム等で問題となる樹脂組成物から発生する揮発成分(アウトガス)発生防止も期待できる。反応性としては(メタ)アクリロイルオキシ基固有の反応を活用することができる。たとえば重合反応、マイケル付加反応、ディールス・アルダー反応等が挙げられる。化学特性の中でも、反応性、特に重合反応性を用いることが好ましい。用いる重合機構としては、ラジカル重合、イオン重合等の連鎖重合が好ましい。特にラジカル重合が好ましい。通常、以下で述べる重合性化合物と配合して重合性組成物として用いることができる。
【0083】
本発明の化合物が樹脂の熱分解温度を向上させる作用機構は明確ではないが、樹脂中の高分子鎖に取り込まれた本発明の化合物が、熱分解によって生じた炭素ラジカルをアントラセン骨格、ジヒドロアントラセン骨格又はテトラヒドロアントラセン骨格を有する(メタ)アクリレート化合物が、そのラジカルを安定化するためではないかと推測している。
【0084】
(重合性化合物)
本発明の熱分解温度向上剤は重合性の化合物に適用できる。重合性化合物とは、本発明の一般式(1)で表される熱分解温度向上剤以外の重合性化合物であり、少なくとも1つのエチレン不飽和基を有する化合物のことをいう。その中でも、ラジカル重合性化合物が好ましく、例えば、(メタ)アクリレート化合物、脂肪酸ビニル化合物、ビニル化合物、ビニリデン化合物、ビニレン化合物、環状オレフィン、ビニルエーテル化合物等が挙げられる。これらは単独で使用しても複数併用してもよい。
【0085】
重合性化合物中、(メタ)アクリレート化合物、ビニル化合物、脂肪酸ビニル化合物は共重合性が良好なので良く用いられる。中でも、(メタ)アクリレート化合物とスチレンが好ましい。
【0086】
さらに樹脂に耐熱性が求められ場合、熱分解温度が高いとともに、熱変形を開始する温度が高いことが要求される場合が多く、特に実用上は、温水や蒸気で変形しないことが求められる。一方、この樹脂の熱変形はガラス転移点(Tg)近傍で開始することも知られている。この観点から、温水に耐えうる樹脂のガラス転移点は70℃以上であることが好まく、90℃以上であることがより好ましい。工業的に生産されている、そのような重合性化合物はメチルメタクリレート(樹脂のガラス転移温度:105℃(プラスチック・機能性高分子材料辞典(プラスチック・機能性高分子材料辞典編集委員会、2005年)866ページ))とスチレン(樹脂のガラス転移温度:100℃(プラスチック・機能性高分子材料辞典(プラスチック・機能性高分子材料辞典編集委員会、2005年)866ページ))が挙げられ、好ましく用いられる。
【0087】
中でもスチレンは共重合性が良好でアクリルニトリル・スチレン樹脂(AS樹脂)、アクリルニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS樹脂)に用いられ特に好ましい。
【0088】
(メタ)アクリレート化合物としては、具体的に次の化合物が挙げられる。すなわち、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のモノ(メタ)アクリレート化合物、1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、トリシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。
【0089】
さらに、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートのトリ(メタ)アクリレート化合物、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、等が挙げられる。これら(メタ)アクリレート化合物の中でモノ(メタ)アクリレート化合物、ジ(メタ)アクリレート化合物が好ましく用いられる。特にメチルメタクリレートが好ましい。
【0090】
脂肪酸ビニル化合物としては、酢酸ビニル、酪酸ビニル、プロピオン酸ビニル、へキサン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリル酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等が挙げられる。
【0091】
ビニル化合物としては、塩化ビニル、酢酸アリル、アリルアルコール、アリルベンゼン、シアン化アリル等のアリル化合物、シアン化ビニル、ビニルシクロヘキサン、ビニルメチルケトン、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン等が挙げられる。ビニリデン化合物としては塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等が挙げられる。これらビニル化合物のなかでスチレンが好ましく用いられる。
【0092】
ビニルエーテル化合物としては、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、シクロヘキサンモノビニルエーテル、エチルシクロヘキサノールビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシプロピルビニルエーテル、ヒドロキシペンチルビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル等が挙げられる。
【0093】
また、上記重合性化合物に加えて、分子内に重合性不飽和二重結合を有する、比較的分子量の大きな化合物(オリゴマー、ポリマー)も本発明の重合性化合物として用いることができる。具体的にはマクロモノマー、不飽和ポリエステル、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリブテン等があげられる。
【0094】
(重合性組成物)
熱分解温度向上剤の重合性組成物中の含有量は下記数式(3)で表される。重合性組成物中熱分解温度向上剤含有量は重合性化合物の種類にもよるが、0.1〜50%が好ましく、0.2〜25%がより好ましく、0.3〜15%が最も好ましい。0.1%未満では、十分な効果が発揮できず、反対に50%を超過してもそれ以上の効果は発現しない。
【0095】
【数1】

【0096】
(添加剤)
本発明の重合性組成物は、さらに必要に応じて各種添加剤を含有してもよい。例えば、顔料、染料、タルク、石膏及びシリカ等の無機質充填剤;ヒンダードフェノール系や亜リン酸エステル系等の酸化防止剤;増感剤、難燃化剤、難燃化助剤、離型剤、帯電防止剤、重合禁止剤等が挙げられる。
【0097】
(樹脂組成物)
本発明の熱分解温度向上剤を含有する重合性組成物を重合させることによって樹脂組成物を得ることができる。
【0098】
また、本発明の熱分解温度向上剤を単独で重合させることもできる。当該熱分解温度向上剤の樹脂組成物を他の樹脂とブレンドしたり、アロイ化等することにより、熱分解温度向上剤を含有する樹脂組成物を調製することができる。
【0099】
熱分解温度向上剤の樹脂組成物中の含有量は下記数式(4)で表される。樹脂組成物中熱分解温度向上剤含有量は重合性化合物の種類にもよるが、0.1〜50%が好ましく、0.2〜25%がより好ましく、0.3〜15%が最も好ましい。0.1%未満では、十分な効果が発揮できず、反対に50%を超過してもそれ以上の効果は発現しない。
【0100】
【数2】

【0101】
(なお、数式(4)中での単位なる語句は、樹脂組成物中の熱分解温度向上剤や重合性化合物の重合後の対応する残基の単位を示す。)
【0102】
数式(4)式の樹脂組成物中の熱分解温度向上剤の含有量は、実施例の項で後述する「樹脂組成物中熱分解温度向上剤含有量測定法」により求めることができる。
【0103】
(熱分解温度)
本発明の樹脂組成物中の熱分解温度向上剤の含有量を好ましい範囲に制御することにより、無配合のものに対して樹脂組成物の熱分解温度を5℃以上、好ましくは、10℃以上、より好ましくは15℃以上向上できる。
【0104】
熱分解温度の数℃程度の向上でも樹脂を溶融再成型する際の焼け、フィッシュアイ、分子量変化等の樹脂の劣化を防止抑制することができ工業的に有用である。さらに熱分解温度の数℃程度の向上でも熱分解温度よりはるかに低い使用時温度下での耐久性が向上することも期待できる。
【0105】
なお、本発明での熱分解温度は実施例の項で後述する「熱分解温度測定法」で求めることができる。
【0106】
(重合開始エネルギー源)
重合開始のエネルギー源として、開始反応のエネルギーを与えるもの用いることができる。具体的なエネルギー源としては熱及び/又は光、電子線(EB)、マイクロ波、放射線等の活性エネルギー線が挙げられ、用いるエネルギー源に応じて、熱重合、活性エネルギー線重合(光重合、電子線重合、マイクロ波重合、放射線重合)等と呼ばれる。またそれぞれの重合に際して重合開始剤や増感剤を用いることができる。
【0107】
熱重合の場合、用いる重合性化合物、様態にもよるが、重合に用いる温度範囲は通常−20〜200℃で、好ましくは0〜150℃、より好ましくは10〜120℃である。
【0108】
さらに熱重合の一種として酸化還元(レドックス)開始剤(後述)を用いるレドックス重合が挙げられる。この際、用いられる温度範囲は通常の熱重合より低く、−40〜100℃で、好ましくは−20〜80℃、より好ましくは0〜60℃である。
【0109】
光重合において照射する光としては、紫外線、可視光線、赤外線等を用いることができる。光ラジカル重合開始剤あるいは増感剤を用いることもできる。紫外線、可視光線の場合具体的には、たとえば300〜800nmの波長範囲の光線である。光源としては、300〜800nmの範囲の波長の光線を照射できるLED(発光ダイオード)やランプを使用する。LEDとしては、UV−LED、青色LED、白色LED等が挙げられる。ランプとしては、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ等が挙げられる。
【0110】
電子線重合においては電子線照射が行われる。電子線照射には、前記の電子線重合化合物に作用し重合性物質の重合を起こすことができる方法であれば、特に制限なく使用することができる。照射する電子線量は、吸収線量として1から300kGy程度の範囲で調節するのが望ましい。1kGy未満では十分な照射効果が得られず、300kGyを超えるような照射は基材を劣化させる恐れがあるため好ましくない。電子線の照射方法としては、例えばスキャニング方式、カーテンビーム方式、ブロードビーム方式などが用いられ、電子線を照射する際の加速電圧は、照射する側の基材の厚さによりコントロールする必要があるが、20から100kV程度が適当である。
【0111】
マイクロ波重合はStraussら(Aust. J. Chem.,48,1665〜1692(1995))の公知の手法を用いることが出来る。マイクロ波は、マイクロ波技術において既知の種々の方法のいずれかによって発生させることができる。一般に、これらの方法は、マイクロ波発生源として作用するクライストロンまたはマグネトロンに依存している。一般に、発生の周波数は約300MHz〜30GHzの範囲であり、対応する波長は約1m〜1mmである。理論的には、この範囲のいずれの周波数も、効果的に使用することができるが、約850〜950MHzまたは約2300〜2600MHzを包含する商業的に利用可能な範囲の周波数を使用するのが好ましい。
【0112】
放射線重合はγ線、X線、α線、β線を照射して重合を行う。通常、コバルト60のγ線照射が用いられることが多い。
【0113】
更に、重合開始のエネルギー源を併用することもできる。たとえば電子線と赤外線の併用等である。
【0114】
また、熱重合以外は通常、常温近傍で重合することが多いが、加熱しながら実施することも可能である。この場合重合の促進が期待できる。
【0115】
(重合開始剤)
上記重合開始エネルギー源に対してそれぞれ重合開始剤を用いることができる。特に熱重合には熱重合開始剤、活性エネルギー線重合のうち特に光重合には光重合開始剤を用いることが一般的である。
【0116】
(熱重合開始剤)
熱重合に用いる重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等のジアシルパーオキシド類、ジクミルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド等のジアルキルパーオキシド類、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等のパーオキシカーボネート類、t−ブチルパーオキシオクトエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等のアルキルパーエステル類、過酸化水素等のパーオキシド(過酸化物)、ジチオカーバメート等のイオウ化合物等が挙げられる。
【0117】
また酸化剤と還元剤を反応させて用いるレドックス重合開始剤も用いることができる。
【0118】
酸化剤としては、上記過酸化物の他、分子状酸素、過硫酸カリウム等の過硫酸塩、セリウム(IV)塩のような酸化性金属塩、Cl、Br2、I等のハロゲン分子、四塩化炭素、塩化ベンジル等の有機ハロゲン化合物等が挙げられる。
【0119】
還元剤としては、硫酸鉄、硫酸銅等の金属化合物、ジメチルアニリン等のアミン化合物、アスコルビン酸(ビタミンC)等が挙げられる。中でも過酸化水素/アスコルビン酸、過酸化水素/鉄塩等の組み合わせが好ましく用いられる。
【0120】
(光重合開始剤)
用いることのできる光重合開始剤としてはベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどのベンゾイン類;アセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−フェニルプロパン−1−オン、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノプロパン−1−オンなどのアセトフェノン類;2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノンなどのアントラキノン類;2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントンなどのチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタールなどのケタール類;ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、4,4’−ビスメチルアミノベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイドなどのホスフィンオキサイド類等が挙げられる。有機合成化学協会誌66,458(2008)等公知文献に紹介されている光重合開始剤も用いることができる。
【0121】
また、具体的には、市場より、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャリティケミカルズ社製イルガキュア184、イルガキュアはチバ・スペシャリティケミカルズ社の登録商標)、(2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−(4−モルフォリニル)−1−プロパノン)(イルガキュア907)、またビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ジフェニル−ホスフィンオキサイド(イルガキュア819)等のアシルホスフィンオキサイド化合物;ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム(イルガキュア784)等のチタノセン化合物;6,12−ビス(トリメチルシリルオキシ)−1,11−ナフタセンキノン等のナフタセンキノン化合物等を容易に入手出来る。また、これらは、単独又は2種以上を混合して使用しても良い。
【0122】
なお、一般に前記の熱重合開始剤は光重合開始剤として用いることも可能である。
【0123】
重合開始剤の使用量は、本発明の熱分解温度向上剤と他の重合性化合物の合計に対して0.1〜5.0重量%の範囲、好ましくは0.2〜3.0重量%、より好ましくは0.3〜1.0重量%である。0.1重量%未満だと重合速度が遅く、効率が悪く、一方5.0重量%を超えると、製造した樹脂の耐熱性が低下、臭気の発生、着色、白濁等、物性が悪化するため好ましくない。
【0124】
(重合様態)
重合様態はバルク、溶液、分散、エマルション、懸濁状態で行うことができる。使用できる溶媒としては、重合性化合物を溶解しそれ自身重合の素反応(開始、成長、連鎖移動、停止)に関与しないものが好ましい。具体的にはトルエン、キシレン等の芳香族、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル等のカルボン酸エステル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル等が挙げられる。
【0125】
縣濁重合に用いられる媒体としては重合性化合物を溶解しないものが選ばれる。具体的には水あるいはヘキサン等の炭化水素が挙げられる。
【0126】
また、重合は事実上空気存在下でも可能な場合があるが、通常酸素による重合阻害を避けるため、窒素やアルゴン等の不活性ガス存在下ですることが好ましい。
【0127】
本発明の熱分解温度向上剤並びに当該熱分解温度向上剤を含有する重合性組成物及び樹脂組成物は耐熱性の求められる樹脂の用途に好ましく用いることができる。
【0128】
具体的には自動車等の車両用部品、家電等の電気部品、食器等の日用品、包装用品等が挙げられる。
【実施例】
【0129】
(熱分解温度測定法)
樹脂組成物の熱分解温度は、昇温速度10℃/分において当該樹脂組成物の重量が5%減少した時の温度をその指標とした。具体的には、粉末にした樹脂組成物10mgの試料を島津製示差熱・熱重量同時測定装置(DTA−50)にて窒素雰囲気(窒素流量:100ml/分)、昇温速度10℃/分での5%重量減温度を求める。
【0130】
(樹脂組成物中熱分解温度向上剤含有量測定法)
樹脂組成物を溶媒に溶解して、紫外線分光光度計(島津製作所製、形式UV−2200)で熱分解温度向上剤の特性吸収ピーク強度を測定し、あらかじめ同様に測定していた既知濃度の熱分解向上剤溶液の特性吸収ピーク強度と比較して、樹脂組成物中の熱分解温度向上剤含有量を求める。
測定した特性吸収ピーク:
1 ,4−ジヒドロ−9 ,10−ジアクリロイルオキシアントラセン=290nm
1,2,3,4−テトラヒドロ−9 ,10−ジアクリロイルオキシアントラセン=285nm
9,10−ジアクリロイルオキシアントラセン=338nm
【0131】
(実施例1)
熱分解温度向上剤として、1 ,4−ジヒドロ−9 ,10−ジアクリロイルオキシアントラセン4.5mg(0.01ミリモル)、重合性化合物としてメタクリル酸メチル397mg(3.97ミリモル)および熱重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル10mg(0.06ミリモル)を30mlの試験管中のトルエン2gと混合させ、2分間窒素置換した後、密封してオイルバスにて65℃で5時間加温した。加温後、試験管中の溶液を室温まで冷却し、室温のメタノール30mlへ攪拌下少しずつ投入して再沈殿させた。沈殿物をロ別し、60℃で4時間減圧乾燥させ表1の収率で樹脂組成物を得た。上記「樹脂組成物中熱分解温度向上剤含有量測定法」により、樹脂組成物中の熱分解温度向上剤含有量を求めた。また、上記「熱分解温度測定法」にて熱分解温度を求め、それぞれ表1に示した。
【0132】
(実施例2〜4)
熱分解温度向上剤及びメタクリル酸メチルの配合量を表1のように変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、その結果を表1に示す。
【0133】
(比較例1)
重合性化合物としてメタクリル酸メチル400mg(4.06ミリモル)および熱重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル10mg(0.06ミリモル)を30mlの試験管中のトルエン2gと混合させ、2分間窒素置換した後、密封してオイルバスにて65℃で5時間加温した。加温後、試験管中の溶液を室温まで冷却し、室温のメタノール30mlへ攪拌下少しずつ投入して再沈殿させた。沈殿物をロ別し、60℃で4時間減圧乾燥させ表1の収率で樹脂組成物を得た。上記「熱分解温度測定法」にて熱分解温度を求め、表1に示した。
【0134】
【表1】

【0135】
(実施例5)
熱分解温度向上剤として、1,2,3,4−テトラヒドロ9 ,10−ジアクリロイルオキシアントラセン4.4mg(0.01ミリモル)、重合性化合物としてメタクリル酸メチル397mg(3.97ミリモル)および熱重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル10mg(0.06ミリモル)を30mlの試験管中のトルエン2gと混合させ、2分間窒素置換した後、密封してオイルバスにて65℃で5時間加温した。加温後、試験管中の溶液を室温まで冷却し、室温のメタノール30mlへ攪拌下少しずつ投入して再沈殿させた。沈殿物をロ別し、60℃で4時間減圧乾燥させ表1の収率で樹脂組成物を得た。上記「樹脂組成物中熱分解温度向上剤含有量測定法」により、樹脂組成物中の熱分解温度向上剤含有量を求めた。また、上記「熱分解温度測定法」にて熱分解温度を求め、それぞれ表2に示した。
【0136】
(実施例6〜7)
熱分解温度向上剤及びメタクリル酸メチルの配合量を表2のように変更した以外は実施例5と同様の操作を行い、その結果を表2に示す。
【0137】
【表2】

【0138】
(実施例8)
熱分解温度向上剤として、9,10−ジアクリロイルオキシアントラセン4.1mg(0.01ミリモル)、重合性化合物としてメタクリル酸メチル399mg(3.99ミリモル)および熱重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル10mg(0.06ミリモル)を30mlの試験管中のトルエン2gと混合させ、2分間窒素置換した後、密封してオイルバスにて65℃で5時間加温した。加温後、試験管中の溶液を室温まで冷却し、室温のメタノール30mlへ攪拌下少しずつ投入して再沈殿させた。沈殿物をロ別し、60℃で4時間減圧乾燥させ表1の収率で樹脂組成物を得た。上記「樹脂組成物中熱分解温度向上剤含有量測定法」により、樹脂組成物中の熱分解温度向上剤含有量を求めた。また、上記「熱分解温度測定法」にて熱分解温度を求め、それぞれ表3に示した。
【0139】
(実施例9〜11)
熱分解温度向上剤及びメタクリル酸メチルの配合量を表3のように変更した以外は実施例8と同様の操作を行い、その結果を表3に示す。
【0140】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示される熱分解温度向上剤。
【化1】


(一般式(1)中、R,Rは、各々、水素原子又はメチル基を示し、両者は同一であっても異なってもよい。A環は炭化水素によって構成された芳香族又は非芳香族の6員環を示す。X,Yは、各々、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、チオアルコキシ基、水酸基又はハロゲン原子を示し、両者は同一であっても異なってもよい。)
【請求項2】
請求項1に記載の一般式(1)が、一般式(2)で示される1,4−ジヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン化合物である熱分解温度向上剤。
【化2】


(一般式(2)中、R,Rは、各々、水素原子又はメチル基を示し、両者は同一であっても異なってもよい。X、Yは、各々、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、チオアルコキシ基、水酸基又はハロゲン原子を示し、両者は同一であっても異なってもよい。)
【請求項3】
請求項1に記載の一般式(1)が、一般式(3)で示される1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン化合物である熱分解温度向上剤。
【化3】


(一般式(3)中、R,Rは、各々、水素原子又はメチル基を示し、両者は同一であっても異なってもよい。X、Yは、各々、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、チオアルコキシ基、水酸基又はハロゲン原子を示し、両者は同一であっても異なってもよい。)
【請求項4】
請求項1に記載の一般式(1)が、一般式(4)で示される9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシアントラセン化合物である熱分解温度向上剤。
【化4】


(一般式(4)中、R,Rは、各々、水素原子又はメチル基を示し、両者は同一であっても異なってもよい。X、Yは、各々、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、チオアルコキシ基、水酸基又はハロゲン原子を示し、両者は同一であっても異なってもよい。)
【請求項5】
少なくとも請求項1乃至4のいずれか一項に記載の熱分解温度向上剤及び重合性化合物からなる重合性組成物。
【請求項6】
重合性化合物がラジカル重合性化合物である請求項5に記載の重合性組成物。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の重合性組成物を重合してなる樹脂組成物。
【請求項8】
請求項5又は6に記載の重合性組成物を熱又は活性エネルギー線により重合させることを特徴とする樹脂組成物の製造方法。


【公開番号】特開2011−219666(P2011−219666A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−91978(P2010−91978)
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【出願人】(000199795)川崎化成工業株式会社 (133)
【Fターム(参考)】