説明

熱切断機

【課題】熱切断機における騒音を低減できるとともに、容易に保守することのできる技術を提供する。
【解決手段】内部に空間を有するテーブル12上に載置された板材15を熱によって切断する熱切断機10において、板材15が載置される側に開口16を有する複数の排気室92をテーブル12内に画成する、テーブル12に設けられた複数の壁90、95、96と、各排気室92を画成するし、テーブル12から着脱可能である不燃性の吸音材である排気室側壁90とを備えるようにする。これにより、熱切断時に発生される音が排気室92の排気室側壁90によって吸収されるので、熱切断時の騒音を効果的に低減することができる。また、容易に排気室側壁90の交換等の保守ができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、プラズマ切断機、レーザ切断機又はガス切断機などのように、テーブル上に載置された板材を熱切断する熱切断機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1などにこの種の熱切断機のテーブルが開示されている。この種の熱切断機のテーブルの上部には、その上に板材を載置するための多数の桟(細長い板材)が一定間隔を置いて配列されている。この熱切断機では、熱切断を行う際には、テーブル内に形成されている排気室に対して外部から吸気し、排気室から排気を行うことにより、熱切断により発生されるフュームを排出するようにしている。
【0003】
また、熱切断機において、熱切断時に発生する塵をあつめるために、本体テーブルの上面全体を覆う技術が知られている(特許文献2)。
【0004】
また、熱切断機において、熱切断時に発生する粉塵と騒音とを防止する技術として、プラズマトーチに騒音を遮蔽又は吸収するフードを取り付ける技術が知られている(特許文献3)。
【0005】
また、熱切断機に用いられる切断受け台に、遮音板や吸音体を取り付けたフードを移動可能に設け、フードにより集塵及び遮音を行う技術が知られている(特許文献4)。
【0006】
更に、熱切断機において、トーチヘッドが設けられ、Y軸方向に走行自在なキャリアとトーチとをフードによって覆う技術が開示されている(特許文献5)
【特許文献1】特開2003−136248号公報
【特許文献2】特開平9−57438号公報
【特許文献3】特開平7−136767号公報
【特許文献4】特開平7−155991号公報
【特許文献5】特開2000−24781号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、熱切断機においては、熱切断時に発生するフュームや、騒音を防止するために種々の技術が知られている。
【0008】
しかしながら、特許文献2における技術では、本体テーブル上面全体を覆う必要があるため、コストがかかるという問題がある。また、特許文献3における技術では、プラズマトーチ自体にフードを設けるので、フードが熱切断時における熱等の影響を受けるので、長期の使用には適さないという問題がある。
【0009】
また、特許文献4における技術では、フード自体を移動させる機構を設ける必要があり、製造コストがかかるという問題がある。また、熱切断時の熱等の影響によりフードが損傷等した場合には、交換するために手間がかかるという問題がある。また、特許文献5における技術では、キャリアとトーチとをフード内に入れるので、キャリアがフュームの影響を受け、キャリアの移動精度が低下する虞がある。また、フード内に入れられているので、キャリアのメンテナンスに手間がかかるという問題もある。
【0010】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、熱切断機における騒音を低減できるとともに、容易に保守することのできる技術を提供することを目的とする。また、本発明は、熱切断機における熱切断時に発生するフュームを効果的に収集できるとともに、フュームによる熱切断機への悪影響を低減することのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の第1の観点に従う熱切断機は、内部に空間を有するテーブル(12)上に載置された板材(15)を熱によって切断する熱切断機(10)において、前記板材(15)が載置される側に開口(16)を有する複数の排気室(92)を前記テーブル(12)内に画成する、前記テーブルに設けられた複数の壁(90、95、96)と、各排気室(92)を画成する前記壁の内の少なくとも1つの壁(90)の少なくとも一部に設けられ、前記テーブル(12)から着脱可能である吸音材(90)とを備える。
【0012】
係る熱切断機によると、不燃性の吸音材によって、熱切断時の騒音を低減できるとともに、吸音材が破損した際には、テーブルから離脱させて、容易に交換することができる。
【0013】
上記熱切断機において、各排気室を画成する壁は、排気口を有する前壁(95)と、前記前壁と略垂直な方向に伸びる側壁(90)とを含み、各排気室内に、前記前壁に向かって前記側壁と略平行な方向に空気流を作る空気流手段(14)を更に備え、前記吸音材(90)は、少なくとも前記側壁(90)に備えられてもよい。係る熱切断機によると、空気流と垂直な方向へ進む音を効果的に吸収させることができる。
【0014】
上記熱切断機において、前記壁の少なくとも1つの壁(90)全体が吸音材により構成されていてもよい。係る熱切断機によると、壁を交換することにより、容易に保守することができる。また、上記熱切断機において、前記吸音材(90)は、不燃性又は耐熱性の材料で構成されていてもよい。係る熱切断機によると、熱切断時の熱による影響を低減することができる。
【0015】
また、上記熱切断機において、前記板材(15)に熱を発生させるための切断ヘッド(38)を備え、前記吸音材(90)は、前記壁(90)における前記切断ヘッド(38)からの熱発生媒体が直接当たらない範囲に備えられていてもよい。係る熱切断機によると、吸音材に前記切断ヘッドからの熱発生媒体が直接当たらないので、吸音材の損傷を効果的に防止することができる。
【0016】
また、上記熱切断機において、前記板材(15)を切断するための切断ヘッド(38)と、前記切断ヘッド(38)を支持し、前記テーブル(12)の前記板材(15)が載置される載置面に平行な第1軸方向(Y)に沿って移動する第1軸移動部(34)と、前記第1軸方向(Y)と垂直で且つ、前記載置面と平行な第2軸方向(X)に沿って移動する第2軸移動部(26)であって、前記第1軸方向(Y)に沿って伸びたアーム(28、29)を有し、前記アーム(28、29)が前記第1軸移動部(34)を前記アーム(28、29)に沿って移動可能に支持し、前記第1軸移動部(34)の前記切断ヘッド(38)が前記アームに対して前記第2軸方向の所定の一方側に位置している、前記第2軸移動部(26)と、前記アームに支持され、前記アーム(28、29)の前記第2軸方向の前記切断ヘッドとは反対側にて、前記アーム(28、29)に沿った前記切断ヘッド(38)の切断時の移動可能範囲の略全体に亘って、前記アーム(28、29)から下方の前記載置面までの領域面の略全体に広がる覆い部(54)とを有するようにしてもよい。係る熱切断機によると、切断ヘッド(38)からアーム方向へ進む音や、フュームの影響を適切に防止することができる。
【0017】
また、上記熱切断機において、前記板材(15)を切断するための切断ヘッド(38)と、前記切断ヘッド(38)を支持し、前記テーブル(12)の前記板材(15)が載置される載置面に平行な第1軸方向(Y)に沿って移動する第1軸移動部(34)と、前記第1軸移動部(34)を支持し、前記第1軸方向(Y)と垂直で且つ、前記載置面と平行な第2軸方向(X)に沿って移動する第2軸移動部(26)と、前記第2軸移動部(26)に支持され前記テーブル(12)の前記載置面に臨み、前記第1軸方向(Y)に沿った前記切断ヘッド(38)の切断時の移動可能範囲の略全体に亘ってのびた空間を上方及び横四方から覆う覆い部(22、24、42、52、54)を有し、前記第1軸移動部(34)は、前記覆い部(22、24、42、52、54)の外部に配置されていてもよい。
【0018】
係る熱切断機によると、第1軸移動部を覆い部の外部に配置しているので、第1軸移動部がフュームによる影響を受けることを防止できる。また、第1軸移動部の保守を容易にすることができる。
【0019】
また、上記熱切断機において、前記複数の排気室(92)が前記第2軸方向(X)に沿って配列され、前記覆い部(22、24、42、52、54)の前記第1軸方向(Y)の長さが、前記各排気室(92)の前記第1軸方向の長さ以上であってもよい。係る熱切断機によると、覆い部が各排気室の第1軸方向の全体を覆うことができる。また、上記熱切断機において、前記覆い部(22、24、42、52、54)は、少なくとも1つの前記排気室の上部の略全体を同時に覆うことが可能なサイズを有するようにしてもよい。係る熱切断機によると、1つの排気室の上方の略全体を同時に覆うことができ、排気室からのフュームや音の漏れを適切に低減することができる。
【0020】
また、上記熱切断機において、前記覆い部は、前記空間を上方から覆う上部覆い部(52A、52B)を有し、前記切断ヘッド(38)は、前記上部覆い部(52A、52B)を通って前記空間内に挿入されており、前記上部覆い部(52A、52B)は、前記第1軸方向に沿って、前記切断ヘッド(38)の一側に存在する前記空間の第1部分を上方から覆う第1上部覆い部(52A)と、前記第1軸方向に沿って、前記切断ヘッド(38)の他側に存在する前記空間の第2部分を上方から覆う第2上部覆い部(52B)とを有し、
前記第1上部覆い部(52A)及び第2上部覆い部(52B)は、前記切断ヘッド(38)の前記第1軸方向に沿っての移動に伴って、伸び縮みするように構成されていてもよい。係る熱切断機によると、切断ヘッドが第1軸に沿って移動した際において、適切に切断ヘッドの移動可能範囲に沿った空間の上部を適切に覆うことができる。
【0021】
また、上記熱切断機において、前記第2軸移動部(26)は、前記第1軸方向(Y)に沿って伸びたアーム部(28)を有し、前記覆い部は、前記空間を上方から覆う上部覆い部(52A、52B、40)を有し、前記第2軸方向に沿った前方から前記空間を覆う前面覆い部(42)と、前記第2軸方向に沿った後方から前記空間を覆う後面覆い部(54)とを有し、前記前面覆い部(42)と前記後面覆い部(54)は、それぞれの下端が、前記載置面に載置される前記板材の表面に接触可能な長さ、または前記板材表面近傍に達する長さを有しており、前記前面覆い部(42)と前記後面覆い部(54)の各々は、前記アーム部(28)に前記第2軸方向に揺動可能に吊り下げられるとともに、それ自体が前記第2軸方向に折れ曲がり可能に構成されていてもよい。係る熱切断機によると、前記第2軸移動部が、第2軸方向において反転移動した場合にあっても、前面覆い部と後面覆い部とは、それ自体でも折れ曲がるので、その移動に対して支障を及ぼすことなく、空間を覆うことを維持できる。
【0022】
また、上記熱切断機は、切断ヘッド(38)と、第1軸移動部(34)と、第2軸移動部(26)と、覆い部(22、24、42、52、54)とを有してもよい。切断ヘッド(38)は、前記板材(15)を切断するための装置である。第1軸移動部(34)は、前記切断ヘッド(38)を支持し、前記テーブル(12)の前記板材(15)が載置される載置面に平行な第1軸方向(Y)に沿って移動する。第2軸移動部(26)は、前記第1軸移動部(34)を支持し、前記第1軸方向(Y)と垂直で且つ、前記載置面と平行な第2軸方向(X)に沿って移動する。覆い部(22、24、42、52、54)は、前記第2軸移動部(26)に支持され、前記テーブル(12)の前記載置面に臨み、前記第1軸方向(Y)に沿った前記切断ヘッド(38)の切断時の移動可能範囲の略全体に亘ってのびた空間を少なくとも横四方から覆う。
【0023】
係る熱切断機によると、切断ヘッドから発生する音やフュームの影響を適切に防止することができる。
【0024】
また、上記熱切断機において、前記覆い部は、前記空間を一側方から覆い開閉可能に設けられた側方覆い部(22、24、42、54)を有し、上記熱切断機は前記側方覆い部を開閉する駆動機構をさらに備えてもよい。
【0025】
係る熱切断機によると、使用者が覆い部の内部の状態を容易に確認することができる。
【0026】
また、上記熱切断機は、制御部をさらに備えてもよい。制御部は、前記駆動機構を制御して、前記切断ヘッド(38)による熱切断の実行中には前記側方覆い部(22、24、42、54)を閉状態とし、前記切断ヘッド(38)による熱切断の停止中に前記側方覆い部(22、24、42、54)を開状態とする。
【0027】
係る熱切断機によると、覆い部の内部の状態を確認する際に、切断ヘッドからの音やフュームの影響が生じることを抑えることができる。
【0028】
また、上記課題を解決するため、本発明の第2の観点に従う熱切断機は、内部に空間を有するテーブル(12)上に載置された板材(15)を熱によって切断する熱切断機(10)において、前記板材(15)を切断するための切断ヘッド(38)と、前記切断ヘッド(38)を支持し、前記テーブル(12)の前記板材(15)が載置される載置面に平行な第1軸方向(Y)に沿って移動する第1軸移動部(34)と、前記第1軸移動部(34)を支持し、前記第1軸方向(Y)と垂直で且つ、前記載置面と平行な第2軸方向(X)に沿って移動する第2軸移動部(26)と、前記第2軸移動部(26)に支持され前記テーブル(12)の前記載置面に臨み、前記第1軸方向(Y)に沿った前記切断ヘッド(38)の切断時の移動可能範囲の略全体に亘ってのびた空間を少なくとも横四方から覆う覆い部(22、24、42、52、54)を備える。
【0029】
係る熱切断機によると、切断ヘッドから発生する音やフュームの影響を適切に防止することができる。
【0030】
また、上記熱切断機において、前記覆い部は、前記空間を上方および横四方から覆ってもよい。
【0031】
係る熱切断機によると、切断ヘッドから発生する音やフュームの影響をさらに適切に防止することができる。
【0032】
また、上記熱切断機において、前記第1軸移動部(34)は、前記覆い部(22、24、42、52、54)の外部に配置されてもよい。
【0033】
係る熱切断機によると、第1軸移動部を覆い部の外部に配置しているので、第1軸移動部がフュームによる影響を受けることを防止できる。また、第1軸移動部の保守を容易にすることができる。
【0034】
また、上記熱切断機において、前記覆い部は、前記空間を一側方から覆い開閉可能に設けられた側方覆い部(22、24、42、54)を有し、上記熱切断機は前記側方覆い部を開閉する駆動機構をさらに備えてもよい。
【0035】
係る熱切断機によると、使用者が覆い部の内部の状態を容易に確認することができる。
【0036】
また、上記熱切断機は、制御部をさらに備えてもよい。制御部は、前記駆動機構を制御して、前記切断ヘッド(38)による熱切断の実行中には前記側方覆い部(22、24、42、54)を閉状態とし、前記切断ヘッド(38)による熱切断の停止中に前記側方覆い部(22、24、42、54)を開状態とする。
【0037】
係る熱切断機によると、覆い部の内部の状態を確認する際に、切断ヘッドからの音やフュームの影響が生じることを抑えることができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、熱切断機における騒音を低減できるとともに、容易に保守することができる。また、本発明によれば、熱切断機における熱切断時に発生するフュームを効果的に収集できるとともに、フュームによる熱切断機への悪影響を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0040】
図1は、本発明の一実施形態に係る熱切断機の全体構成を示す斜視図であり、図2は、本発明の一実施形態に係る熱切断機の断面図である。
【0041】
熱切断機10は、床に設置された箱状のテーブル12を有する。テーブル12の上面には、矩形形状の格子パレット13を組み込み可能となっている。被切断材である板材15は、格子パレット13上に載置される。したがって、格子パレット13の上平面が板材15の載置面となる。格子パレット13はテーブル12の上部の開口16(図3参照)に嵌め込まれており、テーブル12に着脱自在である。
【0042】
板材15としては、その平面サイズが特定の標準サイズに合致しているものが一般に広く用いられている。このような標準の平面サイズをもつ板材15を、定尺板材と呼ぶ。定尺板材の平面サイズ(標準サイズ)には、例えば1.5m×3mや2.4m×6mというように複数タイプがある。格子パレット13は、その上に所定の1タイプの定尺板材を1枚載置することを予定して設計されている。よって、格子パレット13の平面サイズは、その所定タイプの1枚の定尺板材の平面サイズに適したものになっている。
【0043】
熱切断機10においては、板材15の切断位置を制御するための数値演算処理上、X−Y−Z直交座標系が定義されている。このX−Y−Z直交座標系では、図1に示したように、X軸(第2軸)を熱切断機10の長手方向(格子パレット13の長辺に平行な方向)にとり、Y軸(第1軸)を熱切断機10の短手方向(格子パレット13の短辺に平行な方向)にとり、Z軸を格子パレット13に対して垂直下向き方向(板材15に垂直下向き方向)にとっている。
【0044】
テーブル12には、X軸と平行なX軸レール27等が設けられる。X軸レール27等の上に、X軸移動台車20が配置される。これにより、X軸移動台車20は、X軸レール2
7等の上をX軸に沿って移動可能である。X軸移動台車20は、X軸レール27上に乗る台車側壁部24と、図示しないX軸レール上に乗る台車側壁部22と、台車側壁部22及び台車側壁部24を接続する第1アーム28及び第2アーム29と、第2軸移動部の一例としてのX軸駆動部26とを有する。
【0045】
X軸駆動部26は、例えば、サーボモータを収容し、図示しないX軸に沿って配設されたX軸ラックと係合する図示しないピニオンギアを回転させることにより、X軸移動台車20をX軸に沿って移動させる。第1アーム28上には、切断ヘッド38に供給するガスやその他の制御用の配線等が載置される。第2アーム29には、Y軸に平行な2本のY軸レール31と、Y軸ラック32が設けられる。Y軸レール31上には、第1軸移動部の一例としてのY軸移動台車34が載置される。これにより、Y軸移動台車34は、Y軸レール31上をY軸に沿って移動できるようになっている。Y軸ラック32は、Y軸移動台車34の図示しないピニオンギアがかみ合うようになっている。Y軸移動台車34内には、例えば、図示しないサーボモータが収容されており、サーボモータの動力によってピニオンギアが回転し、Y軸移動台車34がY軸レール31上を移動する。
【0046】
このような構成により、X軸移動台車20がX軸方向へ移動すると、Y軸移動台車34も一緒にX軸方向へ移動することとなる。
【0047】
Y軸移動台車34には、キャリッジ36が支持(例えば、搭載)される。キャリッジ36には、切断ヘッド38が支持(搭載)されている。キャリッジ36は、切断ヘッド38をZ軸に沿って移動させることができる。切断ヘッド38は、例えば、プラズマ切断機の場合にはプラズマトーチであり、レーザ切断機の場合にはレーザトーチであり、ガス切断機の場合にはガスバーナであり、また、複合型切断機の場合には、上記したいずれか2つを組み合わせたものである。ここで、プラズマアーク、レーザ、炎が熱発生媒体に相当する。なお、切断ヘッド38は、コントローラ72によって制御される。
【0048】
X軸移動台車20、Y軸移動台車34、及びキャリッジ36をコントローラ72が制御することにより、切断ヘッド38を格子パレット13上の所望の位置に移動させ、熱切断処理を行わせることができる。コントローラ72は、人からの運転指示に従って、又は、加工プログラムに従って、熱切断機10を制御する。
【0049】
台車側壁部24は、X軸方向と逆の方向側(X軸に沿った図面右側、以下、前面側ともいう)に窓部24Aを有している。窓部24Aは、例えば、透明のアクリル板で構成されており、熱切断機10の側面から切断ヘッド38による板材15の切断状態を観察できるようになっている。
【0050】
X軸移動台車20の台車側壁部22及び台車側壁部24の前面側の端の上部には、Y軸に沿った接続部材40が接続されている。接続部材40には、前面覆い部42が接続されている。
【0051】
前面覆い部42は、覆い板44、覆い板46、及び下部プレート48の組を複数(例えば、3つ)有している。これら各組は、Y軸に沿って配置されている。このように、前面覆い部42が複数の組によって構成されているので、例えば、切断ヘッド38を保守する際に、いずれかの組を持ち上げることにより容易に作業を行うことができる。
【0052】
覆い板44は、X軸に沿った前後方向に曲折可能な2つのヒンジ50を介して、接続部材40に接続されている。従って、覆い板44は、X軸に沿って揺動可能となっている。覆い板44は、例えば、金属で構成された窓枠部44Aと、例えば、透明なアクリル板で構成された窓部44Bとを有する。窓部44Bにより、切断ヘッド38による板材15の
切断状態を観察できるようになっている。
【0053】
覆い板46は、X軸に沿った前後方向に曲折可能な2つのヒンジ50を介して覆い板44に接続されている。従って、覆い板46は、X軸に沿って揺動可能となっている。覆い板46は、例えば、金属で構成された窓枠部46Aと、例えば、透明なアクリル板で構成された窓部46Bとを有する。窓部46Bにより、切断ヘッド38による板材15の切断状態を観察できるようになっている。
【0054】
下部プレート48は、覆い板46に接続されている。下部プレート48は、例えば、図2に示すように、断面がJ字上の形状となっており、曲面部分が下方、すなわち、テーブル12側に向いている。本実施形態では、下部プレート48は、金属プレートである。このように、下部プレート48がJ字状となっているので、X軸移動台車20がX軸に沿って移動する際に、下部プレート48が板材15に引っかかることを防止することができる。
【0055】
本実施形態では、前面覆い部42は、接続部材40と覆い板44との接続箇所と、覆い板44と覆い板46との接続箇所との高さの異なる2箇所においてヒンジ50により接続しているので、覆い板44及び覆い板46のそれぞれを独立して揺動させることができる。ここで、このように、部材同士を上下方向の異なる複数の位置においてヒンジ50を介して順次接続していく構造を多重ヒンジ構造ということとする。本実施形態では、ヒンジにより接続する箇所を2箇所としていたが、例えば、前面覆い部42の覆い板の数を3以上とし、覆い板を接続する3箇所以上でヒンジにより接続するようにしてもよい。
【0056】
このように、多重ヒンジ構造となっているため、板材15上に前面覆い部42が位置している場合に、X軸移動台車20の移動方向が反転しても、覆い板44及び覆い板46によって移動が妨げられたり、覆い板44や覆い板46が損傷したりすることがない。
【0057】
この前面覆い部42によると、切断ヘッド38が熱切断時にY軸に沿って移動可能な範囲の略全体に亘ってのびた空間(切断時移動可能空間という)、すなわち、熱切断ヘッド38の直下の空間を含み、Y軸に沿った所定のY軸範囲の空間に対する前面側を覆うことができる。本実施形態では、前面覆い部42のY軸方向の幅は、排気室92のY軸方向の長さ以上となっている。このため、熱切断ヘッド38による熱切断時におけるフュームの前面側への流出を効果的に防止することができる。
【0058】
接続部材40は、図2に示すように、断面が略C字状をしており、その内部に伸び縮み可能な伸縮部52A、52Bの一端を収容し、第1上部覆い部の一例としての伸縮部52A、第2上部覆い部の一例としての伸縮部52Bを所定の高さ位置に維持できるようになっている。
【0059】
伸縮部52Aは、キャリッジ36に対してY軸に沿った一側(図面左手前側)の切断時移動可能空間の一部分(第1部分)の上方に設けられ、Y軸に沿った一端を台車側壁部24に接続され、他方をキャリッジ36の一側の側面に接続されている。伸縮部52Aは、例えば、蛇腹状の部材で形成されており、Y軸に沿った方向において、覆う範囲を変更(伸縮)することができるようになっており、キャリッジ36がY軸に沿って移動しても、キャリッジ36に対してY軸に沿った一側の切断時移動可能空間の部分の上方を覆うことができるようになっている。伸縮部52Bは、キャリッジ36に対してY軸に沿った他側(図面右奥側)との切断時移動可能空間の一部分(第2部分)の上方に設けられ、Y軸に沿った一端を台車側壁部22に接続され、他方をキャリッジ36の他側の側面に接続されている。伸縮部52Bは、例えば、蛇腹状の部材で形成されており、Y軸に沿った方向において、覆う範囲を伸縮することができるようになっており、キャリッジ36がY軸に沿って移動しても、キャリッジ36に対してY軸沿った他側の切断時移動可能空間の部分の上方を覆うことができるようになっている。なお、伸縮部52A、52Bは、蛇腹状の部材に限らず、例えば、テレスコピックな形状(はめ込み式の形状)で伸縮する構成としてもよい。
【0060】
また、第1アーム部28のX軸方向側(後面側ともいう。)には、後面覆い部54が接続されている。後面覆い部54は、図2に示すように、覆い板56、覆い板58、及び下部プレート60の組を複数(本実施形態では、3つ)有している。本実施形態では、前面覆い部42と、後面覆い部54とのX軸方向の間隔は、後述する1つの排気室92のX軸方向の幅より広くなっている。また、前面覆い部42と、後面覆い部54とのY軸方向の長さは、1つの排気室92のY軸方向の長さ以上となっている。このため、X軸移動台車20の位置によっては、1つの排気室92の上方を確実に覆うことができ、フュームや音の漏れを効果的に低減できる。なお、例えば、2つの排気室のX軸方向の幅より広くしてもよく。このようにすると、常に1つの排気室の上方の全体を覆うことができ、フュームや音の漏れをより効果的に低減できる。
【0061】
覆い板56は、X軸に沿った前後方向に曲折可能な2つのヒンジ62を介して、アーム28に接続されている。覆い板56は、X軸に沿って揺動可能となっている。覆い板56は、例えば、金属で構成されている。
【0062】
覆い板58は、X軸に沿った前後方向に曲折可能な2つのヒンジ62を介して覆い板56に接続されている。従って、覆い板58は、X軸に沿って揺動可能となっている。覆い板58は、例えば、金属で構成されている。
【0063】
下部プレート60は、覆い板58に接続されている。下部プレート60は、例えば、断面がJ字上の形状となっており、曲面部分が下方、すなわち、テーブル12側に向いている。本実施形態では、下部プレート60は、金属プレートである。このように、下部プレート60がJ字状となっているので、X軸移動台車20がX軸に沿って移動する際に、下部プレート60が板材15に引っかかることを防止することができる。
【0064】
本実施形態では、後面覆い部54は、第1アーム28と覆い板56との接続箇所と、覆い板56と覆い板58との接続箇所との高さの異なる2箇所においてヒンジ62により接続している、すなわち多重ヒンジ構造をしているので、覆い板56及び覆い板58のそれぞれを独立して揺動させることができる。本実施形態では、ヒンジ62により接続する箇所を2箇所としていたが、例えば、後面覆い部54の覆い板の数を3以上とし、覆い板を接続する3箇所以上においてヒンジ62により接続するようにしてもよい。このように、本実施形態では、後面覆い部54は、多重ヒンジ構造をしているので、覆い板56及び覆い板58のそれぞれを独立して揺動させることができる。このため、板材15上に後面覆い部54が位置している場合に、X軸移動台車20の移動方向が反転しても、覆い板56や覆い板58によって移動が妨げられたり、覆い板56及び覆い板58が損傷したりすることがない。
【0065】
後面覆い部54によると、切断ヘッド38による切断時移動可能空間に対する後面側を覆うことができる。このため、熱切断ヘッド38による熱切断時におけるフュームの後面側への流出を効果的に防止することができる。
【0066】
なお、覆い板56、覆い板58、及び下部プレート60の少なくともいずれか1つの切断ヘッド38側の面に吸音材を設けるようにしてもよい。
【0067】
本実施形態では、切断ヘッド38による切断時移動可能空間は、上方を第1アーム部28、第2アーム部29及び伸縮部52によって覆われ、前面側を前面覆い部42によって覆われ、後面側を後面覆い部54によって覆われ、2方向を台車側壁22及び24によって覆われている。すなわち、切断時移動可能空間は、テーブル12の載置面に臨んでいるこれら各部によって、上方及び横四方から覆われている。このため、切断時移動可能空間からの熱切断時の音の漏洩や、フュームの漏洩を適切に防ぐことができる。ここで、覆い部は、主に、前面覆い部42、後面覆い部54、伸縮部52、台車側壁22、24、第1アーム部28、及び第2アーム部29によって構成される。
【0068】
テーブル12のX軸に沿った一方の壁96(図面手前側の壁:後壁という)には、テーブル12の排気室92(図3参照)に空気を送るための空気流手段の一例としての複数の
吸気ファン14が取り付けられる。テーブル12の排気室92は、接続ダクト68を介して、集塵機70に連通可能になっている。集塵機70は、板材15の切断時にテーブル12の排気室92の内部の空気を吸い込むことにより、排気室92内のヒュームなどを収集する。
【0069】
図3は、本実施形態に係るテーブルの内部構造を示す斜視図である。
【0070】
テーブル12の上部には、格子パレット13が上方から嵌め込まれるための開口16が形成されている。開口16の周壁の上部の複数箇所には、開口16に嵌め込まれる格子パレット13を支持するための複数の支持ブロック80が設けられている。
【0071】
開口16の下方には、板材15の切断時に発生するヒュームなどを排気するための複数の排気室92が画成されている。排気室92のそれぞれは、排気室側壁90、前壁95、及び後壁96により画成されている。
【0072】
排気室側壁90は、例えば、その全体が不燃性又は耐熱性の材料(例えば、コンクリート系、セラミックス等の不燃性の無機物)の吸音材、例えば、内部に空隙を有する発泡コンクリートボードにより構成されている。このため、吸音することができるとともに、排気室92を適切に区切ることができる。なお、吸音材としては、表面が平坦な金属板に比して、吸音、防音効果がある部材であれば適用することができ、例えば、表面が凹凸状の部材(金属板も含む)であってもよい。また、吸音材としては、コンクリート板、石膏板、多孔性の金属性鋳物、グラスウール、ロックウール、又はスチールウールであってもよい。ここで、熱切断によって発生して排気室に入った音を考察すると、排気室に入った音の内の排気口へ進む音は、集塵機に吸収される等によって、騒音への影響が比較的小さいと考えられる。一方、側壁に向かう音は、側壁に反射して開口部から外部に出たり、或いは側壁を通過して外部に出たり、或いは隣の排気室に進んだ後に外部に出たり等するので、騒音への影響が比較的大きいと考えられる。この排気室側壁90によると、騒音への影響が比較的大きい、側壁に向かう音を効果的に吸音することができるので、騒音の低減効果が高い。本実施形態では、排気室側壁90の高さは、切断ヘッド38による切断時において、アークや、バーナの火や、レーザ等が直接当たらない高さとなっている。
【0073】
テーブル12の底面には、排気室側壁90の位置を規定するガイド部93が設けられ、また、テーブル12の側壁には、排気室側壁90の位置を規定するガイド部94が設けられている。排気室側壁90は、これらガイド部93、94に沿って、テーブル12に対して着脱可能になっている。すなわち、排気室側壁90は、テーブル12の上方からガイド部93、94に沿ってテーブル12の所定の位置に装着することができるようになっているとともに、テーブル12から上方に離脱することができるようになっている。したがって、排気室側壁90が熱切断による影響によって損傷したり、汚れたりした場合には、テーブル12から排気室側壁90を容易に離脱させ、新しい排気室側壁90へ交換することができる。
【0074】
排気室92の各々は、格子パレット13の短辺方向(Y軸方向)に格子パレット13の一端から他端までの距離範囲にわたって伸びている。排気室92の後壁96には、吸気ファン14が設けられており、前壁95には、排気口82が形成されている。このような構成により、排気室92においては、吸気ファン14から吸入された空気が排気室側壁90に略平行に排気口82に進む空気流が作られる。なお、吸気パン14が設けられている前壁95と、排気口82側の後壁96との少なくともいずれか一方に吸音材を設けるようにしてもよい。排気口82には、排気ダンパ(図示省略)がそれぞれ設けられる。排気口82は、テーブル12内の排気ダクト84に連通可能となっている。排気ダクト84は、接続ダクト68を介して集塵機30の吸気口に繋がっている。板材15の切断が行われている間、切断ヘッド38の位置に応じて、ヒュームが存在する可能性のある排気室92に通じた排気口82が選択的に開放され、その排気室92の排気が行われる。
【0075】
本実施形態に係る熱切断機10によれば、熱切断時において、板材15の下方側に発生する或いは進む音が排気室92の排気室側壁90によって吸音されるので、熱切断時の騒音を効果的に低減することができる。
【0076】
また、前面覆い部44、後面覆い部54、伸縮部52等によって、熱切断時における板材15の上方側に発生する音や上方に進む音が外部への漏洩することを効果的に防止できる。また、前面覆い部44、後面覆い部54、伸縮部52等によって、熱切断時に発生するフュームが外部へ漏洩することも効果的に防止できる。
【0077】
次に、本発明の一実施形態にかかるテーブル12の変形例について説明する。
【0078】
図4は、本発明の変形例に係るテーブルの内部構造の一部の構成を示す図である。図4(A)は、排気室側壁90が装着された状態をX−Y平面で切断した図であり、図4(B)は、排気室側壁90の装着された状態をX軸方向から観察した図である。
【0079】
本変形例に係るテーブル12には、図4(A)に示すように、排気室側壁90を固定するガイド部98が、テーブル12の下面に設けられている。このガイド部98は、図4(B)に示すように、前壁95と後壁96とに至る長さを有し、前壁95と後壁96とに接続され、テーブル12における梁を構成するようになっている。これによって、テーブル12の剛性を向上することができ、テーブル12を適切な形状に維持することができる。ガイド部98の上部には、排気室側壁90が上方から挿入可能な凹状部98aが形成されている。
【0080】
また、テーブル12において、排気室側壁90の上方には、耐熱性の部材によって、排気室側壁90の上部を覆うように形成された遮蔽部97が設けられている。遮蔽部97は、図4(B)に示すように、前壁95と後壁96とに至る長さを有し、前壁95と後壁96とに接続され、テーブル12における梁を構成するようになっている。この遮蔽部97によると、テーブル12の剛性を向上することができ、テーブル12を適切な形状に維持することができ、また、切断ヘッド38による火炎や、スパッタや、切断ヘッド38によって溶融された金属(板材からの破片)等が排気室側壁90に接触することを適切に防止することができる。
【0081】
次に、本発明の一実施形態にかかる熱切断機10の変形例について説明する。
【0082】
図5は、本発明の実施形態の変形例に係る熱切断機10の全体構成を示す斜視図である。この熱切断機10では、前面覆い部42(側方覆い部)は、内部の空間を開閉可能に設けられている。具体的には、前面覆い部42は、支持部材43と、カーテン状部材45とを有する。支持部材43は、Y軸方向に沿って設けられており、カーテン状部材45を支持する。カーテン状部材45は、支持部材43から吊り下げられており、切断ヘッド38が配置される内部の空間を前方から覆っている。カーテン状部材45は、難燃性の布などで形成されている。
【0083】
また、熱切断機10は、前面覆い部42を開閉する駆動機構47を備えている。駆動機構47は、一対のエアーシリンダ49a,49bと、図示しない一対のガイド部材を有している。一対のエアーシリンダ49a,49bは、Y軸方向に互いに距離を隔てて配置されており、前面覆い部42の両側端近傍に配置されている。エアーシリンダ49a,49bの上端には、支持部材43が取り付けられており、エアーシリンダ49a,49bが伸縮することにより、前面覆い部42が上下に移動する。図5では、エアーシリンダ49a,49bは収縮した状態であり、前面覆い部42は、内部の空間を閉じている。また、図6では、エアーシリンダ49a,49bは伸張した状態であり、前面覆い部42は、図5の位置から上方に移動することにより、内部の空間を開いている。
【0084】
この熱切断機10では、コントローラ72(制御部)は、エアーシリンダ49a,49bの動作を制御することにより、前面覆い部42の開閉動作を制御する。具体的には、コントローラ72は、切断ヘッド38による熱切断の実行中には前面覆い部42を閉状態とする。すなわち、切断ヘッド38が熱を発生させており、切断音やフュームが発生している状態では、前面覆い部42は閉状態とされる。これにより、切断音や煙が周囲の使用者に与える影響を抑えることができる。また、コントローラ72は、切断ヘッド38による熱切断の停止中には、前面覆い部42を開状態とする。例えば、切断ヘッド38が熱を発生させず且つ移動を停止している場合や、切断ヘッド38が熱を発生させずに搬送されている場合などに、前面覆い部42が開状態とされる。これにより、使用者は、熱切断機10の内部の状況を容易に確認することができる。
【0085】
なお、カーテン状部材45は、ビニールなどの他の材質で形成されてもよい。また、金属や樹脂製の板などで形成されてもよい。
【0086】
エアーシリンダ49a,49bではなく他のアクチュエータが用いられてもよい。また、前面覆い部42は他の態様で開閉されてもよい。例えば、図7に示すように、前面覆い部42は、回動することにより開閉されてもよい。
【0087】
また、後面覆い部54が開閉されてもよい。ただし、内部の状態を容易に把握する観点からは、切断ヘッド38に近い前面覆い部42が開閉されることが望ましい。
【0088】
また、使用者によるコントローラ72のボタン操作に応じて、前面覆い部42が開閉動作するように構成されてもよい。
【0089】
以上、本発明を一実施形態に基づいて説明したが、本発明は上述した実施形態に限られず、他の様々な態様に適用可能である。
【0090】
例えば、上記実施形態では、排気室側壁90自体を吸音材として構成していたが、本発明はこれに限られず、例えば、板状の部材に吸音材を付加するようにしてもよい。吸音材としては、例えば、多孔性の金属性鋳物や、グラスウール、スチールウールであってもよい。この場合、板状部材及び吸音材をテーブル12に対して着脱可能としてもよく、また、板状部材をテーブル12に固定した状態で、吸音材のみを板状部材に対して着脱可能にすることにより、吸音材をテーブル12に対して着脱可能としてもよい。また、吸音材を設ける範囲としては、壁の全範囲としてもよいし、壁の一部の範囲としてもよい。
【0091】
また、上記実施形態では、前面覆い部42と、後面覆い部54とをそれぞれ、板材の表面に接触可能な長さにしていたが、本発明はこれに限られず、板材の表面近傍に達する長さであってもよい。この場合でも、同様に、防音効果や、フュームの外部への漏洩の防止効果がある。
【0092】
また、上記実施形態では、前面覆い部42と、後面覆い部54とのそれぞれを比較的硬質な部材を複数組み合わせて構成していたが、本発明はこれに限られず、例えば、可撓性を有する不燃性の布状の部材により構成するようにしてもよく、要は、それ自体がX軸に沿って折れ曲がることができればよい。
【0093】
また、上記実施形態では、前面覆い部42、後面覆い部54、及び上面覆い部40との全てを備えるようにしていたが、本発明はこれに限られず、例えば、前面覆い部42を備えずに、切断ヘッド38からX軸方向に離れている後面覆い部54を備えるようにしてもよい。また、前面覆い部42と後面覆い部40とを備え、上面覆い部40を備えないようにしてもよい。このようにしても、所定方向への音の漏れや、フュームの漏れを適切に防止できる。また、切断ヘッド38自体の移動動作に影響を与えることがなく、切断ヘッド38に対する作業や、切断ヘッド38による切断の確認等の作業に対する作業性に支障がない。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、騒音を低減できるとともに、容易に保守することのできる効果を有し、熱切断機として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の一実施形態に係る熱切断機の全体構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る熱切断機の断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るテーブルの内部構造を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施形態の変形例に係るテーブルの内部構造の一部の構成を示す図である。
【図5】本発明の実施形態の変形例に係る熱切断機の全体構成を示す斜視図である。
【図6】本発明の実施形態の変形例に係る熱切断機の全体構成を示す斜視図である。
【図7】本発明の実施形態の変形例に係る熱切断機の断面図である。
【符号の説明】
【0096】
10 熱切断機、12 テーブル、13 格子パレット、14 吸気ファン、15 板材、20 X軸移動台車、22,24 台車側壁部、26 X軸駆動部、28 第1アーム、29 第2アーム、31 Y軸レール、32 ラック、34 Y軸移動台車、36 キャリッジ、38 切断ヘッド、40 接続部材、42 前面覆い部、44,46 覆い板、44A,46A 窓枠部、44B,46B 窓部、47 駆動機構、48 下部プレート、50 ヒンジ、52A,52B 伸縮部、54 後面覆い部、56,58 覆い板、60 下部プレート、62 ヒンジ、68 接続ダクト、70 集塵機、72 コントローラ、80 支持ブロック、82 排気口、84 排気ダクト、90 排気室側壁、92 排気室、93
ガイド部、94 ガイド部、95 前壁、96 後壁、97 遮蔽部、98 ガイド部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に空間を有するテーブル(12)上に載置された板材(15)を熱によって切断する熱切断機(10)において、
前記板材(15)が載置される側に開口(16)を有する複数の排気室(92)を前記テーブル(12)内に画成する、前記テーブルに設けられた複数の壁(90、95、96)と、
各排気室(92)を画成する前記壁の内の少なくとも1つの壁(90)の少なくとも一部に設けられ、前記テーブル(12)から着脱可能である吸音材(90)と
を備える熱切断機。
【請求項2】
各排気室を画成する壁は、排気口を有する前壁(95)と、前記前壁と略垂直な方向に伸びる側壁(90)とを含み、
各排気室内に、前記前壁に向かって前記側壁と略平行な方向に空気流を作る空気流手段(14)を更に備え、
前記吸音材(90)は、少なくとも前記側壁(90)に備えられる
請求項1に記載の熱切断機
【請求項3】
前記壁の少なくとも1つの壁(90)全体が吸音材により構成される
請求項1又は請求項2に記載の熱切断機。
【請求項4】
前記吸音材(90)は、不燃性又は耐熱性の材料で構成されている
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の熱切断機。
【請求項5】
前記板材(15)に熱を発生させるための切断ヘッド(38)を備え、
前記吸音材(90)は、前記壁(90)における前記切断ヘッド(38)からの熱発生媒体が直接当たらない範囲に備えられている
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の熱切断機。
【請求項6】
前記板材(15)に熱を発生させるための切断ヘッド(38)と、
前記切断ヘッド(38)からの熱発生媒体が前記吸音材(90)に直接当たらないように、前記吸音材を遮蔽する遮蔽部(97)と
を備える請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の熱切断機。
【請求項7】
前記板材(15)を切断するための切断ヘッド(38)と、
前記切断ヘッド(38)を支持し、前記テーブル(12)の前記板材(15)が載置される載置面に平行な第1軸方向(Y)に沿って移動する第1軸移動部(34)と、
前記第1軸方向(Y)と垂直で且つ、前記載置面と平行な第2軸方向(X)に沿って移動する第2軸移動部(26)であって、前記第1軸方向(Y)に沿って伸びたアーム(28、29)を有し、前記アーム(28、29)が前記第1軸移動部(34)を前記アーム(28、29)に沿って移動可能に支持し、前記第1軸移動部(34)の前記切断ヘッド(38)が前記アームに対して前記第2軸方向の所定の一方側に位置している、前記第2軸移動部(26)と、
前記アームに支持され、前記アーム(28、29)の前記第2軸方向の前記切断ヘッドとは反対側にて、前記アーム(28、29)に沿った前記切断ヘッド(38)の切断時の移動可能範囲の略全体に亘って、前記アーム(28、29)から下方の前記載置面までの領域面の略全体に広がる覆い部(54)とを有する
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の熱切断機。
【請求項8】
前記板材(15)を切断するための切断ヘッド(38)と、
前記切断ヘッド(38)を支持し、前記テーブル(12)の前記板材(15)が載置される載置面に平行な第1軸方向(Y)に沿って移動する第1軸移動部(34)と、
前記第1軸移動部(34)を支持し、前記第1軸方向(Y)と垂直で且つ、前記載置面と平行な第2軸方向(X)に沿って移動する第2軸移動部(26)と、
前記第2軸移動部(26)に支持され、前記テーブル(12)の前記載置面に臨み、前記第1軸方向(Y)に沿った前記切断ヘッド(38)の切断時の移動可能範囲の略全体に亘ってのびた空間を上方及び横四方から覆う覆い部(22、24、42、52、54)を有し、
前記第1軸移動部(34)は、前記覆い部(22、24、42、52、54)の外部に配置されている
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の熱切断機。
【請求項9】
前記複数の排気室(92)が前記第2軸方向(X)に沿って配列され、前記覆い部(22、24、42、52、54)の前記第1軸方向(Y)の長さが、前記各排気室(92)の前記第1軸方向の長さ以上である
請求項8に記載の熱切断機。
【請求項10】
前記覆い部(22、24、42、52、54)は、少なくとも1つの前記排気室の上部の略全体を同時に覆うことが可能なサイズを有する
請求項9に記載の熱切断機。
【請求項11】
前記覆い部は、前記空間を上方から覆う上部覆い部(52A、52B)を有し、
前記切断ヘッド(38)は、前記上部覆い部(52A、52B)を通って前記空間内に挿入されており、
前記上部覆い部(52A、52B)は、前記第1軸方向に沿って、前記切断ヘッド(38)の一側に存在する前記空間の第1部分を上方から覆う第1上部覆い部(52A)と、前記第1軸方向に沿って、前記切断ヘッド(38)の他側に存在する前記空間の第2部分を上方から覆う第2上部覆い部(52B)とを有し、
前記第1上部覆い部(52A)及び第2上部覆い部(52B)は、前記切断ヘッド(38)の前記第1軸方向に沿っての移動に伴って、伸び縮みするように構成される
請求項8乃至請求項10のいずれか1項に記載の熱切断機。
【請求項12】
前記第2軸移動部(26)は、
前記第1軸方向(Y)に沿って伸びたアーム部(28)を有し、
前記覆い部は、前記空間を上方から覆う上部覆い部(52A、52B、40)と、前記第2軸方向に沿った前方から前記空間を覆う前面覆い部(42)と、前記第2軸方向に沿った後方から前記空間を覆う後面覆い部(54)とを有し、
前記前面覆い部(42)と、前記後面覆い部(54)は、それぞれの下端が前記載置面に載置される前記板材の表面に接触可能な長さ、または前記板材表面近傍に達する長さを有しており、
前記前面覆い部(42)と前記後面覆い部(54)の各々は、前記アーム部(28)に前記第2軸方向に揺動可能に吊り下げられるとともに、それ自体が前記第2軸方向に折れ曲がり可能に構成されている
請求項8乃至請求項11のいずれか1項に記載の熱切断機。
【請求項13】
前記板材(15)を切断するための切断ヘッド(38)と、
前記切断ヘッド(38)を支持し、前記テーブル(12)の前記板材(15)が載置される載置面に平行な第1軸方向(Y)に沿って移動する第1軸移動部(34)と、
前記第1軸移動部(34)を支持し、前記第1軸方向(Y)と垂直で且つ、前記載置面と平行な第2軸方向(X)に沿って移動する第2軸移動部(26)と、
前記第2軸移動部(26)に支持され、前記テーブル(12)の前記載置面に臨み、前記第1軸方向(Y)に沿った前記切断ヘッド(38)の切断時の移動可能範囲の略全体に亘ってのびた空間を少なくとも横四方から覆う覆い部(22、24、42、52、54)とを有する、
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の熱切断機。
【請求項14】
前記覆い部(22、24、42、52、54)は、前記空間を一側方から覆い開閉可能に設けられた側方覆い部(22、24、42、54)を有し、
前記側方覆い部(22、24、42、54)を開閉する駆動機構(47)をさらに備える、
請求項13に記載の熱切断機。
【請求項15】
前記駆動機構(47)を制御して、前記切断ヘッド(38)による熱切断の実行中には前記側方覆い部(22、24、42、54)を閉状態とし、前記切断ヘッド(38)による熱切断の停止中に前記側方覆い部(22、24、42、54)を開状態とする制御部(72)をさらに備える、
請求項14に記載の熱切断機。
【請求項16】
内部に空間を有するテーブル(12)上に載置された板材(15)を熱によって切断する熱切断機(10)において、
前記板材(15)を切断するための切断ヘッド(38)と、
前記切断ヘッド(38)を支持し、前記テーブル(12)の前記板材(15)が載置される載置面に平行な第1軸方向(Y)に沿って移動する第1軸移動部(34)と、
前記第1軸移動部(34)を支持し、前記第1軸方向(Y)と垂直で且つ、前記載置面と平行な第2軸方向(X)に沿って移動する第2軸移動部(26)と、
前記第2軸移動部(26)に支持され前記テーブル(12)の前記載置面に臨み、前記第1軸方向(Y)に沿った前記切断ヘッド(38)の切断時の移動可能範囲の略全体に亘ってのびた空間を少なくとも横四方から覆う覆い部(22、24、42、52、54)を備える、
熱切断機。
【請求項17】
前記覆い部(22、24、42、52、54)は、前記空間を上方および横四方から覆う、
請求項16に記載の熱切断機。
【請求項18】
前記第1軸移動部(34)は、前記覆い部(22、24、42、52、54)の外部に配置されている、
請求項17に記載の熱切断機。
【請求項19】
前記覆い部(22、24、42、52、54)は、前記空間を一側方から覆い開閉可能に設けられた側方覆い部(22、24、42、54)を有し、
前記側方覆い部(22、24、42、54)を開閉する駆動機構(47)をさらに備える、
請求項16乃至19のいずれか1項に記載の熱切断機。
【請求項20】
前記駆動機構(47)を制御して、前記切断ヘッド(38)による熱切断の実行中には前記側方覆い部(22、24、42、54)を閉状態とし、前記切断ヘッド(38)による熱切断の停止中に前記側方覆い部(22、24、42、54)を開状態とする制御部(72)をさらに備える、
請求項19に記載の熱切断機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−28785(P2009−28785A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−144659(P2008−144659)
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【出願人】(394019082)コマツ産機株式会社 (103)
【Fターム(参考)】