説明

熱及び光硬化性接着剤組成物およびこれを用いたゴムとポリエステルの積層体

【課題】接着強度が高く、且つ、耐久性に優れたゴム基材とポリエステルフィルム基材の積層体、および、これに用いることができる接着剤組成物を提供する。
【解決手段】ポリエステルまたは/およびポリエステルウレタン、アクリル基含有化合物、ポリイソシアネート化合物、及び光重合開始剤を含有する接着剤組成物を用いて、ゴム基材とポリエステル基材との積層体を形成する。前記ゴム基材がゴム100質量部に対しアクリル基含有化合物1〜40質量部と光重合開始剤0.2〜4質量部を配合してなる。ポリエステル基材に接着剤組成物を塗布して熱硬化させることでポリエステル基材表面に接着剤層を設けた後、接着剤層表面にゴム基材を載置して光照射することでゴム基材とポリエステル基材の接着を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤組成物、およびこれを用いたゴム基材とポリエステル基材の積層体に関する。更に詳しくは、本発明は、ゴム基材とプラスチック基材の接着に適する熱硬化性と光硬化性を組み合わせた接着剤組成物、およびこの接着剤組成物を用いて、アクリル基含有化合物と光重合開始剤を含有するゴム基材とポリエステル基材を接着してなる、接着性や耐久性に優れたゴム基材とポリエステル基材の積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にゴムは優れた弾力性を有しているため、印刷用版やシール材、クッション材等として使用されている。しかし、ゴムは柔軟であるため、印刷機や部品に組み込む場合の作業性に劣るため、ゴムに比べて硬く、寸法安定性が良好で装置に組み込み易いポリエステル基材と組み合わせた積層体として広い分野で利用されている。
【0003】
ポリエステル基材は結晶性であるか、または分子構造が緻密であり、かつ官能基も少ないために、極性の全く異なるゴムと接着させることは困難とされてきた。かかる問題を解決するために、前記積層体をタイヤコード製品に用いる場合には、一般に、ポリエステル基材をRFL処理する方法が行われているが、これには高温で長時間の処理が必要であった。他方、ポリエステル基材表面をコロナ処理や火炎処理するなどの方法があるが、その効果は僅かであり接着強度が不十分であった。
【0004】
感光性樹脂とポリエステル基材の接着剤として、ポリエステル化合物とポリイソシアネートの組合せが知られている。例えば、アクリル基含有化合物と光重合開始剤を配合したゴム層が、ポリエステルまたはポリウレタン構造をもつポリオールとポリイソシアネートの反応物を接着剤層としてポリエステルフィルムと積層された後、光照射して接着剤層を硬化させた積層体が知られている(特許文献1および2)。この方法においては、接着剤層内にアクリル基含有化合物や光重合開始剤などの光硬化成分を配合していないため、光照射するまでの積層体の保管中にゴム層から接着剤層に低分子化合物が移行し、光照射した後の接着強度にバラツキが発生するという問題があった。
【0005】
また、接着剤として、ポリエステル、ポリイソシアネート、アクリル基含有化合物、および光重合開始剤からなる組成物が知られている(特許文献3)。しかしながら、当該文献記載の方法では、前記組成物を支持体である基材の上に塗工し熱硬化と光硬化を併用した後に感光性樹脂を塗布するので、接着剤層と感光性樹脂層の密着性が十分発揮されなかった。
【0006】
従来、熱硬化性と光硬化性を有効に組み合わせた接着剤組成物は知られていない。また、従来の積層体は溶剤に対する耐久性も不満足なものであった。
【0007】
他方、ゴム層にアクリル基含有化合物を配合して、ポリエステルフィルムと重ねた後、電子線照射して積層体を得る方法が開示されている(特許文献4)。また、配向したポリエステルフィルムの表面にポリウレタン樹脂を積層した易接着性ポリエステルフィルムが開示されている(特許文献5)。これらの方法においても高温、高湿等の過酷な環境下や溶剤に対する接着耐久性に劣るという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−155410号公報
【特許文献2】特開2002−182396号公報
【特許文献3】特開昭60−146235号公報
【特許文献4】特開2008−120093号公報
【特許文献5】特開2010−264643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような状況の下、厚みや平面の寸法安定性が良好で、耐熱性を満足し、さらに、ポリエステル基材とゴム基材との接着強度が高く、且つ、溶剤に対する耐久性に優れた積層体の開発が強く望まれている。
【0010】
そこで本発明は、接着強度が高く、且つ、耐久性に優れたゴム基材とポリエステル基材の積層体、および、これに用いることができる接着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは鋭意検討した結果、接着剤組成物として特定のポリエステルまたは/およびポリエステルウレタンとアクリル基含有化合物を組合せて熱硬化性と光硬化性を有する組成物が接着強度と耐久性に優れ、この組成物をポリエステル基材表面に塗布して熱硬化のみを進行させて接着剤層を設けた後、その表面に、アクリル基含有化合物と光重合開始剤を含むゴム基材を載置して光照射することで接着強度と耐久性に優れた積層体が得られることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0012】
すなわち本発明は、ゴム基材とポリエステル基材との積層体であって、
前記ゴム基材がゴム100質量部に対しアクリル基含有化合物1〜40質量部と光重合開始剤0.2〜4質量部を配合してなるものであり、
前記ポリエステル基材に接着剤組成物を塗布して熱硬化させることで前記ポリエステル基材表面に接着剤層を設けた後、接着剤層表面にゴム基材を載置して光照射することで前記ゴム基材と前記ポリエステル基材が接着されており、
前記接着剤組成物が、(A)数平均分子量が10,000〜40,000で、水酸基を含有し、非晶性であるポリエステル、または/および、数平均分子量が10,000〜40,000で、水酸基を含有し、非晶性であるポリエステルウレタン、
(B)アクリル基含有化合物、
(C)ポリイソシアネート化合物、並びに
(D)光重合開始剤
を含有する、ゴム基材とポリエステル基材の積層体に関する。
【0013】
また本発明は、(A)数平均分子量が10,000〜40,000で、水酸基を含有し、非晶性であるポリエステル、または/および、数平均分子量が10,000〜40,000で、水酸基を含有し、非晶性であるポリエステルウレタン、
(B)アクリル基含有化合物、
(C)ポリイソシアネート化合物、並びに
(D)光重合開始剤
を含有する接着剤組成物にも関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る接着剤組成物は、ポリエステル基材と、アクリル基含有化合物を含むゴム基材との接着に用いることにより、ポリエステル基材に良好な接着性を発揮するポリエステルまたは/およびポリエステルウレタンとポリイソシアネートの熱硬化性により接着の耐久性を高め、さらに引き続き、接着剤組成物中のアクリル基含有化合物と光重合開始剤がゴム基材に含まれるアクリル基含有化合物と光照射により反応することにより接着強度および溶剤耐久性の高い積層体を形成することができる。ゴム基材にはアクリル基含有化合物と共に光重合開始剤も配合されるので、本発明によるデュアル硬化型の接着性を更に高め、耐久性を大幅に向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】
(ポリエステル基材)
本発明において用いられるポリエステル基材としては特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)等が挙げられる。なかでもPETが好ましい。ポリエステル基材は、ポリエステルを溶融押出後急冷固化し、更に延伸してフィルムの形にした基材であってもよいし、また、ポリエステルをシート状に溶融押出し未延伸シートの形にした基材であってもよい。例えば、結晶性のC−PETや非晶性のA−PET、PET−Gがある。
【0017】
本発明で使用するポリエステル基材の厚みは、特に限定はされないが、15μm以上500μm以下が好ましい。
【0018】
また、ポリエステル基材の取扱性を改良するために、ポリエステルには、必要に応じて微粒子フィラーや着色剤、ワックス類、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、熱安定剤、着色防止剤、紫外線吸収剤等を添加することができる。
【0019】
ポリエステル基材には、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理等の公知の接着性向上処理を行ってもよい。
【0020】
なお、接着性を改良したポリエステル基材(例えば易接着ポリエステルフィルム)としてポリエステル基材表面にアクリル樹脂やウレタン樹脂を塗ったものが従来この分野では使用されているが、本発明ではこのような処理を特に必要としない。経済的な観点から無処理またはコロナ処理のポリエステル基材を用いることが好ましい。
【0021】
(接着剤層)
接着剤層を構成する接着剤組成物は、(A)水酸基を含有し非晶性のポリエステルまたは/およびポリエステルウレタン、(B)アクリル基含有化合物、(C)ポリイソシアネート化合物、および(D)光重合開始剤を含有する。
【0022】
(A)水酸基含有非晶性ポリエステルは、例えば、多塩基酸成分とポリオール成分の反応を、両者の官能基が残るように行なうことで、従来から公知の反応方法で製造できる。多塩基酸成分としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、コハク酸、セバシン酸、アジピン酸、トリメリット酸、グルタル酸、無水マレイン酸、フマル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。ポリオール成分としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールAあるいは水素添加ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、トリメチロールプロパン、カプロラクトン変性ポリオール等が挙げられる。好適なポリエステルは、テレフタル酸およびイソフタル酸とエチレングリコールおよびネオペンチルグリコールからなる共重合ポリエステルである。
【0023】
本発明において(A)成分のポリエステルとしては非晶性のものを用いる。結晶性であると、有機溶剤に不溶となり接着剤として塗布できない。なお、ポリエステルを常温で有機溶剤に溶解した時に溶液が濁らない場合、そのポリエステルは非晶性であり、濁る場合は結晶性のものである。
【0024】
本発明のポリエステルは水酸基を含有し、数平均分子量が10,000〜40,000のもので、特に好ましくは15,000から25,000である。分子量が10,000より低いと、接着強度が低下する。40,000より高いものは工業的に入手し難い。水酸基価として3から20(KOHmg/g)で、特に好ましくは4から15である。
【0025】
また、上記ポリエステルとしては、市販品を用いることもできる。例えば、東洋紡績(株)製のバイロン200、300または500等や、ユニチカ(株)のユニチカエリテールUE3200、UE3300またはUE3600等が接着強度に優れる点から好適に挙げられる。
【0026】
(A)水酸基含有非晶性ポリエステルウレタンは、主鎖中にエステル結合とウレタン結合とを有する重合体である。上記ポリエステルウレタンとしては、例えば、ポリエステルポリオールとポリイソシアネート化合物とを反応させて得られる重合体が挙げられる。
【0027】
前記ポリエステルポリオールとしては、例えば、芳香族ジカルボン酸とポリオールを反応して得られるヒドロキシ基を有する化合物、ジメチロールブタン酸とポリオールを反応して得られるヒドロキシ基を有する化合物、アジピン酸、セバシン酸、長鎖ジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジカルボン酸を併用してポリオールを反応して得られるヒドロキシ基を有する化合物が挙げられる。上記ポリエステルポリオールに用いられるポリオールとしては、ポリエステルの製造に用いられる公知のポリオールを特に制限なく使用でき、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、長鎖グリコール等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
上記ポリイソシアネート化合物としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート等のTDI;ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート等のMDI;テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHMDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、トリフェニルメタントリイソシアネート、ノルボルナン骨格を有するジイソシアネート(NBDI)、および、これらの変成品等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
上記ポリエステルウレタンを製造する方法は、特に限定されず、上記ポリエステルポリオールと上記ポリイソシアネート化合物とを原料として、公知の方法に準じて製造できる。
【0030】
本発明において(A)成分のポリエステルウレタンとしては非晶性のものを用いる。結晶性であると、有機溶剤に不溶となり接着剤として塗布できない。なお、ポリエステルウレタンを常温で有機溶剤に溶解した時に溶液が濁らない場合、そのポリエステルは非晶性であり、濁る場合は結晶性のものである。
【0031】
上記ポリエステルウレタンの数平均分子量は、10,000〜40,000である。10,000未満であると、接着強度が低くなり、40,000を超えると溶液の粘度も高くなり工業的に入手し難い。水酸基価として3から20(KOHmg/g)で、特に好ましくは4から15である。
【0032】
また、上記ポリエステルウレタンとしては、市販品を用いることもできる。例えば、東洋紡績(株)製のバイロンUR1200、UR1400またはUR1600等が接着強度に優れる点から好適に挙げられる。
【0033】
(B)アクリル基含有化合物はアクリルモノマーまたは/およびアクリルオリゴマーであり、数平均分子量20,000以下のものである。分子量が20,000を超えると有機溶剤中での溶液の粘度が高くなり、扱いにくい。
【0034】
アクリルモノマーまたは/およびアクリルオリゴマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、アルキル(メタ)アクリレート(アルキル基は炭素数1〜16)、ベンジル(メタ)アクリレート、クロトン酸アルキル(アルキル基は炭素数1〜8)、桂皮酸アルキル(アルキル基の炭素数は1〜8)、N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド(アルキル基の炭素数は1〜4)、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、クロトン酸2−ヒドロキシエチル、桂皮酸2−ヒドロキシエチル、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−アミノアルキル(メタ)アクリレート(アルキル基の炭素数1〜4)などのアミノ基含有モノマー、グリシジル(メタ)アクリレート、ビニルメチルケトンなどの単官能アクリレートモノマー類、更に、エチレングリコールやプロピレングリコール、1、4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサメチレンジオール、ネオペンチルジオールなどのアルキレングリコールのジ(メタ)アクリレート類、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコールの(メタ)アクリレート類、両末端ヒドロキシポリブタジエンや両末端ヒドロキシポリイソプレン、両末端ヒドロキシブタジエンーアクリロニトリル共重合体、両末端ヒドロキシポリカプロラクトンなどの両末端に水酸基を有する重合体のジ(メタ)アクリレート、グリセリンや1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールアルカン、テトラメチロールアルカン、ペンタエリスリトールなどの3価以上の多価アルコールのポリアルキレングリコール付加物のジ、トリ、またはテトラ(メタ)アクリレートなどのオリゴ(メタ)アクリレート類、3価以上の多価アルコールのポリアルキレングリコール付加物のオリゴ(メタ)アクリレート類、1,4−シクロヘキサンジオールや1,4−ベンゼンジオールなどの環状多価アルコールのオリゴ(メタ)アクリレート類、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエポキシ(メタ)アクリレート、ポリウレタン(メタ)アクリレート、アルキッド樹脂(メタ)アクリレート、シリコーン樹脂(メタ)アクリレート、スピラン樹脂(メタ)アクリレートなどのオリゴ(メタ)アクリレートプレポリマー類、N,N−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N−エチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N−ヘキサメチレンビス(メタ)アクリルアミドなどのビス(メタ)アクリルアミド類、エチレングリコールジグリシジルエーテルやトリメチロ−ルプロパントリグリシジルエーテルなどの多価グリシジルエーテルに不飽和カルボン酸を付加反応させた多価(メタ)アクリレート、グリシジルメタアクリレートなどの不飽和エポキシ化合物とカルボン酸やアミンのような活性水素を持つ化合物の付加物、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートや1,1−ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネートのような不飽和イソシアネートと活性水素を持つ化合物の付加物などが挙げられる。特に好ましくは、エチレングリコールやプロピレングリコール等の多価アルコールとアジピン酸やテレフタル酸など多塩基酸からなるポリエステルポリオールとアクリル酸の縮合生成物が挙げられる。
【0035】
ポリエステル(メタ)アクリレートとしては、ポリオールと多塩基酸から成り、例えば、多価アルコールと多価カルボン酸とから合成されるポリエステルポリオールにアクリル酸および/またはメタクリル酸等を反応せしめて得られたもの等が挙げられる。
【0036】
ポリウレタン(メタ)アクリレートは、ポリエーテルポリオール又はポリエステルポリオールのようなポリオールとポリイソシアネートとの反応物と水酸基を含有する(メタ)アクリレートとの付加反応によって得られる。
【0037】
これらの化合物を1種または複数組合せて使用する。特に好ましくは、分子量600以下のアクリルモノマーと分子量300〜20,000のポリエステル(メタ)アクリレートまたはポリウレタン(メタ)アクリレートの組合わせが挙げられる。
【0038】
(C)ポリイソシアネート化合物として、脂肪族や芳香族の2価以上のポリイソシアネートを用いる。例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレン−1,6’−ジイソシアネート、トリレンジイソシアネートとヘキサントリオールの付加物、トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンの付加物、ポリオール変性ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5’−ナフタレンジイソシアネート、3,3’−ビトリエンー4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルフェニルメタンー4,4’−ジイソシアネート、メタフェニレンジイソシアネート等が挙げられる。さらに、これらのイソシアネート化合物の過剰量と、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ソルビトール、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の低分子活性水素化合物、またはポリエステルポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリアミド類等の高分子活性水素化合物とを反応させて得られる末端イソシアネート基含有化合物を挙げることができる。
【0039】
(D)光重合開始剤は、電子線(EB)やUV、可視光によりラジカル重合を開始する能力を持つ化合物である。好ましくは、照射装置が比較的入手し易いことや接着剤層の保管安定性などから、UV開始剤が挙げられる。例えば、芳香族ケトン類やベンゾインエーテル類、ビスアシルホスフィンオキサイド類等があり、具体的にはベンゾフェノンや1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾイン−n−プロピルエーテル、α−メチロールベンゾインメチルエーテル、2,2’−ジエトキシフェニルアセトフェノン、ジベンジル、ジアセチル、o−ベンゾイル安息香酸メチル、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。光重合開始剤は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0040】
光重合開始剤とともに増感剤を使用することができる。増感剤として、例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ミヒラーズケトン、4,4’−ジエチルアミノフェノン、及びp−ジエチルアミノ安息香酸エチルエステルなどのアミン類;エオシン及びチオシンなどの染料などが挙げられる。
【0041】
本発明において、(A)水酸基含有非晶性ポリエステルまたは/およびポリエステルウレタン100質量部に対して(B)アクリル基含有化合物の配合量は5から100質量部、好ましくは10から80質量部、より好ましくは15〜70質量部である。5質量部未満ではゴム層との接着強度が劣り、100質量部を超えるとポリエステル層との接着強度に劣る。
【0042】
(D)光重合性開始剤の配合量は(B)アクリル基含有化合物100質量部に対して1から30質量部、好ましくは1.3から15質量部である。1質量部未満では光照射時にアクリル基含有化合物の重合が不十分となり、十分な接着強度を達成できない。30質量部を超えると接着強度改善効果は飽和に達し経済的でない。
【0043】
(C)ポリイソシアネート化合物の配合量は(A)水酸基含有ポリエステルまたは/およびポリエステルウレタン100質量部に対して1から30質量部であり、好ましくは1.3から20質量部である。ポリイソシアネート化合物が少ないと接着耐久性に劣り、30質量部より多いとゴム層への接着強度が低下する。(B)アクリル基含有化合物として水酸基を含有するアクリル基含有化合物を使用する場合には、水酸基量と化学的に等量のポリイソシアネート化合物を追加して用いる。
【0044】
本発明の接着剤組成物には、必要に応じて、着色剤や酸化防止剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤等を配合することができる。また、空気中の酸素によるラジカル重合の阻害を防止するためにアミン化合物やチオール化合物、エーテル化合物などを添加することができる。
【0045】
本発明による接着剤組成物は有機溶剤に溶解して用いる。溶剤は、基材に塗布する際に塗布可能な粘度に調整するためにも重要である。溶剤は、例えばトルエン、メチルシクロヘキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの内、塗布乾燥作業性の面からはメチルエチルケトンの単独又はトルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチルの混合系が好ましい。
【0046】
接着剤組成物の有機溶剤溶液の濃度は5〜50質量%の範囲で、粘度や塗り易さから適宜選択される。有機溶剤に溶解した接着剤組成物は、ポリエステル基材に対し、通常の方法、例えば、バーコーターやグラビアコーター、ナイフコーター、ロールコーター等により塗布した後、室温から100℃で、10秒から1日の間で乾燥される。好ましくは50℃から100℃にて20秒から5分で乾燥後、室温から60℃にて1時間から24時間である。
【0047】
(ゴム基材)
本発明において、ゴム基材を形成するゴム成分は特に限定されない。例えば、ブタジエンゴム(BR)やイソプレンゴム(IR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBRやSBS)、スチレン・イソプレンゴム(SIS)、SBSやSISの水添ゴム(SEBS、SIBS)、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)、シリコンゴム(Q)、アクリルゴム(ACM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)などの合成ゴムや天然ゴム(NR)などが挙げられる。ゴムは通常、加硫剤や過酸化物、酸化防止剤、加工性改良助剤、顔料、補強性充填剤、離型剤、油展剤、可塑剤、増感剤などが配合されている。また、未加硫物や加硫物もいずれでも使用できる。本発明においては、ゴム成分の中に接着性改良成分であるアクリル基含有化合物と光重合開始剤が配合されている。
【0048】
上記アクリル基含有化合物としては、ラジカル反応に対して活性な反応基を含む化合物を用いるのが好ましい。この化合物としては、アクリル酸誘導体、メタクリル酸誘導体及びアリル誘導体等が例示されるが、中でも不飽和結合を2個以上有する誘導体が好ましい。これらの化合物は、ゴムの共架橋剤として広く使用されており、多価アルコールのアクリル酸エステルやメタクリル酸エステル、多価カルボン酸のアリルエステル、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート等が挙げられる。前記多価アルコールのアクリル酸エステルやメタクリル酸エステルは、2個以上のアルコール性水酸基を有する多価アルコールのアルコール性水酸基2個以上をアクリル酸やメタクリル酸でエステル化したエステル化合物であり、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオール(メタ)アクリレート、1、6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2,2’−ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−メタクリロキシジエトキシフェニル)プロン、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンジ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールテトラ(メタ)アクリレート、ダイマージオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。なお、前記の化合物は、いずれか一種を単独で用いてもよく、また二種以上を併用してもよい。
【0049】
上記アクリル基含有化合物の配合量は、全ゴム成分100質量部に対して1〜40質量部、好ましくは2〜30質量部である。1質量部未満ではポリエステル基材との接着強度が不十分となり、反対に40質量部を超えると上記接着強度の向上効果が飽和に達し、かつゴムの物性が低下する。
【0050】
ゴム成分に配合される光重合開始剤としては、接着剤組成物に使用されるものから選択される。その配合量は全ゴム成分100質量部に対して0.2から4質量部である。0.2質量部未満では光照射の際に十分な反応せず接着強度が不十分となり、4質量部を超えると接着強度向上は飽和に達し、不経済となる。
【0051】
ゴム成分にアクリル基含有化合物および光重合開始剤を配合する方法は、特に限定されず、例えばゴムコンパウンドを作製する際に2本ロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどのゴム練り機を用いて行ってもよい。また、ゴムを溶剤に溶解し、流延法で製膜する場合は、ゴムコンパウンドを溶媒に溶解して溶液を作製する、またはゴムを溶液にした後に配合剤を添加配合してもよい。
【0052】
ゴム基材の厚みや形状はいずれでもよい。一般に入手される厚みは0.2mm以上である。形状はシート状や板状などがある。
【0053】
(ゴム基材とポリエステル基材の積層体)
本発明においてゴム基材とポリエステル基材の積層体を製造する際に、まずポリエステル基材に接着剤組成物溶液を塗布、乾燥し熱硬化させてポリエステル表面に接着剤層を設け、その後、ゴム基材を貼り合わせた後に光を照射して光硬化させることで接着することを必須とする。
【0054】
ゴム基材とポリエステル基材の貼り合せ方法は特に限定されない。例えば、ゴム基材を予めシート状にした後、ポリエステル基材に貼り、光照射する方法や、あるいはゴム溶液を接着剤層塗布面のポリエステル基材面に塗工、乾燥してゴム層を形成した後、光を照射する方法がある。更に、光照射は一括または分割して行うことができる。また、光照射はポリエステル基材側、またはゴム基材側のいずれから照射してもよい。
【0055】
熱乾燥・硬化は室温から100℃で、10秒から1日の間で行われる。好ましくは50℃から100℃にて20秒から5分で乾燥後、室温から60℃にて1時間から24時間である。
【0056】
光として紫外線を用いて光硬化させる場合、高圧水銀灯、エキシマランプ、メタルハライドランプ等を備えた公知の紫外線照射装置を使用することができる。硬化の際の紫外線照射量は、好ましくは30〜1500mJ/cmである。照射量が30mJ/cm未満では硬化が十分ではなく、1500mJ/cmを超えると接着剤層の黄変や熱による基材の損傷などが起こる可能性がある。
【実施例】
【0057】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、もとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適宜変更を加えて実施することも可能であり、それらは、いずれも本発明の技術的範囲に含まれる。なお、実施例で採用した測定・評価方法は次の通りである。また、実施例中で「部」とあるのは「質量部」を意味し、「%」とあるのは断りのない限り「質量%」を意味する。
【0058】
1.接着強度の評価
ゴム基材・ポリエステル基材積層体(長さ150mm程度、幅25mm)のポリエステル基材とゴム基材との界面にナイフを差し込み、その部分に指で力を加えて界面剥離を発生させて、双方の面を露出させ、ポリエステル基材とゴム基材とをそれぞれ引張試験機のチャックにセットし、JIS K6854に記載の方法で、T型剥離強度を測定した。用いた引張試験機は、商品名「テクノグラフ」(ミネビア(株)製)であり、チャック間距離50mm、温度23℃、引張速度20mm/分の条件でT型剥離試験を行った。T型剥離時の最大強度を剥離強度とした。ポリエステル基材とゴム基材が剥離しない場合は、剥離困難として測定しなかった。剥離強度が8N/25mm以上のものを接着強度が優れるものとして評価した。好ましくは12N/25mm以上である。
【0059】
2.耐熱水接着性の評価
ゴム基材・ポリエステル基材積層体を50mm×25mmに切断した測定試料を、蒸留水400ccを入れた500ccの蓋付きの円筒状のガラス容器の中に、上記試料のゴム層が下側になるように水中に沈め、試料全体が水中に浸漬した状態で容器に蓋をした。試料の入った容器を、80℃に設定したオーブン中に入れ、24時間静置した。熱処理後、オーブンから容器を取り出し、速やかに試料を取り出して、ゴム層表面を試料端部から指腹で力を加えて10回擦り、ゴム層がポリエステル基材から剥離するかどうかを評価し、ゴム層が剥離しないものを〇、ゴム層が剥離するものを×とした。
【0060】
3.耐溶剤接着性の評価
ゴム基材・ポリエステル基材積層体を50mm×25mmに切断した測定試料を、トルエン400ccを入れた500ccの蓋付きの円筒状のガラス容器の中に、上記試料のゴム層が下側になるようにトルエン中に沈め、試料全体がトルエン中に浸漬した状態で容器に蓋をした。試料の入った容器を、25℃で24時間静置した後、速やかに容器から試料を取り出し、ゴム層表面を試料端部から指で力を加えて、ゴム層がポリエステル基材から剥離するかどうかを評価した。ゴム層が剥離しないものを〇、ゴム層が剥離するものを×とした。
【0061】
4.外観の評価
ゴム基材・ポリエステル基材積層体(長さ150mm程度、幅25mm)を80℃、2時間静置後、室温、1時間経過後、−20℃、2時間静置し、室温に戻した際のソリや変形を観察し、ソリや変形のないものを○、すこしでもあったものを×とした。
【0062】
合成例1 ポリエステルウレタン(A−1)の合成
攪拌機、温度計を付けた四つ口フラスコに乾燥したポリエステルポリオール(GK680、東洋紡績(株)製)100部を脱水したトルエン100gに溶解させ、ジメチロールブタン酸(日本化成(株)製)1.5部、ヘキサメチレンジイソシアネート(デュラネート、旭化成ケミカルズ(株)製)3.1部および触媒としてジブチルスズジラウレート(キシダ化学(株)製)0.05部を加え、80℃で5時間反応させた。反応終了後、脱水したメチルエチルケトン57部を加え、固形分40%のポリエステルウレタン(A−1)を得た。ポリエステルウレタン(A−1)は非晶性のものであった。得られたポリエステルウレタンの数平均分子量はGPCで測定したところ30,000、水酸基価は5.0KOHmg/gであった。
【0063】
合成例2 ポリエステルウレタン(A−2)の合成
攪拌機、温度計を付けた四つ口フラスコに乾燥したポリエステルポリオール(GK680、東洋紡績(株)製)100部を脱水したトルエン100gに溶解させ、ジメチロールブタン酸(日本化成(株)製)1.5部、ヘキサメチレンジイソシアネート(デュラネート、旭化成ケミカルズ(株)製)3.8部および触媒としてジブチルスズジラウレート(キシダ化学(株)製)0.05部を加え、80℃で5時間反応させた。反応終了後、脱水したメチルエチルケトン57部を加え、固形分40%のポリエステルウレタン(A−2)を得た。ポリエステルウレタン(A−2)は非晶性のものであった。得られたポリエステルウレタンの数平均分子量はGPCで測定したところ9,000、水酸基価は21KOHmg/gであった。
【0064】
合成例3 ポリウレタンアクリレート(B−1)の合成
攪拌機、温度計や滴下ロートを付けた四つ口フラスコに数平均分子量860のポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ジオール(アルドリッチ(株)製)86部(0.1モル)及びジブチルスズジラウレート(キシダ化学(株)製)0.5部を投入した。75℃に加熱し、イソホロンジイソシアネート66部(0.3モル)を3時間で均一に滴下し、反応させた。滴下完了後、10時間反応を継続した。これに2−ヒドロキシエチルアクリレート24部(0.2モル)、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.05部を投入し、さらに10時間反応させ、IR測定によりイソシアネートが消失したことを確認して反応を終了し、さらにメチルエチルケトン265部を投入し、固形分40%のポリウレタンアクリレート溶液(B−1)を得た。得られたポリウレタンアクリレートの数平均分子量3,800であった。
【0065】
合成例4 ポリウレタンアクリレート(B−2)の合成
攪拌機、温度計や滴下ロートを付けた四つ口フラスコに数平均分子量2000のポリカプロラクトントリオール(プラクセルL320AL、ダイセル(株)製)100部およびジブチルスズジラウレート(キシダ化学(株)製)0.5部を投入した。75℃に加熱し、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート(カレンズAOI、昭和電工(株)製)20部を投入した後3時間、反応させた。IR測定によりイソシアネートが消失したことを確認して反応を終了し、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.05部を投入しポリウレタンアクリレート溶液(B−2)を得た。得られたポリウレタンアクリレートの数平均分子量2,400であった。
【0066】
(実施例1)
接着剤溶液の作製
表1に示した組成の接着剤組成物を濃度が40%となるようにメチルエチルケトンで調整して接着剤溶液を得た。
【0067】
ゴム基材の作製
スチレン・ブタジエンブロック共重合体のタフプレンA(旭化成ケミカルズ(株)製)100部と液状ポリブタジエンPB1000(日本曹達(株)製)30部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート15部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(光重合開始剤)3部をトルエン800部に溶解した後、ガラス板上に塗工・乾燥し、乾燥厚みが0.4mmのシート(ゴム基材)を得た。
【0068】
ゴム基材とポリエステル基材の積層体の作製
厚み175μmのコロナ処理されたポリエステルフィルム「ルミラー125T60C」(東レ(株)製)のコロナ処理面に、前記接着剤溶液をバーコーターで乾燥後の膜厚が10μmとなるように塗布した。80℃、1分乾燥した後、50℃で20時間熟成した。その後、前記ゴム基材シートを乾燥接着剤面に重ね、ハンドローラーで約1kgの荷重で圧着した後、ポリエステルフィルム面よりUV照射ランプ(高圧水銀灯、オーク製作所(株)製OHD−110M)にて400mJ/cm照射して、ゴム基材とポリエステル基材の積層体を得た。
【0069】
得られた積層体の性能を表1に示すが、接着強度、耐熱水接着性、耐溶剤接着性、及び外観を満足するものであった。
【0070】
(比較例1)
実施例1の接着剤組成物において光重合開始剤および増感剤を用いなかった以外は、実施例1と同様にしてゴム基材とポリエステル基材の積層体を得た。得られた積層体の特性を表1に示す。本比較例1で得られたゴム基材・ポリエステル基材積層体は、光重合開始剤による光硬化がないため、接着強度、接着耐久性(耐熱水接着性、耐溶剤接着性)のいずれも劣っており低品質であった。
【0071】
(比較例2)
実施例1の接着剤組成物においてポリイソシアネートを用いなかった以外は、実施例1と同様にしてゴム基材とポリエステル基材の積層体を得た。得られた積層体の特性を表1に示す。本比較例2で得られたゴム基材とポリエステル基材の積層体は、熱硬化による接着がないため、接着強度、接着耐久性(耐熱水接着性、耐溶剤接着性)のいずれも劣っており低品質であった。
【0072】
(比較例3)
実施例1の接着剤組成物においてアクリル基含有化合物を用いなかった以外は、実施例1と同様にしてゴム基材とポリエステル基材の積層体を得た。得られた積層体の特性を表1に示す。本比較例3で得られたゴム基材とポリエステル基材の積層体は、アクリル重合物が無いため、接着強度、接着耐久性(耐熱水接着性、耐溶剤接着性)のいずれも劣っており低品質であった。
【0073】
(比較例4)
実施例1の接着剤組成物においてポリエステルウレタンを用いなかった以外は、実施例1と同様にしてゴム基材とポリエステル基材の積層体を得た。得られた積層体の特性を表1に示す。本比較例4で得られたゴム基材とポリエステル基材の積層体は、エステル成分が無いため、接着強度、接着耐久性(耐熱水接着性、耐溶剤接着性)、外観のいずれも劣っており低品質であった。
【0074】
(比較例5)
実施例1の接着剤組成物においてポリエステルウレタンを低い分子量のポリエステルウレタンに変えること以外は、実施例1と同様にしてゴム基材とポリエステル基材の積層体を得た。得られた積層体の特性を表1に示す。本比較例5で得られたゴム基材とポリエステル基材の積層体は、エステル成分の分子量が低いため、接着強度、接着耐久性(耐熱水接着性、耐溶剤接着性)のいずれも劣っており低品質であった。
【0075】
(比較例6)
実施例1の接着剤組成物においてポリエステルウレタンを微結晶性のポリエステルに変えること以外は、実施例1と同様にしてゴム基材とポリエステル基材の積層体を得た。得られた積層体の特性を表1に示す。本比較例6で得られたゴム基材とポリエステル基材の積層体は、ポリエステル成分の結晶性のため、外観に劣っていた。
【0076】
【表1】

【0077】
(実施例2)
実施例1の接着剤組成物において、ポリウレタンアクリレートB−1をポリエステルアクリレートに置き換えることおよびポリイソシアネート1をポリイソシアネート2に置き換えること以外は、実施例1と同様にしてゴム基材とポリエステル基材の積層体を得た。得られた積層体の特性を表2に示すが、接着強度や耐熱水接着性、耐溶剤接着性、外観を満足するものであった。
【0078】
(実施例3)
実施例2の接着剤組成物において、ポリエステルウレタンA−1を市販の非晶性ポリエステルに置き換える以外は、実施例2と同様にしてゴム基材とポリエステル基材の積層体を得た。得られた積層体の特性を表2に示すが、接着強度や耐熱水接着性、耐溶剤接着性、外観を満足するものであった。
【0079】
(実施例4)
実施例3の接着剤組成物においてポリエステルアクリレートをポリウレタンアクリレートB−1に置き換える以外は、実施例3と同様にしてゴム基材とポリエステル基材の積層体を得た。得られた積層体の特性を表2に示すが、接着強度や耐熱水接着性、耐溶剤接着性、外観を満足するものであった。
【0080】
(実施例5)
実施例3の接着剤組成物においてポリエステルアクリレートをポリウレタンアクリレートB−2に置き換える以外は、実施例3と同様にしてゴム基材とポリエステル基材の積層体を得た。得られた積層体の特性を表2に示すが、接着強度や耐熱水接着性、耐溶剤接着性、外観を満足するものであった。
【0081】
(実施例6)
実施例3の接着剤組成物においてポリエステルアクリレートを市販のポリカーボネートアクリレートに置き換える以外は、実施例3と同様にしてゴム基材とポリエステル基材の積層体を得た。得られた積層体の特性を表2に示すが、接着強度や耐熱水接着性、耐溶剤接着性、外観を満足するものであった。
【0082】
【表2】

【0083】
(実施例7)
ゴム基材の作製
EPDMゴム、エスプレン505(住友化学(株)製、エチレン50%、ジエン10%)100部とイルガノックス1010(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)1部、液状ポリブタジエンPB1000(日本曹達(株)製)10部、N,N′−フェニレンジマレイミド1.5部、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン3.0部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート20部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(光重合開始剤)3部をニーダーにて30分間混練した後、トルエン900部に溶解し、ガラス板上に塗工・乾燥し、乾燥厚みが0.4mmのシート(ゴム基材)を得た。
【0084】
ゴム基材とポリエステル基材の積層体の作製
厚み175μmのコロナ処理されたポリエステルフィルムのコロナ処理面に、実施例1の接着剤溶液をバーコーターで乾燥後の膜厚が10μmになるように塗布した。90℃、5分乾燥した後、50℃で20時間熟成した。その後、前記ゴム基材シートを乾燥接着剤面に重ね、ハンドローラーで約1kgの荷重で圧着した後、ポリエステルフィルム面よりUV照射ランプにて400mJ/cm照射して、ゴム基材とポリエステル基材の積層体を得た。
【0085】
得られた積層体の性能は、接着強度8N/25mmであり、耐熱水接着性、耐溶剤接着性、及び外観を満足するものであった。
【0086】
(比較例7)
実施例1の接着剤組成物においてゴム基材が1,6−ヘキサンジオールジアクリレートおよび1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンを含まないこと以外は、実施例1と同様にしてゴム基材とポリエステル基材の積層体を得た。得られた積層体はゴムと接着剤の界面から容易に剥離し、接着強度を測定できなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム基材とポリエステル基材との積層体であって、
前記ゴム基材がゴム100質量部に対しアクリル基含有化合物1〜40質量部と光重合開始剤0.2〜4質量部を配合してなるものであり、
前記ポリエステル基材に接着剤組成物を塗布して熱硬化させることで前記ポリエステル基材表面に接着剤層を設けた後、接着剤層表面にゴム基材を載置して光照射することで前記ゴム基材と前記ポリエステル基材が接着されており、
前記接着剤組成物が、(A)数平均分子量が10,000〜40,000で、水酸基を含有し、非晶性であるポリエステル、または/および、数平均分子量が10,000〜40,000で、水酸基を含有し、非晶性であるポリエステルウレタン、
(B)アクリル基含有化合物、
(C)ポリイソシアネート化合物、並びに
(D)光重合開始剤
を含有する、ゴム基材とポリエステル基材の積層体。
【請求項2】
(A)数平均分子量が10,000〜40,000で、水酸基を含有し、非晶性であるポリエステル、または/および、数平均分子量が10,000〜40,000で、水酸基を含有し、非晶性であるポリエステルウレタン、
(B)アクリル基含有化合物、
(C)ポリイソシアネート化合物、並びに
(D)光重合開始剤
を含有する接着剤組成物。


【公開番号】特開2012−218170(P2012−218170A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82559(P2011−82559)
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【出願人】(311006766)坂井化学工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】