説明

熱収縮性フィルム及び熱収縮性積層フィルム

【課題】フィルムを薄くしたとき、剛性を向上させ、印刷溶剤による劣化が少なく伸び特性を維持させ、自然収縮性を抑え、低温収縮性の優れ、品質上のバランスを良好とする。
【解決手段】所定のスチレン−ブタジエン水素添加ブロック共重合体からなる(a)成分、所定のスチレン−ブタジエンブロック共重合体からなる(b)成分、及び所定のスチレン系エラストマーからなる(c)成分を含有し、かつ、エチレン単位及びブテン単位の合計量が4〜20質量%である樹脂混合物を少なくとも1軸に延伸したフィルムであり、所定のMD引張弾性率及びTD引張弾性率の平均値を有し、上記フィルムの印刷前のMD引張伸び率をA(%)とし、上記フィルムをグラビア印刷した後の印刷部のMD引張伸び率をB(%)としたとき、A及びBが下記の関係を有する熱収縮性フィルムを用いる。
800≧A≧200 かつ 1.0≧B/A≧0.8

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、印刷後のフィルムの伸び率を保持し、自然収縮性を低く抑え、印刷後の溶剤収縮を低く抑え、低温収縮性に優れたラベル用として品質上のバランスが良好な多層熱収縮性ポリスチレン系フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
収縮包装、収縮結束包装、プラスチック容器の収縮ラベル、ガラス容器の破壊飛散防止包装、キャップシール等に広く利用される熱収縮性フィルムの材質としては、ポリ塩化ビニル(PVC)が最もよく知られている。これは、PVCから作られた熱収縮性フィルムが、機械強度、剛性、光学特性、収縮特性等の実用特性、及びコストも含めて、ユーザーの要求を比較的広く満足するからである。しかし、PVCは廃棄物処理の問題等があることから、PVC以外の材料からなる熱収縮性フィルムが要望されていた。
【0003】
このようなPVC以外の材料の一つとして、ポリエステル系樹脂を主たる材料としたポリエステル系熱収縮性フィルムや、ポリスチレンを含む共重合体を主たる材料としたポリ熱収縮性フィルムが提案され使用されている。上記ポリエステル系熱収縮性フィルムは室温の剛性、いわゆる腰の強さが良好で、自然収縮(常温よりやや高い温度、例えば夏場においてフィルムが本来の使用前に少し収縮してしまうこと)率が小さく自然収縮性は非常に良好である。
【0004】
また、ポリ熱収縮性フィルムとしては、例えばスチレン−ブタジエンブロック共重合体とスチレン−ブチルアクリレート共重合体の樹脂混合物からなる熱収縮性硬質フィルムが特許文献1に記載されている。さらに、内外両層がスチレン−ブタジエンブロック共重合体及びポリスチレンを含有する樹脂層からなり、中間層がポリスチレン樹脂層からなる熱収縮性多層フィルムが特許文献2に記載されている。
【0005】
また、両外層として、スチレン−ブタジエンブロック共重合体とポリスチレンやスチレン−ブチルアクリレートとの樹脂混合物から構成され、中間層として、スチレン−ブタジエンブロック共重合体とスチレン−ブチルアクリレート共重合体との樹脂混合物や、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−ブチルアクリレート共重合体、及びスチレン−ブタジエンブロック共重合体水素添物の樹脂混合物からなる積層構造を有する熱収縮性多層フィルムが、特許文献3〜5等に記載されている。
【0006】
しかし、上記のポリエステル系熱収縮性フィルムの場合、PVC系と比較すると、加熱収縮時に収縮斑やしわが発生しやすいとの問題があった。
【0007】
また、特許文献1に記載のポリスチレン系熱収縮性フィルムは、印刷後の伸びが満足できるものではなかった。さらに、特許文献2に記載のポリスチレン系熱収縮性フィルムにおいては、中間層としてGPPS(汎用ポリスチレン)を用いると、収縮仕上がりや伸びが十分でなく、また、HIPS(耐衝撃性ポリスチレン)を用いると、透明性に実用上の問題があった。
【0008】
さらに、特許文献3〜5に記載のポリスチレン系熱収縮性フィルムは、自然収縮率、低温収縮性、腰の強さ等にある程度の改善がみられるものの、伸び特性、中でもラベルとして印刷された後の伸び特性が、主収縮方向及びその直角方向ともに満足できるものではなかった。主収縮方向の伸び特性が不足すると、ラベル装着物が落下時にミシン目で破れてしまって商品価値を損なうという問題が生じるおそれがある。また、主収縮方向と直角方向の伸び特性が不足すると、印刷工程やスリーブ加工工程等でのキレを生じるという実用上の問題がある。さらに、印刷時の溶剤等の影響でフィルムが縮むという、溶剤収縮が生じる場合があり、印刷工程からスリット加工工程にかけて、印刷後にフィルムが幅方向に収縮して規定幅でスリットできない問題が発生することがある。
【0009】
これに対し、ポリスチレン系熱収縮性フィルムとして、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBS)を主たる材料とするフィルムが検討されているが、これは、上記のPVCフィルムに比べて収縮仕上がり性は良好であるものの、より低温収縮性を付与すると、自然収縮率が大きくなって、スリーブ状に加工したラベル折り径が減少し、ラベルを容器に被覆できにくくなるという問題があった。
【0010】
ところが、近年ますます需要の向上が見込まれているペットボトルのラベル用途等では、比較的短時間、かつ、比較的低温において高度な収縮仕上がり外観が要求されるようになってきた。さらに、これらに加えて、自然収縮率の小さいフィルムが要求されるようになってきた。これは、最近のペットボトル及びビンにおけるシュリンクフィルムのラベリング工程が、主に蒸気シュリンカーが主流となっており、無菌充填、内容物の温度による品質低下の回避、非耐熱ボトルを使用するために、上記の蒸気シュリンカーの温度を下げる必要が出てきているためである。一方で、この要求に応えるために低温収縮性を付与すると、自然収縮が大きくなりやすく、前記の問題を発生させるために低温収縮性と自然収縮を抑えることの両立が求められている。
【0011】
上記の問題に対し、ペットボトルのラベル用途等に対しては、主に低温収縮性を兼ね備えつつ、自然収縮を抑えることが可能であるポリエチレンテレフタレート(PET)製のシュリンクフィルム(以下、「PETシュリンクフィルム」と称する。)が使用されてきている。しかし、PETシュリンクフィルムでは、低温収縮性は良好なものの、やはり収縮仕上がり性に問題があり、収縮仕上がり性に優れたSBS系フィルムでの開発が望まれていた。
【0012】
また、上記の問題に対し、SBS系のフィルムにおいても、特定のブロック構造を有するSBSをブレンド等することにより、低温収縮性を付与しながら実用的に問題のないレベルまで自然収縮を低下させることが可能となった(特許文献6参照)。
【特許文献1】特開昭61−41544号公報
【特許文献2】特開平9−272182号公報
【特許文献3】特開2000−185373号公報
【特許文献4】特開2000−94598号公報
【特許文献5】特開2000−238192号公報
【特許文献6】特開2003−128861号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、近年コストカットの要求から、厚さを薄くしたい市場の要望が多くなってきた。これまでの技術では、薄くすると、剛性の著しい低下、印刷後の伸び特性の低下、印刷の溶剤による溶剤収縮性等について不満足等の問題が生じ、その部分について更なる改良を求められている。
【0014】
そこで、この発明は、フィルムを薄くした場合において、剛性を大幅に向上させ、印刷しても印刷溶剤による劣化が少なく伸び特性を維持でき、かつ自然収縮性を低く抑え、かつ、低温収縮性の優れたラベル用として品質上のバランスが良好な熱収縮性ポリスチレン系フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明は、下記の(a)成分、(b)成分及び(c)成分を含有し、この(a)成分、(b)成分及び(c)成分の合計量に対するエチレン単位及びブテン単位の合計量が4〜20質量%である樹脂混合物を少なくとも1軸に延伸したフィルムであり、MD引張弾性率及びTD引張弾性率の平均が1600〜2500MPaであり、上記フィルムの印刷前のMD引張伸び率をA(%)とし、上記フィルムをグラビア印刷した後の印刷部のMD引張伸び率をB(%)としたとき、A及びBが下記の関係を有する熱収縮性フィルムを用いることにより、上記課題を解決したのである。
800≧A≧200 かつ 1.0≧B/A≧0.8
(a)成分:スチレン−ブタジエンブロック共重合体中の全構成単位に対するスチレン単位の含有量は、60〜80質量%であり、
上記スチレン−ブタジエンブロック共重合体中のブタジエン単位の二重結合が水素添加されたスチレン−ブタジエン水素添加ブロック共重合体。
(b)成分:スチレン単位の含有量が85質量%以上であるスチレン−ブタジエンブロック共重合体。
(c)成分:共役ジエン単位の含有量が40質量%を超えるスチレン系エラストマー。
【発明の効果】
【0016】
この発明によると、所定のスチレン−ブタジエン水素添加ブロック共重合体と、所定のスチレン−ブタジエンブロック共重合体とを用いるので、腰が強く、かつ、印刷後の劣化が少ないフィルムを得ることができる。
【0017】
一般に、フィルム厚を薄くすると、腰や印刷後のキレ性において問題となることがあるが、この発明にかかるフィルムは、その点において良好である。さらに、この発明にかかるフィルムは、自然収縮を低くおさえることができるので印刷後の溶剤による収縮を低くおさえることができ、かつ、低温収縮性を損なうことはない。以上より、この発明にかかるフィルムは、ラベル用として優れた品質バランスのとれたフィルムとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、この発明について詳細に説明する。
この発明は、下記の(a)成分、及び(b)成分、並びに必要に応じて(c)成分を含む樹脂混合物からなる(I)層を少なくとも1軸に延伸した単層からなる熱収縮性フィルム(以下、単に「単層フィルム」と称する。)、又はこの(I)層を含む少なくとも3層の積層体を少なくとも1軸に延伸した熱収縮性積層フィルム(以下、単に「積層フィルム」と称する。)にかかる。
【0019】
[(a)成分]
上記の(a)成分とは、スチレン−ブタジエンブロック共重合体中の二重結合を水素添加して得られる水素添加誘導体をいう。このスチレン−ブタジエンブロック共重合体中の全構成単位に対するスチレン単位の含有量は、60質量%以上80質量%以下がよく、65質量%以上75質量%以下が好ましい。60質量%より少ないと、フィルムの透明性が悪化したり、十分な腰強さを付与できない場合がある。一方、80質量%より多いと、伸びが不足する場合があり、十分な耐キレ性を付与できず、またポリマー作製上の観点からは水素添加における還元触媒の安全化効果が低く好ましくない。
【0020】
未水添のスチレン−ブタジエンブロック共重合体では、ブタジエンブロックの存在により、分子レベルでは常温でも分子運動しやすくなり、印刷をした際の印刷溶剤の浸透性が高く、その結果、分子の絡み合いが減少するため、耐キレ性が悪化する傾向がある。また、印刷溶剤が浸透して耐キレ性が悪化しても、印刷前のフィルムに過度に伸び率を付与しておけば印刷後の耐キレ性には対応できるが、そのようにすると剛性が付与できなかった。これに対し、上記の水添を行うことにより、ブタジエンブロックに、エチレン構造部を付与することができ、低結晶性を付与できる。その結果、分子運動が拘束され、印刷溶剤を浸透しにくくし、かつ高剛性を付与することが可能となる。
【0021】
また、水添される前のスチレン−ブタジエンブロック共重合体中のブタジエン単位には、ブタジエンが1位及び4位の炭素で重合し、2位及び3位の炭素間に二重結合を有する構造を有するもの、及び、ブタジエンが1位及び2位の炭素(又は、3位及び4位の炭素)で重合し、3位及び4位の炭素間(又は、1位及び2位の炭素間)に二重結合を有する構造を有するものの2種類が存在する。前者の2位及び3位の炭素間に二重結合を有する構造を有するものは、二重結合の位置から、シス体とトランス体の2つの異性体構造を有する(以下、この構造を、「シス構造」又は「トランス構造」と称する。)。一方、後者の3位及び4位の炭素間(又は、1位及び2位の炭素間)に二重結合を有する構造を有するものは、得られるスチレン−ブタジエンブロック共重合体において、二重結合は側鎖の位置に配されることとなる(以下、この構造を「ビニル構造」と称する。)。
【0022】
上記のシス構造、トランス構造、及びビニル構造の3種の構造の合計量に対し、ビニル構造の割合は、得られるスチレン−ブタジエンブロック水素添加共重合体の結晶性に影響を与え、ひいては、得られる単層フィルム又は積層フィルムの耐溶剤性の観点から、5〜50%がよく、10〜45%が好ましい。
【0023】
さらに、上記(a)成分の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による重量平均分子量(Mw)で、3万〜30万、好ましくは5万〜20万の範囲である。3万未満では十分な伸びを付与できず耐キレ性に劣り、一方、30万を超えると溶融押出工程での圧力上昇を招き生産性が悪化したり、品質上においても厚み振れが大きくなる傾向があり、好ましくない。
【0024】
さらに、上記(a)成分の貯蔵弾性率(E’)は、50℃で、3.0×10Pa以上9.0×10Pa以下が好ましく、3.5×10Pa以上8.5×10Pa以下がより好ましい。3.0×10Paより低いと、常温域でのフィルムの腰強さが十分に確保されない場合があり、一方、9.0×10Paより高いと印刷前のフィルムに伸びが付与できず、耐キレ性の確保が不十分となる傾向がある。
【0025】
さらにまた、上記(a)成分の損失弾性率(E”)は、そのピークを0℃以下に少なくとも一つ有することが必要である。これは0℃より高い温度でピークが存在しても、またピークが存在しなくても伸びを十分付与できないからである。
【0026】
[(b)成分]
上記(b)成分とは、所定量のスチレン単位を含有するスチレン−ブタジエンブロック共重合体をいう。このスチレン−ブタジエンブロック共重合体のスチレン単位の含有量が80質量%以上がよく、85質量%以上が好ましい。80質量%より少ないと、十分な腰強さを付与できず、また自然収縮性も大きくなる傾向がある。一方、含有量の上限は特に定めないが、97質量%より多いと、所定の低温収縮性を付与できず、収縮不足等の問題が発生する場合がある。ただ、その場合は、後述する収縮工程における条件を適性化することで対応することが可能である。
【0027】
上記(b)成分の貯蔵弾性率(E’)は、50℃で1.0×10〜3.0×10Pa、かつ、100℃で1.0×10〜1.0×10Paであることがよく、50℃で1.2×10〜2.8×10Pa、かつ、100℃で2.0×10〜9.0×10Paであることが好ましい。50℃で1.0×10Paより低いと、剛性が低くなる傾向があり、一方、3.0×10Paより高いと、低温収縮性が付与できない場合がある。また、100℃で1.0×10Paより高くなると、十分な収縮性が付与できない場合があり、一方、1.0×10Paより低いと、一定の温度変化に対して収縮率の変化が大きくなり、PETボトルラベルに被覆した際の収縮仕上がり等においてシワ等が発生する場合がある。
【0028】
上記(b)成分のGPC測定による重量平均分子量(Mw)は、3万〜30万がよく、好ましくは5万〜20万の範囲である。3万未満では、十分な伸びを付与できず耐キレ性に劣る場合があり、一方、30万を超えると、溶融押出工程での圧力上昇を招き生産性が悪化したり、品質上においても厚み振れが大きくなる傾向がある。ただ、この場合、50万を超えるような高分子成分を一部混ぜることで耐キレ性を付与させることが可能である。
【0029】
[(c)成分]
上記(c)成分は、上記(a)成分及び(b)成分を含む樹脂混合物に、必要に応じて、混合させることができる。
【0030】
この(c)成分とは、所定量の共役ジエン単位を含有するスチレン系エラストマーをいう。このスチレン系エラストマーの共役ジエン単位の含有量は、40質量%より多いことがよく、50質量%より多いことが好ましい。40質量%以下だと、伸びを十分に与えられなくなるおそれがある。このようなスチレン系エラストマーは、上記の共役ジエン単位の含有割合を有するものであれば、一般に市販されているものを使用することができる。
【0031】
[単層フィルム及び積層フィルム]
上記単層フィルムを構成する層、及び上記積層フィルムを構成する複数の層のうち少なくとも1層を構成する層は、後述する(I)層よりなる。また、この発明にかかる積層フィルムは、この(I)層に加え、後述する(II)層を有する、全体として少なくとも3層構造を有するフィルムである。この場合、上記(I)層の少なくとも1層は、積層構造中の中間層を構成し、また、上記(II)層は、積層構造の少なくとも一方の外層を構成する。
【0032】
[(I)層]
上記(I)層は、上記(a)成分、及び(b)成分所定割合で混合した樹脂混合物からなる層である。上記各成分の混合割合は、質量比で、(a)/(b)=20〜50/80〜50がよく、30〜45/70〜55が好ましい。
【0033】
上記の(a)成分が20質量%より少ないと、耐キレ性が低下する傾向がある。その場合、代わりに(c)成分を増量することは可能であるが、それでは剛性が低下し、また、耐キレ性において印刷後の伸び率が低下する傾向がある。一方、(a)成分が50質量%より多いと、剛性が低下しまた自然収縮性が大きくなる傾向がある。
【0034】
さらに、上記の(b)成分が50質量%より少ないと、剛性が低下し、また、自然収縮性が大きくなる傾向がある。一方、80質量%より多いと、剛性は付与でき自然収縮性も小さいが、耐キレ性が低下する傾向がある。
【0035】
また、上記の(I)層を構成する樹脂組成物には、(c)成分は必須成分ではなく、0質量%でもよいが、印刷前のフィルムで伸び率が不足する場合に添加することが好ましい。添加する場合は、(I)層を構成する上記(a)成分と(b)成分と(c)成分との合計量に対し、3質量%以上添加することが好ましく、5質量%以上とすることがより好ましい。一方、上記の(c)成分の添加量の上限は、25質量%がよく、20質量%が好ましい。25質量%より多いと、剛性が低下し、また印刷をした際に、ゲルによるインキ抜けを引き起こしてしまうことがある。このインキ抜けは、上記(c)成分の原料作製時やフィルム製膜加工時の溶融状態の時にブタジエンの不飽和二重結合に起因するゲルが発生し、フィルムに局所的に凹凸が発生するため、発生する。
【0036】
ところで、上記(I)層を構成する(a)成分は、上記の通り、スチレン−ブタジエン共重合体中のブタジエン単位を水素添加したものである。この水素添加により、ブタジエン単位に残る二重結合は、一重結合となるが、このとき、上記のビニル構造は、エチレン単位を形成し、一方、上記のシス構造及びトランス構造は、ブテン単位を形成する。
【0037】
このエチレン単位及びブテン単位の合計量は、上記(a)成分及び(b)成分の合計量に対し、4〜20質量%がよく、6〜18質量%が好ましく、8〜16質量%がより好ましい。エチレン単位及びブテン単位の合計量が4質量%より少ないと、高剛性を得ることが困難となりやすく、また、印刷後の引張伸び率が低下する傾向がある。一方、20質量%より多いと、印刷前の無地フィルムでの引張伸び率が低下する傾向があり、透明性が悪化する傾向がある。
【0038】
また、上記のエチレン単位は、得られる熱収縮性フィルム中の結晶性に影響を与える。このため、上記のエチレン単位及びブテン単位の合計量に対する、ブテン単位の含有割合は、5〜50%がよく、10〜45%が好ましい。ブテン単位の含有割合が5%より少ないと、所望の水添スチレン−ブタジエンブロック共重合体が得られず、また、50%より多いと、結晶性が低下し、高剛性が得られない場合がある。
【0039】
上記のようなエチレン単位及びブテン単位の合計割合を満たすには、上記(I)層を構成する(a)成分であるスチレン−ブタジエン水素添加ブロック共重合体の水素添加割合が、90%以上であればよく、95%以上であれば好ましい。90%より低いと、得られるフィルムに十分な腰強さが付与できない場合があり、またグラビア印刷法による印刷後の伸びの低下が大きく、印刷後の工程で破断が発生するおそれがある。また、水素添加割合の上限は、特に限定はなく、100%以下であればよく、好ましくは99.5%である。
【0040】
[(II)層]
上記(II)層は、スチレン単位及びブタジエン単位を有するブロック共重合体や、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂等からなる層であり、その中でも、下記の(d)成分からなる層が好ましい。
【0041】
[(d)成分]
この(d)成分は、スチレン単位及びブタジエン単位を主構成単位として含有するスチレン−ブタジエンブロック共重合体、そのスチレン−ブタジエンブロック共重合体の水添物等の誘導体、複数種の上記スチレン−ブタジエンブロック共重合体の樹脂混合物、複数種の上記スチレン−ブタジエンブロック共重合体の水添物の樹脂混合物、単種又は複数種の上記スチレン−ブタジエンブロック共重合体及びその水添物の樹脂混合物等をいう。この(d)成分の具体例としては、下記の(d1)成分や(d2)成分があげられる。
【0042】
[(d1)成分]
この(d1)成分とは、上記の(a)成分及び(b)成分を含有し、かつ、上記(I)層を構成する樹脂混合物とは異なる混合割合を有する樹脂組成物をいう。樹脂混合物間の組成が近いので、(I)層と(II)層との間の接合性が高くなる傾向を有する。この(d1)成分から(II)層を構成する場合、この混合割合は、後述するように、目的とする積層フィルムの収縮応力等に合わせて調整することができる。
【0043】
この(d1)成分中の(a)成分及び(b)成分の混合割合は、質量比で、(a)/(b)=20〜50/80〜50がよく、30〜45/70〜55が好ましい。この理由は、上記の(I)層の場合と同様である。
【0044】
また、この(d1)組成物中の(a)成分のエチレン単位およびブテン単位の合計量は、上記した(I)層の場合と同様に、上記(a)成分及び(b)成分の合計量に対し、4〜20質量%がよく、6〜18質量%が好ましく、8〜16質量%がさらに好ましい。この範囲が好ましい理由は、上記と同様である。
【0045】
[(d2)成分]
この(d2)成分とは、下記(e)成分及び上記(b)成分を含む樹脂混合物(以下、「(d2−1)成分」と称する。)、又は下記(e)成分、上記(a)成分及び上記(b)成分を含む樹脂混合物(以下、「(d2−2)成分」と称する。)をいう。
【0046】
[(e)成分]
上記(e)成分は、積層フィルムの表裏層に使用されるスチレン−ブタジエンブロック共重合体である。このスチレン−ブタジエンブロック共重合体を構成するスチレン単位の含有量は、このスチレン−ブタジエンブロック共重合体を構成するモノマー全量に対して65質量%以上が好ましく、67質量%以上がより好ましい。65質量%より少ないと十分な腰強さを付与できず、また自然収縮性も大きくなる。一方、上限は、80質量%以下が好ましく、78質量%以下がより好ましい。80質量%より多いと耐キレ性が低下する傾向がある。なお、この(e)成分を用いる場合、上記(I)層の厚みは、全層に対して70%以上とすることが好ましい。
【0047】
また、この(e)成分の貯蔵弾性率(E’)は、0℃で5.0×10Pa以下が必要で、4.0×10Pa以下が好ましい。貯蔵弾性率(E’)が0℃で5.0×10Paより大きいと剛性は付与できるが、耐キレ性が低下する傾向がある。
【0048】
さらに、この(e)成分の損失弾性率(E”)の低温側の少なくとも1つのピーク温度が、−30℃以下であることが必要である。−30℃以下にピークを有さない場合は、耐キレ性の付与が困難となる傾向がある。
【0049】
また、この(e)成分のGPC測定による重量平均分子量(Mw)は、3万〜30万がよく、好ましくは5万〜20万の範囲である。3万未満では十分な伸びを付与できず、耐キレ性に劣る傾向があり、一方、30万を超えると溶融押出工程での圧力上昇を招き生産性が悪化したり、品質上においても厚み振れが大きくなる傾向がある。
【0050】
上記(d2−1)成分は、上記(e)成分及び上記(b)成分を、質量比で(e)成分/(b)成分=20〜50/80〜50の割合で含むことが好ましく、25〜45/75〜55の割合で含むことがより好ましい。(e)成分が20質量%より少ないと、印刷前の無地フィルムでの引張伸び率が低下する場合がある。一方、(e)成分が50質量%より多いと、剛性が低下したり、自然収縮性が大きくなったりする場合がある。
【0051】
また、上記(d2−2)成分は、上記(e)、上記(a)成分及び上記(b)成分を、質量比で((a)成分+(e)成分)/(b)成分=20〜50/80〜50の割合で含むことが好ましく、25〜45/75〜55の割合で含むことがより好ましい。(a)成分と(e)成分の合計量が20質量%より少ないと、印刷前の無地フィルムでの引張伸び率が低下する場合がある。一方、(a)成分と(e)成分の合計量が50質量%より多いと、剛性が低下したり、自然収縮性が大きくなったりする場合がある。
【0052】
ところで、上記(d2−2)成分において、(a)成分と(e)成分の混合比は、特に制限はないが、収縮応力の観点からは、(a)成分/(e)成分=10〜90/90〜10が好ましく、20〜80/80〜20がより好ましい。
【0053】
[(c)成分]
上記の(d1)成分を構成する樹脂混合物、及び上記(d2)成分を構成する樹脂混合物には、必要に応じて、上記(c)成分を添加することができる。
【0054】
上記(c)成分は必須成分ではなく、0質量%でもよいが、印刷前のフィルムで伸び率が不足する場合に添加することが好ましい。(d1)成分に添加する場合は、(d1)成分を構成する上記(a)成分と(b)成分と(c)成分との合計量に対し、3質量%以上添加することが好ましく、5質量%以上とすることがより好ましい。一方、上記の(c)成分の添加量の上限は、25質量%がよく、20質量%が好ましい。また、(d2)成分に添加する場合は、(d2)成分を構成する上記(e)成分と(b)成分と(c)成分との合計量、又は上記(e)成分と(a)成分と(b)成分と(c)成分との合計量に対し、3質量%以上添加することが好ましく、5質量%以上とすることがより好ましい。一方、上記の(c)成分の添加量の上限は、25質量%がよく、20質量%が好ましい。
【0055】
(d1)成分に加える場合であっても、(d2)成分に加える場合であっても、(c)成分の添加量が、25質量%より多いと、剛性が低下し、また印刷をした際に、ゲルによるインキ抜けを引き起こしてしまうことがある。このインキ抜けは、上記(c)成分の原料作製時やフィルム製膜加工時の溶融状態の時にブタジエンの不飽和二重結合に起因するゲルが発生し、フィルムに局所的に凹凸が発生するため、発生する。
【0056】
[スチレン−ブタジエンブロック共重合体及びその重合方法]
上記の(a)成分の水添前のスチレン−ブタジエンブロック共重合体、(b)成分のスチレン−ブタジエンブロック共重合体、(d)成分のスチレン−ブタジエンブロック共重合体、及び(e)成分のスチレン−ブタジエンブロック共重合体の、それぞれのポリマー構造は、この発明で規定した要件を満足する範囲であれば、特に規定はなく、スチレンブロックが分子鎖中に不規則に存在するような構造、或いはスチレンブロックが分子鎖の両末端に特定して存在するような構造であってもよい。また共重合体構造としては、線状ブロック共重合体、ラジアル共重合体、又はこれらのポリマー構造の樹脂混合物を使用できる。
【0057】
[重合条件]
これらのスチレン−ブタジエンブロック共重合体は、炭化水素溶媒中、重合開始剤存在下、スチレン及びブタジエンを共重合することにより製造される。
【0058】
上記重合開始剤としては、有機リチウム化合物等を用いることができる。この有機リチウム化合物としては、分子中に1個以上のリチウム原子を結合した有機モノリチウム化合物、有機ジリチウム化合物、有機ポリリチウム化合物等があげられる。この有機リチウム化合物の具体例としては、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム等があげられる。これらは1種のみならず2種以上混合しても良い。
【0059】
上記の重合開始剤の使用量は、得られるスチレン−ブタジエンブロック共重合体の分子量が、それぞれ、上記した範囲内となるように選択されるが、生産性の点から、適正な量に制限されることが好ましい。
【0060】
上記の炭化水素溶媒としては、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素等を使用でき、これらは1種のみならず2種以上混合してもよい。上記脂肪族炭化水素としては、ブタン、ペンタン、ヘキサン、イソペンタン、ヘプタン、オクタン等があげられる。上記脂環式炭化水素としては、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等があげられる。上記芳香族炭化水素としては、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等があげられる。
【0061】
上記共重合の重合温度は、一般的に、−10〜150℃がよく、好ましくは40〜120℃である。また、上記共重合に要する時間は条件によって異なるが、通常は10時間以内であり、特に好適には0.5〜5時間である。さらに、上記共重合の雰囲気は、窒素ガス等の不活性ガス等で置換するのが望ましい。
【0062】
上記共重合の重合圧力は、上記重合温度範囲でモノマー及び溶媒を液層に維持するに充分な圧力の範囲で行えばよく、特に制限されるものではない。ただ、重合系内には触媒及びリビングポリマーを不活性化させるような不純物が混入しないように留意する必要はある。
【0063】
[(a)成分の水添条件)]
(a)成分の水添反応に用いられる水添触媒としては、特に制限されないが、従来から公知である下記の(1)〜(3)に示される触媒が用いられる。
(1)Ni、Pt、Pd、Ru等特公昭42−8704号公報の金属をカーボン、シリカ、アルミナ、ケイソウ土等に担持させた担持型不均一系水添触媒、
(2)Ni、Co、Fe、Cr等の有機酸塩又はアセチルアセトン塩などの遷移金属塩と有機アルミニウム等の還元剤とを用いる、いわゆるチーグラー型水添触媒、
(3)Ti、Ru、Rh、Zr等の有機金属化合物等のいわゆる有機金属錯体等の均一系水添触媒。
【0064】
そして、具体的な水添触媒としては、特公昭42−8704号公報、特公昭43−6636号公報、特公昭63−4841号公報、特公平1−37970号公報、特公平1−53851号公報、特公平2−9041号公報に記載された水添触媒があげられる。これらの中でも、好ましい水添触媒としては、チタノセン化合物及び/又は還元性有機金属化合物との樹脂混合物があげられる。
【0065】
上記チタノセン化合物としては、特開平8−109219号公報に記載された化合物が使用できるが、具体例としては、ビスシクロペンタジエニルチタンジクロライド、モノペンタメチルシクロペンタジエニルチタントリクロライド等の(置換)シクロペンタジエニル骨格、インデニル骨格あるいはフルオレニル骨格を有する配位子を少なくとも1つ以上もつ化合物が挙げられる。また還元性有機金属化合物としては有機リチウム等の有機アルカリ金属化合物、有機マグネシウム化合物、有機アルミニウム化合物、有機ホウ素化合物あるいは有機亜鉛化合物等が挙げられる。
【0066】
上記水添反応の反応温度は、一般的に0〜200℃がよく、より好ましくは30〜150℃の温度範囲で実施される。また、水添反応に使用される水素の圧力は0.1〜15MPaがよく、好ましくは0.2〜10MPa、更に好ましくは0.3〜7MPaが推奨される。さらに、水添反応時間は、通常3分〜10時間であり、好ましくは10分〜5時間である。さらにまた、水添反応のプロセスは、バッチプロセス、連続プロセス、或いはそれらの組み合わせのいずれでも用いることができる。
【0067】
[スチレン−ブタジエンブロック共重合体中のブタジエン単位の構造]
また、上記(a)成分を構成するスチレン−ブタジエン水素添加ブロック共重合体の水素添加前のブタジエン単位において、その構造(シス構造、トランス構造、ビニル構造の存在割合)は、極性化合物の使用により任意に変えることができる。
【0068】
この極性化合物としては、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等のエーテル類、トリエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン等のアミン類、チオエーテル類、ホスフィン類、ホスホルアミド類、アルキルベンゼンスルホン酸塩があげられる。
【0069】
[他の添加成分]
上記のスチレン−ブタジエンブロック共重合体においては、上記の(a)成分、(b)成分、(c)成分、(d)成分以外に、特性を阻害しない範囲で、他の樹脂や熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、有機滑剤、帯電防止剤、核剤、難燃剤、着色剤等の添加剤を加えてもよい。但し、他の樹脂を加える場合、透明性を維持する目的から屈折率ができるだけ近い樹脂、又は透明性を大きく低下させない樹脂を選択することが好ましい。このような樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−ブタジエンエラストマー、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体等のポリスチレン系樹脂があげられる。
【0070】
[単層フィルム又は積層フィルムの製造方法]
上記の単層フィルムや積層フィルムは、上記単層フィルムの場合は、(I)層を構成する樹脂混合物、上記積層フィルムの場合は、各層を構成する上記の樹脂又は樹脂混合物を、一軸押出機、又は二軸(同方向、異方向)押出機によって押し出すことにより、少なくとも1軸に延伸して製造される。
【0071】
押出に際しては、Tダイ法、チューブラ法等の既存の方法を採用してもよい。また、積層フィルムを製造する場合、共押出や、単層毎に押し出した後に重ね合わせる方法等を採用することができる。溶融押出された樹脂は、冷却ロール、空気、水等で冷却された後、熱風、温水、赤外線等の適当な方法で再加熱され、ロール法、テンター法、チューブラ法等により、1軸又は2軸に延伸される。
【0072】
延伸温度は、単層フィルム又は積層フィルムを構成する各樹脂の軟化温度や、得られる単層フィルムや積層フィルムに要求される用途によって変える必要があるが、概ね60〜130℃、好ましくは80〜120℃の範囲で制御される。
【0073】
上記延伸処理において、主収縮方向(単層フィルム又は積層フィルムの長さ方向と直角方向(TD))の延伸倍率は、単層フィルム又は積層フィルムの構成組成、延伸手段、延伸温度、目的の製品形態に応じて2〜7倍の範囲で適宜決定される。また、1軸延伸にするか2軸延伸にするかは、目的の製品の用途によって決定される。
【0074】
より具体的には、積層フィルムの場合、中間層が所望の割合になるように各原料を押出機で溶融し、Tダイにて押出した溶融体をキャストロールで冷却し厚さ200〜400μmの未延伸フィルムを得ることが好ましい。
【0075】
そして、この未延伸フィルムを流れ方向(MD)に80〜100℃で1.0〜1.5倍延伸後、その直角方向(TD)に4〜7倍延伸し、厚さ約30〜50μmのフィルムを製作することができる。但し、延伸温度は80℃温水中の10秒間の熱収縮率が30〜55%、好ましくは35〜50%程度となるように設定するのが望ましい。
【0076】
さらに、延伸した後、フィルムの分子配向が緩和しない時間内に速やかに、得られた積層フィルムの冷却を行うことも、収縮性を付与して保持する上で重要である。
【0077】
[熱収縮率]
得られた上記の単層フィルム又は積層フィルムの主収縮方向(TD)における、80℃温水中での10秒間の熱収縮率は、25%以上がよく、30%以上が好ましい。25%未満では、低温域での収縮性に乏しく、満足する収縮仕上がりを得られない傾向がある。また、このような熱収縮フィルムで満足する収縮仕上がりを得るために収縮工程の温度を上げると、お茶類や乳製品等、高温は避けたい中身商品への適応性に問題があるばかりでなく、非耐熱ボトルが使用できなくなり、耐熱ボトルを使うことによるコストアップを招くおそれがある。なお、熱収縮は、この積層フィルムの延伸前の大きさ以上は起こらないため、熱収縮率の上限は、上記積層フィルムの延伸前の大きさとなるときの率となるが、自然収縮率を低く抑える観点から、上限値は55%が好ましく、50%がより好ましい。
【0078】
[引張弾性率]
得られた上記の単層フィルム又は積層フィルムのMD引張弾性率及びTD引張弾性率の平均は、1600MPa以上がよく、1700MPa以上が好ましい。引張弾性率は剛性の代用特性であり、この値が高いと剛性が高いこととなる。剛性が高いと、ラベルのボトル装着工程で安定した装着ができ、またラベルカット前の製袋ロールの安定した巻出し等ができ、使用し易い。特に昨今、コストカット要求で厚みを薄くしたい市場の要望があり、この特性を向上させる必要性が非常に大きい。
【0079】
また、上記の単層フィルム又は積層フィルムのMD引張弾性率及びTD引張弾性率の平均の上限は、2500MPaがよく、2300MPaが好ましい。2500MPaより大きくてもよいが、製造に困難性を有するので、2500MPaで十分である。
【0080】
なお、この値はMDとTDの平均値を採用しているが、上記に示した通り通常の作製方法においては、TDが高い値を示し、かつ、MDとTDの差は概ね一定であり、またラベルが巻き出されて装着するまでにはMD、TD両者とも剛性は必要である。よって、MDとTDの平均値を指標とした。
【0081】
[引張伸び率]
また、上記の単層フィルム又は積層フィルムのグラビア印刷法による、所定の印刷条件による、印刷前のMD引張伸び率(A(%)と、印刷後の印刷部のMD引張伸び率(B(%))との関係は、下記の式(1)及び(2)の両方を満たすことが重要である。
800≧A≧200 (1)
1.0≧B/A≧0.8 (2)
【0082】
上記の式(2)の条件(以下、「B/A」を「維持率」と称する。)を満たさない場合、すなわち、維持率が0.8(すなわち80%)未満であると、グラビア印刷を行うと、印刷部がインキ溶剤によるフィルム劣化を引き起こし、印刷後のフィルムの引張伸び率が低下し、そのため、印刷後のラベル製袋工程や、ラベル装着に向けてのラベル巻出し工程にて破断が発生し、生産性が低下する場合がある。この維持率は、0.9以上であることがより好ましく、0.95以上であることがさらに好ましい。一方、上限は特に制限はなく、1.0まで可能である。
【0083】
また、上記式(1)の条件を満たさないと、すなわち、Aが200%未満だと、上述したように、コストカット要求で厚みを薄くした場合、必然的に無地フィルムの引張伸び率が低下し、破断により生産性低下を招く危険性が高いからである。なお、無地の引張伸び率を大幅にアップすることで維持率の低下が大きくても破断が発生しないようにする方法もあるが、それでは剛性を十分に維持することが困難となりやすく、維持率が上記(2)の条件を満たすような高さを有しても、印刷前の無地フィルムにある程度の伸び率は必要である。このため、上記(2)を満たす条件下で、(1)を満たすことが重要である。なお、Aが800%を超える場合は、剛性が低下する傾向がある。
【0084】
上記式(1)のAを増加させる手段としては、単層の場合には、(a)成分を増量させるか、(b)成分を減量させるか、あるいは(c)成分を含有している場合には、(c)成分を増量させることにより調整できる。(I)層の厚みが全層の厚みに対して70%以上を占める積層の場合には、(I)層が主層となるので、フィルムの剛性の低下を抑えるために(I)層の成分を単層のように成分の構成を調整することにより達成することができる。
【0085】
一方、上記の式(1)のAが増加した場合、式(2)を満たすためにはBを増加させる必要があるが、その際、単層の場合には、(a)成分は増量させ、全体に対する含有率が少なくとも20質量%、好ましくは25質量%以上となるように調整することで達成することができる。また、(c)成分を含有している場合には、(c)成分の含有率は多すぎると式(2)のBの値が減少する傾向にあるため、25質量%以下、好ましくは20質量%以下が望ましい。一方、(I)層の厚みが全層の厚みに対して70%以上ある積層の場合には式(2)を満足させるために、(I)層の成分を前記の単層のように成分の構成を調整することにより達成できる。
【0086】
また、フィルムの延伸条件を調整することにより、上記式(1)及び式(2)を満たすことができる。その際、熱収縮性フィルムの仕上がりや自然収縮率の観点からは、80℃温水中での10秒間の熱収縮率が25%以上、好ましくは30%以上であり、55%以下、好ましくは50%以下となるように調整される。そのような延伸条件は、延伸倍率、延伸温度、延伸速度からなり、これらは付与する収縮率から決定できる。特に延伸倍率は3.5倍以上、好ましくは4.0倍以上であり、6.5倍以下、好ましくは6.0倍以下とすることにより上記式(1)及び式(2)を満たすことができる。また延伸温度は、フィルムのビカット軟化点(JIS K7206)から5℃以上、好ましくは10℃以上であり、40℃以下、好ましくは35℃以下の温度域であり、延伸速度は500%/min以上、好ましくは1000%/min以上であり、3500%/min以下、好ましくは3000%/min以下の速度域に調整することにより上記式(1)及び(2)を達成することができる。
【0087】
[収縮応力]
また、上記の単層フィルム又は積層フィルムの主収縮方向(TD)の80℃における収縮応力の最大値は、5MPa以下であることが望ましい。収縮応力の最大値が上記の上限値より大きいと、収縮応力が高いために収縮が不均一になりやすく、その結果シワが入る等満足な収縮仕上がりを得にくいといった問題が生ずることがある。さらに、ラベルをペットボトルから容易に剥がすために施されたミシン目が開きすぎて外観を損ねやすいといった問題が生ずる。
【0088】
[自然収縮率]
さらに、自然収縮性を小さくするという意味で、上記フィルムの30℃環境下における30日間経過後の収縮率は、1.5%以下が好ましく、1.0%以下がより好ましい。上記収縮率が1.5%より大きいと、溶剤収縮を増大させる一因となるため、好ましくない場合がある。
【0089】
[溶剤収縮率]
ところで、PETボトルのラベルに広告としての役割を課す動きが近年加速し、より複雑な印刷柄が増えている。そのため、印刷の色数が増えてフィルムが溶剤に曝される回数も増えたことに起因し、印刷後にフィルムが縮む不具合も起きている。このため、過酷な印刷を施した場合でもフィルムが縮まないことが求められる。またこの特性も薄肉となると、大きく悪化する特性であり、コストカットによる薄肉化の中、自然収縮を大きく低下することも必要である。その点で、上記フィルムの溶剤収縮率、すなわち、上記フィルムに印刷を施した後、一定時間放置した際の収縮率は、0.45%以下が好ましく、0.4%以下がより好ましい。0.45%より大きいと、印刷フィルムを規定幅でスリットできなくなる場合がある。
【0090】
[ヘーズ]
PETボトルのラベルとしての役割が課せられる中、裏面から印刷された色を忠実に表面から見ることができるように、ヘーズが低いことが要求される。具体的には12%以下が好ましく、10%以下がより好ましい。
【0091】
[単層フィルム及び積層フィルムの厚み]
この発明で得られる単層フィルムの厚み、及び積層フィルムの全体の厚みは、用途に応じて適宜決定できる。好ましくは、50μm以下であり、さらに好ましくは45μm以下が好ましく、40μm以下が最も好ましい。フィルムの厚みが50μmを超えると、従来の熱収縮性フィルムでも、耐キレ性、剛性等の点で十分な特性を有するものが存在し、この従来の熱収縮性フィルムを薄肉化していくと、耐キレ性、剛性等の点で問題が生じる。この発明は、そのような場合において、十分な耐キレ性、剛性等を有する熱収縮性フィルムを得たものであり、50μm以下、好ましくは45μm以下、特に好ましくは40μm以下の熱収縮性フィルムに適用できるものである。
【0092】
一方、厚みの下限は、30μmが好ましく、35μmがより好ましい。30μmより薄いと、熱収縮性フィルムとして、耐キレ性や剛性を十分に得られなくなるからである。
【0093】
[(I)層と(II)層の厚みの比]
上記積層フィルムが(I)層と(II)層との2層で、少なくとも3層を有する全層を構成する場合、全層に占める(I)層の厚みが70%以上であることが必要であり、80%以上であることが好ましい。(I)層の厚さが厚くなりすぎると、剛性や印刷後の耐キレ性が低下する傾向があり、この発明の高剛性の特性を残して、印刷後の耐キレ性を問題ない程度に抑えるためには、上記範囲とすることが好ましい。
【実施例】
【0094】
以下に実施例を示すが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。但し、以下の実施例では、フィルムの流れ方向をMD、流れ方向と直角方向をTDとして記載する(主収縮方向がTDに相当する)。なお、実施例に示す測定値及び評価は次のように行った。
【0095】
[剛性]
フィルムのMDの引張弾性率を測定しその値を腰の強さとした。
測定方法は、MDに350mmの長さで5mm幅の試験片を切り出し、これをチャック間300mmで23℃の恒温室に設置した引張試験機((株)インテスコ製「IM−20」)にセットする。これを、引張試験速度5mm/分で応力−歪曲線を求め試験開始直後の直線部を用いて、下記式より引張弾性率を求めた。
引張弾性率=直線上の2点間の元の平均断面積による応力差/同じ2点間の歪差
【0096】
[維持率とグラビア印刷方法]
フィルムの各方向に幅15mm、長さ100mmで試験片をMDに切り取り、その試験片をチャック間40mmで恒温槽付引張試験機((株)インテスコ製「201X」)にセットする。これを−10℃で100mm/min.の試験速度で引っ張り、下記式より引張伸び率を求めた。
引張伸び率=((破断した時のチャック間長さ−40(mm))/40(mm))×100
【0097】
またグラビア印刷方法については、以下の通りである。
(1)印刷色数と塗り柄:銀色と白色の2色でともにベタ印刷。
(2)インキ:銀色は大日精化工業(株)製のOPS用銀色インキを使用し、希釈溶剤は大日精化工業(株)製のOS−M No2を使用。インキ粘度をザーンカップ♯3で18〜20秒に調整。
白色は大阪印刷インキ製造(株)製のOPS用白色インキを使用し、希釈溶剤は大阪印刷インキ製造(株)製のスチロールGS♯2を使用。インキ粘度をザーンカップ♯3で18〜20秒に調整。
(3)印刷条件:印刷インキ厚みが2色で2〜3μm厚みとなるように塗布する。印刷時の巻出張力巻取張力ともに10〜15Kg/m。乾燥は55℃〜60℃の風の吹き出しのある乾燥炉を約2秒間の通過で行う。
【0098】
[熱収縮率]
フィルムを、主収縮方向が長くなるように幅40mm、長さ200mmの大きさに切り取り、主収縮方向(TD)の収縮量を80℃の温水バスに10秒間浸漬し測定した。熱収縮率は、収縮前の原寸に対する収縮量の比率を%値で表示した。
【0099】
[自然収縮率]
フィルムをTDに1000mmの長さで標線を入れ、30℃の雰囲気の恒温槽に30日間放置後、標線間の長さA(mm)を測定し、下記式より自然収縮率(%)を算出した。
自然収縮率(%)=(1000−A)/1000×100
【0100】
[収縮応力測定]
(株)安田精機製作所製:熱収縮応力測定装置を用い、各フィルムをTD方向に幅10mm、長さ70mmに切り出し、チャック間50mmにてロードセルにタルミがないように固定した。その後80±1℃のシリコンバスに試料片を浸し、その際の初期収縮応力を測定して最大収縮応力とした。収縮応力は下記式に当てはめて計算した。
収縮応力(MPa)=ロードセルにかかる荷重(N)/試料片の断面積(mm
【0101】
[ヘーズ測定]
日本電色工業(株)製のNDH2000を用い、JIS K7105に準拠して測定を行った。
【0102】
[粘弾性測定](貯蔵弾性率、損失弾性率)
粘弾性スペクトロメーターDVA−200(アイティ−計測制御(株)製)を用い、振動周波数10Hz、昇温速度3℃/分、測定温度−120℃から120℃の範囲で測定した。測定試験片は測定する樹脂を1mm程度の厚みに無配向の状態となるように熱プレスした板を用いた。
【0103】
[エチレン含有率及びブテン含有率]
フィルムを、核磁気共鳴装置で測定し、全体に対するエチレン単位とブテン単位の質量割合を算出した。
【0104】
[ビニル構造の含有割合と水素添加率とスチレン含有率]
水素添加後の原料を、核磁気共鳴装置で測定した。ビニル結合量は核磁気共鳴装置でエチレンとブテンの質量%を測定し、ブテンの割合をビニル結合量とした。
【0105】
[原材料について]
実施例、比較例について使用した原材料を下記表1に示す。なお、表1に記載された略号を以下、使用する。なお、(a)成分の水添反応は下記の通りである。
【0106】
[水添反応]
攪拌機付きオートクレーブに、水添対象のスチレン−ブタジエンブロック共重合体100質量部にヘキサンを加えて撹拌し、この共重合体を溶解した。
次いで、水添触媒をチタンとして100ppm添加し、オートクレーブ内の気相部を窒素ガスで置換し、その後、水素圧0.7MPa、温度65℃で水添反応を行った。その後メタノールを添加し、次にオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを安定剤として、共重合体100質量部に対して0.3質量部添加した後、脱溶媒して共重合体の水添物を得た。なお、水添率は、98〜99%になるように水素量で調整した。
【0107】
【表1】

【0108】
[実施例1〜8、比較例1〜9]
表1記載の原材料を用いて、表2の構成からなる樹脂の樹脂混合物を用い、単層又は積層フィルム(今回中間層と両外層の3層)を製造した。すなわち、各原材料をそれぞれの押出機で溶融し、単層、又は積層の場合は中間層の割合が表2に示す割合となるように、Tダイにて押出し、その溶融体をキャストロールで冷却し厚さ250〜300μmの未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを流れ方向(MD)に90℃で1.0〜1.5倍延伸後、その直角方向(TD)に5.5倍延伸し、単層又は積層フィルムを製作した。得られたフィルムの各特性を上記の方法で測定した。その結果を表3に示す。
【0109】
【表2】

【0110】
【表3】

【0111】
(結果)
表2及び表3より、本発明の範囲内である熱収縮性フィルムは、印刷後においても、優れた伸び率を保持でき、自然収縮率が低く、低温収縮性に優れたフィルムであることがわかる。
これに対し、水添したスチレン−ブタジエンブロック共重合体を用いない場合には、印刷前の剛性が低く、また印刷後の伸び率も低いことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(a)成分、(b)成分及び(c)成分を含有し、この(a)成分、(b)成分及び(c)成分の合計量に対するエチレン単位及びブテン単位の合計量が4〜20質量%である樹脂混合物を少なくとも1軸に延伸したフィルムであり、
MD引張弾性率及びTD引張弾性率の平均が1600〜2500MPaであり、
上記フィルムの印刷前のMD引張伸び率をA(%)とし、上記フィルムをグラビア印刷した後の印刷部のMD引張伸び率をB(%)としたとき、A及びBが下記の関係を有する熱収縮性フィルム。
800≧A≧200 かつ 1.0≧B/A≧0.8
(a)成分:
スチレン−ブタジエンブロック共重合体中の全構成単位に対するスチレン単位の含有量は、60〜80質量%であり、
上記スチレン−ブタジエンブロック共重合体中のブタジエン単位の二重結合が水素添加されたスチレン−ブタジエン水素添加ブロック共重合体。
(b)成分:
スチレン単位の含有量が85質量%以上であるスチレン−ブタジエンブロック共重合体。
(c)成分:
共役ジエン単位の含有量が40質量%を超えるスチレン系エラストマー。
【請求項2】
下記の(a)成分及び(b)成分を含有し、この(a)成分及び(b)成分の合計量に対するエチレン単位及びブテン単位の合計量が4〜20質量%である樹脂混合物を少なくとも1軸に延伸したフィルムであり、
MD引張弾性率及びTD引張弾性率の平均が1600〜2500MPaであり、
上記フィルムの印刷前のMD引張伸び率をA(%)とし、上記フィルムをグラビア印刷した後の印刷部のMD引張伸び率をB(%)としたとき、A及びBが下記の関係を有する熱収縮性フィルム。
800≧A≧200 かつ 1.0≧B/A≧0.8
(a)成分:
スチレン−ブタジエンブロック共重合体中の全構成単位に対するスチレン単位の含有量は、60〜80質量%であり、
上記スチレン−ブタジエンブロック共重合体中のブタジエン単位の二重結合が水素添加されたスチレン−ブタジエン水素添加ブロック共重合体。
(b)成分:
スチレン単位の含有量が85質量%以上であるスチレン−ブタジエンブロック共重合体。
【請求項3】
上記(a)成分と(b)成分との混合比が、質量比で20〜50/80〜50である請求項2に記載の熱収縮性フィルム。
【請求項4】
上記(a)成分と(b)成分と(c)成分との混合比が20〜50/80〜50/3〜25である請求項1に記載の熱収縮性フィルム。
【請求項5】
下記の(a)成分、(b)成分及び(c)成分を含有し、この(a)成分、(b)成分及び(c)成分の合計量に対するエチレン単位及びブテン単位の合計量が4〜20質量%である樹脂混合物からなる(I)層と、下記の(d)成分からなる(II)層とを全体として少なくとも3層構造となるように有し、少なくとも1軸に延伸した積層フィルムであり、
MD引張弾性率及びTD引張弾性率の平均が1600〜2500MPaであり、
上記積層フィルムの印刷前のMD引張伸び率をA(%)とし、上記フィルムをグラビア印刷した後の印刷部のMD引張伸び率をB(%)としたとき、A及びBが下記の関係を有し、
800≧A≧200 かつ 1.0≧B/A≧0.8
主収縮方向の80℃における収縮応力の最大値が5.0MPa以下である熱収縮性積層フィルム。
(a)成分:
上記スチレン−ブタジエンブロック共重合体中の全構成単位に対するスチレン単位の含有量は、60〜80質量%であり、
上記スチレン−ブタジエンブロック共重合体中のブタジエン単位の二重結合が水素添加されたスチレン−ブタジエン水素添加ブロック共重合体。
(b)成分:
スチレン単位の含有量が80質量%以上であるスチレン−ブタジエンブロック共重合体。
(c)成分:
共役ジエン単位の含有量が40質量%を超えるスチレン系エラストマー。
(d)成分:
スチレン単位及びブタジエン単位を主構成単位として含有するスチレン−ブタジエンブロック共重合体、及びその誘導体、並びにそれらの樹脂混合物。
【請求項6】
下記の(a)成分及び(b)成分を含有し、この(a)成分及び(b)成分の合計量に対するエチレン単位及びブテン単位の合計量が4〜20質量%である樹脂混合物からなる(I)層と、下記の(d)成分からなる(II)層とを全体として少なくとも3層構造となるように有し、少なくとも1軸に延伸した積層フィルムであり、
MD引張弾性率及びTD引張弾性率の平均が1600〜2500MPaであり、
上記積層フィルムの印刷前のMD引張伸び率をA(%)とし、上記フィルムをグラビア印刷した後の印刷部のMD引張伸び率をB(%)としたとき、A及びBが下記の関係を有し、
800≧A≧200 かつ 1.0≧B/A≧0.8
主収縮方向の80℃における収縮応力の最大値が5.0MPa以下である熱収縮性積層フィルム。
(a)成分:
上記スチレン−ブタジエンブロック共重合体中の全構成単位に対するスチレン単位の含有量は、60〜80質量%であり、
上記スチレン−ブタジエンブロック共重合体中のブタジエン単位の二重結合が水素添加されたスチレン−ブタジエン水素添加ブロック共重合体。
(b)成分:
スチレン単位の含有量が80質量%以上であるスチレン−ブタジエンブロック共重合体。
(d)成分:
スチレン単位及びブタジエン単位を主構成単位として含有するスチレン−ブタジエンブロック共重合体、及びその誘導体、並びにそれらの樹脂混合物。
【請求項7】
上記(I)層を構成する樹脂混合物の(a)成分と(b)成分との混合比が、質量比で20〜50/80〜50である請求項6に記載の熱収縮性積層フィルム。
【請求項8】
上記(I)層を構成する樹脂混合物の(a)成分と(b)成分と(c)成分との混合比が20〜50/80〜50/3〜25である請求項5に記載の熱収縮性積層フィルム。
【請求項9】
上記(d)成分は、下記の(d1)成分である請求項5乃至8のいずれかに記載の熱収縮性積層フィルム。
(d1)成分:
上記の(a)成分及び(b)成分を含有し、この(a)成分及び(b)成分の合計量に対するエチレン単位及びブテン単位の合計量が4〜20質量%であり、かつ、上記(I)層を構成する樹脂混合物とは異なる混合割合を有する樹脂混合物。
【請求項10】
上記(I)層の厚みは、全層に対して70%以上である請求項5乃至9のいずれかに記載の熱収縮性積層フィルム。
【請求項11】
上記(d)成分は、下記の(d2)成分である請求項10に記載の熱収縮性積層フィルム。
(d2)成分:
下記の(e)成分及び上記(b)成分を、質量比で(e)成分/(b)成分=20〜50/80〜50の割合で含み、又は下記の(e)成分、上記(a)成分及び上記(b)成分を、質量比で((a)成分+(e)成分)/(b)成分=20〜50/80〜50の割合で含む樹脂混合物。
(e)成分:
スチレン単位の含有量が65〜80質量%であるスチレン−ブタジエンブロック共重合体。
【請求項12】
上記(d1)成分を構成する樹脂混合物、又は上記(d2)成分を含む樹脂混合物は、下記(c)成分を含有し、この(c)成分の含有量は、上記(d1)成分を構成する上記(a)成分と(b)成分と(c)成分の合計量、又は上記(d2)成分を構成する上記(e)成分と(b)成分と(c)成分の合計量、若しくは(e)成分と(a)成分と(b)成分と(c)成分の合計量に対して、3〜25質量%である請求項10又は11記載の熱収縮性積層フィルム。
(c)成分:
共役ジエン単位の含有量が40質量%を超えるスチレン系エラストマー。

【公開番号】特開2007−301985(P2007−301985A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−103144(P2007−103144)
【出願日】平成19年4月10日(2007.4.10)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】