説明

熱収縮性ポリオレフィン系フィルム

【課題】有機溶剤での溶剤接着性が良好であり、かつ、加工時の耐切断性が改善され、さらにラベルに付着した指紋が収縮処理により白化し外観を損ねることのない熱収縮性ポリオレフィン系収縮フィルムを提供すること。
【解決手段】環状オレフィン系樹脂と、ポリスチレン系樹脂を主体とした表裏層[A]と、ポリプロピレン系樹脂を主体とした中間層[B]の少なくとも3層以上の積層構成からなり、少なくとも一軸に延伸したことを特徴とした熱収縮性ポリオレフィン系フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱収縮性ポリオレフィン系フィルムに関し、さらに詳しくはラベル用途に好適な熱収縮性ポリオレフィン系フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、包装品の、外観向上のための外装、内容物の直接衝撃を避けるための包装、ガラス瓶またはプラスチックボトルの保護と商品の表示を兼ねたラベル包装等を目的として、
シュリンクラベルが広範に使用されている。これらの目的で使用されるプラスチック素材
としては、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエステル、ポリオレフィン等が知られている。
【0003】
しかしながら、ポリ塩化ビニルラベルは、シュリンク特性には優れるものの、燃焼時に塩素ガスを発生する等の環境問題を抱えている。ポリスチレンやポリエステルラベルについては、熱収縮性は良好であるものの、ペット(ポリエチレンテレフタレート)ボトルとの比重差が小さいため浮遊分離が困難であり、ペットボトルのリサイクルをさまたげる原因となる。
【0004】
ポリオレフィンからなるシュリンクラベルは、ペットボトルとの比重差が大きく、浮遊分離が可能となる。環状オレフィン系樹脂をシュリンクフィルムに使用することにより、熱収縮率を高めてフィルム剛性を向上する効果が得られ、(例えば特許文献1)有機溶剤での溶剤接着性を発現する効果を有する反面、硬く脆い性質を有するので印刷などの加工時にフィルムが切断しやすい問題がある。さらに、環状オレフィン系樹脂からなるシュリンクフィルムよりラベルを作成してペットボトル等の容器に装着後、スチームや熱風を熱源として被覆収縮処理をした際にラベルに付着した人の指紋が白化し外観を損ねる問題が発生する。
【特許文献1】特開平8−165357号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記のような問題点に着目してなされたものであって、その目的は、加工時の耐切断性が改善され、さらにラベルに付着した指紋が収縮処理により白化し外観を損ねることがなく、有機溶剤での溶剤接着性が良好な熱収縮性オレフィン系フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決することのできた本発明に係る熱収縮性ポリオレフィン系フィルムとは、環状オレフィン系樹脂と、ポリスチレン系樹脂を主体とした表裏層[A]と、ポリプロピレン系樹脂を主体とした中間層[B]の少なくとも3層以上の構成からなり、少なくとも一軸方向に延伸したところに要旨を有している。
【0007】
上記本発明の熱収縮ポリオレフィン系フィルムにおいては、更に、表裏層[A]が、環状オレフィン系樹脂を30〜92重量%と、ポリスチレン系樹脂5〜67重量%および、エチレン系樹脂3〜30重量%を含有することが好ましく、中間層[B]が、ポリプロピレン系樹脂を主体とし、石油樹脂及び/又は環状オレフィン系樹脂及び/又はエチレン系樹脂を含有することが好ましい。
【0008】
また、本発明において前記ポリスチレン系樹脂が、スチレン系モノマーと共役ジエン系モノマーの共重合体であることがより好ましい実施様態である。
【0009】
また、前記ポリスチレ系樹脂が、スチレン系モノマーとイソプレンのブロック共重合体とからなることがさらに好ましい実施形態である。
【0010】
本発明に係る前記熱収縮性フィルムは、該試料を80℃の温水中に10秒浸漬して引き上げ、次いで25℃の水中に10秒間浸漬して引き上げたときの最大収縮方向の熱収縮率が20%以上である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の熱収縮性ポリオレフィン系フィルムは、熱収縮特性に優れ、印刷やセンターシール加工時に破断することがなく、また、ラベルに付着した指紋が収縮処理後に白化する現象を防止することができる。さらにシクロヘキサンやテトラヒドロフランなどの溶剤を接着溶剤として用いた際、溶剤接着性が良好であり通常の溶剤接着法で容易にセンターシールを行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の熱収縮性ポリオレフィン系フィルムは、上記のように、環状オレフィン系樹脂と、ポリスチレン系樹脂を主体とした表裏層[A]と、ポリプロピレン系樹脂を主体とした中間層[B]からなり、少なくとも一軸方向に延伸したところに最大の特徴を有している。
【0013】
上記環状オレフィン系樹脂とは、一般的な総称であり、具体的には、(a)環状オレフィンの開環(共)重合体、(b)環状オレフィンの開環(共)重合体を必要に応じ水素添加した重合体、(c)環状オレフィンとエチレン、プロピレン等 α−オレフィンとのランダム共重合体である。その他に(d)前記(a)〜(c)を不飽和カルボン酸やその誘導体で変性したグラフト変性体などが例示される。
【0014】
環状オレフィンとしては特に限定するものではなく例えばビシクロヘプト−2−エン(2−ノルボルネン)およびその誘導体、例えばノルボルネン、6−メチルノルボルネン、6−エチルノルボルネン、5−プロピルノルボルネン、6−nーブチルノルボルネン、1−メチルノルボルネン、7−メチルノルボルネン、5,6−ジメチルノルボルネン、5−フェニルノルボルネン、5−ベンジルノルボルネンなどが挙げられるが、もとよりこれらに限定されるものではない。また、テトラシクロ−3−ドデセンおよびその誘導体として、例えば8−メチルテトラシクロ−3−ドデセン、8−エチルテトラシクロ−3−ドデセン、5,10−ジメチルテトラシクロ−3−ドデセン等も好ましい環状オレフィンとして使用される。
【0015】
上記のような環状オレフィン系樹脂は、熱収縮性フィルムとして必要な熱収縮率を高めると共に、フィルムの剛性(腰)を高め、有機溶剤での接着性を高める効果がある。反面、環状オレフィン系樹脂は硬く脆い性質を有するので印刷などの加工時にフィルムが切断しやすくなる。さらに、環状オレフィン系樹脂からなるシュリンクフィルムよりラベルを作成してペットボトル等の容器に装着後、スチームや熱風を熱源として被覆収縮処理をした際にラベルに付着した人の指紋が白化し外観を損ねる問題が発生する。環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度は50℃以上、140℃以下が好ましく、より好ましくは60℃以上110℃以下である。ガラス転移温度が50℃未満のものを使用すると、自然収縮率が大きくなり、ロールにシワやタルミができたり、巻き締まりによるブロッキングが発生することがあり好ましくなく、また、ガラス転移温度が140℃を越すものを使用すると、製膜時の延伸性が悪化して厚みムラが生じ易くなり、外観も悪化傾向となる。
【0016】
次に、ポリスチレン系樹脂とは、ビニル芳香族炭化水素の単独重合体、ビニル芳香族炭化水素と脂肪族不飽和カルボン酸エステルなどの共重合体および、これらの単量体、共重合体と共役ジエンとのブロック共重合体が挙げられる。ビニル芳香族炭化水素としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンなどがあげられ、脂肪族不飽和カルボン酸エステルとしては、例えばアクリル酸、メタクリル酸などのエステル誘導体が挙げられる。また、共役ジエン系モノマーとしては、例えばブタジエン、イソプレン、1,3−ブタジエン等が挙げられ、これらの共重合成分は1種または2種以上を使用できる。
【0017】
ポリスチレン系樹脂の形態としては、スチレン系モノマーと共役ジエン系モノマーの共重合体であることが好ましい。
【0018】
上記ポリスチレン系樹脂の形態としては、ブロック共重合体がさらに好ましく、これらの中でより好ましく使用されるブロック共重合体はスチレン系モノマーがスチレンであり、共役ジエン系モノマーがイソプレンであるスチレン−イソプレンブロック共重合体である。
【0019】
上記ブロック共重合体の構造および各ブロック部分の構造は特に限定されず、ブロック共重合体の構造の例としては、直線型、星型等があげられる。また、各ブロック部分の構造のとしては、対称ブロック、非対称ブロック、テトラブロック、ランダムブロック等が包含される。さらにブロック共重合体の構造および各ブロック部分の構造、分子量等の異なるブロック共重合体を2種以上配合したものであってもよい。
【0020】
上記のブロック共重合体は、環状オレフィン系樹脂と併用した際の透明性の低下が少なく、有機溶剤で接着した際の接着性の低下も少ない。また、環状オレフィン系樹脂の欠点である耐油脂性を向上させる効果を有しているので、スチームや熱風を熱源としてフィルムラベルを被覆収縮処理した際にラベルに付着した人の指紋が白化する現象を抑止することができる。
【0021】
次に中間層を構成するポリプロピレン系樹脂としては、例えば、ポリプロピレンホモポリマー、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体が挙げられる。ここで、α−オレフィンとしては、炭素数2〜20のα−オレフィンが挙げられ、好ましくは、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1等が例示され、これらを含む好ましい共重合体としては、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−ブテンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−ブテンランダム共重合体などが上げられる。これらのポリマーの立体構造にも特に制限はなく、イソタクチック構造、アタクチック構造、シンジオタクチック構造あるいはこれらの混在した構造の何れであってもかまわない。
【0022】
中間層にポリプロピレン系樹脂を用いることにより、熱収縮性フィルムの比重が下がり、水を用いたペットボトル本体とラベルとの浮遊分離を効率的に行なうことが可能となる。さらに、前記環状オレフィン系樹脂に起因する硬く脆い性質を補い、フィルム加工時の耐切断性を向上することができる。
【0023】
本発明の熱収縮性ポリオレフィン系フィルムは、上記構成成分とするもので、優れた熱収縮特性を有し、有機溶剤での溶剤接着性が良好であり、かつ、加工時の耐切断性が改善され、さらにラベルに付着した指紋が収縮処理により白化し外観を損ねることのないものであるが、表裏層にエチレン系樹脂、中間層に石油樹脂及び/又は環状オレフィン系樹脂及び/又はエチレン系樹脂を併用することが、本発明の好ましい実施態様として推奨される。
【0024】
ここで、表裏層に併用するエチレン系樹脂とは、エチレンを主成分とした重合体であり、例えば、ポリエチレンホモポリマー、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体、エチレンと不飽和カルボン酸との共重合体、エチレンと不飽和カルボン酸の誘導体との共重合体、また、これらを不飽和カルボン酸または、不飽和カルボン酸の誘導体で変性したものなどが上げられる。具体的な、共重合成分としては、ブテン−1、ヘキセン−1、4メチルペンテン−1、オクテン−1、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、メチルアクリレート、メチルメタアクリレート、アクリル酸金属塩などが、変性成分としてはマレイン酸などが例示される。これらを含む好ましい重合体としては、LLDPE、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート−無水マレイン酸共重合体、エチレンのマレイン酸グラフト変性物などが上げられる。
【0025】
エチレン系樹脂を表裏層で環状オレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂と併用することにより、環状オレフィン系樹脂の耐油脂性改善効果があり、かつポリプロピレン等を主成分とする他のオレフィン系樹脂の併用に比べて相溶性がよいので、フィルムの透明性の低下が少なく、好ましい。
【0026】
また、中間層を構成する石油系樹脂とは、石油精製工業や石油化学工業の工程上得られる特定留分(オレフィン、ジオレフィンなどの重合性化合物を含むもの)中の重合可能な物質を、特に単離精製することなしに、そのまま重合し樹脂化したものをさす。より詳しくは、前述のうち芳香族系炭化水素樹脂や芳香族系石油樹脂を、部分水素添加もしくは完全水素添加することによって得られる脂環族飽和炭化水素樹脂であり、該石油樹脂としては、例えば荒川化学工業株式会社製の商品名「アルコン」又はトーエネックス株式会社製の商品名「エスコレッツ」等の市販品が挙げられる。
【0027】
これらの石油樹脂を併用すると、ポリプロピレン系樹脂の結晶性を低下させ、熱収縮性フィルムとして必要な収縮率が高められると共に、フィルム製膜時の延伸性も向上するので好ましい。石油樹脂の軟化点は110℃以上であることが好ましく、より好ましい軟化点は125℃以上、更に好ましくは140℃以上である。石油樹脂の軟化温度が高いものほど、より高い熱収縮率を得ることができる為である。石油樹脂の軟化点が110℃未満であると、フィルムにベタツキが生じて印刷等の後加工で障害となったり、経時変化により白濁する恐れもある。
【0028】
次に、中間層を構成する環状オレフィン系樹脂としては、前掲の表裏層を構成する環状オレフィン系樹脂で例示したものと同様に、(a)環状オレフィンの開環(共)重合体、(b)環状オレフィンの開環(共)重合体を必要に応じ水素添加した重合体、(c)環状オレフィンとエチレン、プロピレン等 α−オレフィンとのランダム共重合体である。その他に(d)前記(a)〜(c)を不飽和カルボン酸やその誘導体で変性したグラフト変性体などが例示される。
【0029】
環状オレフィンとしては特に限定するものではなく例えばビシクロヘプト−2−エン(2−ノルボルネン)およびその誘導体、例えばノルボルネン、6−メチルノルボルネン、6−エチルノルボルネン、5−プロピルノルボルネン、6−nーブチルノルボルネン、1−メチルノルボルネン、7−メチルノルボルネン、5,6−ジメチルノルボルネン、5−フェニルノルボルネン、5−ベンジルノルボルネンなどが挙げられが、もとよりこれらに限定されるものではない。また、テトラシクロ−3−ドデセンおよびその誘導体として、例えば8−メチルテトラシクロ−3−ドデセン、8−エチルテトラシクロ−3−ドデセン、5,10−ジメチルテトラシクロ−3−ドデセン等も好ましい環状オレフィンとして使用される。
【0030】
これらの環状オレフィン系樹脂を併用すると、中間層の結晶性を低下させ、熱収縮性フィルムとして必要な収縮率が高められると共に、フィルム製膜時の延伸性も向上するので好ましい。また、ポリオレフィン系フィルム全般の欠点である自然収縮を低減させる効果も有している。
【0031】
環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度は50℃以上、140℃以下が好ましく、より好ましくは60℃以上110℃以下である。ガラス転移温度が50℃未満のものを使用すると、自然収縮率が大きくなり好ましくなく、ガラス転移温度が140℃を越すものを使用すると、製膜時の延伸性が悪化して厚みムラが生じ易くなり、外観も悪化傾向となる。
【0032】
また、中間層を構成するエチレン系樹脂としては、前記の表裏層を構成するエチレン系樹脂で例示したものと同様に、エチレンを主成分とした重合体であり、例えば、ポリエチレンホモポリマー、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体、エチレンと不飽和カルボン酸との共重合体、エチレンと不飽和カルボン酸の誘導体との共重合体、また、これらを不飽和カルボン酸または、不飽和カルボン酸の誘導体で変性したものなどが上げられる。具体的な、共重合成分としては、ブテン−1、ヘキセン−1、4メチルペンテン−1、オクテン−1、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、メチルアクリレート、メチルメタアクリレート、アクリル酸金属塩などが、変性成分としてはマレイン酸などが例示される。これらを含む好ましい重合体としては、LLDPE、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート−無水マレイン酸共重合体、エチレンのマレイン酸グラフト変性物などが上げられる。
【0033】
エチレン系樹脂を中間層に併用することにより、環状オレフィン系樹脂に起因する硬く脆い性質を改善し、一軸延伸方向に直交する方向の伸張時の破断が減少し、印刷やセンターシール加工時に破断し難くなる。また、表裏層と中間層との層界面の接着強度が向上するので界面剥離のしやすさに起因する溶剤接着強度の低下を抑止できるため、溶剤接着によるセンターシール強度の向上も図れるので好ましい。
【0034】
本発明において、表裏層を構成する環状オレフィン系樹脂の配合割合は、表裏層を構成する樹脂成分の全量中に占める比率で30〜92重量%が好ましく、より好ましくは60〜80重量%である。
【0035】
次に、表裏層を構成するポリスチレン系樹脂の配合割合は、表裏層を構成する樹脂成分の全量中に占める比率で5〜67重量%が好ましく、より好ましくは8〜45%さらに好ましくは10〜30%である。ポリスチレン系樹脂の配合割合が、5重量%未満では耐油脂性の改良効果が低く、逆に67重量%以上となると、フィルムの剛性(腰)が低下し、該フィルムをペットボトルの被覆用ラベルとして用いた場合ペットボトルへの装着性が低下する恐れが生じてくる。
【0036】
また、表裏層を構成するエチレン系樹脂の配合割合は、表裏層を構成する樹脂成分の全量中に占める比率で3〜40重量%が好ましく、より好ましくは5〜30重量%、さらに好ましくは10〜25%である。エチレン系樹脂の配合割合が、3重量%未満では耐油脂性の改良効果が低く、逆に40重量%以上となると、有機溶剤での接着強度が低下しシール部が剥がれる恐れが生じてくる。
【0037】
本発明において、中間層を構成するポリプロピレン系樹脂の配合割合は、中間層を構成する樹脂成分の全量中に占める比率で50重量%以上が好ましく、より好ましくは、60重量%以上である。ポリプロピレン系樹脂の配合割合が50重量%未満では、熱収縮性フィルムの比重を低減する効果が少ない為、水を用いたペットボトル本体とラベルとの浮遊分離を効率的に行なうことが困難となる。
【0038】
本発明において、中間層に石油樹脂を配合する場合の配合割合は、中間層を構成する樹脂成分の全量中に占める比率で5重量%以上、40重量%以下が好ましく、より好ましくは、5重量%以上、25重量%以下である。石油樹脂の配合割合が5重量%未満では、低温での熱収縮率がを高める効果が発現せず、逆に40重量%を越えて過度に多くなると、得られるフィルムの比重が大きくなり過ぎて、印刷を施した該フィルムをペットボトルの被覆用ラベルとして用いた場合、ペットボトルリサイクル時に比重分離法で効率よく分離し難くなる恐れが生じてくる。
【0039】
本発明において、中間層に環状オレフィン樹脂を配合する場合の配合割合は、中間層を構成する樹脂成分の全量中に占める比率で3重量%以上、40重量%以下が好ましく、より好ましくは、5重量%以上、30重量%以下である。環状オレフィン樹脂の配合割合が3重量%未満では、熱収縮率を高める効果、フィルムの延伸性を高める効果が発現しない。又、40重量%を越えて過度に多くなると石油樹脂同等フィルムの比重が大きくなり過ぎて好ましくない。
【0040】
本発明において、中間層にエチレン系樹脂を配合する場合の配合割合は、中間層を構成する樹脂成分の全量中に占める比率で5重量%以上、50重量%以下が好ましく、より好ましくは、10重量%以上、40重量%以下である。エチレン系樹脂の配合割合が5重量%未満では、一軸延伸に直交する方向の伸張時の破断を低減する効果、積層界面の接着強度を向上する効果が発現しない。又、50重量%を越えて過度に多くなるとフィルムの剛性(腰)が低下し、該フィルムをペットボトルの被覆用ラベルとして用いた場合ペットボトルへの装着性が低下する恐れが生じてくる。
【0041】
本発明に係る熱収縮性ポリオレフィン系フィルムの厚みは特に限定されないが、ラベルとしての用途を考えると100μm以下が好ましく、より好ましくは30〜80μmである。なお、表裏層の厚みの合計と全体厚みの比は、全体厚みを1としたときに表裏層の厚みの合計比が0.1〜0.6の範囲が好ましく、より好ましくは0.15〜0.5の範囲である。表裏層の厚みの合計比が0.1未満では外層を溶剤接着層として用いる際に十分な溶剤接着強度が得られ難くなることがある。逆にこの厚み比が0.6を越えると得られるフィルムの比重が大きくなり過ぎて、印刷を施した該フィルムをペットボトルの被覆用ラベルとして用いた場合、リサイクル時に比重分離法で効率よく分離し難くなる恐れが生じてくる。
【0042】
本発明のフィルムは、前掲の要件を満たす3層構造とするのが最も実用的であるが、場合によっては中間層と表裏層の間に接着層等の層を設けた4層以上の多層構造とすることも可能である。積層法に格別の制限はないが、多層共押出し法やドライラミネート法等が一般的である。
【0043】
本発明の熱収縮性ポリオレフィン系フィルムは、80℃の温水中に10秒浸漬して引き上げ、次いで25℃の水中に10秒間浸漬して引き上げたときの最大収縮方向の熱収縮率が20%以上である。該熱収縮率が20%未満では、フィルムラベルを容器に被覆収縮させる際にラベルの収縮不足が発生する。該熱収縮率は好ましくは25%以上、より好ましくは30%以上である。前記熱収縮率は、前述の原料処方、フィルム積層構成と後述の延伸条件の組み合わせにより達成することができる。
【0044】
なお本発明に係る熱収縮性ポリオレフィン系フィルムの構成は前述した通りであるが、それらの基本素材を含むことを前提とし、且つ前述した本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、公知の酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、造核剤、紫外線吸収剤、着色剤などを適宜含有させることができる。なお、これらのうち特に帯電防止剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤などの添加は耐ブロッキング性の向上には有効であるが、過剰添加は溶剤接着性を阻害するため、添加量には十分に配慮する必要がある。
【0045】
次に本発明に係る熱収縮性ポリオレフィン系フィルムの製膜方法について説明する。本発明の熱収縮性ポリオレフィン系フィルムは、前述したような樹脂原料を220〜250℃で溶融押出しした後、テンター法などによって少なくとも一軸方向に2倍以上、好ましくは4倍以上、より好ましくは6.5倍以上延伸することによって製造する。延伸倍率の上限は12倍以下が好ましく、10倍以下がより好ましい。該延伸倍率で延伸することにより必要な熱収縮率を確保できる。延伸方法は、一軸延伸、二軸延伸のいずれでもよいが、フィルムの流れ方向に対して直交方向に一軸延伸することが好ましい。なお、二軸延伸の場合は、主延伸方向に対して直交方向に1.1倍から6.5倍の範囲内で延伸することが好ましい。好ましい延伸法としては、延伸に先立って80℃以上、120℃以下で予備加熱し、70℃以上110℃以下の温度で延伸するのがよい。延伸後の熱固定は70℃〜85℃で行なうのがよく、また、熱固定を行なう際の弛緩処理は0〜10%の範囲が好ましい。
【実施例】
【0046】
次に、実施例を挙げて本発明の構成と作用効果をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の要旨を逸脱しない範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、本明細書中における各種特性値の測定法は下記のとおりである。
【0047】
[熱収縮率]
フィルムを、一辺がフィルムの流れ方向に対して平行となるように10cm×10cmの正方形に切り出し、これを所定の温度±0.5℃に保持した水槽に10秒間浸漬する。10秒経過後直ちに、別途用意した25℃の水槽に10秒間浸漬した後、フィルムの主収縮方向と、その直交方向の長さを測定し、下記式によって加熱収縮率を求めた。なお、最も収縮した方向を主収縮方向とした。
収縮率(%)=100×(収縮前の長さ−収縮後の長さ)÷(収縮前の長さ)
【0048】
[溶剤接着強度]
テトラヒドロフラン(THF)を用いて、塗布量2g/m2、塗布幅3mmにてフィルムをチューブ状に接合加工し、温度25℃、相対湿度65%の環境下に24時間放置した後、該チューブを加工時の流れ方向と直交方向に15mm幅に切断してサンプルを取り、接合部分を上記方向について、JIS K 6854に準じ、T型剥離試験を行なう。
試験片数は20とし、試験片長さ60mm、チャック間20mm、試験片幅15mm、温度23℃、引張速度200mm/分の条件で行なった。
【0049】
[耐破れ性]
フィルムを、温度30℃、相対湿度85%の環境下で4週間保管する。保管後のフィルムの最大収縮方向と直交する方向についての引張試験を行なう。試験片数は20とした。試験片長さ70mm、チャック間距離20mm、温度23℃、引張速度200mm/分で行なった。伸度5%以下で破断した試験片を数え、全試験変数(20個)に対する百分率を求め、耐破れ性(%)とした。
【0050】
[指紋白化]
指紋(体脂)を付けたフィルムを金枠に固定(収縮率0%)し、90℃の温水に5秒間浸漬し引き上げ、白化の状態を評価した。指紋(体脂)痕の残らないものを“◎”、痕は残るが白くならないものを“○”、痕が白く残るものを“×”とした。
【0051】
[比重]
JIS K7112に準拠し、密度勾配管法により測定したフィルムの密度と温度23℃における水の密度との比から、フィルムの比重を求めた。
【0052】
(実施例1)
表裏層には、環状オレフィン樹脂(日本ゼオン社製の商品名「ZEONOR−750R」)70重量部、スチレン−イソプレンブロック共重合体(クラレ社製の商品名「HYBRAR7125」)10重量部、エチレン−無水マレイン酸グラフト変性物(三井化学社製の商品名「アドマーNF500」)20重量部を混合した混合物。中間層にはプロピレン−ブテンランダム共重合体(住友化学工業社製の商品名「SPX78H3」)50重量部、プロピレン−エチレンランダム共重合体(住友化学工業社製の商品名「S131」)15重量部、石油樹脂(荒川化学工業社製の商品名「アルコンP140」)15重量部、環状ポリオレフィン(日本ゼオン社製の商品名「ZEONOR750R」)10重量部、エチレン−無水マレイン酸グラフト変性物(三井化学社製の商品名「アドマーNF500」)10重量部を混合した混合物とをそれぞれ別の押出機に投入し、260℃でTダイより共押出し、20℃に保持した冷却ロールで冷却固化させた後、90℃で25秒予熱後、85℃で横方向に8倍テンター延伸し、次いで同テンター内で7%弛緩させつつ75℃で40秒熱固定してフラット状の熱収縮性フィルムを得た。このフィルムの厚さは表裏層が各々5μm、中間層が40μmでトータルの厚さは50μmであった。この延伸フィルムについて上記方法にて試験をおこなった結果を表1に示す。
【0053】
(実施例2)
表裏層には、環状オレフィン樹脂(日本ゼオン社製の商品名「ZEONOR−750R」)60重量部、スチレン−イソプレンブロック共重合体(クラレ社製の商品名「HYBRAR7125」)30重量部、エチレン−無水マレイン酸グラフト変性物(三井化学社製の商品名「アドマーNF500」)10重量部を混合した混合物。中間層にはプロピレン−ブテンランダム共重合体(住友化学工業社製の商品名「SPX78H3」)60重量部、環状オレフィン(日本ゼオン社製の商品名「ZEONOR750R」)30重量部、エチレン−無水マレイン酸グラフト変性物(三井化学社製の商品名「アドマーNF500」)10重量部を混合した混合物とをそれぞれ別の押出機に投入し、260℃でTダイより共押出し、20℃に保持した冷却ロールで冷却固化させた後、90℃で25秒予熱後、85℃で横方向に8倍テンター延伸し、次いで同テンター内で7%弛緩させつつ75℃で40秒熱固定してフラット状の熱収縮性フィルムを得た。このフィルムの厚さは表裏層が各々5μm、中間層が40μmでトータルの厚さは50μmであった。この延伸フィルムについて上記方法にて試験をおこなった結果を表1に示す。
【0054】
(実施例3)
表裏層には、環状オレフィン樹脂(日本ゼオン社製の商品名「ZEONOR−750R」)55重量部、スチレン−イソプレンブロック共重合体(クラレ社製の商品名「HYBRAR7125」)45重量部を混合した混合物。中間層にはプロピレン−ブテンランダム共重合体(住友化学工業社製の商品名「SPX78H3」)60重量部、プロピレン−エチレンランダム共重合体(住友化学工業社製の商品名「S131」)25重量部、石油樹脂(荒川化学工業社製の商品名「アルコンP140」)25重量部、環状ポリオレフィン(日本ゼオン社製の商品名「ZEONOR750R」)30重量部を混合した混合物とをそれぞれ別の押出機に投入し、260℃でTダイより共押出し、20℃に保持した冷却ロールで冷却固化させた後、90℃で25秒予熱後、85℃で横方向に8倍テンター延伸し、次いで同テンター内で7%弛緩させつつ75℃で40秒熱固定してフラット状の熱収縮性フィルムを得た。このフィルムの厚さは表裏層が各々5μm、中間層が40μmでトータルの厚さは50μmであった。この延伸フィルムについて上記方法にて試験をおこなった結果を表1に示す。
【0055】
(比較例1)
表裏層は環状オレフィン(日本ゼオン社製の商品名「ZEONOR−750R」100重量部。中間層にはプロピレン−ブテンランダム共重合体(住友化学工業社製の商品名「SPX78H3」)40重量部、プロピレン−エチレンランダム共重合体(住友化学工業社製の商品名「S131」)40重量部、石油樹脂(荒川化学工業社製の商品名「アルコンP140」)20重量部とし、それぞれ別の押出機に投入し、260℃でTダイより共押出しし、20℃に保持した冷却ロールで冷却固化させた後、85℃で25秒予熱後、80℃で横方向に7倍テンター延伸し、次いで同テンター内で7%弛緩させつつ75℃で40秒熱固定してフラット状の熱収縮性フィルムを得た。このフィルムの厚さは表裏外層が各々5μm、中間層が40μmでトータルの厚さは50μmであった。この延伸フィルムについて上記方法にて試験をおこなった結果を表1に示す。
【0056】
(比較例2)
表裏層は環状オレフィン樹脂(日本ゼオン社製の商品名「ZEONOR−750R」)55重量部、エチレン−無水マレイン酸グラフト変性物(三井化学社製の商品名「アドマーNF500」)45重量部を混合した混合物。中間層にはプロピレン−ブテンランダム共重合体(住友化学工業社製の商品名「SPX78H3」)40重量部、プロピレン−エチレンランダム共重合体(住友化学工業社製の商品名「S131」)40重量部、石油樹脂(荒川化学工業社製の商品名「アルコンP140」)20重量部とし、それぞれ別の押出機に投入し、260℃でTダイより共押出しし、20℃に保持した冷却ロールで冷却固化させた後、90℃で25秒予熱後、85℃で横方向に7倍テンター延伸し、次いで同テンター内で7%弛緩させつつ75℃で40秒熱固定してフラット状の熱収縮性フィルムを得た。このフィルムの厚さは表裏外層が各々8μm、基材層が24μmでトータルの厚さは40μmであった。この延伸フィルムについて上記方法にて試験をおこなった結果を表1に示す。
【0057】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の熱収縮性ポリオレフィン系フィルムは、有機溶剤での溶剤接着性が良好であり、かつ、加工時の耐切断性が改善され、さらにラベルに付着した指紋が収縮処理により白化し外観を損ねることのないため、ペットボトルやガラス瓶入り飲料にスチームや熱風での加熱処理により収縮被覆する際の収縮ラベル、収縮包装などの用途に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状オレフィン系樹脂と、ポリスチレン系樹脂を主体とした表裏層[A]と、ポリプロピレン系樹脂を主体とした中間層[B]の少なくとも3層以上の積層構成からなり、少なくとも一軸方向に延伸してなる熱収縮性ポリオレフィン系フィルム。
【請求項2】
表裏層[A]が、環状オレフィン系樹脂を30〜92重量%と、ポリスチレン系樹脂5〜67重量%および、エチレン系樹脂3〜30重量%を含有することを特徴とする請求項1に記載の熱収縮性ポリオレフィン系フィルム。
【請求項3】
中間層[B]が、ポリプロピレン系樹脂を主体とし、石油樹脂及び/又は環状オレフィン系樹脂及び/又はエチレン系樹脂を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の熱収縮性ポリオレフィン系フィルム。
【請求項4】
ポリスチレン系樹脂がスチレン系モノマーと共役ジエン系モノマーの共重合体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱収縮性ポリオレフィン系フィルム。
【請求項5】
ポリスチレン系樹脂が、スチレン系モノマーとイソプレンのブロック共重合体であることを特徴とする請求項4に記載の熱収縮性ポリオレフィン系フィルム。
【請求項6】
熱収縮性ポリオレフィン系フィルムの試料を、80℃の温水中に10秒浸漬して引き上げ、次いで25℃の水中に10秒間浸漬して引き上げたときの最大収縮方向の熱収縮率が20%以上である請求項1〜5のいずれかに記載の熱収縮性ポリオレフィン系フィルム。

【公開番号】特開2006−1088(P2006−1088A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−178401(P2004−178401)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】