熱可塑性アクリル系樹脂発泡体及びその製造方法
【課題】 本発明は、耐熱性に優れ且つ低密度であって熱成形が可能な熱可塑性アクリル
系樹脂発泡体を提供する。
【解決手段】 本発明の熱可塑性アクリル系樹脂発泡体の製造方法は、メタクリル酸メチ
ル、(メタ)アクリル酸及びスチレンからなる重合性単量体と、発泡剤として尿素とを混
合して均一な単量体溶液とし、この単量体溶液に無水マレイン酸及びメタクリルアミドを
それぞれの量が上記メタクリル酸メチルの量以下となるように添加すると共に、連鎖移動
剤、還元剤及び還元型の重合開始剤を添加して重合性溶液を製造し、この重合性溶液を重
合させて得られた重合体を加熱、発泡させて熱可塑性アクリル系樹脂発泡体を製造するこ
とを特徴とする。
系樹脂発泡体を提供する。
【解決手段】 本発明の熱可塑性アクリル系樹脂発泡体の製造方法は、メタクリル酸メチ
ル、(メタ)アクリル酸及びスチレンからなる重合性単量体と、発泡剤として尿素とを混
合して均一な単量体溶液とし、この単量体溶液に無水マレイン酸及びメタクリルアミドを
それぞれの量が上記メタクリル酸メチルの量以下となるように添加すると共に、連鎖移動
剤、還元剤及び還元型の重合開始剤を添加して重合性溶液を製造し、この重合性溶液を重
合させて得られた重合体を加熱、発泡させて熱可塑性アクリル系樹脂発泡体を製造するこ
とを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性及び軽量性に優れた熱可塑性アクリル系樹脂発泡体及びその製造方法
に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からアクリル系樹脂発泡体は、硬質である上に軽量性及び断熱性に優れていること
から、建築材料などの用途に広く用いられている。このようなアクリル系樹脂発泡体とし
ては、特許文献1に、メタクリル酸メチル50〜70重量%、(メタ)アクリル酸14〜
27重量%及びスチレン10〜20重量%からなる重合性単量体と、尿素又は尿素誘導体
からなる発泡剤とを混合して均一な溶液とし、この溶液を重合、発泡させて得られる熱可
塑性アクリル系樹脂発泡体が提案されている。
【0003】
しかしながら、上記熱可塑性アクリル系樹脂発泡体は、耐熱性に劣ることから、熱成形
させることが困難であり、仮に熱成形させた場合にあっても収縮するなどの不具合が頻繁
に生じてしまい実用上、使用することができなかった。
【0004】
【特許文献1】特公昭50−38143号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、耐熱性に優れ且つ低密度であって熱成形が可能な熱可塑性アクリル系樹脂発
泡体及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の熱可塑性アクリル系樹脂発泡体の製造方法は、メタクリル酸メチル50〜70
重量%、(メタ)アクリル酸14〜30重量%及びスチレン10〜20重量%からなる重
合性単量体と、発泡剤として尿素とを混合して均一な単量体溶液とし、この単量体溶液に
無水マレイン酸及びメタクリルアミドをそれぞれの量が上記メタクリル酸メチルの量以下
となるように添加すると共に、連鎖移動剤、還元剤及び還元型の重合開始剤を添加して重
合性溶液を製造し、この重合性溶液を重合させて得られた重合体を上記発泡剤が分解する
温度以上に加熱して発泡させて、TMA測定による耐熱温度が140℃以上で且つ密度が
0.083g/cm3 以下である熱可塑性アクリル系樹脂発泡体を製造することを特徴と
する。
【0007】
上記単量体溶液は、メタクリル酸メチル50〜70重量%、(メタ)アクリル酸14〜
30重量%及びスチレン10〜20重量%からなる重合性単量体と、尿素又は尿素誘導体
からなる発泡剤とを均一に混合してなる。なお、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸又は
メタアクリル酸の何れか一方或いは双方を意味する。
【0008】
単量体溶液中におけるメタクリル酸メチルの含有量は、少なくても多くても、重合性溶
液を重合させて得られた重合体の発泡性が低下するので、50〜70重量%に限定される
。同様に、単量体溶液中における(メタ)アクリル酸の含有量も、少なくても多くても、
重合性溶液を重合させて得られた重合体の発泡性が低下するので、14〜30重量%に限
定される。
【0009】
更に、単量体溶液中におけるスチレンの含有量は、少ないと、上記と同様に重合体の発
泡性が低下する一方、多いと、得られる熱可塑性アクリル系樹脂発泡体の硬度が低下する
ので、10〜20重量%に限定される。
【0010】
そして、単量体溶液中に添加される発泡剤としては尿素が用いられる。又、単量体溶液
中の発泡剤の含有量は、少ないと、得られる熱可塑性アクリル系樹脂発泡体の軽量性が低
下することがある一方、多いと、重合性単量体中に尿素を均一に溶解させることが困難と
なったり或いは得られる熱可塑性アクリル系樹脂発泡体中に未分解の発泡剤が残存し易く
なることがあるので、重合性単量体100重量部に対して1〜15重量部が好ましい。
【0011】
更に、上記単量体溶液中に、無水マレイン酸及びメタクリルアミドをそれぞれの量が上
記メタクリル酸メチルの量以下となるように、好ましくは、メタクリル酸メチルの量の2
/3以下となるように添加する。
【0012】
これは、無水マレイン酸及びメタクリルアミドの添加量がメタクリル酸メチルの量より
も多くなると、得られる熱可塑性アクリル系樹脂発泡体の発泡倍率が低下して軽量性が低
下するからである。
【0013】
加えて、上記単量体溶液に、連鎖移動剤、還元剤及び還元型の重合開始剤を添加して重
合性溶液を製造する。上記連鎖移動剤としては、例えば、各種メルカプタン類、四塩化炭
素、トルエン、α−メチルスチレン、α−メチルスチレンダイマーなどが挙げられ、還元
剤としての作用を奏しない、所謂、非還元性の連鎖移動剤が好ましく、このような非還元
性の連鎖移動剤としては、α−メチルスチレンダイマーが好ましい。
【0014】
又、上記還元剤としては、他の化合物の還元作用(電子を供与する作用)を有する化合
物であれば、特に限定されず、例えば、FeCl2 、CoCl2 、MnCl2 などの低原
子価遷移金属塩、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ジメチルアニリンなどのアミン化合
物、イミン化合物、アミド化合物などの窒素含有化合物などが挙げられ、アミン化合物が
好ましく、ジメチルアニリンがより好ましい。
【0015】
本発明の熱可塑性アクリル系樹脂発泡体の製造方法では、連鎖移動剤と還元剤とを併用
する必要がある。これは、還元剤は、重合開始剤の分解を促進して重合を効率的に行なう
ことができるものの、無水マレイン酸及びメタクリルアミドの存在下では重合度が大きく
なり過ぎて高発泡倍率の熱可塑性アクリル系樹脂発泡体を得ることが困難となる。そこで
、連鎖移動剤を併用することによって、重合反応の過剰な進行を抑制し、重合性溶液を重
合させて得られる重合体の耐熱性及び発泡性を優れたものとするためである。
【0016】
なお、還元剤を用いることなく連鎖移動剤のみを用いた場合には、重合性溶液の重合が
極めて遅くなり、却って得られる重合体の重合度が大きくなり過ぎて高発泡倍率の熱可塑
性アクリル系樹脂発泡体を得ることができない。
【0017】
このような観点から、連鎖移動剤は、重合性単量体100重量部に対して0.1〜2重
量部が好ましく、還元剤は、重合性単量体100重量部に対して0.01〜1重量部が好
ましい。
【0018】
又、上記還元型の重合開始剤とは、還元剤によって分解が促進される有機過酸化物をい
い、このような有機過酸化物としては、例えば、t−ブチルヒドロペルオキシド、クミル
ヒドロキシペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、p−メンタンヒ
ドロペルオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロペルオキシドなどが挙げ
られ、分解温度が高いほど、重合性溶液の重合速度を調整し易いことから、t−ブチルヒ
ドロペルオキシドが好ましい。
【0019】
そして、還元型の重合開始剤の添加量は、少ないと、重合性溶液の重合反応が充分に進
行しないことがある一方、多いと、重合性溶液の重合反応が過剰に進行して、得られる熱
可塑性アクリル系樹脂発泡体の耐熱性及び発泡倍率の低下を生じるので、重合性単量体1
00重量部に対して0.5〜5重量部が好ましい。
【0020】
なお、上記重合性溶液中には、熱可塑性アクリル系樹脂発泡体の物性を損なわない範囲
内において、気泡調整剤を添加してもよい。このような気泡調整剤としては、例えば、ア
ルカリ土類金属塩、金属酸化物、珪藻土などの粉末状無機物、無水硫酸ナトリウムなどが
挙げられ、単独で用いられても併用されてもよい。
【0021】
このようにして製造された重合性溶液を重合開始剤の分解温度以上の温度に加熱するこ
とによって重合性単量体、無水マレイン酸及びメタクリルアミドを共重合させて重合体を
製造し、この重合体を発泡剤が分解する温度以上に加熱して発泡させて熱可塑性アクリル
系樹脂発泡体を製造することができる。
【0022】
上記熱可塑性アクリル系樹脂発泡体におけるTMA測定による耐熱温度は、低いと、熱
可塑性アクリル系樹脂発泡体を熱成形して得られる成形品の熱収縮が大きくなり、実用上
、用いることができないので、140℃以上に限定される。
【0023】
ここで、TMA測定による耐熱温度とは下記の要領で測定されたものをいう。先ず、熱
可塑性アクリル系樹脂発泡体から一辺が7mmの立方体形状の試験片を作製し、この試験
片の上端面全面に対して垂直下方に98mNの荷重を加えつつ、試験片を常温から2℃/
分の昇温速度で加熱し、試験片の上下高さが試験前の試験片の上下高さに対して3%収縮
した際の温度をいう。なお、熱可塑性アクリル系樹脂発泡体におけるTMA測定による耐
熱温度は、例えば、セイコーインスツルメンツ社から商品名「EXSTAR6000」で
市販されている測定装置を用いて測定することができる。
【0024】
又、上記熱可塑性アクリル系樹脂発泡体の密度は、大きいと、軽量性が損なわれるので
、0.083g/cm3 以下に限定され、0.071g/cm3 以下が好ましい。なお、
熱可塑性アクリル系樹脂発泡体の密度は、JIS K7222に準拠して測定されたもの
をいう。
【発明の効果】
【0025】
本発明の熱可塑性アクリル系樹脂発泡体の製造方法は、メタクリル酸メチル50〜70
重量%、(メタ)アクリル酸14〜30重量%及びスチレン10〜20重量%からなる重
合性単量体と、発泡剤として尿素とを混合して均一な単量体溶液とし、この単量体溶液に
無水マレイン酸及びメタクリルアミドをそれぞれの量が上記メタクリル酸メチルの量以下
となるように添加すると共に、連鎖移動剤、還元剤及び還元型の重合開始剤を添加して重
合性溶液を製造し、この重合性溶液を重合させて得られた重合体を上記発泡剤が分解する
温度以上に加熱して発泡させて、TMA測定による耐熱温度が140℃以上で且つ密度が
0.083g/cm3 以下である熱可塑性アクリル系樹脂発泡体を製造することを特徴と
するので、無水マレイン酸及びメタクリルアミドを重合性単量体に共重合させており、得
られる熱可塑性アクリル系樹脂発泡体は耐熱性に優れており、熱成形によって寸法安定性
に優れた熱成形品を得ることができる。
【0026】
そして、連鎖移動剤及び還元剤を併用して用いることによって、無水マレイン酸やメタ
クリルアミドを含有する重合性溶液の重合反応を適正な重合速度となるように制御し、得
られる重合体の重合度を発泡に適したものとしており、得られる熱可塑性アクリル系樹脂
発泡体の高発泡倍率化を図ることができる。
【実施例】
【0027】
(実施例1,2、比較例1)
表1に示した所定量のメタクリル酸メチル、メタクリル酸及びスチレンからなる重合性
単量体に、発泡剤として尿素を表1に示した所定量だけ添加して均一に溶解させて単量体
溶液を作製した。
【0028】
この単量体溶液に無水マレイン酸及びメタクリルアミド、並びに、連鎖移動剤としてα
−メチルスチレンダイマー、還元剤としてジメチルアニリン及び還元型の重合開始剤とし
てt−ブチルヒドロペルオキシドを表1に示した所定量だけ添加して重合性溶液を製造し
た。
【0029】
そして、縦300mm×横150mm×高さ25mmの収納部を有するガラス製の型枠
内に重合性溶液を供給した後、この型枠を水槽内に浸漬して水温を徐々に室温から昇温さ
せて50℃に10時間に亘って維持して、重合性単量体、無水マレイン酸及びメタクリル
アミドを共重合させて板状の重合体を得た。次に、型枠を破壊して重合体を取り出し、こ
の重合体を80℃にて3時間に亘って更に加熱して重合反応を完結させた。
【0030】
しかる後、板状の重合体を170℃に保持された熱風炉内に供給して50分間に亘って
加熱し、重合体を発泡させて熱可塑性アクリル系樹脂発泡板を得た。
【0031】
(比較例2)
型枠内において重合性溶液を50℃に36時間放置したこと、ジメチルアニリンを用い
なかったこと以外は実施例1と同様にして熱可塑性アクリル系樹脂発泡体を得た。
【0032】
(比較例3)
α−メチルスチレンダイマーを用いなかったこと以外は実施例1と同様にして型枠内に
おいて重合性溶液を重合させたところ、重合性溶液は重合に伴って固化したものの、板状
の重合体が大きく膨張してしまって発泡用の重合体とはならず、熱可塑性アクリル系樹脂
発泡体を得ることはできなかった。
【0033】
得られた熱可塑性アクリル系樹脂発泡体のTMA測定による耐熱温度及び密度を測定し
、その結果を表1に示した。
【0034】
【表1】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性及び軽量性に優れた熱可塑性アクリル系樹脂発泡体及びその製造方法
に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からアクリル系樹脂発泡体は、硬質である上に軽量性及び断熱性に優れていること
から、建築材料などの用途に広く用いられている。このようなアクリル系樹脂発泡体とし
ては、特許文献1に、メタクリル酸メチル50〜70重量%、(メタ)アクリル酸14〜
27重量%及びスチレン10〜20重量%からなる重合性単量体と、尿素又は尿素誘導体
からなる発泡剤とを混合して均一な溶液とし、この溶液を重合、発泡させて得られる熱可
塑性アクリル系樹脂発泡体が提案されている。
【0003】
しかしながら、上記熱可塑性アクリル系樹脂発泡体は、耐熱性に劣ることから、熱成形
させることが困難であり、仮に熱成形させた場合にあっても収縮するなどの不具合が頻繁
に生じてしまい実用上、使用することができなかった。
【0004】
【特許文献1】特公昭50−38143号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、耐熱性に優れ且つ低密度であって熱成形が可能な熱可塑性アクリル系樹脂発
泡体及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の熱可塑性アクリル系樹脂発泡体の製造方法は、メタクリル酸メチル50〜70
重量%、(メタ)アクリル酸14〜30重量%及びスチレン10〜20重量%からなる重
合性単量体と、発泡剤として尿素とを混合して均一な単量体溶液とし、この単量体溶液に
無水マレイン酸及びメタクリルアミドをそれぞれの量が上記メタクリル酸メチルの量以下
となるように添加すると共に、連鎖移動剤、還元剤及び還元型の重合開始剤を添加して重
合性溶液を製造し、この重合性溶液を重合させて得られた重合体を上記発泡剤が分解する
温度以上に加熱して発泡させて、TMA測定による耐熱温度が140℃以上で且つ密度が
0.083g/cm3 以下である熱可塑性アクリル系樹脂発泡体を製造することを特徴と
する。
【0007】
上記単量体溶液は、メタクリル酸メチル50〜70重量%、(メタ)アクリル酸14〜
30重量%及びスチレン10〜20重量%からなる重合性単量体と、尿素又は尿素誘導体
からなる発泡剤とを均一に混合してなる。なお、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸又は
メタアクリル酸の何れか一方或いは双方を意味する。
【0008】
単量体溶液中におけるメタクリル酸メチルの含有量は、少なくても多くても、重合性溶
液を重合させて得られた重合体の発泡性が低下するので、50〜70重量%に限定される
。同様に、単量体溶液中における(メタ)アクリル酸の含有量も、少なくても多くても、
重合性溶液を重合させて得られた重合体の発泡性が低下するので、14〜30重量%に限
定される。
【0009】
更に、単量体溶液中におけるスチレンの含有量は、少ないと、上記と同様に重合体の発
泡性が低下する一方、多いと、得られる熱可塑性アクリル系樹脂発泡体の硬度が低下する
ので、10〜20重量%に限定される。
【0010】
そして、単量体溶液中に添加される発泡剤としては尿素が用いられる。又、単量体溶液
中の発泡剤の含有量は、少ないと、得られる熱可塑性アクリル系樹脂発泡体の軽量性が低
下することがある一方、多いと、重合性単量体中に尿素を均一に溶解させることが困難と
なったり或いは得られる熱可塑性アクリル系樹脂発泡体中に未分解の発泡剤が残存し易く
なることがあるので、重合性単量体100重量部に対して1〜15重量部が好ましい。
【0011】
更に、上記単量体溶液中に、無水マレイン酸及びメタクリルアミドをそれぞれの量が上
記メタクリル酸メチルの量以下となるように、好ましくは、メタクリル酸メチルの量の2
/3以下となるように添加する。
【0012】
これは、無水マレイン酸及びメタクリルアミドの添加量がメタクリル酸メチルの量より
も多くなると、得られる熱可塑性アクリル系樹脂発泡体の発泡倍率が低下して軽量性が低
下するからである。
【0013】
加えて、上記単量体溶液に、連鎖移動剤、還元剤及び還元型の重合開始剤を添加して重
合性溶液を製造する。上記連鎖移動剤としては、例えば、各種メルカプタン類、四塩化炭
素、トルエン、α−メチルスチレン、α−メチルスチレンダイマーなどが挙げられ、還元
剤としての作用を奏しない、所謂、非還元性の連鎖移動剤が好ましく、このような非還元
性の連鎖移動剤としては、α−メチルスチレンダイマーが好ましい。
【0014】
又、上記還元剤としては、他の化合物の還元作用(電子を供与する作用)を有する化合
物であれば、特に限定されず、例えば、FeCl2 、CoCl2 、MnCl2 などの低原
子価遷移金属塩、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ジメチルアニリンなどのアミン化合
物、イミン化合物、アミド化合物などの窒素含有化合物などが挙げられ、アミン化合物が
好ましく、ジメチルアニリンがより好ましい。
【0015】
本発明の熱可塑性アクリル系樹脂発泡体の製造方法では、連鎖移動剤と還元剤とを併用
する必要がある。これは、還元剤は、重合開始剤の分解を促進して重合を効率的に行なう
ことができるものの、無水マレイン酸及びメタクリルアミドの存在下では重合度が大きく
なり過ぎて高発泡倍率の熱可塑性アクリル系樹脂発泡体を得ることが困難となる。そこで
、連鎖移動剤を併用することによって、重合反応の過剰な進行を抑制し、重合性溶液を重
合させて得られる重合体の耐熱性及び発泡性を優れたものとするためである。
【0016】
なお、還元剤を用いることなく連鎖移動剤のみを用いた場合には、重合性溶液の重合が
極めて遅くなり、却って得られる重合体の重合度が大きくなり過ぎて高発泡倍率の熱可塑
性アクリル系樹脂発泡体を得ることができない。
【0017】
このような観点から、連鎖移動剤は、重合性単量体100重量部に対して0.1〜2重
量部が好ましく、還元剤は、重合性単量体100重量部に対して0.01〜1重量部が好
ましい。
【0018】
又、上記還元型の重合開始剤とは、還元剤によって分解が促進される有機過酸化物をい
い、このような有機過酸化物としては、例えば、t−ブチルヒドロペルオキシド、クミル
ヒドロキシペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、p−メンタンヒ
ドロペルオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロペルオキシドなどが挙げ
られ、分解温度が高いほど、重合性溶液の重合速度を調整し易いことから、t−ブチルヒ
ドロペルオキシドが好ましい。
【0019】
そして、還元型の重合開始剤の添加量は、少ないと、重合性溶液の重合反応が充分に進
行しないことがある一方、多いと、重合性溶液の重合反応が過剰に進行して、得られる熱
可塑性アクリル系樹脂発泡体の耐熱性及び発泡倍率の低下を生じるので、重合性単量体1
00重量部に対して0.5〜5重量部が好ましい。
【0020】
なお、上記重合性溶液中には、熱可塑性アクリル系樹脂発泡体の物性を損なわない範囲
内において、気泡調整剤を添加してもよい。このような気泡調整剤としては、例えば、ア
ルカリ土類金属塩、金属酸化物、珪藻土などの粉末状無機物、無水硫酸ナトリウムなどが
挙げられ、単独で用いられても併用されてもよい。
【0021】
このようにして製造された重合性溶液を重合開始剤の分解温度以上の温度に加熱するこ
とによって重合性単量体、無水マレイン酸及びメタクリルアミドを共重合させて重合体を
製造し、この重合体を発泡剤が分解する温度以上に加熱して発泡させて熱可塑性アクリル
系樹脂発泡体を製造することができる。
【0022】
上記熱可塑性アクリル系樹脂発泡体におけるTMA測定による耐熱温度は、低いと、熱
可塑性アクリル系樹脂発泡体を熱成形して得られる成形品の熱収縮が大きくなり、実用上
、用いることができないので、140℃以上に限定される。
【0023】
ここで、TMA測定による耐熱温度とは下記の要領で測定されたものをいう。先ず、熱
可塑性アクリル系樹脂発泡体から一辺が7mmの立方体形状の試験片を作製し、この試験
片の上端面全面に対して垂直下方に98mNの荷重を加えつつ、試験片を常温から2℃/
分の昇温速度で加熱し、試験片の上下高さが試験前の試験片の上下高さに対して3%収縮
した際の温度をいう。なお、熱可塑性アクリル系樹脂発泡体におけるTMA測定による耐
熱温度は、例えば、セイコーインスツルメンツ社から商品名「EXSTAR6000」で
市販されている測定装置を用いて測定することができる。
【0024】
又、上記熱可塑性アクリル系樹脂発泡体の密度は、大きいと、軽量性が損なわれるので
、0.083g/cm3 以下に限定され、0.071g/cm3 以下が好ましい。なお、
熱可塑性アクリル系樹脂発泡体の密度は、JIS K7222に準拠して測定されたもの
をいう。
【発明の効果】
【0025】
本発明の熱可塑性アクリル系樹脂発泡体の製造方法は、メタクリル酸メチル50〜70
重量%、(メタ)アクリル酸14〜30重量%及びスチレン10〜20重量%からなる重
合性単量体と、発泡剤として尿素とを混合して均一な単量体溶液とし、この単量体溶液に
無水マレイン酸及びメタクリルアミドをそれぞれの量が上記メタクリル酸メチルの量以下
となるように添加すると共に、連鎖移動剤、還元剤及び還元型の重合開始剤を添加して重
合性溶液を製造し、この重合性溶液を重合させて得られた重合体を上記発泡剤が分解する
温度以上に加熱して発泡させて、TMA測定による耐熱温度が140℃以上で且つ密度が
0.083g/cm3 以下である熱可塑性アクリル系樹脂発泡体を製造することを特徴と
するので、無水マレイン酸及びメタクリルアミドを重合性単量体に共重合させており、得
られる熱可塑性アクリル系樹脂発泡体は耐熱性に優れており、熱成形によって寸法安定性
に優れた熱成形品を得ることができる。
【0026】
そして、連鎖移動剤及び還元剤を併用して用いることによって、無水マレイン酸やメタ
クリルアミドを含有する重合性溶液の重合反応を適正な重合速度となるように制御し、得
られる重合体の重合度を発泡に適したものとしており、得られる熱可塑性アクリル系樹脂
発泡体の高発泡倍率化を図ることができる。
【実施例】
【0027】
(実施例1,2、比較例1)
表1に示した所定量のメタクリル酸メチル、メタクリル酸及びスチレンからなる重合性
単量体に、発泡剤として尿素を表1に示した所定量だけ添加して均一に溶解させて単量体
溶液を作製した。
【0028】
この単量体溶液に無水マレイン酸及びメタクリルアミド、並びに、連鎖移動剤としてα
−メチルスチレンダイマー、還元剤としてジメチルアニリン及び還元型の重合開始剤とし
てt−ブチルヒドロペルオキシドを表1に示した所定量だけ添加して重合性溶液を製造し
た。
【0029】
そして、縦300mm×横150mm×高さ25mmの収納部を有するガラス製の型枠
内に重合性溶液を供給した後、この型枠を水槽内に浸漬して水温を徐々に室温から昇温さ
せて50℃に10時間に亘って維持して、重合性単量体、無水マレイン酸及びメタクリル
アミドを共重合させて板状の重合体を得た。次に、型枠を破壊して重合体を取り出し、こ
の重合体を80℃にて3時間に亘って更に加熱して重合反応を完結させた。
【0030】
しかる後、板状の重合体を170℃に保持された熱風炉内に供給して50分間に亘って
加熱し、重合体を発泡させて熱可塑性アクリル系樹脂発泡板を得た。
【0031】
(比較例2)
型枠内において重合性溶液を50℃に36時間放置したこと、ジメチルアニリンを用い
なかったこと以外は実施例1と同様にして熱可塑性アクリル系樹脂発泡体を得た。
【0032】
(比較例3)
α−メチルスチレンダイマーを用いなかったこと以外は実施例1と同様にして型枠内に
おいて重合性溶液を重合させたところ、重合性溶液は重合に伴って固化したものの、板状
の重合体が大きく膨張してしまって発泡用の重合体とはならず、熱可塑性アクリル系樹脂
発泡体を得ることはできなかった。
【0033】
得られた熱可塑性アクリル系樹脂発泡体のTMA測定による耐熱温度及び密度を測定し
、その結果を表1に示した。
【0034】
【表1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタクリル酸メチル50〜70重量%、(メタ)アクリル酸14〜30重量%及びスチレ
ン10〜20重量%からなる重合性単量体と、発泡剤として尿素とを混合して均一な単量
体溶液とし、この単量体溶液に無水マレイン酸及びメタクリルアミドをそれぞれの量が上
記メタクリル酸メチルの量以下となるように添加すると共に、連鎖移動剤、還元剤及び還
元型の重合開始剤を添加して重合性溶液を製造し、この重合性溶液を重合させて得られた
重合体を上記発泡剤が分解する温度以上に加熱して発泡させて、TMA測定による耐熱温
度が140℃以上で且つ密度が0.083g/cm3 以下である熱可塑性アクリル系樹脂
発泡体を製造することを特徴とする熱可塑性アクリル系樹脂発泡体の製造方法。
【請求項2】
メタクリル酸メチル50〜70重量%、(メタ)アクリル酸14〜30重量%及びスチレ
ン10〜20重量%からなる重合性単量体と、発泡剤として尿素とを混合して均一な単量
体溶液とし、この単量体溶液に無水マレイン酸及びメタクリルアミドをそれぞれの量が上
記メタクリル酸メチルの量以下となるように添加すると共に、連鎖移動剤、還元剤及び還
元型の重合開始剤を添加して重合性溶液を製造し、この重合性溶液を重合させて得られた
重合体を上記発泡剤が分解する温度以上に加熱して発泡させて得られたTMA測定による
耐熱温度が140℃以上で且つ密度が0.083g/cm3 以下であることを特徴とする
熱可塑性アクリル系樹脂発泡体。
【請求項3】
連鎖移動剤が非還元性であることを特徴とする請求項2に記載の熱可塑性アクリル系樹脂
発泡体。
【請求項1】
メタクリル酸メチル50〜70重量%、(メタ)アクリル酸14〜30重量%及びスチレ
ン10〜20重量%からなる重合性単量体と、発泡剤として尿素とを混合して均一な単量
体溶液とし、この単量体溶液に無水マレイン酸及びメタクリルアミドをそれぞれの量が上
記メタクリル酸メチルの量以下となるように添加すると共に、連鎖移動剤、還元剤及び還
元型の重合開始剤を添加して重合性溶液を製造し、この重合性溶液を重合させて得られた
重合体を上記発泡剤が分解する温度以上に加熱して発泡させて、TMA測定による耐熱温
度が140℃以上で且つ密度が0.083g/cm3 以下である熱可塑性アクリル系樹脂
発泡体を製造することを特徴とする熱可塑性アクリル系樹脂発泡体の製造方法。
【請求項2】
メタクリル酸メチル50〜70重量%、(メタ)アクリル酸14〜30重量%及びスチレ
ン10〜20重量%からなる重合性単量体と、発泡剤として尿素とを混合して均一な単量
体溶液とし、この単量体溶液に無水マレイン酸及びメタクリルアミドをそれぞれの量が上
記メタクリル酸メチルの量以下となるように添加すると共に、連鎖移動剤、還元剤及び還
元型の重合開始剤を添加して重合性溶液を製造し、この重合性溶液を重合させて得られた
重合体を上記発泡剤が分解する温度以上に加熱して発泡させて得られたTMA測定による
耐熱温度が140℃以上で且つ密度が0.083g/cm3 以下であることを特徴とする
熱可塑性アクリル系樹脂発泡体。
【請求項3】
連鎖移動剤が非還元性であることを特徴とする請求項2に記載の熱可塑性アクリル系樹脂
発泡体。
【公開番号】特開2006−45256(P2006−45256A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−223975(P2004−223975)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】
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