説明

熱可塑性エラストマー組成物を製造するための効率的な混合方法

耐久性、可撓性、不透過性熱可塑性エラストマー組成物は、高温で高剪断ミキサー内で実施される動的加硫方法を使用して製造される。この組成物は、第一のハロゲン化イソブチレン含有エラストマーの硬化した粒子及びポリアミドと反応しそしてポリアミドにグラフト化することができる少なくとも1種の官能基を有する第二のエラストマーの粒子を含んでなり、第一のエラストマー及び第二のエラストマーの粒子は、連続した熱可塑性ポリアミドマトリックス中に分散しており、この方法は、(1)ハロゲン化エラストマー中に、硬化剤を分散させ、予備配合された、好ましくはペレット化された組成物を形成させる工程、(2)ポリアミド樹脂及び任意的な安定剤をミキサー中に導入し、剪断し、加熱して、ポリアミドを溶融し、混合物を形成させる工程、(3)ナイロン可塑剤を導入して、ポリアミド混合物の粘度を低下させて、混合条件下で、予備配合されたエラストマーの粘度に実質的に適合させる工程、(4)予備配合されたエラストマーのペレットをミキサー中に導入し、エラストマー及びポリアミド成分の動的加硫を開始する工程、(5)第二のエラストマーを導入し、加熱及び剪断を継続して、第二のエラストマーを分散させ、動的加硫を実質的に完結させ、そしてミキサーから、熱可塑性エラストマー組成物を取り出す工程を含む。このような組成物はタイヤインナーライナー及びバリヤーフィルム又は層のような用途に於いて特に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ及びその他の工業的ゴム用途に特に有用な、熱可塑性エラストマー組成物並びに特にそのような組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、空気入りタイヤのガスバリヤー層として優れている、低透過性熱可塑性エラストマー組成物が開示されている。この熱可塑性エラストマー組成物は、低透過性熱可塑性マトリックス、例えばポリアミド又はポリアミドのブレンドを含み、ここでは、典型的にBIMSとして参照される、低透過性ゴム、例えば臭素化ポリ(イソブチレン−共−パラメチルスチレン)が分散されている。特許文献2及び特許文献3では、熱可塑性マトリックスと分散したゴム相との粘度比が、共に、体積分率比の関数として特定され、そして熱可塑性相中に分散された小さい粒子サイズの加硫されたゴム粒子の高い濃度を作るために、独立に1の値に近づけられた。特許文献3には、更に、特に、このような組成物が、空気入りタイヤのインナーライナーとして使用されることを意図する場合、得られる組成物の受け入れ得る耐久性を達成するために、熱可塑性樹脂マトリックス中に分散した小さい粒子サイズのゴムが有用なことが開示されている。更に、工業的用途のために有用な熱可塑性エラストマー組成物を製造する技術における改良が、特許文献4及び特許文献5(参照して本明細書に含める)中に、本発明者ら及び他の者によって記載されている。
【0003】
熱可塑性樹脂/熱可塑性樹脂系ブレンド、例えば高密度ポリエチレン樹脂とナイロン6又はナイロン66(HDPE/PA6/PA66)、ポリエチレンテレフタレートと芳香族ナイロン(PET/MXD6)、ポリエチレンテレフタレートとビニルアルコール−エチレンコポリマー(PET/EVOH)から構成された低気体透過性能を示す(即ち、ガスバリヤーとして機能する)組成物(ここで、1種の熱可塑性樹脂は、他の層の上に層状に重ねられて、成形によって複数の層を形成する)及びその製造方法は、例えば非特許文献1に開示されている。更に、タイヤのインナーライナー層としてのこのような組成物の使用に関する応用は、特許文献6に開示されている。しかしながら、これらの材料は、熱可塑性樹脂/熱可塑性樹脂ブレンドであるので、これらは、ガスバリヤー性能には優れているが、可撓性に欠け、従って、このようなフィルムは、顕著な応力及び屈曲を受ける車両タイヤに使用する場合、破断しやすい。
【0004】
更に、インナーライナーとして又はタイヤ中に使用するための、ゴム及び熱可塑性樹脂を含む熱可塑性エラストマーの使用の例もあるが(特許文献7参照)、一般的には、この文献に開示された種類の、優れた耐久性を有する可撓性材料は、耐熱性が低い。マトリックスとしてタイヤ加硫温度よりも低い融点を有する熱可塑性樹脂を使用する熱可塑性エラストマーで、タイヤ加硫サイクルの終わりに、タイヤ加硫ブラダーが開放されるとき、タイヤ内側表面は、熱可塑性樹脂が加硫ブラダーに粘着するか又は加硫ブラダーと擦れるために、外観欠陥を受ける。
【0005】
分散したゴムの粒子サイズを減少するための、混合の間のゴムと樹脂との間の粘度差の制御は、非特許文献2に報告されている。Wuは、ゴム/樹脂の溶融粘度の比が、1に近づく場合、即ち、これらの粘度が等しい場合、分散したゴム粒子サイズが減少したことを報告した。しかしながら、特許文献3には、十分な可撓性、強度及び伸び並びに優れた耐久性を有する熱可塑性エラストマー組成物を製造する試みに於いて、ゴム含有量を増加させ、そしてゴム/樹脂の溶融粘度の比を1で保持することによって、ゴムが連続マトリックスになり、そして加硫されたゴムを含有するこのような組成物は、最早、熱可塑性を示さないことが報告されている。
【0006】
特許文献8、特許文献9及び特許文献10に於いて、動的耐疲労性が必要とされるラミネート構造物、例えばタイヤ又はホースに於いて、その中に分散したゴム/樹脂を含むガス透過防止性熱可塑性エラストマー組成物を使用すると、可撓性のN11−ナイロン又はN12−ナイロンと、優れたガス透過防止性のN6−ナイロン又はN66−ナイロンとのブレンドを使用することによって、可撓性とガス透過防止性との間のバランスを得ることが知られている。更に、αとして定義される、下記の式:
(Φd/Φm)×(ηm/ηd)<1.0
(式中、熱可塑性エラストマー組成物中の連続又はマトリックス相成分及び分散相成分の体積分率は、それぞれ、Φm及びΦdであり、そしてマトリックス相成分及び分散相成分の溶融粘度は、それぞれ、ηm及びηdである)
を使用して、体積分率及び溶融粘度を定義すること、並びに更に、分散したゴム粒子サイズドメインを減少して、耐久性を改良するために、粘度の比ηm/ηdを1に近づけることが提案された。しかしながら、特許文献3に於いて、低温度での耐久性は、ゴム粒子サイズを減少することだけによっては不十分であったことが報告されている。
【0007】
従って、タイヤ及びホース用途に於いて使用するために適している、改良された気体又は液体バリヤー特性並びに強度及び耐久性の望ましいレベルを示す組成物である、熱可塑性マトリックス中に分散した小さい粒子サイズゴムドメインからなる望ましい組成物の改良された性能を達成するための、従前のアプローチの限界は、本発明の方法の使用によって達成されたような改良のための継続する要求が存在することを示唆している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許第722 850 B1号
【特許文献2】欧州特許出願公開第857 761 A1号
【特許文献3】欧州特許出願公開第969 039 A1号
【特許文献4】米国特許出願公開第2006/0223941号明細書(2006年10月5日)
【特許文献5】米国特許出願公開第2007/0060684号明細書
【特許文献6】日本特許出願公開第7−55929号(JP−A−7−55929)
【特許文献7】日本特許出願公開第8−183683号(JP−A−8−183683)
【特許文献8】日本特許出願公開第8−193545号(JP−A−8−193545)
【特許文献9】日本特許出願公開第9−175150号(JP−A−9−175150)
【特許文献10】日本特許出願公開第10−235386号(JP−A−10−235386)
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】I.Hata、Kobunshi(Polymers)、第40(4)巻、第244頁(1991)
【非特許文献2】S.Wu、Polym.Eng.Sci.、27(5)、1987
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
耐久性、可撓性、不透過性熱可塑性エラストマー組成物は、熱可塑性エラストマー組成物を製造するために高温(elevated temperature)でポリマー成分に剪断を適用することができる適切なミキサー内で実施される動的加硫方法を使用して製造され、前記組成物は、ハロゲン化イソブチレン含有エラストマーを含む少なくとも1種の第一のエラストマーの分散した粒子及びポリアミドと反応しそしてポリアミドにグラフト化することができる少なくとも1種の官能基を有する少なくとも1種の第二のエラストマーの分散した粒子からなり、前記少なくとも1種の第一のエラストマー及び少なくとも1種の第二のエラストマーの該粒子は、ナイロンホモポリマー及びナイロンコポリマーからなる群から選択された少なくとも1種のポリアミドからなる連続した熱可塑性ナイロン樹脂マトリックス中に分散しており、この方法は、(1)前記ハロゲン化エラストマー中に、ハロゲン化エラストマーを架橋して予備配合されたハロゲン化エラストマー組成物を得るのに適している少なくとも1種の硬化剤又は硬化システムを、硬化剤又は硬化システムを実質的に均一に分散させるためには十分であるが、エラストマーの実質的な架橋(これは、高温及び剪断の条件下でナイロンに添加したとき、その続く流動及び分散を妨げる)を起こすためには不十分である、剪断条件、混合時間及び温度を使用して分散させる工程、(2)少なくとも1種のナイロン及び任意的な少なくとも1種のナイロン熱安定剤若しくは酸化安定剤若しくは光安定剤又はこれらの組合せを、前記ミキサー中に導入し、このナイロンを溶融させ、前記した任意の安定剤を該ナイロン中に分散させるために十分な剪断及び熱を適用して、ナイロン混合物を形成させる工程、(3)少なくとも1種のナイロン可塑剤を、ミキサー内の温度及び剪断条件下で、ナイロン混合物の粘度を、予備配合されたハロゲン化エラストマーの粘度に実質的に適合させるために十分な量で導入する工程、(4)予備配合されたハロゲン化エラストマーを、ミキサー中に導入し、ハロゲン化エラストマーの動的加硫を開始するために十分な量で、熱及び剪断を適用する工程並びに(5)第二のエラストマーを導入し、加熱及び剪断を継続して、第二のエラストマーを実質的に分散させ、ハロゲン化エラストマーの動的加硫を実質的に完結させ、そしてミキサーから、動的に加硫された熱可塑性エラストマー組成物を取り出す工程からなる。
好ましい態様に於いて、予備配合に関連して、予備配合された混合物の制御された供給の便利さのために、予備配合されたハロゲン化エラストマーをペレット化し、このペレットを冷却する。
【0011】
動的加硫プロセスは、好ましくは二軸スクリュー混合押出機内で、押出機スクリューに沿った位置で押出機の中に導入される組成物のエラストマー(群)及び他の成分のそれぞれが、ナイロンマトリックス中の成分の最適な反応及び分散を可能にするような、熱及び剪断の制御された条件下で実施される。第一のエラストマー又はゴムは、好ましくは、ナイロン成分(群)の可塑化の後で、第二のエラストマー又はゴムの導入の前に、導入される。このプロセスは、加硫されたエラストマーの安定な小さい粒子を含有する好ましい形態を有する、動的加硫された組成物を効率的に製造する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の好ましい応用は、タイヤインナーライナー及びバリヤーフィルム用の熱可塑性エラストマー組成物、更に詳しくは、優れた耐久性並びに流体、例えば空気及び液体に対する不透過性を示す、熱可塑性エラストマー組成物に関する。好ましい組成特徴は、連続ポリアミド熱可塑性マトリックス中に分散した、加硫された粒子の形での、分散したハロゲン化、好ましくは臭素化イソブチレンエラストマーの増大化された又は最大化された含有量に指向している。更に、本発明の特に好ましい面は、ドメインが、また、非常に伸長性であり、そして弾性でありながら、小さいサイズの粒子を含むゴムドメインを与えることができる熱可塑性エラストマー組成物を製造するために適している効率的な混合方法に関する。更に、本発明には、上記の組成物を使用する空気入りタイヤ及びホースの製造方法が含まれる。好ましいエラストマーは、低透過性を示し、好ましくはハロゲン化イソブチレン含有エラストマーのようなポリマーであり、臭素化エラストマー、特に臭素化パラメチルスチレン−共−イソブチレンポリマーが特に好ましく、後で示す構造の高い含有量を示すブロモブチルエラストマーが特に好ましく、また、市販のブロモブチルエラストマー又はこれと上記の臭素化エラストマーとの、互いの又はその他のポリマーとの、これらのブレンドが好ましい。
【0013】
本明細書で使用される周期表族についての新しい番号付け体系は、Chemical and Engineering News、第63(5)巻、第27頁(1985)に開示されている通りである。全ての分子量は、特に示さない限り、重量平均である。
【0014】
特許請求の範囲を含む、全明細書を通して、下記の用語は、以下に示した意味を有するものとする。
【0015】
含む又は含んでなる(comprise又はcomprising):語「含んでなる(comprise)」及びこの語の変形、例えば「含んでなる(comprising)」並びに「有する」、「含む」、「含有する」及びその変形は、それが参照する、名称を挙げたプロセス工程、成分、要素又は材料が必須であるが、他の工程、成分、要素又は材料を加えることができ、これらがなお、特許請求の範囲又は開示の範囲内の構成を形成することを意味する。発明を説明する際に及び特許請求の範囲に於いて挙げられているとき、発明及び特許請求されたものは、追従するもの及び潜在的により以上と考えられることを意味する。これらの用語は、特に特許請求の範囲に適用されるとき、包括的又は制限が無く、追加の挙げられていない成分、要素若しくは材料又は方法工程を排除しない。オーストラリアの特許法の目的のために、用語「含んでなる(comprising)」は、用語「含む」と同義であると考えるべきである。
【0016】
から本質的になる(consisting essentially of):本件文脈に於いて、「から本質的になる(consisting essentially of)」は、本発明の基本的で新規な特徴を変える、任意の要素又は要素の組合せも及び任意の要素又は要素の組合せの任意量も排除することを意味する。従って、実施例の手段により、限定の手段によることなく、動的加硫を含まなかったプロセスを使用して製造された熱可塑性エラストマー組成物は、排除されるであろう。
【0017】
実質的に(substantially):本発明の目的のために、特定の性質、特徴又は変数に関して他の方法で定義されない限り、用語「実質的に」は、全ての規準、例えば性質、特徴又は変数に適用されるとき、当業者が、達成されるべき利益又は所望される条件若しくは特性値が適合されると理解するような尺度で、記載された規準に適合することを意味する。
【0018】
ポリマーはホモポリマー、コポリマー、共重合体、ターポリマー等を指すために使用することができる。同様に、コポリマーは、任意的な他のモノマーと共に、少なくとも2種のモノマーを含むポリマーを指すことができる。
【0019】
ポリマーがモノマーを含む(又は含んでなる)として参照されるとき、このモノマーは、ポリマー中に、モノマーの重合した形で又はモノマーの誘導体形で存在する。しかしながら、参照の容易性のために、句「(それぞれの)モノマーを含んでなる」等が、略記として使用される。同様に、触媒成分が、成分の中性安定形を含むとして記載されるとき、成分の活性形が、モノマーと反応してポリマーを製造する形であることは、当業者によってよく理解されているところである。
【0020】
イソオレフィンは、同じ炭素上に2個の置換基を有する任意のオレフィンモノマーを指す。
【0021】
マルチオレフィンは、2個の二重結合を有する任意のモノマーを指す。好ましい態様に於いて、マルチオレフィンは、2個の共役二重結合からなる任意のモノマー、例えばイソプレンのような共役ジエンである。
【0022】
本明細書で使用するエラストマー又はエラストマー群は、ASTM D1566定義と一致する任意のポリマー又はポリマーの組成物を指す。この用語は、用語「ゴム(群)」と互換的に使用することができる。
【0023】
アルキルは、式から1個又はそれ以上の水素を落とすことによって、アルカンから誘導することができる、パラフィン系炭化水素基、例えばメチル基(CH3)又はエチル基(CH3CH2)等を指す。
【0024】
アリールは、芳香族化合物、例えばベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、アントラセン等の環構造特徴を形成する炭化水素基を指し、典型的には、その構造内に交互二重結合(「不飽和」)を有する。従って、アリール基は、式から1個又はそれ以上の水素を落とすことによって、芳香族化合物から誘導される基、例えばフェニル又はC65である。
【0025】
「置換された」は、少なくとも1個の水素基が、例えばハロゲン(塩素、臭素、フッ素又はヨウ素)、アミノ、ニトロ、スルホキシ(スルホネート又はアルキルスルホネート)、チオール、アルキルチオール及びヒドロキシ;アルキル、炭素数1〜20の直鎖又は分枝鎖(これには、メチル、エチル、プロピル、tert−ブチル、イソプロピル、イソブチル等が含まれる);アルコキシ、炭素数1〜20の直鎖又は分枝鎖アルコキシ、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、第二級ブトキシ、第三級ブトキシ、ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、ノニルオキシ及びデシルオキシを含む;ハロアルキル(これは、少なくとも1個のハロゲンによって置換された炭素数1〜20の直鎖又は分枝鎖アルキルを意味し、例えばクロロメチル、ブロモメチル、フルオロメチル、ヨードメチル、2−クロロエチル、2−ブロモエチル、2−フルオロエチル、3−クロロプロピル、3−ブロモプロピル、3−フルオロプロピル、4−クロロブチル、4−フルオロブチル、ジクロロメチル、ジブロモメチル、ジフルオロメチル、ジヨードメチル、2,2−ジクロロエチル、2,2−ジブロモエチル、2,2−ジフルオロエチル、3,3−ジクロロプロピル、3,3−ジフルオロプロピル、4,4−ジクロロブチル、4,4−ジフルオロブチル、トリクロロメチル、4,4−ジフルオロブチル、トリクロロメチル、トリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、2,3,3−トリフルオロプロピル、1,1,2,2−テトラフルオロエチル及び2,2,3,3−テトラフルオロプロピルを含む)から選択された少なくとも1個の置換基によって置換されていることを指す。従って、例えば「置換されたスチレン系単位」には、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン等が含まれる。
【0026】
本発明は、少なくとも1種のハロゲン化イソブチレン含有ゴムを含んでなる。典型的には、これは、以下に記載する熱可塑性樹脂と共に、約55/45〜80/20、好ましくは約60/40〜約75/25、更に好ましくは約65/35〜約75/25の、ゴム対樹脂の重量比で、組成物中に存在する。ハロゲン化ゴムは、少なくとも約0.1モル%のハロゲン(ここでハロゲンは臭素、塩素及びヨウ素からなる群から選択される)を有するゴムとして定義される。本発明に於いて有用である好ましいハロゲン化ゴムには、ハロゲン化イソブチレン系ホモポリマー又はコポリマーが含まれる。これらのポリマーは、C4〜C7イソモノオレフィン誘導単位、例えばイソブチレン誘導単位と少なくとも1種の他の重合性単位とのランダムコポリマーとして記載することができる。本発明の一つの態様に於いて、ハロゲン化イソブチレン系コポリマーは、ブチル型ゴム又は分枝鎖ブチル型ゴム、特に、これらのエラストマーの臭素化版である。(有用な不飽和ブチルゴム、例えばオレフィン又はイソオレフィンのホモポリマー及びコポリマー並びに本発明のために適している他の種類のエラストマーは、公知であり、Rubber Technology 209-581(Maurice Morton編、Chapman & Hall 1995)、The Vanderbilt Rubber Handbook 105-122(Robert F.Ohm編、R.T.Vanderbilt Co.,Inc.1990)及び8 Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology 934-955(John Wiley & Sons,Inc.第4版、1993)中のEdward Kresge及びH.C.Wangに記載されている)。
【0027】
ブチルゴムは、典型的には、モノマーの混合物を反応させることによって製造され、この混合物は、少なくとも(1)C4〜C12イソオレフィンモノマー成分、例えばイソブチレンと(2)マルチオレフィンモノマー成分とを有する。このイソオレフィンは、一つの態様に於いて、全モノマー混合物の70〜99.5重量%の範囲内であり、他の態様に於いて、85〜99.5重量%の範囲内である。このマルチオレフィン成分は、モノマー混合物中に、一つの態様に於いて、30〜0.5重量%、他の態様に於いて、15〜0.5重量%で存在する。更に他の態様に於いて、モノマー混合物の8〜0.5重量%はマルチオレフィンである。イソオレフィンは、好ましくはC4〜C12化合物であり、その限定されない例は、イソブチレン、イソブテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン、1−ブテン、2−ブテン、メチルビニルエーテル、インデン、ビニルトリメチルシラン、ヘキセン及び4−メチル−1−ペンテンのような化合物である。マルチオレフィンはC4〜C14マルチオレフィン、例えばイソプレン、ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、ミルセン、6,6−ジメチル−フルベン、ヘキサジエン、シクロペンタジエン及びピペリレン並びに欧州特許第0 279 456号及び米国特許第5,506,316号及び米国特許第5,162,425号に開示されているような他のモノマーである。他の重合性モノマー、例えばスチレン及びジクロロスチレンも、ブチルゴムでの単独重合又は共重合のために適している。本発明に於いて有用なブチルゴムポリマーの一つの態様は、95〜99.5重量%のイソブチレンを、0.5〜8重量%のイソプレン、又は更に他の態様に於いて0.5重量%〜5.0重量%のイソプレンと反応させることによって得られる。ブチルゴム及びそれらの製造方法は、例えば米国特許第2,356,128号、米国特許第3,968,076号、米国特許第4,474,924号、米国特許第4,068,051号及び米国特許第5,532,312号中に詳細に記載されている。
【0028】
ハロゲン化ブチルゴムは上記のブチルゴム生成物のハロゲン化によって製造される。ハロゲン化は任意の手段によって実施することができ、本発明はハロゲン化方法によって限定されない。ブチルポリマーのようなポリマーをハロゲン化する方法は、米国特許第2,631,984号、米国特許第3,099,644号、米国特許第4,288,575号、米国特許第4,554,326号、米国特許第4,632,963号、米国特許第4,681,921号、米国特許第4,650,831号、米国特許第4,384,072号、米国特許第4,513,116号及び米国特許第5,681,901号に開示されている。一つの態様に於いて、ブチルゴムは、ヘキサン希釈剤中で、4〜60℃で、ハロゲン化剤として臭素(Br2)又は塩素(Cl2)を使用してハロゲン化される。米国特許第4,288,575号に開示されているような、後処理したハロゲン化ブチルゴムを使用することもできる。このハロゲン化ブチルゴムは、典型的には、約20〜約70のムーニー粘度(125℃でML1+8)、例えば、他の態様に於いて、約25〜約55のムーニー粘度を有する。ハロゲン含有量は、典型的には、ハロゲン化ブチルゴムの重量基準で約0.1〜10重量%、例えば約0.5〜5重量%、或いは約0.8〜約2.5重量%、例えば約1〜約2重量%である。ハロゲン化ブチルゴムの特に好ましい形には、下記のハロゲン化構造
【0029】
【化1】

【0030】
(式中、Xはハロゲンを表し、特に好ましい態様に於いて、ハロゲンは臭素であり、或いはハロゲンは塩素である)
の高い含有量を含有する。
【0031】
本発明に於いて有用なハロゲン化ブチルゴムの商業的態様は、Bromobutyl 2222(エクソンモービル ケミカル カンパニー(ExxonMobil Chemical Company))である。そのムーニー粘度は、典型的には、約27〜37(125℃でML1+8、ASTM 1646、修正)であり、その臭素含有量はBromobutyl 2222に関して約1.8〜2.2重量%である。更に、メーカーによって示されたようなBromobutyl 2222の硬化特徴は、下記の通りである。MHは約28〜40dN mであり、MLは約7〜18dN m(ASTM D2084)である。本発明に於いて有用なハロゲン化ブチルゴムの他の商業的態様は、Bromobutyl 2255(エクソンモービル ケミカル カンパニー)である。そのムーニー粘度は、約41〜51(125℃でML1+8、ASTM D1646)であり、その臭素含有量は約1.8〜2.2重量%である。更に、メーカーによって開示されたようなその硬化特徴は、下記の通りである。MHは約34〜48dN mであり、MLは約11〜21dN m(ASTM D2084)である。商業的イソブチレンポリマーは、R.N.Webb、T.D.Shaffer及びA.H.Tsou、“Commercial Isobutylene Polymers”、Encyclopedia of Polymer Science and Technology、2002、John Wiley & Sons(参照して本明細書に含める)によって詳細に記載されている。
【0032】
ハロゲン化ブチルゴムの他の有用な態様は、ハロゲン化された枝分かれした又は「星状枝分かれした」ブチルゴムである。これらのゴムは、例えば欧州特許第0 678 529B1号、米国特許第5,182,333号及び米国特許第5,071,913号(それぞれ、参照して本明細書に含める)に記載されている。一つの態様に於いて、星状枝分かれしたブチルゴム(「SBB」)はブチルゴム及びポリジエン又はブロックコポリマーからなる組成物である。本発明の目的のために、SBBの形成方法には限定はない。ポリジエン、ブロックコポリマー又は枝分かれ剤(以下「ポリジエン」)は、典型的には、カチオン的に反応性であり、ブチルゴム又はハロゲン化ブチルゴムの重合の間に存在するか又はSBBを形成するためにブチルゴムとブレンドすることができる。枝分かれ剤又はポリジエンは、どのような適切な枝分かれ剤であってもよく、本発明は、SBBを製造するために使用されるポリジエン又は枝分かれ剤の種類に制限されない。
【0033】
一つの態様に於いて、SBBは、上記のようなブチルゴム又はハロゲン化ブチルゴムと、スチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリピペリレン、天然ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンジエンゴム(EPDM)、エチレン−プロピレンゴム(EPM)、スチレン−ブタジエン−スチレン及びスチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマーからなる群から選択されたポリジエン及び部分的に水素化されたポリジエンのコポリマーとの組成物である。ポリジエンは、重量%での全モノマー含有量基準で、典型的に0.3重量%よりも多く、或いは約0.3〜約3重量%又は約0.4〜2.7重量%で存在してよい。
【0034】
好ましくは、本発明に於いて使用される枝分かれした又は「星状枝分かれした」ブチルゴムは、ハロゲン化される。一つの態様に於いて、ハロゲン化された星状枝分かれしたブチルゴム(「HSBB」)は、ハロゲン化された又はされていないブチルゴム及びハロゲン化された又はされていないポリジエン又はブロックコポリマーからなる。このハロゲン化方法は、米国特許第4,074,035号、米国特許第5,071,913号、米国特許第5,286,804号、米国特許第5,182,333号及び米国特許第6,228,978号に詳細に記載されている。本発明は、HSBBを形成する方法によっては制限されない。ポリジエン/ブロックコポリマー又は枝分かれ剤(以下「ポリジエン」)は、典型的に、カチオン的に反応性であり、ブチル又はハロゲン化ブチルゴムの重合の間に存在するか又はHSBBを形成するためにブチル又はハロゲン化ブチルゴムとブレンドすることができる。枝分かれ剤又はポリジエンは、どのような適切な枝分かれ剤であってもよく、本発明は、HSBBを製造するのに使用されるポリジエンの種類によって制限されない。
【0035】
一つの態様に於いて、HSBBは、典型的には、上記のようなハロゲン化ブチルゴム並びにスチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリピペリレン、天然ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンジエンゴム、スチレン−ブタジエン−スチレン及びスチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマーからなる群から選択されたポリジエン及び部分的に水素化されたポリジエンのコポリマーからなる組成物である。ポリジエンは、重量%での全モノマー含有量基準で、典型的には、約0.3重量%よりも多く、或いは、約0.3〜約3重量%又は約0.4〜2.7重量%で存在してよい。
【0036】
本発明に於いて有用なHSBBの商業的態様は、約27〜37のムーニー粘度(125℃でML1+8、ASTM D1646)及び約2.2〜2.6重量%の臭素含有量を有する、Bromobutyl 6222(エクソンモービル ケミカル カンパニー)である。更に、メーカーによって開示されたようなBromobutyl 6222の硬化特徴は、下記の通りである。MHは24〜38dN・mであり、MLは6〜16dN・m(ASTM D2084)である。
【0037】
好ましいイソオレフィン/パラ−アルキルスチレンコポリマーには、C4〜C7イソオレフィン、例えばイソブチレン及びハロメチルスチレンからなるランダムコポリマーが含まれる。このハロメチルスチレンは、オルト−、メタ−又はパラ−アルキル置換スチレンであってよい。一つの態様に於いて、ハロメチルスチレンは、少なくとも80重量%、更に好ましくは少なくとも90重量%のパラ異性体を含有するp−ハロメチルスチレンである。「ハロ」基は、全てのハロゲン、望ましくは塩素又は臭素、最も好ましくは臭素であってよい。このコポリマーには、また、スチレンモノマー単位上に存在するアルキル置換基の少なくとも幾らかが、ベンジル性ハロゲン又は後で更に記載する他の官能基を含有する、官能化した共重合体が含まれてよい。これらの共重合体は、本明細書に於いて、「ハロメチルスチレンを含んでなるイソオレフィンコポリマー」又は単に「イソオレフィンコポリマー」として参照する。
【0038】
好ましいイソオレフィンコポリマーには、イソブチレン又はイソブテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン、1−ブテン、2−ブテン、メチルビニルエーテル、インデン、ビニルトリメチルシラン、ヘキセン及び4−メチル−1−ペンテンからなる群から選択されたモノマーが含まれていてよい。好ましいイソオレフィンコポリマーは、また、更に、マルチオレフィン、好ましくはC4〜C14マルチオレフィン、例えばイソプレン、ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、ミルセン、6,6−ジメチル−フルベン、ヘキサジエン、シクロペンタジエン及びピペリレン並びに欧州特許第279,456号及び米国特許第5,506,316号及び米国特許第5,162,425号に開示されているような他のモノマーからなっていてよい。イソオレフィンコポリマー中の望ましいスチレン系モノマーには、スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、メトキシスチレン、インデン及びインデン誘導体並びにこれらの組合せが含まれる。
【0039】
好ましいイソオレフィンコポリマーは、ポリマー鎖に沿ってランダムに空間を空けた下記のモノマー単位:
【0040】
【化2】

【0041】
(式中、R及びR1は、独立に、水素、低級アルキル、好ましくはC1〜C7アルキル及び第一級又は第二級アルキルハライドであり、Xは官能基、例えばハロゲンである)
を含有する共重合体として特徴付けることができる。望ましいハロゲンは、塩素、臭素又はこれらの組合せである。好ましくは、R及びR1は、それぞれ、水素である。−CRR1H及び−CRR1X基は、オルト、メタ又はパラ位で、好ましくはパラ位で、スチレン環上で置換されていてよい。一つの態様に於いて、共重合体構造中に存在するp−置換スチレンの60モル%以下は、上記の官能化された構造(2)であってよく、他の態様に於いて、0.1〜5モル%であってよい。更に他の態様に於いて、官能化された構造(2)の量は0.4〜1モル%である。官能基Xは、ハロゲン又はその他の基、例えばカルボン酸;カルボキシ塩;カルボキシエステル、アミド及びイミド;ヒドロキシ;アルコキシド;フェノキシド;チオレート;チオエーテル;キサンテート;シアニド;シアネート;アミノ及びこれらの混合物による、ベンジル性ハロゲンの求核的置換によって含有させることができる幾つかの他の官能基であってよい。これらの官能化されたイソモノオレフィンコポリマー、これらの製造方法、官能化方法及び硬化方法は米国特許第5,162,445号に更に詳しく開示されている。
【0042】
このようなイソブチレンとp−メチルスチレンとのコポリマーの最も有用なものは、0.5〜20モル%のp−メチルスチレンを含有するもの(但し、ベンジル環中に存在するメチル置換基の60モル%以下は、臭素又は塩素原子、好ましくは臭素原子を含有する(p−ブロモメチルスチレン))及びそれらの酸又はエステル官能化版(但し、ハロゲン原子は、無水マレイン酸により又はアクリル酸若しくはメタクリル酸官能基によって置換されている)である。これらの共重合体は、「ハロゲン化ポリ(イソブチレン−共−p−メチルスチレン)」又は「臭素化ポリ(イソブチレン−共−p−メチルスチレン)」と命名され、商品名EXXPRO(登録商標)エラストマー(エクソンモービル ケミカル カンパニー、テキサス州ヒューストン)で市販されている。用語「ハロゲン化」又は「臭素化」の使用は、コポリマーのハロゲン化の方法に制限されず、単に、イソブチレン誘導単位、p−メチルスチレン誘導単位及びp−ハロメチルスチレン誘導単位を含んでなるコポリマーの説明的である。
【0043】
これらの官能化されたポリマーは、好ましくはポリマーの少なくとも95重量%が、ポリマーの平均p−アルキルスチレン含有量の10%以内のp−アルキルスチレン含有量を有するように、実質的に均質な組成分布を有する。更に好ましいポリマーは、また、5よりも小さい、更に好ましくは2.5よりも小さい狭い分子量分布(Mw/Mn)、約200,000〜約2,000,000の範囲内の好ましい粘度平均分子量及びゲル透過クロマトグラフィーによって決定したときの約25,000〜約750,000の範囲内の好ましい数平均分子量によって特徴付けられる。
【0044】
好ましいハロゲン化ポリ(イソブチル−共−p−メチルスチレン)ポリマーは、一般的には、約0.1〜約5重量%のブロモメチル基を含有する臭素化ポリマーである。更に他の態様に於いて、ブロモメチル基の量は約0.2〜約2.5重量%である。他の方法で表すと、好ましいコポリマーは、ポリマーの重量基準で、約0.05〜約2.5モル%の臭素、更に好ましくは約0.1〜約1.25モル%の臭素を含有し、そして環ハロゲン又はポリマー主鎖中のハロゲンを実質的に含有しない。本発明の一つの態様に於いて、共重合体はC4〜C7イソモノオレフィン誘導単位、p−メチルスチレン誘導単位及びp−ハロメチルスチレン誘導単位のコポリマーであり、ここでp−ハロメチルスチレン単位は、共重合体中に、共重合体基準で約0.4〜約1モル%存在する。他の態様に於いて、p−ハロメチルスチレンは、p−ブロモメチルスチレンである。ムーニー粘度(1+8、125℃、ASTM D1646、修正)は、約30〜約60ムーニー単位である。
【0045】
他の態様に於いて、コポリマーの中に含有されているイソオレフィン及びp−アルキルスチレンのトリアドフラクション(triad fraction)とp−アルキルスチレンのモル%との間の関係は、下記のコポリマー序列分布方程式によって説明され、コポリマー序列分布パラメーター、mによって特徴付けられる。
F=1−{mA/(1+mA)}
式中、mは、コポリマー序列分布パラメーターであり、
Aは、コポリマー中のp−アルキルスチレン対イソオレフィンのモル比であり、そして
Fは、コポリマー中のp−アルキルスチレン−イソオレフィン−p−アルキルスチレントリアドフラクションである。
【0046】
この方程式の最善の適合は、特別の希釈剤中のイソオレフィン及びp−アルキルスチレンの共重合のためのmの値をもたらす。或る態様に於いて、mは38よりも小さく、或いは36よりも小さく、或いは35よりも小さく、或いは30よりも小さい。他の態様に於いて、mは1〜38、或いは1〜36、或いは1〜35、或いは1〜30である。このような特徴を有するコポリマーは、国際特許出願公開第2004058825号及び国際特許出願公開第2004058835号に開示されている。
【0047】
他の態様に於いて、イソオレフィン/パラ−アルキルスチレンコポリマーは、長鎖枝分かれを実質的に含有していない。本発明の目的のために、実質的に長鎖枝分かれを含有しないポリマーは、g′vis.avg.が、下記のような三重検出サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって決定されたとき、0.978以上、或いは0.980以上、或いは0.985以上、或いは0.990以上、或いは0.995以上、或いは0.998以上、或いは0.999以上であると決定されるポリマーであると定義される。このようなポリマーも、また、国際特許出願公開第2004058825号及び国際特許出願公開第2004058835号に開示されている。
【0048】
他の態様に於いて、ハロゲン化ゴムコポリマーの中に含有されているイソオレフィン及びマルチオレフィンのトリアドフラクションとマルチオレフィンのモル%との間の関係は、下記のコポリマー序列分布方程式によって説明され、コポリマー序列分布パラメーター、mによって特徴付けられる。
F=mA/(1+mA)2
式中、mは、コポリマー序列分布パラメーターであり、
Aは、コポリマー中のマルチオレフィン対イソオレフィンのモル比であり、そして
Fは、コポリマー中のイソオレフィン−マルチオレフィン−マルチオレフィントリアドフラクションである。
【0049】
コポリマーの中に含有されているイソオレフィン及びマルチオレフィンのトリアドフラクション並びにマルチオレフィンのモル%の測定は、後で記載する。この方程式の最善の適合は、それぞれの希釈剤中のイソオレフィン及びマルチオレフィンの共重合のためのmの値をもたらす。或る態様に於いて、mは1.5よりも大きく、或いは2.0よりも大きく、或いは2.5よりも大きく、或いは3.0よりも大きく、或いは3.5よりも大きい。他の態様に於いて、mは1.10〜1.25、或いは1.15〜1.20、或いは1.15〜1.25であり、或いはmは約1.20である。これらの特徴を有するハロゲン化ゴムは、国際特許出願公開第2004058825号及び国際特許出願公開第2004058835号に開示されている。
【0050】
他の態様に於いて、ハロゲン化ゴムは、長鎖枝分かれを実質的に含有していない。本発明の目的のために、実質的に長鎖枝分かれを含有しないポリマーは、g′vis.avg.が、下記のような三重検出SECによって決定されたとき、0.978以上、或いは0.980以上、或いは0.985以上、或いは0.990以上、或いは0.995以上、或いは0.998以上、或いは0.999以上であると決定されるポリマーであると定義される。ポリマー中の長鎖枝分かれの存在又は不存在は、三重検出SECを使用して決定される。三重検出SECは、Precision Detectors(マサチューセッツ州ベリングハム(Bellingham))PD2040光散乱検出器、Viscotek(テキサス州ヒューストン)モデル150R粘度測定法検出器及びWaters示差屈折率検出器(150Cで積分)を備えた、40℃で操作するWaters(マサチューセッツ州ミルフォード(Milford))150Cクロマトグラフで実施する。検出器は、直列で、最初に光散乱検出器、第二に粘度測定法検出器、そして第三に示差屈折率検出器に接続される。テトラヒドロフランを溶離剤(0.5mL/分)として、3個のPolymer Laboratories,Ltd.(英国Shropshire)10ミクロン混合−B/LS GPCカラムの1組と共に使用する。計器は、16個の狭いポリスチレン標準物質(Polymer Laboratories,Ltd.)に対して較正する。データはTriSECソフトウエア(Viscotek)で取得し、分析のためにWaveMetric’s Igor Proプログラム(オレゴン州Lake Oswego)の中にインポートする。極限粘度数(粘度測定法検出器によって決定された[η]linear)と分子量(光散乱検出器によって決定されたMw)との間の関係を確立するために、線状ポリイソブチレンを使用する。[η]linearとMwとの間の関係は、マーク−ホーウィンクの式によって表される。
【0051】
[η]linear=KMwα
【0052】
パラメーターK及びαは、Mwに対する極限粘度数の二重対数プロットから得られ、αは勾配であり、Kは切片である。線状標準物質について確立された関係からの顕著な偏差は、長鎖枝分かれの存在を示す。一般的に、線状関係からのより顕著な偏差を示すサンプルは、より顕著な長鎖枝分かれを含有する。スケーリングファクターg′は、また、決定された線状関係からの偏差を示す。
[η]sample=g′[η]linear
【0053】
g′の値は、1以下であり且つ0以上であると定義される。g′が、1に等しいか又は1にほぼ等しいとき、ポリマーは線状であると考えられる。g′が、1よりも著しく小さいとき、サンプルは、長鎖枝分かれである。例えば、E.F.Casassa及びG.C.Berry、“Comprehensive Polymer Science”、第2巻、(71-120)、G.Allen及びJ.C.Bevington編、Pergamon Press、ニューヨーク、1988参照。三重検出SECに於いて、g′は、クロマトグラフィー曲線のそれぞれのデータスライス(data slice)について計算される。粘度平均g′又はg′vis.avg.は、分子量分布全体に亘って計算される。スケーリングファクターg′vis.avg.は、サンプルの平均極限粘度数から計算される。
g′vis.avg.=[η]avg./(KMwα))
【0054】
他の好ましいハロゲン化エラストマー又はゴムには、国際特許出願公開第01/21672A1号に記載されているようなハロゲン化イソブチレン−p−メチルスチレン−イソプレンコポリマーが含まれる。流体透過防止層中で有用であるハロゲン化ゴムは同じか又は異なっていてよい。
【0055】
本発明の目的のために、有用な熱可塑性樹脂又はエンジニアリング樹脂は、500MPaよりも大きいヤング率及び好ましくは、60×10-12cc cm/cm2 sec cm Hg(30℃で)よりも小さい空気透過係数及び好ましくは約170℃〜約270℃の融点を有し、これらには限定されないが、下記のもの:
a)ポリアミド樹脂:ナイロン6(N6)、ナイロン66(N66)、ナイロン46(N46)、ナイロン11(N11)、ナイロン12(N12)、ナイロン610(N610)、ナイロン612(N612)、ナイロン6/66コポリマー(N6/66)、ナイロン6/66/610(N6/66/610)、ナイロンMXD6(MXD6)、ナイロン6T(N6T)、ナイロン6/6Tコポリマー、ナイロン66/PPコポリマー、ナイロン66/PPSコポリマー;
b)ポリエステル樹脂:ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)、PET/PEIコポリマー、ポリアクリレート(PAR)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、液晶ポリエステル、ポリオキシアルキレンジイミド二酸/ポリブチレンテレフタレートコポリマー及びその他の芳香族ポリエステル;
c)ポリニトリル樹脂:ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリロニトリル、アクリロニトリル−スチレンコポリマー(AS)、メタクリロニトリル−スチレンコポリマー、メタクリロニトリル−スチレン−ブタジエンコポリマー;
d)ポリメタクリレート樹脂:ポリメチルメタクリレート、ポリエチルアクリレート;
e)ポリビニル樹脂(例示のため、限定されず):酢酸ビニル(EVA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ビニルアルコール/エチレンコポリマー(EVOA)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリビニル/ポリビニリデンコポリマー、ポリ塩化ビニリデン/メタクリレートコポリマー;
f)セルロース樹脂:酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース;
g)フッ素樹脂:ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリクロロフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフルオロエチレン/エチレンコポリマー(ETFE);
h)ポリイミド樹脂:芳香族ポリイミド;
i)ポリスルホン;
j)ポリアセタール;
k)ポリアクトン;
l)ポリフェニレンオキシド及びポリフェニレンスルフィド;
m)スチレン−無水マレイン酸;
n)芳香族ポリケトン並びに
o)a)〜n)(含む)の任意又は全ての混合物並びにa)〜n)(含む)のそれぞれ内の例示的又は実例を挙げたエンジニアリング樹脂の任意の混合物
の1種又はそれ以上を含む、全ての熱可塑性ポリマー、コポリマー又はこれらの混合物であるとして定義される。
【0056】
本発明の目的のために、このエンジニアリング樹脂の定義は、オレフィンのポリマー、例えばポリエチレン及びポリプロピレンを除外する。
【0057】
好ましいエンジニアリング樹脂には、ポリアミド樹脂及びこれらの混合物が含まれ、特に好ましい樹脂には、ナイロン6、ナイロン6/66コポリマー、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612及びこれらのブレンドが含まれる。本発明の代替の好ましい態様に従って、熱可塑性エラストマー組成物は、熱可塑性樹脂成分を使用して配合することができ、ここで、ナイロン樹脂成分は、約10/90〜約90/10、好ましくは約30/70〜85/15の組成物の比(重量比)で、ナイロン11又はナイロン12及びナイロン6/66コポリマーからなる。ブレンドした樹脂に基づくこのような熱可塑性エラストマー組成物は、例えばタイヤインナーライナーの硬化した表面の優れた耐久性及び外観並びに優れた空気保持性質を有し並びにこれらの性質の良好なバランスを示す熱可塑性エラストマー組成物を提供することができる。
【0058】
任意的に、その他のゴム又はエラストマーを、このハロゲン化イソブチレン含有エラストマーと組み合わせて使用することができる。このような任意的なゴム成分には、高ジエンゴム及びそれらの水和物が含まれる。高ジエン含有量ゴム又はエラストマーは、また、高ジエンモノマーゴムとして参照される。これは、典型的には、典型的に少なくとも50モル%、典型的に少なくとも約60モル%〜約100モル%、更に好ましくは少なくとも約70モル%〜約100モル%、更に好ましくは少なくとも約80モル%〜約100モル%のC4〜C12ジエンモノマーを含むゴムである。有用な高ジエンモノマーゴムには、オレフィン若しくはイソオレフィン及びマルチオレフィンのホモポリマー及びコポリマー又はマルチオレフィンのホモポリマーが含まれる。これらは公知であり、Rubber Technology、179-374(Maurice Morton編、Chapman & Hall 1995)及びThe Vanderbilt Rubber Handbook 22-80(Robert F.Ohm編、R.T.Vanderbilt Co.,Inc.1990)に記載されている。一般的に、本発明に於いて有用な他の任意のゴムには、例えば天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、エポキシル化(epoxylated)天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)(高シスBR及び低シスBRを含む)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、水素化NBR、水素化SBR、オレフィンゴム(例えばエチレンプロピレンゴム(EPDM及びEPMの両方を含む))、マレイン酸−変性エチレンプロピレンゴム(M−EPM)、ブチルゴム(IIR)、イソブチレン及び芳香族ビニル又はジエンモノマーコポリマー、アクリルゴム(ACM)、アイオノマー、他のハロゲン含有ゴム(例えばクロロプレンゴム(CR)、ヒドリンゴム(CHR)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、塩素化ポリエチレン(CM)、マレイン酸−変性塩素化ポリエチレン(M−CM))、シリコーンゴム(例えばメチルビニルシリコーンゴム、ジメチルシリコーンゴム、メチルフェニルビニルシリコーンゴム)、硫黄含有ゴム(例えばポリスルフィドゴム)、フッ素ゴム(例えばフッ化ビニリデンゴム、フッ素含有ビニルエーテル系ゴム、テトラフルオロエチレン−プロピレンゴム、フッ素含有シリコーンゴム、フッ素含有ホスファゲンゴム)、熱可塑性エラストマー(例えばスチレン含有エラストマー、オレフィンエラストマー、エステルエラストマー、ウレタンエラストマー又はポリアミドエラストマー)並びにこれらの混合物が含まれる。
【0059】
高ジエンモノマーゴムの好ましい例には、ポリイソプレン、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、天然ゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム等が含まれ、これらは単独で又は組合せ及び混合物で使用することができる。
【0060】
熱可塑性樹脂とハロゲン化イソブチレン含有ゴムとは、溶解度に於いて著しく異なっているので、これらのポリマーの相溶性を増強する目的のために、更なる任意の相溶化成分が有用であろう。更に、理論によって結び付けられることを望まないで、本発明の組成物中の、得られた微細なゴム分散物は、部分的に、例えば混合の間に、潜在的に、ゴム成分と樹脂成分との間の表面張力を修正する、特に減少することによって形成された、分散したゴム粒子と熱可塑性樹脂との間の相境界での、BIMS中に存在するベンジル性臭素又はハロゲン化ブチル中のアリル性ハロゲンと、ポリアミド中の末端アミンとの間の化学反応(群)の結果であろう。ブレンドの間の界面反応及び2種の非混和性ポリマーの同時反応の発生によって、小さい粒子サイズの分散したゴム相の融合(coalescence)が回避され、それによって、ゴム相の特に微細な分散物に至ることが助けられる。このような界面反応の発生は、一般的に「反応的相溶化(Reactive compatibilization)」として参照され、例えば、米国特許第5,571,864号及び米国特許第6,469,087号(参照して本明細書に含める)に記載されている。同時に、これらの反応的相溶化された非混和性システムに於ける界面安定性のために、より高い濃度、より低い粘度のポリマーブレンド成分、ゴム相の転相は、界面相溶化の安定化効果の結果として阻害される。
【0061】
更に、低温度弾性率を減少させる際にBIMSよりも有効である第二のゴム成分(即ち、第一の(ハロゲン化)ゴム成分、例えばBIMSとは異なる第二のゴム)を使用することは、全組成物の低温度性能を改良するために有利であり得る。好ましくは、この第二のゴムは、好ましくは−30℃よりも低い低ガラス転移温度、Tgを示す官能化ゴムをベースにする。低いTgは、約−20℃以下の、このようなゴムを含有する製品、例えばタイヤインナーライナーの動作又は使用温度での第二のゴムの低下した弾性率又は軟度に寄与する。適切な官能基には、無水マレイン酸、アシルラクタム又はポリアミド中に存在するアミン官能基と容易に反応することができる他のものが含まれる。このようなゴム中の化学的に反応性の官能基の存在は、ポリアミドマトリックス中のゴムの小粒子サイズ分散に至る第二のゴムとポリアミドとの間の反応的相溶化を更に促進し、この粒子は、約1ミクロン以下、好ましくは約0.5ミクロンよりも小さい平均粒子サイズを示す。このような第二のゴムの使用は、2006年3月24日出願のPCT/US2006/011002号(参照して本明細書に含める)に開示されている。上記のように、小さい粒子の形でポリアミドマトリックス中に分散した第二のゴムは、任意的に、ハロゲン化した又はBIMSエラストマーに関して記載したように、部分的に、実質的に又は完全に、硬化、架橋又は加硫することができる。このような架橋は、ハロゲン化エラストマー成分に適用した同じ動的加硫プロセスを使用することによって、ポリアミドマトリックス中に第二のゴムを分散させる過程の間に達成することができる。動的加硫を使用する場合、また、ゴムの混合及び分散の間に加硫を実施するために、第二のゴム中に適切な硬化剤又は硬化システムを分散させることが必要である。或いは第二のゴムが熱架橋を受ける場合、動的加硫に相当する方法に於いて、混合及び分散の間に十分な熱エネルギーを適用することによって加硫することができ又はそれが小さい粒子の形で分散された後、分散後のこのような架橋を達成するために十分な熱エネルギーを供給することによって加硫することができる。何れの場合に於いても、第二のゴムは、ポリアミドマトリックス中に、約0.1ミクロン〜約1ミクロン、例えば、約0.1ミクロン〜約0.75ミクロン又は約0.1ミクロン〜約0.5ミクロンの平均粒子サイズを有する小さい粒子の形で分散されることが好ましい。
【0062】
相溶化剤として機能する第二のポリマーには、エチレン性不飽和ニトリル−共役ジエン系高飽和コポリマーゴム(HNBR)、エポキシル化天然ゴム(ENR)、NBR、ヒドリンゴム、アクリルゴム及びこれらの混合物が含まれてよい。他の相溶化剤には、熱可塑性樹脂及びゴムポリマーの両方若しくは片方の構造又は熱可塑性樹脂若しくはゴムポリマーと反応することができる、エポキシ基、カルボニル基、ハロゲン基、アミン基、マレイン化基、オキサゾリン基、ヒドロキシ基等を有するコポリマーの構造を有するもののようなコポリマーが含まれる。第二のゴムは、混合すべき熱可塑性樹脂ポリマー及びゴムポリマーの種類に基づいて選択することができる。有用な第二のゴムは、無水マレイン酸グラフト化ゴム、例えば無水マレイン酸グラフト化ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエンゴム)、SEBS(スチレン−エチレン/ブタジエン−スチレン)等及びマレイン化エチレンコポリマーゴム、例えばマレイン化エチレン−プロピレン(EPM)、エチレン−ブテン、エチレン−ヘキセン、エチレン−オクテン、エチレン−デセン、エチレン−プロピレン−ジエン(EPDM)、エチレン−酢酸ビニル、エチレン−アクリル酸メチル、エチレン−アクリル酸エチル、エチレン−アクリル酸等並びにこれらの混合物からなる群から選択される。また、潜在的に有用なゴムには、EPDM/スチレン、EPDM/アクリロニトリルグラフトコポリマー及びそれらのマレイン酸変性形;スチレン/マレイン酸コポリマー;反応性フェノキシ熱可塑性樹脂並びにこれらの混合物が含まれる。
【0063】
第二のゴム中に存在する有用な、好ましい官能基の例には、カルボニル結合を含む化合物、例えばカルボン酸、カルボン酸のエステル、酸無水物、ジエステル、塩、アミド及びイミドが含まれる。芳香族ビニル化合物、加水分解性不飽和シラン化合物、飽和ハロゲン化炭化水素及び不飽和ハロゲン化炭化水素も使用することができる。特に好ましい官能基の例には、これらに限定されないが、無水マレイン酸、シトラコン酸無水物、2−メチルマレイン酸無水物、2−クロロマレイン酸無水物、2,3−ジメチルマレイン酸無水物、ビシクロ[2,2,1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸無水物及び4−メチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、クロトン酸、ビシクロ(2.2.2)オクト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、1,2,3,4,5,8,9,10−オクタヒドロナフタレン−2,3−ジカルボン酸無水物、2−オキサ−1,3−ジケトスピロ(4.4)ノン−7−エン、ビシクロ(2.2.1)ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、マレオピマル酸、テトラヒドロフタル酸無水物、ノルボルン−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、ナド酸無水物、メチルナド酸無水物、ハイミック酸無水物(himic anhydride)、メチルヒム酸無水物及びx−メチル−ビシクロ(2.2.1)ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物(XMNA)が含まれる。
【0064】
好ましい態様に於いて、官能化すべきポリマーは、無水マレイン酸によってグラフト化され、そうして無水マレイン酸は、ポリマーの主ポリマー鎖に共有結合される。ポリマーにグラフト化された無水物官能基は、無水物として留まっていてよく、酸官能基に酸化されてよく及び/又は当該技術分野で公知の方法によって更に反応されて、他の官能基、例えば、アミド、アミン、アルコール等に誘導されてよい。
【0065】
ここで有用な官能化ポリマーを製造するのに適しているポリマーには、エチレンポリマー及びプロピレンポリマーが含まれる。特に好ましいポリマーには、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキサン、ヘプテン、オクタン、ノネン−デセン、ウンデセン、ドデセン、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸(ethacrylic acid)、ブタクリル酸(butacrylic acid)又は酢酸ビニルの1種又はそれ以上と共重合されたエチレンのポリマーが含まれる。好ましくは、このようなエチレンポリマーは、マレイン酸又は無水マレイン酸によって変性される。特に好ましいポリマーの他の種類には、エチレン、ブテン、ペンテン、ヘキサン、ヘプテン、オクタン、ノネン−デセン、ウンデセン、ドデセン、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、ブタクリル酸又は酢酸ビニルの1種又はそれ以上と共重合されたプロピレンのポリマーが含まれる。好ましくは、このようなプロピレンポリマーは、マレイン酸又は無水マレイン酸によって変性される。
【0066】
特に好ましい変性ポリマーの他の種類には、イソプレン、イソブチレンの1種又はそれ以上と共重合されたC4〜C7イソオレフィン(例えば、イソブチレン)のポリマーが含まれる。好ましくは、このようなイソブチレンポリマーは、マレイン酸又は無水マレイン酸によって変性されている。特に好ましい官能化ポリマーには、イソブチレンとイソプレンとのマレイン化コポリマー、イソブチレンとパラメチルスチレンとのマレイン化コポリマー、マレイン化ハロブチル型コポリマー、マレイン化SBB型コポリマー及びマレイン化BIMS型コポリマーが含まれる。ポリマーを官能化するために使用することができる種々の方法が、当該技術分野に於いて公知である。これらには、これらに限定されないが、選択的酸化、フリーラジカルグラフト化、オゾン分解、エポキシ化等が含まれる。
【0067】
好ましくは、官能化ポリマーは、約:50重量%、45重量%、40重量%、35重量%、30重量%、25重量%、20重量%、15重量%、10重量%、9重量%、8重量%、7重量%、6重量%、5重量%、4重量%、3重量%及び2重量%よりも少ない無水マレイン酸からなる群から選択された濃度で存在する無水マレイン酸からなる。また、好ましくは、ポリマー−g−MA中の無水マレイン酸(MA)のレベルは、約0.1重量%よりも大きい、好ましくは約0.5重量%よりも大きい、また、約1重量%よりも大きい無水マレイン酸であってよい。好ましい態様に於いて、官能化ポリマーは、約0.1〜約10重量%の無水マレイン酸、好ましくは約0.25〜約5重量%、更に好ましくは約0.5〜約4重量%、なお更に好ましくは約0.75〜約3.5重量%、例えば約1.5〜約2.5重量%の無水マレイン酸を含んでいてよい。官能化ポリマーをキャラクタリゼーションするために、種々の技術を使用することができ、それらの幾つかは、“Structure Characterization,The Science and Technology of Elastomers”、F.Eirich編、Academic Press、1978、第3章、G.Ver Strate著(参照して含める)に記載されている。グラフト化ポリマーの官能基含有量は、その絶対官能基含有量が決定されている標準物質との較正をベースにする、フーリエ変換赤外(FTIR)分光法によって決定することができる。
【0068】
他のゴムを有することによって、BIMSゴム及び少なくとも1種の第二のゴムを含めた総ゴム含有量を、ポリアミドマトリックス中のゴム成分の小粒子サイズ分散物を含む望ましい形態を維持しながら、熱可塑性エラストマー組成物中で増加させることができる。最大ゴム含有量の増加は、特に、非混和性の第二のゴムが存在するとき、BIMS粒子の制限された凝集を考慮して実現できる。更に、前記のような低い又は少ないレベルで第二のゴム濃度の量を制御することによって、その凝集を実質的に回避又は防止するために第二のゴムを硬化又は加硫する必要性を回避することが可能である。このことは、第二のゴムが、ポリアミドの存在下で、ポリアミドと反応性であり、実質的に動けなくなるので、特に真実である。第二のゴムに硬化剤を添加する必要が無く、それで、第二のゴムを硬化剤と予備混合又は予備配合することが不必要であり(しかしながら、硬化剤を任意に添加し、BIMSについてと同じ技術を使用して第二のゴムを動的に加硫することができる)、押出機ミキサーへの第二のゴムの直接添加が、押出混合の間に実現可能であり、第二のゴムは、好ましくはペレット形状で供給される。更に、大部分の官能化ゴム、例えばマレイン化エチレンコポリマーゴム及び無水マレイン酸グラフト化ゴムは、かなり透過性であるので、第二のゴム濃度を低く、全組成物の全重量基準で、典型的に約20重量%よりも低く、好ましくは約1重量%〜20重量%、更に好ましくは約1重量%〜10重量%以下に維持することが望ましい。ブレンドされた第二の官能化相溶化剤ゴムの量は、典型的に約20重量%よりも低く、好ましくは約10重量%よりも低く、一般的に約0.5重量%〜約20重量%、例えば約5重量%〜約15重量%、例えば約7.5重量%〜約12.5重量%である。
【0069】
本明細書中で参照されるポリマー及び/又はエラストマーを参照して、用語「硬化された(cured)」、「加硫された(vulcanized)」又は「架橋された(crosslinked)」は、例えば鎖延長又はポリマー若しくはエラストマーを含むポリマー鎖の間の架橋の間に、このようなプロセスを受けているエラストマーが、タイヤを使用に供するとき、硬化反応からもたらされる必要な機能特性を与えることができる程度まで結合を形成することからなる化学反応を指す。本発明の目的のために、このような硬化反応の絶対的完結は、エラストマー含有組成物が、「硬化された」、「加硫された」又は「架橋された」と考えられるために必要ではない。例えば、本発明の目的のために、本発明に基づくインナーライナー層組成物を含んでなるタイヤは、それが成分であるタイヤが、製造の間及び後に、必要な製品仕様試験に合格するとき十分に硬化されており、車両に使用するとき満足できるように性能を発揮する。更に、追加の硬化時間が、追加の架橋を作るとしても、この組成物は、タイヤを使用に供することができるとき、満足できるほど、十分に又は実質的に硬化されている。
【0070】
一般的に、ポリマー組成物、例えばタイヤの製造に使用されるものは、完成したタイヤ製品内で架橋される。架橋又は加硫は、硬化剤及び/又は促進剤の含有によって達成され、このような試薬の総合混合物は、典型的に、硬化「システム」として参照される。加硫されたゴム配合物の物理的性質、性能特性及び耐久性が、加硫反応の間に形成された架橋の数(架橋密度)及び種類に直接関係していることが知られている。(例えば、Helt等、The Post Vulcanization Stabilization for NR、Rubber World 18-23(1991)参照)。硬化剤には、エラストマーの硬化を容易にする又はこれに影響を与える前記の成分が含まれ、一般的に、前記のように、金属、金属酸化物、促進剤、硫黄、過酸化物及び当該技術分野で一般的な他の試薬が含まれる。架橋又は硬化剤には、例えば硫黄、酸化亜鉛及び脂肪酸の少なくとも1種並びにこれらの混合物が含まれる。過酸化物含有硬化システムも使用できる。一般的に、ポリマー組成物は、硬化剤、例えば硫黄、金属酸化物(即ち、酸化亜鉛、ZnO)、有機金属化合物、ラジカル開始剤等を添加すること及び組成物又は混合物を加熱することにより、架橋させることができる。
【0071】
「動的加硫(dynamic vulcanization)」として知られている方法を使用するとき、硬化システムを分散する方法は、以下詳細に説明するように修正される。一般的に、用語「動的加硫」は、熱可塑性樹脂又はエンジニアリング樹脂及び少なくとも1種の加硫性ゴムを、このゴム(群)のための硬化剤又は硬化システムの存在下で、高い剪断及び高温の条件下で混合する加硫方法を示すために使用される。その結果、ゴムは、同時に架橋され、粒子として、好ましくはミクロゲルの形で、連続マトリックスを形成する樹脂の中に分散される。得られる組成物は、「動的に加硫されたアロイ」又はDVAとして当該技術分野で知られている。典型的には、動的加硫は、成分を、ロールミル、バンバリー(登録商標)ミキサー、連続ミキサー、ニーダー又は混合押出機(例えば二軸スクリュー押出機)のような装置を使用して、ゴムの硬化温度以上で且つ樹脂の溶融温度以上である温度で混合することによって実施される。動的に加硫された又は硬化された組成物の独特の特性は、ゴムが硬化されているという事実にもかかわらず、組成物を、一般的な熱可塑性樹脂加工技術、例えば押出、射出成形、圧縮成形等によって、加工及び再加工することができることである。スクラップ及び/又はフラッシングも、回収し、再加工することができる。典型的な動的加硫プロセスに於いて、硬化剤添加は、少なくとも1種の加硫性ゴム、エラストマー又はポリマー及び少なくとも1種の加硫性成分のための加硫剤(群)を使用して加硫することができない少なくとも1種のポリマー又は樹脂からなる組成物中の、少なくとも1種の加硫性成分を、実質的に同時に混合し、そして加硫又は架橋するように変えられる。(例えば米国特許第6,079,465号及びその中で引用された文献参照)。しかしながら、本発明に於いて、動的加硫プロセスは更に修正されて、下記のように、このような修正から得られる特別の利点を達成する。
【0072】
下記のもの、即ちZnO、CaO、MgO、Al23、CrO3、FeO、Fe23及びNiOは、本発明に於いて機能し得る一般的な硬化剤である。これらの金属酸化物は、対応する金属ステアリン酸塩錯体(例えばZn、Ca、Mg及びAlのステアリン酸塩)又はステアリン酸及び硫黄化合物若しくはアルキルペルオキシド化合物と連係して使用することができる。(例えばFormulation Design and Curing Characteristics of NBR Mixes for Seals、Rubber World 25-30(1993)参照)。この硬化剤(群)に、エラストマー組成物の加硫のための促進剤が、しばしば添加される。少なくとも1種の促進剤の使用を伴う又は伴わない硬化剤(群)は、しばしば、当該技術分野に於いて、エラストマー(群)のための硬化「システム」として参照される。硬化システムは、特に、高ジエンゴム及び低い反応性のエラストマーの混合物が使用される場合に、有利な効果のために、典型的に2種又はそれ以上の硬化剤が利用されるので使用される。更に、硬化システムの性質を、混合工程に適合させて、本発明の条件を満たすことができるようにすることができる。例えば、組成物中に存在する特有のゴム(群)の硬化応答を決定するために、ゴム(群)及び硬化システムを、当業者に公知の手段によって、例えば2本ロールミル、バンバリーミキサー又は混合押出機で、組み合わせることができる。しばしば「促進された」コンパウンドとして参照される混合物のサンプルを、静的条件下で、例えばプレス内で熱及び圧力に付される金型を使用して、薄いシートの形で硬化させることができる。漸進的により長い時間及び/又はより高い温度で硬化させた、促進された薄いシートのサンプルを、次いで、応力歪み特性及び/又は架橋密度について試験して、硬化の状態を決定する(米国材料試験協会、規格ASTM D412に詳細に記載されている)。或いは促進されたコンパウンドを、オシレーティングディスク硬化レオメーター(oscillating disc cure rheometer)試験(米国材料試験協会、規格ASTM D2084に詳細に記載されている)を使用して、硬化の状態について試験することができる。その後、動的加硫プロセスの全体時間及び温度を、組成物中に存在する加硫性ゴムが、十分に硬化されて、それらが一部である熱可塑性組成物、例えば空気又は液体保持バリヤー、例えばタイヤ用のインナーライナーの所望の性質を達成するように調節することができる。本発明の目的のために、このような硬化の状態は、「実質的に完全に硬化された」として参照することができる。
【0073】
加硫性ゴム、典型的には第一のゴム、例えばハロゲン化イソブチレンエラストマー、例えばBIMS(又はこのようなゴムの混合物)は、硬化システム、時間及び温度に基づいて、それが可能である硬化の最大状態の少なくとも50%まで硬化され、典型的には、このようなゴムの硬化状態は、最大硬化の50%を超えるであろうことが認められるであろう。第二のゴムもまた加硫性ゴムからなっていてよいので、このような第二のゴムが、例えば本明細書に記載したような動的加硫技術に従って加硫される場合、これもまた、典型的には、その硬化剤又は硬化システム並びにそれが処理される時間及び温度に基づいて、それが可能である硬化の最大状態の少なくとも50%まで硬化されるであろう。或いは、本明細書中で検討したように、このような第二のゴムを、また、硬化剤の使用を伴って又は伴わないで、ポリアミド樹脂にグラフト化、結合及び/又は会合させることができ、そうして、その硬化状態は、それが、この組成物が供される使用のために望まれる特性を提供するために十分な小さい粒子サイズで十分に分散される限り、制限はない。反対に、ゴム粒子を、ゴムが可能である硬化の最大状態よりも低くまで硬化させて、例えば、ゴム成分(群)のヤング率によって測定したときには、可撓性が、組成物が供される最終用途、例えばタイヤインナーライナー又はホース成分のための適切なレベルであるようにすることが望ましいであろう。従って、組成物中に使用されるゴム(群)の硬化の状態を、前記のように、それらが可能である最大の硬化度の約95%以下であるように制御することが望ましいであろう。
【0074】
例えば、高度に不透過性の層又はフィルムを形成するための、エンジニアリング樹脂の存在下での動的加硫の目的のために、1種又はそれ以上の熱可塑性エンジニアリング樹脂が存在して、過酸化物がこのような樹脂自体を架橋するとき、過酸化物硬化剤が本発明の実施から特別に排除される以外は、飽和又は不飽和ハロゲン化ポリマーを加硫することができる任意の一般的な硬化システムを使用して、少なくとも、C4〜C7イソモノオレフィン及びパラ−アルキルスチレンのエラストマー性ハロゲン化コポリマーを加硫することができる。この環境中で、エンジニアリング樹脂自体が加硫又は架橋する場合、これは、過度に硬化された非熱可塑性組成物になるであろう。本発明のエラストマー性ハロゲン化コポリマー成分のための適切な硬化剤システムには、ステアリン酸亜鉛又はステアリン酸と組み合わせた酸化亜鉛並びに任意に、下記の促進剤又は加硫剤、即ち、硫黄と組み合わせて使用される、Permalux、ホウ酸ジカテコールのジ−オルト−トルイルグアニジン塩;HVA−2、m−フェニレンビスマレイミド;Zisnet、2,4,6−トリメルカプト−5−トリアジン;ZDEDC、亜鉛ジエチルジチオカルバメート及びまた本発明の目的のために他のジチオカルバメートを含む;Tetrone A、ジペンタメチレンチウラムヘキサスルフィド;Vultac5、アルキル化フェノールジスルフィド;SP1045、フェノールホルムアルデヒド樹脂;SP1056、臭素化アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂;DPPD、ジフェニルフェニレンジアミン;サリチル酸、オルト−ヒドロキシ安息香酸;木材ロジン、アビエチン酸並びにTMTDS、テトラメチルチウラムジスルフィドの1種又はそれ以上が含まれる。
【0075】
硬化促進剤には、アミン、グアニジン、チオウレア、チアゾール、チウラム、スルフェンアミド、スルフェンイミド、チオカルバメート、キサンテート等が含まれる。硬化工程の促進は、この組成物に、或る量の促進剤を添加することによって達成できる。ゴムの促進された加硫の機構には、硬化剤、促進剤、活性化剤及びポリマーの間の複雑な相互作用が含まれる。理想的には、利用可能な硬化剤の全部が、個々のポリマー鎖を互いに対して結合し、ポリマーマトリックスの全体強度を増強する、有効な架橋の形成に消費される。多数の促進剤が当該技術分野で公知であり、これには、これらに限定されないが、下記のもの、即ちステアリン酸、ジフェニルグアニジン(DPG)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、4,4’−ジチオジモルホリン(DTDM)、テトラブチルチウラムジスルフィド(TBTD)、2,2’−ベンゾチアゾリルジスルフィド(MBTS)、ヘキサメチレン−1,6−ビスチオ硫酸二ナトリウム塩二水和物、2−(モルホリノチオ)ベンゾチアゾール(MBS又はMOR)、90%のMORと10%のMBTSとの組成物(MOR90)、N−第三級ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(TBBS)及びN−オキシジエチレンチオカルバミル−N−オキシジエチレンスルホンアミド(OTOS)、2−エチルヘキサン酸亜鉛(ZEH)、N,N’−ジエチルチオウレアが含まれる。それらが、1種又はそれ以上の架橋性ポリマーで有用である一部である、硬化剤、促進剤及び硬化システムは、当該技術分野で公知である。
【0076】
硬化システムは、適切な濃度で、ゴム成分(このゴム成分は、任意的に、1種又はそれ以上の充填剤、増量剤及び/又は可塑剤を含む)の中に、例えば、このような目的のためにゴム工業に於いて一般的に使用される任意の混合装置、例えば2本ロールゴムミル、バンバリーミキサー、混合押出機等を使用して、ゴム含有組成物を熱可塑性樹脂に添加する前のプロセス工程に於いて、ゴムと硬化システム成分とを混合することによって、分散させることができる。このような混合は、一般的に、ゴム組成物を「促進する」として参照される。或いはゴム組成物を、動的加硫を実施する前の、混合押出機の段で促進することができるが、これは、商業的、実際的、統合プロセスに於いて制御することが困難であり、あまり望ましくはない。硬化システムを、ゴム相内で、又はまた任意的に、1種又はそれ以上の充填剤、増量剤及び意図される最終用途応用のための他の一般的な成分を含有するゴム組成物中で分散させ、その後に、動的加硫を実施することが意図される混合装置内で、ゴムを熱可塑性樹脂(群)に添加することが特に好ましい。このようにすることによって、予備配合したゴム組成物を、下記に説明するような、動的加硫装置、好ましくは混合押出機への一層効率的で有効な供給のために、ペレット化することができる。
【0077】
本発明の一つの態様に於いて、少なくとも1種の硬化剤が、典型的には、約0.1〜約15phr、或いは約0.5〜約10phrで存在する。
【0078】
硬化剤、硬化変性剤及び促進剤の有用な組合せは、下記のように例示することができる。一般的ゴム加硫剤として、例えば硫黄加硫剤、粉末化硫黄、沈殿硫黄、高分散硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄、ジモルホリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド及びこれらの混合物。このような化合物は、約0.5phr〜約4phr(エラストマー成分100重量部当たりの重量部)の量で使用することができる。或いはこのような材料の使用が、他のポリマー及び樹脂成分を考慮して実施可能な場合、有機過酸化物加硫剤、過酸化ベンゾイル、t−ブチルヒドロペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、2,5−ジメチル−2.5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジ(ペルオキシベンゾエート)及びこれらの混合物を表す。このような硬化剤は、使用するときには、約1phr〜約20phrのレベルで存在してよい。他の有用な硬化剤には、フェノール樹脂加硫剤、例えばアルキルフェノール樹脂の臭化物又は塩化第一スズ、クロロプレン若しくは他のハロゲン供与体及びアルキルフェノール樹脂を含有する混合架橋剤システム並びにこれらの混合物が含まれる。このような試薬は、約1phr〜約20phrのレベルで使用することができる。或いは、他の有用な硬化剤、硬化変性剤及び有用なレベルには、酸化亜鉛及び/又はステアリン酸亜鉛(約0.05phr〜約5phr)、ステアリン酸(約0.1phr〜約5phr)、酸化マグネシウム(約0.5phr〜約4phr)、リサージ(lyserge)(約10phr〜約20phr)、p−キノンジオキシム、p−ジベンゾイルキノンジオキシム、テトラクロロ−p−ベンゾキノン、ポリ−p−ジニトロソベンゼン(約0.5phr〜約10phr)、メチレンジアニリン(約0.05phr〜約10phr)及びこれらの混合物が含まれる。更に、所望する又は必要な場合、例えばアルデヒド−アンモニア、グアニジン、チアゾール、スルフェンアミド、チウラム、ジチオ酸塩、チオウレア及びこれらの混合物を含む、1種又はそれ以上の架橋促進剤を、例えば約0.1phr〜約5phr以上の量で、加硫剤と組み合わせて添加することができる。
【0079】
好ましいポリマー成分は、加硫性成分(群)としてのハロゲン化イソブチレン含有コポリマー、例えばハロゲン化ブチル、例えば塩素化ブチル又は臭素化ブチル及び臭素化イソブチレン−p−メチルスチレンコポリマー(BIMSコポリマー)並びに熱可塑性ポリマー、例えばナイロン又は種々のナイロンポリマーのブレンドを含んでなる。本発明の動的に加硫された組成物は、熱可塑性樹脂の連続マトリックス中の分散した、実質的に完全に硬化された、小さい粒子サイズの形でのハロゲン化ゴム成分(群)を含んでなることが特に好ましい。この動的に加硫されたハロゲン化ゴム成分は、好ましくはポリアミドマトリックス中に、約0.1ミクロン〜約1ミクロン、例えば約0.1ミクロン〜約0.75ミクロン又は約0.1ミクロン〜約0.5ミクロンの平均粒子サイズを有する小さい粒子の形で分散されている。粒子サイズは、特許文献4(参照して本明細書に含める)に記載されているような、タッピング相原子力顕微鏡法(tapping phase atomic force microscopy)(AFM)を含む当該技術分野で公知の方法によって決定することができる。
【0080】
本発明の目的のために、BIMS成分は、また、低グラフト化効率エラストマーとして参照され、第二のゴムは高グラフト化効率ゴムとして参照される。それぞれの場合に、グラフト化は、組成物中に存在するポリアミド(群)上へのグラフト化を指す。この効率に於ける差異及びポリマーの性能を測定するための方法を、以下更に説明する。
【0081】
本明細書に記載した組成物は、1種又はそれ以上の充填剤成分、例えば炭酸カルシウム、クレー、雲母、シリカ及びケイ酸塩、タルク、二酸化チタン、デンプン及び他の有機充填剤、例えば木粉並びにカーボンブラックを有していてよい。適切な充填剤物質には、カーボンブラック、例えばチャンネルブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、変性カーボンブラック、例えばシリカ処理した又はシリカ被覆したカーボンブラック(例えば米国特許第5,916,934号(参照して本明細書に含める)に記載されている)等が含まれる。強化グレードカーボンブラックが好ましい。充填剤には、また、他の強化材料又は非強化材料、例えばシリカ、クレー、炭酸カルシウム、タルク、二酸化チタン等が含有されてよい。充填剤は組成物中に存在するゴムの0〜約30重量%のレベルで存在してよい。
【0082】
薄片化された、挿入された又は分散したクレーも、組成物中に存在してよい。これらのクレーは、また、「ナノクレー」として参照され、公知であり、それらの同定、製造方法及びポリマーとのブレンドは、例えばJP2000109635、JP2000109605、JP11310643、DE19726278、国際特許出願公開第98/53000号並びに米国特許第5,091,462号、米国特許第4,431,755号、米国特許第4,472,538号及び米国特許第5,910,523号に開示されている。本発明の目的のために適している膨潤性層状クレー材料には、天然又は合成フィロケイ酸塩、特にスメクチッククレー、例えば、モンモリロナイト、ノントロナイト、ベイデライト、フォルコンスコイト(volkonskoite)、ラポナイト(laponite)、ヘクトライト、サポナイト、サウコナイト(sauconite)、マガダイト(magadite)、ケニアイト(kenyaite)、ステベンサイト(stevensite)等並びにバーミキュライト、ハロイサイト、アルミン酸塩オキシド、ハイドロタルサイト等が含まれる。これらの層状クレーは、一般的に、一緒に結合され、中間層表面に存在する交換可能なカチオン、例えばNa+、Ca+2、K+又はMg+2を含有する、一つの態様に於いて典型的に約4〜約20Å、他の態様に於いて約8〜約12Åの厚さを有する、複数のケイ酸塩小板を含有する粒子からなる。
【0083】
層状クレーは、層状ケイ酸塩の中間層表面に存在するカチオンとのイオン交換反応を受けることができる有機分子(膨潤剤)による処理によって、挿入又は薄片化されることができる。適切な膨潤剤には、カチオン性界面活性剤、例えば脂肪族、芳香族又はアリール脂肪族のアミン、ホスフィン及びスルフィドの、アンモニウム、アルキルアミン若しくはアルキルアンモニウム(第一級、第二級、第三級及び第四級)、ホスホニウム又はスルホニウム誘導体が含まれる。望ましいアミン化合物(又は対応するアンモニウムイオン)は、構造R123N(式中、R1、R2及びR3は同じか又は異なっていてよいC1〜C30アルキル又はアルケンである)を有するものである。一つの態様に於いて、薄片化剤は、所謂長鎖第三級アミン(但し、少なくともR1はC12〜C20アルキル又はアルケンである)である。
【0084】
膨潤剤の他のクラスには、中間層表面に共有的に結合できるものが含まれる。これらには、構造−Si(R′)22(式中、R′は、それぞれ存在する場合に、同じであるか又は異なっており、アルキル、アルコキシ又はオキシシランから選択され、R2はコンポジットのマトリックスポリマーと相溶性である有機基である)のポリシランが含まれる。他の適切な膨潤剤には、炭素数2〜30のプロトン化されたアミノ酸及びそれらの塩、例えば、12−アミノドデカン酸、ε−カプロラクタム等の材料が含まれる。適切な膨潤剤及び層状ケイ酸塩の挿入方法は、米国特許第4,472,538号、米国特許第4,810,734号、米国特許第4,889,885号及び国際特許出願公開第92/02582号に開示されている。
【0085】
本発明の好ましい態様に於いて、薄片化剤又は膨潤剤はハロゲン化ポリマーと組み合わせられる。一つの態様に於いて、この試薬には、全ての第一級、第二級及び第三級アミン及びホスフィン;アルキル及びアリールスルフィド及びチオール並びにこれらの多官能性版が含まれる。望ましい添加物には、長鎖第三級アミン、例えばN,N−ジメチルオクタデシルアミン、N,N−ジオクタデシル−メチルアミン、ジ水素化牛脂アルキル−メチルアミン等及びアミン末端ポリテトラヒドロフラン;長鎖チオール及びチオサルフェート化合物、例えばヘキサメチレンナトリウムチオサルフェートが含まれる。本発明の他の態様に於いて、改良された共重合体不透過性は、多官能性硬化剤、例えばヘキサメチレンビス(ナトリウムチオサルフェート)及びヘキサメチレンビス(シンナムアルデヒド)の使用によって達成される。
【0086】
本発明に従って組成物中に含有される、薄片化された、挿入された又は分散したクレーの量は、組成物の機械的性質又はバリヤー性、例えば引張強度又は空気/酸素透過性に於ける改良を生じさせるために十分な量である。量は、典型的には、組成物のポリマー含有量基準で、一つの態様に於いて約0.5〜約15重量%又は他の態様に於いて約1〜約10重量%及び更に他の態様に於いて約1〜約5重量%であってよい。ゴム100部当たりの部で表すと、薄片化された、挿入された又は分散したクレーは、一つの態様に於いて約1〜約30phr、他の態様に於いて約3〜約20phrで存在してよい。一つの態様に於いて、薄片化クレーは、アルキルアミン薄片化クレーである。
【0087】
本明細書で使用する用語「プロセスオイル」は、石油誘導プロセスオイル及び合成可塑剤の両方を意味する。プロセスオイル又は可塑剤オイルは、空気バリヤー組成物中に存在してよい。このようなオイルは、主として、層の製造の間の組成物の加工、例えば混合、カレンダー加工等を改良するために使用される。特にエラストマー成分(群)用の適切な可塑剤オイルには、脂肪族酸エステル又は炭化水素可塑剤オイル、例えばパラフィン系若しくはナフテン系石油オイルが含まれる。標準的、非−DVA、非エンジニアリング樹脂含有インナーライナー組成物中に使用するための好ましい可塑剤オイルは、パラフィン系石油オイルであり、このようなインナーライナーに使用するための適切な炭化水素可塑剤オイルには、下記の一般的特性を有するオイルが含まれる。
【0088】
【表1】

【0089】
一般的に、プロセスオイルは、パラフィン系オイル、芳香族系オイル、ナフテン系オイル及びポリブテンオイルから選択することができる。ポリブテンプロセスオイルは、炭素数約3〜約8、更に好ましくは炭素数約4〜約6のオレフィン誘導単位の低分子量(15,000Mn未満)ホモポリマー又はコポリマーである。他の態様に於いて、ポリブテンオイルは、C4ラフィネートのホモポリマー又はコポリマーである。低分子量「ポリブテン」ポリマーは、例えば、Synthetic Lubricants and High-Performance Functional Fluids 357-392(Leslie R.Rudnick及びRonald L.Shubkin編、Marcel Dekker 1999)に記載されている(以下、「ポリブテンプロセスオイル」又は「ポリブテン」)。ポリブテンオイルの有用な例は、プロセスオイルのPARAPOL(登録商標)シリーズ(エクソンモービル ケミカル カンパニー、テキサス州ヒューストン)であり、PARAPOL(登録商標)450、700、950、1300、2400及び2500として同定されたグレードを含む。ポリブテンプロセスオイルのPARAPOL(登録商標)シリーズは、典型的には、一定の分子量を有する合成液体ポリブテンである。PARAPOL(登録商標)オイルの分子量は、約420Mn(PARAPOL(登録商標)450)から約2700Mn(PARAPOL(登録商標)2500)までである。PARAPOL(登録商標)オイルの分子量分布(MWD)は、典型的には約1.8〜約3、好ましくは約2〜約2.8である。PARAPOL(登録商標)プロセスオイルの密度(g/mL)は、約0.85(PARAPOL(登録商標)450)から約0.91(PARAPOL(登録商標)2500)まで変化する。PARAPOL(登録商標)オイルについての臭素価(CG/G)は、450Mnプロセスオイルについての約40から2700Mnプロセスオイルについての約8までの範囲である。
【0090】
ゴムプロセスオイルは、また、それらが、パラフィン、ナフテン又は芳香族炭化水素系プロセスオイルのクラスに入るか否かに依存するASTM名称を有する。利用されるプロセスオイルの種類は、エラストマー成分の種類と連係させて習慣的に使用されるものであり、熟練したゴム化学者は、特別の応用に於いて特別のゴムと共に、どの種類のオイルを利用すべきであるかを認識しているであろう。熱可塑性エラストマー組成物のために、オイルは、全組成物の0〜約20重量%のレベルで存在してよく、好ましくは、組成物の不透過性を最大にするために、オイルは含有されていない。
【0091】
混合及び/又は加工の間のゴム又はBIMS成分と熱可塑性樹脂又はナイロン成分との間の粘度差を最小にすることによって、均一な混合及び微細なブレンド形態、換言すると加硫されたゴムの小さい分散された粒子(これは、良好なブレンド機構及び所望の透過性特性を著しく増強する)が増強される。しかしながら、BIMSポリマーの特徴である流動活性化及び剪断減粘性特徴の結果として、高温でのBIMSポリマーの低下した粘度値及び混合の間に遭遇する剪断速度は、BIMSポリマーとブレンドされる熱可塑性樹脂成分の粘度における低下よりも遙かに顕著である。従って、高い剪断速度及び温度でのBIMSのより低い粘度を考慮して、ナイロン成分の粘度が、ゴムのものと同様であるように選択されるべき場合、更なる粘度低下のために、より低い粘度を有する低分子量グレードナイロン若しくは可塑剤と組み合わせたナイロンを使用するか又は両方のアプローチの組合せを使用することが必要である。特許文献2及び特許文献3に開示されているように、BIMSポリマー相のものに合致する又は近づくナイロン樹脂相粘度を有することによって、動的加硫されたBIMS及びナイロンブレンドの分散した粒子サイズ及び全体形態を改良することができる。しかしながら、変性の性質に依存して、これらの代替は、例えば、より低い分子量ナイロンの使用の結果として望ましくない機械的特性並びに/又は使用する可塑剤の量及び種類に依存して典型的なナイロン可塑剤の使用の結果としてより高い透過度になり得る。
【0092】
2007年5月3日公開された国際特許出願公開第2007050076号(参照して本明細書に含める)に記載されている、ナイロン相の粘度を低下させるための代替アプローチは、可塑剤としての低分子量ポリアミドポリマーの使用に基づいている。この方法に於いて、中及び高分子量ナイロンを使用し、そうして得られる加硫されたBIMS及びナイロンの動的に加硫されたブレンドの機械的特性を維持することが可能であり、更に、低分子量ポリアミドは比較的低い透過性を示すので、得られる動的に加硫されたブレンドは、著しく低下したそれらの透過性特性を有しない。適切な可塑剤には、「Sunmide」(三和化学工業株式会社)及びUni−Rez(登録商標)(Arizona Chemical)を含む種々の商標で販売されているものが含まれる。このような材料は、典型的に、約20,000ダルトンよりも小さい、例えば約1,000〜約18,000ダルトン、好ましくは約3,000〜約17,000ダルトンの分子量を有し、約250℃よりも高い引火点、約−20℃よりも低い脆化温度及び約180℃よりも低い軟化温度を有する。更に、有用な低分子量アミドは、約15パスカル−秒(Pa−s)よりも小さい、或いは約0.05〜約12Pa−s、好ましくは約0.2〜約10Pa−sの、200℃での粘度を示す。上記の粘度の全範囲をカバーする適切な製品が市販されており、これらには、190℃で測定した約0.25Pa−s〜約0.60Pa−s及び200℃で測定した約0.4Pa−s〜約15Pa−sの範囲内の粘度を示す、Sunmide製品コード15、15K−5、52及び72;300;500;550;HT−110、130K、180D、140E、140PK−20及び100G並びに、特に、全て200℃で測定した、約1.1の粘度を有するグレード2614、約4.3の粘度を有するグレード2633及び約7.5の粘度を有するグレード2653を含むUni−Rezグレード2611−2722が含まれる。
【0093】
更に、可塑剤、例えば有機エステル及び他の合成可塑剤を使用することができる。DVA組成物中に使用するための特に好ましい可塑剤は、N−ブチルスルホンアミド又はポリアミド用に適している他の可塑剤である。ナイロン可塑剤には、これらに限定されないが、ラクタム、例えばカプロラクタム及びラウリルラクタム及びスルホンアミド、例えばo,p−トルエンスルホンアミド、n−エチルo,p−トルエンスルホンアミド、トリメリト酸エステル、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、リン酸エステル並びにグリコール酸エステルが含まれる。他の可塑剤には、米国特許第4,197,379号(参照して本明細書に含める)に開示されているものが含まれる。代表的可塑剤は、フタル酸エステル可塑剤、アジピン酸エステル可塑剤、リン酸エステル可塑剤、グリコール酸エステル可塑剤、スルホンアミド可塑剤、トリメリト酸エステル可塑剤及びポリマー可塑剤、特に低分子量ナイロンからなる群から選択することができる。好ましい可塑剤はフタル酸エステル可塑剤、アジピン酸エステル可塑剤及びスルホンアミド可塑剤からなる群から選択される。適切な可塑剤の例には、フタル酸ジブチル、フタル酸ジシクロヘキシル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジ(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジフェニル、フタル酸ジウンデシル、混合C7〜C11ジアルキルフタレート、ブチルベンジルフタレート、フタル酸ベンジル、アジピン酸ジ(2−エチルヘキシル)、混合C7〜C9ジアルキルアジペート、リン酸トリブトキシエチル、リン酸トリブチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリフェニル、リン酸クレジルジフェニル、リン酸2−エチルヘキシルジフェニル、リン酸イソデシルジフェニル、グリコール酸ブチルフタリルブチル、グリコール酸メチルフタリルエチル及び混合C7〜C9ジアルキルトリメリテートが含まれる。スルホンアミド可塑剤は、例えば、N−ブチルベンジルスルホンアミド、N−シクロヘキシル−p−トルエンスルホンアミド、o,p−トルエンスルホンアミド、N−エチル−o,p−トルエンスルホンアミド及びN−エチル−o−トルエンスルホンアミドを含む、ポリアミド用の可塑剤の好ましい種類を含む。他の態様に於いて、ゴムプロセスオイル、例えばナフテン系、芳香族系又はパラフィン系増量剤オイルが、約1〜約5phrで存在してもよい。更に他の態様に於いて、ナフテン系、脂肪族系、パラフィン系及び他の芳香族系オイルは、組成物中に実質的に不存在である。「実質的に不存在」によって、ナフテン系、脂肪族系、パラフィン系及び他の芳香族系オイルが、存在したとしても、組成物中に2phr以下の程度まで存在し得ることが意味される。
【0094】
加硫されたゴムの硬化度は、ゲル含有量、架橋密度、抽出可能成分の量の項目で記載することができ又はこれは、樹脂の不存在下で硬化されるゴム中で達成される硬化の状態に基づくことができる。例えば、本発明に於いて、ハロゲン化エラストマーが、例えば引張強度により又はオシレーティングディスク硬化計(oscillating disc cure meter)試験(ASTM D 2084、オシレーティングディスク硬化計を使用するゴム性質−加硫のための標準試験方法)を使用することにより測定したときに、エラストマー自体に基づく全硬化の約50〜約85%を達成することが好ましい。
【0095】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物中で有用である成分のそれぞれを説明して、下記のパラグラフは、このような組成物を製造するための効率的で新規な方法を説明する。
【0096】
動的加硫は、バンバリー(Banbury)(登録商標)インターナルミキサー(密閉混合機)、ロールミキサー及び混合押出機を含む、ゴム及びプラスチックス工業に於いて一般的に利用可能な種々の形式の商業的装置内で実施することができる。好ましい混合装置は、かみ合いスクリューを備えた二軸スクリュー押出機である。混合は、一般的に、分散したゴム粒子、特に第一のゴム成分であるハロゲン化イソブチレン含有エラストマーが、その安定性を維持するために、即ち、組成物の混合の完結時に、このような粒子の合着を回避するために必要な程度まで、分散され、硬化され及び/又はポリアミドと相互作用されるような、時間及び温度条件下で実施される。動的加硫温度の適切な範囲は、典型的には、樹脂(群)のほぼ溶融温度から約300℃未満までであり、例えば、この温度は、マトリックス樹脂(群)のほぼ溶融温度から約275℃まで、好ましくは約230℃〜約265℃、或いは約235℃〜約260℃、例えば約240℃〜約260℃、例えば約230℃〜約250℃の範囲であってよい。或いは動的加硫はマトリックス樹脂の溶融温度よりも約10℃〜約50℃高い、更に好ましくは、ポリアミド又は混合ポリアミド熱可塑性マトリックスの溶融温度よりも約20℃〜約40℃高い温度範囲で実施することができる。混合押出機は、典型的には、それらのそれぞれが制御された温度であってよい複数のバレル区画からなり、それぞれの機能は、例えば供給区画、混合区画、冷却区画、溶融区画等として変化し得る。その結果、それぞれの区画内の温度は、上流に又はそれぞれの区画内に供給される成分の、溶融、混合、分散及び硬化のための最も適切な条件を達成するように制御することができる。例えば、最も上流の区画内の温度を、典型的に押出機の第一区画に供給される、ポリアミド(群)並びにポリアミド安定剤及び可塑剤の加熱、溶融及び分散を促進するために、例えば約230℃〜約250℃に上昇させることができる。これに続いて、BIMS含有成分の混合、分散及び動的加硫のために適した温度、例えば約200℃〜約230℃にし、その後、第二のエラストマーの混合及び分散のために並びに混合押出機からの混合された組成物の排出のために適した温度、例えば約190℃〜約220℃にすることができる。これらの温度は、例示のみの目的のためである。それは、特定の値は、特別のポリアミド種類(群)及びグレード(群)、BIMS又は他のハロゲン化イソブチレン含有成分を動的に加硫するために使用される特別の硬化システム、その活性並びにそれが動的に加硫されるか又は動的加硫無しに分散されるか否かに依存して選択することができるからである。
【0097】
本発明の一つの態様に於いて、加硫された分散相を形成することが望まれるエラストマー成分(群)を架橋することができる架橋剤を、エラストマー成分の中に、硬化システムを実質的に活性化するためには不十分な低い乃至中度の温度で混合することによって、架橋剤(群)又は硬化システムの必要又は適切な量をエラストマー成分(群)の中に分散させ、その後、混合物の動的加硫を実施する目的のために、このようにして配合した又は促進したエラストマー成分を樹脂成分(群)と接触させる。この方法によって、架橋剤は、ゴムと実質的に反応せず、これは熱可塑性樹脂と部分的に反応して、分子量低下又は樹脂の架橋を起こす機会も有しない。更に、エラストマー成分の架橋速度及び架橋の程度の制御は、一層容易に達成される。従って、本発明の組成物は改良された性質を示す。
【0098】
例えば混合装置、例えばバンバリー(登録商標)ミキサー、2本ロールゴムミル等を使用して、エラストマー成分を予定量の架橋剤又は「システム」(後者は、特に、架橋剤と促進剤との組合せが使用される場合に、硬化剤の多成分混合物として参照される)と、実質的に均一な分散物が得られるまで予備混合又は予備配合する。この時点で、エラストマー成分は、所望によりそれに添加された、適切な量の任意の充填剤、例えばカーボンブラック若しくは変性カーボンブラック、クレー若しくは変性クレー、油及び/又は可塑剤を有することができる。前記のように、この相を混合する間に、ゴム相成分を有効に分散させ、そしてエラストマーの早すぎる架橋を回避するために、温度を、選択された特別のエラストマー(群)のために十分に低いレベルで、硬化システムの活性を考慮に入れて制御しなくてはならない。硬化剤又は硬化システムを分散させるための混合工程の間の有用な温度は約120℃よりも低くてよい。
【0099】
1種又はそれ以上のポリアミド、加硫性BIMSエラストマー及び少なくとも1種の第二のゴムを含む、熱可塑性エラストマー組成物中に存在する幾つかの成分を有すると、十分に分布し、分散した混合及び動的加硫をもたらすために、全プロセス中に複数の混合工程又は段階を含めることが、通常必要であろう。典型的には、BIMSゴムを、インターナルミキサー、例えばバンバリー(登録商標)又はゴムミルを使用して硬化剤と予備配合し、これをペレット化する。先行技術プロセスに於いて、それぞれの個々のポリアミド成分は、二軸スクリュー押出機を使用して、可塑剤及び安定剤と予備混合され、そしてペレット化される。最後に、予備配合されたBIMSゴムペレット、予備ブレンドされたポリアミドペレット及び第二のゴムペレットが、押出混合及び動的加硫のために、二軸スクリュー押出機の中に計量又は供給される。このような多工程混合及び中間冷却並びにペレット化工程は、費用が掛かり、製造間違いを起こし、製造の間の中間段階に於いて顕著な在庫に至る。
【0100】
反対に、本発明の動的加硫プロセスは典型的な先行技術プロセスのものから修正されている。本発明の改良されたプロセスに於いて、タイヤインナーライナー及びバリヤーフィルムを使用する他の工業的用途のような用途のために優れた形態を有する熱可塑性エラストマー組成物を製造するために必要な混合工程の数に於ける減少が提供される。特に、混合は、好ましくは、前記のように、ポリアミドと、BIMSエラストマー及び第二のエラストマーを含む反応性相溶化エラストマーとのブレンドをベースにする熱可塑性エラストマー組成物を製造するために、二軸スクリュー押出混合プロセス、特に1工程二軸スクリュー混合プロセスを利用する。特に好ましい1工程二軸スクリュー押出混合動的加硫プロセスには、最初に、1種又はそれ以上のポリアミドが、それらの適切な安定剤(群)及び可塑剤(群)(存在する場合)との組合せで添加され、続いて1種又はそれ以上の低グラフト化効率エラストマー(例えばその硬化又は架橋剤(群)を含有し、ペレット化された形態にあるBIMS)が添加され、その後に、1種又はそれ以上の高グラフト化効率エラストマー(前記のような第二のエラストマー)が最後に添加される逐次成分添加が含まれる。混合及び加工効率は、複数の供給ポートを使用して、二軸スクリュー押出機バレル長さに沿って、組成要素の添加の間に間隔をあけることによって達成される。特に、低グラフト化効率エラストマーと高グラフト化効率エラストマーのための供給ポートの間の間隔は、連続ポリアミドマトリックス中に分散された小粒子サイズエラストマーを得、そして安定化させるために、ポリアミド(群)との反応のための適切な機会を提供するように選択される。一つの態様に於いて、このような結果は、押出機バレルの長さに沿って、互いから約6よりも大きいL/D(押出機スクリューの長さの押出機スクリューの直径に対する比)で、エラストマーのための供給ポートの間に間隔をあけることによって達成される。長さ、Lは、典型的には、スクリューのフライト部の長さ、換言すると、フライトを含むスクリュー部分の長さを指す。スクリューの直径は、そのフライト付き部分、換言すると、押出機スクリューは、典型的には、スクリューの特定の部分の機能、例えば輸送、分散、混合、溶融、加熱、冷却等に依存して幅が変化する区画を有するので、スクリューフライトが存在する場所内のスクリューの最大幅を指す。組成物の成分、例えば熱可塑性樹脂及び/又はエラストマーに遭遇しない部分内のスクリュー上にフライトが存在する場合、このような部分は、スクリュー長さ又は直径の決定に含まれない。L/Dの計算は、二軸スクリュー押出機についてと同じであり、それぞれ、典型的には、同じ直径及び長さを有するので、2本のスクリューの1本に基づく。
【0101】
本発明の方法に於いて、混合及び動的加硫は、好ましくは二軸スクリュー押出機内で実施され、その商業的例は、容易に入手可能であり、当該技術分野で公知である。混合の時点での剪断速度は、典型的に約500秒-1以上であり、好ましくは約500〜約7500秒-1、或いは約1000〜約7500秒-1、例えば約2000〜約7500秒-1である。このような押出機は、全組成物の種々の成分に対応する複数の供給ポート及び以下詳細に説明する制限を可能にするように装備されることのみを必要とする。更に、混合スクリューは、供給ポートのそれぞれに従った混合領域及び成分の全ての導入に従った適切な長さを提供するように適合されることのみを必要とし、そうして、動的加硫を、選択されたポリマー成分及びBIMS加硫剤又は硬化システムを使用して、実施し、所望される程度まで完結させることができる。このような特徴は、本明細書中の教示に基づいて限られた実験によって、当業者により容易に決定される。或いは混合及び動的加硫を、種々の成分を導入し、混合することができ、動的加硫を実施することができる、全ての適切な混合装置内で実施することができる。例えば、成分のそれぞれ又は成分の混合物を受け取り、これらを混合し、分散させることができるようにするために、バンバリー(登録商標)インターナルミキサーを使用することができ、このような混合装置は、高温で動的加硫を実施するために使用することができる。便利さ及び効率的加工のために、押出機、更に好ましくは、本明細書中の教示と一致する、適切な供給、混合、冷却及び排出ゾーンからなる二軸スクリュー共回転かみ合い混合押出機を使用することが好ましい。
【0102】
好ましい混合順序に於いて、ポリアミド成分(群)、これらの安定剤及び可塑剤を、押出機の上流供給ポートの中に導入することができる。これらの成分を、予備混合又は予備ブレンドする必要はない。ポリアミド相中の安定剤及び可塑剤の混合及び分散を可能にするために、スクリューに沿った十分な長さを設けるべきである。混合変形、例えば安定剤(群)をナイロンと共に添加すること又は安定剤(群)をナイロン可塑剤(後者を使用する場合)と共に分散させ、そして安定剤プラス可塑剤の混合物を、その混合が始まった後にナイロンに添加することを利用することができる。必要な場合、ポリアミドの粘度が、それをBIMSと混合する前に、望ましくなく低くなるようなポリアミドの過剰の加熱を回避するために、冷却ゾーンを設けることができる。換言すると、前記のように、ポリアミド中のBIMSの効率的混合及び分散のために、ポリアミド並びにその安定剤及び可塑剤と、BIMS並びにその硬化剤及び充填剤及び可塑剤(存在する場合)とのこれらの粘度は、それらがお互いと混合され、動的加硫が開始される時点で、ほぼ同じである(実質的に「適合している」)ことが好ましい。前記のように、BIMSゴムは、典型的には、インターナルミキサー、例えばバンバリー(登録商標)又はゴムミルを使用して、硬化剤と予備混合され(また、「促進される」として参照される)、そして供給又は計量の容易性のために、これは典型的にペレット化される。前記のように、温度は、低すぎる温度及びポリマー混合物の得られる高い粘度並びに付随する電力必要量を回避するように制御すべきである。同様に、高すぎる温度は、特にポリアミド混合物の過度に低い粘度及び可能性のある分解並びにBIMS組成物との劣った混合になるであろう。有用な温度範囲は、約230℃〜約250℃で、好ましくは約210℃よりも低くなく、約275℃よりも高くない。
【0103】
BIMS供給ポートの下流には、ペレット化された形での第二のゴム(第二のゴムは、また、高グラフト化効率ゴムとして参照される)のための供給ポートが設けられている。この2種のゴム成分は、押出機内で形成されるゴム粒子の故意でない凝集を回避するために、一緒に混合押出機に供給しないことが特に好ましい。更に、BIMSゴムは、より低いグラフト化効率を示すので、動的加硫分散及び硬化反応と同時にポリアミドへのグラフト化のための追加の時間を与えるために、これは最初に供給される。反対に、より高いグラフト化効率を示す第二のゴムは、これは一層急速に反応し、ポリアミドに一層容易にグラフト化するので、更に下流で、押出機の出口により近い点で供給することができる。
【0104】
更に、グラフト化は、典型的には、グラフト化されたポリマーの粘度に於ける増加によって達成され、粘稠加熱を随伴し得るので、必要な場合、適切な冷却ゾーンを、2個のゴム供給ポートの間に導入して、組成物の温度及び粘度を制御することができ、同様に、必要な場合、第二のゴム供給ポートの後に冷却ゾーンを導入して、この点で全組成物の粘度及び温度を制御して、分散したゴム組成物の所望の形態及び粒子サイズを達成することができる。
【0105】
押出機及びスクリューの特定の特徴(スクリュー設計又は形状、直径、体積対表面積等)は、システムの特定の全体L/Dを決定するであろう。しかしながら、全ての与えられた押出機について、全体的バレル位置は、全体L/Dをとり、それを半分で分割することによって上流位置又は下流位置として指定することができる。このようにすると、より低いグラフト化効率エラストマーを、押出機の第一の又は上流半分内で添加又は供給し、より高いグラフト化効率エラストマーを、押出機の第二の又は下流半分内で押出機に添加又は供給することが好ましい。前記のように、ポリアミド成分並びにそれらの安定剤及び可塑剤(存在する場合)は、最初に添加する。典型的には、本発明に於いて使用するために適している二軸スクリューかみ合い混合押出機は、少なくとも約25で約60よりも小さい、更に好ましくは約30〜約55、或いは約35〜約50、例えば約38〜約48のL/Dを有するであろう。
【0106】
動的加硫のための混合の全時間は、約30秒間〜約8分間、例えば約45秒間〜約6分間、例えば約1分間〜約4分間であってよい。しかしながら、混合時間は、適切に小さく安定なエラストマー粒子サイズ(群)を示す動的に加硫された組成物及び使用される第一のゴム及び第二のゴムに基づく目標物理的及び/又は透過性特性を示す全組成物を製造するために必要なとき並びに前記のように第二のゴムが動的に加硫されたか否かを考慮して調節することができ、好ましくは調節すべきである。前記のように、種々の成分の添加を伴うプロセスの全体又はそれぞれの部分若しくは段階での混合時間の選択は、本明細書中に示される原理及び詳細な情報に基づいて、ポリマー混合、特に押出混合に於ける当業者によって容易に決定される。
【0107】
このようにして得られた熱可塑性エラストマー組成物は、連続相を形成するナイロン樹脂のマトリックス中の分散相(ドメイン)として分散している不連続相を形成するエラストマー成分によって構成されている。動的加硫の結果として、この組成物は熱可塑性を保留し、この組成物のフィルム、層又はシート状構造物は、通常の成形、押出又はカレンダー加工を使用して形成することができる。
【0108】
単軸スクリュー押出機の末端で、Tシート押出ダイ、ストレート若しくはクロスヘッド構造チューブ押出ダイ、インフレーション成形円筒形ダイ等を使用して又はカレンダー加工により、得られた熱可塑性エラストマー組成物をシート、フィルム又はチューブに成形することによって、この組成物を、空気入りタイヤの空気透過防止層、例えばインナーライナーとして及びホースのコンポーネント又は層として等で使用することが可能である。本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、一度ストランドにし、ペレットにし、次いで樹脂用に典型的に使用される単軸スクリュー押出機を使用することによって成形することができる。
【0109】
このようにして得られたシート又はチューブ状成形物品は、空気入りタイヤのインナーライナー又は低いガス透過性ホースのホースチューブ若しくはホースカバーのために、有効に使用することができる。更に、この組成物の低透過性特性は、流体と直接接触している層が、取り扱われる流体に対する適切な耐性を有しているという条件で、気体以外の流体、例えば液体、例えば水、水圧流体、ブレーキ流体、熱移動流体等で使用するために適している。
【0110】
本発明の種々の面、例えば性質、測定の単位、条件、物理的状態又はパーセントの特別のセットを表すものを参照して、上記の明細書又は後のパラグラフ及び特許請求の範囲に於いて列挙した数値の全ての範囲は、参照又は他の方法によって、このように列挙された全ての範囲内に組み込まれる数値又は範囲の全てのサブセットを含む、このような範囲内に入る全ての数値を、本明細書中に明らかに文字通り含めることが意図される。更に、変動する特性又は状態のための又はこれと連係して、修飾語として使用するとき、用語「約」は、本明細書中に開示された数値、範囲、特性及び条件が順応性であること並びに範囲の外である又は単一の値とは異なっている、温度、時間、濃度、量、含有量、炭素数、性質、例えば粒子サイズ、表面積、嵩密度など使用する、当業者による本発明の実施が、所望の結果、即ち、例えば空気入りタイヤ若しくはホース内で又はタイヤインナーライナーとして使用するために適している、少なくとも1種のイソブチレン含有エラストマー及び少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含んでなる動的に加硫された高エラストマー含有量組成物を達成するであろうことを伝えることを意図している。
【実施例】
【0111】
実施例で使用した成分のために、下記の市販製品を使用した。
1.樹脂成分
N11(ナイロン11): Rilsan BMN O TL(Atochem)
N6/66(ナイロン6/66コポリマー): Ube5033B(宇部興産)
P:可塑剤、BBSA、N−ブチルスルホンアミド
S:安定剤パッケージ、Irganox、Tinuvin及びCuIを含有する
【0112】
2.ゴム成分
BIMS−1:Exxpro 89−4(エクソンモービル ケミカル)
ZnO:酸化亜鉛硬化剤
St−acid:ステアリン酸硬化剤
ZnSt:ステアリン酸亜鉛硬化剤
AR201:マレイン化エチレンアクリル酸エチル(EEA)
コポリマー(三井−デュポン)
Exxelor VA 1840:マレイン化(0.2〜0.5重量%)エチレン−オクテンコポリマー(エクソンモービル ケミカル)
【0113】
ナイロンに対するエラストマーのグラフト化効率を研究するために、エラストマーとN6/66とのブレンドを、ブラベンダーインターナルミキサーを使用して、220℃及び60RPMで3分間製造した。最初に、60部のナイロンを2分間添加し、その後40部のエラストマーを添加し、次いでこの組合せを1分間混合した。混合した後、ナイロン−エラストマー混合物を、溶媒(群)によって抽出して、ナイロンにグラフト化したエラストマーの量を決定した。使用した溶媒は、BIMSのために熱トルエン及びキシレン、AR201のために熱キシレン並びにExxelor 1840のために熱トルエン及びキシレンであった。ブレンドを12時間抽出し、溶媒を4時間毎に新しくした。抽出後に、ブレンドを、真空オーブン内で60℃で24時間乾燥させた。溶媒抽出結果に基づいて、ブラベンダーミキサー内で220℃で1分間後に、ナイロン上にグラフト化したエラストマーの重量パーセントを、それぞれのエラストマーについて決定し、結果を表1に記載する。3種の研究したエラストマーの中で、Exxelor 1840が、最も多くN6/66上にグラフトすると思われ、「高グラフト化効率」エラストマーとして参照される。N6/66に対するAR201のグラフト化効率は、著しく低く、BIMSのものと同様であり、これらのエラストマーは、「低グラフト化効率」エラストマーとして特徴付けられる。
【0114】
【表2】

【0115】
表2に示す、動的に加硫したアロイ(DVA)ブレンド、名称F1組成物を、JSW−44(TEX44、日本製鋼所)二軸スクリュー押出機を使用して代替方法に従って製造した。
【0116】
【表3】

【0117】
表3に示す比較例に於いて、BIMSゴムを、ニーダー(インターナルミキサー)を使用して、40RPMで3.5分間90℃で、硬化剤と共に予備配合し、そしてペレット化した。この比較例のために、それぞれの個々のナイロン成分を、JSW−44二軸スクリュー押出機を使用して、210℃で100RPMで、可塑剤及び安定剤と共に予備混合し、そしてペレット化した。従って、この比較例に於いて、ナイロンマスターバッチ(可塑剤及び安定剤を含有するナイロン組成物)を製造するために、2個の追加の二軸スクリュー混合工程が存在し、その後、これらを、二軸スクリュー押出混合及び動的加硫工程で使用する。この3工程比較混合例に於いて、全ての予備配合したゴムペレット、AR201エラストマーペレット並びに予備ブレンドしたN6/66及びN11ペレットを計量し、第一バレル区画の第一供給ホッパーの中に、換言すると最も上流の位置で添加した。
【0118】
前記のように、典型的に、押出機は、連結されたバレル区画群から作られており、それぞれは、約2〜約3のL/Dに等価の長さを有し、それぞれ典型的には、任意に独立のサーモカップル及び圧力センサーを有する独立の冷却区画を有する。ここで使用したJSW−44二軸スクリュー押出機及び本明細書中に報告した他の二軸スクリュー混合例は、合計14個のセグメント及び49の全体L/Dを有していた。押出機の長さに沿ったバレルセグメント内の温度を、サーモカップル及び金属の反射温度に従って設定した。この温度は、下記のような典型的なパターンで約190℃〜約250℃の範囲であった(ゾーン1,供給からゾーン14、出口まで℃でのサーモカップル温度;押出機出口、区画14でのポリマー組成物の実際の温度は、約260℃〜約270℃であった):250/250/250/250/230/200/200/200/200/200/200/195/190/220.BIMS成分を、典型的には、ゾーン5に導入し、第二のゴムをゾーン10に導入し、混合ゾーンは、4、9及び12に存在した。
【0119】
表3に示すように、代替の1工程二軸スクリュー混合プロセスを使用して、DVA組成物名称F1を製造した。液体ナイロン可塑剤を、L/D=7の位置に対応する、押出機の場所番号2で、ポンプを経て供給した。2個の追加の供給場所は、番号3、L/D=24.5及び番号4、L/D=35で更に下流であった。実施例1について得られた結果は、良好なゴム分散形態(連続ナイロンマトリックス中の微細なゴム分散)を有する良好な品質のペレットが、ナイロンを安定剤と共に最初に供給し、続いてナイロン可塑剤を供給し、最後に2種のエラストマー成分を添加することによって得ることができることを示している。しかしながら、低グラフト化効率エラストマー(BIMS)を、ナイロンの前に最初に供給すると、実施例2に示されるように、共−連続形態を有する劣って混合されたペレットが得られた。1工程混合プロセスが機能するために、ナイロン(群)をゴム成分(群)の前に供給する必要があり、好ましくは、ナイロンは、安定剤及び可塑剤と共に供給されるが、安定剤及び可塑剤が、ゴム(群)の前に供給される限り、これらの成分を同じ供給点で供給する必要はない。
【0120】
【表4】

【0121】
追加の配合物を、表4に示すように製造した。F1及びF2中のプラスチック相中に、2種のナイロンを使用し、配合物F3、F4及びF5中に、1種のナイロン、N6/66のみを使用した。従って、組成物F3、F4及びF5に対応する比較例は、1個の追加のナイロン予備ブレンド調製工程のみが必要であるので、2工程二軸スクリュー押出混合方法である。配合物F3、F4及びF5並びにF1のために使用した1工程二軸スクリュー混合方法に関して、4個の異なった供給場所を使用した。ここで、再び、49の全L/Dを有するJSW−44押出機を使用して、場所1は、L/D=3.5にあり、場所2は、L/D=7にあり、場所3は、L/D=24.5にあり、そして場所4は、L/D=35にあった。
【0122】
【表5】

【0123】
表5〜8に示すように、2種のエラストマーを一緒に添加するか又はより低いグラフト化効率を有するエラストマー(表1に示されるようなBIMS)を最初に添加することが好ましい。BIMSを最後に添加するとき、劣った形態が得られた。方法5に於いて、BIMSゴムを、ナイロン可塑剤の導入の前に、ナイロン安定剤と一緒に添加した。エラストマー成分に合致する粘度のために可塑剤によってナイロン粘度を低下させることが望ましいことを考慮して、可塑剤導入の前のエラストマー成分の添加は望ましくない。形態は、AR201又はExxelor 1840を最後に添加する方法3を使用して優れていた。BIMSのものに対して比較して同様であるが僅かに高いグラフト化効率を有していたAR201を含有するF1及びF2配合物に於いて、AR201を、方法1に於けるようにBIMSと共に添加するとき、良好な形態を得ることができた。しかしながら、BIMSのものと比較して、Exxelor 1840について観察される遙かに高いグラフト化効率で、より高いグラフト化効率ポリマー、例えば、Exxelor 1840(これは、方法3に於いて最後に添加した)をより遅く添加することが好ましい。
【0124】
【表6】

【0125】
【表7】

【0126】
【表8】

【0127】
【表9】

【0128】
更に、BIMSとAR201又はExxelor 1840との添加場所の間の距離を更に減少させることができる。表9に示すように、AR201又はExxelor 1840から僅か7L/D上流で添加されるBIMSと共に、AR201又はExxelor 1840を含有する熱可塑性エラストマー組成物に於いて、優れた形態を得ることができた。従って、1工程二軸スクリュー押出混合を使用して、これらのDVA中で優れた分散形態を与えるために、ナイロンを、好ましくは最初に、最も好ましくはナイロン用の安定剤及び可塑剤と一緒に添加する。エラストマーの中で、最低のグラフト化効率を有するエラストマーを好ましくは最初に添加し、より高いグラフト化効率エラストマーを好ましくは最後に添加する。良好な混合及び形態を達成するために、これらの低グラフト化効率エラストマー添加場所と高グラフト化効率エラストマー添加場所との間に十分な間隔をあけることが好ましい。このようなエラストマーの添加の間の間隔は、好ましくは約L/D=6よりも大きい。
【0129】
【表10】

【0130】
本発明の種々の面、例えば、性質の特別のセット、尺度の単位、条件、物理的状態又はパーセントを表すものを参照して、前記の明細書又は後記のパラグラフ及び特許請求の範囲中に挙げられた全ての数字の範囲は、そのように挙げられた全ての範囲内に含まれる数字又は範囲の全ての部分集合を含む、このような範囲内に入る全ての数字を、参照又は他の方法により、文字通り明白にここに含めるように意図される。更に、用語「約」は、変数、特徴若しくは条件のための修飾語として又は変数、特徴若しくは条件と結び付けて使用されるとき、本明細書中に開示された数値、範囲、特徴及び条件が順応性であること並びに範囲の外である又は単一の値とは異なっている、温度、濃度、量、含有量、炭素数及び性質を使用する、当業者による本発明の実施が、所望の結果、即ち、好ましくは効率的なプロセス、更に好ましくは1工程押出機混合プロセスで製造された、熱可塑性マトリックス中の1種又はそれ以上の分散されたエラストマーからなる、望ましい形態を示す熱可塑性エラストマー組成物を達成するであろうことを伝えるように意図される。
【0131】
本明細書中に記載した全ての文書を、全ての優先文書及び/又は試験手順を含めて、本明細書に参照して含める。本発明の原理、好ましい態様及び操作のモードを、明細書に記載した。本明細書中に本発明を特別の態様を参照して記載したけれども、これらの態様は、本発明の原理及び応用の単なる例示であることが理解されるべきである。従って、付属する特許請求の範囲によって定義されたような、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、例示態様に対して多数の修正を行うことができること及び他の配置を案出できることが理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温でポリマー成分に剪断を適用することができるミキサー内で実施する、熱可塑性エラストマー組成物を製造するための動的加硫方法であって、該組成物が、ハロゲン化イソブチレン含有エラストマーを含む少なくとも1種の第一のエラストマー又はゴムの分散した粒子及びポリアミドと反応してポリアミドにグラフト化することができる、少なくとも1種の官能基を有する少なくとも1種の第二のエラストマー又はゴムの分散した粒子を含んでなり、該少なくとも1種の第一のエラストマー及び該少なくとも1種の第二のエラストマーの粒子が、ナイロンホモポリマー及びナイロンコポリマーからなる群から選択された少なくとも1種のポリアミドを含む、連続した熱可塑性ポリアミドマトリックス中に、分散しており、該方法が、
(1)該ハロゲン化エラストマー中に、該ハロゲン化エラストマーを架橋して予備配合されたハロゲン化エラストマー組成物を得るのに適した少なくとも1種の硬化剤又は硬化システムを、該硬化剤又は硬化システムを実質的に均一に分散させるには十分であるが、該エラストマーの実質的な架橋(これは、高温及び剪断の条件下でポリアミドに添加したときに、その続く流動及び分散を妨げる)を起こすのには不十分である、剪断条件、混合時間及び温度を使用して分散させる工程、
(2)該少なくとも1種のポリアミド及び任意的な少なくとも1種のナイロン熱安定剤若しくは酸化安定剤若しくは光安定剤又はこれらの組合せを、該ミキサー中に導入し、このナイロンを溶融させ、該任意的な安定剤を該ポリアミド中に分散させるのに十分な剪断及び熱を適用して、ポリアミド混合物を形成させる工程、
(3)少なくとも1種のナイロン可塑剤を、該ミキサー内に存在する温度及び剪断条件下で、該ナイロン混合物の粘度を、該予備配合されたハロゲン化エラストマーの粘度に実質的に適合させるために十分な量で導入する工程、
(4)該ミキサー中に、該予備配合されたハロゲン化エラストマーを導入し、該ハロゲン化エラストマーの動的加硫を開始するために十分な量で熱及び剪断を適用する工程並びに
(5)該第二のエラストマーを導入し、加熱及び剪断を継続して、該第二のエラストマーを実質的に分散させ、該ハロゲン化エラストマーの該動的加硫を実質的に完結させ、そして該ミキサーから、該動的に加硫された熱可塑性エラストマー組成物を取り出す工程を含んでなる動的加硫方法。
【請求項2】
前記ミキサーが、L/D(ここで、Lは少なくとも1個の押出機スクリューのフライトの長さであり、Dは該少なくとも1個の押出機スクリューのフライト付き部分内の最大直径である)の特性値を有する少なくとも1個の押出スクリューを有する混合押出機である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記押出機が二軸スクリュー押出機である請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記押出機が約25〜約60のL/Dを有する請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記予備配合されたハロゲン化エラストマーを、前記押出機の全体L/Dの半分又はそれ以下の上流位置で前記押出機に供給し、前記第二のエラストマーを、前記押出機の全体L/Dの半分又はそれ以上の下流位置で前記押出機に供給する(但し、前記予備配合されたハロゲン化エラストマーの供給位置と前記第二のエラストマーの供給位置とは、少なくとも約L/D=6の前記押出機に沿った距離だけ、互いに分離されている)請求項4に記載の方法。
【請求項6】
工程1に於いて、前記予備配合されたハロゲン化エラストマー組成物をペレット化し、形成されたペレットを冷却することを更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ハロゲン化エラストマーが約0.1ミクロン〜約1.0ミクロンの平均サイズを有する粒子の形で前記ポリアミドマトリックス中に分散され、前記第二のエラストマーが、約0.1ミクロン〜約1.0ミクロンの平均サイズを有する粒子として、前記ポリアミドマトリックス中に分散されている請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第二のエラストマー又はゴムがエチレン性不飽和ニトリル−共役ジエン系高飽和コポリマーゴム(HNBR)、エポキシル化天然ゴム(ENR)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、ヒドリンゴム、アクリルゴム、無水マレイン酸グラフト化アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンゴム(ABS)、無水マレイン酸グラフト化エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、無水マレイン酸グラフト化スチレン−エチレン/ブタジエン−スチレンゴム(SEBS)、マレイン化エチレン−プロピレンコポリマーゴム(EPM)、マレイン化エチレン−ブテンゴム、マレイン化エチレン−ヘキセンゴム、マレイン化エチレン−オクテンゴム、マレイン化エチレン−デセンゴム、マレイン化エチレン−酢酸ビニルコポリマー、マレイン化エチレン−アクリル酸メチルコポリマー、マレイン化エチレン−アクリル酸エチルコポリマー、マレイン化エチレン−アクリル酸コポリマー、EPDM/スチレンコポリマー、マレイン酸変性EPDM/スチレンコポリマー、EPDM/アクリロニトリルグラフトコポリマー、マレイン酸変性EPDM/アクリロニトリルグラフトコポリマー、スチレン/マレイン酸コポリマー、反応性フェノキシ熱可塑性樹脂、マレイン化イソブチレン−イソプレンコポリマー、マレイン化イソブチレン−パラメチルスチレンコポリマー、マレイン化ハロゲン化イソブチレン−イソプレンコポリマー、マレイン化星状枝分かれブチル(SBB)コポリマー、マレイン化BIMSコポリマー及びこれらの混合物からなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第二のエラストマー又はゴムが約:50重量%、45重量%、40重量%、35重量%、30重量%、25重量%、20重量%、15重量%、10重量%、9重量%、8重量%、7重量%、6重量%、5重量%、4重量%、3重量%及び2重量%よりも少ない無水マレイン酸からなる群から選択された量で存在する無水マレイン酸を含む請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記実質的に完全な動的加硫が、約60%〜約95%超、約65%〜約95%、約70%〜約95%、約75%〜約90%超、約80%〜約98%、約85%〜約95%及び約85%〜約99%からなる群から選択された硬化度に相当する請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記硬化度が少なくとも約80%である請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記エラストマー含有組成物が充填剤及び可塑剤からなる群から選択された少なくとも1種の成分を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記ポリアミドがナイロン11、ナイロン12、ナイロン6/66コポリマー及びこれらの混合物からなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1種のハロゲン化イソブチレン含有エラストマー又はゴムがハロゲン化ブチルゴム、ハロゲン化イソオレフィン/パラアルキルスチレンコポリマー、ハロゲン化イソブチレン−p−メチルスチレン−イソプレンコポリマー、ハロゲン化枝分かれブチルゴム及びハロゲン化星状枝分かれブチルからなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記ハロゲン化ブチルゴムが、下記のハロゲン化構造:
【化1】

(式中、Xはハロゲンを表す)
の高い含有量を含む請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記ハロゲンが臭素及び塩素からなる群から選択される請求項14又は請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ハロゲン化イソオレフィン/パラ−アルキルスチレンコポリマーがC4〜C7イソオレフィンを含む請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記ハロゲン化イソオレフィン/パラ−アルキルスチレンコポリマーがハロゲン化ポリ(イソブチレン−共−p−メチルスチレン)コポリマーを含む請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ハロゲンが臭素を含む請求項18に記載の方法。
【請求項20】
長さ対直径(L/D)スクリュー比が49で、ポリマー及びその他の成分に剪断、熱及び冷却を適用することができる、二軸スクリュー押出機ミキサー内で実施する、熱可塑性エラストマー組成物を製造するための、動的加硫方法であって、該組成物が臭素化ポリ(イソブチレン−共−パラメチルスチレン)(BIMS)ゴムの動的に加硫された粒子及びマレイン化エチレン−オクテンコポリマーゴムの粒子を含み、該粒子のそれぞれが、連続した熱可塑性ナイロン6/66コポリマー樹脂マトリックス中に分散しており、該方法が、
(1)100重量部のBIMSゴム中に、0.15部の酸化亜鉛、0.60部のステアリン酸及び0.30部のステアリン酸亜鉛の混合物を含む硬化システムを分散させ、それによって予備配合されたBIMS組成物を得、該硬化システムを実質的に均一に分散させるためであるが、該BIMSの実質的な架橋(これは、高温及び剪断の条件下で、その続く流動を妨げる)を起こすのには不十分である、40RPM、90℃で3.5分間、インターナルミキサー内で混合し、そして該予備配合されたBIMSをペレット化し、冷却する工程、
(2)L/D=3.5の該押出機中に、62.4部のナイロン6/66コポリマー及び0.47部のナイロンの熱、酸化、光安定剤の混合物を導入し、このナイロンを溶融させ、この安定剤を該ナイロン中に分散させるのに十分な剪断及び熱を適用し、ナイロン混合物を形成させる工程、
(3)L/D=7で、26.8部の、ナイロン可塑剤であるN−ブチルスルホンアミドを導入する工程、
(4)L/D=28で、前記(1)に示した組成物に従った該予備配合されたハロゲン化エラストマーを含んでなるペレットを導入し、該ハロゲン化エラストマーの動的加硫を開始するのに十分な量で、熱及び剪断を適用する工程並びに
(5)L/D=35で、10.0部のマレイン化エチレン−オクテンコポリマーゴムを導入し、加熱及び剪断を継続して、該第二のエラストマーを実質的に分散させ、該BIMSの動的加硫を実質的に完結させ、そして該ミキサーから、該動的に加硫された熱可塑性エラストマー組成物を取り出す工程を含んでなる動的加硫方法。

【公表番号】特表2011−500883(P2011−500883A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−528851(P2010−528851)
【出願日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際出願番号】PCT/US2007/081116
【国際公開番号】WO2009/048472
【国際公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(505335740)エクソンモービル ケミカル パテンツ,インコーポレイティド (17)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】