説明

熱可塑性樹脂の押出射出成形方法および溶融押出射出装置

【課題】溶融粘度が極めて低い樹脂の加熱溶融動作、型内への充填動作および保圧動作を連続して行うことにより、当該樹脂を用いた回路基板の低圧封止成形を効率良く行うことのできる新たな成形方法を提案すること。
【解決手段】押出射出成形装置1では、加熱シリンダ17内に投入した樹脂をスクリュ18によって先端に移送しながら徐々に溶融し、加熱シリンダ先端の押出射出ノズルから溶融状態の樹脂を押し出して射出成形型3内に押出射出する。加熱シリンダ17の加熱温度を制御することにより樹脂の粘度状態をスクリュ18によって圧送可能な状態に保持し、スクリュ18の回転数、トルク、回転時間に基づき樹脂の押出射出圧力を制御し、スクリュ18の回転時間により樹脂の押出射出量を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的にホットメルトモールディング材と呼ばれる溶融粘度が低く、低圧封止成形に用いられる熱可塑性樹脂の加熱溶融動作、射出成形型内への押出射出動作および保圧動作を連続して効率良く行うことのできる新たな成形方法および成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品が実装された回路基板、例えば、車載用の回路基板は、その保護のために、熱可塑性樹脂からなる封止材によって全体を包み込むように封止して使用されている。回路基板の封止には、特許文献1に開示されているようなホットメルトモールディングが採用され、封止材としては、回路基板、その搭載部品にダメージを与えることの無いように、融点および溶融粘度が低い熱可塑性樹脂が用いられ、低い注入圧力で溶融状態の熱可塑性樹脂を金型内に注入する低圧封止成形が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−351777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、電子部品などを封止するために用いられるホットメルトモールディング材は、加熱タンク内において溶融状態にされ、加熱タンクから供給される溶融状態のホットメルトモールディング材を、注入用のガンなどを用いて金型内に低圧で注入して充填している。ホットメルトモールディング材を用いた電子部品などの封止を連続して行うためには、ホットメルトモールディング材の加熱溶融動作、溶融したホットメルトモールディング材の金型内への充填動作、樹脂充填後の金型の保圧動作を連続して効率良く行うことが望ましい。
【0005】
本発明の課題は、この点に鑑みて、ホットメルトモールディング材のような溶融粘度の低い熱可塑性樹脂の加熱溶融動作、射出成形型内への充填動作および保圧動作を連続して効率良く行うことのできる新たな熱可塑性樹脂の押出射出成形方法および溶融押出射出装置を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の熱可塑性樹脂の押出射出成形方法は、
加熱シリンダ内に投入した熱可塑性樹脂(以下、「樹脂」という。)を、当該加熱シリンダ内に配置されているスクリュの回転により、当該加熱シリンダの先端に向けて移送しながら徐々に溶融する加熱溶融工程と、
前記加熱シリンダの先端に取り付けた押出射出ノズルを、型締状態の射出成形型の樹脂注入口に押し当てた状態で、前記スクリュの回転により、前記押出射出ノズルから溶融状態の前記樹脂を押し出して前記射出成形型内に射出する押出射出工程とを有し、
前記加熱溶融工程では、前記加熱シリンダの加熱温度を制御することにより、前記樹脂の粘度状態を前記スクリュによって圧送可能な状態に保持し、
前記押出射出工程では、前記スクリュの回転数、トルクおよび回転時間のうちの少なくとも一つに基づき前記樹脂の押出射出圧力を制御することを特徴としている。
【0007】
ここで、当該押出射出工程では、前記スクリュの回転時間により前記樹脂の押出射出量を制御することができる。
【0008】
本発明では、加熱シリンダ内の樹脂の加熱状態を制御してスクリュによって圧送可能な粘度状態に維持している。したがって、一般的な押出成形に用いられる熱可塑性樹脂に比べて溶融粘度が低い熱可塑性樹脂であってもスクリュによって所定の圧力で送り出すことができ、また、スクリュの回転数、トルク、回転時間のうちの少なくとも一つを制御することにより、溶融した樹脂を先端の押出射出ノズルから押し出して射出成形型内に射出するための圧力を設定できる。さらには、スクリュの回転時間を制御することにより射出成形型内への樹脂の射出量を増減できる。
【0009】
ここで、射出成形型内への樹脂の充填が終了すると押出射出ノズル内の樹脂圧力が上昇するので、この圧力を監視し、当該圧力が予め定めた設定圧力に達した後は、圧力が予め定めた保持圧力となるようにスクリュの回転数、トルクおよび回転時間のうちの少なくとも一つを制御すればよい。例えば、スクリュの回転数を切り替え制御すればよい。押出射出ノズル内の樹脂圧力を監視する代わりに、あるいは、これと共に、射出成形型のキャビティ内の樹脂の圧力を監視しながら、スクリュの回転駆動制御を行うこともできる。
【0010】
また、圧力センサを用いる代わりに、スクリュ駆動用モータ、たとえばサーボモータの負荷抵抗を監視することにより、射出成形型内への樹脂の充填が終了したことを検出することもできる。樹脂の充填が終了すると射出成形型の内圧、したがって、押出射出ノズル及び加熱筒内の内圧が上昇してスクリュ駆動用モータの負荷抵抗も増加するので、樹脂の充填終了時点を検出できる。モータ負荷抵抗を監視することにより、樹脂圧力センサが不要になる。
【0011】
次に、溶融粘度が極めて低い熱可塑性樹脂を用いる場合などにおいては、溶融した樹脂が押出射出ノズルから漏れ出てしまい、十分な押出射出圧力の状態を形成できない場合が考えられる。この場合には、押出射出ノズル内の樹脂の圧力を監視しながら、当該押出射出ノズルを閉じた状態で加熱溶融工程を行い、圧力が予め定めた値に達すると、押出射出ノズルを開き、押出射出工程に移行すればよい。
【0012】
この場合には、押出射出ノズルとして、所定のばね力によって閉じ状態に保持され、所定圧力で開状態に切り替わるシャットオフノズルを使用することができる。この代わりに、流体圧シリンダ、モータなどの開閉駆動源を備えた開閉弁を有するシャットオフノズルを使用することも可能である。シャットオフノズルを閉じている間は溶融樹脂の漏れが防止され、樹脂圧力が上昇してシャットオフノズルが自動的に開いた後に、あるいは、シャットオフノズルを開状態に切り替えた後に、加熱溶融工程から押出射出工程に移行させることができる。
【0013】
また、この場合には、押出射出工程において樹脂の圧力が予め定めた値まで上昇したことが検出されたことをトリガーとしてスクリュの回転数、トルク、回転時間のうちの少なくとも一つを制御して、樹脂の圧力をシャットオフノズルが閉じる圧力まで下がると、シャットオフノズルが自動的に、あるいは、開閉駆動源による駆動力によって、閉じ状態に切り替わり、押出射出動作を終了することができる。この後に、スクリュの回転を止め、あるいは逆転させることにより、加熱シリンダのシャットオフノズル内の圧力を緩和することができ、樹脂漏れを防止する全自動無人運転が可能になる。
【0014】
次に、本発明の押出射出方法を用いて電子部品などの部品のオーバーモールディングを行う場合等においては、熱可塑性樹脂として、溶融粘度が約2000dPa・s以下のものを使用することが望ましい。また、射出成形型内への押出射出圧力を約30Mpa以下に設定することが望ましく、特に、10Mpa以下に設定することが望ましい。
【0015】
一方、本発明は上記の押出射出成形方法に用いる溶融押出射出装置であって、
押出射出ノズルを備えた加熱シリンダと、
スクリュと、
スクリュを回転するためのサーボモータ式のスクリュ回転駆動機構と、
加熱シリンダを加熱する加熱機構と、
スクリュ回転駆動機構および加熱機構を制御して加熱溶融工程および押出射出工程を実行する制御手段とを有していることを特徴としている。
【0016】
ここで、押出射出ノズル内の樹脂圧力を検出する圧力センサを配置し、当該押出射出ノズルとして所定のばね力で閉じ状態に保持されているシャットオフノズルを使用する場合には、制御手段は、加熱溶融工程においてスクリュの回転数、トルクおよび回転時間のうちの少なくとも一つを制御してシャットオフノズルを開ける圧力まで当該シャットオフノズル内の樹脂圧力を高める。たとえば、回転数を上げて樹脂圧力を高める。シャットオフノズルを開けた後は、スクリュの回転数、トルクおよび回転時間のうちの少なくとも一つを制御しながら当該スクリュを回転駆動することにより、たとえば、スクリュを予め定めた回転数で予め定めた回転時間だけ回転駆動させることにより、押出射出工程を実行することができる。
【0017】
この場合、制御手段は、押出射出工程において、樹脂圧力が予め定めた圧力に達したことが検出されると、スクリュの回転数を下げて樹脂圧力を、シャットオフノズルを閉じ状態に切り替える圧力まで下げ、シャットオフノズルを閉じた後に、スクリュの回転を停止あるいは逆転させることが望ましい。
【0018】
制御手段は、樹脂圧力の代わりに、スクリュ駆動用モータの負荷抵抗を監視し、この負荷抵抗が予め定めた値に達したことを検出すると、スクリュの回転数を下げて樹脂圧力を、シャットオフノズルを閉じ状態に切り替える圧力まで下げ、シャットオフノズルを閉じると共に、スクリュの回転を停止あるいは逆転させるようにすることも可能である。
【0019】
また、加熱シリンダの押出射出ノズル内の樹脂の温度を検出する温度センサを配置し、制御手段は、温度センサの検出温度に基づき、加熱機構を制御または監視することができる。
【0020】
次に、本発明の押出射出成形装置は、
上記構成の溶融押出射出装置と、
溶融押出射出装置によって樹脂が押出射出される射出成形型と、
射出成形型の型締機構と、
溶融押出射出装置および型締機構を制御するための操作面を備えた制御盤とを有し、
型締機構が搭載されている装置架台に水平方向に旋回可能に取り付けた旋回アームの先端に、制御盤が垂直軸線回りに回転可能な状態で取り付けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、溶融粘度の極めて低い熱可塑性樹脂による、射出成形型内にインサートした電子部品などの低圧封止成形を、加熱シリンダおよびスクリュを用いて全自動無人運転を効率良く行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明を適用した押出射出成形装置を示す概略平面図である。
【図2】図1の押出射出成形装置の概略側面図である。
【図3】図1の押出射出成形装置の制御系を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した熱可塑性樹脂の押出射出成形装置の実施の形態を説明する。
【0024】
(全体構成)
図1および図2は、本実施の形態に係る低圧封止成形用熱可塑性樹脂の押出射出成形装置の概略平面図および概略側面図である。押出射出成形装置1は、溶融押出射出装置2を有し、この溶融押出射出装置2の前側には、当該溶融押出射出装置2によって低圧封止成形用熱可塑性樹脂(以下、単に「樹脂」という。)が押出射出される射出成形型3および当該射出成形型3の型締機構4が配置されている。射出成形型3および型締機構4が搭載されている架台5の天面には、水平方向に旋回可能な状態で旋回アーム6が取り付けられている。この旋回アーム6の先端に、制御盤7が垂直軸線回りに回転可能な状態で吊り下げられている。制御盤7は、図1に示すように、架台5における溶融押出射出装置2の側から反対側まで移動させることができるので、各部の設定作業などにおいて、設定対象の部位を直接目視しながら制御操作を行うことができるので便利である。
【0025】
次に、溶融押出射出装置2は、基本的な構成は公知のスクリュタイプの押出機と同様であり、架台12と、この上に搭載されている前後方向に延びるボールねじ・ナット式の直動機構13と、この直動機構13によって左右方向に水平に移動可能なスライド台14と、このスライド台14に搭載されている溶融押出射出ユニット15とを有している。
【0026】
溶融押出射出ユニット15は、スライド台14に搭載されている加熱シリンダ17を備えており、この加熱シリンダ17は左右方向に水平に延びる状態に配置されている。加熱シリンダ17の内部には同軸状態にスクリュ18が回転自在の状態で挿入されており、スクリュ18の後端は、加熱シリンダ17の後側に配置されているスクリュ回転駆動機構19に連結固定されている。スクリュ回転駆動機構19は、サーボモータ20と、このサーボモータ20の回転をスクリュ18に伝達するための動力伝達機構21とを備えている。
【0027】
加熱シリンダ17の後端側の部位には、例えばペレット状の樹脂を供給するためのホッパ22が取り付けられている。加熱シリンダ17の先端にはシャットオフノズル23が取り付けられている。シャットオフノズル23は、樹脂保圧設定用のスプリング(図示せず)が内蔵されており、当該スプリングによって常時は閉鎖状態に保持され、樹脂漏れが防止される。加熱シリンダ17の先端の樹脂圧力がスプリングによる封鎖力を上回ると、シャットオフノズル23が開く。シャットオフノズル23は前進すると、射出成形型3の樹脂注入口3aに当接可能である(図3参照)。
【0028】
シャットオフノズル23としては、流体圧シリンダ、モータなどの開閉切替用の駆動源を備えた開閉弁を備えたものを用いることも可能である。たとえば、常閉弁を備え、樹脂圧力が所定圧力に到達すると、常閉弁を閉じ状態から開き状態に切り替えるようにしてもよい。
【0029】
加熱シリンダ17の外周には加熱機構が配置されている。例えば、加熱機構は、加熱シリンダ17の外周において、その軸線方向に沿って、配置した複数のバンドヒータ24から構成されている。
【0030】
また、スライド台14を左右方向にスライドさせるための直動機構13は、インバーターモータ26を備えている。このインバーターモータ26には、シャットオフノズル23を所定の力で射出成形型3の樹脂注入口3aに押し付けた状態に保持するための保持用ブレーキ(図示せず)が付設されている。
【0031】
一方、射出成形型3は、例えば、電子部品が搭載された車載用の回路基板30(図3参照)を封止するためのものであり、例えば、架台5によって垂直軸線回りに回転可能に支持されているターンテーブル31に搭載された2台の下型32と、溶融押出射出装置2に対峙する位置にある一方の下型32の真上に位置する1台の上型33とを備えている。上型33は、架台5に搭載されている型締機構4によって、下型32に対して昇降して、型締および型開きが行われる。
【0032】
回路基板30を封止するために用いる樹脂(封止材)は、例えば、共重合ポリエステル樹脂からなるバイロショット(登録商標、東洋紡績株式会社製)である。バイロショットは、融点が150℃〜190℃であり、溶融粘度が260〜700dPa・s(200℃)である。例えば、バイロショットGM950(融点190℃、溶融粘度700dPa・s)を用いる。また、射出成形型3への溶融樹脂の押出射出圧としては、回路基板30に搭載されている電子部品にダメージを与えることの無いように、0.2Mpa〜5MPaの範囲内の値、例えば、2MPaとする。
【0033】
(制御系)
図3は押出射出成形装置1の制御系を示す概略構成図である。制御系は、マイクロコンピュータを備えた制御回路40を中心に構成されている。制御回路40は、押出射出成形装置1による樹脂の加熱溶融動作、溶融した樹脂を射出成形型3に押出射出する押出射出動作、および、樹脂充填後の射出成形型3内の保圧動作を予め設定されたシーケンスに従って連続して実行するように、各部の駆動を制御する。例えば、射出成形型3の型締機構4からの同期信号に基づき、溶融押出射出ユニット15の駆動を制御する。
【0034】
また、モータドライバ41を介して、スクリュ回転駆動機構19のサーボモータ20を駆動制御することで、スクリュ18の回転数、トルクおよび回転時間のうちの少なくとも一つを制御して、シャットオフノズル23から押出射出される樹脂の押出射出圧力を制御する。例えば、スクリュ18の回転数および回転時間を制御する。また、スクリュ18の回転時間を制御して樹脂の押出射出量を制御する。さらに、モータドライバ42を介して直動機構13のインバーターモータ26を駆動制御して、シャットオフノズル23を射出成形型3の樹脂注入口3aに所定の力で押し付けた状態の形成、および、樹脂注入口3aから後退させる動作制御を行う。
【0035】
さらには、加熱シリンダ17における軸線方向に沿って配置した複数個、例えば、4個の温度センサ43(1)〜43(4)と、シャットオフノズル23の内部の温度を検出する温度センサ43(5)とによって、加熱シリンダ17の各部位の加熱温度およびシャットオフノズル23内の樹脂温度を検出し、これらに基づき、ドライバ44を介して、加熱機構を構成している4つのバンドヒータ24を個別に駆動制御して、加熱シリンダ17の軸線方向の各部位の加熱温度を予め設定されている温度となるように制御する。
【0036】
例えば、加熱シリンダ17を、その軸線方向に沿って、ホッパによる材料供給位置17aから先端17bまでの間を4つの部位17(1)〜17(4)に等分し、後側の部位に比べて前側の部位の方が高い温度となるようにする。この場合、樹脂として、例えば、バイロショットGM950(融点190℃、溶融粘度700dPa・s)を用いる場合には、最も後側の部位17(1)を140℃、部位17(2)を160℃、部位17(3)を180℃、最も先端側の部位17(4)を200℃に設定する。最も先端側の部位17(4)の温度は樹脂の融点以上の温度にする。
【0037】
加熱シリンダ17のシャットオフノズル23には、当該シャットオフノズル23内の樹脂圧力を検出するための圧力センサ45が取り付けられている。制御回路40は、検出圧力に基づき、樹脂の射出成形型3内への押出射出圧力を管理する。シャットオフノズル23内の樹脂圧力の代わりに、あるいは、これと共に、射出成形型3のキャビティ部に設けた圧力センサによって検出される樹脂圧力に基づき、押出射出圧力を管理することもできる。また、制御回路40は、検出圧力の変化に基づき、射出成形型3に対する溶融樹脂の充填終了を検出し、押出射出動作を保圧動作に切り替える。
【0038】
ここで、制御回路40は、圧力センサ45による樹脂圧力の代わりに、スクリュ18を回転駆動するためのサーボモータ20の負荷抵抗に基づき、射出成形型3に対する溶融樹脂の充填終了を検出し、押出射出動作を保圧動作に切り替える切替制御を行うこともできる。負荷抵抗はサーボモータ20の駆動電流に基づき検出することができる。
【0039】
(動作説明)
次に、押出射出成形装置1の動作を説明する。樹脂の加熱溶融工程において、ホッパ22から加熱シリンダ17内にペレット状の樹脂が供給されると共に、スクリュ回転駆動機構19によってスクリュ18が予め定めた速度で回転駆動する。また、加熱シリンダ17は加熱機構によって材料供給位置17aから先端17bに向けて徐々に高温となる加熱状態が維持される。
【0040】
スクリュ18の回転により、加熱シリンダ17内に投入された樹脂は、加熱シリンダ17内を前方に送り出されながら、各バンドヒータ24によって加熱されて徐々に溶融する。本例では、加熱シリンダ17における最も後側の部位17(1)から最も前側の部位17(4)に向けて加熱温度が段階的に高くなるように設定されており、後側の部位17(1)〜17(3)の加熱温度は、樹脂の融点よりも低い。したがって、樹脂は、加熱シリンダ17内をその先端に至るまで、完全な溶融状態になることはなく、固体の状態に比べて粘度が低下した未溶融の軟化流動状態あるいは一部溶融状態で、スクリュ18によって先端側に圧送され、スクリュ18の先端に至った時点で溶融状態になる。
【0041】
このように、スクリュ18によって先端側に送り出される樹脂は、軟化流動状態に保持されているので、所定の粘度を備えている。したがって、回転しているスクリュ18には、樹脂によって当該スクリュ18を後方に押し戻すために必要な力が作用する。換言すると、スクリュ18の回転によって樹脂がシャットオフノズル23の側に圧送される。また、シャットオフノズル23は所定のばね力によって封鎖されているので、粘度が極めて低い溶融状態の樹脂が漏れ出てしまうことを防止できる。よって、シャットオフノズル23に溜まる溶融状態の樹脂の圧力が徐々に上昇する。
【0042】
なお、制御回路40は、シャットオフノズル23に配置した温度センサ43(5)および圧力センサ45による検出温度および検出圧力に基づき、加熱機構による加熱シリンダ17の加熱を制御すると共に、スクリュ18の回転数を調整して溶融樹脂の圧力を制御することができる。
【0043】
一方、加熱溶融工程の間に、射出成形型3の側では、一方の下型32に回路基板30がインサートされ、ターンテーブル31が回転して、上型33の真下に位置決めされ、型締機構4によって上型33が降下して型締状態が形成される。
【0044】
型締状態が形成されると、制御回路40は直動機構13を駆動して、溶融押出射出ユニット15を前方にスライドさせ、加熱シリンダ先端のシャットオフノズル23を射出成形型3の樹脂注入口3aに所定の力で押し付けた状態を形成する。しかる後に、スクリュ18の回転数を上げて、シャットオフノズル23内の樹脂圧力を、当該シャットオフノズル23が開く圧力以上に上昇させる。この結果、シャットオフノズル23が開き、押出射出工程に移行する。シャットオフノズル23として、開閉切替用の駆動源が備わっている場合には、樹脂圧力が所定圧力まで上昇した後に、制御回路40は駆動源を駆動制御してシャットオフノズル23を開き状態に切り替える。
【0045】
押出射出工程では、溶融樹脂がシャットオフノズル23から押し出されて、樹脂注入口3aを介して射出成形型3内に射出される。制御回路40には、予め、サーボモータ20の回転数および回転時間が設定されており、これによって、スクリュ18が所定の回転数で所定の回転時間に亘って回転駆動され、所定の押出射出圧力および速度で、所定量の樹脂が射出成形型3内に射出される。
【0046】
制御回路40は、圧力センサ45によってシャットオフノズル23内の樹脂圧力を監視している。射出成形型3内への樹脂充填が終了する状態に至るにつれて樹脂圧力が上昇する。樹脂圧力が予め定めた値に達した後は、スクリュ18の回転数を下げ、保圧状態に移行する。保圧状態への移行用の樹脂圧力値は樹脂素材に応じて予め設定されている。これに伴って樹脂圧力が低下し、シャットオフノズル23が閉じる圧力まで低下する。また、制御回路40はシャットオフノズル23が閉じる圧力まで樹脂圧力が低下すると、スクリュ18の回転を止め、押出射出工程を終了する。
【0047】
圧力センサ45によって樹脂圧力を監視する代わりに、制御回路40がスクリュ駆動用のサーボモータ20の負荷抵抗を監視している場合には、負荷抵抗が予め定めた値に達したことを検出すると、スクリュ18の回転数を下げて保圧状態に移行する。この場合においても、保圧状態への移行用の負荷抵抗値は樹脂素材に応じて予め設定しておけばよい。
【0048】
また、シャットオフノズル23として開閉切替用の駆動源が備わっている場合には、樹脂圧力あるいはサーボモータの負荷抵抗が予め定めた値に達すると、制御回路40はスクリュ18の回転数を下げて保圧状態に移行し、樹脂圧力を下げ、所定時間経過後に、駆動源を駆動してシャットオフノズル23を開き状態から閉じ状態に切り替えると共にスクリュ18の回転を止めて、押出射出工程を終了する。
【0049】
なお、押出射出工程において、樹脂を射出成形型3内に充填し終えた後に、たとえば、スクリュ18を停止させ、あるいは、スクリュ18を逆転させて充填圧力あるいは保持圧力を調整するようにしてもよい。
【0050】
押出射出工程が終了した後は、直動機構13を駆動して溶融押出射出ユニット15を後退させて、シャットオフノズル23を射出成形型3の樹脂注入口3aから離す。この後は、型開きが行われ、樹脂封止された回路基板30が下型32に残った状態でターンテーブル31が180度回転する。これにより、回路基板30がセットされている別の下型32が上型33の真下に位置決めされる。このような型開き、ターンテーブル31の旋回動作の間に、溶融押出射出装置2の側では加熱溶融工程が開始され、次の押出射出工程が開始されるのを待つ。
【0051】
(作用効果)
以上説明したように、押出射出成形装置1の溶融押出射出装置2においては、加熱シリンダ17内に投入された樹脂が、溶融されることなく軟化流動状態のままで加熱シリンダ17の先端に向けてスクリュ18によって送り出される。従来の押出機では、ホッパから投入された熱可塑性樹脂をなるべく早く溶融状態にして先端側に送り出すようにしているが、本例では、これとは異なり、樹脂が溶融しない状態を長く維持するようにしている。この結果、溶融粘度が極めて低い樹脂であってもスクリュ18によって圧送できる。
【0052】
また、加熱シリンダ17の先端まで送り出された樹脂を、スクリュ18の回転数および回転時間を制御することによって、所定の押出射出圧力、速度で射出成形型3内に押出射出でき、また、スクリュ18の回転時間を制御することによって、樹脂の押出射出量を制御できる。したがって、従来の押出機、射出成形機とは異なり、同一のスクリュ18を用いて広範囲に押出射出圧力、速度、および押出射出量を制御することができる。
【0053】
このように、押出射出成形装置1を用いることにより、溶融粘度が極めて低い樹脂であっても、加熱シリンダ17内をスクリュ18の回転によって前方に圧送でき、所定の押出射出圧力および速度で、射出成形型3内に所定量だけ押出射出することが可能である。よって、樹脂の加熱溶融動作、型内への押出射出動作、および保圧動作を連続して行うことができるので、電子部品などの低圧封止成形動作を効率良く行うことができる。
【0054】
なお、本例では、加熱シリンダの先端に、スプリング内蔵式のシャットオフノズルを取り付けたが、このようなシャットオフノズルあるいは開閉弁を配置せずに、所定の径のノズルを加熱シリンダの先端に取り付けるのみでもよい。
【0055】
また、本例は、溶融粘度の低い樹脂を用いて回路基板を低圧封止成形する場合の例であるが、本発明の方法は、回路基板以外の部品の低圧封止成形にも用いることができ、低圧封止成形以外の押出射出成形にも適用可能である。さらに、本発明の方法は、溶融粘度が約2000dPa・s以下の熱可塑性樹脂を、約30Mpa以下、好ましくは約10Mpa以下の押出射出圧力で射出成形する場合に適している。
【符号の説明】
【0056】
1 押出射出成形装置
2 溶融押出射出装置
3 射出成形型
4 型締機構
5 架台
6 旋回アーム
7 制御盤
12 架台
13 直動機構
14 スライド台
15 溶融押出射出ユニット
17 加熱シリンダ
17a 材料供給位置
17b 先端
17(1)〜17(4) 加熱シリンダの軸線方向の各部位
18 スクリュ
19 スクリュ回転駆動機構
20 サーボモータ
21 動力伝達機構
22 ホッパ
23 シャットオフノズル
24 バンドヒータ
26 インバーターモータ
30 回路基板
31 ターンテーブル
32 下型
33 上型
40 制御回路
41、42 モータドライバ
43(1)〜43(5) 温度センサ
44 ドライバ
45 圧力センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱シリンダ内に投入した熱可塑性樹脂(以下、「樹脂」という。)を、当該加熱シリンダ内に配置されているスクリュの回転により、当該加熱シリンダの先端に向けて移送しながら徐々に溶融する加熱溶融工程と、
前記加熱シリンダの先端に取り付けた押出射出ノズルを、型締状態の射出成形型の樹脂注入口に押し当てた状態で、前記スクリュの回転により、前記押出射出ノズルから溶融状態の前記樹脂を押し出して前記射出成形型内に射出する押出射出工程とを有し、
前記加熱溶融工程では、前記加熱シリンダの加熱温度を制御することにより、前記樹脂の粘度状態を前記スクリュによって圧送可能な状態に保持し、
前記押出射出工程では、前記スクリュの回転数、トルクおよび回転時間のうちの少なくとも一つに基づき前記樹脂の押出射出圧力を制御することを特徴とする熱可塑性樹脂の押出射出成形方法。
【請求項2】
前記押出射出工程では、前記スクリュの回転時間に基づき前記樹脂の押出射出量を制御することを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂の押出射出成形方法。
【請求項3】
前記押出射出工程では、
前記押出射出ノズル内の前記樹脂の圧力を監視しながら、予め定めた設定回転数で前記スクリュを回転して前記樹脂の押出射出動作を行い、
前記圧力が予め定めた設定圧力に達すると、前記圧力が予め定めた保持圧力となるように前記スクリュの回転数、トルクおよび回転時間のうちの少なくとも一つを制御することを特徴とする請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂の押出射出成形方法。
【請求項4】
前記押出射出工程では、
前記射出成形型のキャビティ内の前記樹脂の圧力を監視しながら、予め定めた設定回転数で前記スクリュを回転して前記樹脂の押出射出動作を行い、
前記圧力が予め定めた設定圧力に達すると、前記圧力が予め定めた保持圧力となるように前記スクリュの回転数、トルクおよび回転時間のうちの少なくとも一つを制御することを特徴とする請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂の押出射出成形方法。
【請求項5】
前記押出射出工程では、
前記スクリュを回転駆動するスクリュ駆動用モータの負荷抵抗を監視しながら、予め定めた設定回転数で前記スクリュを回転して前記樹脂の押出射出動作を行い、
前記負荷抵抗が予め定めた設定値に達すると、前記押出射出ノズル内の前記樹脂の圧力あるいは前記射出成形型のキャビティ内の前記樹脂の圧力が予め定めた保持圧力となるように、前記スクリュの回転数、トルクおよび回転時間のうちの少なくとも一つを制御することを特徴とする請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂の押出射出成形方法。
【請求項6】
前記押出射出ノズル内の前記樹脂の圧力を監視しながら、当該押出射出ノズルを閉じた状態で前記加熱溶融工程を行い、
前記圧力が予め定めた値に達すると、前記押出射出ノズルを開き、前記押出射出工程に移行することを特徴とする請求項1ないし5のうちのいずれかの項に記載の熱可塑性樹脂の押出射出成形方法。
【請求項7】
前記押出射出ノズル内の前記樹脂の圧力を監視しながら、当該押出射出ノズルを閉じた状態で前記加熱溶融工程を行い、
前記押出射出ノズルとして、所定圧力で開状態に切り替わるシャットオフノズルを使用し、
前記押出射出ノズル内の前記樹脂の圧力が、前記シャットオフノズルが開く圧力まで上昇すると、前記加熱溶融工程から前記押出射出工程に移行することを特徴とする請求項1ないし5のうちのいずれかの項に記載の熱可塑性樹脂の押出射出成形方法。
【請求項8】
前記押出射出工程において前記樹脂の圧力が予め定めた値まで上昇したことが検出されると、前記スクリュの回転数、トルクおよび回転時間のうちの少なくも一つを制御して、前記樹脂の圧力を前記シャットオフノズルが閉じる圧力まで下げ、しかる後に、前記スクリュの回転を止め、あるいは逆転させることを特徴とする請求項7に記載の熱可塑性樹脂の押出射出成形方法。
【請求項9】
前記樹脂として、溶融粘度が約2000dPa・s以下のものを使用することを特徴とする請求項1ないし8のうちのいずれかの項に記載の熱可塑性樹脂の押出射出成形方法。
【請求項10】
前記押出射出圧力を、約30Mpa以下に設定することを特徴とする請求項1ないし9のうちのいずれかの項に記載の熱可塑性樹脂の押出射出成形方法。
【請求項11】
請求項1に記載の押出射出成形方法に用いる溶融押出射出装置であって、
前記押出射出ノズルを備えた前記加熱シリンダと、
前記スクリュと、
前記スクリュを回転するためのサーボモータ式のスクリュ回転駆動機構と、
前記加熱シリンダを加熱する加熱機構と、
前記スクリュ回転駆動機構および前記加熱機構を制御して前記加熱溶融工程および前記押出射出工程を実行する制御手段とを有していることを特徴とする溶融押出射出装置。
【請求項12】
前記シャットオフノズル内の前記樹脂圧力を検出する圧力センサを有し、
前記押出射出ノズルは、所定のばね力で閉じ状態に保持されているシャットオフノズルであり、
前記制御手段は、前記加熱溶融工程において、前記スクリュの回転数、トルクおよび回転時間のうちの少なくとも一つを制御して所定圧力まで前記押出射出ノズル内の前記樹脂圧力を高めた後に前記シャットオフノズルを開き、前記スクリュの回転数、トルクおよび回転時間のうちの少なくとも一つを制御しながら当該スクリュを回転駆動することにより前記押出射出工程を実行することを特徴とする請求項11に記載の溶融押出射出装置。
【請求項13】
前記制御手段は、前記押出射出工程において、前記樹脂圧力が予め定めた圧力に達したことが検出されると、前記スクリュの回転数、トルクおよび回転時間のうちの少なくとも一つを制御して、前記樹脂圧力を所定圧力まで下げて前記シャットオフノズルを閉じ、しかる後に前記スクリュの回転を停止あるいは逆転させることを特徴とする請求項11に記載の溶融押出射出装置。
【請求項14】
前記制御手段は、前記押出射出工程において、前記スクリュを回転駆動するスクリュ駆動用モータの負荷抵抗が予め定めた値に達したことが検出されると、前記スクリュの回転数、トルクおよび回転時間のうちの少なくとも一つを制御して、前記樹脂圧力を所定圧力まで下げて前記シャットオフノズルを閉じ、しかる後に前記スクリュの回転を停止あるいは逆転させることを特徴とする請求項11に記載の溶融押出射出装置。
【請求項15】
前記加熱シリンダの前記押出射出ノズル内の前記樹脂の温度を検出する温度センサを有し、
前記制御手段は、前記温度センサの検出温度に基づき、前記加熱機構を制御あるいは監視することを特徴とする請求項11ないし14のうちのいずれかの項に記載の溶融押出射出装置。
【請求項16】
請求項11ないし15のうちのいずれかの項に記載の溶融押出射出装置と、
当該溶融押出射出装置によって前記樹脂が押出射出される射出成形型と、
当該射出成形型の型締機構と、
前記溶融押出射出装置および前記型締機構を制御するための操作面を備えた制御盤とを有し、
前記型締機構が搭載されている装置架台に水平方向に旋回可能に取り付けた旋回アームの先端に、前記制御盤が垂直軸線回りに回転可能な状態で取り付けられていることを特徴とする押出射出成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−131966(P2010−131966A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−127373(P2009−127373)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(502379181)株式会社エイト (4)
【Fターム(参考)】