説明

熱可塑性樹脂シート

【課題】本発明は電子部品と熱可塑性樹脂シートまたはそれから得られる電子部品包装体が摩擦しても静電気自体を発生しにくくし、電子部品の破壊を減少させるものである。
【解決手段】すなわち、本発明は除電した電子部品を、除電した300mmの熱可塑性樹脂シート上を滑らせた時に電子部品の帯電量が絶対値で0.15ナノクーロン以下である電子部品包装用の熱可塑性樹脂シート及びそれを用いた電子部品包装容器である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱可塑性樹脂シートに関し、該熱可塑性樹脂シートは特に電子部品包装容器として好適に使用される。
【背景技術】
【0002】
ICをはじめとした電子部品やこれらを用いた電子機器の包装形態としてインジェクショントレー、真空成形トレー、マガジン、キャリアテープ(エンボスキャリアテープともいう)などが使用されている。これらの包装容器には静電気によるIC等の破壊を防止するために(1)包装容器の表面に帯電防止剤を塗布する方法、(2)導電性塗料を塗布する方法、(3)帯電防止剤を分散させる方法、(4)導電性フィラーを分散させる方法等が実施されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これらの電子部品包装容器は静電気が発生した場合に接地により電気が逃げやすいとの特長を有し、電子部品の静電気による破壊を防止してきた。しかし、そのようにしても完全に静電気破壊を防止できない場合がある。また、電子部品の高集積化に伴い電子部品内の配線等が微細化されるに従い、更に電子部品が静電気による障害、破壊を受けやすくなっておりその防止が求められている。本発明は、電子部品の静電気破壊を防止するのに好適な熱可塑性樹脂シートおよび電子部品包装容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は電子部品と熱可塑性樹脂シートまたはそれから得られる電子部品包装体が摩擦しても静電気自体を発生しにくくし、電子部品の破壊を減少させるものである。すなわち、本発明は除電した電子部品を、除電した300mmの熱可塑性樹脂シート上を滑らせた時に電子部品の帯電量が絶対値で0.15ナノクーロン以下である電子部品包装用の熱可塑性樹脂シート及びそれを用いた電子部品包装容器である。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、摩擦によって収納する電子部品に生じる帯電量の少ない熱可塑性樹脂シートを用いることにより、電子部品の静電気破壊を防止するのに好適な容器を提供することを可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下本発明を詳細に説明する。本発明でいう電子部品には、例えば、IC、抵抗、コンデンサー、インダクタ、トランジスタ、ダイオード、LED(発光ダイオード)、液晶、圧電素子レジスター、フィルター、水晶発振子、水晶振動子、コネクター、スイッチ、ボリューム、リレー等がある。なかでも静電気に敏感な電子部品に好適であり、例えばICがある。ICの形式には特に限定されず、例えばSOP、HEMT、SQFP、BGA、CSP、SOJ、QFP、PLCC等がある。
【0007】
本発明の熱可塑性樹脂シートは、除電した電子部品を300mmの熱可塑性樹脂シート上を滑らせた時に電子部品の帯電量が絶対値で0.15ナノクーロン以下のものである。電子部品の帯電量は電子部品をファラデーゲージで測定したものである。図1に示す様に電子部品を斜面上を滑らせ、その帯電量をファラデーゲージで測定する。斜面上を熱可塑性樹脂シートとし電子部品を滑らせる前にイオン化エアーで除電し、斜面上部よりイオン化エアーで除電した電子部品を滑らせ、電荷量を測定し、それを帯電量とする。斜面の角度が小さいと電子部品は自重では滑らなくなるので30度程度とすることが好ましい。電子部品は、熱可塑性樹脂シートを電子部品包装に使用する際に収納される電子部品と同じであることが好ましい。収納される電子部品が特定されない場合、電子部品がその形状から滑りにくい場合、あるいは電子部品がICである場合は、収納される電子部品にかかわらず、実施例で使用されているICを用い測定した帯電量であってもよい。
【0008】
電子部品を静電気破壊から守るために包装容器に導電性を付与することが行われているが、これは発生した静電気を除電して電子部品を静電気から守ろうとするものである。帯電防止剤も同様の原理である。これらはIC等の電子部品との摩擦により発生する静電気の発生し易さについて考慮していなかった。電子部品包装容器が導電性であっても、電子部品包装容器と電子部品との摩擦により電子部品は帯電し、また電子部品表面の表面、例えばICの表面の封止材は非導電性であるために、電子部品外装表面に発生した電荷は電子部品容器を接地しても完全には除去できないということには配慮していなかった。導電性を有する電子部品包装容器であっても絶縁状態で電子部品を収納した容器に振動を与えた場合、電子部品の表面の帯電電圧は1万V、2万Vを超えることがある。除電した電子部品を300mmの熱可塑性樹脂シート上を滑らせた時に電子部品の帯電量が絶対値で0.15ナノクーロン以下であるような熱可塑性樹脂シートは電子部品包装用として静電気破壊の発生を低減することができる。従来行われていた熱可塑性樹脂シートに導電性を付与することは、それによりかえって電子部品の帯電量が大きくすることがある。電子部品の帯電量が0.15ナノクーロン以下、好ましくは0.1ナノクーロン以下、更に好ましく0.01ナノクーロン以下であれば熱可塑性樹脂シートの導電性が小さくとも静電気破壊の発生を低減することができる。勿論電子部品の帯電量が小さければ、導電性を高くすることには何の支障もない。
【0009】
熱可塑性樹脂シートは除電した電子部品を、除電した300mmの熱可塑性樹脂シート上を滑らせた時に電子部品の帯電量が絶対値で0.15ナノクーロン以下であればその組成、構成は限定されない。そのような特性を有し、かつまた少なくとも片方の表面層がポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリスチレン系樹脂又はABS系樹脂から選ばれた少なくとも1種類の熱可塑性樹脂100重量部に対し、カーボンブラック5〜50重量部を含有
し、かつ、前記熱可塑性樹脂とカーボンブラックの合計量100重量部に対し、オレフィン系樹脂1〜50重量部と、スチレン及び共役ジエンより製造されるブロックコポリマーを0.2〜20重量部を含有する熱可塑性樹脂シートは好ましいものの一つである。
【0010】
ポリフェニレンエーテル系樹脂とはポリフェニレンエーテル樹脂とポリスチレン系樹脂を主成分とする樹脂をいい、ポリフェニレンエーテル樹脂とポリスチレン系樹脂の合計量は100重量部中のポリフェニレンエーテル樹脂の含有量は28〜86重量部が好ましく、28重量部未満ではポリフェニレンエーテル系樹脂としての十分な力学特性が得られず、86重量部を超えると流動性の低下により成形加工が困難となる。該ポリフェニレンエーテル樹脂としては米国特許3383435号に記載されているホモポリマー或いは共重合体がある。
【0011】
ポリスチレン系樹脂とは一般のポリスチレン樹脂(GPPS)又は耐衝撃性ポリスチレン樹脂及びこれらの混合物を主成分とするものをいう。ポリスチレン系樹脂は一種類あるいは二種類以上を用いることができる。ポリスチレン系樹脂は市販のものをそのまま用いることもできる。ABS系樹脂とはアクリルニトリル−ブタジエン−スチレン三成分を主体とするものをいう。
【0012】
カーボンブラックは、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック等であり、好ましくは比表面積が大きく、樹脂への添加量が少量で高度の導電性が得られるものである。例えば、S.C.F.(SuperConductveFurnace)、E.C.F.(ElectricConductiveFurnace)、ケッチェンブラック(ライオン−AKZO社製商品名)及びアセチレンブラックである。カーボンブラックの添加量は、基材熱可塑性樹脂シートに積層した状態で表面固有抵抗値を10〜1010Ωとすることのできる添加量であり、かつ熱可塑性樹脂100重量部に対し、カーボンブラック5〜50重量が好ましい。添加量が5重量部未満では十分な導電性が得られず表面固有抵抗値が上昇してしまい、50重量部を超えると樹脂との均一分散性の悪化、成形加工性の著しい低下、機械的強度等の特性値が低下してしまう。また、表面固有抵抗値が1010Ωを超えると十分な帯電防止が得られず、10Ω未満では、発電能が良すぎて電子部品を破壊する恐れがある。
【0013】
オレフィン系樹脂としては、エチレン及びプロピレンのホモポリマー、エチレン又はプロピレンを主成分とする共重合体、更にこれらのブレンド物が挙げられる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂等が挙げられる。本発明においてはこれらのなかでも、特に低密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂に代表されるポリエチレン系樹脂を使用するのが好ましい。本発明のオレフィン系樹脂のメルトフローインデックスは、190℃、荷重2.16kg(JIS‐K‐7210に準じ測定)で0.1g/10分以上であり、この数値未満ではポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ABS樹脂との混練が困難となり、良好な組成物が得られない。オレフィン系樹脂の添加量は熱可塑性樹脂とカーボンブラックの合計量100重量部に対し1〜50重量部が好ましく、より好ましくは1〜30部、更に好ましくは3〜25重量部である。添加量が1重量部未満ではその効果が不十分であり、30重量部を超えるとポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ABS系樹脂中に均一に分散させることが困難となる。
【0014】
スチレン及び共役ジエンより製造されるブロックコポリマーの共役ジエンは、ブタジエン又はイソプレンであり、詳しくは、スチレンとブタジエンのブロックコポリマー、スチレンとイソプレンのブロック−コポリマー等である。このブロックコポリマーとは、具体的には、米国特許第3281383号に記載されている分岐鎖状の星形ブロックコポリマーもしくは、例えば(S1)‐(Bu)−(S2)(S1、S2はスチレンより形成されるブロックを、Buはブタジエン又はイソプレンより形成されるブロックを示す)といった様に少なくとも3つのブロックを有する直鎖状のブロックコポリマーである。本発明で用いるブロックコポリマーは1種でも良いが、より好ましくはスチレン−ブタジエンの比率の異なる2種以上のブロックコポリマーを用いるのが良い。
【0015】
オレフィン系樹脂とスチレン及び共役ジエンより製造されるブロックコポリマーを予めスチレン系樹脂およびオレフィン系樹脂と共に混練したアロイ樹脂を使用することも可能であり、その代表例として特開平5−311009号に記載の樹脂組成物が使用できる。
【0016】
少なくとも片方の表面層が分子量20000〜30000であるポリカーボネート樹脂100重量部に対して、ジブチルフタレート(DBP)吸油量が160ml/100g以上で、揮発分が0.6%以下であるカーボンブラック5〜50重量部を含有する熱可塑性樹脂シートも好ましいものの一つである。
【0017】
ポリカーボネート樹脂としては、芳香族ポリカーボネート樹脂、脂肪族ポリカーボネート樹脂、芳香族−脂肪族ポリカーボネート樹脂があげられ、通常エンジニアプラスチックに分類させるもので、一般的なビスフェノールAとホスゲンとの重縮合またはビスフェノールAと炭酸エステルの重縮合により得られるものも用いることができる。ビスフェノールを用いたもので、ホスゲン法またはエステル交換法により製造されたもので、原料のビスフェノールについては、2,2‐ビス−(4‐ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,4‐ビス−(4−ヒドロキシフェニル)‐メチル−ブタン、1,1ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサンなどが含まれる。ホモポリカーボネート樹脂、カルボン酸を共重合したコポリカーボネート樹脂またはそれらの混合物であっても良い。ポリカーボネート樹脂の分子量20000〜30000が好ましい。分子量が20000以下であると、成形して得られる包装容器としての強度が不足し、30000以上であると共押出による多層熱可塑性樹脂シートを得るのが困難となる。
【0018】
カーボンブラックは前記のカーボンブラックの中でも、ジブチルフタレート(DBP)吸油量が160ml/100g以上で、揮発分が0.6%以下のものであり、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラックが望ましい。ここでいうジブチルフタレート吸油量(DBP吸油量と省略)とはカーボンブラック粒子のストラクチャー構造の発達度を示す。DBP吸油量が160ml/100g未満であると、ICとの摩擦によって生じる帯電量の絶対値が0.15ナノクーロンを超えてしまう。また揮発分が0.6%より多いと成形して得られる包装容器の表面状態が悪くなり、ICとの摩擦によって生じる帯電量の絶対値が0.15ナノクーロンを超えてしまう。
【0019】
カーボンブラックの添加量はポリカーボネート樹脂100重量部に対して5〜50重量%である。5重量%未満では静電気による電子部品の破壊を防止するために十分な表面固有抵抗値が得られない。50重量%を超えると流動性が低下し熱可塑性樹脂シート基材に積層することが困難になるとともに得られる熱可塑性樹脂シートの機械的強度も低下してしまう。
【0020】
少なくとも片方の表面層がスチレン−ブタジエン共重合体系樹脂、ポリスチレン系樹脂を、スチレン−ブタジエン共重合体系樹脂とポリスチレン系樹脂の合計に対してスチレン−ブタジエン共重合体系樹脂が20〜80重量%、ポリスチレン系樹脂が80〜20重量%の範囲で含有する熱可塑性樹脂シートも好ましいものの一つである。
【0021】
スチレン−ブタジエン共重合体系樹脂とはその構造中にスチレン系単量体を主体とする重合体ブロックと共役ジエン単量体を主体とする重合体ブロックを含有する重合体である。スチレン系単量体としてはスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、1,1−ジフェニルエチレン等があり、なかでもスチレンは好適である。スチレン系単量体は一種類あるいは二種類以上を用いることができる。共役ジエン単量体とはその構造中に共役二重結合を有する化合物であり、例えば1,3−ブタジエン(ブタジエン)、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、2−メチルペンタジエン等があり、なかでもブタジエン、イソプレンは好適である。共役ジエン単量体は一種類あるいは二種類以上を用いることができる。スチレン系単量体を主体とする重合体ブロックとはスチレン系単量体に由来する構造のみからなる重合体ブロック、スチレン系単量体に由来する構造を50重量%以上含有する重合体ブロックのいずれをも意味する。共役ジエン単量体を主体とする重合体ブロックとは共役ジエン単量体に由来する構造のみからなる重合体ブロック、共役ジエン単量体に由来する構造を50重量%以上含有する重合体ブロックのいずれをも意味する。スチレン−ブタジエン共重合体系樹脂の共役ジエン含有量は5〜80重量%が好ましい。共役ジエン含有量とは共役ジエン単量体に由来する構造の全共重合体中に占める重量の割合を意味する。スチレン−共役ジエンブロック共重合体系樹脂は一種類あるいは二種類以上を用いることができる。スチレン−ブタジエン共重合体系樹脂は市販のものをそのまま用いることもできる。
【0022】
熱可塑性樹脂シートは表面層のみからなる単層の熱可塑性樹脂シートであってもよいが、好ましくは表面層に基材層を有する複層の熱可塑性樹脂シートである。熱可塑性樹脂シートの表面に位置する表面層と熱可塑性樹脂からなる基材層から構成される。その具体的な構成は例えば表面層/基材層、表面層/基材層/表面層等がある。基材層には熱可塑性樹脂を好適に用いる事ができ、例えばポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ABS系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂およびこれらのアロイ系樹脂が使用できるが、中でもポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリスチレン系樹脂又はABS系樹脂から選ばれた少なくとも1種類の熱可塑性樹脂を好適に用いることができる。
【0023】
基材層には各種フィラー、補強材、改質材、可塑剤、酸化防止剤、加工助剤、滑剤などの各種添加剤を本発明の目的を害さない範囲で添加することができる。また基材層には熱可塑性樹脂シート製造時に発生する本熱可塑性樹脂シートの耳やミスロール、或いは成形物の粉砕品を5〜50重量%リサイクルすることも可能である。
【0024】
本発明の熱可塑性樹脂シートの製造方法には特に限定されない。例えば原料全部又は一部をバンバリーミキサー、押出機等の公知の方法を用いて混練、ペレット化し、得られた樹脂組成物を押出機等公知の方法によって熱可塑性樹脂シートとする。樹脂組成物の混練に際しては、原料を一括して混練することも可能であるし、また例えば、スチレン系樹脂とカーボンブラック、スチレン系樹脂とオレフィン系樹脂、およびスチレン系樹脂とブロックコポリマーの混合物を別々に混練し、その混練物を最後に一括して混練するといった様に段階的に混練することも可能である。更に、別々に混練して得られたペレットを押出機によって熱可塑性樹脂シートとする際に同時に混練することも可能である。
【0025】
基材層に表面層を積層する方法としては、それぞれを別々に押出機により熱可塑性樹脂シート若しくはフィルム状に成形した後、熱ラミネート法、ドライラミネート法、押出ラミネート法等により段階的に積層することも可能であるし、またフィードブロック、マルチマニホールドダイ等を使用した多層共押出により一括して積層した熱可塑性樹脂シートを得ることも可能である。
【0026】
熱可塑性樹脂シート全体の肉厚は単層、複層共に0.1〜3.0mmとすることができる。本発明では電子部品と熱可塑性樹脂シートあるいはそれを用いた容器との摩擦による静電気の発生を抑制するものであるが、発生した静電気を除電するために表面層は導電性であることは本願において好ましい。
【0027】
熱可塑性樹脂シートは、電子部品包装用として好適であり、さらに、圧空成形、真空成形、熱板成形などの公知の熱可塑性樹脂シート成形法により得られる包装容器は、電子部品包装容器として、特に半導体包装容器として好適に用いられる。電子部品包装容器とは具体的にはICを包装する真空トレー、マガジン、エンボスキャリアテープ及びICを用いた電子部品、電子機器を包装する真空成形トレー等がある。
【実施例】
【0028】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。以下、実施例によって本発明を説明する。各測定は以下の条件にて行った。
電荷量:Electro−Tech System社製ナノクーロンメーターおよびファラデーゲージを使用し、電子部品の電荷量を測定。
イオナイザー:SAIMCO社 AERISTAT PCを使用
【0029】
実施例1
耐衝撃性ポリスチレン樹脂(東洋スチレン社製HI−E4)100重量部とカーボンブラック(デンカブラック粒状電気化学工業社製)26重量部、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(ウルトゼックス1520L三井化学社製)15重量部、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(STR−1602電気化学工業社製)2重量部、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(K−レジンKR03フィリップス社製)1重量部を各々計量し、高速混合機により均一混合した後、φ45mmベント式二軸押出機を用いて混練し、ストランドカット法によりペレット化し樹脂組成物を得た。得られた樹脂をφ40mm押出機(L/D=26)を用いて全体の肉厚が300μmの単層熱可塑性樹脂シートを得た。得られた熱可塑性樹脂シートを、図1に示す角度を30度とし、斜面上に貼り付け、熱可塑性樹脂シート表面にイオン化エアーを吹きつけ電荷を除去した。その後、同様にイオン化エアーを用いてIC(NEC社製V810)の電荷を除去した後、ICの番号等が記載された面で熱可塑性樹脂シート上を300mm滑り落とし、23℃、50%環境下でICの電荷量をファラデーゲージで測定したところ0.13ナノクーロンであった。
【0030】
実施例2
耐衝撃性ポリスチレン樹脂(HI−E4東洋スチレン社製)80重量部とカーボンブラック(デンカブラック粒状電気化学工業社製)20重量部、EEA樹脂(DPDJ−6169日本ユニカー社製)10重量部、スチレン−ブタジエンブロック共重合体・オレフィン系樹脂含有ポリスチレン樹脂(スチロブレンドWS−2776BASF社製)20重量部を用いた以外は実施例1と同様にして、ICの電荷量を測定したところ0.09クーロンであった。
【0031】
実施例3
耐衝撃性ポリスチレン樹脂(HI−E4東洋スチレン社製)100重量部とカーボンブラック(ケッチェンブラックECライオン−AKZO社製)12重量部、高密度ポリエチレン樹脂(ハイゼックス5000S三井化学社製)6重量部、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(STR−1602電気化学工業社製)0.4重量部、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(スチロルックス−684DBASF社製)0.4重量部を用いた以外は実施例1と同様にして、ICの電荷量を測定したところ0.10クーロンであった。
【0032】
実施例4
ABS樹脂(SE−10電気化学工業社製)100重量部とカーボンブラック(バルカン−XC−72キャボラック社製)15重量部、高密度ポリエチレン樹脂(ハイゼックス5000S三井化学社製)24重量部、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(STR−1602電気化学工業社製)3重量部、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(K−レジンKR03フィリップス社製)3重量部を用いた以外は実施例1と同様にして、ICの電荷量を測定したところ0.11クーロンであった。
【0033】
実施例5〜8
基材層として耐衝撃性ポリスチレン樹脂(HI−E4東洋スチレン社製)を用い、表面層として実施例1〜4で得られた樹脂組成物を使用し、φ65mm押出機(L/D=28)、φ40mm押出機(L/D=26)及び500mm巾のTダイを用いたフィードブロック法により全体の肉厚が300μm、表面層の肉厚が両側30μmとなるような3層熱可塑性樹脂シートを得た。これを用いて実施例1と同様にしてICの電荷量を測定した。結果を表2に示す。
【0034】
実施例9〜12
基材層としてABS樹脂(SE−10電気化学工業社製)を用い、表面層として実施例1〜4で得られた樹脂組成物を使用した以外は実施例5〜8と同様にした。結果を表3に示す。
【0035】
比較例1
塩化ビニル樹脂100重量部とカーボンブラック26重量部をφ45mmベント式二軸押出機を用いて混練し、ストランドカット法によりペレット化し樹脂組成物を得た。得られた樹脂をφ40mm押出機(L/D=26)を用いて全体の肉厚が300μmの単層熱可塑性樹脂シートを得た。得られた熱可塑性樹脂シートを用いて実施例1と同様にICの電荷量を測定したところ0.23ナノクーロンであった。結果を表1に示す。
【0036】
【表1】



【0037】
【表2】



【0038】
【表3】



【0039】
実施例13
ポリカーボネート樹脂(L−1250帝人化成社製)80重量部とカーボンブラック(デンカブラック粒状電気化学工業社製DBP吸油量165ml/100g揮発分0.6%)20重量部をφ45mmベント式二軸押出機を用いて混練し、ストランドカット法によりペレット化し樹脂組成物を得た。得られた樹脂からφ40mm押出機(L/D=26)を用いて全体の肉厚が300μmの単層熱可塑性樹脂シートを得た。得られた熱可塑性樹脂シートを角度を30度とした斜面上に貼り付け、熱可塑性樹脂シート表面にイオン化エアーを吹きつけ電荷を除去した。イオン化エアーを用いてIC(NEC社製V810)の電荷を除去した後、これを滑り落とし、23℃、50%環境下で滑り落ちた後のICの電荷量をファラデーゲージで測定したところ0.08ナノクーロンであった。
【0040】
実施例14
ポリカーボネート樹脂(L‐1250帝人化成社製)80重量部とカーボンブラック(ケッチェンブラックECケッチェンブラックインターナショナル社製DBP吸油量360ml/100g揮発分0.5%)20重量部をφ45mmベント式二軸押出機を用いて混練し、ストランドカット法によりペレット化し樹脂組成物を得た。得られた樹脂を用いた以外は実施例13と同様に行い、ICの電荷量を測定したところ0.07ナノクーロンであった。
【0041】
実施例15
基材層としてABS樹脂(SE−10電気化学工業社製)を用い、表面層として実施例13で得られた樹脂組成物を使用し、φ65mm押出機(L/D=28)、φ40mm押出機(L/D=26)及び500mm巾のTダイを用いたフィードブロック法により全体の肉厚が300μm、表面層の肉厚が両側30μmとなるような3層熱可塑性樹脂シートを得た。実施例13と同様にして、ICの電荷量を測定したところ0.09ナノクーロンであった。
【0042】
実施例16
基材層としてABS樹脂(SE−10電気化学工業)を用い、表面層として実施例14で得られた樹脂組成物を使用した以外は実施例15と同様にして、ICの電荷量を測定したところ0.08ナノクーロンであった。
【0043】
比較例2
ポリカーボネート樹脂(L−1250帝人化成社製)80重量部とカーボンブラック(N550三菱化学社製DBP吸油量115ml/100g、揮発分0.5%)20重量部をφ45mmベント式二軸押出機を用いて混練し、ストランドカット法によりペレット化し樹脂組成物を得た。得られた樹脂を用いた以外は実施例13と同様に行い、ICの電荷量を測定したところ0.23ナノクーロンであった。
【0044】
比較例3
ポリカーボネート樹脂(L−1250帝人化成社製)80重量部とカーボンブラック(VulcanXC−72キャボット社製DBP吸油量161ml/100g揮発分1.0%)20重量部をφ45mmベント式二軸押出機を用いて混練し、ストランドカット法によりペレット化し樹脂組成物を得た。得られた樹脂を用いた以外は実施例13と同様に行い、ICの電荷量を測定したところ0.25ナノクーロンであった。
【0045】
比較例4
基材層としてABS樹脂(SE−10電気化学工業社製)を用い、表面層として比較例2で得られた樹脂組成物を使用し、φ65mm押出機(L/D=28)、φ40mm押出機(L/D=26)及び500mm巾のTダイを用いたフィードブロック法により全体の肉厚が300μm、表面層の肉厚が両側30μmとなるような3層熱可塑性樹脂シートを得た。実施例13と同様にして、ICの電荷量を測定したところ0.27ナノクーロンであった。
【0046】
比較例5
基材層としてABS樹脂(SE−10電気化学工業)を用い、表面層として比較例3で得られた樹脂組成物を使用した以外は比較例4と同様にして、ICの電荷量を測定したところ0.29ナノクーロンであった。以上の結果を表4にまとめる。
【0047】
【表4】

【0048】
実施例17
スチレン−ブタジエン共重合体系樹脂スチレン−ブタジエンブロック共重合体樹脂(スチレン含有量74%、ブタジエンを主体とする重合体ブロックの共役ジエン含有量36重量%)60重量部、ポリスチレン系樹脂スチレン樹脂としてGPPS25重量部(東洋スチレン社製HRM−2)、耐衝撃性スチレン樹脂(ゴム含有率5%、東洋スチレン社製HI−E6)15重量部、をドライブレンドし、φ40mm押出機(L/D=26)、金属ロールおよび600mm幅のTダイにより製膜し、肉厚300μmの単層の熱可塑性樹脂シートを作成した。これを用いて実施例1と同様にして、ICの電荷量を測定したところ0.04ナノクーロンと極めて微小であった。
【0049】
比較例6
ポリ塩化ビニル樹脂をφ40mm押出機(L/D=26)、金属ロールおよび600mm幅のTダイにより製膜し、肉厚300μmの単層熱可塑性樹脂シートを作成した。これを用いて実施例1と同様にして、ICの電荷量を測定したところ1.0ナノクーロンと多かった。
【0050】
比較例7
ポリカーボネート樹脂をφ40mm押出機(L/D=26)、金属ロールおよび600mm幅のTダイにより製膜し、肉厚300μmの単層熱可塑性樹脂シートを作成した。これを用いて実施例1と同様にして、ICの電荷量を測定したところ0.9ナノクーロンと多かった。

【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】帯電量の測定装置
【符号の説明】
【0052】
1 斜面
2 熱可塑性樹脂シート
3 電子部品(IC等)
4 ファラデーゲージ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
除電した電子部品を、除電した300mmの熱可塑性樹脂シート上を滑らせた時に電子部品の帯電量が絶対値で0.15ナノクーロン以下である電子部品包装用の熱可塑性樹脂シート。
【請求項2】
少なくとも片方の表面層がポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリスチレン系樹脂又はABS系樹脂から選ばれた少なくとも1種類の熱可塑性樹脂100重量部に対し、カーボンブラック5〜50重量部を含有し、かつ、前記熱可塑性樹脂とカーボンブラックの合計量100重量部に対し、オレフィン系樹脂1〜50重量部と、スチレン及び共役ジエンより製造されるブロックコポリマーを0.2〜20重量部を含有する請求項1の熱可塑性樹脂シート。
【請求項3】
少なくとも片方の表面層が分子量20000〜30000であるポリカーボネート樹脂100重量部に対して、ジブチルフタレート(DBP)吸油量が160ml/100g以上で、揮発分が0.6%以下であるカーボンブラック5〜50重量部を含有する請求項1の熱可塑性樹脂シート。
【請求項4】
少なくとも片方の表面層がスチレン−ブタジエン共重合体系樹脂、ポリスチレン系樹脂を、スチレン−ブタジエン共重合体系樹脂とポリスチレン系樹脂の合計に対してスチレン−ブタジエン共重合体系樹脂が20〜80重量%、ポリスチレン系樹脂が80〜20重量%の範囲で含有する請求項1の熱可塑性樹脂シート。
【請求項5】
ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリスチレン系樹脂又はABS系樹脂から選ばれた少なくとも1種類の熱可塑性樹脂を用いた基材層を有する請求項2乃至請求項3のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂シート
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂シートを用いた電子部品包装容器。
【請求項7】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂シートを用いた電子部品包装体。
【請求項8】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂シートを用いたキャリアテープ及びトレー。


【図1】
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【公開番号】特開2006−321564(P2006−321564A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−171371(P2006−171371)
【出願日】平成18年6月21日(2006.6.21)
【分割の表示】特願2001−257429(P2001−257429)の分割
【原出願日】平成13年8月28日(2001.8.28)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】