説明

熱可塑性樹脂組成物

【課題】 ポリ乳酸樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物の衝撃強度、耐熱性、加工性、外観の均一性のバランス改良。
【解決手段】ポリ乳酸樹脂(L)5〜70重量部、非共役ジエン系ゴム含有グラフト共重合体(G)10〜60重量部、(メタ)アクリル酸エステル系硬質合体(M)1〜50重量部、α−メチルスチレン60〜80重量%およびアクリロニトリル20〜40重量%からなるα−メチルスチレン−アクリロニトリル共重合体(A)5〜84重量部からなる熱可塑性樹脂組成物((L)、(G)、(M)、(A)の合計は100重量部)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱可塑性樹脂組成物に関するものである。詳しくは、衝撃強度、耐熱性、加工性、外観の均一性のバランスに優れたポリ乳酸樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球的規模での環境問題として、石油化学製品の使用増加による石油資源の将来性が危ぶまれている。例えば、ポリ乳酸樹脂は植物であるとうもろこしや芋類を原料として得られる乳酸からなる樹脂であり、石油を原料としない環境対応型の樹脂として知られている。しかしながら、ポリ乳酸樹脂は、ノッチ付き衝撃強度および、耐熱性に劣るといった欠点がある。
一方、ABS樹脂は優れた物性バランスおよび成形加工性を有しており、広範な分野に利用されているが、原料は石油資源に依存している。これら両者の欠点を補うことを目的に下記の従来技術が提案されているが、衝撃強度、耐熱性、加工性、外観の均一性の諸物性を全て満足することはできず、改良が望まれている。
【特許文献1】特開2000−327847号公報
【特許文献2】特開2004−269720号公報
【特許文献3】特開2005−171204号公報
【特許文献4】特開2006−137908号公報
【特許文献5】特開2006−161024号公報
【特許文献6】特開2007−63368号公報
【特許文献7】特開2007−126535号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記課題を解決するために成されたもので、衝撃強度、耐熱性、加工性、外観の均一性のバランスに優れたポリ乳酸樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
すなわち本発明は、ポリ乳酸樹脂(L)5〜70重量部、非共役ジエン系ゴム含有グラフト共重合体(G)10〜60重量部、(メタ)アクリル酸エステル系硬質重合体(M)1〜50重量部、α−メチルスチレン−アクリロニトリル共重合体(A)5〜84重量部からなることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物(ただし、(L)、(G)、(M)、(A)の合計は100重量部である)を提供するものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明における熱可塑性樹脂組成物は、衝撃強度、耐熱性、加工性、外観の均一性のバランスに優れ、特に石油資源消費の抑制にも貢献できる環境対応型材料として、車両分野、家電分野、建材分野、サニタリー分野等に広く用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の熱可塑性樹脂組成物につき詳細に説明する。
本発明において、ポリ乳酸樹脂は熱可塑性樹脂組成物の必須成分を構成する。市販されているポリ樹脂としては、例えば三井化学(株)製 商品名:レイシア、ユニチカ(株)製 商品名:テラマック等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0007】
本発明における非共役ジエン系ゴム含有グラフト共重合体(G)とは、非共役ジエン系ゴム状重合体にビニル系単量体を重合して得られるものであり、該非共役ジエン系ゴム状重合体としては、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体、エチレン−ブテン−1−非共役ジエン共重合体等のエチレン−プロピレン系ゴム状重合体やアクリル系ゴム状重合体が例示されるが、特にアクリル系ゴム状重合体が好ましい。
該アクリル系ゴム状重合体は、メチルアルコールを除くアルキルアルコールの(メタ)アクリル酸エステルを90〜99重量%、複数のビニル基を有する単量体を1〜10重量%、その他共重合可能なビニル系単量体0〜9重量%から構成される。メチルアルコールを除くアルキルアルコールの(メタ)アクリル酸エステルとしては、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートなどが挙げられる。特にブチルアクリレートが好ましい。また複数のビニル基を有する単量体としては、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ヘキサンジオール−1,6−ジメタクリレートなどの多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル類、アリルアクリレート、アリルメタクリレートなどのアリルアルコールの(メタ)アクリル酸エステル類、ジビニルベンゼンなどが挙げられる。
また、該ゴム状重合体を構成するその他共重合可能な単量体としては、スチレン系単量体、シアン化ビニル系単量体、(メタ)アクリル酸メチル単量体などが挙げられる。スチレン系単量体の中ではスチレンとαメチルスチレンが、シアン化ビニル系単量体の中ではアクリロニトリルが特に好ましい。
【0008】
非共役ジエン系ゴム含有グラフト共重合体(G)のグラフト重合に用いられるビニル系単量体としては、スチレン系単量体、シアン化ビニル系単量体、(メタ)アクリル酸メチル単量体などが挙げられる。
スチレン系単量体としては、スチレン、αメチルスチレン、パラメチルスチレン、ブロムスチレン等が挙げられ、一種又は二種以上用いることができる。特にスチレン、αメチルスチレンが好ましい。
シアン化ビニル系単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。特にアクリロニトリルが好ましい。
(メタ)アクリル酸メチル単量体は、メチルアクリレートとメチルアクリレートであるが。特にメチルメタクリレートが好ましい。
また、上記ビニル系単量体と共に無水マレイン酸、マレイン酸ジメチル等の不飽和酸系単量体、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドなどのマレイミド系単量体などを用いることも可能である。
上記の非共役ジエン系ゴム含有グラフト共重合体(G)を構成するゴム状重合体とグラフト重合に使用されるビニル系単量体の割合については特に制限はないが、好ましくはゴム状重合体5〜70重量%およびスチレン系単量体、シアン化ビニル系単量体、(メタ)アクリル酸メチル単量体から選ばれたビニル系単量体30〜95重量%である。
また、非共役ジエン系ゴム含有グラフト共重合体(G)の重合方法についても特に制限はなく、乳化重合、懸濁重合、塊状重合、溶液重合またはこれらの組み合わせにより製造することができるが、高温高湿環境下における経時安定性維持の観点から、ゴム含有グラフト共重合体に含有されるアルカリ金属の含有量が0.01重量%以下であることが好ましい。
【0009】
本発明における(メタ)アクリル酸エステル系硬質重合体(M)の製造に好適に用いられる単量体としては、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレートなどが上げられ、特にメチルメタクリレート単独もしくは、メチルメタクリレートを主にメチルアクリレート等との併用が好ましい。エチルアクリレート、ブチルアクリレートなども少量使用できるが、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(M)を構成する単量体のうち、耐熱性の観点から10重量%以下に制限されることが望ましい。また、必要に応じてスチレン系単量体やシアン化ビニル単量体の他の単量体を併用しても差し支えないが、(メタ)アクリル酸エステル系硬質重合体(M)を構成する単量体のうち、他の単量体の共重合比率は20重量%未満、更に好ましくは10重量%であることが好ましい。
また、(メタ)アクリル酸エステル系硬質重合体(M)の重合方法についても特に制限はなく、乳化重合、懸濁重合、塊状重合、溶液重合またはこれらの組み合わせにより製造することができる。
【0010】
本発明におけるα−メチルスチレン−アクリロニトリル共重合体(A)の組成割合としては、特にα−メチルスチレン60〜80重量%およびアクリロニトリル20〜40重量%であることが好ましい。
また、α−メチルスチレン−アクリロニトリル共重合体(A)の重合方法についても特に制限はなく、乳化重合、懸濁重合、塊状重合、溶液重合またはこれらの組み合わせにより製造することができる。
【0011】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂(L)5〜70重量部、非共役ジエン系ゴム含有グラフト共重合体(G)10〜60重量部、(メタ)アクリル酸エステル系硬質重合体(M)1〜50重量部、α−メチルスチレン−アクリロニトリル共重合体(A)5〜84重量部からなるものである(ただし、(L)、(G)、(M)、(A)の合計は100重量部である。)。
ポリ乳酸樹脂(L)の配合比率が5重量部未満では、原料の殆どを石油資源に依存しているという環境負荷は低減されず、70重量部を超えると衝撃強度や耐熱性が低下する。好ましくは10〜60重量部、更に好ましくは15〜55重量部である。
非共役ジエン系ゴム含有グラフト共重合体(G)の配合比率が10重量部未満では衝撃強度が劣り、60重量部を超えると加工性や耐熱性が低下する。好ましくは10〜55重量部、更に好ましくは15〜50重量部である。
(メタ)アクリル酸エステル系硬質重合体(M)の配合比率が1重量部未満では外観の均一性が劣り、50重量部を超えると耐熱性が低下する。好ましくは10〜45重量部、更に好ましくは10〜40重量部である。
α−メチルスチレン−アクリロニトリル共重合体(A)の配合比率が5重量部未満では耐熱性が劣り、84重量部を超えると衝撃強度が低下する。好ましくは10〜70重量部、更に好ましくは10〜60重量部である。
【0012】
また、本発明における熱可塑性樹脂組成物には、上記各成分の他に、その物性を損なわない限りにおいて、その目的に応じて樹脂の混合時、成形時等に安定剤、顔料、染料、補強剤(タルク、マイカ、クレー、ガラス繊維等)、着色剤(カーボンブラック、酸化チタン等)、紫外線吸収剤、酸化防止剤、難燃剤、滑剤、離型剤、可塑剤、帯電防止剤、無機および有機系抗菌剤等の公知の添加剤を配合することができる。
【0013】
本発明における熱可塑性樹脂組成物の混合方法としては、バンバリーミキサー、押出機等公知の混練機を用いる方法が挙げられる。また、混合順序にも何ら制限はなく、4成分の一括混練はもちろんのこと、予め任意の2ないし3成分を混合した後に残る成分を混合することも可能である。
【0014】
〔実施例〕
以下に実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら制限されるものではない。
また、特段の断りが無い限り、%や部は重量を基準とする。
【0015】
ポリ乳酸樹脂(L)
ポリ乳酸樹脂(L)として、三井化学株式会社製LACEA H−400を用いた。
【0016】
ゴム状重合体1〜2の作製
ゴム状重合体1:ステンレス製耐圧重合反応機に、減圧下で純水130部、アルケニルコハク酸カリウム0.8部、ナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物0.2部、水酸化カリウム0.05部、ブチルアクリレート93部、メチルメタクリレート3部、アリルメタクリレート2部、t−ドデシルメルカプタン0.18部、ブドウ糖0.08部、硫酸第一鉄0.005部を仕込んで撹拌しながら53℃に昇温した後、過硫酸カリウム0.3部を仕込み53℃で重合を開始した。重合開始から210分かけて反応温度を63℃に上げて反応を継続し、重合転化率67%を越えた時点で、ブドウ糖0.02部とt−ブチルハイドロパーオキサイド0.05部を添加し、70℃に昇温して反応を継続した。重合転化率が98%を超えたことを確認して槽内温度を35℃以下に冷却し、燐酸アグロメ法によって重合体粒子を肥大化させ、ラテックス状のゴム状重合体1を得た。その固形分濃度は38.0重量%、pH9.7、平均粒子径は290mであった。
【0017】
ゴム状重合体2:ステンレス製耐圧重合反応機に、減圧下で純水135部、アルケニルコハク酸カリウム1.1部、ナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物0.2部、水酸化カリウム0.03部、ブチルアクリレート92部、スチレン5部、アリルメタクリレート3部、t−ドデシルメルカプタン0.25部、ブドウ糖0.15部、硫酸第一鉄0.005部を仕込んで撹拌しながら62℃に昇温した後、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.1部を仕込み62℃で重合を開始した。62℃に温度を保ちながら反応を継続し、重合転化率65%を越えた時点で、ブドウ糖0.02部とクメンハイドロパーオキサイド0.05部を添加し、70℃に昇温して反応を継続した。重合転化率が98%を超えたことを確認して槽内温度を35℃以下に冷却し、燐酸アグロメ法によって重合体粒子を肥大化させ、ラテックス状のゴム状重合体2を得た。その固形分濃度は37.2重量%、pH9.4、平均粒子径は380nmであった。
【0018】
ゴム含有グラフト共重合体G1〜G2の作製
ゴム含有グラフト共重合体G1:ステンレス製耐圧重合反応機に、減圧下で純水33.9部、ロジン酸カリウム0.3部、オレイン酸カリウム1.0部、ナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物0.5部、水酸化ナトリウム0.15部、ゴム状重合体1を固形分で65部、ブドウ糖0.08部、硫酸第一鉄0.004部を仕込んで十分攪拌しながら63℃に昇温した後、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.08部を仕込み63℃で重合を開始した。開始直後からスチレン27部とアクリロニトリル8部、t−ドデシルメルカプタン0.25部の混合物を2時間にわたって連続添加し、重合転化率が65%を越えた時点でt−ブチルハイドロパーオキサイド0.04部を仕込み、反応温度を70℃に上げて反応を1時間以上継続し、重合転化率が97%を超えたことを確認して槽内温度を40℃以下に冷却した。得られたラテックス状のゴム含有グラフト共重合体を多量のメタノール中に投入して沈殿させ、150メッシュのステンレス製金網に流した後、先ず適量のメタノール、次に多量の純水で洗浄した。その後、減圧下で含水率が1重量%以下になるまで乾燥させ、パウダー状のゴム含有グラフト共重合体G1を得た。
得られたゴム含有グラフト共重合体G1を灰化後、純水に溶解してICP法および原子吸光法により、アルカリ金属含有量を測定した。結果は0.003重量%であった。
【0019】
ゴム含有グラフト共重合体G2:ステンレス製耐圧重合反応機に、減圧下で純水47.2部、オレイン酸カリウム1.5部、ナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物0.8部、水酸化カリウム0.20部、ゴム状重合体2を固形分で55部、ブドウ糖0.10部、硫酸第一鉄0.005部を仕込んで十分攪拌しながら65℃に昇温した後、クメンハイドロパーオキサイド0.07部を仕込み65℃で重合を開始した。開始直後からスチレン30部とメチルメタクリレート5部、アクリロニトリル10部、t−ドデシルメルカプタン0.20部の混合物を3時間にわたって連続添加し、重合転化率が66%を越えた時点でt−ブチルハイドロパーオキサイド0.05部を仕込み、反応温度を70℃に上げて反応を2時間以上継続し、重合転化率が98%を超えたことを確認して槽内温度を40℃以下に冷却した。得られたラテックス状のゴム含有グラフト共重合体を多量のメタノール中に投入して沈殿させ、150メッシュのステンレス製金網に流した後、先ず適量のメタノール、次に多量の純水で洗浄した。その後、減圧下で含水率が1重量%以下になるまで乾燥させ、パウダー状のゴム含有グラフト共重合体G2を得た。
得られたゴム含有グラフト共重合体G2を灰化後、純水に溶解してICP法および原子吸光法により、アルカリ金属含有量を測定した。結果は0.004重量%であった。
【0020】
(メタ)アクリル酸エステル系硬質重合体M1〜M2の製造
(メタ)アクリル酸エステル系硬質重合体M1:容積が15リットルのプラグフロー塔型反応槽に10リットルの完全混合槽2基を直列に接続した連続的塊状重合装置を用いた。
プラグフロー塔型反応槽にエチルベンゼン20重量部、メチルメタクリレート72重量部、メチルアクリレート8重量部、t−ドデシルメルカプタン0.15重量部、1、1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3、3、5−トリメチルシクロヘキサン0.050重量部からなる原料を調整し、この原料を3段の攪拌式重合槽列反応器に毎時12kgで連続的に供給して単量体の重合を行った。3段目の槽より重合液を予熱器と減圧室より成る分離回収工程に導いた。
回収工程から出た樹脂は押出工程を経て粒状のペレットとして(メタ)アクリル酸エステル系硬質共重合体M1を得た。このペレットの組成分析を熱分解クロマトグラフィーで実施したところ、メチルメタクリレート単量体成分90重量%、メチルアクリレート単量体成分10重量%であった。
【0021】
(メタ)アクリル酸エステル系硬質重合体M2:容積が15リットルのプラグフロー塔型反応槽に10リットルの完全混合槽2基を直列に接続した連続的塊状重合装置を用いた。
プラグフロー塔型反応槽にエチルベンゼン25重量部、メチルメタクリレート67.5重量部、メチルアクリレート1.5重量部、スチレン3重量部、アクリロニトリル3重量部、t−ドデシルメルカプタン0.20重量部、1、1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3、3、5−トリメチルシクロヘキサン0.042重量部からなる原料を調整し、この原料を3段の攪拌式重合槽列反応器に毎時10kgで連続的に供給して単量体の重合を行った。3段目の槽より重合液を予熱器と減圧室より成る分離回収工程に導いた。
回収工程から出た樹脂は押出工程を経て粒状のペレットとして(メタ)アクリル酸エステル系硬質共重合体M2を得た。このペレットの組成分析を熱分解クロマトグラフィーで実施したところ、メチルメタクリレート単量体成分90重量%、メチルアクリレート単量体成分2重量%、スチレン単量体成分4重量%、アクリロニトリル単量体成分4重量%であった。
【0022】
α−メチルスチレン−アクリロニトリル共重合体A1〜A2の製造
α−メチルスチレン−アクリロニトリル共重合体A1:容積が15リットルのプラグフロー塔型反応槽に10リットルの完全混合槽2基を直列に接続した連続的塊状重合装置を用いた。
プラグフロー塔型反応槽にエチルベンゼン25重量部、α−メチルスチレン52.5重量部、アクリロニトリル22.5重量部、t−ドデシルメルカプタン0.10重量部、1、1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3、3、5−トリメチルシクロヘキサン0.090重量部からなる原料を調整し、この原料を3段の攪拌式重合槽列反応器に毎時10kgで連続的に供給して単量体の重合を行った。3段目の槽より重合液を予熱器と減圧室より成る分離回収工程に導いた。
回収工程から出た樹脂は押出工程を経て粒状のペレットとしてα−メチルスチレン−アクリロニトリル共重合体
A1を得た。このペレットの組成分析を熱分解クロマトグラフィーで実施したところ、α−メチルスチレン単量体成分70重量%、アクリロニトリル単量体成分30重量%であった。
【0023】
α−メチルスチレン−アクリロニトリル共重合体A2:ステンレス製耐圧重合反応機に、減圧下で純水155部、乳化剤としてロジン酸カリウム3.0部、ナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物0.7部、水酸化ナトリウム0.08部、α−メチルスチレン75部、アクリロニトリル25部、t−ドデシルメルカプタン0.18部を加えて十分攪拌ながら72℃に昇温した後、過硫酸カリウム0.5部を仕込み72℃で重合を開始した。重合転化率が63%を越えた時点で反応温度を77℃に上げて反応を継続し、重合転化率が97%を超えたことを確認して槽内温度を40℃以下に冷却した。得られたα−メチルスチレン−アクリロニトリル共重合体を硫酸マグネシウム水溶液を使って塩析し、洗浄後に80℃の熱風オーブン中で含水率が1重量%以下になるまで乾燥させ、パウダー状のα−メチルスチレン−アクリロニトリル共重合体A2を得た。
【0024】
〔実施例1〜4、比較例1〜6〕
上記、ポリ乳酸樹脂(L)、ゴム含有グラフト共重合体(G1〜G2)、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(M1〜M2)、α−メチルスチレン−アクリロニトリル共重合体(A1〜A2)を表1に示す配合割合で混合し、30mmニ軸押出機を用いて230℃から250℃で溶融混合し、ペレット化した後、射出成形機にて各種試験片を作成して物性を評価した。それぞれの評価方法を以下に示し、評価結果を表1にまとめた。
【0025】
各物性の評価方法
加工性:ISO 1133に基づき220℃、10Kgの条件でメルトインデックスを測定した。単位はg/10分。得られた測定結果に基づいて下記の様に相対区分した。
◎(優秀):40以上
○(良好):20以上〜40未満
△(微劣):5以上〜20未満
×(不良):5未満
【0026】
衝撃強度:ISO 179に準拠し、ノッチ付きのシャルピー衝撃値を測定した。単位はkJ/m
得られた測定結果に基づいて下記の様に相対区分した。
◎(優秀):15以上
○(良好):10以上〜15未満
△(微劣):5以上10未満
×(不良):5未満
【0027】
耐熱性:ISO 75に準拠し、荷重1.8MPaの荷重たわみ温度を測定した。単位は℃。
得られた測定結果に基づいて下記の様に相対区分した。
◎(優秀):75℃以上
○(良好):70℃以上〜75℃未満
△(微劣):65℃以上〜70℃未満
×(不良):65℃未満
【0028】
外観の均一性:2箇所にゲートをもつデュポンインパクト測定用テストピースを肉眼で判定し、下記の様に相対区分した。
◎(優秀):まったくウェルドラインが観察されず、表面光沢も良好。
○(良好):明確なウェルドラインは認められないが、テストピース中央の光沢がやや不均一。
△(微劣):ウェルドラインが認められ、光沢も不均一。
×(不良):明確なウェルドラインが認められる。
【0029】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0030】
以上のように、本発明は、衝撃強度、耐熱性、加工性、外観の均一性のバランスに優れた熱可塑性樹脂組成物が得られるものであり、車両分野、家電分野、建材分野、サニタリー分野等に広く用いることができる。
また、石油資源消費の抑制にも貢献できる環境対応型材料である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸樹脂(L)5〜70重量部、非共役ジエン系ゴム含有グラフト共重合体(G)10〜60重量部、(メタ)アクリル酸エステル系硬質重合体(M)1〜50重量部、α−メチルスチレン−アクリロニトリル共重合体(A)5〜84重量部からなることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物(ただし、(L)、(G)、(M)、(A)の合計は100重量部である)。
【請求項2】
α−メチルスチレン−アクリロニトリル共重合体(A)が、α−メチルスチレン60〜80重量%およびアクリロニトリル20〜40重量%からなる共重合体である請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
非共役ジエン系ゴム含有グラフト共重合体(G)のゴム状重合体がアクリル系ゴム状重合体である請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
非共役ジエン系ゴム含有グラフト共重合体(G)のアルカリ金属含有量が0.01重量%以下である請求項1〜3何れかに記載の熱可塑性樹脂組成物。

【公開番号】特開2009−132776(P2009−132776A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−308774(P2007−308774)
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(399034220)日本エイアンドエル株式会社 (186)
【Fターム(参考)】