説明

熱可塑性高分子用帯電防止剤及び熱可塑性高分子成形体の帯電防止方法並びに帯電防止性熱可塑性高分子成形体

【課題】熱可塑性高分子成形体の高速化された製造乃至加工においても、熱可塑性高分子成形体に優れた帯電防止性を付与でき、同時に耐ブロッキング性、非タック性、再利用性及び非転写性等の望まれる優れた特性を付与できる熱可塑性高分子用帯電防止剤、これを用いる熱可塑性高分子成形体の帯電防止方法、これを用いた帯電防止性熱可塑性高分子成形体を提供する。
【解決手段】熱可塑性高分子用帯電防止剤として、特定のビニル単量体混合物、非イオン界面活性剤及び水性溶媒を用いてビニル単量体混合液を得る第1工程と、このビニル単量体混合液にラジカル重合開始剤を加え、ラジカル重合反応させて、ビニル共重合体乳化物を得る第2工程とを経て得られるビニル共重合体乳化物を用いた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱可塑性高分子用帯電防止剤及び熱可塑性高分子成形体の帯電防止方法並びに帯電防止性熱可塑性高分子成形体に関する。各種の熱可塑性高分子が、フィルム、シート、容器、筐体等の熱可塑性高分子成形体として広く使用されている。しかし、かかる熱可塑性高分子成形体には、その製造乃至加工工程で、またその使用時に、様々な静電気障害の生じることが知られている。したがって、熱可塑性高分子成形体の製造乃至加工では、かかる静電気障害を充分に防止できる帯電防止剤を使用することが要求されるのであるが、近年のように製造乃至加工の高速化が進められると、高速化された製造乃至加工においても前記のような静電気障害を充分に防止できる帯電防止剤を用いることが要求される。本発明は、かかる要求に応える熱可塑性高分子用帯電防止剤及びこれを用いる熱可塑性高分子成形体の帯電防止方法並びにこれを用いた帯電防止性熱可塑性高分子成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱可塑性高分子用帯電防止剤として一般に、多種多様なイオン性高分子化合物が使用されている。なかでも熱可塑性高分子成形体に充分な耐久性のある帯電防止性を付与できる熱可塑性高分子用帯電防止剤としてカチオン性高分子化合物が提案されている(例えば特許文献1〜5参照)。しかし、熱可塑性高分子用帯電防止剤として従来提案されているカチオン性高分子化合物には、それを熱可塑性高分子成形体の高速化された製造乃至加工に用いると、1)それを用いた熱可塑性高分子成形体の帯電防止性が不充分になる、2)それを用いた熱可塑性高分子成形体がフィルムやシート等である場合にはこれら同士がブロッキングを起こし易く、またそれを用いた熱可塑性高分子成形体が容器や筐体等である場合にはこれらにタック感(ベタツキ感)が生じ易い、3)それを用いた熱可塑性高分子成形体の再利用化が制約される、4)それを用いた熱可塑性高分子成形体の塗布面から帯電防止剤が転写により移行し易い等、多くの問題がある。
【特許文献1】特開平1−146931号公報
【特許文献2】特開平1−174538号公報
【特許文献3】特開平8−281891号公報
【特許文献4】特開平9−31224号公報
【特許文献5】特開2005−350517号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明が解決しようとする課題は、熱可塑性高分子成形体の高速化された製造乃至加工においても、熱可塑性高分子成形体に優れた帯電防止性を付与でき、同時に耐ブロッキング性、非タック性、再利用性及び非転写性等の望まれる優れた特性を付与できる熱可塑性高分子用帯電防止剤、これを用いる熱可塑性高分子成形体の帯電防止方法、これを用いた帯電防止性熱可塑性高分子成形体を提供する処にある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
しかして本発明者は、前記の課題を解決するべく研究した結果、熱可塑性高分子用帯電防止剤として特定の工程を経て得られるビニル共重合体乳化物を用いることが好適であることを見出した。
【0005】
すなわち本発明は、下記の第1工程及び第2工程を経て得られるビニル共重合体乳化物から成ることを特徴とする熱可塑性高分子用帯電防止剤に係る。
【0006】
第1工程:下記のビニル単量体混合物、非イオン界面活性剤及び水性溶媒を用いて、ビニル単量体混合液を得る工程
【0007】
第2工程:第1工程で得られたビニル単量体混合液にラジカル重合開始剤を加え、ラジカル重合反応させて、ビニル共重合体乳化物を得る工程
【0008】
ビニル単量体混合物:下記のビニル単量体混合物M又は下記のビニル単量体混合物N
ビニル単量体混合物M:下記の化1で示されるビニル単量体を10〜90モル%及び下記の接着性単量体を10〜90モル%含有し且つこれらを合計で100モル%となるよう含有して成る混合物
ビニル単量体混合物N:下記の化1で示されるビニル単量体を10〜80モル%、下記の接着性単量体を19.9〜89.9モル%及び下記の架橋性単量体を0.1〜20モル%含有し且つこれらを合計で100モル%となるよう含有して成る混合物
【0009】
接着性単量体:炭素数1〜4の脂肪族アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル、炭素数1〜4のアルキル基で置換されたN−アルキル(メタ)アクリルアミド、炭素数1〜4のアルキル基で置換されたN,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド及び炭素数4若しくは5の不飽和二塩基酸と炭素数2〜8のグリコールとの(ジ)エステルから選ばれる一つ又は二つ以上
【0010】
架橋性単量体:下記の化2で示される架橋性単量体、下記の化3で示される架橋性単量体及び下記の化4で示される架橋性単量体から選ばれる一つ又は二つ以上
【0011】
【化1】

【0012】
【化2】








【0013】
【化3】

【0014】
【化4】

【0015】
化1〜化4において、
,R,R,R,R:水素原子又はメチル基
,R,R:水素原子、メチル基、エチル基又はアルキル基の炭素数が2若しくは3のヒドロキシアルキル基(但し、R〜Rのうちで少なくとも二つはメチル基、エチル基又はアルキル基の炭素数が2若しくは3のヒドロキシアルキル基)
:水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基
A:オキシ基又はアミノ基
B:炭素数2〜6のアルキレン基
:硝酸イオン基、アルキル基の炭素数1〜4のアルキルスルホン酸イオン基、アルキル基の炭素数1〜4のアルキル硫酸イオン基又は塩化物イオン基
:水素原子、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基、エポキシ基を有する炭素数3〜10の有機基又は分子中に合計2〜20個のオキシエチレン単位及び/又はオキシプロピレン単位で構成されたポリオキシアルキレン基を有するポリオキシアルキレンジオールから一つの水酸基を除いた残基
:水素原子、エポキシ基を有する炭素数3〜10の有機基又は分子中に合計2〜20個のオキシエチレン単位及び/又はオキシプロピレン単位で構成されたポリオキシアルキレン基を有するポリオキシアルキレンジオールから一つの水酸基を除いた残基
【0016】
また本発明は、前記した本発明に係る熱可塑性高分子用帯電防止剤を、熱可塑性高分子材料を用いて製造される熱可塑性高分子成形体の表面1m当たり固形分として0.01〜3gの割合となるよう付着させることを特徴とする熱可塑性高分子成形体の帯電防止方法に係る。更に本発明は、前記した本発明に係る熱可塑性高分子用帯電防止剤が、熱可塑性高分子材料を用いて製造された熱可塑性高分子成形体の表面1m当たり固形分として0.01〜3gの割合で付着されて成ることを特徴とする帯電防止性熱可塑性高分子成形体に係る。
【0017】
先ず、本発明に係る熱可塑性高分子用帯電防止剤(以下単に本発明の帯電防止剤という)について説明する。本発明の帯電防止剤として供するビニル共重合体乳化物は、ビニル単量体混合物、非イオン界面活性剤及び水性溶媒を用いて、ビニル単量体混合液を得る第1工程と、かかる第1工程で得られたビニル単量体混合液にラジカル重合開始剤を加え、ラジカル重合反応させて、ビニル共重合体乳化物を得る第2工程とを経て得られるものである。
【0018】
第1工程で用いるビニル単量体混合物は、1)化1で示されるビニル単量体と接着性単量体とから成るビニル単量体混合物M、又は2)化1で示されるビニル単量体と接着性単量体と架橋性単量体とから成るビニル単量体混合物Nであるが、なかでもビニル単量体混合物Nが好ましい。
【0019】
まずビニル単量体混合物Mについて説明する。ビニル単量体混合物Mは、化1で示されるビニル単量体と接着性単量体とから成る混合物である。ビニル単量体混合物Mを構成する化1で示されるビニル単量体において、化1中のAは、オキシ基又はアミノ基である。また化1中のBは、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等の炭素数2〜6のアルキレン基であるが、Bとしてはエチレン基又はトリメチレン基が好ましい。
【0020】
また化1で示されるビニル単量体において、化1中のRは水素原子又はメチル基であり、化1中のR、R及びRは、水素原子、メチル基、エチル基又はアルキル基の炭素数2若しくは3のヒドロキシアルキル基であって、R〜Rのうちで少なくとも二つはメチル基、エチル基又はアルキル基の炭素数2若しくは3のヒドロキシアルキル基であるものである。すなわち、Rが水素原子の場合、RとRはメチル基、エチル基又はアルキル基の炭素数2若しくは3のヒドロキシアルキル基であり、同様にRが水素原子の場合、RとRはメチル基、エチル基又はアルキル基の炭素数2若しくは3のヒドロキシアルキル基であって、また同様にRが水素原子の場合、RとRはメチル基、エチル基又はアルキル基の炭素数2若しくは3のヒドロキシアルキル基である。なかでも、R〜Rのうちの二つがメチル基であり、残る一つが水素原子、メチル基又はエチル基であるものが好ましい。
【0021】
更に化1で示されるビニル単量体において、化1中のXは、1)硝酸イオン基、2)メチルスルホン酸イオン基、エチルスルホン酸イオン基、プロピルスルホン酸イオン基、イソプロピルスルホン酸イオン基、ブチルスルホン酸イオン基、イソブチルスルホン酸イオン基等の炭素数1〜4のアルキルスルホン酸イオン基、3)メチル硫酸イオン基、エチル硫酸イオン基、プロピル硫酸イオン基、ブチル硫酸イオン基等の炭素数1〜4のアルキル硫酸イオン基、又は4)塩化物イオン基であるが、Xとしてはメチルスルホン酸イオン基、メチル硫酸イオン基又はエチル硫酸イオン基が好ましく、メチルスルホン酸イオン基がより好ましい。
【0022】
以上説明した化1で示されるビニル単量体の具体例としては、アクリロイルアミノエチルトリメチルアンモニウムメチルスルホン酸塩、アクリロイルアミノプロピルジメチルアンモニウムエチルスルホン酸塩、アクリロイルアミノプロピル2−ヒドロキシエチルジメチルアンモニウム硝酸塩、アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウム硝酸塩、メタクリロイルアミノブチルトリメチルアンモニウムメチルスルホン酸塩、メタクリロイルアミノヘキシルジ(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム硝酸塩、アクリロイルオキシエチルジメチルアンモニウムメチルスルホン酸塩、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムメチル硫酸塩、アクリロイルオキシエチルジメチルエチルアンモニウムエチル硫酸塩、メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、メタクリロイルオキシブチルジメチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムメチルスルホン酸塩等が挙げられる。
【0023】
ビニル単量体混合物Mを構成する接着性単量体は、1)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸t−ブチル等の、炭素数1〜4の脂肪族アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル、2)N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、N−t−ブチルメタクリルアミド等の、炭素数1〜4のアルキル基で置換されたN−アルキル(メタ)アクリルアミド、3)N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジプロピルアクリルアミド、N,N−ジブチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド等の、炭素数1〜4のアルキル基で置換されたN,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、及び4)マレイン酸ジエチレングリコール、マレイン酸ジヘキサングリコール、フマル酸ジプロピレングリコール、シトラコン酸ジネオペンチルグリコール、メサコン酸ジシクロヘキサンジメタノール、グルタコン酸ジブチレングリコール、イタコン酸ジヘキシレングリコール等の、炭素数4若しくは5の不飽和二塩基酸と炭素数2〜8のグリコールとの(ジ)エステルから選ばれる一つ又は二つ以上である。なかでも接着性単量体としては、炭素数1〜4の脂肪族アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル、炭素数1〜4のアルキル基で置換されたN−アルキル(メタ)アクリルアミド及び炭素数1〜4のアルキル基で置換されたN,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミドから選ばれる一つ又は二つ以上が好ましい。
【0024】
ビニル単量体混合物Mは、以上説明した化1で示されるビニル単量体と接着性単量体とから成る混合物であり、したがってこれらを合計で100モル%となるよう含有して成る混合物であるが、化1で示される単量体を10〜90モル%、好ましくは15〜70モル%、より好ましくは20〜60モル%、また接着性単量体を10〜90モル%、好ましくは30〜85モル%、より好ましくは40〜80モル%含有して成る混合物である。
【0025】
次にビニル単量体混合物Nについて説明する。ビニル単量体混合物Nは、化1で示されるビニル単量体と接着性単量体と架橋性単量体とから成る混合物である。化1で示される単量体及び接着性単量体は、ビニル単量体混合物Mについて前記したことと同様である。架橋性単量体は、化2で示される架橋性単量体、化3で示される架橋性単量体及び化4で示される架橋性単量体から選ばれる一つ又は二つ以上であるが、架橋性単量体としては、化2で示されるものが好ましい。
【0026】
化2で示される架橋性単量体において、化2中のRは水素原子又はメチル基であり、化2中のRは、1)水素原子、2)メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の炭素数1〜6のアルキル基であるが、Rとしては、水素原子又はメチル基が好ましい。
【0027】
以上説明した化2で示される架橋性単量体の具体例としては、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−エトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−ターシャリーブチルオキシメチルアクリルアミド、N−ヘキシルオキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド、N−エトキシメチルメタクリルアミド、N−ブトキシメチルメタクリルアミド、N−ターシャリーブチルオキシメチルメタクリルアミド、N−ヘキシルオキシメチルメタクリルアミド等が挙げられるが、なかでもN−メチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミドが好ましい。
【0028】
化3で示される架橋性単量体において、化3のR及びRは水素原子又はメチル基であり、化3中のYは、1)水素原子、2)ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、ヒドロキシペンチル基、ヒドロキシヘキシル基等の炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基、3)グリシジル基、2,3−エポキシブチル基、2,3−エポキシ−2−メチルプロピル基、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基等のエポキシ基を有する炭素数3〜10の有機基、4)分子中に2〜20個のオキシエチレン単位で構成されたポリオキシエチレン基を有するポリオキシエチレンジオールから一つの水酸基を除いた残基、分子中に2〜20個のオキシプロピレン単位で構成されたポリオキシプロピレン基を有するポリオキシプロピレンジオールから一つの水酸基を除いた残基、分子中に合計2〜20個のオキシエチレン単位及びオキシプロピレン単位で構成された(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン基を有する(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレンジオールから一つの水酸基を除いた残基のような、ポリオキシアルキレンジオールから一つの水酸基を除いた残基である。なかでもYとしては、1)水素原子、2)ヒドロキシエチル基、3)グリシジル基、2,3−エポキシブチル基、2,3−エポキシ−2−メチルプロピル基等のエポキシ基を有する炭素数3又は4の有機基が好ましく、グリシジル基がより好ましい。
【0029】
以上説明した化3で示される架橋性単量体の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ヒドロキシメチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、5−ヒドロキシペンチルアクリレート、6−ヒドロキシヘキシルアクリレート、ヒドロキシメチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、5−ヒドロキシペンチルメタクリレート、6−ヒドロキシヘキシルメタクリレート、ヒドロキシメチルクロトナート、2−ヒドロキシエチルクロトナート、3−ヒドロキシプロピルクロトナート、4−ヒドロキシブチルクロトナート、5−ヒドロキシペンチルクロトナート、6−ヒドロキシヘキシルクロトナート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、2,3−エポキシブチルアクリレート、2,3−エポキシブチルメタクリレート、2,3−エポキシ−2−メチルプロピルアクリレート、2,3−エポキシ−2−メチルプロピルメタクリレート、グリシジルクロトナート、アクリル酸ポリオキシエチレン、アクリル酸ポリオキシプロピレン、アクリル酸オキシエチレンオキシプロピレン、アクリル酸ポリオキシエチレンオキシプロピレン、アクリル酸オキシエチレンポリオキシプロピレン、アクリル酸ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン、メタクリル酸ポリオキシエチレン、メタクリル酸ポリオキシプロピレン、メタクリル酸オキシエチレンオキシプロピレン、メタクリル酸ポリオキシエチレンオキシプロピレン、メタクリル酸オキシエチレンポリオキシプロピレン、メタクリル酸ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン、クロトン酸ポリオキシプロピレン、クロトン酸オキシエチレンオキシプロピレン、クロトン酸ポリオキシエチレンオキシプロピレン、クロトン酸オキシエチレンポリオキシプロピレン、クロトン酸ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン等が挙げられるが、なかでもアクリル酸、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレートが好ましい。
【0030】
化4で示される架橋性単量体において、化4中のRは水素原子又はメチル基であり、化4中のYは、1)水素原子、2)グリシジル基、2,3−エポキシブチル基、2,3−エポキシ−2−メチルプロピル基、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基等のエポキシ基を有する炭素数3〜10の有機基、3)分子中に2〜20個のオキシエチレン単位で構成されたポリオキシエチレン基を有するポリオキシエチレンジオールから一つの水酸基を除いた残基、分子中に2〜20個のオキシプロピレン単位で構成されたポリオキシプロピレン基を有するポリオキシプロピレンジオールから一つの水酸基を除いた残基、分子中に合計2〜20個のオキシエチレン単位及びオキシプロピレン単位で構成された(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン基を有する(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレンジオールから一つの水酸基を除いた残基のような、ポリオキシアルキレンジオールから一つの水酸基を除いた残基である。なかでもYとしては、エポキシ基を有する炭素数3又は4の有機基が好ましく、グリシジル基がより好ましい。
【0031】
以上説明した化4で示される架橋性単量体の具体例としては、アリルアルコール、アリルグリシジルエーテル、アリル=2,3−エポキシブチルエーテル、アリル=2,3−エポキシブチルエーテル、アリル=2,3−エポキシ−2−メチルプロピルエーテル、メタリルグリシジルエーテル、メタリル=2,3−エポキシブチルエーテル、メタリル=2,3−エポキシブチルエーテル、メタリル=2,3−エポキシ−2−メチルプロピルエーテル、α−アリル−ω−ヒドロキシ(ポリオキシエチレン)、α−アリル−ω−ヒドロキシ(ポリオキシプロピレン)、α−アリル−ω−ヒドロキシ(オキシエチレンオキシプロピレン)、α−アリル−ω−ヒドロキシ(ポリオキシエチレンオキシプロピレン)、α−アリル−ω−ヒドロキシ(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン)、α−メタリル−ω−ヒドロキシ(ポリオキシエチレン)、α−メタリル−ω−ヒドロキシ(ポリオキシプロピレン)、α−メタリル−ω−ヒドロキシ(オキシエチレンオキシプロピレン)、α−メタリル−ω−ヒドロキシ(ポリオキシエチレンオキシプロピレン)、α−メタリル−ω−ヒドロキシ(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン)等が挙げられるが、なかでもアリルアルコール、アリルグリシジルエーテルが好ましい。
【0032】
ビニル単量体混合物Nは、以上説明した化1で示されるビニル単量体と接着性単量体と架橋性単量体とから成る混合物であり、したがってこれらを合計で100モル%となるよう含有して成る混合物であるが、化1で示される単量体を10〜80モル%、好ましくは15〜74モル%、より好ましくは23〜63モル%、接着性単量体を19.9〜89.9モル%、好ましくは25〜84モル%、より好ましくは35〜75モル%、架橋性単量体を0.1〜20モル%、好ましくは1〜15モル%、より好ましくは2〜10モル%含有して成る混合物である。
【0033】
第1工程で用いる非イオン界面活性剤としては、1)いずれもポリオキシアルキレン基の構成単位がオキシエチレン基及び/又はオキシプロピレン基である、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンヒマシ油、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル等の、ポリオキシアルキレン基を有する非イオン界面活性剤、2)ソルビタンモノラウレート、ソルビタントリオレート、グリセリンモノラウレート、ジグリセリンジラウレート等の、多価アルコール部分エステル型の非イオン界面活性剤等が挙げられるが、なかでもポリオキシアルキレン基を有する非イオン界面活性剤が好ましく、ポリオキシエチレンアルキルエーテルがより好ましい。
【0034】
第1工程で用いる水性溶媒としては、水、水と水溶性有機溶媒、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトン等との混合溶媒が挙げられるが、なかでも水が好ましい。
【0035】
第1工程は、以上説明したビニル単量体混合物、非イオン界面活性剤及び水性溶媒を用いてビニル単量体混合液を得る工程である。第1工程で得られるビニル単量体混合液は、溶液状、乳化液状又は懸濁液状となる。かかるビニル単量体混合液において、ビニル単量体混合物の濃度は10〜45質量%とするのが好ましく、また非イオン界面活性剤の濃度は0.1〜5質量%とするのが好ましい。
【0036】
第2工程は、以上説明した第1工程で得られたビニル単量体混合液にラジカル重合開始剤を加え、ラジカル重合反応させて、ビニル共重合体乳化物を得る工程である。
【0037】
第2工程で用いるラジカル重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩等が挙げられる。これらは、亜硫酸塩やL−アスコルビン酸の如き還元性物質更にはアミン等と組み合わせたレドックス系のラジカル重合開始剤として用いることもできる。第2工程において、かかるラジカル重合開始剤の使用量は、ビニル単量体混合物に対して、通常は0.05〜2モル%とするが、好ましくは0.1〜1モル%とする。
【0038】
第2工程では、以上説明したラジカル重合開始剤を第1工程で得られたビニル単量体混合液に加えてラジカル重合反応させる。かかるラジカル重合反応において、反応温度は、ビニル単量体混合物、非イオン界面活性剤及びラジカル重合開始剤の種類や使用量により異なるが、通常は20〜95℃とし、好ましくは50〜90℃とする。また反応時間は、これもビニル単量体混合物、非イオン界面活性剤及びラジカル重合開始剤の種類や使用量により異なるが、通常は3〜12時間とする。以上説明した第2工程のラジカル重合反応は、窒素ガス雰囲気下において行うのが好ましい。
【0039】
本発明の帯電防止剤として供するビニル共重合体乳化物は、以上説明した第1工程及び第2工程を経て得られるものである。かくして得られるビニル共重合体乳化物において、ビニル共重合体の数平均分子量は、通常は5000〜1000000とするが、好ましくは7000〜100000とする。
【0040】
また本発明の帯電防止剤として供するビニル共重合体乳化物は、固形分10質量%のものについて、30℃における粘度が1〜10mm/sのものとするのが好ましく、1〜6mm/sのものとするのがより好ましい。ここで粘度は、JIS−Z8803のキャノンフェンスケ粘度計により測定される値である。
【0041】
次に、本発明に係る熱可塑性高分子成形体の帯電防止方法(以下単に本発明の帯電防止方法という)について説明する。本発明の帯電防止方法は、前記した本発明の帯電防止剤を、熱可塑性高分子成形体の表面1m当たり固形分として0.01〜3g、好ましくは0.02〜1gの割合となるよう付着させる方法である。ここで表面1m当たりというのは、片表面又は外表面1m当たりという意味である。熱可塑性高分子成形体がフィルムやシートのような平面的なものである場合には片表面1m当たりとなり、熱可塑性高分子成形体が容器や筐体のような立体的なものである場合には外表面1m当たりとなる。
【0042】
本発明の帯電防止方法において、本発明の帯電防止剤としては、前記したようなビニル共重合体乳化物そのまま用いることもできるし、これを更に水や水を主溶媒とする水性溶媒を用いて希釈したものを用いることもできる。いずれの場合も、熱可塑性高分子成形体の表面1m当たり本発明の帯電防止剤を固形分として0.01〜3g、好ましくは0.02〜1gの割合となるように付着させる。付着には、熱可塑性高分子成形体の主に形状との関係で、ロールコート法、グラビアコート法、エアナイフコート法、バーコート法、キスコート法、更にはスプレーコート法、デップコート法等、公知の方法を適用できる。
【0043】
本発明の帯電防止方法において、本発明の帯電防止剤は、熱可塑性高分子成形体に付着されるが、結果として熱可塑性高分子成形体に付着されればよい。例えば、その後に延伸工程に供されて製品化される熱可塑性高分子材料製の未延伸フィルムや一軸延伸フィルム等に付着してもよいし、また製品化された熱可塑性高分子材料製の容器や筐体等に付着してもよいのである。その後に延伸工程に供されて製品化される熱可塑性高分子材料製の未延伸フィルムや一軸延伸フィルム等に付着する場合も、本発明の帯電防止剤の塗布量は、延伸工程後に製品となる熱可塑性高分子フィルムすなわち熱可塑性高分子成形体1m当たり固形分として0.01〜3g、好ましくは0.02〜1.0gの割合となるようにする。塗布に際しては、本発明の効果を損なわない範囲内で、バインダー樹脂、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、架橋剤等を併用することもできる。
【0044】
本発明の帯電防止方法は各種の熱可塑性高分子材料を用いて製造される様々な形状の熱可塑性高分子成形体に適用できる。かかる熱可塑性高分子材料としては、1)ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系高分子材料、2)ポリカーボネート系高分子材料、3)ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(以下単にABSという)等のポリスチレン系高分子材料、4)ポリメチルメタクリレート(以下単にPMMAという)等のポリアクリル系高分子材料、5)ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル等のポリビニル系高分子材料、6)ポリエチレン、ポリプロピレン(以下単にPPという)等のポリオレフィン系高分子材料、7)ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6,6、ナイロン6,10、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンと脂肪族ジカルボン酸とのポリアミド、脂肪族ジアミンと1,4−シクロヘキサンジカルボン酸とのポリアミド、ポリ−p−フェニレンテレフタルアミド、ポリ−m−フェニレンイソフタラミド等のポリアミド系高分子材料、8)前記1)〜7)から選ばれる二つ以上の熱可塑性高分子材料のポリマーブレンド、ポリマーアロイ等の熱可塑性高分子材料等が挙げられる。なかでも、本発明の帯電防止方法は、ポリエステル系高分子材料、ポリカーボネート系高分子材料、ポリスチレン系高分子材料、ポリアクリル系高分子材料、ポリビニル系高分子材料及びポリオレフィン系高分子材料から選ばれる一つ又は二つ以上の熱可塑性高分子材料を用いて製造される熱可塑性高分子成形体に適用する場合に効果の発現が高い。本発明の帯電防止方法を適用するに際して、以上のような熱可塑性高分子材料は、酸化チタン、タルク、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、シリコーン等の無機フィラー、架橋ポリスチレン樹脂、架橋アクリル樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂等の有機フィラー、酸化防止剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、易滑剤、難燃剤等を含有していても、支障はない。
【0045】
最後に、本発明に係る帯電防止性熱可塑性高分子成形体(以下単に本発明の帯電防止性成形体という)について説明する。本発明の帯電防止性成形体は、前記した本発明の帯電防止剤が熱可塑性高分子成形体の表面1m当たり固形分として0.01〜3g、好ましくは0.02〜1gの割合で付着されて成るものである。本発明の帯電防止性成形体において、熱可塑性高分子成形体、その表面1m当たりの意味、熱可塑性高分子成形体を製造するために用いる熱可塑性高分子材料、なかでも好ましい熱可塑性高分子材料等については、本発明の帯電防止方法について前記したことと同様である。
【発明の効果】
【0046】
以上説明した本発明の帯電防止剤には、熱可塑性高分子成形体への高速塗布性に優れ、熱可塑性高分子成形体に充分な耐久性のある帯電防止性を付与でき、同時に耐ブロッキング性、非タック性、再利用性及び非転写性等の望まれる優れた特性を付与できるという効果がある。
【0047】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
【実施例】
【0048】
試験区分1(帯電防止剤としてのビニル共重合体乳化物の調製)
・実施例1{ビニル共重合体乳化物(M−1)の調製}
反応容器にアクリロイルアミノプロピルジメチルアンモニウムメチルスルホン酸塩80.8g(0.32モル)、メタクリル酸メチル22.5g(0.22モル)、アクリル酸エチル22.5g(0.22モル)、メタアリルスルホン酸ナトリウム1.0g(0.006モル)、水355g、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(オキシエチレン付加モル数=9、アルキル基=炭素数12〜14の第2級アルコールから水酸基を除いた残基)5gを仕込んでビニル単量体混合溶液とした(第1工程)。次いで攪拌下に反応容器中の雰囲気を窒素置換し、引き続き窒素気流中にビニル単量体混合溶液を70℃まで加温した後、10%過硫酸アンモニウム水溶液50gを30分間かけて滴下してラジカル重合反応を行い、更に70℃で6時間ラジカル重合反応を続けてビニル共重合体乳化物を得た(第2工程)。このビニル共重合体乳化物の一部を精製して分析した結果、化1中のRが水素原子、Rがメチル基、Rがメチル基、Rが水素原子、Aがアミノ基、Bがトリメチレン基、Xがメチルスルホン酸イオン基である場合の化1で示される単量体(E−1)から形成された構成単位を42モル%、メタクリル酸メチルから形成された構成単位を29モル%及びアクリル酸エチルから形成された構成単位を29モル%(合計100モル%)有する数平均分子量50000のビニル共重合体であった。またこのビニル共重合体乳化物の固形分10%のものについて、30℃の粘度は5.0mm/sであった。これをビニル共重合体乳化物(M−1)とした。
【0049】
・実施例2〜19及び比較例1〜4{ビニル共重合体乳化物(M−2)〜(M−8)及び(N−1)〜(N−11)並びにビニル共重合体液状物(R−1)〜(R−4)の調製}
実施例1のビニル共重合体乳化物(M−1)と同様にして、実施例2〜8のビニル共重合体乳化物(M−2)〜(M−8)及び実施例9〜19のビニル共重合体乳化物(N−1)〜(N−11)並びに比較例1〜4のビニル共重合体液状物(R−1)〜(R−4)を調製した。ビニル共重合体乳化物(M−1)も含め、これらの内容を表1及び表2にまとめて示した。
































【0050】
【表1】











【0051】
【表2】

【0052】
表1及び表2において、
割合:単位はモル%
化1で示されるビニル単量体(E−1)〜(E−10):下記の表3に内容をまとめて示した化1で示されるビニル単量体
F−1:メタクリル酸メチル
F−2:アクリル酸エチル
F−3:アクリル酸ブチル
F−4:N−エチルアクリルアミド
F−5:N,N−ジメチルアクリルアミド
F−6:N,N−ジエチルアクリルアミド
F−7:マレイン酸ジヘキサングリコールエステル
架橋性単量体(G−1)〜(G−3):下記の表4に内容をまとめて示した化2で示される架橋性単量体
架橋性単量体(H−1)〜(H−3):下記の表5に内容をまとめて示した化3で示される架橋性単量体
架橋性単量体(I−1)〜(I−3):下記の表6に内容をまとめて示した化4で示される架橋性単量体
P−1:ポリオキシエチレンアルキルエーテル(オキシエチレン付加モル数=9、アルキル基=炭素数12〜14の第2級アルコールから水酸基を除いた残基)
P−2:ポリオキシアルキレンオレート(オキシエチレン付加モル数=9、オキシプロピレン付加モル数=2)
P−3:ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル(オキシエチレン付加モル数=10)
Q−1:過硫酸アンモニウム
Q−2:過硫酸カリウム
Q−3:2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]
*1:水/イソプロピルアルコール=80/20(容量比)の混合溶媒
*2:水/イソプロピルアルコール=90/10(容量比)の混合溶媒
*3:ビニル単量体混合物に対する割合(モル%)
【0053】
【表3】

【0054】
表3において、
L−1:2−ヒドロキシエチル基
B−1:エチレン基
B−2:トリメチレン基
B−3:テトラメチレン基
B−4:ヘキサメチレン基
X−1:メチルスルホン酸イオン基
X−2:メチル硫酸イオン基
X−3:エチル硫酸イオン基
X−4:硝酸イオン基
【0055】
【表4】







【0056】
【表5】

【0057】
【表6】

【0058】
試験区分2(ポリエチレンテレフタレートフィルムへの帯電防止剤の塗布及びその評価)
・ポリエチレンテレフタレートフィルムへの帯電防止剤の塗布
極限粘度0.65のポリエチレンテレフタレートを280〜300℃で溶融押し出しし、15℃の冷却ロールで冷却して未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを周速の異なる85℃の一対のロール間で縦方向に3.5倍に一軸延伸して一軸延伸フィルムを得た。次に、試験区分1で調製したビニル共重合体乳化物等(帯電防止剤)を水希釈して固形分5%の水性液となし、この固形分5%の水性液を、一軸延伸フィルムに、更に延伸されて製品となる二軸延伸フィルムの表面1m当たり固形分として表7に記載の塗布量となるようキスコート法により3.5m/秒の塗布速度で塗布し、70℃の熱風で乾燥して、一軸延伸コーティングフィルムを得た。これを試料1とした。最後に、試料1の一軸延伸コーティングフィルムをテンターにより98℃で横方向に3.5倍延伸し、200〜210℃で熱固定して、製品としての厚さ100μmの二軸延伸コーティングフィルムを得た。これを試料2とした。別に、固形分5%の水性液のキスコート法による塗布速度を5m/秒としたこと以外は同様にして、製品としての厚さ100μmの二軸延伸コーティングフィルムを得た。これを試料3とした。これらの試料1〜3について以下の評価を行なった。結果を表7にまとめて示した。
【0059】
・高速塗布性の評価
試料2及び3の二軸延伸コーティングフィルムの表面を肉眼で観察し、下記の基準で評価した。
評価基準
◎:塗布抜けがなく、均一な塗布膜である
○:塗布抜けが極めて僅にあるが、ほぼ均一な塗布膜である
△:塗布抜けが幾分あるが、全体としてはほぼ均一な塗布膜である
×:塗布抜けが多く、不均一な塗布膜である
【0060】
・帯電防止性の評価
試料1の一軸延伸コーティングフィルム及び試料2の二軸延伸コーティングフィルムを、20℃で相対湿度30%の条件下に24時間調湿した後、同条件でコーティング面の表面比抵抗(Ω)を表面抵抗値測定装置(シシド電気社製の商品名メガレスタHT−301)を用いて測定し、下記の基準で評価した。
評価基準
◎:表面比抵抗が1×1011Ω未満
○:表面比抵抗が1×1011Ω以上〜1×1012Ω未満
△:表面比抵抗が1×1012Ω以上〜1×1013Ω未満
×:表面比抵抗が1×1013Ω以上
【0061】
・耐ブロッキング性の評価
試料2の二軸延伸コーティングフィルムから20cm×20cmの正方形の試料片を切り出し、この試料片とコーティング処理していない二軸延伸ポリエステルフィルムとをコーティング面で重ね、荷重1kg/mを均等にかけて、50℃にて24時間保持した後、重ねた状態のフィルムを10mm幅に切断して試験片とし、この試験片について双方のフィルム間の剥離力を測定して、耐ブロッキング性を下記の基準で評価した。
評価基準
◎:剥離力5gf/10mm未満
○:剥離力5gf/10mm以上〜8gf/10mm未満
△:剥離力8gf/10mm以上〜15gf/10mm未満
×:剥離力15gf/10mm以上
【0062】
・再利用性の評価
試料2の二軸延伸コーティングフィルムを粉砕し、押し出し機にて約300℃で溶融してチップ化した。このチップを用いて溶融製膜し、再生フィルムを作製した。別にブランクとして、水のみを塗布した二軸延伸コーティングポリエステルフィルムを用いて同様に再生フィルムを作製した。双方の再生フィルムの着色度合いから再利用性を下記の基準で評価した。
評価基準
◎:ブランクと同等であって、ほとんど着色していない
○:ブランクと比較して僅に着色しているが、再利用に問題がない
△:ブランクと比較して明らかに着色しており、再利用に制約がある
×:ブランクと比較して著しく着色しており、再利用できない
【0063】
・非転写性の評価
試料2の二軸延伸コーティングフィルムから20cm×20cmの正方形の試料片を切り出し、この試料片とコーティング処理していない二軸延伸ポリエステルフィルムとをコーティング面で重ね、荷重1kg/mを均等にかけて、20℃で相対湿度30%の条件下に60時間調湿した後、双方を引き離し、同条件で試料片のコーティング面の表面比抵抗(Ω)を表面抵抗値測定装置(シシド電気社製の商品名メガレスタHT−301)を用いて測定した。この測定値を、試料2について行なった前記の帯電防止性の評価における表面比抵抗(Ω)の測定値で除して、転写性評価を行なう前後での表面比抵抗の比を求め、下記の基準で評価した。
評価基準
◎:転写性評価を行なう前後での表面比抵抗の比が2未満
○:転写性評価を行なう前後での表面比抵抗の比が2以上〜5未満
△:転写性評価を行なう前後での表面比抵抗の比が5以上〜10未満
×:転写性評価を行なう前後での表面比抵抗の比が10以上






【0064】
【表7】

【0065】
表7において、
配合割合:帯電防止剤として用いたビニル共重合体乳化物等の配合割合(質量%)
塗布量:製品としての二軸延伸コーティングフィルム1m当たり、帯電防止剤として用いたビニル共重合体乳化物等の固形分としての付着量(g)
これらは以下同じ
【0066】
試験区分3(ポリカーボネートシートへの帯電防止剤の塗布及びその評価)
・ポリカーボネートシートへの帯電防止剤の塗布
ポリカーボネートを、二軸押出機に投入し、280℃で溶融混練しつつ、Tダイ法により30℃の冷却ロール上にキャストして、厚さ1mmのシートを得た。次に、試験区分1で調製したビニル共重合体乳化物等(帯電防止剤)を水希釈して固形分5%の水性液となし、この固形分5%の水性液を、前記シートの表面1m当たり固形分として表8に記載の塗布量となるようキスコート法により3.5m/秒の塗布速度で塗布し、150℃の熱風で1分間乾燥して、コーティングシートを得た。これを試料4とした。別に、固形分5%の水性液のキスコート法による塗布速度を5m/秒としたこと以外は同様にしてコーティングシートを得た。これを試料5とした。これらの試料4及び5のコーティングシートについて以下の評価を行なった。結果を表8にまとめて示した。
【0067】
・高速塗布性の評価
試料4及び5のコーティングシートについて、試験区分2と同様に評価した。
【0068】
・帯電防止性の評価
試料4のコーティングシートについて、試験区分2と同様に評価した。
【0069】
・耐ブロッキング性の評価
試料4のコーティングシートについて、試験区分2と同様に評価した。
【0070】
・再利用性の評価
試料4のコーティングシートを粉砕し、押し出し機にて約280℃で溶融してチップ化した。このチップを用いて溶融製膜し、再生シートを作製した。別にブランクとして、水のみを塗布した同様のシートを用いて再生シートを作製した。双方の再生シートの着色度合いから再利用性を試験区分2と同様に評価した。
【0071】
・非転写性の評価
試料4のコーティングシートについて、試験区分2と同様に評価した。
【0072】
【表8】

【0073】
試験区分4(ABSシートへの帯電防止剤の塗布及びその評価)
・ABSシートへの帯電防止剤の塗布
ABSを、二軸押出機に投入し、220℃で溶融混練しつつ、Tダイ法により30℃の冷却ロール上にキャストして、厚さ1mmのシートを得た。次に、試験区分1で調製したビニル共重合体乳化物等(帯電防止剤)を水希釈して固形分5%の水性液となし、この固形分5%の水性液を、前記シートの表面1m当たり固形分として表9に記載の塗布量となるようキスコート法により3.5m/秒の塗布速度で塗布し、150℃の熱風で1分間乾燥して、コーティングシートを得た。これを試料6とした。別に、固形分5%の水性液のキスコート法による塗布速度を5m/秒としたこと以外は同様にしてコーティングシートを得た。これを試料7とした。これらの試料6及び7のコーティングシートについて以下の評価を行なった。結果を表9にまとめて示した。
【0074】
・高速塗布性の評価
試料6及び7のコーティングシートについて、試験区分2と同様に評価した。
【0075】
・帯電防止性の評価
試料6のコーティングシートについて、試験区分2と同様に評価した。
【0076】
・耐ブロッキング性の評価
試料6のコーティングシートについて、試験区分2と同様に評価した。
【0077】
・再利用性の評価
試料6のコーティングシートを粉砕し、押し出し機にて約220℃で溶融してチップ化した。このチップを用いて溶融製膜し、再生シートを作製した。別にブランクとして、水のみを塗布した同様のシートを用いて再生シートを作製した。双方の再生シートの着色度合いから再利用性を試験区分2と同様に評価した。
【0078】
・非転写性の評価
試料6のコーティングシートについて、試験区分2と同様に評価した。























【0079】
【表9】

【0080】
試験区分5(PMMAシートへの帯電防止剤の塗布及びその評価)
・PMMAシートへの帯電防止剤の塗布
PMMAを、二軸押出機に投入し、230℃で溶融混練しつつ、Tダイ法により30℃の冷却ロール上にキャストして、厚さ1mmのシートを得た。次に、試験区分1で調製したビニル共重合体乳化物等(帯電防止剤)を水希釈して固形分5%の水性液となし、この固形分5%の水性液を、前記シートの表面1m当たり固形分として表10に記載の塗布量となるようキスコート法により3.5m/秒の塗布速度で塗布し、150℃の熱風で1分間乾燥して、コーティングシートを得た。これを試料8とした。別に、固形分5%の水性液のキスコート法による塗布速度を5m/秒としたこと以外は同様にしてコーティングシートを得た。これを試料9とした。これらの試料8及び9のコーティングシートについて以下の評価を行なった。結果を表10にまとめて示した。
【0081】
・高速塗布性の評価
試料8及び9のコーティングシートについて、試験区分2と同様に評価した。
【0082】
・帯電防止性の評価
試料8のコーティングシートについて、試験区分2と同様に評価した。
【0083】
・耐ブロッキング性の評価
試料8のコーティングシートについて、試験区分2と同様に評価した。
【0084】
・再利用性の評価
試料8のコーティングシートを粉砕し、押し出し機にて約230℃で溶融してチップ化した。このチップを用いて溶融製膜し、再生シートを作製した。別にブランクとして、水のみを塗布した同様のシートを用いて再生シートを作製した。双方の再生シートの着色度合いから再利用性を試験区分2と同様に評価した。
【0085】
・非転写性の評価
試料8のコーティングシートについて、試験区分2と同様に評価した。
【0086】
【表10】

【0087】
試験区分6(ポリ塩化ビニルシートへの帯電防止剤の塗布及びその評価)
・ポリ塩化ビニルシートへの帯電防止剤の塗布
ポリ塩化ビニル100部当たり、可塑剤としてフタル酸ジ−2−エチルヘキシル40部をミキサーに投入し、更に安定剤としてステアリン酸バリウム2部、ステアリン酸亜鉛1部を加えて混合した。その混合物を二軸押出し機に投入し、180℃で溶融混練しつつ、Tダイ法により30℃の冷却ロール上にキャストして、厚さ2mmのシートを得た。次に、試験区分1で調製したビニル共重合体乳化物等(帯電防止剤)を水希釈して固形分5%の水性液となし、この固形分5%の水性液を、前記シートの表面1m当たり固形分として表11に記載の塗布量となるようキスコート法により3.5m/秒の塗布速度で塗布し、100℃の熱風で1分間乾燥して、コーティングシートを得た。これを試料10とした。別に、固形分5%の水性液のキスコート法による塗布速度を5m/秒としたこと以外は同様にしてコーティングシートを得た。これを試料11とした。これらの試料10及び11のコーティングシートについて以下の評価を行なった。結果を表11にまとめて示した。
【0088】
・高速塗布性の評価
試料10及び11のコーティングシートについて、試験区分2と同様に評価した。
【0089】
・帯電防止性の評価
試料10のコーティングシートについて、試験区分2と同様に評価した。
【0090】
・耐ブロッキング性の評価
試料10のコーティングシートについて、試験区分2と同様に評価した。
【0091】
・再利用性の評価
試料10のコーティングシートを粉砕し、押し出し機にて約180℃で溶融してチップ化した。このチップを用いて溶融製膜し、再生シートを作製した。別にブランクとして、水のみを塗布した同様のシートを用いて再生シートを作製した。双方の再生シートの着色度合いから再利用性を試験区分2と同様に評価した。
【0092】
・非転写性の評価
試料10のコーティングシートについて、試験区分2と同様に評価した。



























【0093】
【表11】

【0094】
試験区分7(PPシートへの帯電防止剤の塗布及びその評価)
・PPシートへの帯電防止剤の塗布
ポリプロピレンを、二軸押出機に投入し、250℃で溶融混練しつつ、Tダイ法により30℃の冷却ロール上にキャストして、厚さ1mmのシートを作製し、このシートの片面にコロナ処理を施した。次に、試験区分1で調製したビニル共重合体乳化物等(帯電防止剤)を水希釈して固形分5%の水性液となし、この固形分5%の水性液を、前記シートのコロナ処理面1m当たり固形分として表12に記載の塗布量となるようキスコート法により3.5m/秒の塗布速度で塗布し、100℃の熱風で1分間乾燥して、コーティングシートを得た。これを試料12とした。別に、固形分5%の水性液のキスコート法による塗布速度を5m/秒としたこと以外は同様にしてコーティングシートを得た。これを試料13とした。これらの試料12及び13のコーティングシートについて以下の評価を行なった。結果を表12にまとめて示した。
【0095】
・高速塗布性の評価
試料12及び13のコーティングシートについて、試験区分2と同様に評価した。
【0096】
・帯電防止性の評価
試料12のコーティングシートについて、試験区分2と同様に評価した。
【0097】
・耐ブロッキング性の評価
試料12のコーティングシートについて、試験区分2と同様に評価した。
【0098】
・再利用性の評価
試料12のコーティングシートを粉砕し、押し出し機にて約230℃で溶融してチップ化した。このチップを用いて溶融製膜し、再生シートを作製した。別にブランクとして、水のみを塗布した同様のシートを用いて再生シートを作製した。双方の再生シートの着色度合いから再利用性を試験区分2と同様に評価した。
【0099】
・非転写性の評価
試料12のコーティングシートについて、試験区分2と同様に評価した。
【0100】
【表12】

【0101】
試験区分8(ポリエチレンテレフタレート成形体への帯電防止剤の塗布及びその評価)
・ポリエチレンテレフタレート成形体への帯電防止剤の塗布
ポリエチレンテレフタレートを、290〜300℃で射出成形し、縦15cm×横2cm×厚さ4mmの成形体を得た。次に、試験区分1で調製したビニル共重合体乳化物等(帯電防止剤)を水希釈して固形分3%の水性液となし、この固形分3%の水性液をスプレー噴霧している雰囲気中に前記の成形体を4.0m/分の速度で通過させ、成形体の表面1m当たり固形分として表13に記載の塗布量となるように塗布した後、150℃の熱風で1分間乾燥して、コーティング成形体を得た。このコーティング成形体について以下の評価を行なった。結果を表13にまとめて示した。
【0102】
・高速塗布性の評価
前記のコーティング成形体の表面を肉眼で観察し、下記の基準で評価した。
評価基準
◎:塗布抜けがなく、均一な塗布膜である
○:塗布抜けが極めて僅にあるが、ほぼ均一な塗布膜である
△:塗布抜けが幾分あるが、全体としてはほぼ均一な塗布膜である
×:塗布抜けが多く、不均一な塗布膜である
【0103】
・帯電防止性の評価
前記のコーティング成形体を、20℃で相対湿度50%の条件下に24時間調湿した後、同条件で表面比抵抗(Ω)を表面抵抗値測定装置(シシド電気社製の商品名メガレスタHT−301)を用いて測定し、試験区分2と同様に評価した。
【0104】
・非タック性の評価
前記のコーティング成形体の非タック性を下記の基準で評価した。
評価基準
◎:ベタツキがなく、良好な表面を有している
○:僅かにベタツキがあるものの、使用可能レベル
△:若干のベタツキがあり、使用には制約がある
×:明らかなベタツキがあり、使用できない
【0105】
・再利用性の評価
前記のコーティング成形体を粉砕し、押し出し機にて約300℃で溶融してチップ化した。このチップを用いて溶融製膜し、再生シートを作製した。別にブランクとして、水のみを塗布した同様の成形体を用いて再生シートを作製した。双方の再生シートの着色度合いから再利用性を試験区分2と同様に評価した。
【0106】
・非転写性の評価
前記のコーティング成形体と未処理の成形体とをコーティング面で重ね、荷重1kg/mを均等にかけて、20℃で相対湿度30%の条件下に60時間調湿した後、双方を引き離し、同条件でコーティング成形体のコーティング面の表面比抵抗(Ω)を表面抵抗値測定装置(シシド電気社製の商品名メガレスタHT−301)を用いて測定し、試験区分2と同様に評価した。














【0107】
【表13】

【0108】
試験区分9(ポリカーボネート成形体への帯電防止剤の塗布及びその評価)
・ポリカーボネート成形体への帯電防止剤の塗布
ポリカーボネートを、290〜300℃で射出成形し、縦15cm×横2cm×厚さ4mmの成形体を得た。次に、試験区分1で調製したビニル共重合体乳化物等(帯電防止剤)を水希釈して固形分3%の水性液となし、この固形分3%の水性液をスプレー噴霧している雰囲気中に前記の成形体を4.0m/分の速度で通過させ、成形体の表面1m当たり固形分として表14に記載の塗布量となるように塗布した後、150℃の熱風で1分間乾燥して、コーティング成形体を得た。このコーティング成形体について以下の評価を行なった。結果を表14にまとめて示した。
【0109】
・高速塗布性の評価
前記のコーティング成形体について、成形体の表面を肉眼で観察し、試験区分8と同様に評価した。
【0110】
・帯電防止性の評価
前記のコーティング成形体について、試験区分8と同様に評価した。
【0111】
・非タック性の評価
前記のコーティング成形体について、試験区分8と同様に評価した。
【0112】
・再利用性の評価
前記のコーティング成形体を粉砕し、押し出し機にて約280℃で溶融してチップ化した。このチップを用いて溶融製膜し、再生シートを作製した。別にブランクとして、水のみを塗布した同様の成形体を用いて再生シートを作製した。双方の再生シートの着色度合いから再利用性を試験区分2と同様に評価した。
【0113】
・非転写性の評価
前記のコーティング成形体について、試験区分8と同様に評価した。
【0114】
【表14】

【0115】
試験区分10(ABS成形体への帯電防止剤の塗布及びその評価)
・ABS成形体への帯電防止剤の塗布
ABSを、約220℃で射出成形し、縦15cm×横2cm×厚さ4mmの成形体を得た。次に、試験区分1で調製したビニル共重合体乳化物等(帯電防止剤)を水希釈して固形分3%の水性液となし、この固形分3%の水性液をスプレー噴霧している雰囲気中に前記の成形体を4.0m/分の速度で通過させ、成形体の表面1m当たり固形分として表15に記載の塗布量となるように塗布した後、100℃の熱風で1分間乾燥して、コーティング成形体を得た。このコーティング成形体について以下の評価を行なった。結果を表15にまとめて示した。
【0116】
・高速塗布性の評価
前記のコーティング成形体について、試験区分8と同様に評価した。
【0117】
・帯電防止性の評価
前記のコーティング成形体について、試験区分8と同様に評価した。
【0118】
・非タック性の評価
前記のコーティング成形体について、試験区分8と同様に評価した。
【0119】
・再利用性の評価
前記コーティング成形体を粉砕し、押し出し機にて約230℃で溶融してチップ化した。このチップを用いて溶融製膜し、再生シートを作製した。別にブランクとして、水のみを塗布した同様の成形体を用いて再生シートを作製した。双方の再生シートの着色度合いから再利用性を試験区分2と同様に評価した。
【0120】
・非転写性の評価
前記のコーティング成形体について、試験区分8と同様に評価した。
【0121】
【表15】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の第1工程及び第2工程を経て得られるビニル共重合体乳化物から成ることを特徴とする熱可塑性高分子用帯電防止剤。
第1工程:下記のビニル単量体混合物、非イオン界面活性剤及び水性溶媒を用いて、ビニル単量体混合液を得る工程
第2工程:第1工程で得られたビニル単量体混合液にラジカル重合開始剤を加え、ラジカル重合反応させて、ビニル共重合体乳化物を得る工程
ビニル単量体混合物:下記のビニル単量体混合物M又は下記のビニル単量体混合物N
ビニル単量体混合物M:下記の化1で示されるビニル単量体を10〜90モル%及び下記の接着性単量体を10〜90モル%含有し且つこれらを合計で100モル%となるよう含有して成る混合物
ビニル単量体混合物N:下記の化1で示されるビニル単量体を10〜80モル%、下記の接着性単量体を19.9〜89.9モル%及び下記の架橋性単量体を0.1〜20モル%含有し且つこれらを合計で100モル%となるよう含有して成る混合物
接着性単量体:炭素数1〜4の脂肪族アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル、炭素数1〜4のアルキル基で置換されたN−アルキル(メタ)アクリルアミド、炭素数1〜4のアルキル基で置換されたN,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド及び炭素数4若しくは5の不飽和二塩基酸と炭素数2〜8のグリコールとの(ジ)エステルから選ばれる一つ又は二つ以上
架橋性単量体:下記の化2で示される架橋性単量体、下記の化3で示される架橋性単量体及び下記の化4で示される架橋性単量体から選ばれる一つ又は二つ以上
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

{化1〜化4において、
,R,R,R,R:水素原子又はメチル基
,R,R:水素原子、メチル基、エチル基又はアルキル基の炭素数2若しくは3のヒドロキシアルキル基(但し、R〜Rのうちで少なくとも二つはメチル基、エチル基又はアルキル基の炭素数2若しくは3のヒドロキシアルキル基)
:水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基
A:オキシ基又はアミノ基
B:炭素数2〜6のアルキレン基
:硝酸イオン基、アルキル基の炭素数1〜4のアルキルスルホン酸イオン基、アルキル基の炭素数1〜4のアルキル硫酸イオン基又は塩化物イオン基
:水素原子、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基、エポキシ基を有する炭素数3〜10の有機基又は分子中に合計2〜20個のオキシエチレン単位及び/又はオキシプロピレン単位で構成されたポリオキシアルキレン基を有するポリオキシアルキレンジオールから一つの水酸基を除いた残基
:水素原子、エポキシ基を有する炭素数3〜10の有機基又は分子中に合計2〜20個のオキシエチレン単位及び/又はオキシプロピレン単位で構成されたポリオキシアルキレン基を有するポリオキシアルキレンジオールから一つの水酸基を除いた残基}
【請求項2】
ビニル共重合体乳化物が、固形分10質量%のものについて30℃における粘度が0.1〜10mm/sであるものである請求項1記載の熱可塑性高分子用帯電防止剤。
【請求項3】
第1工程で用いる非イオン界面活性剤が、分子中にポリオキシアルキレン基を有する化合物から成るものである請求項1又は2記載の熱可塑性高分子用帯電防止剤。
【請求項4】
化1で示されるビニル単量体が、化1中のXがメチルスルホン酸イオン基、メチル硫酸イオン基又はエチル硫酸イオン基である場合のものである請求項1〜3のいずれか一つの項記載の熱可塑性高分子用帯電防止剤。
【請求項5】
化1で示されるビニル単量体が、化1中のBがエチレン基又はトリメチレン基である場合のものである請求項1〜4のいずれか一つの項記載の熱可塑性高分子用帯電防止剤。
【請求項6】
接着性単量体が、炭素数1〜4の脂肪族アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル、炭素数1〜4のアルキル基で置換されたN−アルキル(メタ)アクリルアミド及び炭素数1〜4のアルキル基で置換されたN,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミドから選ばれる一つ又は二つ以上である請求項1〜5のいずれか一つの項記載の熱可塑性高分子用帯電防止剤。
【請求項7】
架橋性単量体が、化2で示される架橋性単量体である請求項1〜6のいずれか一つの項記載の熱可塑性高分子用帯電防止剤。
【請求項8】
ビニル単量体混合物Mが、化1で示されるビニル単量体を15〜70モル%及び接着性単量体を30〜85モル%含有し且つこれらを合計で100モル%となるよう含有して成る混合物である請求項1〜7のいずれか一つの項記載の熱可塑性高分子用帯電防止剤。
【請求項9】
ビニル単量体混合物Nが、化1で示される単量体を15〜74モル%、接着性単量体を25〜84モル%及び架橋性単量体を1〜15モル%含有し且つこれらを合計で100モル%となるよう含有して成る混合物である請求項1〜7のいずれか一つの項記載の熱可塑性高分子用帯電防止剤。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一つの項記載の熱可塑性高分子用帯電防止剤を、熱可塑性高分子材料を用いて製造される熱可塑性高分子成形体の表面1m当たり固形分として0.01〜3gの割合となるよう付着させることを特徴とする熱可塑性高分子成形体の帯電防止方法。
【請求項11】
熱可塑性高分子材料が、ポリエステル系高分子材料、ポリカーボネート系高分子材料、ポリスチレン系高分子材料、ポリアクリル系高分子材料、ポリビニル系高分子材料及びポリオレフィン系高分子材料から選ばれる一つ又は二つ以上である請求項10記載の熱可塑性高分子成形体の帯電防止方法。
【請求項12】
熱可塑性高分子成形体が熱可塑性高分子フィルム又は熱可塑性高分子シートである請求項10又は11記載の熱可塑性高分子成形体の帯電防止方法。
【請求項13】
請求項1〜9のいずれか一つの項記載の熱可塑性高分子用帯電防止剤が、熱可塑性高分子材料を用いて製造された熱可塑性高分子成形体の表面1m当たり固形分として0.01〜3gの割合で付着されて成ることを特徴とする帯電防止性熱可塑性高分子成形体。
【請求項14】
熱可塑性高分子材料が、ポリエステル系高分子材料、ポリカーボネート系高分子材料、ポリスチレン系高分子材料、ポリアクリル系高分子材料、ポリビニル系高分子材料及びポリオレフィン系高分子材料から選ばれる一つ又は二つ以上である請求項13記載の帯電防止性熱可塑性高分子成形体。
【請求項15】
熱可塑性高分子成形体が熱可塑性高分子フィルム又は熱可塑性高分子シートである請求項13又は14記載の帯電防止性熱可塑性高分子成形体。

【公開番号】特開2008−45085(P2008−45085A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−224045(P2006−224045)
【出願日】平成18年8月21日(2006.8.21)
【出願人】(000210654)竹本油脂株式会社 (138)
【Fターム(参考)】