説明

熱圧着転写プロセス用被スタンパー部材及びその微細構造転写の機能性樹脂成形体

【課題】熱可塑性樹脂からなる被スタンパー部材中に分散する高架橋有機ポリマー超微細粒子のレオロジー特性が活かされ、優れたインプリント性、転写性を発揮させる熱圧着転写プロセス用被スタンパー部材及び各種の光学素子部材として有用な微細構造転写の機能性樹脂成形体を提供する。
【解決手段】熱ナノインプリント時に形成される厚さ50nm〜500μmに及ぶ被スタンパー部材の樹脂相の熱可塑性樹脂(A)100質量部当たり、一次分散性を表す再分散分布指数(RDN)値=CV(II)/CV(I)=1〜3.0で、且つ熱ナノインプリント下にある被スタンパー部材の熱可塑性樹脂(A)中に不溶融状態にある体積基準で表す平均粒子径が5〜80nmの高架橋有機ポリマー超微細粒子(B)が0.5〜15質量部の範囲で含有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱圧着転写プロセス用被スタンパー部材に関し、より詳細には、被スタンパー部材の熱可塑性樹脂中に分散する超微細有機ポリマー粒子のレオロジー特性が活かされて、スタンパー材に対して優れるインプリント性及び転写性を発揮させて熱ナノインプリント成形や、射出圧縮成形等の熱圧着転写プロセス下に微細構造を転写させる熱圧着転写プロセス用被スタンパー部材に関する。
【0002】
また、本発明は、このような特徴を有する熱可塑性樹脂からなる被スタンパー部材に、各種パターンの微細構造を転写させてなる各種の産業分野に機能性部材として有用使される機能性樹脂成形体に関する。
【0003】
また、本発明は、このような特徴を有する被スタンパー部材が光透明性に優れる熱可塑性樹脂であって、熱ナノインプリント下に各種パターンの微細構造が転写され、各種の光学素子として有用使される微細構造転写の機能性透明樹脂成形体にも関する。
【背景技術】
【0004】
近年、オプトエレクトロデバイス、光学デバイス、半導体デバイス、デイスプレイデバイス、光記録媒体等に係わって、その性能を一層向上させる又はそのデバイスを新規用途に展開させるべく、そのデバイス部材表面に施されるサブミクロンオーダーの微細構造の各種パターンに係わっては、一層、微細化及び/又は緻密化傾向にある。
【0005】
そのような技術領域にある各種の先端材料として、例えば、超微細構造を設ける半導体デバイスや、半導体レーザ、発光ダイオード、受光素子、光コネクタ、光スイッチ、回折格子光フィルター、波長光変換素子、光導波路型波長フィルター、携帯パソコン用光配線としての光導波路、波長分離多重通信方式の増幅器に用いられる利得等価フィルターなどの光学デバイスや光電子デバイス(又は非線形光電子素子)等を挙げることができる。
【0006】
また、音楽や映像の記録媒体として広く活用されているCD、DVD等の光ディスク用ピックアップレンズにおいても、次世代記録メデイア媒体であるディスクに刻まれるサブミクロンオーダーのビット情報をレーザ光で読み取る光ピックアップ光学系の重要な役割を果たす構造部材として、プラスチック非球面対物レンズなども同様の技術領域にある先端材料と言える。
【0007】
また、CD、DVD等の光記録メデイア媒体も、その表面に微細構造を転写させた光透明性樹脂成形体であって、従来から可視光線領域(420〜750μm)における光透過率が、少なくとも90%以上である光透明性に優れるPMMA、PC及びPSポリマー樹脂等が用いられている。また、このようなCD、DVDも、一層、高密度記録媒体として高情報密度が求められ、その情報信号を読み取る光ピックアップレンズも相応して、よりピックアップ精度を高める光メディヤ媒体の熱可塑性樹脂として、昨今、PMMA樹脂から環状ポリオレフィン樹脂への転換も検討されている。
【0008】
そこで、このような各種のデバイス部材表面にサブミクロンオーダー乃至はナノオーダーの微細構造を形成させるには、LSI等の超高密回路集積を施す半導体デバイスの製造技術として開発されてきたホトリソグラフィー微細化技術が、その基盤技術として多大な貢献を果たしている。しかしながら、昨今に至っては、上記する如く、そのデバイス部材の表面に施す凹凸状微細構造のライン&スペース、ドット、ホールなどの各種パターンも、より微細化領域に、より高度に形成させることが求められている。
【0009】
そこで、このような微細な先端技術領域に対処すべく、昨今は、基盤技術としてのリソグラフィ転写に代替させて熱ナノインプリント法転写が期待されている。すなわち、金型に装着されている各種の超微細構造が施されているスタンパー材(又はモールド)に、熱溶融下に被スタンパー部材である熱可塑性樹脂を高速射出させる又は押圧又は押印させて、被スタンパー部材表面に、各種の超微細構造のパターンを転写させるものである。
【0010】
また、このナノインプリント転写は、従来から、光ディスク製作等では良く知られていたホトエンボス転写技術を発展させて、特に重要である転写解像度を格段に高められる転写技術であるとも言われている。すなわち、従来からのホットエンボスプロセスでは、例えば、ポリカーボン基板をそのガラス転移点より高い温度加熱下に、ニッケルモールドでプレスして、基板に0.5μm程度のパターンを転写させることができる。一方、導入されたナノインプリントでは、モールドの凹凸さえ小さくすれば、その解像度は、100nm以下、特に数10nm以下の超微細パターン転写をも可能にさせる。よって、ナノインプリント技術の導入は、転写解像度を格段に飛躍させる次世代転写技術として期待されている。
【0011】
また、このように期待されるナノインプリント転写技術の技術分野にあって、微細パターンを転写させるスタンパー材(又は金型)に係わって、そのスタンパー材自体の離型性、転写性も重要な技術要因になる。このようなスタンパー材の現状は、SiC、石英、GaAs及びSi(半導体)、Ta(DVD、CD用ピックアップレンズの微小プラスチック光学部品の加工用金型や、また、携帯電話、PDAなどのデイスプレイデバイス用反射防止体用の金型等においては、各種基板材料に0.1μm以下の微細パターンを施されてなるナノイン用極微細モールド(微細金型)等が使用されている。
【0012】
一方、ナノインプリント下に、スタンパー材に施した各種パターンの微細構造が転写される被スタンパー部材にあって、例えば[特許文献1]には、被スタンパー材に使用する各種の有機ポリマー部材及びこのような有機ポリマー部材に微細構造パターンを転写させた樹脂成型体が記載されている。その記載例として、従来、石英ガラスで構成されていた光導波路型WDM合波器に対して、フッ素化ポリイミド、ポリシラン、ポリメチルメタアクリレート、ポリカーボネート等の有機ポリマーを被スタンパー部材とする光導波路に、ホットエンボス法で、複数の波長の光を分波又は合波させる分岐部に、微細加工を施すグレーティング部を形成させてなる光導波路型WDM合波器が提案されている。
【0013】
また、[特許文献2]には、熱可塑性樹脂からなる厚さ1〜5mmの素材板(すなわち、被スタンパー部材)に、熱間プレスさせて素材板の転写面に、深さが0.5〜500μmの多数の溝を配列させる凹凸微細構造で、その溝の配列ピッピが、その溝深さの1.5倍以上である微細構造パターンを転写させる樹脂板が提案されている。その微細構造を転写させるプレス方法として、150〜180℃、プレス圧40〜60Kg/cm2の熱プレス方法が記載されている。また、このように熱プレス法で微細構造が転写された樹脂板は、例えば、フレネルレンズ、背面投射用レンチュキュラーレンズとしての微細構造転写の樹脂板であるとして、光透過性が良好で、光拡散材の配合が容易である例えば、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート−スチレン、ポリカーボネート、ポリスチレン等の光透明性熱可塑性樹脂が記載されている。
【0014】
また、[特許文献3]には、熱ナノインプリント下に微細構造パターンを転写させる被スタンパー部材として、主材熱可塑性樹脂マトリックスであるポリメチルメタクリレート(PMMA)に、粒径10nmのAu超微細粒子を分散させた被スタンパー部材が提案されている。
【0015】
【特許文献1】特開2005−331582号公報
【特許文献2】特開2001−353777号公報
【特許文献3】特開2004−314238号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
以上のような状況下にあって、近年、無機・有機の工業部材に求められる技術課題は、益々高機能化、多機能化の方向にあって、その技術的課題を達成させる技術動向も「ナノマテリアル」を用いて益々微細・薄膜・高性能化を可能にさせる「ナノテク」技術分野として注目・期待されている。既に上述した如くのCD、DVDなどの光記録媒体や、発光ダイオード、受光素子、光コネクタ、光スイッチ、回折格子光フィルター、波長光変換素子、光導波路型波長フィルター等の光学素子及び光電子素子は、正しくこのような技術課題を達成させてなる機能性構造部材であって、その表面にはドット、ライン及びスペース等の各種パターンの超微細構造を設けて、各種の機能を発揮させる有用なナノテク構造部材として広く利用されている。
【0017】
すなわち、このように有用なナノテク機能性構造部材に施される溝、ドット、ランイン及びスペースからなる各種パターンの微細構造のサイズは、その構造部材が発揮させる機能、すなわち、用途にもよるが、通常、数100nm以下であって、特に10nm〜数10nmのナノサイズ領域をターゲットにしている。従って、熱ナノインプリント法下に用いる被スタンパー部材に求められる技術的課題は、このような超微細サイズ領域を、転写偏在や転写欠陥を発生させることなく、しかも、効果的に精度よく転写できる被スタンパー部材であることが重要である。
【0018】
従って、本発明が提供すべきナノインプリント転写技術に用いる被スタンパー部材とは、益々薄膜化する機能性構造部材表面に転写される各種パターンの微細構造によって、例えば、光学的及び/又は非線形の光電子的な機能特性等を発揮させる熱可塑性有機ポリマー部材である。
【0019】
以上から、本発明の目的は、熱ナノインプリント成形や、射出圧縮成形等の熱転写プロセスにおける熱ナノインプリント下に、各種パターンの微細構造を転写させるに際して、優れたインプリント性及びその転写面に転写偏在や転写欠陥等の発生を皆無にさせて優れた転写性を発揮させ、しかも、極めて効果的にこのような熱転写プロセスに対処できることを特徴とする熱可塑性樹脂からなる被スタンパー部材を提供することである。
【0020】
また、本発明の他の目的は、このような特徴を発揮する熱可塑性樹脂からなる被スタンパー部材に、転写される各種パターンの微細構造を介して、各種の機能特性を発揮させることを特徴とする微細構造転写されてなる機能性樹脂成形体を提供することである。
【0021】
また、本発明の更なる目的は、このような特徴を発揮させる熱可塑性樹脂からなる被スタンパー部材のうちで、特に光透明性に優れる被スタンパー部材に転写させた各種パターンの微細構造を介して各種の光学特性を発揮させて、各種の光学素子として有用使されることを特徴とする微細構造転写されてなる機能性透明樹脂成形体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
そこで、本発明者は、上記課題を鋭意検討した結果、熱ナノインプリント成形や、射出圧縮成形等の熱圧着転写プロセスにおいて、スタンパー材に施されている各種パターンの微細構造を、被スタンパー部材である熱可塑性樹脂相に転写させるに際して、スタンパー材に対して優れるインプリント性と転写性を発揮させるために、本発明者の従来からの知見を反映させるべく、被スタンパー部材に必要とする下記(1)〜(5)に記載する技術的課題に特に着目した。
(1)被スタンパー部材が、熱圧着転写プロセス下に十分に熱流延性を発揮させ、しかも、熱ナノインプリント後に、被スタンパー部材が、スタンパー材に施されている微細な凹凸状パターンからスムーズに離型又は剥離されて、微細構造のパターンが明確に、しかも、精度よく安定に形成させる等の本発明に定義するインプリント性を発揮させる。
(2)そのために、被スタンパー部材の主材となる熱可塑性樹脂成分が、スタンパー材に対する熱融着性をより減少させる観点から、少なくともその主材樹脂成分をより高分子量体の樹脂成分にすることに期待した。
(3)また、その被スタンパー部材が、熱ナノインプリント時に十分に熱流延性を発揮させて、スタンパー材の微細パターンに係わって、被スタンパー部材樹脂相の2次元方向又は3次元方向に、転写偏在や転写欠陥を発生させない等の本発明に定義する転写性を発揮させる。
(4)そのために、(2)の課題に係わって、全く低分子量体の樹脂成分を含有させずに、熱ナノプリント下に流延性を低下させない観点から、例えば、熱溶融状態にある油性系樹脂流延媒体中に分散する超微細粒の有機ポリマー粒子を含有させて、恰も低分子量体の樹脂成分によって発揮されるレオロジー挙動に期待した。
(5)すなはち、その超微細粒子に係わるレオロジー特性として、熱ナノインプロント時に熱流延下にある被スタンパー部材中を、自在に流動して被スタンパー部材の熱流延性が高められることに期待するものである。
【0023】
その結果、これらの知見が活かされて熱ナノインプリント下に熱圧着されているスタンパー材から被スタンパー部材が、スムーズに離型され、更には、超微細粒子を分散状態にさせたことによって、特に、従来から被スタンパー部材の転写面に発生がちであった2次元方向への転写偏在や、また、特に3次元方向への転写欠陥等を発生させ難くさせることを見出して、本発明を完成させるに至った。
【0024】
<本発明が提供する熱圧着転写プロセス用被スタンパー部材>
以上から、本発明によれば、熱ナノインプリント成形や、射出圧縮成形等の熱圧着転写プロセスにおける熱ナノインプリント下に、被スタンパー部材の主材熱可塑性樹脂中に分散する高架橋有機ポリマーの超微細粒子が、恰も低分子量体樹脂の代替成分となって挙動するレオロジー特性によって、優れるインプリント性を発揮させ、且つその被スタンパー部材樹脂面の2次元方向及び3次元方向にそれぞれ転写偏在や転写欠陥発生を皆無にさせ、優れた転写性を発揮させることを特徴とする熱圧着転写プロセス用被スタンパー部材を提供する。
【0025】
すなわち、本発明が提供する熱可塑性樹脂からなる熱圧着転写プロセス用被スタンパー部材は、(1)GPC法による重量平均分子量(Mw)が60〜180万以上で、分子量分布係数の(Mw/Mn)=1.1〜5の範囲にある熱可塑性樹脂(A)の100質量部当たり、(2)熱可塑性樹脂(A)中に分散し且つ熱ナノインプリント下にある熱可塑性樹脂(A)中に不溶融状態にある高架橋有機ポリマー超微細粒子(B)[以後、単に高架橋超微細粒子(B)とも記す。]が0.5〜15質量部の範囲で含有し、
(3)熱ナノインプリント時にスタンパー材面に形成される厚さ50nm〜500μmの広範囲に及ぶ被スタンパー部材樹脂相である。
【0026】
また、上記する本発明に用いる高架橋超微細粒子(B)は、再分散性に優れる超微細粒子であって、本発明においては、被スタンパー部材の主材熱可塑性樹脂(A)に配合させるに際しては、熱溶融状態下にある主材熱可塑性樹脂(A)の流延性樹脂媒体中に、通常の混練状態下に混合させて再分散(=配合)させる。又は、この高架橋超微細粒子(B)を可溶化させない有機溶剤に溶解させた主材熱可塑性樹脂(A)の流延性樹脂媒体中に、通常の攪拌混合下に混合させて再分散(=配合)させる如く、格別の分散化処理を要さずに用いられることが特徴である。
【0027】
<本発明が提供する微細構造転写の機能性樹脂成形体>
また、熱ナノインプリント下にスタンパー材面に形成される本発明による被スタンパー部材樹脂相に、各種パターンの微細構造を施されたスタンパー材を熱圧着させると、熱ナノインプリント下に熱流延状態にある被スタンパー部材の主材熱可塑性樹脂成分中に、分散し且つ不溶融状態にあるこの高架橋超微細粒子(B)は、低分子量体樹脂の代替成分として発揮されるレオロジー特性が活かされて、既に上記に詳細に説明する如くの特徴ある「インプリント性」及び「転写性」を発揮させてなる微細構造を転写された厚さ50nm〜500μmの如くの広範囲に及ぶ薄膜構造部材である微細構造転写の機能性樹脂成形体が得られる。
【0028】
すなわち、本発明によれば、このように厚さが広範囲に及ぶ被スタンパー部材に対しても、熱ナノインプリント下に各種の微細構造パターンを、既に上記に詳細に説明する如くの特徴ある「インプリント性」及び「転写性」を発揮させながら、特に、従来にあっては、被スタンパー部材樹脂相面に発生しがちであった2次元方向へのパターンの転写偏在や、その3次元方向への転写欠陥等を発生させることなく、スタンパー材に施されている微細構造パターンが、高精度で転写されていることを特徴とする微細構造転写の機能性樹脂成形体を提供する。
【0029】
<本発明が提供する微細構造転写の機能性透明樹脂成形体>
更には、このような高架橋超微細樹脂粒子(B)を含有する被スタンパー部材を用いてなる上記する微細構造転写の機能性樹脂成形体の中でも、特に光透明性に優れる被スタンパー部材(又は可視光線透過率が、少なくとも85%以上である。)も、同様に熱ナノインプリント下に既に上記に詳細に説明する如くの特徴ある「インプリント性」及び「転写性」を発揮させることができる。しかも、熱ナノインプリント時に微細構造が転写されてなる厚さ50nm〜500μm如くの広範囲に及ぶ薄膜構造部材として、微細構造転写された機能性透明樹脂成形体が得られる。
【0030】
すなわち、本発明によれば、このような光透明性に優れている被スタンパー部材を用いてなる微細構造転写の熱可塑性透明樹脂成形体は、光学特性を発揮させて、各種の光学素子として有用であることを特徴とする微細構造転写の機能性透明樹脂成形体を提供する。
【発明の効果】
【0031】
以上から、本発明が提供する熱圧着転写プロセス用被スタンパー部材は、その主材の熱可塑性樹脂成分である重量平均分子量(Mw)が60万以上で、分子量分布係数の(Mw/Mn)=1.1〜5の範囲にある高分子量体の熱可塑性樹脂(A)中に、すなわち、熱ナノインプリント下に熱溶融状態にある被スタンパー部材中に不溶融であって、その平均粒子径で表して、少なくとも80nm以下にある高架橋超微細樹脂粒子(B)が、分散状態で含有されていることを特徴にしている。
【0032】
従って、この被スタンパー部材の主材高分子量体熱可塑性樹脂(A)中に、(1)分散状態にある高架橋超微細樹脂粒子(B)は、(2)熱ナノインプリント下に熱流延状態にある被スタンパー部材の主材熱可塑性樹脂(A)中に不溶融状態で分散含有している。
【0033】
これによって、本発明による被スタンパー部材には、従来から、このような熱転写プロセスにおける熱融着性に係わって剥離性(又は離型性)を阻害させる低分子量体樹脂成分を含まないことから、良好な「インプリント性」を発揮させる被スタンパー部材を提供することができる。
【0034】
また、被スタンパー部材の主材樹脂成分である高分子量体熱可塑性樹脂成分(A)中には、同時に分散状態にある超微細粒子(B)を含有している。これによって、熱ナノインプリント時、スタンパー材面に熱圧着転写されている熱流延状態にある主材高分子量体熱可塑性樹脂成分(A)中に、この超微細粒子(B)が自在に流延して熱レオロジー挙動を発揮されて、熱可塑性樹脂成分(A)自体の流延性を向上させて、転写偏在や転写欠陥を生じさせることなく優れる「転写性」を発揮させる被スタンパー部材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下に、本発明による熱圧着転写プロセス用被スタンパー部材及びその部材に熱ナノインプリント時に微細構造が転写された熱可塑性樹脂成形体を、実施させる最良の形態について詳細に説明する。
【0036】
上記する如く、本発明による熱圧着転写プロセス用被スタンパー部材は、被スタンパー部材の主材熱可塑性樹脂中に、再分散性に優れる超微細粒子であって、本発明においては、
(1)この超微細樹脂粒子を、被スタンパー部材の主材熱可塑性樹脂(A)に配合させるに際しては、熱溶融状態下にある主材熱可塑性樹脂(A)の流延性樹脂媒体中に、通常の混練状態下に混合させて再分散(=配合)させる。
(2)または、この高架橋超微細樹脂粒子(B)を可溶化させない有機溶剤に溶解させた主材熱可塑性樹脂(A)の流延性樹脂媒体中に、通常の攪拌混合下に混合させて再分散(=配合)させる如く、格別の分散化処理を要せずに用いられることが特徴である。
(3)熱ナノインプリント成形や、射出圧縮成形等の熱圧着転写プロセスにおける熱ナノインプリント下に、被スタンパー部材の主材熱可塑性樹脂中に分散する高架橋有機ポリマーの超微細粒子が、恰も低分子量体樹脂の代替成分となって挙動するレオロジー特性を発揮させて、優れる「インプリント性」を発揮させ、且つその被スタンパー部材樹脂面の2次元方向及び3次元方向にそれぞれ転写偏在や転写欠陥発生を皆無にさせ、優れる「転写性」を発揮させることを特徴とする。
【0037】
そこで、本発明においては、このような特徴を発揮させる高架橋超微細粒子(B)は、被スタンパー部材中に分散している高架橋超微細粒子(B)であって、本出願人が既に特願2005−250250号として出願済みの再分散性に優れる有機ポリマー微細粒子の調製法によって、適宜調製することができる高架橋された超微細有機樹脂粒子を適宜好適に用いられる。
【0038】
このように本発明に用いる高架橋超微細樹脂粒子(B)は、再分散性に優れる超微細粒子であって、本発明においては、被スタンパー部材の主材熱可塑性樹脂(A)に配合させるに際しては、熱溶融状態下にある主材熱可塑性樹脂(A)の流延性樹脂媒体中に、通常の混練状態下に混合させて再分散(=配合)させる。又は、この高架橋超微細樹脂粒子(B)を可溶化させない有機溶剤に溶解させた主材熱可塑性樹脂(A)の流延性樹脂媒体中に、通常の攪拌混合下に混合させて再分散(=配合)させる如く、格別の分散化処理を要さずに分散配合させられることが特徴である。
【0039】
すなわち、このように極めて簡便な配合法によって、分散配合させて用いられる高架橋超微細樹脂粒子(B)とは、油性系分散媒体(又は熱溶融状態の流延性樹脂媒体)への再分散時に、下記(1−a)及び(2−b)に示す如く、分散化特性を発揮させる高架橋樹脂の有機ポリマー超微細粒子であることを特徴にしている。
(1−a);その再分散性とは、下記関係式(1)に定義する再分散分布指数(RDN)で表して、(RDN)値=1〜2.0の範囲にある。
(RDN)=CV(II)/CV(I) ・・・(1)
「式中、CV(II)は、水性エマルジョン型の有機ナノ粒子分散体を乾燥させた後、油性系分散溶媒中での緩い振揺後における粒度分布のCV値を表し、CV(I)は、水性エマルジョン型の有機ナノ粒子分散体中における有機ナノ分散粒子の粒度分布のCV値を表す。」
(2−b);また、その一次分散性は、下記関係式(2)に定義する再分散平均粒子径指数(RAv)で表して、(RAv)=1〜3の範囲にある。
(RAv)=Av(II)/Av(I) ・・・(2)
「式中、Av(II)は、水性エマルジョン型の有機ナノ粒子分散体を乾燥させた後、油性系分散媒体中での緩い振揺後における平均粒子径値を表し、Av(I)は、水性エマルジョン型の有機ナノ粒子分散体中における有機ナノ分散粒子の平均粒子径値を表す。」
【0040】
よって、これら(RDN)及び(RAv)数値から明らかなように、油性系分散媒体、すなわち、本発明における熱溶融状態にある被スタンパー部材の流延性樹脂媒体中に、有機ポリマーの高架橋超微細粒子(B)が、極めて優れた再分散状態で分散配合されることを示している。
【0041】
その結果、このような特徴を有する高架橋超微細粒子(B)は、本発明による被スタンパー部材の主材熱可塑性樹脂(A)の高分子量体樹脂中で、すなわち、熱ナノインプリント下に、流延状態にあるこの主材熱可塑性樹脂(A)の高分子量体樹脂中に不溶融状態で分散している。よって、熱ナノインプリントの熱圧着下に主材熱可塑性樹脂(A)の高分子量体樹脂中を分散粒子の如く自在に流動して、主材熱可塑性樹脂(A)の流延性を向上させる(又はレオロジー特性を発揮さる)ものと理解される。
【0042】
その特徴は、この調製法に準拠させて、有機ポリマー微細粒子の水性エマルジョン型水性分散体として調製される。この水性分散体である超微細粒有機ポリマー粒子は、以下の(A−1)〜(F−6)に記載する如くの特徴を発揮させる有機ポリマー超微細粒子として、本発明に用いることができる。
【0043】
(A−1):すなはち、本発明に用いる熱可塑性樹脂の高架橋超微細粒子(B)は、熱溶融状態にある被スタンパー部材中でのレオロジー挙動を効果的に活かす観点から、体積基準で表す平均粒子径として、好ましくは80nm以下にあって、特に好ましくは5〜40nmの範囲にあって、40nm以下の範囲にある強架橋された有機ポリマーの超微細粒であって、しかも、その前駆体である水性エマルジョン型水性分散体中には、一次分散状態で含有されている。
【0044】
(B−2):また、既に説明する如く、特定する親油性乳化剤を介在させる有機粒子の水性分散体を乾燥・脱水・洗浄させてなる乾燥物凝集体が、油性系分散媒体への再分散時に発揮させる分散性として、下記関係式(1)に定義する再分散分布指数(RDN)で表して、その(RDN)値=1〜3の範囲にある如く、油性系分散媒体に、著しく優れた再分散性を発揮させる乾燥物有機粒子凝集体として調製される。
(RDN)=CV(II)/CV(I) ・・・(1)
「式中、CV(II)は、水性エマルジョン型の有機ナノ粒子分散体を乾燥させた後、油性溶媒中での緩い振揺後における粒度分布のCV値を表し、CV(I)は、水性エマルジョン型の有機ナノ粒子分散体中における有機ナノ分散粒子の粒度分布のCV値を表す。」
【0045】
(C−3):このような特徴を有する高架橋された超微細粒子の乾燥物有機ポリマー粒子凝集体は、微細化、薄膜化、高機能化なる技術課題を達成させるための適材として、また、ナノテク技術領域における材料分野(=ナノマテリアル)として、一翼を担う超微細粒の有機ポリマー粒子として、例えば、極薄膜材、極薄手フィルム材を形成させる樹脂組成物として適宜に用いられる。すなはち、本発明に用いる如くの被スタンパー部材に用いる超微細有機ポリマー粒子を内添分散させてなる有機ポリマー樹脂部材として適宜好適に用いることができる。
【0046】
(D−4):また、このように各種の用途に実使用する有機質分散媒体系に、内添材として好適に用いる場合に、例えば、本発明に用いる如くの高架橋させた有機質超微細粒子(B)として、従来の如く格別の強制的な分散化処理及び/又は格別の分散剤介在等を施さずに用いることができる。本発明において、熱溶融状態下にある主材熱可塑性樹脂(A)の流延性樹脂媒体中に容易に再分散(=配合)されて、容易に分散化される有機樹脂微細粒子として用いられる。
【0047】
(E−5):更には、本発明においては、高架橋させて耐溶剤性を賦与された高架橋超微細樹脂粒子(B)は、この超微細粒子(B)を可溶化させない有機溶剤に溶解させた主材熱可塑性樹脂(A)の流延性樹脂媒体中にも、同様に容易に再分散(=配合)されて、容易に高度な分散状態を呈する有機樹脂微細粒子として用いられる。
【0048】
本発明において、再分散分布指数(RDN)を発揮させる油性系分散媒体として、インプリント時に熱溶融状態にある被スタンパー部材としての熱可塑性樹脂媒体の他に、本発明においては、既に説明する如く、この高架橋超微細樹脂粒子(B)を溶解させない各種の有機溶剤が挙げられ、例えば、アクリル、メタクリル系溶媒を適宜用いることができ、特に、HEMA、MMA、EMA、BMA、MEK、HIBKを挙げることができる。また、エステル系、ケトン系、芳香族系、エーテル系、アルコール系、グリコール系等が挙げられ、イソブタナール、ブタノール、ブチセロ、モルホリン、酢酸ベンチル、酢酸アミール、酢酸フーゼル、チオグリコール、グリセリン、トルエン、キシレン、酢酸エステル、グリコールエステル、ブチセロ、ハイソルブ等を適宜用いることができる。本発明においては、これらの群から選ばれる何れかの有機溶剤単独又は少なくとも2種以上の混合物溶剤として用いることができる
【0049】
また、本発明における優れた一次再分散性に係わって、上記する油性系分散媒体系で発揮させる再分散分布指数(RDN)は、1≦(RDN)≧3.0の範囲にあって、その油性系分散媒体系においては、好ましくは、1.02≦(RDN)≧1.3の範囲として適宜対処させることができる。また、このような分散媒体系にあって、本発明に用いる高架橋超微細粒子(B)の再分散平均粒子径指数(RAv)は、1≦(RAv)≧1.5の範囲にあって、その油性系分散媒体系においては、好ましくは、1.02≦(RAv)≧1.3の範囲として適宜対処させることができる。
【0050】
このような水性エマルジョン型の有機ナノ粒子水性分散体を、通常の水性反応系における乳化重合法で適宜調製させることができる。本発明においては、特に限定されるものではないが、その有機ナノ粒子のポリマー質としては、例えば、好ましくは、(メタ)アクリル系、スチレン系、アクリル−スチレン系、アクリル−ジエン系、スチレン−ジエン系、アクリル−イミド系、スチレン−イミド系等の有機ナノ粒子を適宜好適に調製させて用いられる。
【0051】
<高架橋超微細樹脂粒子(B)の調製>
<本発明による熱圧着転写プレセス用被スタンパー部材の調製>
既に説明する如く、本発明によって調製される水性エマルジョン型の有機ナノ粒子水性分散体の乾燥物凝集体を、油性系分散媒体に再分散させると、従来の乾燥物凝集体とは著しく相違して、従来の如く格別の強制的な分散化処理及び/又は格別の分散剤介在等を施すことなく、容易に再分散性を発揮させる。その分散性を、下記関係式(1)に定義する再分散分布指数(RDN)で表して、(RDN)値=1〜3.0の範囲にある如く、油性系分散媒体に、著しく優れた再分散性を発揮させる乾燥物有機ナノ粒子凝集体である。
(RDN)=CV(II)/CV(I) ・・・(1)
「式中、CV(II)は、水性エマルジョン型の有機ナノ粒子分散体を乾燥させた後、油性系分散媒体中での緩い振揺後における粒度分布のCV値を表し、CV(I)は、水性エマルジョン型の有機ナノ粒子分散体中における有機ナノ分散粒子の粒度分布のCV値を表す。」
この乾燥物凝集体の前駆体である本発明による水性エマルジョン型の有機ナノ粒子分散体中には、体積基準で表す平均粒子径が、80nm以下にあって、特に40nm以下で、5nm以上にある超微細粒の有機ナノ粒子を、体積基準で表して5〜40%分散濃度に亘って、一次分散状態で含有させることができる。
【0052】
そこで、乳化重合下に調製される本発明における有機ナノ粒子の有機ポリマー質としては、(メタ)アクリル系、スチレン系、アクリル−スチレン系、アクリル−ジエン系、スチレン−ジエン系、アクリル−イミド系、スチレン−イミド系等に係わる有機ナノ粒子を含有する有機ナノ粒子分散体を適宜調製することができる。
すなわち、
(1−a):100〜1000質量部の水相系に、上記有機ポリマー質に相当する10〜100質量部の親油性の重合性モノマーを添加させる。
(2−b):次いで、その重合性モノマー100質量部当たり、0.5〜50質量部で、好ましくは10〜30質量部の範囲で、例えば、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールトリメタクリレート、ジビニルベンゼン等の架橋剤成分を適宜添加させる。
(3−c):次いで、攪拌下の70〜80℃の温度範囲で乳化重合させて、体積基準で表す平均粒子径が80nm以下で、特に40nm以下で、5nm以上で、しかも、充分に架橋された超微細有機ナノ粒子が、体積基準で表して5〜40%分散濃度範囲に亘って、好ましくは、粒子の重合安定性、分散安定性等の観点から、10〜30%分散濃度に亘って、一次分散状態に含有する前駆体としての水性エマルジョン型の有機ナノ粒子水性分散体が調製される。
【0053】
そこで、これらの有機ナノ粒子に用いる親油性の重合性モノマーにおいて、アクリル系モノマーの具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル,(メタ)アクリル酸エチル,(メタ)アクリル酸プロピル,(メタ)アクリル酸イソプロピル,(メタ)アクリル酸ブチル,(メタ)アクリル酸イソブチル,(メタ)アクリル酸ペンチル,(メタ)アクリル酸ヘキシル,(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル,(メタ)アクリル酸オクチル,(メタ)アクリル酸ラウリル,(メタ)アクリル酸ノニル,(メタ)アクリル酸デシル,(メタ)アクリル酸ドデシル,(メタ)アクリル酸フェニル,(メタ)アクリル酸メトキシエチル,(メタ)アクリル酸エトキシエチル,(メタ)アクリル酸プロポキシエチル,(メタ)アクリル酸ブトキシエチル,(メタ)アクリル酸エトキシプロピル等のアクリル酸アルキルエステル;ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド;N-メチロール(メタ)アクリルアミド及びジアセトンアクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類並びにグリシジル(メタ)アクリレート;エチレングリコールのジアクリル酸エステル,ジエチルグリコールのジアクリル酸エステル,トリエチレングリコールのジアクリル酸エステル,ポリエチレングリコールのジアクリル酸エステル,ジプロピレングリコールのジアクリル酸エステル,トリプロピレングリコールのジアクリル酸エステル等の(ポリ)アルキレングリコールのジアクリル酸エステル類;エチレングリコールのジメタクリル酸エステル,ジエチレングリコールのジメタクリル酸エステル,トリエチレングリコールのジメタクリル酸エステル,ポリエチレングリコールのジアクリル酸エステル,プロピレングリコールのジメタクリル酸エステル,ジプロピレングリコールのジメタクリル酸エステル,トリプロピレングリコールのジメタクリル酸エステル等の(ポリ)アルキレングリコールのジメタクリル酸エステル類等を挙げることができる。
【0054】
また、スチレン系モノマーの具体例としては、例えば、アルキルスチレンとしては;スチレン,メチルスチレン,ジメチルスチレン,トリメチルスチレン,エチルスチレン,ジエチルスチレン,トリエチルスチレン,プロピルスチレン,ブチルスチレン,ヘキシルスチレン,ヘプチルスチレン及びオクチルスチレン等が挙げられ、ハロゲン化スチレンとしては;フロロスチレン,クロルスチレン,ブロモスチレン,ジブロモスチレン,クロルメチルスチレン等が挙げられ、その他、ニトロスチレン,アセチルスチレン,メトキシスチレン、α−メチルスチレン,ビニルトルエン,p−スチレンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0055】
また、特に有機ポリマー質の耐熱性等を考慮した場合の重合性モノマーとして、例えば、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミドなどのアクリルアミド系誘導体、p−アミノスチレンなどのアミノスチレン類、マレイミド,N−メチルマレイミド,N−フェニルマレイミド,N−シクロヘキシルマレイミド,6−アミノヘキシルコハク酸イミド,2−アミノエチルコハク酸イミド等のイミド類、更には、重合性二重結合を二個有するブタジエン,イソプレイン,シクロペンタジエン,1,3−ペンタジエン,ジシクロペンタジエン等のジエン類を挙げることができる。また、N,N−ジメチルアクリルアミド,N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドなどのアリルアミン系誘導体,アクリルアミド,N−メチルアクリルアミド等のアクリルアミド系誘導体,N−アミノスチレン等のアミノスチレン類,6−アミノヘキシルコハク酸イミド,2−アミノエチルコハク酸イミド等のアミノ基含有エチレン性不飽和結合を有するモノマーが適宜好適に使用することができる。
【0056】
また、有機ポリマー質に発揮させる機能性に係わって、必要に応じて、官能基を有するモノマーとして、例えば、アクリル酸、メタアクリル酸、テトラヒドロフタル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマール酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ノルボルネンジカルボン酸、メチレンマロン酸、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノブチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノプロピル、マレイン酸モノオクチル、 カルボキシアルキルビニルエーテル、カルボキシアルキルビニルエステル、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸等の不飽和カルボン酸が挙げられ、また、これらの誘導体として、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物、また、例えば、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸アミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチル、メタクリル酸シクロヘキシルアミノエチルなどのアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル系誘導体類、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミンなどのビニルアミン系誘導体類、アリルアミン、メタクリルアミン、N−メチルアクリルアミン、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドなどのアリルアミン系誘導体等を挙げることができる。
【0057】
また、本発明においては、特に、形成される有機ナノ粒子の機械的強度を高め、しかも、耐溶剤性を高める観点から、架橋構造を適宜導入させることができる。このような架橋構造を形成させるに、2官能性以上の多官能性モノマーを適宜好適に使用することができる。その多官能性モノマーとして、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート,トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート,テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート,ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート,ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート,ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート,トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート,ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート,1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジアクリレート,1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタントリアクリレート,1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパントリアクリレート,N−メチロールアクリルアマイド等を挙げることができる。また、このような多官能性モノマーは、既に上述した親油性の重合性モノマー100質量部に対して、通常、0.5〜50質量部、好ましくは、10〜30質量部で適宜好適に使用される。
【0058】
<本発明が提供する熱圧着転写プロセス用被スタンパー部材の調製>
このような本発明による特徴ある高分子量体樹脂成分を組合せ配合させてなる被スタンパー部材用の熱可塑性樹脂組成物は、「高分子量熱可塑性樹脂成分(A)」として、所定の分子量分布及び所定の分子量分布係数の(Mw/Mn)値を有する組合せを選んで、本発明による被スタンパー部材用の熱可塑性樹脂組成物を調製するものである。
【0059】
そこで、本発明においては、従来から周知の方法であるGPC装置を用いることで、用いる熱可塑性樹脂の所定の分子量分布及び所定の分子量分布係数(Mw/Mn)値を測定しながら適宜容易に且つ好適に、本発明による被スタンパー部材用の熱可塑性樹脂組成物を調製することができる。
【0060】
すなわち、GPC装置を用いて、所定の熱可塑性樹脂の分子量分布などを測定するに際しては、所定の温度下にあるカラム内を展開させる溶離液に所定の温度下に溶解させて測定に供する。本発明においては、25〜50℃の所定の温度で完全に溶解させる例えば、PMMAなどのアクリル系樹脂には、通常、溶離液;THFが用いられる。また、100〜145℃の所定の温度で完全に溶解させる例えば、PP−20℃、PE−120℃などのポリオレフィン系樹脂には、通常、溶離液;オルトジクロロベンゼン(0DCB)が用いられる。従って、本発明において、前者にあっては、通常の高速GPC装置(例えば、東ソー(株)製のHLC−8220GPCが挙げられる。)を適宜好適に用いられる。また、後者にあっては、通常の高温GPC装置(例えば、東ソー(株)製のHLC−8121GPC/HTが挙げられる。)を適宜好適に用いることができる。
【0061】
このような高分子量熱可塑性樹脂成分(A)として、本発明に好ましく用いられる熱可塑性樹脂として、例えば、PE、PP等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン(PS)110℃、PMMA、PEMA等のアクリル系樹脂、ポリ乳酸、環状ポリオレフィン、ポリカーボネート(PC)145〜150℃の群から選ばれる何れか単独又は何れか2種以上を組合せてなる熱可塑性樹脂組成物を挙げることができる。
【0062】
このような高分子量熱可塑性樹脂成分(A)として、本発明に好ましく用いられる熱可塑性樹脂として、例えば、PE、PP等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン(PS、91%、110℃)、PMMA(93%、107℃)、PEMA等のアクリル系樹脂、環状ポリオレフィン(90〜91%、100〜163℃)、ポリカーボネート(PC、90%、145〜150℃)の群から選ばれる何れか単独又は何れか2種以上を組合せてなる熱可塑性樹脂組成物を挙げることができる。なお、上記( )内に記載する数値は、それぞれ可視光線透過率%及びTg℃を示す。
【0063】
また、本発明においては、上記する樹脂の他に、熱ナノインプリント法下での被スタンパー部材としてのハンドリング性から、好ましくは、ガラス転移点(Tg)が40〜290℃で、好ましくは60〜210℃範囲にある熱可塑性樹脂であって、必要に応じて、微細構造転写された熱可塑性樹脂成型体の用途によっては、既に上記に挙げる熱可塑性樹脂に必ずしも限定することなく使用される。例えば、アクリロトリル/ブタジェン/スチレン共重合樹脂(ABS)、AS樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン、アクリロニトリル/スチレン樹脂(AS)、ナイロン樹脂等のポリアミド(PA)、超高分子量ポリエチレン(UHPE)、ポリブチレンテレフタレート(PBT、40〜60℃)、強化ポリエチレンテレフタレート(PET、70℃)、変性ポリフェニレンエーテル(PPE、150℃)、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK、143℃)、ポリテトラフロロエチレン(PTFE)、ポリフロロアルコキシ(PFA)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリサルホン系樹脂(PSU、190℃)、ポリアミドイミド(PAI、289℃)ポリアリレート(PAR、193℃)、ポリサルホン(PSF)、ポリエーテルサルホン(PES、225℃)、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリアリレート樹脂、液晶ポリマー、フッ素樹脂等が挙げられ、これらの何れか単独又は何れかの2種以上を組合せて選んで適宜好適に用いることができる。なお、上記( )内に記載する数値はTg℃を示す。
【0064】
<熱圧着転写プロセスによる微細構造転写方法>
以上から、本発明が提供した既に説明済みの如くの特徴ある熱圧着転写プロセス用被スタンパー部材は、熱圧着転写プロセスの熱圧着下に、各種の微細構造パターンを施すスタンパー材に接触するに際して、本発明においては、被スタンパー部材としての厚さが、極薄の50nmから、肉厚の500μmなる広汎な範囲の厚さを有する部材として、既に詳細に説明する如く、優れた「インプリント性」(=偏在なく明確に押印されて、インプリント後、被スタンパー部材が、スタンパー材からスムーズに離型又は剥離させる。)及び優れた「転写性」(=転写面の2次元方向に転写偏在がなく、しかも、その3次元方向に転写欠陥を発生させない。)を発揮させながら被スタンパー部材として用いることができる。
【0065】
このような厚さ50nm〜500μmに及ぶ本発明が提供した被スタンパー部材には、熱ナノインプリント法下に、各種の微細構造パターンを設けるスタンパー材をインプリントさせることで、本発明による特徴ある熱可塑性樹脂による被スタンパー部材には、直径が50〜1500nmの凸型又は凹型のドット、ピッチが60nm〜2μmの凸型又は凹型のライン及びスペースのパターン群から選ばれる何れか単独パターン又は何れか2種以上の組合せパターンとして、且つそのパターンの深さ又は高さが20nm〜3μm範囲にある超微細構造を適宜転写させることができる。
【0066】
また、本発明による被スタンパー部材用の熱可塑性樹脂組成物を用いて、熱ナノインプリント成形や、射出圧縮成形等の熱圧着転写プロセスで、所定のパターンの微細構造を転写させるインプリント施工温度(Tp)は、上記する如く、被スタンパー部材に用いる熱可塑性樹脂組成物のガラス転移点(Tg)が40〜290℃の範囲にある樹脂を用いることができる。よって、本発明における熱インプリント施工は、熱インプリント時における熱による被ステンパー部材樹脂中の残留歪を最少にさせ更には転写精度を向上させる観点から、好ましくは、(Tp)=(Tg)+10〜50℃の温度領域で適宜好適にインプリント施工を実施させることができる。
【0067】
従って、本発明における熱融着転写プロセスにおいては、用いる被スタンパー部材樹脂の上記するインプリント施工温度(Tp)の熱溶融下にある被スタンパー部材を金型(又はモールド)にインプリント成形させる成形法として、例えば、熱ナノインプリント成形、射出圧縮成形、押出成形、ブロー成形、真空成形等を挙げることができる。また、溶剤に可溶化させた流延状熱可塑性樹脂組成物を用いて、少量成形、薄膜(シート)成形として、例えば、スピンコート、ディプコート、ダイコート、グラビヤコート等を挙げることができる。
【0068】
すなわち、透明熱可塑性樹脂を射出成形機で、加熱溶融させて、金型内部へ高速充填させ、予め金型内部に装着するスタンパーの表面の信号(ビット、グルーブ)を基板側に転写させる。または少量成形、薄膜(シート)等には、溶剤可溶下に基材上にコート後、脱溶剤下に樹脂フィルム(樹脂シート)化;これらの溶剤として、エステル系、ケトン系、芳香族系、エーテル系、アルコール系、グリコール系等が挙げられ、本発明においては、MEK、MIBK、イソブタナール、ブタノール、ブチセロ、モルホリン、酢酸ベンチル、酢酸アミール、酢酸フーゼル、チオグリコール、グリセリン、トルエン、キシレン、酢酸エステル、グリコールエステル、ハイソルブ等が挙げられる。
【0069】
<微細構造転写された機能性樹脂成形体の用途>
以上から、本発明による各種の熱可塑性樹脂組成物を被スタンパー部材に用いて、熱インプリント下にその樹脂表面に転写させてなる構造部材には、上記する如くナノレベルから、数μm以下、特に数100nmレベル以下の超微細パターン・サイズの、ドット、ライン及びスペース等の各種パターンの微細構造が、形成(又は賦形)されている。
【0070】
このような表面微細構造部材の有用な用途としては、従来から周知公用である回折格子光フィルター、波長光変換素子、偏光フィルム、ホログラフィックディフューザー、光導波路型波長フィルター、携帯パソコン用光配線としての光導波路、透過型ブレーズド回折格子、光ピックアップ部の回折格子、波長分離フィルター、波長分離多重通信方式の増幅器に用いられる利得等化フィルター及び偏光変換素子や、また、フレネルレンズ(太陽光集光レンズ、OHPの拡大投影用レンズ)、マイクロレンズアレイ、各種非球面レンズ、射出成型非球面レンズ(フィールドレンズ、リレーレンズ)、透過型スクリーンに用いられるフルネルシート(垂直拡散用レチキュラレンズ)等の光学部品(又は光学素子)非線形光電子部品等が挙げられる。また、音楽や映像の記録媒体として広く活用されているCD、DVD等光記録メディヤ媒体や、更には、LED拡散フィルム、LED集光板、燃料電池用セパレータ、外部診断用チップ、細胞培養チップ、臓器代用部材等の各種産業分野における機能性部品を挙げることができる。
【0071】
<その他の添加剤> また、本発明による被スタンパー部材には、その被スタンパー部材としての「インプリント性」及び「転写性」を阻害させない限りにおいて、それ自体公知のその他の添加剤(配合剤)を配合させることができ、本発明においては、例えば、熱安定剤、分散剤、防腐剤、撥水剤、粘度調節剤、タレ止め防止剤、表面張力調整剤、消泡剤、酸化防止剤、帯電防止剤、近赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、抗菌・防カビ剤、芳香剤、蛍光剤等の添加剤を適宜添加させることができる。
【0072】
以下に、本発明を実施例により説明するが、本発明は、これらの実施例にいささかも限定されるものではない。
【0073】
(実施例)
代表的な熱可塑性樹脂であるPMMA樹脂を用いて、本発明による被スタンパー部材用の熱可塑性樹脂(A)として、重量平均分子量(Mw)=113万のPMMA樹脂を調製し、次いで、高架橋有機ポリマー超微細粒子(B)[以後、単に超微細粒子(B)と略称する]として、平均粒子径が20nm、油性分散媒体への再分散化特性としての(RDN)=1.3で、(RAv)=1.5の超微細有機ポリマー粒子(B)をそれぞれ調製した。更に本発明を明確にさせるため、比較例として超微細粒子(B)の添加量の異なる被スタンパー部材を調製し、次いで、これら比較例を含めて本発明による熱圧着転写プロセス用被スタンパー部材を調製し、熱インプリント性、転写性を評価した。
【0074】
[高分子量熱可塑性樹脂成分(A);(Mw)=113万のPMMA樹脂]
温度計と窒素導入管とを装着した、容量1リットルの四つ口フラスコに、イオン交換水900質量部と乳化剤ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩1.5質量部、85℃まで昇温させ、ペルオキソニ硫酸アンモニウム(APS)を0.25重量部添加した。次いで、温度を76〜78℃に保ちながらMMA100質量部、乳化剤ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩1質量部を、30分かけて滴下し滴下重合を行った。さらに76〜78℃で30分保持した後、85℃まで昇温し1.5時間保持した。得られた水性エマルション(E−2)の重合率は約100%であり、GPC測定の結果、重量平均分子量(Mw)=113万、分子量分布(Mw/(Mn)=3.0であった。
【0075】
[高架橋有機ポリマー超微細粒子(B);PMMA架橋超微細粒子(B)=試料−I]
温度計と窒素導入管とを装着した、容量1リットルの四つ口フラスコに、イオン交換水400質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩20質量部を添加して、85℃に昇温後、ペルオキソニ硫酸アンモニウム(APS)0.5質量部を添加した。次いで、76〜78℃に保ちながら、メタクリル酸メチル(MMA)975質量部、エチレングリコールジメタクリレート25質量部、モノオキシエチレンノニルフェニルエーテル5質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩1質量部、イオン交換水40質量部とからなる水性エマルション溶液を注加させて重合させた。
次いで、30分保持した後、85℃に昇温させて1.5時間保持した。得られたエマルションの重合率は約100%で、固形分は24%で、動的光散乱法で求めた平均粒径は20nmで、この水性分散体を試料−Iとした。
なお、本発明における平均粒子径測定法;シスメックス製[ゼータサイザー3000HS]を用いた動的光散乱法によった。また、CV値測定;CV値=標準偏差/平均粒子径×100として測定した。
【0076】
上記に得られた水性分散体の試料−Iを、スプレードライ法で乾燥・粉粒化させた後、それぞれメチルエチルケトンに溶解させた固形分濃度20%の粒子分散溶液を調製した。次いで、それぞれ油性系分散媒体中の再分散時における平均粒子径を測定した結果、この試料Iは、平均粒子径22nm(RDN=1.1、RAv=1.08)であった。
【0077】
[被スタンパー部材用の熱可塑性樹脂組成物及び被スタンパー部材の調製]
上記で得られたエマルション型PMMA樹脂分を、スプレードライ法で乾燥・粉粒化させた後、それぞれメチルエチルケトンに溶解させた樹脂溶液を調製した。次いで、上記の高架橋有機ポリマー超微細粒子(B)を0〜50wt%の範囲(比較例1〜3含む)で添加した。なお、試料Iを用いた樹脂の可視光線透過率は、いずれも85%以上であった。
【0078】
[被スタンパー部材の調製]
次いで、これらの樹脂溶液を、ミカサ工業製スピンコーター1H−DX2を用いて樹脂シートすなわち「被スタンパー部材」を作製した。シート膜厚は樹脂溶解溶液粘度とコーターの回転数にて調整した(例えば、粘度が30P、回転数1200rpmの条件で成膜し10μmの樹脂シートを得た)。
【0079】
[スタンパー材(又はモールド)の作製]
シリカ基盤へのレジスト塗布、EB照射、現像、エッチングといった一通りの手順を通してモールドを作製した。作製したモールドは、ドッド型(丸形)で直径、10、5、2、1ミクロンのパターンがそれぞれ規則配列されたもの、及び、ラインスペースが0.15〜1.5μmの凹凸型のパターン、深度300nmものを使用した。
条件:
レジスト:NEB−22(住友化学製)
モールド:Si基盤上に約300ナノのSiO処理、2inch、直径約5cm
EB :ELIONIX ELS7500M使用
エッチング:CHFガス(50 SCCM,2.0Pas,100W,15min)
エッチング(残レジストの除去):Oガス(5Pas,100W)
モールド表面処理:ダイキン工業 オプツールDSX1%溶液(Perfluorohexane Solv.)
【0080】
[熱圧着転写プロセス及び転写性の評価]
調製した高分子量熱可塑性樹脂成分(A)である(Mw)=113万のPMMAの樹脂に高架橋有機ポリマー超微細粒子(B)を分散させた被スタンパー部材樹脂Iに用いて、上記に作製した微細構造を設けるスタンパー材を、熱転写装置である明昌機工(株)製NM0401および東芝機械(株)製ST50を使用して、この樹脂Iの転写性及びその転写条件を検討・評価し、その結果を[表1]に示した。[表1]の結果から明らかなように、用いる成型機の性能(温度精度、面精度、ショット精度等)によって逐次改良する必要はあるが、その中で本件樹脂Iに適した転写条件として、温度130℃、加重10kN、転写時間300秒で、熱インプリントさせて、転写可能である温度、熱圧着(プレス圧×時間)等の条件を評価することができた。
【0081】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0082】
以上から、熱ナノインプリント成形や、射出圧縮成形等の熱圧着転写プロセスを用いて、薄膜状樹脂部材に各種のパターンの微細構造転写させる熱可塑性樹脂からなるインプリント性及び転写性に優れる被スタンパー部材及びその微細構造転写された機能性樹脂成形体を提供することができた。
【0083】
また、このように提供する微細構造転写の機能性樹脂成形体は、例えば、回折格子光フィルター、波長光変換素子、偏光フィルム、光導波路型波長フィルター、携帯パソコン用光配線としての光導波路、透過型ブレーズド回折格子、光ピックアップ部の回折格子、波長分離フィルター、フレネルレンズ(太陽光集光レンズ、OHPの拡大投影用レンズ)、マイクロレンズアレイ、各種非球面レンズ、射出成型非球面レンズ(フィールドレンズ、リレーレンズ)等の光学部品、非線形光電子部品等に、また、音楽や映像の記録媒体として広く活用されているCD、DVD等光記録メディア媒体や、更には、LED拡散フィルム、LED集光板、燃料電池用セパレータ、外部診断用チップ、細胞培養チップ、臓器代用部材等の各種産業分野に有用な機能性樹脂成形体を提供することである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被スタンパー部材の熱可塑性樹脂中に、分散する超微細有機ポリマー粒子のレオロジー挙動によって、スタンパー材に対して優れるインプリント性及び転写性を発揮させる熱圧着転写プロセス用被スタンパー部材であって、
GPC法による重量平均分子量(Mw)が60〜180万で、分子量分布係数の(Mw/Mn)=1.1〜5の範囲にある熱可塑性樹脂(A)の100質量部当たり、
前記熱可塑性樹脂(A)中に分散し且つ熱ナノインプリント下に前記熱可塑性樹脂(A)中に不溶融状態にある高架橋有機ポリマー超微細粒子(B)が0.5〜15質量部の範囲で含有し、
熱ナノインプリント時に形成される厚さ50nm〜500μm範囲に及ぶ被スタンパー部材樹脂相が、スタンパー材の微細構造パターンに対して優れるインプリント性を発揮させ、且つその樹脂相の2次元方向及び3次元方向に転写偏在や転写欠陥の発生を皆無にさせることを特徴とする熱圧着転写プロセス用被スタンパー部材。
【請求項2】
前記高架橋有機ポリマー超微細粒子(B)が、体積基準で表す平均粒子径が5〜80nmの範囲にあって、且つ油性系分散媒体への再分散時に発揮する分散化特性である一次再分散性を、下記関係式(1)に定義する再分散分布指数(RDN)で表して、(RDN)値=1〜2.0の範囲にあり、且つ下記関係式(2)に定義する再分散平均粒子径指数(RAv)で表して、(RAv)=1〜3.0の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載する熱圧着転写プロセス用被スタンパー部材。
【数1】


【数2】

【請求項3】
前記熱可塑性樹脂(A)が、ポリオレフィン、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリ乳酸(PLA)、環状ポリオレフィン、ポリアミド(PA)、液晶ポリマ−(LCP)、ポリアリレート(PAR)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエーテルサルホン(PES)の群から選ばれる単独又は何れかの共重合体樹脂で、且つ前記高架橋有機ポリマー超微細粒子(B)が、アクリル系、メタクリル系、スチリル系群から選ばれる何れか単独樹脂粒子及びこれら何れかの共重合樹脂粒子であることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱圧着転写プロセス用被スタンパー部材。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂(A)及び前記高架橋有機ポリマー超微細粒子(B)が、可視光線透過率が少なくとも85%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱圧着転写プロセス用被スタンパー部材。
【請求項5】
請求項1〜3の何れかに記載する被スタンパー部材を用いて、熱圧着転写プロセスの熱ナノインピリント下に、各種パターンの微細構造が転写されていることを特徴とする微細構造転写の機能性樹脂成形体。
【請求項6】
請求項4に記載する光透明性被スタンパー部材を用いて、熱圧着転写プロセスの熱ナノインピリント下に、各種パターンの微細構造が転写されて、各種の光学素子として有用使されることを特徴とする微細構造転写の機能性透明樹脂成形体。
【請求項7】
転写される前記微細構造であって、直径が50〜1500nmの凸型又は凹型のドット、ピッチが60nm〜2μmの凸型又は凹型ライン及びスペース群から選ばれる何れかの単独パターン又は何れか2種以上の組合せパターンで、且つこれら何れのパターンの深さ又は高さが20nm〜3μm範囲にあることを特徴とする請求項5又は6に記載する微細構造転写の機能性樹脂成形体。

【公開番号】特開2008−73850(P2008−73850A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−251975(P2006−251975)
【出願日】平成18年9月19日(2006.9.19)
【出願人】(000202350)綜研化学株式会社 (135)
【Fターム(参考)】