説明

熱変性に弱い食品材料の乾燥方法及び乾燥装置

【課題】熱変性に弱い食品材料を変性させることなく、効率良く乾燥させることができ、所望とする含水率を得ることができる熱変性に弱い食品材料の乾燥方法及びその乾燥方法に適した簡易な乾燥装置を提供する。
【解決手段】熱変性に弱い食品材料の乾燥方法は、熱変性に弱い食品材料を乾燥庫11内に収容して減圧下で乾燥するに際し、下限圧力とそのときの下限温度を設定すると共に、上限圧力とそのときの上限温度を設定する。そして、乾燥庫11内の圧力を下限圧力まで下げて前記食品材料の水分を蒸発させ、下限圧力での飽和温度に到らしめた後、100℃以下の低温水蒸気を注入して食品材料を上限温度まで加熱し、上限圧力まで到らしめる。この操作を例えば数十回繰り返すことにより、食品材料の含水率を例えば20%以下に低下させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱変性に弱い食品材料を色、形状、栄養素等の状態を保持しつつ、良好な状態でかつ安価に乾燥することができる熱変性に弱い食品材料の乾燥方法及び乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から野菜、果物等の熱変性に弱い食品材料の乾燥においては、低温熱風乾燥方法と真空凍結乾燥方法が知られている。低温熱風乾燥方法では、水の沸点以下の温度で乾燥するため蒸発速度が遅く、乾燥に長時間を要し、食品が酸化して変色したり、変質したりする。その上、低温の空気では食品を蒸したり、殺菌したりすることができないという問題がある。一方、真空凍結乾燥方法では、凍結工程が追加されるため、乾燥時間が長くなり、設備が複雑で高価になってしまう等の問題がある。
【0003】
近年、減圧過熱蒸気を用いた乾燥殺菌装置(特許文献1を参照)や減圧低温乾燥装置(特許文献2を参照)等が提案されている。しかしながら、特許文献1に記載の装置は対流伝熱によって直接熱風で材料に熱を与える装置であり、減圧下では乾燥室内に存在する気体の量が少ないため、乾燥効率が悪く、加熱や乾燥に長時間を要し、実用化には不適当である。
【0004】
一方、特許文献2に記載の装置は各棚の下部にヒートパイプを設けて輻射熱によって加熱する輻射伝熟方式の装置であり、各棚にヒートパイプが必要で装置が大型化せざるを得ず、低温熱風乾燥方法と同様に蒸したり、殺菌したりすることができないという問題がある。
【0005】
熱変性に弱い食品を変色、変形、変質させずに低温で効率良く乾燥させるためには、減圧乾燥時に如何にして食品材料に効率良く熱を伝えるかが重要な課題である。また、1つの乾燥装置の中で旨味成分を付与する低温蒸し機能と保存性を向上させる殺菌機能を併せ持った乾燥装置が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−287373号公報
【特許文献2】特開2007−85600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の目的とするところは、熱変性に弱い食品材料を変性させることなく、効率良く乾燥させることができ、所望とする含水率を得ることができる熱変性に弱い食品材料の乾燥方法及びその乾燥方法に適した簡易な乾燥装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明の熱変性に弱い食品材料の乾燥方法は、熱変性に弱い食品材料を減圧下で乾燥するに際し、下限圧力とそのときの下限温度を設定すると共に、上限圧力とそのときの上限温度を設定し、圧力を下限圧力まで下げて前記食品材料の水分を蒸発させ、下限圧力での飽和温度である下限温度に到らしめた後、100℃以下の低温水蒸気を注入して食品材料を前記下限温度から上限温度まで加熱し、上限圧力まで到らしめ、この操作を繰り返して食品材料の含水率を低下させることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明の熱変性に弱い食品材料の乾燥方法は、請求項1に係る発明において、前記低温水蒸気が低温過熱水蒸気であることを特徴とする。
請求項3に記載の発明の熱変性に弱い食品材料の乾燥方法は、請求項1又は請求項2に係る発明において、前記下限圧力と上限圧力とが絶対圧力で3〜92kPaの範囲内にて設定されることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明の熱変性に弱い食品材料の乾燥装置は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の熱変性に弱い食品材料の乾燥方法に用いられる乾燥装置であって、熱変性に弱い食品材料を収容して乾燥するための乾燥庫と、該乾燥庫内の圧力を下限圧力まで下げて前記食品材料の水分を蒸発させて下限圧力での飽和温度である下限温度に到らしめるための減圧ユニットと、乾燥庫内に低温水蒸気を注入して食品材料を前記下限温度から上限温度まで加熱して上限圧力まで到らしめるための低温水蒸気発生ユニットとを備えることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明の熱変性に弱い食品材料の乾燥装置は、請求項4に係る発明において、前記低温水蒸気発生ユニットには、低温水蒸気を加熱して低温過熱水蒸気を生成するための電気ヒータを備えることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明の熱変性に弱い食品材料の乾燥装置は、請求項4又は請求項5に係る発明において、前記乾燥庫内には、水蒸気を冷却するためのクーラーを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、次のような効果を発揮することができる。
本発明の食品材料の乾燥方法では、熱変性に弱い食品材料を減圧下で乾燥するに際し、下限圧力とそのときの下限温度を設定すると共に、上限圧力とそのときの上限温度を設定する。そして、圧力を下限圧力まで下げて食品材料中の水分を蒸発させ、下限圧力での飽和温度である下限温度に到らしめた後、100℃以下の低温水蒸気を注入して食品材料を前記下限温度から上限温度まで加熱し、上限圧力まで到らしめ、この操作を繰り返して食品材料の含水率を低下させる。
【0014】
このように、減圧操作で圧力を低下させた後に低温水蒸気による加熱操作を行うことから、食品材料を低温で乾燥させることができると同時に、食品材料に効率良く熱を伝えることができ、食品材料の自己蒸発が促進されて乾燥速度を向上させることができる。
【0015】
従って、本発明によれば、熱変性に弱い食品材料を変性させることなく、効率良く乾燥させることができ、所望とする含水率を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態における熱変性に弱い食品材料の乾燥装置を示す概略説明図。
【図2】乾燥庫の概略を示す平断面図。
【図3】乾燥過程における時間と、絶対圧力及び温度との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を具体化した実施形態を図1〜図3に基づいて詳細に説明する。
まず、熱変性に弱い食品材料の乾燥装置について説明する。図1に示すように、熱変性に弱い食品材料の乾燥装置10は、熱変性に弱い食品材料を収容して乾燥するための乾燥庫11と、該乾燥庫11内を減圧にするための減圧ユニット20と、乾燥庫11内を加熱するための低温水蒸気発生ユニット30とを備えている。熱変性に弱い食品材料としては、ニンジン、さつま芋、大根等の野菜、柿、キューイ、パイナップル、ブルーベリー、プルーン等の果物などが挙げられる。
【0018】
前記乾燥庫11は断熱構造を有する四角箱型の密閉容器よりなり、その一側壁には左右両開きの開閉扉12が取付けられている。図2に示すように、乾燥庫11内の前後(図2の上下)には二点鎖線で示すトレー13が上下に所定間隔をおいて配置され、それらトレー13上に図示しない熱変性に弱い食品材料が載置されるようになっている。乾燥庫11内の開閉扉12と対向する側壁には正逆回転可能な軸流ファン14が上下左右4箇所に支持され、乾燥庫11内の気体(空気)を図2の一点鎖線で示す正方向及び二点鎖線で示す逆方向に旋回させるようになっている。
【0019】
食品材料の乾燥速度を一層増大させるために、ヒータ(水蒸気による加熱器)15とクーラー(冷却水による冷却器)16を使用する。図1に示すように、ヒータ15は軸流ファン14に対向するように配置され、後述するボイラー31から加熱弁36を介して水蒸気が送られるようになっている。このヒータ15は乾燥庫11内の気体を加熱するために使用され、特に食品材料を低含水率まで乾燥するときには仕上げ乾燥時に後述する蒸気弁35を閉にしてヒータ15だけでの減圧熱風乾燥を行う。また、クーラー16は乾燥工程の蒸発期間に使用すると蒸発速度を一層増大させることができる。
【0020】
ヒータ15は軸流ファン14の対向位置に配置されていることにより、軸流ファン14から送られる風で乾燥庫11内の気体が循環し、食品材料を水蒸気で間接加熱するように構成されている。図2に示すように、乾燥庫11内の前後中央位置には前後一対の仕切枠17内にクーラー16が左右方向に延びるように配置されている。仕切枠17の左右両端部は開放されており、図2の破線で示すように開閉扉12側から気体の一部が軸流ファン14に向かって流入するようになっている。なお、開閉扉12側の仕切枠17端部の開放口には図示しないダンパーを設け、流入気体の風量を調節することもできる。上記クーラー16の冷却水により、乾燥庫11内の水蒸気を冷却するようになっている。
【0021】
続いて、前記減圧ユニット20について説明する。図1に示すように、真空ポンプ21にはコンデンサー22の一端が接続され、その他端が減圧弁23を介して乾燥庫11に接続されている。コンデンサー22の下部には接続管25が接続され、冷却弁24を介してクーラー16に連結されている。この減圧ユニット20により、乾燥庫11内を設定した下限圧力にまで減圧できると共に、上限圧力に到らしめることができるようになっている。
【0022】
次いで、前記低温水蒸気発生ユニット30について説明する。図1に示すように、高圧水蒸気を発生するボイラー31には接続配管によりその高圧水蒸気に含まれている不純物や水滴を除去するセパレータ32が接続され、該セパレータ32には大気圧以下の圧力に減圧するための減圧弁体33が連結されている。該減圧弁体33により、高圧水蒸気から減圧された低温水蒸気が生成される。この減圧弁体33には低温水蒸気をさらに加熱して低温過熱水蒸気にする電気ヒータ34が接続され、電気ヒータ34で生成された低温過熱水蒸気が蒸気弁35を介して乾燥庫11内へ導かれるようになっている。食品材料の含水率が50%以上で良い場合には低温水蒸気を使用し、含水率を20%以下にしたい場合には低温過熱水蒸気を使用する。低温水蒸気を使用する場合には電気ヒータ34をOFFにする。
【0023】
次に、熱変性に弱い食品材料の乾燥方法について説明する。
まず、被乾燥物である熱変性に弱い食品材料として野菜や果物等の食品を乾燥庫11内のトレー13に並べて、乾燥庫11内に収納する。続いて、開閉扉12を閉めて軸流ファン14と真空ポンプ21を駆動する。軸流ファン14は正転及び逆転が5分ぐらいで変わるようにタイマーによりあらかじめ設定しておく。
【0024】
そして、蒸し工程及び殺菌工程を実施する。この蒸し工程及び殺菌工程は乾燥庫11内の温度を50〜95℃に、絶対圧力を96.3〜31.3kPa(ゲージ圧力−5〜−70kPa)の任意の値に設定して、蒸気弁35と減圧弁23を開き、設定した温度と絶対圧力に到達した後、タイマーにより10〜60分間蒸し工程及び殺菌工程を実施する。設定値の調飾は、図示しない温度調節計及び圧力調節計により弁を自動開閉して行う。
【0025】
次いで、乾燥工程では、温度設定した下限温度と上限温度の沸点に合わせた下限圧力と上限圧力との間の圧力変動を繰り返しながら乾燥を行う。下限圧力と上限圧力とは絶対圧力で3〜92kPaの範囲内にて設定され、下限温度と上限温度とが30〜97℃の範囲内で設定される。
【0026】
例えば、図3に示すように、高温側では上限温度T1を60℃、上限絶対圧力P1を21.3kPa(ゲージ圧力−80kPa)に設定し、低温側では下限温度T2を40℃、下限絶対圧力P2を6.3kPa(ゲージ圧力−95kPa)に設定する。そして、蒸し工程及び殺菌工程の終了後、減圧弁23を開き、蒸気弁35を閉じて、乾燥庫11内を低温側で設定した下限絶対圧力P2まで減圧にする。乾燥庫11内の圧力は常圧(101.3kPa)から下限絶対圧力P2(6.3kPa)まで低下し、食品材料は減圧のため飽和温度になるまで水分が蒸発し、下限温度T2(40℃)まで低下し、その温度でt2時間保持する(蒸発期間)。
【0027】
食品材料の温度が40℃に達すると、減圧弁23を閉じ、蒸気弁35を開けて乾燥庫11内に低温過熱水蒸気を導入する。すると、乾燥庫11内の食品材料は低温過熱水蒸気により加熱され、高温側で設定した上限絶対圧力P1である21.3kPaに到る。乾燥庫11内はこの上限絶対圧力P1における飽和温度である60℃に到達するまで加熱され、その温度でt1時間保持する(加熱期間)。
【0028】
食品材料の温度が60℃に到達した後は、減圧弁23を開き、蒸気弁35を閉じて乾燥庫11内を低温側で設定した下限絶対圧力P2である6.3kPaまで減圧する。以上の低温側(蒸発期間)と高温側(加熱期間)の各操作を数10回繰り返し行うことにより、食品材料中の水分は蒸発し、食品材料は所定の含水率まで乾燥する。即ち、減圧下において食品材料を空気で対流加熱する場合には長時間を要するが、水蒸気による伝熱加熱を採用することにより短時間で食品材料を加熱することができる。
【0029】
なお、蒸し工程終了後又は乾燥工程終了後に、醗酵防止や菌類の増殖防止のため食品材料の急速冷却を行うことがある。急速冷却を行うには、真空ポンプ21とクーラー16を使って真空冷却する。即ち、減圧弁23を開き、乾燥庫11内を絶対圧力3.3kPa(ゲージ圧力−98kPa)まで減圧すると共に、冷却弁24を開き、クーラー16に冷却水を通して乾燥庫11内の水蒸気を凝縮させることにより急速冷却を行うことができる。
【0030】
以上の実施形態により発揮される効果について以下にまとめて説明する。
(1) 本実施形態における食品材料の乾燥方法では、熱変性に弱い食品材料を減圧下で乾燥するに際し、下限絶対圧力P2とそのときの下限温度T2を設定すると共に、上限絶対圧力P1とそのときの上限温度T1を設定する。そして、圧力を下限絶対圧力P2まで下げて食品材料の水分を蒸発させ、下限絶対圧力P2での飽和温度である下限温度に到らしめた後、低温水蒸気を注入して食品材料を上限温度T1まで加熱し、上限絶対圧力P1まで到らしめ、この操作を繰り返して食品材料の含水率を低下させる。
【0031】
このように、減圧操作で圧力を低下させた後に低温水蒸気による加熱操作を行うことから、食品材料を低温で乾燥させることができると同時に、食品材料に効率良く熱を伝えることができ、食品材料の自己蒸発が促進されて乾燥速度を向上させることができる。
【0032】
従って、本実施形態によれば、熱変性に弱い食品材料を変性させることなく、効率良く乾燥させることができ、所望とする含水率を得ることができる。そして、食品材料の色、形状、栄養素等の状態を保持しつつ、食品材料を良好な状態でかつ安価に乾燥することができる。
【0033】
(2) 低温水蒸気として低温過熱水蒸気を用いることにより、乾燥後における食品材料の含水率を例えば20%以下にまで容易に低下させることができる。
(3) 下限圧力と上限圧力とを絶対圧力で3〜92kPaの範囲内にて設定することにより、圧力変動を十分に行うことができ、熱変性に弱い食品材料の乾燥効率を向上させることができる。さらに、下限圧力と上限圧力の圧力差を大きく設定することにより、乾燥後における食品材料の含水率を一層低下させることができる。
【0034】
(4) 下限温度と上限温度とを40〜70℃の範囲内で設定することにより、食品材料を熱変性させることなく、乾燥させることができる。
(5) 熱変性に弱い食品材料の乾燥装置10として、食品材料を収容して乾燥するための乾燥庫11と、該乾燥庫11内を所定圧力まで減圧にするための減圧ユニット20と、乾燥庫11内を所定温度まで加熱するための低温水蒸気発生ユニット30とで構成することにより、装置の構成を簡易なものにすることができる。その上、1つの乾燥庫11内で乾燥工程に加えて、蒸し工程と殺菌工程を同時に行うことが可能であり、効率的かつ経済的な乾燥ができる。
【0035】
(6) 水蒸気発生ユニットには電気ヒータ34を設けることにより、低温水蒸気を電気ヒータ34で加熱して低温過熱水蒸気を容易に生成させることができる。
(7) 乾燥庫11内にクーラー16を設け、軸流ファン14によって乾燥庫11内の気体を循環させることにより、乾燥庫11内の水蒸気を効率良く冷却することができると共に、従来乾燥庫11の外部に設けられていたクーラー用コンデンサーを省略することができ、装置の簡素化を図ることができる。
【実施例】
【0036】
以下、実施例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。
(実施例1)
熱変性に弱い食品材料としてのニンジンを千切りにして、トレー13(面積0.4m)1枚に2kgのニンジンを入れて殺菌と乾燥を実施した。
【0037】
まず、殺菌工程では、乾燥庫11内の温度65℃、絶対圧力41.3kPa(ゲージ圧力−60kPa)に設定し、昇温後30分間殺菌を行った。乾燥工程では、高温側の上限温度T1を60℃、上限絶対圧力P1を21.3kPa(ゲージ圧力−80kPa)に設定し、低温側の下限温度T2を40℃、下限絶対圧力P2を6.3kPa(ゲージ圧力−95kPa)に設定し、低温過熱蒸気で5時間乾燥を行った。その後、ヒータ15を使用して温度60℃、絶対圧力41.3kPa(ゲージ圧力−60kPa)で真空熱風乾燥を4時間行った。乾燥したニンジンは含水率10%以下になり、色も綺麗に残っていた。
【0038】
一方、温度60℃で常圧熱風乾操をした場合には、乾燥時間18時間を要し、色も少し褪せていた。
(実施例2)
さつま芋を干し芋にするため、蒸しと乾燥と冷却を実施した。
【0039】
まず、蒸し工程では、さつま芋を丸太のまま、トレー13の1枚に10kg入れて温度90℃、絶対圧力81.3(ゲージ圧力−20kPa)で1時間低温水蒸気で蒸した。蒸し工程終了後、乾燥庫11から取出して、丸太芋を輪切りにカットしてトレー13の1枚に2kg並べて入れた。
【0040】
乾燥工程では、高温側の上限温度T1を70℃、上限絶対圧力P1を41.3kPa(ゲージ圧力−60kPa)にし、低温側の下限温度T2を40℃、下限絶対圧力P2を11.3kPa(ゲージ圧力−90kPa)に設定して3時間乾燥を行った。乾燥終了後、クーラー16に冷却水を流して乾燥庫11内を絶対圧力で3.3kPa(ゲージ圧力−98kPa)にして芋の温度が30℃になるまで真空冷却を行った。冷却後の干し芋は含水率50%で、綺麗な飴色になっており、従来の天日干しした干し芋よりも柔らかくなり、甘みが増していた。
【0041】
なお、前記実施形態を次のように変更して実施することも可能である。
・ 乾燥庫11は前記実施形態のように四角箱型でなくともよく、多角筒型、円筒型等であってもよい。
【0042】
・ セパレータ32と減圧弁体33と電気ヒータ34との位置関係は、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、いずれの順番であってもよい。
・ 前記実施形態の電気ヒータ34に代わる加熱手段として、IHヒータ(電磁ヒータ)等の他の公知の加熱装置を採用してもよい。
【0043】
・ 下限絶対圧力P2と上限絶対圧力P1との繰り返しにおいて、食品材料の含水率等に応じ圧力変動時間を適宜変更するように構成し、食品材料の乾燥効率を高めるようにすることもできる。
【0044】
・ 下限温度T2と上限温度T1との繰り返しにおいて、食品材料の含水率等に応じ温度変動時間を適宜変更するように構成し、食品材料の乾燥効率を向上させるようにすることもできる。
【符号の説明】
【0045】
10…熱変性に弱い食品材料の乾燥装置、11…乾燥庫、16…クーラー、20…減圧ユニット、30…低温水蒸気発生ユニット、34…電気ヒータ、P1…上限絶対圧力、P2…下限絶対圧力、T1…上限温度、T2…下限温度。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱変性に弱い食品材料を減圧下で乾燥するに際し、下限圧力とそのときの下限温度を設定すると共に、上限圧力とそのときの上限温度を設定し、圧力を下限圧力まで下げて前記食品材料の水分を蒸発させ、下限圧力での飽和温度である下限温度に到らしめた後、100℃以下の低温水蒸気を注入して食品材料を前記下限温度から上限温度まで加熱し、上限圧力まで到らしめ、この操作を繰り返して食品材料の含水率を低下させることを特徴とする熱変性に弱い食品材料の乾燥方法。
【請求項2】
前記低温水蒸気が低温過熱水蒸気であることを特徴とする請求項1に記載の熱変性に弱い食品材料の乾燥方法。
【請求項3】
前記下限圧力と上限圧力とが絶対圧力で3〜92kPaの範囲内にて設定されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の熱変性に弱い食品材料の乾燥方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の熱変性に弱い食品材料の乾燥方法に用いられる乾燥装置であって、
熱変性に弱い食品材料を収容して乾燥するための乾燥庫と、該乾燥庫内の圧力を下限圧力まで下げて前記食品材料の水分を蒸発させて下限圧力での飽和温度である下限温度に到らしめるための減圧ユニットと、乾燥庫内に低温水蒸気を注入して食品材料を前記下限温度から上限温度まで加熱して上限圧力まで到らしめるための低温水蒸気発生ユニットとを備えることを特徴とする熱変性に弱い食品材料の乾燥装置。
【請求項5】
前記低温水蒸気発生ユニットには、低温水蒸気を加熱して低温過熱水蒸気を生成するための電気ヒータを備えることを特徴とする請求項4に記載の熱変性に弱い食品材料の乾燥装置。
【請求項6】
前記乾燥庫内には、水蒸気を冷却するためのクーラーを備えることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の熱変性に弱い食品材料の乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−144954(P2011−144954A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−3947(P2010−3947)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【出願人】(597136456)有限会社コウムラテクノ (7)
【出願人】(390004226)株式会社大一テクノ (6)
【Fターム(参考)】