説明

熱延鋼帯の製造装置及び製造方法

【課題】圧延直後の急速均一冷却により所望の材質が得られるとともに早期の板張力及び板形状計測により歩留り向上が可能な熱延鋼帯の製造装置及び製造方法を提供する。
【解決手段】 仕上げ圧延機列11と、該仕上げ圧延機列の出側直後に設置された第1の冷却装置13と、該第1の冷却装置の出側に設置されてストリップSの上,下両面に当接するピンチロール14と、を備えるとともに、前記第1の冷却装置とピンチロールとの間に少なくともストリップSの上方に位置した水切りロール15を配置し、かつ該水切りロールとピンチロールとの間にストリップSの張力及び形状を測定する張力/形状測定装置16を設置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱延鋼帯の製造装置及び製造方法に係り、一層詳細には、圧延直後急冷で所望の材質が得られるとともに歩留りの良い生産が可能な熱延鋼帯の製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の熱間圧延設備としては、例えば特許文献1及び2に開示されたものが有る。即ち、特許文献1には、高水圧、高流量の強冷却の冷却バンクを用いたとしても、圧延板を安定して搬送することができ、高歩留りの熱間圧延システム等を得ることを目的として、冷却装置の出側にピンチロールを直近配置して、張力検出手段がピンチロールの駆動モータに供給される電流値に基づいて圧延板の張力を検出することが記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、ランアウトテーブルにおける冷却効率を可能な限り高めるとともに、圧延所要時間を最短化することを目的として、仕上げ圧延機列の出側に設けた冷却装置における堰止め(水切り)ロールを鋼板に密着させる場合、所定の押力で堰止めロールを鋼板に押し付けるとともに駆動トルクを与え、堰止めロールがピンチロールを兼ねる形態とすることが記載されている。これは、鋼板に極力早く張力を作用させて安定圧延状態を早く作り上げるためと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−136108号公報
【特許文献2】特開2005−342767号公報
【特許文献3】特開2005−66614号公報
【特許文献4】特開2006−346714号公報
【特許文献5】特許第3801145号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】S.P.Timoshenko、J.N.Goodier、『Theory of Elasticity THIRD EDITION』、McGRAW-HILL BOOK COMPANY INTERNATIONAL EDITION 1970
【非特許文献2】『板圧延の理論と実際』、社団法人 日本鉄鋼協会 昭和59年9月1日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1にあっては、駆動モータの出力トルクから張力を換算することになるが、駆動モータの出力トルクにはピンチロールの加速減速のためのトルクやピンチロールの軸受部の回転抵抗のトルクも含まれている。通常、熱延鋼帯の先端通板時の速度は低く、その後増速して、後端が抜ける前に減速するので、この加速減速のため圧延中にピンチロール周りの機械の慣性モーメントに基づくトルク変動が生じる。そのため、このトルク変動を考慮して張力をある設定値になるように制御することが求められるが、実際に熱延鋼帯に作用する張力を目標とする張力に合せることは難しく、差が存在する。また、特許文献1ではピンチロールの慣性モーメントを小さくする対策が述べられているが、慣性モーメントを小さくしたとしても加速減速のたびに反転するトルク変化が張力変化になってしまうことに変わりはなく、実際の張力との間に差が生じている。実際の張力を正確に把握できていないため、設定張力を安定的に維持することは難しいと言える。
【0007】
また、熱延鋼帯の先端通板時は冷却せずに先端がピンチロールに噛み込んだ後に冷却を行う場合、先端通板時と冷却開始後ではピンチロールと熱延鋼帯との間の摩擦係数が異なる。このような乾燥か湿潤かの他に、熱延鋼帯表面の凹凸やピンチロール表面の摩耗の影響なども摩擦係数に対して影響を与える。駆動モータの出力トルクで張力をコントロールしようとすると摩擦係数の正確な値が必要になるが、上記の各条件(外乱)それぞれにおける摩擦係数を把握することは、実質的に困難と言える。従って、ピンチロールと熱延鋼帯との間の摩擦係数が不安定な位置にあるピンチロールで張力をコントロールする場合、その把握された張力は多くの誤差を含むこととなる。そのため、ピンチロールで設定した張力は目標張力と実績張力が異なった状態で圧延が進行することとなる。そして、実績張力が極端に小さくなると冷却装置内で熱延鋼帯が上下にバタツキ均一冷却が出来なくなったり、上下のガイド装置に接触して疵付きが生じたり、通板ができなくなる問題が生じる。一方、張力が極端に大きな値になると熱延鋼帯の板厚が薄くなってしまうなどの板厚変動の要因となってしまう問題が生じる。
【0008】
さらに、ピンチロールで張力を検出することの問題点を以下に詳説する。

モータ出力Trは、Tr=Trt+ Trd
Trtは張力分のトルク、Trdはピンチロールを回転させるためのトルク
Trt=Tr−Trdであり、張力FtはFt=Trt/R・・・Rはピンチロールの半径
よって、測定できるTrからTrdを引くことで張力Ftを算出できる。

しかし、Trdはピンチロールと板との間の条件の変化や加速減速などピンチロール自身を回転制御するために必要なもので大きな変動要素のあるものである。Trdを張力算出の上での外乱と表現することもできる。

外乱を以下に表現してみると、
Trd=Trd1+Trd2+Trd3+・・・

Trd1:加速減速により変動するトルク・・・通板時の速度は低く、その後増速して、後端が抜ける前に減速するので、圧延中に、このトルク変動が大きくなる。これを考慮して張力をある設定値に入れることはかなり困難であり、実際の張力の変動は避けがたい。特許文献1ではピンチロールの慣性モーメントを小さくする対策が述べられている。しかし、慣性モーメントの影響で加速減速のたびに反転するトルク変化が張力変化になってしまうことを制御的に避けることが難しく、設定張力を安定的に維持することは難しい。
Trd2:ピンチロールのころがり抵抗の変化・・・ピンチロールの押付力を一定としても、速度変化があると、ころがり抵抗も変化する。ころがり抵抗の絶対値を低くするなどの対策によって、ころがり抵抗の変化を無視するようにするなどの対策が必要と考えられる。
Trd3:圧延中に板厚変化があるとき・・・ピンチロールの上下動をともない、機械系にヒステリシスがあると正味の押付力(板を押し付ける力)に変化が生じる。そのために張力が変動する。

尚、Trについて少し考察する。
例えば、ピンチロールによって張力が作用中に摩擦係数μ(縦軸:トラクション係数、横軸:すべり速度或いはすべり率で整理されたμカーブ)の変化がある。通板時が乾燥状態で、冷却開始で湿潤状態となるがこの過程でμカーブが刻々と変化する。このμの変化に対してモータ出力トルクでコントロールしようとするとμの正確な値を必要とするが、μは、熱延鋼帯の温度や表面の状態(凹凸、乾燥か湿潤かなど)、また、ピンチロール表面の摩擦などの影響も受けることから、このμを把握することは難しいと考えられる。
【0009】
このような問題は、堰止めロールをピンチロールとして使用する特許文献2においても同様に生じ、張力を正確に測定することができない。
【0010】
また、冷却をきちんと行うためには、熱延鋼帯の先端部から張力を張って冷却水を噴射することが求められる。張力が張られていないと冷却水噴射によって熱延鋼帯が上下方向に(板幅方向にも圧延方向にも)不安定となり、冷却の不均一が生じる不具合があった。また、熱延鋼帯が上下のガイド装置に接触して疵付きが生じたり、通板を阻害するなどの不具合もあった。そのため、できるだけ早く熱延鋼帯の先端部に張力を与えることが求められる。
【0011】
さらに、仕上げ圧延機列出側近傍に設けた冷却装置の出側に近接配置したピンチロールで単に張力を早く設定できたとしても、その時点で熱延鋼帯の板形状が分からない。板形状が悪いと冷却装置での冷却が不均一となり、冷却むらが生じるが、特許文献1及び2では、この観点での配慮がなされていない。
【0012】
仕上げ圧延機では、熱延鋼帯の先端部がダウンコイラに巻きついて張力が設定される前の張力が無い状態で熱延鋼帯の外観形状を観察する板形状計測方式が一般的である。冷却装置が仕上げ圧延機列出側に近接配置され、その出側に近接ピンチロールが配置された場合、その外観形状の観察は近接ピンチロールの出側に設置されることになり、その形状観察結果に基づいて、圧延機で形状を修正することとなるが、形状観察位置が仕上げ圧延機列から離れることで、形状不良部が調整されずに生産される部分が長くなるため歩留りが悪くなる。一方、形状を早く測定しようとして、仕上げ圧延機列の出側近くを形状観察位置とすると、仕上げ圧延機列出側近傍の冷却装置を仕上げ圧延機列から離すこととなり、圧延直後急冷による材質作りこみが出来なくなる。
【0013】
尚、特許文献3には、圧延機出側近傍の冷却装置におけるワイピング装置の出側近傍に形状検出器を配置する技術が開示されているが、これは冷間圧延に関するものであり、本発明の熱間圧延とは技術分野が異なるとともに、ピンチロールの記載が無いことから張力はコイラで付与するものと推察でき、ピンチロールで張力を付与する本発明とは構成が異なる。
【0014】
そこで、本発明の目的は、圧延直後の急速均一冷却により所望の材質が得られるとともに早期の板張力及び板形状計測により歩留り向上が可能な熱延鋼帯の製造装置及び製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的を達成するための本発明に係る熱延鋼帯の製造装置は、
仕上げ圧延機列と、該仕上げ圧延機列の出側直後に設置された冷却装置と、該冷却装置の出側に設置されて熱延鋼帯の上,下両面に当接するピンチロールと、を備えるとともに、前記冷却装置とピンチロールとの間に少なくとも熱延鋼帯の上方に位置した水切りロールを配置し、かつ該水切りロールとピンチロールとの間に熱延鋼帯の張力を測定する張力測定装置を設置したことを特徴とする。
【0016】
また、
前記張力測定装置は熱延鋼帯に任意の巻き付け角を設けたロールを有し、巻き付け角によって生じるロールへの押し付け力を測定して熱延鋼帯に作用した張力を求めるようにしたことを特徴とする。
【0017】
また、
仕上げ圧延機列と、該仕上げ圧延機列の出側直後に設置された冷却装置と、該冷却装置の出側に設置されて熱延鋼帯の上,下両面に当接するピンチロールと、を備えるとともに、前記冷却装置とピンチロールとの間に少なくとも熱延鋼帯の上方に位置した水切りロールを配置し、かつ該水切りロールとピンチロールとの間に熱延鋼帯の板形状を測定する形状計を設置したことを特徴とする。
【0018】
また、
前記形状計は熱延鋼帯に任意の巻き付け角を設けて熱延鋼帯の板幅方向に分割された複数のロールを有し、巻き付け角によって生じる各ロールへの押し付け力の板幅方向の分布を測定して該押付力分布から張力分布を求め、該張力分布から板形状を求めるようにしたことを特徴とする。
【0019】
また、
前記張力測定装置と形状計とは同一の装置であることを特徴とする。
【0020】
また、
前記張力測定装置及び/又は形状計は、ロールの上部に巻き付け角が存在することを特徴とする。
【0021】
また、
前記張力測定装置及び/又は形状計は、仕上げ圧延機列とピンチロールとの間の熱延鋼帯の張力が変化しようとしたときに、巻き付け角が変動して前記張力の変動が極力小さくなるようにしたことを特徴とする。
【0022】
また、
前記水切りロールは駆動ロールとし、水切りロール自身の熱延鋼帯への回転抵抗が極力小さくなるようにしたことを特徴とする。
【0023】
また、
仕上げ圧延機列と、該仕上げ圧延機列の出側直後に設置された冷却装置と、該冷却装置の出側に設置されて熱延鋼帯の上,下両面に当接するピンチロールと、を備えるとともに、前記冷却装置とピンチロールとの間に少なくとも熱延鋼帯の上方に位置した水切りロールを配置し、かつ該水切りロールとピンチロールとの間に熱延鋼帯の板形状を測定する形状計を設置し、さらには水切りロールからピンチロール出側に設置した空冷ゾーンを含む領域に熱延鋼帯の板幅方向温度分布を測定する熱延鋼帯温度計測装置を設置したことを特徴とする。
【0024】
また、
前記熱延鋼帯温度計測装置は、水切りロールとピンチロールとの間に設置したことを特徴とする。
【0025】
前記目的を達成するための本発明に係る熱延鋼帯の製造方法は、
仕上げ圧延機列と、該仕上げ圧延機列の出側直後に設置された冷却装置と、該冷却装置の出側に設置されて熱延鋼帯の上,下両面に当接するピンチロールと、を備えるとともに、前記冷却装置とピンチロールとの間に少なくとも熱延鋼帯の上方に位置した水切りロールを配置し、かつ該水切りロールとピンチロールとの間に熱延鋼帯の張力を測定する張力測定装置及び/又は熱延鋼帯の板形状を測定する形状計を設置し、前記張力測定装置及び/又は形状計のロールは熱延鋼帯の先端がピンチロールに噛み込んだ後に、熱延鋼帯に対し任意に定めた目標とする巻き付け角となるようにしたことを特徴とする。
【0026】
また、
前記張力測定装置及び/又は形状計のロールは、熱延鋼帯の先端がピンチロールに噛み込んだ後に熱延鋼帯に対し任意に定めた目標とする巻き付け角に設定され、その後は巻き付け角はほぼ同様の値に維持されて圧延し、熱延鋼帯の後端が当該ロールを通過する前に巻き付け角がなくなるようにしたことを特徴とする。
【0027】
また、
仕上げ圧延機列と、該仕上げ圧延機列の出側直後に設置された冷却装置と、該冷却装置の出側に設置されて熱延鋼帯の上,下両面に当接するピンチロールと、を備えるとともに、前記冷却装置とピンチロールとの間に少なくとも熱延鋼帯の上方に位置した水切りロールを配置し、かつ該水切りロールとピンチロールとの間に熱延鋼帯の板形状を測定する形状計を設置し、前記冷却装置による冷却下の板形状を検出しながら、仕上げ圧延機列の少なくとも最終スタンドにおける圧延機の形状調整機能を動作させるようにしたことを特徴とする。
【0028】
また、
前記ピンチロールの出側に空冷ゾーンを設け、前記水切りロールからピンチロール出側の空冷ゾーンを含む領域に熱延鋼帯の板幅方向温度分布を測定する熱延鋼帯温度計測装置を設置し、前記形状計で求めた板形状を、板幅方向温度分布に基づく圧延方向の伸び差分布で補正し、補正後の板形状を目標形状となるように仕上げ圧延機列の少なくとも最終スタンドにおける圧延機の形状調整機能を動作させるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
前記構成の本発明に係る熱延鋼帯の製造装置及び製造方法によれば、仕上げ圧延機列の出側直後に設置された冷却装置により圧延直後の急速冷却が可能となり、例えばフェライト組織の結晶粒径が3〜4μm以下という微細粒組織からなる熱延鋼帯が得られる。そして、水切りロールとピンチロールとの間に張力測定装置及び/又は形状計を設置したので、早期の板張力及び板形状計測により均一冷却が可能となって冷却むらを最小とするとともに安定した圧延状態が得られて歩留り向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施例1を示す熱間圧延設備の全体構成図である。
【図2】板張力及び板形状測定装置の設置位置を示す図1の要部拡大図である。
【図3】板張力及び板形状測定装置の巻き付け角を示す図1の要部拡大図である。
【図4A】仕上げ圧延機列最終スタンドの形状制御における各々の特性図である。
【図4B】仕上げ圧延機列最終スタンドの形状制御における各々の特性図である。
【図5A】非特許文献1に基づく計算モデルと各々の関係図である。
【図5B】非特許文献1に基づく各々の関係図である。
【図6】本発明の実施例2を示す熱間圧延設備の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に係る熱延鋼帯の製造装置及び製造方法を実施例により図面を用いて詳細に説明する。
【実施例1】
【0032】
図1は本発明の実施例1を示す熱間圧延設備の全体構成図、図2は板張力及び板形状測定装置の設置位置を示す図1の要部拡大図、図3は板張力及び板形状測定装置の巻き付け角を示す図1の要部拡大図、図4A及び図4Bは仕上げ圧延機列最終スタンドの形状制御における各々の特性図、図5Aは非特許文献1に基づく計算モデルと各々の関係図、図5Bは非特許文献1に基づく各々の関係図である。
【0033】
図1に示すように、熱間圧延設備10は、仕上げ圧延機列11の最終スタンド12の出側直後に設置された第1の冷却装置13と、該第1の冷却装置13の出側に設置されてストリップ(熱延鋼帯)Sの上,下両面に当接するピンチロール14と、を備えるとともに、前記第1の冷却装置13とピンチロール14との間に水切りロール15が配置され、かつ該水切りロール15とピンチロール14との間には、ストリップSの張力及び形状を測定する接触式の張力/形状測定装置16とストリップSの板幅方向温度分布を測定する温度測定装置(熱延鋼帯温度計測装置)17が設置される。
【0034】
そして、ピンチロール14の出側に空冷ゾーン(計測ゾーン)18を介して第2の冷却装置19が配置されるとともに、該第2の冷却装置19の出側にコイラ前ピンチロール20を介してダウンコイラ21がストリップSの搬送方向へ2段に亘って設置される。尚、空冷ゾーン(計測ゾーン)18においては、一般的に、板厚計測、板プロファイル(板厚の幅方向分布)計測、張力作用前の板形状計測、板温度計測等が行われる。
【0035】
従って、仕上げ圧延機列11の最終スタンド12を経たストリップSは、第1の冷却装置13→水切りロール15→張力/形状測定装置16→ピンチロール14→空冷ゾーン18→第2の冷却装置19→コイラ前ピンチロール20へと搬送された後、ダウンコイラ21により巻き取られる。尚、この際、仕上げ圧延機列11(特に最終スタンド12)のパスラインをその他のパスラインとほぼ一定にすると、後述する第1の冷却装置13における冷却水の噴射状態が良好となり好適である。
【0036】
図2に示すように、第1の冷却装置13は、ストリップSの上,下両面に多数のノズル22から多量の冷却水が、例えば1000℃/S程度の冷却速度で直接噴射され、ストリップSを急速に冷却することが可能になっている。具体的には、ストリップSの上面は最終スタンド12のロールと水切りロール15とにより画成された冷却水のプール23を介して冷却水が噴射されるとともに、ストリップSの下面は通板エプロン24に形成された図示しない多数の噴射孔を通して冷却水が噴射される。
【0037】
図3に示すように、張力/形状測定装置16はストリップSの下側に設置される。そして、張力/形状測定装置16はストリップSの下面に任意の巻き付け角(巻き付け角θ=θ1+θ2)を設けてストリップSの板幅方向に分割された複数のロール16aを有し、巻き付け角θによって生じる各ロール16aへの押し付け力の板幅方向の分布を測定して該押付力分布から張力分布を求め、該張力分布から板形状を求めるようになっている。尚、この張力/形状測定装置16は、本出願人等による特許文献4で提案済みであるのでこれを参照して詳細な説明は省略する。該張力分布の合計をストリップSの張力として測定する方法以外にも以下の方法がある。即ち、図1,図2で張力/形状測定装置16は、破線の位置から旋回してストリップSに巻き付け角θを設けているが、従来の仕上げ圧延機列11内のルーバと同様に、この旋回の支点部に作用するトルクを利用して張力を検出することも可能である。
【0038】
そして、張力/形状測定装置16のロール16aは、ストリップSの先端がピンチロール14に噛み込んだ後に、ストリップSに対し任意に定めた目標とする巻き付け角θとなり、その後、巻き付け角θはほぼ同様の値に維持されて圧延し、ストリップSの後端が当該ロール16aを通過する前に巻き付け角θがなくなるようになっている。
【0039】
また、水切りロール15がストリップSをピンチしないので、水切りロール15と張力/形状測定装置16が近接配置されたとしても、張力/形状測定装置16により冷却部の張力を正確に測ることができるのである。後述するが、水切りロール15の下にロールを配置してピンチしたときは、板との接触圧力の板幅方向分布や摩擦係数の板幅方向分布などによって、板幅方向で局部的に負荷分布が作用するため、水切りロール15を張力/形状測定装置16に近接配置すると、前記の局部的負荷分布が板形状測定上の誤差となる問題が生じる。また、ストリップSの上面に接する水切りロール15は駆動ロールで構成され、ロール自身のストリップSへの回転抵抗が小さくなるようになっている。尚、この際、水切りロール15と接するストリップSには曲がりが作用するが、この曲がりは、ストリップSの表裏(厚さ方向の上面と下面)で絶対値がほぼ等しい圧縮と引張として作用するので、張力へ影響するものではないから板幅方向に張力分布を発生させることがなく、張力/形状測定装置16を水切りロール15に近づけても板形状を正確に測定することができる。
【0040】
温度測定装置17は、水切りロール15とピンチロール14との間のストリップSの上方に配置され、張力/形状測定装置16で求めた板形状を、板幅方向温度分布に基づく圧延方向の伸び差分布で補正し、補正後の板形状を目標形状となるように仕上げ圧延機列11の少なくとも最終スタンド12における圧延機の形状調整機能を動作させるようになっている。圧延機の形状調整機能としては、ロールベンダーやシフト等の機械的制御手段やロールクーラントの幅方向流量分布を変更して形状制御を行うことが考えられる(特許文献3参照)。また、その他に、圧延機の少なくともワークロールをクロスする方式なども形状調整機能として考えられる。
【0041】
ここで、仕上げ圧延機列11の最終スタンド12における圧延機の形状制御を図4A及び図4Bの特性図に基づいて説明する。
【0042】
(1)図中(a)の特性は、張力/形状測定装置16で形状を測定した結果の一例を示す。クォータ部に伸びのある形状であることがわかる。一方、図中(b)の特性は板幅方向の温度分布を示す。図2の温度測定装置17で測定した結果である。温度差Δtによる伸び歪εは、線膨張係数αsを用いて、ε=αs×Δtとなる。例えば、αs=1.5×10^(−5)(単位1/℃)で、Δt=5℃ならば、ε=7.5×10^(−5)となる。この伸び歪εが伸び差率を意味するものであり、ε=1.0×10^(−5)が1I−unit(平坦度の測定単位)である。図中(c)の特性は図中(b)の特性の温度分布から伸び差率を求めた値である。圧延及び冷却後、水切りロール15とピンチロール14との間で測定した結果、この幅方向温度分布があることから、この温度分布による伸び差率がすでに存在していると考えられる。その状態で形状を測定した結果が図中(a)の特性であるから、図中(d)の特性=図中(a)の特性−図中(c)の特性が仕上げ圧延機列出側の冷却前形状と考えられる。図中(d)の特性の冷却前形状を図中(e)の特性の目標形状になるように最終スタンド12の形状制御機能で直そうとするものである。
このように、同じ温度になったときに、幅方向の形状が目標形状になるような圧延方法とすることによって、冷却後の良好な板形状を得ることができる。
(2)一方、圧延の安定性を考えたとき、上記の方法と異なる使い方も存在する。幅方向の張力分布がほぼ対称でバランスしていれば、板は横行しにくい条件であることが言える。しかし、幅方向の張力分布が作業側と駆動側で差が大きい場合、板が横行しやすい条件となっていることが考えられる。この板の横行が問題となる場合は、張力分布が幅方向でほぼ対称になっていることが求められるため、作業側と駆動側で非対称な温度分布があったときは張力が対称になるように仕上げ圧延機列11をコントロールすることで圧延の安定性が得られる。
このように、(1)と(2)を組み合わせた操業、つまり、(1),(2)を両立した操業が求められる。
【0043】
そして、本実施例では、第1の冷却装置13における冷却水の衝突位置から張力/形状測定装置16までの距離L1と張力/形状測定装置16からピンチロール14までの距離L2が、それぞれ(0.5〜1.0)×W(ここでは、Wは最大板幅)に設定され、冷却水噴射完了からピンチロール14までの距離L3が可及的に短くなるようになっている。
【0044】
ここで、張力/形状測定装置16の設置位置について、非特許文献1と非特許文献2に基づいて説明すると、先ず、非特許文献1のP.58〜60には、集中荷重が作用した場合、その荷重が作用した位置から離れるほど、幅方向の負荷分布が一様になっていく傾向が述べられており、板幅以上離れた位置では幅方向負荷分布がかなり均一な分布になっていくことが述べられている。
【0045】
このことから、負荷が作用している位置から少なくとも板幅以上離れたところで板形状を測定することで、ストリップSに対して作用する負荷の影響をかなり少なくすることができることは定性的に理解できる。ここで、板形状を測定する位置の入側あるいは出側で、板幅方向に張力分布を与えるような局部的な外力としては、第1の冷却装置13における冷却水噴射によるストリップSへの幅方向の局部的な衝突力とピンチロール14によるストリップSを挟み込むことにより生じる幅方向押付け条件の不均一性が考えられる。荷重作用位置即ち第1の冷却装置13における冷却水の衝突位置から張力/形状測定装置16までの距離L1及び張力/形状測定装置16からピンチロール14までの距離L2のそれぞれが、板幅以上の長さとすると、前記の局部的な負荷は少なくとも集中荷重よりも条件は良いと考えられることから、張力/形状測定装置16において形状測定に対して外力の負荷の影響はかなり少なくなると考えられる。しかし、冷却完了からピンチロール14までの距離L3(=L1+L2)が長くなってしまう問題があった。
【0046】
これを非特許文献1のFig.37,38をもとに詳細に分析すると以下のようになる。図5の(a)に計算モデルを示す。幅方向の中央に単位長さあたりの荷重Pが集中荷重として作用している。荷重Pが作用しているところからcだけ離れたところをy座標=0とする。
【0047】
図5の(b)には、c=0.5Wのときのy=0における幅位置と係数Kの関係を示す。係数Kは、板幅方向の応力(σy)の均一応力(P/W)に対する比である。x/Wが0のところ、すなわち、板幅中央では係数Kのピークがあり、c=0.5Wのときは、板幅中央では均一荷重の約1.4倍の応力が存在することが分かる。
【0048】
図5の(c)は、作用点からの距離/板幅と板幅中央におけるK値(K0)の関係を示す。係数K0は、板幅中央に作用するピーク応力(σy(0))の均一応力(P/W)に対する比である。c/Wが1のとき、K0は1.0にかなり近い値であり、c/Wの増加で1.0にさらに近づいていき、幅方向負荷分布の均一度が増加していく。
【0049】
図5の(d)は、作用点からの距離/板幅と板幅中央における換算形状Δshapeの関係を示す。図中に示すΔεyは、板幅中央の応力σy(0)と均一応力P/Wとの応力差Δσy(0)=σy(0)−P/Wに相当する伸び差率である。ΔshapeはこのΔεyを用いて、Δshape=Δεy×10^5として算出されるものであり、換算形状と表現した。Δshapeの単位はI−unitである。I−unitの定義は、例えば非特許文献2のP.266による。
【0050】
図5の(a)では、荷重Pが圧縮の方向となっているが、引張の方向に作用しても同様の傾向となる。形状計は、圧延され、また、冷却された板に内在する板形状を測定することを目的としている。このことを考慮すると集中荷重のような局部的な負荷の作用は、板形状測定の測定上の誤差として取り扱われるものであり、前記換算形状として板形状の測定ポイントで存在することになる。
【0051】
圧延において検出する板形状は、5〜10I−unit以上が一般的である。板形状を測定する上で誤差となる換算形状Δshapeは小さいほど好ましいが、2I−unit以下であれば、5〜10I−unit以上を検出することに対する影響は少ないとすることができる。図5の(d)から、c/Wが0.5以上ではΔshapeは2I−unit以下となる。つまり、局部的な負荷が作用しているところから、少なくとも板幅Wの0.5倍離れた位置までは、Δshapeを2I−unit以下とすることができ、測定上の実害の無い状態で板形状を測定できることとなる。また、図5の(d)から、c/Wが0.5以下になると換算形状Δshapeは急激に増加し測定上の誤差として無視できなくなる。
【0052】
冷却噴射によって、例えばスプレー水のような圧力のある水が局部的に板にあたるとその部分では圧延方向の張力が局部的に増加し、板幅方向の局部的な負荷として作用する。また、ピンチロールの噛込み部でも、ピンチロールと板の接触圧力の板幅方向分布や摩擦係数の板幅方向分布などによって、板幅方向で局部的に負荷分布が作用する。この局部的な負荷分布は板に内在する形状そのものではないが、少なくとも板幅Wの0.5倍離れた位置で板形状を測定することで、換算形状Δshapeを2I−unit以下とすることができ、局部的な負荷の板形状測定に対する影響はほとんどなくなる。板幅方向で局部的な負荷から板幅Wの0.5倍以下しか離れていない位置で板形状を測定すると、局部的な負荷の影響が局部的な張力として測定上の誤差、即ち、外乱となり、板形状を正確に測定することが難しくなる。
【0053】
以上から、局部的な負荷が作用した位置から(0.5〜1.0)×W離れた位置に張力/形状測定装置16を設置することで、第1の冷却装置13における冷却水噴射完了からピンチロール14までの距離を短くして、かつ板形状の計測もストリップSに作用する負荷による外乱を少なくすることができる。
【0054】
本実施例によれば、ピンチロール14を冷却装置(第1の冷却装置13)から隔てて配置し、その間に水切りロール15と非水冷ゾーン(ここでは、水切りロール15とピンチロール14の間)が設けられている。冷却装置によって噴射されたストリップSの上面の冷却水は、水切りロール15で切られ、非水冷ゾーンでは水が切られた状態となる。ストリップSの下面は、冷却水が下方に落下するので、非水冷ゾーンで容易に水がない状態となり得る。水切りロール15を設置して非水冷ゾーンを設けることで、水切り状態が安定し、ストリップSとピンチロール14との間の摩擦状態を安定化し、摩擦係数の変動、即ち、摩擦係数の外乱を小さくすることができる。さらに、ピンチロール14を冷却装置から隔てて配置し、水切りロール15とピンチロール14との間で張力を測定することができるようにしたので、ピンチロール14自身の慣性モーメントに基づく張力変動など装置が生み出す外乱を考慮せずに実績張力を把握できる。この張力の正確な把握により、目標張力への調整が容易となり、張力を安定的に維持することが可能となる。
【0055】
また、第1の冷却装置13を仕上げ圧延機列11の出側直後に配置するとともに、張力/形状測定装置16を水切りロール15とピンチロール14との間に配置してストリップSの張力及び形状を早期に測定・把握できるようにしたので、圧延直後急冷による材質作りこみができ、例えばフェライト組織の結晶粒径が3〜4μm以下という微細粒組織からなる熱延鋼帯が得られる一方、高歩留りを確保できる。
【0056】
この際、前述したように第1の冷却装置13における冷却水の衝突位置から張力/形状測定装置16までの距離L1と張力/形状測定装置16からピンチロール14までの距離L2を、(0.5〜1.0)×W(最大板幅)に設定し、冷却水噴射完了からピンチロール14までの距離L3を可及的に短くしたので、前述した水切りロール15による効果的な水切り作用も相まって、張力/形状測定装置16の高い測定精度を維持しつつ歩留りを高められる。
【0057】
また、水切りロール15とピンチロール14との間に張力/形状測定装置16を設置したので、早期の板張力及び板形状計測により均一冷却が可能となって冷却むらを最小とするとともに安定した圧延状態が得られて歩留り向上が図れる。また、張力/形状測定装置16は、一つの装置として纏められているので、それぞれ別個に配置することに比べて、省スペースが図れる。
【0058】
また、温度測定装置17は、張力/形状測定装置16で求めた板形状を、板幅方向温度分布に基づく圧延方向の伸び差分布で補正し、補正後の板形状を目標形状となるように仕上げ圧延機列11の少なくとも最終スタンド12における圧延機の形状調整機能を動作させるようになっているので、仕上げ圧延機列11を出たストリップSの板形状が既に目標形状に調整されているので、より一層冷却むらが生じない。勿論、温度測定装置17による温度測定をしないで、張力/形状測定装置16で冷却中の板形状を検出しながら、仕上げ圧延機列11の少なくとも最終スタンド12における圧延機でストリップSの形状調整を行うようにしても良い。尚、温度測定装置17は、張力/形状測定装置16に近い位置に設置されることで上記の補正がより正確に行われる。
【0059】
また、張力/形状測定装置16のロール16aは、ストリップSの先端がピンチロール14に噛み込んだ後に、ストリップSに対し任意に定めた目標とする巻き付け角θとなり、その後、巻き付け角θはほぼ同様の値に維持されて圧延し、ストリップSの後端が当該ロール16aを通過する前に巻き付け角θがなくなるようになっているので、ストリップSの先端がピンチロール14に噛み込んだ直後に任意に定めた目標とする張力及び形状に設定でき、冷却開始を早いタイミングで行うことができてより一層歩留りが向上する。また、巻き付け角θは、圧延中ほぼ一定であるので、張力/形状測定装置16のロール16aは、仕上げ圧延機列11のスタンド間のようにルーパが上下動する方式でなくても可能である。この場合、巻き付け角θを一定とするので装置が簡単なものになる。
【実施例2】
【0060】
図6は本発明の実施例2を示す熱間圧延設備の要部拡大図である。
【0061】
これは、実施例1における張力/形状測定装置16を単なる張力測定装置16Aに変更して形状測定は空冷ゾーン18(図1参照)における形状測定手段で行うようにした例である。この張力測定装置16Aは非分割の連続する一本のロール16aの両端の軸受部にロードセルを内蔵し、これをパンタグラフ機構等でストリップSの下面に付勢することでストリップS全体の張力を測定するものである。
【0062】
また、空冷ゾーン18における形状測定手段は、熱延鋼帯の外観形状を観察する板形状計測方式となっており、ダウンコイラ21がストリップSの先端部を巻き取り張力が作用するまでの、張力が作用していない間に形状を測定するものであり、該形状測定結果を用いて仕上げ圧延機列11で形状調整を行うようにしている。
【0063】
この実施例においても、実施例1と同様の作用効果が得られる。
【0064】
ところで、通常、ピンチロール14ではストリップSを圧延しないため、ピンチロール14にストリップSの先端が噛み込まれた後のピンチロール14と最終スタンド12との間のストリップSの張力変動は、仕上げ圧延機列11内のスタンド間の張力変動よりも小さいと想定されるが、大きな張力変動が生じようとする場合もある。このような場合、張力/形状測定装置16の測定結果を用いてピンチロール14のモータドライブを制御したとしても、ピンチロール14のモータドライブの張力に対応した制御が追付かなくなり、張力に変化が生じてしまう。
【0065】
ここで、大きな張力変動が生じようとする原因としては、第1の冷却装置13の冷却開始に伴うピンチロール14とストリップSとの間の摩擦係数の急変などが考えられる。このように大きな張力変動が生じようとすることがある場合には、仕上げ圧延機列11のスタンド間で使用されているルーパと同様に、本発明のように張力/形状測定装置16を上下動させて巻き付け角θを変動させることで、ストリップSの張力変動を極力小さくすることが可能である。これによって、ピンチロール14と最終スタンド12との間のストリップSの張力変動を極力小さくすることができる。
【0066】
また、本発明は上記各実施例に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、第1の冷却装置13や張力/形状測定装置16の構造変更等各種変更が可能であることはいうまでもない。特に、第1の冷却装置13として本出願人等による特許文献5に開示された冷却装置を用いると好適である。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明に係る熱延鋼帯の製造装置及び製造方法は、製鉄プロセスラインに適用することができる。
【符号の説明】
【0068】
10 熱間圧延設備
11 仕上げ圧延機列
12 最終スタンド
13 第1の冷却装置
14 ピンチロール
15 水切りロール
16 張力/形状測定装置
16A 張力測定装置
16a ロール
17 温度測定装置
18 空冷ゾーン
19 第2の冷却装置
20 コイラ前ピンチロール
21 ダウンコイラ
22 ノズル
23 冷却水のプール
24 通板エプロン
S ストリップ
θ 巻き付け角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
仕上げ圧延機列と、該仕上げ圧延機列の出側直後に設置された冷却装置と、該冷却装置の出側に設置されて熱延鋼帯の上,下両面に当接するピンチロールと、を備えるとともに、前記冷却装置とピンチロールとの間に少なくとも熱延鋼帯の上方に位置した水切りロールを配置し、かつ該水切りロールとピンチロールとの間に熱延鋼帯の張力を測定する張力測定装置を設置したことを特徴とする熱延鋼帯の製造装置。
【請求項2】
前記張力測定装置は熱延鋼帯に任意の巻き付け角を設けたロールを有し、巻き付け角によって生じるロールへの押し付け力を測定して熱延鋼帯に作用した張力を求めるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の熱延鋼帯の製造装置。
【請求項3】
仕上げ圧延機列と、該仕上げ圧延機列の出側直後に設置された冷却装置と、該冷却装置の出側に設置されて熱延鋼帯の上,下両面に当接するピンチロールと、を備えるとともに、前記冷却装置とピンチロールとの間に少なくとも熱延鋼帯の上方に位置した水切りロールを配置し、かつ該水切りロールとピンチロールとの間に熱延鋼帯の板形状を測定する形状計を設置したことを特徴とする熱延鋼帯の製造装置。
【請求項4】
前記形状計は熱延鋼帯に任意の巻き付け角を設けて熱延鋼帯の板幅方向に分割された複数のロールを有し、巻き付け角によって生じる各ロールへの押し付け力の板幅方向の分布を測定して該押付力分布から張力分布を求め、該張力分布から板形状を求めるようにしたことを特徴とする請求項3に記載の熱延鋼帯の製造装置。
【請求項5】
前記張力測定装置と形状計とは同一の装置であることを特徴とする請求項1,2,3又は4に記載の熱延鋼帯の製造装置。
【請求項6】
前記張力測定装置及び/又は形状計は、ロールの上部に巻き付け角が存在することを特徴とする請求項1,2,3,4又は5に記載の熱延鋼帯の製造装置。
【請求項7】
前記張力測定装置及び/又は形状計は、仕上げ圧延機列とピンチロールとの間の熱延鋼帯の張力が変化しようとしたときに、巻き付け角が変動して前記張力の変動が極力小さくなるようにしたことを特徴とする請求項1,2,3,4,5又は6に記載の熱延鋼帯の製造装置。
【請求項8】
前記水切りロールは駆動ロールとし、水切りロール自身の熱延鋼帯への回転抵抗が極力小さくなるようにしたことを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6又は7に記載の熱延鋼帯の製造装置。
【請求項9】
仕上げ圧延機列と、該仕上げ圧延機列の出側直後に設置された冷却装置と、該冷却装置の出側に設置されて熱延鋼帯の上,下両面に当接するピンチロールと、を備えるとともに、前記冷却装置とピンチロールとの間に少なくとも熱延鋼帯の上方に位置した水切りロールを配置し、かつ該水切りロールとピンチロールとの間に熱延鋼帯の板形状を測定する形状計を設置し、さらには水切りロールからピンチロール出側に設置した空冷ゾーンを含む領域に熱延鋼帯の板幅方向温度分布を測定する熱延鋼帯温度計測装置を設置したことを特徴とする熱延鋼帯の製造装置。
【請求項10】
前記熱延鋼帯温度計測装置は、水切りロールとピンチロールとの間に設置したことを特徴とする請求項9に記載の熱延鋼帯の製造装置。
【請求項11】
仕上げ圧延機列と、該仕上げ圧延機列の出側直後に設置された冷却装置と、該冷却装置の出側に設置されて熱延鋼帯の上,下両面に当接するピンチロールと、を備えるとともに、前記冷却装置とピンチロールとの間に少なくとも熱延鋼帯の上方に位置した水切りロールを配置し、かつ該水切りロールとピンチロールとの間に熱延鋼帯の張力を測定する張力測定装置及び/又は熱延鋼帯の板形状を測定する形状計を設置し、前記張力測定装置及び/又は形状計のロールは熱延鋼帯の先端がピンチロールに噛み込んだ後に、熱延鋼帯に対し任意に定めた目標とする巻き付け角となるようにしたことを特徴とする熱延鋼帯の製造方法。
【請求項12】
前記張力測定装置及び/又は形状計のロールは、熱延鋼帯の先端がピンチロールに噛み込んだ後に熱延鋼帯に対し任意に定めた目標とする巻き付け角に設定され、その後は巻き付け角はほぼ同様の値に維持されて圧延し、熱延鋼帯の後端が当該ロールを通過する前に巻き付け角がなくなるようにしたことを特徴とする請求項11に記載の熱延鋼帯の製造方法。
【請求項13】
仕上げ圧延機列と、該仕上げ圧延機列の出側直後に設置された冷却装置と、該冷却装置の出側に設置されて熱延鋼帯の上,下両面に当接するピンチロールと、を備えるとともに、前記冷却装置とピンチロールとの間に少なくとも熱延鋼帯の上方に位置した水切りロールを配置し、かつ該水切りロールとピンチロールとの間に熱延鋼帯の板形状を測定する形状計を設置し、前記冷却装置による冷却下の板形状を検出しながら、仕上げ圧延機列の少なくとも最終スタンドにおける圧延機の形状調整機能を動作させるようにしたことを特徴とする熱延鋼帯の製造方法。
【請求項14】
前記ピンチロールの出側に空冷ゾーンを設け、前記水切りロールからピンチロール出側の空冷ゾーンを含む領域に熱延鋼帯の板幅方向温度分布を測定する熱延鋼帯温度計測装置を設置し、前記形状計で求めた板形状を、板幅方向温度分布に基づく圧延方向の伸び差分布で補正し、補正後の板形状を目標形状となるように仕上げ圧延機列の少なくとも最終スタンドにおける圧延機の形状調整機能を動作させるようにしたことを特徴とする請求項13に記載の熱延鋼帯の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−71316(P2012−71316A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216352(P2010−216352)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(502251784)三菱日立製鉄機械株式会社 (130)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【Fターム(参考)】