説明

熱式流量センサおよび負圧吸着装置

【課題】幅広い範囲の流量領域において、高い精度で判定を行う。
【解決手段】発熱素子および発熱素子の両側に設けられる一対の温度検出素子を有する流量センサの出力を用いて空気の流量を算出する流量算出部131と、流量センサの出力を増幅することで、空気の流量に対する出力電圧の変化の度合いを拡大させる増幅部132と、増幅部132による増幅率を変更する増幅率変更回路と、増幅部132の基準電圧をシフトすることで、空気の流量に対する出力電圧により表される出力特性をシフトさせる出力シフト回路と、増幅率変更回路をオン/オフする第1のスイッチと、出力シフト回路をオン/オフする第2のスイッチと、外部からの信号に応じて第1のスイッチおよび第2のスイッチのオン/オフをそれぞれ制御するスイッチ制御部133と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱式流量センサおよび負圧吸着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品などの小型の部品をプリント配線基板上に搬送する場合、吸着ノズルに部品を吸着させて搬送する負圧吸着装置が用いられる。負圧吸着装置では、エジェクタや真空ポンプなどの負圧発生装置で発生した負圧を用いて吸着ノズルの空気吸込口から空気を吸引することにより、吸着ノズルに部品を吸着させる。負圧吸着装置では、部品の吸着/開放が正常に行われていることを知らせるために、吸着確認センサを設けている。下記特許文献1には、部品の吸着の有無を確認するための吸着確認センサとして熱式流量センサを用い、流量の多少に基づき部品の吸着/開放を判定する負圧吸着装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−9166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
負圧吸着装置には、吸着対象となる部品の大きさに合わせてノズルの口径を変更するものがある。このような負圧吸着装置では、例えば、口径の小さなノズルでの部品吸着の有無を判定する場合には、比較的低い流量を用いて判定することになり、口径の大きなノズルの装着状態の正否を判定する場合には、比較的高い流量を用いて判定することになる。つまり、ノズルの口径を変更する負圧吸着装置で各種の判定を行う場合には、幅広い範囲の流量を用いることになる。
【0005】
ところが、熱式流量センサの流量に対する出力電圧により表される出力特性はリニアではなく、例えば、低流量領域では流量に対する出力電圧の変化の度合いが大きいのに対し、高流量領域では流量に対する出力電圧の変化の度合いが小さくなる。この場合に、例えば口径の大きなノズルの装着状態の正否を判定しようとすると、高流量領域の流量を用いて判定することになるため、低流量領域の流量を用いて判定する場合に比べて精度良く判定することができない。
【0006】
そこで本発明は、幅広い範囲の流量領域において、高い精度で判定を行うことができる熱式流量センサおよび負圧吸着装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる熱式流量センサは、駆動回路から付与される電力によって発熱する発熱素子および当該発熱素子の両側に設けられる一対の温度検出素子を有するセンサと、前記温度検出素子の各電気抵抗の変化に対応する出力電圧の変化の度合いを拡大させる増幅部と、前記増幅部による増幅率を変更する増幅率変更回路と、を備える。
【0008】
かかる構成により、増幅部による増幅率を変更することで、センサの検出値の変化に対応する出力電圧の変化の度合いを変更させることができる。それゆえに、流量を用いて行い得る各種の判定に用いる流量に応じて、その流量に対する出力電圧の変化の度合いを拡大させることが可能となる。
【0009】
本発明にかかる熱式流量センサは、駆動回路から付与される電力によって発熱する発熱素子および当該発熱素子の両側に設けられる一対の温度検出素子を有するセンサと、前記温度検出素子の各電気抵抗の変化に対応する出力電圧の変化の度合いを拡大させる増幅部と、前記増幅部の基準電圧をシフトすることで、前記温度検出素子の各電気抵抗から求まる流体の流量に対する出力電圧により表される出力特性をシフトさせる出力シフト回路と、を備える。
【0010】
かかる構成により、増幅部の基準電圧をシフトすることで、流量に対する出力電圧により表される出力特性をシフトさせることができる。それゆえに、流量を用いて行い得る各種の判定に用いる流量に応じて、その流量に対する出力電圧の変化の度合いを拡大させることが可能となる。
【0011】
本発明にかかる熱式流量センサは、駆動回路から付与される電力によって発熱する発熱素子および当該発熱素子の両側に設けられる一対の温度検出素子を有するセンサと、前記温度検出素子の各電気抵抗の変化に対応する出力電圧の変化の度合いを拡大させる増幅部と、前記増幅部による増幅率を変更する増幅率変更回路と、前記増幅部の基準電圧をシフトすることで、前記温度検出素子の各電気抵抗から求まる流体の測定流量に対する出力電圧により表される出力特性をシフトさせる出力シフト回路と、を備える。
【0012】
かかる構成により、増幅部による増幅率を変更することで、センサの検出値の変化に対応する出力電圧の変化の度合いを変更させることができ、増幅部の基準電圧をシフトすることで、流量に対する出力電圧により表される出力特性をシフトさせることができる。それゆえに、流量を用いて行い得る各種の判定に用いる流量に応じて、その流量に対する出力電圧の変化の度合いを拡大させることが可能となる。
【0013】
また、本発明にかかる負圧吸着装置は、上記流熱式流量センサと、負圧発生装置で発生した負圧を利用して部品を吸着する吸着ノズルと、を備え、前記熱式流量センサは、前記吸着ノズルから吸い込まれる空気の流量を計測する。
【0014】
かかる構成を採用することで、負圧吸着装置で流量を用いて行い得る各種の判定を、当該判定で用いる流量に対する出力電圧の変化の度合いを十分に拡大した後の出力に基づいて判定させることが可能となる。
【0015】
上記熱式流量センサにおいて、前記測定流量または外部からの信号に応じて、前記増幅率および前記基準電圧のシフト操作をそれぞれ制御する制御部をさらに備えることとしてもよい。また、上記熱式流量センサにおいて、前記増幅率変更回路をオン/オフする第1のスイッチと、前記出力シフト回路をオン/オフする第2のスイッチと、をさらに備え、前記制御部は、前記測定流量または前記外部からの信号に応じて、前記第1のスイッチおよび前記第2のスイッチのオン/オフをそれぞれ制御することとしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、幅広い範囲の流量領域において、高い精度で判定を行うことができる熱式流量センサおよび負圧吸着装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態における負圧吸着装置の外観図であり、図1(a)は正面図、図1(b)は側面図である。
【図2】図1に示す吸着確認センサの分解斜視図である。
【図3】図2に示すIII−III線矢視方向断面図である。
【図4】図3に示す流量センサの斜視図である。
【図5】図4に示すV−V線矢視方向断面図である。
【図6】図2に示す制御回路の機能構成図であり
【図7】図2に示す制御回路の回路構成図である。
【図8】図1に示す吸着確認センサの出力特性を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の実施形態について説明する。以下の図面の記載では、同一または類似の部分を同一または類似の符号で表す。ただし、図面は模式的なものである。したがって、具体的な寸法等は以下の説明と照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれる。
【0019】
図1は本発明の実施形態における負圧吸着装置の外観図であり、図1(a)は正面図、図1(b)は側面図である。負圧吸着装置は、例えば、プリント配線基板にチップ部品を実装するためのマウンタ装置に搭載することができる。以下においては、複数の吸着ノズルが直線上に配置されたモジュラー式(XY式)マウンタ装置に搭載した負圧吸着装置について説明するが、本発明は複数の吸着ノズルが円周上に配置されたロータリー式マウンタ装置にも同様に適用することができる。
【0020】
図1に示す負圧吸着装置は、吸着確認センサ1と、ノズル部3を含む吸着ノズル2と、空気吸引通路4A〜4Cと、バルブ5と、配管6と、負圧発生装置7と、ヘッドユニット9とを有する。負圧発生装置7としては、例えば、エジェクタや真空ポンプ等を用いることができる。
【0021】
ヘッドユニット9の底部には、5つの吸着ノズル2が等間隔で着脱自在に取り付けられている。ヘッドユニット9は、吸着ノズル2の先端にあるノズル部3の昇降動作や、ノズル部3の上下方向を軸とする回転動作を制御する。
【0022】
各吸着ノズル2は、空気吸引通路4A、吸着確認センサ1、空気吸引通路4B、バルブ5および空気吸引通路4Cを介して配管6にそれぞれ接続されている。各吸着ノズル2は、負圧発生装置7で発生した負圧を利用して部品を吸着する。
【0023】
本実施形態における負圧吸着装置は、吸着対象となる部品の大きさに合わせてノズル部3を交換することができる。本実施形態では、以下において、口径の異なる大小2種類のノズル部3を交換して使用する場合について説明する。
【0024】
バルブ5は、吸着ノズル2への負圧/大気圧の供給を制御して部品の吸着/開放を制御する。吸着確認センサ1は、本発明の熱式流量センサの一例である。吸着確認センサ1は、吸着ノズル2から吸い込まれる空気の流量に基づいて、例えば吸着ノズル2での部品吸着の有無等を判定する。
【0025】
図2および図3を参照して、吸着確認センサ1について説明する。図2は、吸着確認センサ1の分解斜視図であり、図3は、図2に示すIII−III線矢視方向断面図である。
【0026】
吸着確認センサ1は、全体として直方体をなしており、プラスチック樹脂製の成型品からなるケース14内に、空気が流れる流路15が形成され、その流路15を流れる空気の流量を計測する流量センサ12が流路15内に配置されている。
【0027】
流量センサ12は、熱式センサであり、基板11に実装されている。流量センサ12が実装されている基板11の反対側の面には、制御回路13が実装されている。制御回路13は、流量センサ12を制御して流路15内の空気流量を測定し、例えば吸着ノズル2での部品吸着の有無等を示す電気信号を出力する。
【0028】
図4は、流量センサ12の斜視図であり、図5は、図4に示すV−V線矢視方向断面図である。図4および図5に示すように、流量センサ12は、キャビティ26が設けられた基板20と、基板20上にキャビティ26を覆うように配置された絶縁膜25と、絶縁膜25に設けられた発熱素子としての発熱抵抗体21と、発熱抵抗体21より上流側(図4,図5において左側)に設けられた温度検出素子としての上流側測温抵抗素子22と、発熱抵抗体21より下流側(図4,図5において右側)に設けられた温度検出素子としての下流側測温抵抗素子23と、上流側測温抵抗素子22より上流側に設けられた温度センサ24と、を有する。
【0029】
絶縁膜25のキャビティ26を覆う部分は、熱容量が小さく、基板20に対して断熱性を有するダイヤフラムを構成する。温度センサ24は、流路15に流入してきた空気の温度を測定する。発熱抵抗体21は、キャビティ26を覆う絶縁膜25の中心に配置されており、駆動回路(不図示)から付与される電力によって発熱する。発熱抵抗体21は、温度センサ24が計測した空気の温度よりも一定温度高くなるように加熱される。上流側測温抵抗素子22は、発熱抵抗体21より上流側の温度を検出するために用いられる。下流側測温抵抗素子23は、発熱抵抗体21より下流側の温度を検出するために用いられる。
【0030】
ここで、図3に示す流路15中の空気が静止(停止)している場合には、図4および図5に示す発熱抵抗体21によって加えられた熱は、上流方向と下流方向へ対称的に拡散する。したがって、上流側測温抵抗素子22および下流側測温抵抗素子23の温度は等しくなり、上流側測温抵抗素子22および下流側測温抵抗素子23の電気抵抗は等しくなる。これに対し、流路15中の空気が上流から下流に流れている場合には、発熱抵抗体21によって加えられた熱は、下流方向に運ばれる。したがって、上流側測温抵抗素子22の温度よりも、下流側測温抵抗素子23の温度の方が高くなる。そのため、上流側測温抵抗素子22の電気抵抗と下流側測温抵抗素子23の電気抵抗との間に差が生じる。
【0031】
下流側測温抵抗素子23の電気抵抗と上流側測温抵抗素子22の電気抵抗との差は、流路15を流れる空気の流量と相関関係がある。それゆえに、下流側測温抵抗素子23の電気抵抗と上流側測温抵抗素子22の電気抵抗との差から、流路15を流れる空気の流量を算出することができる。また、流路15中の空気が下流から上流に流れる場合であっても、同様に、上流側測温抵抗素子22の電気抵抗と下流側測温抵抗素子23の電気抵抗との差から、流路15を流れる空気の流量を算出することができる。
【0032】
図4および図5に示す基板20の材料としては、シリコン(Si)などが使用可能である。絶縁膜25の材料としては、酸化ケイ素(SiO2)などが使用可能である。キャビティ26は、異方性エッチングなどにより形成される。また発熱抵抗体21、上流側測温抵抗素子22、下流側測温抵抗素子23および温度センサ24の各材料には白金(Pt)などが使用可能であり、リソグラフィ法などにより形成可能である。
【0033】
図6および図7を参照して、制御回路13について説明する。図6は、制御回路13の機能構成図であり、図7は、制御回路13の回路構成図である。
【0034】
制御回路13は、機能的には、例えば図6に示すように、流量算出部131と、増幅部132と、スイッチ制御部133と、判定部134とを有し、物理的には、例えば図7に示すように、ブリッジ回路Bと、インスツルメンテーションアンプAと、出力シフト回路Sと、CPU(不図示)と、メモリ(不図示)とを含んで構成される。
【0035】
図7に示すブリッジ回路Bは、上流側測温抵抗素子22、下流側測温抵抗素子23および抵抗R3,R4を含む。インスツルメンテーションアンプAは、三つのオペアンプOP1〜OP3と、6つの抵抗R5〜R10と、増幅率変更回路ARとを含む。増幅率変更回路ARは、インスツルメンテーションアンプAの増幅率を増加させる抵抗R1と、増幅率変更回路ARをオン/オフするスイッチSW1と、を含む。出力シフト回路Sは、インスツルメンテーションアンプAが用いる基準電圧を低下させる抵抗R2と、出力シフト回路Sをオン/オフするスイッチSW2と、を含む。インスツルメンテーションアンプAが用いる基準電圧は、所定電圧VBを抵抗R11と抵抗R12とで分圧した電圧となる。
【0036】
図6に示す流量算出部131は、発熱抵抗体21を発熱させたときの上流側測温抵抗素子22および下流側測温抵抗素子23の各電気抵抗(温度)に基づいて、空気の流量を算出する。具体的に、流量算出部131は、下流側測温抵抗素子23の電気抵抗と上流側測温抵抗素子22の電気抵抗との差をブリッジ回路Bで検出し、空気の熱伝導率などの物性値に基づいて空気の流量(質量流量)を算出する。流量算出部131は、所定の検出間隔ごとに流量センサ12を駆動して空気の流量を算出する。
【0037】
増幅部132は、ブリッジ回路Bで検出された電気抵抗の差をインスツルメンテーションアンプAで増幅する。
【0038】
スイッチ制御部133は、外部からの信号に応じてスイッチSW1、SW2のオン/オフを制御する。スイッチ制御部133がスイッチSW1をオフからオンに切り替えると、増幅率変更回路ARが接続状態となり、インスツルメンテーションアンプAでの増幅率が増加する。スイッチ制御部133がスイッチSW2をオフからオンに切り替えると、出力シフト回路Sが接続状態となり、インスツルメンテーションアンプAが用いる基準電圧が低下する。
【0039】
外部からの信号としては、例えば、小型ノズル装着時の部品の吸着の有無を判定する際に用いる比較的低い流量領域である低流量領域の流量(例えば、0L/min〜1L/min)に対する出力を要求する低流量判定要求信号や、大型ノズルの装着状態の正否を判定する際に用いる比較的高い流量領域である高流量領域の流量(例えば、5L/min〜6L/min)に対する出力を要求する高流量判定要求信号等がある。
【0040】
スイッチ制御部133は、低流量判定要求信号を受信した場合には、スイッチSW2をオフにしたまま、スイッチSW1をオフからオンに切り替える。スイッチ制御部133は、高流量判定要求信号を受信した場合には、スイッチSW1およびスイッチSW2をオフからオンにそれぞれ切り替える。
【0041】
判定部134は、インスツルメンテーションアンプAの出力に基づいて、流量を用いて行い得る各種の判定を行う。各種の判定としては、例えば、部品の吸着の有無判定やノズルの装着状態の正否判定等が該当する。以下に、判定部134による判定について具体的に説明する。
【0042】
本実施形態における負圧吸着装置では、小型のノズル部3を装着した場合には、部品吸着時の空気流量は略0L/minとなり、部品開放時の空気流量は略1L/minとなる。したがって、判定部134は、小型のノズル部3を装着した時に部品の吸着の有無を判定する場合には、低流量領域に該当する0〜1L/minの流量に対応する出力電圧に基づいて判定する。つまり、出力電圧が0L/minに対応する値である場合、判定部134は、部品が吸着していると判定し、その旨を示す電気信号を出力する。一方、出力電圧が1L/minに対応する値である場合、判定部134は、部品が吸着していないと判定し、その旨を示す電気信号を出力する。
【0043】
また、本実施形態における負圧吸着装置では、大型のノズル部3を装着した場合には、ノズル部3が正常に装着している時の空気流量は略5L/minとなり、ノズル部3が正常に装着していない時の空気流量は略6L/minとなる。したがって、判定部134は、大型のノズル部3を装着した時にノズル部3の装着状態の正否を判定する場合には、高流量領域に該当する5〜6L/minの流量に対応する出力電圧に基づいて判定する。つまり、出力電圧が5L/minに対応する値である場合、判定部134は、ノズル部3が正常に装着していると判定し、その旨を示す電気信号を出力する。一方、出力電圧が6L/minに対応する値である場合、判定部134は、ノズル部3が正常に装着していないと判定し、その旨を示す電気信号を出力する。
【0044】
上述のように構成される負圧吸着装置は、例えば、以下のように動作する。
【0045】
最初に、バルブ5が負圧発生装置7側に切り替えられると、負圧発生装置7で発生する負圧を利用して、ノズル部3の空気吸込口から空気を吸い込む。これにより、空気吸引通路4Aを介して吸着確認センサ1に空気が流入し、吸着確認センサ1は、空気の流量を計測する。吸着確認センサ1を通過した空気は、空気吸引通路4B、バルブ5、空気吸引通路4C、配管6を介して負圧発生装置7に到達する。その結果、ノズル部3の空気吸込口の真下に位置する部品がノズル部3の先端に吸着される。
【0046】
続いて、バルブ5が大気圧側に切り替えられると、空気の吸い込みを停止する。その結果、ノズル部3の先端に吸着されていた部品が開放される。
【0047】
ノズル部3の先端に部品が吸着している吸着状態では、部品によりノズル部3の空気吸込口の開口面積が狭められるため、吸い込まれる空気量が減少し、吸着確認センサ1の出力は低い出力電圧となる。一方、ノズル部3の先端に部品が吸着していない開放状態では、ノズル部3の空気吸込口から比較的多くの空気が吸い込まれるため、吸着確認センサ1の出力は高い出力電圧となる。
【0048】
図8を参照して、吸着確認センサ1における流量に対する出力電圧の出力特性について説明する。点線G0は、負圧吸着装置で利用可能な全流量領域をカバーする吸着確認センサ1の出力特性を示す。この出力特性G0は、低流量領域では流量に対する出力電圧の変化の度合いが比較的大きいのに対し、高流量領域に移るにしたがって流量に対する出力電圧の変化の度合いが小さくなる。このような特性は、一般的な熱式センサに共通する特徴である。
【0049】
このような出力特性G0に基づいて出力電圧を出力すると、高流量領域での流量に対する出力電圧の変化の度合いが小さいため、大型のノズル部3の装着状態を高精度で判定するためには、高分解能の判定装置が必要となる。そこで、本実施形態では、低流量領域用の出力特性G1と高流量領域用の出力特性G2とを、判定に用いる流量に応じて切り替えることで、高分解能の判定装置を用いることなく、各種の判定を可能とした。
【0050】
低流量領域用の出力特性G1は、出力特性G0の増幅率を増加させることで得られる出力特性である。具体的には、図7に示すスイッチSW1をオンにし、スイッチSW2をオフにすることで、低流量領域用の出力特性G1が得られる。
【0051】
高流量領域用の出力特性G1は、出力特性G0の増幅率をさらに増加させ、インスツルメンテーションアンプAが用いる基準電圧を低電圧側にシフトすることで得られる出力特性である。具体的には、図7に示すスイッチSW1およびスイッチSW2をそれぞれオンにすることで、高流量領域用の出力特性G2が得られる。
【0052】
このように、各種の判定に用いる流量に応じて出力特性を切り替えることで、低流量領域および高流量領域の双方で流量に対する出力電圧の変化の度合いを大きくすることができ、判定精度を向上させることができる。
【0053】
具体的には、例えば、小型のノズル部3装着時に部品の吸着の有無を判定する場合には、低流量領域用の出力特性G1に基づいて出力した出力電圧を用いて判定する。図8に示すように、出力特性G1を用いることで、低流量領域に該当する0L/minと1L/minとの間の出力電圧差が、出力特性G0を用いた場合に比べて大きくなることがわかる。
【0054】
また、例えば、大型のノズル部3装着時にノズル部の装着の正否を判定する場合には、高流量領域用の出力特性G2に基づいて出力した出力電圧を用いて判定する。図8に示すように、出力特性G2を用いることで、高流量領域に該当する5L/minと6L/minとの間の出力電圧差が、出力特性G0を用いた場合に比べて大きくなることがわかる。
【0055】
上述したように、本実施形態における負圧吸着装置によれば、スイッチSW1をオンにすることで、空気流量に対する出力電圧の変化の度合いをさらに拡大させることができ、スイッチSW2をオンにすることで、空気流量に対する出力電圧により表される出力特性を低電圧側にシフトさせることができる。それゆえに、各種の判定に用いる空気流量の領域に応じて、その領域に属する空気流量に対する出力電圧の変化の度合いを拡大させることが可能となる。
【0056】
具体的には、外部からの信号が高流量判定要求信号である場合には、スイッチSW1およびスイッチSW2のそれぞれオンにすることで、空気流量に対する出力電圧の変化の度合いをさらに拡大させ、出力特性を低電圧側にシフトさせることができるため、高流量領域の流量に対する出力電圧の変化の度合いを拡大させることができる。
【0057】
また、外部からの信号が低流量判定要求信号である場合には、スイッチSW2をオフにしたままスイッチSW1をオンすることで、空気流量に対する出力電圧の変化の度合いをさらに拡大させることができるため、低流量領域の流量に対する出力電圧の変化の度合いを拡大させることができる。
【0058】
[変形例]
本発明を、上述した実施形態によって説明したが、この開示の一部をなす記述および図面は、この発明を限定するものではない。この開示から当業者には様々な代替の実施形態や運用技術等が明らかになるはずである。
【0059】
例えば、上述した実施形態では、小型のノズル部3を装着して部品吸着の有無を判定する際に、低流量領域用の出力特性G1を用いているが、これに限定されず、例えば、出力特性G0をそのまま用いることとしてもよい。これは、熱式センサである流量センサ12の出力特性G0(流量に対する出力電圧)の変化の度合いが低流量領域において大きいという特性をそのまま利用できるためである。この場合には、図7に示すスイッチSW1およびスイッチSW2をそれぞれオフにすることで、出力特性G0を得ることができる。
【0060】
また、上述した実施形態では、2種類の出力特性G1、G2を切り替えて一つの出力電圧を出力しているが、これに限定されない。例えば、出力特性G1に基づいて出力電圧を出力し、それとは別に、出力特性G2に基づいて出力電圧を出力することとしてもよい。この場合に、図6に示す制御回路13は、増幅部132の替わりに、出力特性G1に基づいて出力電圧を出力する増幅部と、出力特性G2に基づいて出力電圧を出力する増幅シフト部とを備え、スイッチ制御部133を省略することとすればよい。
【0061】
増幅部および増幅シフト部について具体的に説明する。増幅部は、ブリッジ回路で検出された電気抵抗の差をインスツルメンテーションアンプで増幅することで、ブリッジ回路で検出された各電気抵抗の変化に対応する出力電圧の変化の度合いを拡大させる。増幅シフト部は、ブリッジ回路で検出された電気抵抗の差をインスツルメンテーションアンプで増幅することで、ブリッジ回路で検出された各電気抵抗の変化に対応する出力電圧の変化の度合いを拡大させるとともに、インスツルメンテーションアンプが用いる基準電圧を低電圧側にシフトすることで、ブリッジ回路で検出された各電気抵抗の変化に対応する出力電圧により表される出力特性を低電圧側にシフトさせる。
【0062】
このように構成することで、各種の判定を行う際に、判定に用いる流量に対する出力電圧の変化の度合いが大きい方の出力を用いて判定を行うことが可能となる。
【0063】
また、上述した実施形態におけるスイッチ制御部133は、外部からの信号に応じてスイッチSW1、SW2のオン/オフを制御しているが、これに限定されない。例えば、スイッチ制御部133は、流量算出部131によって算出された空気の流量(測定流量)に応じてスイッチSW1、SW2のオン/オフを制御することとしてもよい。具体的には、スイッチ制御部133は、測定流量が低流量領域に属すると判定した場合には、スイッチSW2をオフにしたまま、スイッチSW1をオフからオンに切り替える。スイッチ制御部133は、測定流量が高流量領域に属すると判定した場合には、スイッチSW1およびスイッチSW2をオフからオンにそれぞれ切り替える。
【0064】
また、上述した実施形態における制御回路13は、増幅率変更回路ARおよび出力シフト回路Bの双方を備えているが、これに限定されない。例えば、制御回路13は、少なくとも増幅率変更回路ARおよび出力シフト回路Bのいずれか一方を備えることとしてもよい。
【0065】
最後に、上述した実施形態では、本発明に係る熱式流量センサを、負圧吸着装置の吸着確認センサに適用した場合について説明しているが、これに限定されない。本発明に係る熱式流量センサは、流体の流量に基づいて判定を行う種々の装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0066】
1…吸着確認センサ、2…吸着ノズル、3…ノズル部、4A〜4C…空気吸引通路、5…バルブ、6…配管、7…負圧発生装置、9…ヘッドユニット、11…基板、12…流量センサ、13…制御回路、14…ケース、15…流路、20…基板、21…発熱抵抗体、22…上流側測温抵抗素子、23…下流側測温抵抗素子、24…温度センサ、25…絶縁膜、26…キャビティ、131…流量算出部、132…増幅部、133…スイッチ制御部、134…判定部、A…インスツルメンテーションアンプ、AR…増幅率変更回路、B…ブリッジ回路、S…出力シフト回路、SW1、SW2…スイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動回路から付与される電力によって発熱する発熱素子および当該発熱素子の両側に設けられる一対の温度検出素子を有するセンサと、
前記温度検出素子の各電気抵抗の変化に対応する出力電圧の変化の度合いを拡大させる増幅部と、
前記増幅部による増幅率を変更する増幅率変更回路と、
を備えることを特徴とする熱式流量センサ。
【請求項2】
駆動回路から付与される電力によって発熱する発熱素子および当該発熱素子の両側に設けられる一対の温度検出素子を有するセンサと、
前記温度検出素子の各電気抵抗の変化に対応する出力電圧の変化の度合いを拡大させる増幅部と、
前記増幅部の基準電圧をシフトすることで、前記温度検出素子の各電気抵抗から求まる流体の流量に対する出力電圧により表される出力特性をシフトさせる出力シフト回路と、
を備えることを特徴とする熱式流量センサ。
【請求項3】
駆動回路から付与される電力によって発熱する発熱素子および当該発熱素子の両側に設けられる一対の温度検出素子を有するセンサと、
前記温度検出素子の各電気抵抗の変化に対応する出力電圧の変化の度合いを拡大させる増幅部と、
前記増幅部による増幅率を変更する増幅率変更回路と、
前記増幅部の基準電圧をシフトすることで、前記温度検出素子の各電気抵抗から求まる流体の測定流量に対する出力電圧により表される出力特性をシフトさせる出力シフト回路と、
を備えることを特徴とする熱式流量センサ。
【請求項4】
前記測定流量または外部からの信号に応じて、前記増幅率および前記基準電圧のシフト操作をそれぞれ制御する制御部をさらに備えることを特徴とする請求項3記載の熱式流量センサ。
【請求項5】
前記増幅率変更回路をオン/オフする第1のスイッチと、
前記出力シフト回路をオン/オフする第2のスイッチと、をさらに備え、
前記制御部は、前記測定流量または前記外部からの信号に応じて、前記第1のスイッチおよび前記第2のスイッチのオン/オフをそれぞれ制御することを特徴とする請求項4記載の熱式流量センサ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱式流量センサと、
負圧発生装置で発生した負圧を利用して部品を吸着する吸着ノズルと、を備え、
前記熱式流量センサは、前記吸着ノズルから吸い込まれる空気の流量を計測することを特徴とする負圧吸着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−203180(P2011−203180A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−72337(P2010−72337)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】