熱拡散体および発熱体の冷却装置
【課題】面方向の熱伝導性に優れると共に、更に層方向の熱伝導性にも優れる熱拡散体およびそれを用いた発熱体の冷却装置を提供する。
【解決手段】熱拡散体において、板厚方向に比べて、長手方向および幅方向に良好な熱伝導性を有する短冊状の熱伝導性板材111が、板厚方向に複数積層された積層体として形成された熱拡散体であって、積層体において、熱伝導性板材111の長手方向の辺111aによって積層方向に形成される面が、板状に拡がる板面110aとなるように形成されると共に、板面110aに対して直交する方向が、厚さ方向となるように形成されるようにする。
【解決手段】熱拡散体において、板厚方向に比べて、長手方向および幅方向に良好な熱伝導性を有する短冊状の熱伝導性板材111が、板厚方向に複数積層された積層体として形成された熱拡散体であって、積層体において、熱伝導性板材111の長手方向の辺111aによって積層方向に形成される面が、板状に拡がる板面110aとなるように形成されると共に、板面110aに対して直交する方向が、厚さ方向となるように形成されるようにする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子等の発熱体の熱を効果的に伝導させる熱拡散体、およびそれを用いた発熱体の冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、発熱体を冷却するための熱拡散体(高熱伝導性部材)として、例えば特許文献1に示されるように、銅やアルミニウム等の金属材料に代えて、グラファイト構造体が用いられたものが知られている。グラファイト構造体単独のa−b軸方向と同一となる面方向の熱伝導率は、1000W/mKを超え、銅の熱伝導率(350〜400W/mK)の2倍以上、アルミニウムの熱伝導率(200〜250W/mK)の4倍以上の熱伝導性を有している。しかしながら、グラファイト構造体単独の層方向(厚さ方向)の熱伝導率は、10W/mK以下であり、これを改善するために特許文献1では、板面に対して平行な面(面方向)にa−b軸が配向したグラファイト構造体の内部に、カーボン構造体が配置されたものが提案されている。
【0003】
これにより、母材となるグラファイト構造体が有する面方向の高熱伝導性を維持しつつ、グラファイト構造体内部に適宜配置されたカーボン繊維集合体からなるカーボン構造体によって、層方向にもこのカーボン構造体を介した効率的な熱の伝播を可能としている。その結果、グラファイト構造体単独の場合と比較して、層方向熱伝導率を向上させることが可能となると共に、部材の引張り強度や厚さも増すことにも貢献できる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−272164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1中の記載(段落番号0077、0083、0086、0093)によれば、層方向熱伝導率を向上させたといっても、層方向熱伝導率は、20〜100W/mK程度となっており、グラファイト構造体単独の層方向熱伝導率(10W/mK)の数倍〜10倍程度であり、銅やアルミニウム等の金属材料と比べると、未だに低いレベルにある。
【0006】
本発明の目的は、上記問題に鑑み、面方向の熱伝導性に優れると共に、更に層方向の熱伝導性にも優れる熱拡散体およびそれを用いた発熱体の冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するために、以下の技術的手段を採用する。
【0008】
請求項1に記載の発明では、板厚方向に比べて、長手方向および幅方向に良好な熱伝導性を有する短冊状の熱伝導性板材(111)が、板厚方向に複数積層された積層体として形成された熱拡散体であって、
積層体において、熱伝導性板材(111)の長手方向の辺(111a)によって積層方向に形成される面が、板状に拡がる板面(110a)となるように形成されると共に、
板面(110a)に対して直交する方向が、厚さ方向となるように形成されたことを特徴としている。
【0009】
この発明によれば、熱拡散体(110)を構成する熱伝導性板材(111)は、その板厚方向に比べて長手方向および幅方向に良好な熱伝導性を有しており、熱拡散体(110)は、この熱伝導性板材(111)が板厚方向に積層されることで形成されている。よって、熱伝導性板材(111)の長手方向の辺(111a)によって積層方向に形成される板面(110a)においては、熱伝導性板材(111)の長手方向に良好な熱伝導性を持たせることができる。また、熱拡散体(110)の板面(110a)に直交する厚さ方向は、熱伝導性板材(111)の幅方向と一致することになり、熱拡散体(110)の厚さ方向にも良好な熱伝導性を持たせることができる。よって、熱拡散体(110)の板面(110a)即ち面方向と、厚さ方向即ち層方向との両方向において熱伝導性に優れる熱拡散体(110)とすることができる。
【0010】
請求項2に記載の発明では、前記積層体を複数備え、
複数の積層体(110A、110B)は、厚さ方向に積層され、複数の積層体(110A、110B)の間に介在される無機物の層(112)によって接合されており、
隣り合う積層体(110A、110B)において、熱伝導性板材(111)の積層方向が互いに異なるように配置されたことを特徴としている。
【0011】
この発明によれば、複数の積層体(110A、110B)のうち、隣り合う一方の積層体(110A)の板面(110a)における熱伝導性に優れる方向と、隣り合う他方の積層体(110B)の板面(110a)における熱伝導性に優れる方向とが異なるものとすることができる。よって、厚さ方向に積層体(110A、110B)が複数積層された熱拡散体(100B)の全体で見たときに、板面(110a)において、一方向だけではなく、異なる方向にも良好な熱伝導性を持たせることができる。つまり、板面(110a)の2方向において良好な熱伝導性を有すると共に、厚さ方向にも良好な熱伝導性を有する熱拡散体(110)とすることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明では、互いに異なる熱伝導性板材(111)の積層方向の成す角度が、85〜90度の角度を成すことを特徴としている。
【0013】
この発明によれば、隣り合う一方の積層体(110A)の板面(110a)における熱伝導性に優れる方向と、隣り合う他方の積層体(110B)の板面(110a)における熱伝導性に優れる方向との成す角度を85〜90度の角度とすることができるので、厚さ方向に積層体(110A、110B)が複数積層された熱拡散体(110)の全体で見たときに、厚さ方向に良好な熱伝導性を持たせることに加えて、板面(110a)において、ほぼ直交する2方向に良好な熱伝導性を持たせることができる。つまり、熱拡散体(110)の3軸方向に良好な熱伝導性を有する熱拡散体(110)とすることができる。
【0014】
請求項4に記載の発明では、無機物の層(112)は、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、錫(Sn)、鉛(Pb)、および金(Au)のうち少なくとも1つを含んだ層であることを特徴としている。
【0015】
この発明によれば、複数の積層体(110A、110B)を積層し、無機物の層(112)によって接合することで熱拡散体(110)を形成する場合に、熱伝導性および電気伝導性に優れ、且つ接合性に優れる接合層とすることができる。
【0016】
請求項5に記載の発明では、積層体は、板面(110a)の拡がる方向に複数配置されると共に、複数の積層体のそれぞれの板面(110a)の一部が、発熱体(120)を接続するための接続用領域に含まれるようになっており、
それぞれの積層体において、
それぞれの積層体の熱伝導性板材(111)の長手方向は、
接続用領域内の任意の一点(A)と、
それぞれの積層体の外周部のうち、複数の積層体によって形成される全体の外周部に含まれる外周部上の任意の点(B)とを結ぶ仮想線に対して平行となるように配置されたことを特徴としている。
【0017】
この発明によれば、それぞれの積層体においては、接続用領域内の任意の一点(A)から外周部上の任意の点(B)に向かう仮想線に平行となるように熱伝導性板材(111)の長手方向を設定しているので、板面(110a)上にて仮想線に平行となる方向、および厚さ方向に良好な熱伝導性を持たせることができる。更に、複数の積層体によって形成される熱拡散体(110)においては、接続用領域内の任意の一点(A)から熱拡散体(110)の外周部に向けて拡がる方向、および厚さ方向に良好な熱伝導性を持たせることができる。つまり、発熱体(120)を熱拡散体(110)に接続した際に、発熱体(120)の熱を接続用領域から熱拡散体(110)の外周部に向けて拡がるように、且つ厚さ方向に良好に伝導させることのできる熱拡散体(110)とすることができる。
【0018】
請求項6に記載の発明では、複数の積層体は、板面(110a)が四角形状を成す4つの積層体(110C〜110F)から成り、
それぞれの積層体(110C〜110F)の四角形状の1つの角部が接続用領域に含まれるようになっていることを特徴としている。
【0019】
この発明によれば、材料を無駄にすることなく、実現性の高い熱拡散体(110)を容易に形成することができる。
【0020】
請求項7に記載の発明では、積層体の厚さ方向の熱伝導率が、600W/mK以上であることを特徴としている。
【0021】
この発明によれば、良好な熱伝導を必要とする広い分野での利用を可能とする熱拡散体(110)とすることができる。
【0022】
請求項8に記載の発明では、熱伝導性板材(111)は、グラファイト材料、またはグラファイトと金属との複合材料であることを特徴としている。
【0023】
この発明によれば、グラファイト材料、またはグラファイトと金属との複合材料は、通常使用される銅材やアルミニウム材よりも良好な熱伝導性を有することから、本願発明に用いることで熱伝導性に優れる熱拡散体(110)を実現することができる。
【0024】
請求項9に記載の発明では、冷却装置において、請求項1〜請求項8のいずれか1つに記載の熱拡散体(110)と、
熱拡散体(110)の一方の板面(110a)に配設された発熱体(120)と、
熱拡散体(110)の他方の板面(110a)に配設された絶縁板(130)と、
絶縁板(130)の熱拡散体(110)とは反対側の面に配設された冷却器(140)とを備えることを特徴としている。
【0025】
この発明によれば、板面(110a)および厚さ方向に良好な熱伝導率を有する熱拡散体(100)を用いた、発熱体(120)の効果的な冷却が可能となる。
【0026】
請求項10に記載の発明では、発熱体(120)は、半導体素子(120)であり、
熱拡散体(110)と、絶縁板(130)との間に、金属板(150)が配設されたことを特徴としている。
【0027】
この発明によれば、絶縁板(130)によって冷却器(140)側への漏電を阻止して、金属板(150)を半導体素子(120)の電力取出し部として活用することができる。
【0028】
請求項11に記載の発明では、発熱体(120)は、半導体素子(120)であり、
発熱体(120)と、熱拡散体(110)との間に、金属板(150)が配設されたことを特徴としている。
【0029】
この発明によれば、半導体素子(120)と金属板(150)とを直接的に接触させることができるので、半導体素子(120)が大電流を使用するような場合では、請求項10に記載の発明に比べて、熱拡散体(110)による電気抵抗を受けないようにして、金属板(150)を半導体素子(120)の電力取出し部として活用することができる。
【0030】
請求項12に記載の発明では、冷却装置において、請求項3に記載の熱拡散体(110)であって、積層体を2つ備える熱拡散体(110)と、
熱拡散体(110)の一方の板面(110a)に配設された発熱体(120)と、
熱拡散体(110)の他方の板面(110a)に配設された絶縁板(130)と、
絶縁板(130)の熱拡散体(110)とは反対側の面に配設された冷却器(140)とを備え、
熱拡散体(110)における2つの積層体(110A、110B)のうち、一方の積層体(110A)の厚さ方向の寸法をt1、他方の積層体(110B)の厚さ方向の寸法をt2とし、
一方の積層体(110A)の熱伝導性板材(111)の長手方向において、発熱体(120)の中心位置から熱拡散体(110)の端までの距離をr1、他方の積層体(110B)の熱伝導性板材(111)の長手方向において、発熱体(120)の中心位置から熱拡散体(110)の端までの距離をr2としたとき、
寸法t1、t2、および距離r1、r2の間に、
0.5≦(t1/t2)/(r1/r2)≦2
という関係が成立つことを特徴としている。
【0031】
この発明によれば、一方の積層体(110A)において、距離r1が大きいほど、発熱体(120)の熱を距離r1側に伝導させるのが好ましいと言える。同様に、他方の積層体(110B)においても、距離r2が大きいほど、発熱体(120)の熱を距離r2側に伝導させるのが好ましいと言える。そして、各積層体(110A、110B)の厚さ方向の寸法は、伝導される熱の大小に応じて、厚くすべき、あるいは薄くすべきものとなる。つまり、距離r1(r2)が大きければ、寸法t1(t2)を大きくすることができ、逆に距離r1(r2)が小さければ、寸法t1(t2)を小さくする必要がある。よって、熱拡散体(110)において良好な熱伝導を考えると、理論上は、(r1/r2)と、(t1/t2)とを同じ値にするのが好ましく、(t1/t2)/(r1/r2)=1とするのが良い、ということになる。この理論値1に対して、実際的には、0.5〜2.0の範囲で熱伝導させることで、熱拡散体(110)における良好な熱伝導が得られ、良好な発熱体(120)の冷却が可能となる。
【0032】
請求項13に記載の発明では、熱拡散体の製造方法において、板厚方向に比べて、平面方向に良好な熱伝導性を有する板状の熱伝導性板材(111)を、板厚方向に複数積層することで、積層体を形成し、
積層体を、熱伝導性板材(111)の一辺(111b)に沿って積層方向に板状に切断して板状体を形成し、
板状体において、熱伝導性板材(111)の一辺(111b)によって積層方向に形成される面を、板状に拡がる板面(110a)とし、
板面(110a)に対して直交する方向を、厚さ方向とすることを特徴としている。
【0033】
この発明によれば、請求項1に記載の熱拡散体(110)を製造する方法として提供することができる。
【0034】
請求項14に記載の発明では、熱拡散体の製造方法において、板厚方向に比べて、平面方向に良好な熱伝導性を有する板状の熱伝導性板材(111)を、板厚方向に複数積層することで、積層体を形成し、
積層体を、熱伝導性板材(111)の一辺(111b)に沿って積層方向に板状に切断して、1次板状体を形成し、
1次板状体において、熱伝導性板材(111)の一辺(111b)によって積層方向に形成される面を、板状に拡がる板面(110a)とし、
板面(110a)に対して直交する方向を、厚さ方向とし、
1次板状体の4隅を切り落とすことで四角形状に形成して、熱伝導性板材(111)の一辺(111b)の方向が、切り落としによって形成される四角形状の各辺に対して斜めになるようにした2次板状体を形成し、
2次板状体を、複数準備して、
複数の2次板状体を、板面(110b)の拡がる方向に配置すると共に、それぞれの板面(110a)の一部が、発熱体(120)を接続するための接続用領域に含まれるようにし、
それぞれの2次板状体において、
それぞれの2次板状体の熱伝導性板材(111)の一辺(111b)の方向が、
接続用領域内の任意の一点(A)と、
それぞれの2次板状体の外周部のうち、複数の2次板状体によって形成される全体の外周部に含まれる外周部上の任意の点(B)とを結ぶ仮想線に対して平行となるように配置することを特徴としている。
【0035】
この発明によれば、請求項5に記載の熱拡散体(110)を製造する方法として提供することができる。
【0036】
尚、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】第1実施形態における発熱体の冷却装置を示す分解斜視図である。
【図2】図1における熱拡散体を示す斜視図である。
【図3】第2実施形態における熱拡散体の製造方法を示す斜視図である。
【図4】第3実施形態における発熱体の冷却装置を示す分解斜視図である。
【図5】図4における熱拡散体の製造方法を示す斜視図である。
【図6】図4における熱拡散体の厚さ方向熱伝導率を示すグラフである。
【図7】第4実施形態における発熱体の冷却装置を示す分解斜視図である。
【図8】第5実施形態における発熱体の冷却装置を示す分解斜視図である。
【図9】第6実施形態における発熱体の冷却装置を示す分解斜視図である。
【図10】第7実施形態における発熱体の冷却装置を示す分解斜視図である。
【図11】図10における熱拡散体を示す斜視図である。
【図12】図10における熱拡散体の製造方法を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0039】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態における発熱体の冷却装置100Aについて、図1、図2を用いて説明する。図1は、発熱体の冷却装置100Aを示す分解斜視図、図2は図1における熱拡散体110を示す斜視図である。
【0040】
図1に示すように、発熱体の冷却装置(以下、冷却装置)100Aは、熱拡散体110、発熱体120、絶縁板130、および冷却器140を備えており、発熱体120の熱を熱拡散体110によって冷却器140に伝導させて、発熱体120を冷却するようになっている。
【0041】
図2に示すように、熱拡散体110は、発熱体120の熱を冷却器140側に効率よく伝導させる板であり、複数の熱伝導性板材111から形成されている。熱伝導性板材111は、短冊状を成す極薄の板部材であり、板厚方向に比べて長手方向および幅方向に良好な熱伝導性を有している。熱伝導性板材111は、例えば、グラファイト材料、またはグラファイトと金属との複合材料が用いられて形成されている。複合材料の場合における金属としては、例えば銅やアルミニウムが使用される。特に、グラファイト材料においては、上記のように、熱伝導性板材111の板厚方向および幅方向、つまり、板面の2方向において熱伝導性に優れる高配向性グラファイト材料が用いられている。
【0042】
熱伝導性板材111は、その板厚方向に複数積層されることで、板状の積層体を形成しており、第1実施形態では、この積層体が熱拡散体110となっている。即ち、この積層体では、熱伝導性板材111の長手方向における長辺111aによって積層方向に板状に拡がる板面110aが形成されており、更に、板面110aに直交する方向が、板状となる積層体の厚さ方向となっている。熱拡散体110は、熱伝導性板材111の幅方向寸法よりも積層方向寸法が大きくとられて、板状になっている。板面110aは、換言すると、長辺111aと積層方向に形成される辺とによって囲まれる面となっている。熱拡散体110の厚さ方向における寸法は、熱伝導性板材111の幅方向の寸法に等しい。よって、熱拡散体110においては、板面110aにおける長辺111a方向と、厚さ方向との2方向において熱伝導性に優れるものとなっている。
【0043】
尚、熱拡散体110は、複数の熱伝導性板材111を積層した後に焼付けすることによって、あるいは、ガス状とした材料(高配向性グラファイト材料、または高配向性グラファイトと金属との複合材料)を平面の上に順次吹き付けていくことで、積層体として形成される。
【0044】
発熱体120は、例えばIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)やFWD(フライホイールダイオード)等の作動時に発熱を伴う半導体素子であり、熱拡散体110の一方の板面110aに当接するように複数(ここでは2つ)設けられている。
【0045】
絶縁板130は、例えばセラミック材から形成された発熱体120に対する絶縁用の板部材であり、熱拡散体110の他方の板面110a(発熱体120が設けられた板面110aとは反対側の面)に当接するように設けられている。
【0046】
冷却器140は、発熱体120の熱を、内部の通路142を流通する冷却媒体に移動させて、発熱体120を冷却する熱交換器であり、絶縁板130の熱拡散体110とは反対側の面に当接するように設けられている。冷却器140は、板状を成す本体部141の内部に多数の通路142が設けられて形成されている。通路142には冷却媒体(例えば冷却用空気や、冷却水等)が流通されるようになっている。
【0047】
以上のように構成される冷却装置100Aにおいては、発熱体120の熱が、熱拡散体110の板面110a(長辺111aの方向)に沿って外周側に拡がるように、且つ厚さ方向に向けて伝導される。そして、この熱は、更に絶縁板130の板厚方向に伝導されて、冷却器140の本体部141に至る。冷却器140においては、上記のように伝導された発熱体120の熱が、内部の通路142を流通する冷却媒体に移動され、発熱体120は冷却される。
【0048】
本実施形態においては、熱拡散体110を構成する熱伝導性板材111は、その板厚方向に比べて長手方向および幅方向に良好な熱伝導性を有しており、熱拡散体110は、この熱伝導性板材111が板厚方向に積層されることで形成されている。よって、熱伝導性板材111の長手方向の辺111aによって積層方向に形成される板面110aにおいては、熱伝導性板材111の長手方向に良好な熱伝導性を持たせることができる。また、熱拡散体110の板面110aに直交する厚さ方向は、熱伝導性板材111の幅方向と一致することになり、熱拡散体110の厚さ方向にも良好な熱伝導性を持たせることができる。したがって、熱拡散体110の板面110a即ち面方向と、厚さ方向即ち層方向との両方向において熱伝導性に優れる熱拡散体110とすることができ、発熱体120の熱を冷却器140に向けて効率良く伝導させることができる。
【0049】
(第2実施形態)
第2実施形態の熱拡散体110(熱拡散体110の製造工程)を図3に示す。第2実施形態は、上記第1実施形態(図1、図2)に対して、熱拡散体110の製造方法を変更したものである。
【0050】
以下、その製造方法を順に説明する。まず、板厚方向に比べて平面方向に良好な熱伝導性を有する板状の熱伝導性板材111を準備し(図3(a))、この熱伝導性板材111を板厚方向に複数積層して積層体を形成する(図3(b))。
【0051】
次に、上記で形成された積層体を、熱伝導性板材111の一辺111bに沿って、且つ積層方向に切断して、板状体を形成する(図3(c))。そして、この板状体において、熱伝導性板材111の一辺111bによって積層方向に形成される面を板面110aとし、更に、この板面110aに直交する方向を厚さ方向とする熱拡散体110とする(図3(d))。
【0052】
これにより、上記第1実施形態で説明した熱拡散体110と同等の熱拡散体110を容易に形成することができる。
【0053】
(第3実施形態)
第3実施形態の冷却装置100Bを図4〜図6に示す。第3実施形態は、上記第1実施形態(図1、図2)に対して、熱拡散体110を複数の熱拡散体110A、110Bから形成したものとしている。
【0054】
図4、図5に示すように、熱拡散体110は、2つの熱拡散体(積層体)を用いた実施例であり、第1熱拡散体110Aと第2熱拡散体110Bとを備えている。各熱拡散体110A、110Bは、上記第1実施形態で説明したものと同一であるが、使用形態において、熱伝導性板材111の積層方向が互いに異なる。
【0055】
つまり、第1熱拡散体110Aにおいては、熱伝導性板材111の積層方向が、図5中の奥行き方向となっている。よって、第1熱拡散体110Aにおいては、図5中の板面110aにおける左右方向(熱伝導性板材111の長手方向)と、厚さ方向に熱伝導性が優れるものとなっている。
【0056】
一方、第2熱拡散体110Bにおいては、熱伝導性板材111の積層方向が、図5中の左右方向となっている。よって、第2熱拡散体110Bにおいては、図5中の板面110aにおける奥行き方向(熱伝導性板材111の長手方向)と、厚さ方向に熱伝導性が優れるものとなっている。
【0057】
そして、第1熱拡散体110Aと第2熱拡散体110Bは、厚さ方向に積層されて、各熱拡散体110A、110Bの間に介在される無機物の接合層112によって接合されている。接合層112は、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、錫(Sn)、鉛(Pb)、および金(Au)のうち少なくとも1つを含んだ層として形成することができる。ここでは、接合層112として、錫(Sn)を含む、はんだを用いている。はんだの熱伝導率は、60W/mKである。
【0058】
上記のように形成される熱拡散体110は、第1熱拡散体110Aおよび第2熱拡散体110Bにおいて、熱伝導性板材111の積層方向が異なっていることから、積層方向が交差する形となっている。具体的には、両者の積層方向の成す角度がほぼ90度となっている。積層方向の成す角度は、板面110aにおいて2軸方向に良好な熱伝導性を持たせるために、85〜90度とするのが好ましい。
【0059】
本実施形態の熱拡散体110においては、第1熱拡散体110Aの板面110aにおける熱伝導性に優れる方向と、第2熱拡散体110Bの板面110aにおける熱伝導性に優れる方向との成す角度を85〜90度の角度とすることができるので、厚さ方向に各熱拡散体110A、110Bが複数積層された熱拡散体110の全体で見たときに、厚さ方向に加えて、板面110aにおいて、ほぼ直交する2方向に良好な熱伝導性を持たせることができる。よって、3軸方向に熱伝導性に優れる熱拡散体110とすることができ、効率的に発熱体120を冷却することができる。
【0060】
図6は、接合層112の熱伝導率に対する、複数の熱拡散体110A、110Bによって形成された熱拡散体110の厚み方向の熱伝導率を示すグラフである。本実施形態の1つのモデルとして、各熱拡散体110A、110Bの長さを32mm、幅を18mm、厚さを1mmとし、また接合層112の厚さを0.1mmとして、熱拡散体110の厚さ方向の熱伝導率を調べた。接合層112(はんだ)の熱伝導率60W/mKにおいて、熱拡散体110の厚さ方向の熱伝導率600W/mKを得ることができた。この値は、銅やアルミニウムの熱伝導率よりもはるかに大きい。
【0061】
尚、上記実施形態では、熱拡散体110を2つの熱拡散体110A、110Bから形成されるものとしたが、3つ以上の熱拡散体を積層して熱拡散体110としても良い。この場合は、3つ以上の熱拡散体のうち、隣り合う熱拡散体において、熱伝導性に優れる方向を異なる方向(更に望ましくは熱伝導性に優れる方向の成す角度を85〜90度)とすると良い。
【0062】
(第4実施形態)
第4実施形態の冷却装置100Cを図7に示す。第4実施形態は、上記第3実施形態(図4)に対して、金属板150を追加したものである。
【0063】
金属板150は、導電性に優れる例えば銅やアルミニウムの板材であり、熱拡散体110と絶縁板130との間に介在されている。
【0064】
本実施形態では、絶縁板130によって冷却器140側への漏電を阻止して、金属板150を発熱体(半導体素子)120の電力取出し部として活用することができる。
【0065】
(第5実施形態)
第5実施形態の冷却装置100Dを図8に示す。第5実施形態は、上記第4実施形態(図7)に対して、金属板150の位置を変更したものである。
【0066】
第4実施形態(図7)では、金属板150は熱拡散体110と絶縁板130との間に介在されるものとしたが、本実施形態(図8)では、金属板150は、発熱体120と熱拡散体110との間に介在されている。
【0067】
本実施形態では、発熱体(半導体素子)120と金属板150とを直接的に接触させることができるので、発熱体120が大電流を使用するような場合では、上記第4実施形態(図7)に比べて、熱拡散体110による電気抵抗を受けないようにして、金属板150を発熱体120の電力取出し部として活用することができる。
【0068】
(第6実施形態)
第6実施形態の冷却装置100Eを図9に示す。第6実施形態は、上記第3実施形態(図4)に対して、熱拡散体110における発熱体120の位置に対する、好適な熱拡散体110の厚さ方向の寸法を規定したものである。
【0069】
熱拡散体110を構成する第1熱拡散体110A(2つのうちの一方の積層体)において、熱伝導性板材111の長手方向は、図9中の左右方向となっている。つまり、第1熱拡散体110Aの板面110aにおける高熱伝導方向は、厚さ方向に加えて図9中の左右方向となっている。また、熱拡散体110を構成する第2熱拡散体110B(2つのうちの他方の積層体)において、熱伝導性板材111の長手方向は、図9中の奥行き方向となっている。つまり、第2熱拡散体110Bの板面110aにおける高熱伝導方向は、厚さ方向に加えて図9中の奥行き方向となっている。そして、第1熱拡散体110Aの厚さ方向寸法はt1、第2熱拡散体110Bの厚さ方向寸法はt2となっている。
【0070】
発熱体120は、熱拡散体110(第1熱拡散体110A)の板面110aに1つ設けられている。発熱体120の図9中の上方(板面110aに対して直交する方向)から見た場合の中心位置をaとしている。第1熱拡散体110Aの板面110aにて、高熱伝導方向(左右方向)において、中心位置aから第1熱拡散体110Aの端部までの距離のうち、長い方をr1としている。また、第1熱拡散体110Aの板面110aにて、第2熱拡散体110Bの高熱伝導方向(奥行き方向)において、中心位置aから第1熱拡散体110Aの端部までの距離のうち、長い方をr2としている。
【0071】
そして、本実施形態では、上記の厚さ方向寸法t1、t2、および距離r1、r2の間には、
(数1)
0.5≦(t1/t2)/(r1/r2)≦2
の関係が成立つようにしている。
【0072】
本実施形態においては、第1熱拡散体110Aにおいて、距離r1が大きいほど、発熱体120の熱を距離r1側に伝導させるのが好ましいと言える。同様に、第2熱拡散体110Bにおいても、距離r2が大きいほど、発熱体120の熱を距離r2側に伝導させるのが好ましいと言える。そして、各熱拡散体110A、110Bの厚さ方向の寸法は、伝導される熱の大小に応じて、厚くすべき、あるいは薄くすべきものとなる。つまり、距離r1(r2)が大きければ、寸法t1(t2)を大きくすることができ、逆に距離r1(r2)が小さければ、寸法t1(t2)を小さくする必要がある。よって、熱拡散体110において良好な熱伝導を考えると、理論上は、(r1/r2)と、(t1/t2)とを同じ値にするのが好ましく、(t1/t2)/(r1/r2)=1とするのが良い、ということになる。この理論値1に対して、実際的には、0.5〜2.0の範囲で熱伝導させることで、熱拡散体110における良好な熱伝導が得られ、良好な発熱体120の冷却が可能となる。
【0073】
尚、本実施形態においては、金属板150は、上記第4実施形態(図7)、あるいは第5実施形態(図8)と同様に配置することができる。
【0074】
(第7実施形態)
第7実施形態の冷却装置100Fを図10〜図12に示す。第7実施形態は、上記第1、第2実施形態(図1〜図3)に対して、熱拡散体110を複数の熱拡散体110C〜110Fから形成し、更に熱拡散体110と絶縁板130との間に上記第4実施形態(図7)で説明した金属板150を介在させたものとしている。また、発熱体120は、熱拡散体110の板面110aに1つ設けられるものとしている。
【0075】
図10に示すように、熱拡散体110は、本実施形態では、4つの熱拡散体110C〜110Fから形成されている。各熱拡散体110C〜110Fは、複数の熱伝導性板材111が積層された積層体であり、四角形に板面110aが拡がる板状を成している。各熱拡散体110C〜110Fは、各板面110aが同一面上となって拡がるように、且つ、各熱拡散体110C〜110Fの1つの角部が同一位置となって隣り合う各辺が互いに当接するように配置されている。
【0076】
そして、上記同一の位置の周囲は、各熱拡散体110C〜110Fの一部(各角部)が含まれる形となり、発熱体120を接続するための接続用領域となっている。この接続用領域に発熱体120が接続されており、発熱体120は各熱拡散体110C〜110Fの一部(各角部)と接続されている。
【0077】
図11に示すように(熱拡散体110Cを代表にして説明)、各熱拡散体110C〜110Fは、上記第1、第2実施形態(図1〜図3)の熱拡散体110に対して、熱伝導性板材111の長手方向、あるいは一辺111bの方向が異なっている。以下、「熱伝導性板材111の長手方向、あるいは一辺111bの方向」については、後述する図12に準じて「熱伝導性板材111の一辺111bの方向」と表現する。
【0078】
各熱拡散体110C〜110Fにおける熱伝導性板材111の一辺111bの方向は、各熱拡散体110C〜110Fにおける四角形状の外周部となる各辺L1、L2、L3、L4の4辺に対して、斜めになるように配置されている。更に具体的には、本実施形態では、熱伝導性板材111の一辺111bの方向は、発熱体120が接続される接続用領域内の任意の一点(A)と、それぞれの熱拡散体110C〜110Fの各辺L1、L2、L3、L4のうち、各熱拡散体110C〜110Fによって形成される熱拡散体110全体の外周部に含まれる辺、つまり、辺L1、L2上の任意の点(B)とを結ぶ仮想線に対して平行となるようにしている。
【0079】
本実施形態では、接続用領域内の任意の一点(以下、A点)を、各熱拡散体110C〜110Fの角部が当接する位置としており、また、辺L1、L2上の任意の点(以下、B点)を、L1とL2との交点(角部)としており、仮想線は、各熱拡散体110C〜110Fにおいて、A点から延びる1つの対角線と等しくなるようにしている。よって、熱拡散体110における熱伝導性板材111の一辺111bの方向は、A点から外方に向けて拡がるように配置されている(図10)。上記構成によって、熱拡散体110における各熱拡散体110C〜110Fのうち、互いに対角の位置となる熱拡散体110Cと熱拡散体110Eは、実質同一のものとなっており、また、熱拡散体110Dと熱拡散体110Fは、実質同一のものとなっている。
【0080】
上記の各熱拡散体110C〜110Fは、例えば、図12に示すように、製造することができる。即ち、第2実施形態(図3)で説明したように、熱伝導性板材111を準備し(図12(a))、この熱伝導性板材111を板厚方向に複数積層して積層体を形成し(図12(b))、熱伝導性板材111の一辺111bに沿って、且つ積層方向に切断して、積層体から1次板状体を形成する(図12(c))。更に、この1次板状体の4つの角部を切り落とし、1次板状体に内接する新たな四角形状の2次板状体とする(図12(c)、(d))ことで、2次板状体の各辺に対して熱伝導部材111の一辺111bが斜めとなる熱拡散体110C〜110Fを製造することができる。
【0081】
あるいは、短冊状の熱伝導性板材111において、長手方向の寸法が順次大きくなるように板厚方向に順次積層し、途中から長手方向の寸法が順次小さくなるように更に積層し、熱伝導性板材111の長手方向の辺によって積層方向に形成される板面110aが四角形状となるようにすることでも本実施形態の熱拡散体110を製造することが可能である。
【0082】
本実施形態では、それぞれの熱拡散体110C〜110Fにおいては、A点からB点に向かう仮想線に平行となるように熱伝導性板材111の一辺111bの方向を設定しているので、板面110a上にてA点〜B点間の仮想線に平行となる方向、および厚さ方向に良好な熱伝導性を持たせることができる。更に、熱拡散体110C〜110Fによって形成される熱拡散体110においては、A点から熱拡散体110の外周部に向けて拡がる方向、および厚さ方向に良好な熱伝導性を持たせることができる。
【0083】
よって、発熱体120の熱は、熱拡散体110において、発熱体120(A点)を中心として熱拡散体110の外周部に向けて拡がるように伝導すると共に、熱拡散体110の厚さ方向にも良好に伝導することができるので、良好な発熱体120の冷却が可能となる。
【0084】
本実施形態では、熱拡散体110の形成にあたり、4つの熱拡散体110C〜110Fを用いたが、これに限らず、3つの場合、5つ以上の場合等さまざまな組合せでの対応が可能である。
【0085】
また、各熱拡散体110C〜110FにおけるA点〜B点間の仮想線は、対角線にすることに限定される訳ではなく、A点を発熱体120の接続用の領域内の任意の点とし、B点を辺L1、L2上の任意の点として、このA点とB点とを結ぶ仮想線として設定することができる。要は、熱伝導性板材111の一辺111bの方向が、発熱体120の接続用領域内から、熱拡散体110外周部に向けて拡がるような方向とすれば良い。
【符号の説明】
【0086】
100A〜100F 発熱体の冷却装置
110 熱拡散体
110A 第1熱拡散体
110B 第2熱拡散体
110C〜110F 熱拡散体
111 熱伝送性板材
112 無機物の接合層(無機物の層)
120 発熱体
130 絶縁板
140 冷却器
150 金属板
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子等の発熱体の熱を効果的に伝導させる熱拡散体、およびそれを用いた発熱体の冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、発熱体を冷却するための熱拡散体(高熱伝導性部材)として、例えば特許文献1に示されるように、銅やアルミニウム等の金属材料に代えて、グラファイト構造体が用いられたものが知られている。グラファイト構造体単独のa−b軸方向と同一となる面方向の熱伝導率は、1000W/mKを超え、銅の熱伝導率(350〜400W/mK)の2倍以上、アルミニウムの熱伝導率(200〜250W/mK)の4倍以上の熱伝導性を有している。しかしながら、グラファイト構造体単独の層方向(厚さ方向)の熱伝導率は、10W/mK以下であり、これを改善するために特許文献1では、板面に対して平行な面(面方向)にa−b軸が配向したグラファイト構造体の内部に、カーボン構造体が配置されたものが提案されている。
【0003】
これにより、母材となるグラファイト構造体が有する面方向の高熱伝導性を維持しつつ、グラファイト構造体内部に適宜配置されたカーボン繊維集合体からなるカーボン構造体によって、層方向にもこのカーボン構造体を介した効率的な熱の伝播を可能としている。その結果、グラファイト構造体単独の場合と比較して、層方向熱伝導率を向上させることが可能となると共に、部材の引張り強度や厚さも増すことにも貢献できる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−272164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1中の記載(段落番号0077、0083、0086、0093)によれば、層方向熱伝導率を向上させたといっても、層方向熱伝導率は、20〜100W/mK程度となっており、グラファイト構造体単独の層方向熱伝導率(10W/mK)の数倍〜10倍程度であり、銅やアルミニウム等の金属材料と比べると、未だに低いレベルにある。
【0006】
本発明の目的は、上記問題に鑑み、面方向の熱伝導性に優れると共に、更に層方向の熱伝導性にも優れる熱拡散体およびそれを用いた発熱体の冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するために、以下の技術的手段を採用する。
【0008】
請求項1に記載の発明では、板厚方向に比べて、長手方向および幅方向に良好な熱伝導性を有する短冊状の熱伝導性板材(111)が、板厚方向に複数積層された積層体として形成された熱拡散体であって、
積層体において、熱伝導性板材(111)の長手方向の辺(111a)によって積層方向に形成される面が、板状に拡がる板面(110a)となるように形成されると共に、
板面(110a)に対して直交する方向が、厚さ方向となるように形成されたことを特徴としている。
【0009】
この発明によれば、熱拡散体(110)を構成する熱伝導性板材(111)は、その板厚方向に比べて長手方向および幅方向に良好な熱伝導性を有しており、熱拡散体(110)は、この熱伝導性板材(111)が板厚方向に積層されることで形成されている。よって、熱伝導性板材(111)の長手方向の辺(111a)によって積層方向に形成される板面(110a)においては、熱伝導性板材(111)の長手方向に良好な熱伝導性を持たせることができる。また、熱拡散体(110)の板面(110a)に直交する厚さ方向は、熱伝導性板材(111)の幅方向と一致することになり、熱拡散体(110)の厚さ方向にも良好な熱伝導性を持たせることができる。よって、熱拡散体(110)の板面(110a)即ち面方向と、厚さ方向即ち層方向との両方向において熱伝導性に優れる熱拡散体(110)とすることができる。
【0010】
請求項2に記載の発明では、前記積層体を複数備え、
複数の積層体(110A、110B)は、厚さ方向に積層され、複数の積層体(110A、110B)の間に介在される無機物の層(112)によって接合されており、
隣り合う積層体(110A、110B)において、熱伝導性板材(111)の積層方向が互いに異なるように配置されたことを特徴としている。
【0011】
この発明によれば、複数の積層体(110A、110B)のうち、隣り合う一方の積層体(110A)の板面(110a)における熱伝導性に優れる方向と、隣り合う他方の積層体(110B)の板面(110a)における熱伝導性に優れる方向とが異なるものとすることができる。よって、厚さ方向に積層体(110A、110B)が複数積層された熱拡散体(100B)の全体で見たときに、板面(110a)において、一方向だけではなく、異なる方向にも良好な熱伝導性を持たせることができる。つまり、板面(110a)の2方向において良好な熱伝導性を有すると共に、厚さ方向にも良好な熱伝導性を有する熱拡散体(110)とすることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明では、互いに異なる熱伝導性板材(111)の積層方向の成す角度が、85〜90度の角度を成すことを特徴としている。
【0013】
この発明によれば、隣り合う一方の積層体(110A)の板面(110a)における熱伝導性に優れる方向と、隣り合う他方の積層体(110B)の板面(110a)における熱伝導性に優れる方向との成す角度を85〜90度の角度とすることができるので、厚さ方向に積層体(110A、110B)が複数積層された熱拡散体(110)の全体で見たときに、厚さ方向に良好な熱伝導性を持たせることに加えて、板面(110a)において、ほぼ直交する2方向に良好な熱伝導性を持たせることができる。つまり、熱拡散体(110)の3軸方向に良好な熱伝導性を有する熱拡散体(110)とすることができる。
【0014】
請求項4に記載の発明では、無機物の層(112)は、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、錫(Sn)、鉛(Pb)、および金(Au)のうち少なくとも1つを含んだ層であることを特徴としている。
【0015】
この発明によれば、複数の積層体(110A、110B)を積層し、無機物の層(112)によって接合することで熱拡散体(110)を形成する場合に、熱伝導性および電気伝導性に優れ、且つ接合性に優れる接合層とすることができる。
【0016】
請求項5に記載の発明では、積層体は、板面(110a)の拡がる方向に複数配置されると共に、複数の積層体のそれぞれの板面(110a)の一部が、発熱体(120)を接続するための接続用領域に含まれるようになっており、
それぞれの積層体において、
それぞれの積層体の熱伝導性板材(111)の長手方向は、
接続用領域内の任意の一点(A)と、
それぞれの積層体の外周部のうち、複数の積層体によって形成される全体の外周部に含まれる外周部上の任意の点(B)とを結ぶ仮想線に対して平行となるように配置されたことを特徴としている。
【0017】
この発明によれば、それぞれの積層体においては、接続用領域内の任意の一点(A)から外周部上の任意の点(B)に向かう仮想線に平行となるように熱伝導性板材(111)の長手方向を設定しているので、板面(110a)上にて仮想線に平行となる方向、および厚さ方向に良好な熱伝導性を持たせることができる。更に、複数の積層体によって形成される熱拡散体(110)においては、接続用領域内の任意の一点(A)から熱拡散体(110)の外周部に向けて拡がる方向、および厚さ方向に良好な熱伝導性を持たせることができる。つまり、発熱体(120)を熱拡散体(110)に接続した際に、発熱体(120)の熱を接続用領域から熱拡散体(110)の外周部に向けて拡がるように、且つ厚さ方向に良好に伝導させることのできる熱拡散体(110)とすることができる。
【0018】
請求項6に記載の発明では、複数の積層体は、板面(110a)が四角形状を成す4つの積層体(110C〜110F)から成り、
それぞれの積層体(110C〜110F)の四角形状の1つの角部が接続用領域に含まれるようになっていることを特徴としている。
【0019】
この発明によれば、材料を無駄にすることなく、実現性の高い熱拡散体(110)を容易に形成することができる。
【0020】
請求項7に記載の発明では、積層体の厚さ方向の熱伝導率が、600W/mK以上であることを特徴としている。
【0021】
この発明によれば、良好な熱伝導を必要とする広い分野での利用を可能とする熱拡散体(110)とすることができる。
【0022】
請求項8に記載の発明では、熱伝導性板材(111)は、グラファイト材料、またはグラファイトと金属との複合材料であることを特徴としている。
【0023】
この発明によれば、グラファイト材料、またはグラファイトと金属との複合材料は、通常使用される銅材やアルミニウム材よりも良好な熱伝導性を有することから、本願発明に用いることで熱伝導性に優れる熱拡散体(110)を実現することができる。
【0024】
請求項9に記載の発明では、冷却装置において、請求項1〜請求項8のいずれか1つに記載の熱拡散体(110)と、
熱拡散体(110)の一方の板面(110a)に配設された発熱体(120)と、
熱拡散体(110)の他方の板面(110a)に配設された絶縁板(130)と、
絶縁板(130)の熱拡散体(110)とは反対側の面に配設された冷却器(140)とを備えることを特徴としている。
【0025】
この発明によれば、板面(110a)および厚さ方向に良好な熱伝導率を有する熱拡散体(100)を用いた、発熱体(120)の効果的な冷却が可能となる。
【0026】
請求項10に記載の発明では、発熱体(120)は、半導体素子(120)であり、
熱拡散体(110)と、絶縁板(130)との間に、金属板(150)が配設されたことを特徴としている。
【0027】
この発明によれば、絶縁板(130)によって冷却器(140)側への漏電を阻止して、金属板(150)を半導体素子(120)の電力取出し部として活用することができる。
【0028】
請求項11に記載の発明では、発熱体(120)は、半導体素子(120)であり、
発熱体(120)と、熱拡散体(110)との間に、金属板(150)が配設されたことを特徴としている。
【0029】
この発明によれば、半導体素子(120)と金属板(150)とを直接的に接触させることができるので、半導体素子(120)が大電流を使用するような場合では、請求項10に記載の発明に比べて、熱拡散体(110)による電気抵抗を受けないようにして、金属板(150)を半導体素子(120)の電力取出し部として活用することができる。
【0030】
請求項12に記載の発明では、冷却装置において、請求項3に記載の熱拡散体(110)であって、積層体を2つ備える熱拡散体(110)と、
熱拡散体(110)の一方の板面(110a)に配設された発熱体(120)と、
熱拡散体(110)の他方の板面(110a)に配設された絶縁板(130)と、
絶縁板(130)の熱拡散体(110)とは反対側の面に配設された冷却器(140)とを備え、
熱拡散体(110)における2つの積層体(110A、110B)のうち、一方の積層体(110A)の厚さ方向の寸法をt1、他方の積層体(110B)の厚さ方向の寸法をt2とし、
一方の積層体(110A)の熱伝導性板材(111)の長手方向において、発熱体(120)の中心位置から熱拡散体(110)の端までの距離をr1、他方の積層体(110B)の熱伝導性板材(111)の長手方向において、発熱体(120)の中心位置から熱拡散体(110)の端までの距離をr2としたとき、
寸法t1、t2、および距離r1、r2の間に、
0.5≦(t1/t2)/(r1/r2)≦2
という関係が成立つことを特徴としている。
【0031】
この発明によれば、一方の積層体(110A)において、距離r1が大きいほど、発熱体(120)の熱を距離r1側に伝導させるのが好ましいと言える。同様に、他方の積層体(110B)においても、距離r2が大きいほど、発熱体(120)の熱を距離r2側に伝導させるのが好ましいと言える。そして、各積層体(110A、110B)の厚さ方向の寸法は、伝導される熱の大小に応じて、厚くすべき、あるいは薄くすべきものとなる。つまり、距離r1(r2)が大きければ、寸法t1(t2)を大きくすることができ、逆に距離r1(r2)が小さければ、寸法t1(t2)を小さくする必要がある。よって、熱拡散体(110)において良好な熱伝導を考えると、理論上は、(r1/r2)と、(t1/t2)とを同じ値にするのが好ましく、(t1/t2)/(r1/r2)=1とするのが良い、ということになる。この理論値1に対して、実際的には、0.5〜2.0の範囲で熱伝導させることで、熱拡散体(110)における良好な熱伝導が得られ、良好な発熱体(120)の冷却が可能となる。
【0032】
請求項13に記載の発明では、熱拡散体の製造方法において、板厚方向に比べて、平面方向に良好な熱伝導性を有する板状の熱伝導性板材(111)を、板厚方向に複数積層することで、積層体を形成し、
積層体を、熱伝導性板材(111)の一辺(111b)に沿って積層方向に板状に切断して板状体を形成し、
板状体において、熱伝導性板材(111)の一辺(111b)によって積層方向に形成される面を、板状に拡がる板面(110a)とし、
板面(110a)に対して直交する方向を、厚さ方向とすることを特徴としている。
【0033】
この発明によれば、請求項1に記載の熱拡散体(110)を製造する方法として提供することができる。
【0034】
請求項14に記載の発明では、熱拡散体の製造方法において、板厚方向に比べて、平面方向に良好な熱伝導性を有する板状の熱伝導性板材(111)を、板厚方向に複数積層することで、積層体を形成し、
積層体を、熱伝導性板材(111)の一辺(111b)に沿って積層方向に板状に切断して、1次板状体を形成し、
1次板状体において、熱伝導性板材(111)の一辺(111b)によって積層方向に形成される面を、板状に拡がる板面(110a)とし、
板面(110a)に対して直交する方向を、厚さ方向とし、
1次板状体の4隅を切り落とすことで四角形状に形成して、熱伝導性板材(111)の一辺(111b)の方向が、切り落としによって形成される四角形状の各辺に対して斜めになるようにした2次板状体を形成し、
2次板状体を、複数準備して、
複数の2次板状体を、板面(110b)の拡がる方向に配置すると共に、それぞれの板面(110a)の一部が、発熱体(120)を接続するための接続用領域に含まれるようにし、
それぞれの2次板状体において、
それぞれの2次板状体の熱伝導性板材(111)の一辺(111b)の方向が、
接続用領域内の任意の一点(A)と、
それぞれの2次板状体の外周部のうち、複数の2次板状体によって形成される全体の外周部に含まれる外周部上の任意の点(B)とを結ぶ仮想線に対して平行となるように配置することを特徴としている。
【0035】
この発明によれば、請求項5に記載の熱拡散体(110)を製造する方法として提供することができる。
【0036】
尚、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】第1実施形態における発熱体の冷却装置を示す分解斜視図である。
【図2】図1における熱拡散体を示す斜視図である。
【図3】第2実施形態における熱拡散体の製造方法を示す斜視図である。
【図4】第3実施形態における発熱体の冷却装置を示す分解斜視図である。
【図5】図4における熱拡散体の製造方法を示す斜視図である。
【図6】図4における熱拡散体の厚さ方向熱伝導率を示すグラフである。
【図7】第4実施形態における発熱体の冷却装置を示す分解斜視図である。
【図8】第5実施形態における発熱体の冷却装置を示す分解斜視図である。
【図9】第6実施形態における発熱体の冷却装置を示す分解斜視図である。
【図10】第7実施形態における発熱体の冷却装置を示す分解斜視図である。
【図11】図10における熱拡散体を示す斜視図である。
【図12】図10における熱拡散体の製造方法を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0039】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態における発熱体の冷却装置100Aについて、図1、図2を用いて説明する。図1は、発熱体の冷却装置100Aを示す分解斜視図、図2は図1における熱拡散体110を示す斜視図である。
【0040】
図1に示すように、発熱体の冷却装置(以下、冷却装置)100Aは、熱拡散体110、発熱体120、絶縁板130、および冷却器140を備えており、発熱体120の熱を熱拡散体110によって冷却器140に伝導させて、発熱体120を冷却するようになっている。
【0041】
図2に示すように、熱拡散体110は、発熱体120の熱を冷却器140側に効率よく伝導させる板であり、複数の熱伝導性板材111から形成されている。熱伝導性板材111は、短冊状を成す極薄の板部材であり、板厚方向に比べて長手方向および幅方向に良好な熱伝導性を有している。熱伝導性板材111は、例えば、グラファイト材料、またはグラファイトと金属との複合材料が用いられて形成されている。複合材料の場合における金属としては、例えば銅やアルミニウムが使用される。特に、グラファイト材料においては、上記のように、熱伝導性板材111の板厚方向および幅方向、つまり、板面の2方向において熱伝導性に優れる高配向性グラファイト材料が用いられている。
【0042】
熱伝導性板材111は、その板厚方向に複数積層されることで、板状の積層体を形成しており、第1実施形態では、この積層体が熱拡散体110となっている。即ち、この積層体では、熱伝導性板材111の長手方向における長辺111aによって積層方向に板状に拡がる板面110aが形成されており、更に、板面110aに直交する方向が、板状となる積層体の厚さ方向となっている。熱拡散体110は、熱伝導性板材111の幅方向寸法よりも積層方向寸法が大きくとられて、板状になっている。板面110aは、換言すると、長辺111aと積層方向に形成される辺とによって囲まれる面となっている。熱拡散体110の厚さ方向における寸法は、熱伝導性板材111の幅方向の寸法に等しい。よって、熱拡散体110においては、板面110aにおける長辺111a方向と、厚さ方向との2方向において熱伝導性に優れるものとなっている。
【0043】
尚、熱拡散体110は、複数の熱伝導性板材111を積層した後に焼付けすることによって、あるいは、ガス状とした材料(高配向性グラファイト材料、または高配向性グラファイトと金属との複合材料)を平面の上に順次吹き付けていくことで、積層体として形成される。
【0044】
発熱体120は、例えばIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)やFWD(フライホイールダイオード)等の作動時に発熱を伴う半導体素子であり、熱拡散体110の一方の板面110aに当接するように複数(ここでは2つ)設けられている。
【0045】
絶縁板130は、例えばセラミック材から形成された発熱体120に対する絶縁用の板部材であり、熱拡散体110の他方の板面110a(発熱体120が設けられた板面110aとは反対側の面)に当接するように設けられている。
【0046】
冷却器140は、発熱体120の熱を、内部の通路142を流通する冷却媒体に移動させて、発熱体120を冷却する熱交換器であり、絶縁板130の熱拡散体110とは反対側の面に当接するように設けられている。冷却器140は、板状を成す本体部141の内部に多数の通路142が設けられて形成されている。通路142には冷却媒体(例えば冷却用空気や、冷却水等)が流通されるようになっている。
【0047】
以上のように構成される冷却装置100Aにおいては、発熱体120の熱が、熱拡散体110の板面110a(長辺111aの方向)に沿って外周側に拡がるように、且つ厚さ方向に向けて伝導される。そして、この熱は、更に絶縁板130の板厚方向に伝導されて、冷却器140の本体部141に至る。冷却器140においては、上記のように伝導された発熱体120の熱が、内部の通路142を流通する冷却媒体に移動され、発熱体120は冷却される。
【0048】
本実施形態においては、熱拡散体110を構成する熱伝導性板材111は、その板厚方向に比べて長手方向および幅方向に良好な熱伝導性を有しており、熱拡散体110は、この熱伝導性板材111が板厚方向に積層されることで形成されている。よって、熱伝導性板材111の長手方向の辺111aによって積層方向に形成される板面110aにおいては、熱伝導性板材111の長手方向に良好な熱伝導性を持たせることができる。また、熱拡散体110の板面110aに直交する厚さ方向は、熱伝導性板材111の幅方向と一致することになり、熱拡散体110の厚さ方向にも良好な熱伝導性を持たせることができる。したがって、熱拡散体110の板面110a即ち面方向と、厚さ方向即ち層方向との両方向において熱伝導性に優れる熱拡散体110とすることができ、発熱体120の熱を冷却器140に向けて効率良く伝導させることができる。
【0049】
(第2実施形態)
第2実施形態の熱拡散体110(熱拡散体110の製造工程)を図3に示す。第2実施形態は、上記第1実施形態(図1、図2)に対して、熱拡散体110の製造方法を変更したものである。
【0050】
以下、その製造方法を順に説明する。まず、板厚方向に比べて平面方向に良好な熱伝導性を有する板状の熱伝導性板材111を準備し(図3(a))、この熱伝導性板材111を板厚方向に複数積層して積層体を形成する(図3(b))。
【0051】
次に、上記で形成された積層体を、熱伝導性板材111の一辺111bに沿って、且つ積層方向に切断して、板状体を形成する(図3(c))。そして、この板状体において、熱伝導性板材111の一辺111bによって積層方向に形成される面を板面110aとし、更に、この板面110aに直交する方向を厚さ方向とする熱拡散体110とする(図3(d))。
【0052】
これにより、上記第1実施形態で説明した熱拡散体110と同等の熱拡散体110を容易に形成することができる。
【0053】
(第3実施形態)
第3実施形態の冷却装置100Bを図4〜図6に示す。第3実施形態は、上記第1実施形態(図1、図2)に対して、熱拡散体110を複数の熱拡散体110A、110Bから形成したものとしている。
【0054】
図4、図5に示すように、熱拡散体110は、2つの熱拡散体(積層体)を用いた実施例であり、第1熱拡散体110Aと第2熱拡散体110Bとを備えている。各熱拡散体110A、110Bは、上記第1実施形態で説明したものと同一であるが、使用形態において、熱伝導性板材111の積層方向が互いに異なる。
【0055】
つまり、第1熱拡散体110Aにおいては、熱伝導性板材111の積層方向が、図5中の奥行き方向となっている。よって、第1熱拡散体110Aにおいては、図5中の板面110aにおける左右方向(熱伝導性板材111の長手方向)と、厚さ方向に熱伝導性が優れるものとなっている。
【0056】
一方、第2熱拡散体110Bにおいては、熱伝導性板材111の積層方向が、図5中の左右方向となっている。よって、第2熱拡散体110Bにおいては、図5中の板面110aにおける奥行き方向(熱伝導性板材111の長手方向)と、厚さ方向に熱伝導性が優れるものとなっている。
【0057】
そして、第1熱拡散体110Aと第2熱拡散体110Bは、厚さ方向に積層されて、各熱拡散体110A、110Bの間に介在される無機物の接合層112によって接合されている。接合層112は、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、錫(Sn)、鉛(Pb)、および金(Au)のうち少なくとも1つを含んだ層として形成することができる。ここでは、接合層112として、錫(Sn)を含む、はんだを用いている。はんだの熱伝導率は、60W/mKである。
【0058】
上記のように形成される熱拡散体110は、第1熱拡散体110Aおよび第2熱拡散体110Bにおいて、熱伝導性板材111の積層方向が異なっていることから、積層方向が交差する形となっている。具体的には、両者の積層方向の成す角度がほぼ90度となっている。積層方向の成す角度は、板面110aにおいて2軸方向に良好な熱伝導性を持たせるために、85〜90度とするのが好ましい。
【0059】
本実施形態の熱拡散体110においては、第1熱拡散体110Aの板面110aにおける熱伝導性に優れる方向と、第2熱拡散体110Bの板面110aにおける熱伝導性に優れる方向との成す角度を85〜90度の角度とすることができるので、厚さ方向に各熱拡散体110A、110Bが複数積層された熱拡散体110の全体で見たときに、厚さ方向に加えて、板面110aにおいて、ほぼ直交する2方向に良好な熱伝導性を持たせることができる。よって、3軸方向に熱伝導性に優れる熱拡散体110とすることができ、効率的に発熱体120を冷却することができる。
【0060】
図6は、接合層112の熱伝導率に対する、複数の熱拡散体110A、110Bによって形成された熱拡散体110の厚み方向の熱伝導率を示すグラフである。本実施形態の1つのモデルとして、各熱拡散体110A、110Bの長さを32mm、幅を18mm、厚さを1mmとし、また接合層112の厚さを0.1mmとして、熱拡散体110の厚さ方向の熱伝導率を調べた。接合層112(はんだ)の熱伝導率60W/mKにおいて、熱拡散体110の厚さ方向の熱伝導率600W/mKを得ることができた。この値は、銅やアルミニウムの熱伝導率よりもはるかに大きい。
【0061】
尚、上記実施形態では、熱拡散体110を2つの熱拡散体110A、110Bから形成されるものとしたが、3つ以上の熱拡散体を積層して熱拡散体110としても良い。この場合は、3つ以上の熱拡散体のうち、隣り合う熱拡散体において、熱伝導性に優れる方向を異なる方向(更に望ましくは熱伝導性に優れる方向の成す角度を85〜90度)とすると良い。
【0062】
(第4実施形態)
第4実施形態の冷却装置100Cを図7に示す。第4実施形態は、上記第3実施形態(図4)に対して、金属板150を追加したものである。
【0063】
金属板150は、導電性に優れる例えば銅やアルミニウムの板材であり、熱拡散体110と絶縁板130との間に介在されている。
【0064】
本実施形態では、絶縁板130によって冷却器140側への漏電を阻止して、金属板150を発熱体(半導体素子)120の電力取出し部として活用することができる。
【0065】
(第5実施形態)
第5実施形態の冷却装置100Dを図8に示す。第5実施形態は、上記第4実施形態(図7)に対して、金属板150の位置を変更したものである。
【0066】
第4実施形態(図7)では、金属板150は熱拡散体110と絶縁板130との間に介在されるものとしたが、本実施形態(図8)では、金属板150は、発熱体120と熱拡散体110との間に介在されている。
【0067】
本実施形態では、発熱体(半導体素子)120と金属板150とを直接的に接触させることができるので、発熱体120が大電流を使用するような場合では、上記第4実施形態(図7)に比べて、熱拡散体110による電気抵抗を受けないようにして、金属板150を発熱体120の電力取出し部として活用することができる。
【0068】
(第6実施形態)
第6実施形態の冷却装置100Eを図9に示す。第6実施形態は、上記第3実施形態(図4)に対して、熱拡散体110における発熱体120の位置に対する、好適な熱拡散体110の厚さ方向の寸法を規定したものである。
【0069】
熱拡散体110を構成する第1熱拡散体110A(2つのうちの一方の積層体)において、熱伝導性板材111の長手方向は、図9中の左右方向となっている。つまり、第1熱拡散体110Aの板面110aにおける高熱伝導方向は、厚さ方向に加えて図9中の左右方向となっている。また、熱拡散体110を構成する第2熱拡散体110B(2つのうちの他方の積層体)において、熱伝導性板材111の長手方向は、図9中の奥行き方向となっている。つまり、第2熱拡散体110Bの板面110aにおける高熱伝導方向は、厚さ方向に加えて図9中の奥行き方向となっている。そして、第1熱拡散体110Aの厚さ方向寸法はt1、第2熱拡散体110Bの厚さ方向寸法はt2となっている。
【0070】
発熱体120は、熱拡散体110(第1熱拡散体110A)の板面110aに1つ設けられている。発熱体120の図9中の上方(板面110aに対して直交する方向)から見た場合の中心位置をaとしている。第1熱拡散体110Aの板面110aにて、高熱伝導方向(左右方向)において、中心位置aから第1熱拡散体110Aの端部までの距離のうち、長い方をr1としている。また、第1熱拡散体110Aの板面110aにて、第2熱拡散体110Bの高熱伝導方向(奥行き方向)において、中心位置aから第1熱拡散体110Aの端部までの距離のうち、長い方をr2としている。
【0071】
そして、本実施形態では、上記の厚さ方向寸法t1、t2、および距離r1、r2の間には、
(数1)
0.5≦(t1/t2)/(r1/r2)≦2
の関係が成立つようにしている。
【0072】
本実施形態においては、第1熱拡散体110Aにおいて、距離r1が大きいほど、発熱体120の熱を距離r1側に伝導させるのが好ましいと言える。同様に、第2熱拡散体110Bにおいても、距離r2が大きいほど、発熱体120の熱を距離r2側に伝導させるのが好ましいと言える。そして、各熱拡散体110A、110Bの厚さ方向の寸法は、伝導される熱の大小に応じて、厚くすべき、あるいは薄くすべきものとなる。つまり、距離r1(r2)が大きければ、寸法t1(t2)を大きくすることができ、逆に距離r1(r2)が小さければ、寸法t1(t2)を小さくする必要がある。よって、熱拡散体110において良好な熱伝導を考えると、理論上は、(r1/r2)と、(t1/t2)とを同じ値にするのが好ましく、(t1/t2)/(r1/r2)=1とするのが良い、ということになる。この理論値1に対して、実際的には、0.5〜2.0の範囲で熱伝導させることで、熱拡散体110における良好な熱伝導が得られ、良好な発熱体120の冷却が可能となる。
【0073】
尚、本実施形態においては、金属板150は、上記第4実施形態(図7)、あるいは第5実施形態(図8)と同様に配置することができる。
【0074】
(第7実施形態)
第7実施形態の冷却装置100Fを図10〜図12に示す。第7実施形態は、上記第1、第2実施形態(図1〜図3)に対して、熱拡散体110を複数の熱拡散体110C〜110Fから形成し、更に熱拡散体110と絶縁板130との間に上記第4実施形態(図7)で説明した金属板150を介在させたものとしている。また、発熱体120は、熱拡散体110の板面110aに1つ設けられるものとしている。
【0075】
図10に示すように、熱拡散体110は、本実施形態では、4つの熱拡散体110C〜110Fから形成されている。各熱拡散体110C〜110Fは、複数の熱伝導性板材111が積層された積層体であり、四角形に板面110aが拡がる板状を成している。各熱拡散体110C〜110Fは、各板面110aが同一面上となって拡がるように、且つ、各熱拡散体110C〜110Fの1つの角部が同一位置となって隣り合う各辺が互いに当接するように配置されている。
【0076】
そして、上記同一の位置の周囲は、各熱拡散体110C〜110Fの一部(各角部)が含まれる形となり、発熱体120を接続するための接続用領域となっている。この接続用領域に発熱体120が接続されており、発熱体120は各熱拡散体110C〜110Fの一部(各角部)と接続されている。
【0077】
図11に示すように(熱拡散体110Cを代表にして説明)、各熱拡散体110C〜110Fは、上記第1、第2実施形態(図1〜図3)の熱拡散体110に対して、熱伝導性板材111の長手方向、あるいは一辺111bの方向が異なっている。以下、「熱伝導性板材111の長手方向、あるいは一辺111bの方向」については、後述する図12に準じて「熱伝導性板材111の一辺111bの方向」と表現する。
【0078】
各熱拡散体110C〜110Fにおける熱伝導性板材111の一辺111bの方向は、各熱拡散体110C〜110Fにおける四角形状の外周部となる各辺L1、L2、L3、L4の4辺に対して、斜めになるように配置されている。更に具体的には、本実施形態では、熱伝導性板材111の一辺111bの方向は、発熱体120が接続される接続用領域内の任意の一点(A)と、それぞれの熱拡散体110C〜110Fの各辺L1、L2、L3、L4のうち、各熱拡散体110C〜110Fによって形成される熱拡散体110全体の外周部に含まれる辺、つまり、辺L1、L2上の任意の点(B)とを結ぶ仮想線に対して平行となるようにしている。
【0079】
本実施形態では、接続用領域内の任意の一点(以下、A点)を、各熱拡散体110C〜110Fの角部が当接する位置としており、また、辺L1、L2上の任意の点(以下、B点)を、L1とL2との交点(角部)としており、仮想線は、各熱拡散体110C〜110Fにおいて、A点から延びる1つの対角線と等しくなるようにしている。よって、熱拡散体110における熱伝導性板材111の一辺111bの方向は、A点から外方に向けて拡がるように配置されている(図10)。上記構成によって、熱拡散体110における各熱拡散体110C〜110Fのうち、互いに対角の位置となる熱拡散体110Cと熱拡散体110Eは、実質同一のものとなっており、また、熱拡散体110Dと熱拡散体110Fは、実質同一のものとなっている。
【0080】
上記の各熱拡散体110C〜110Fは、例えば、図12に示すように、製造することができる。即ち、第2実施形態(図3)で説明したように、熱伝導性板材111を準備し(図12(a))、この熱伝導性板材111を板厚方向に複数積層して積層体を形成し(図12(b))、熱伝導性板材111の一辺111bに沿って、且つ積層方向に切断して、積層体から1次板状体を形成する(図12(c))。更に、この1次板状体の4つの角部を切り落とし、1次板状体に内接する新たな四角形状の2次板状体とする(図12(c)、(d))ことで、2次板状体の各辺に対して熱伝導部材111の一辺111bが斜めとなる熱拡散体110C〜110Fを製造することができる。
【0081】
あるいは、短冊状の熱伝導性板材111において、長手方向の寸法が順次大きくなるように板厚方向に順次積層し、途中から長手方向の寸法が順次小さくなるように更に積層し、熱伝導性板材111の長手方向の辺によって積層方向に形成される板面110aが四角形状となるようにすることでも本実施形態の熱拡散体110を製造することが可能である。
【0082】
本実施形態では、それぞれの熱拡散体110C〜110Fにおいては、A点からB点に向かう仮想線に平行となるように熱伝導性板材111の一辺111bの方向を設定しているので、板面110a上にてA点〜B点間の仮想線に平行となる方向、および厚さ方向に良好な熱伝導性を持たせることができる。更に、熱拡散体110C〜110Fによって形成される熱拡散体110においては、A点から熱拡散体110の外周部に向けて拡がる方向、および厚さ方向に良好な熱伝導性を持たせることができる。
【0083】
よって、発熱体120の熱は、熱拡散体110において、発熱体120(A点)を中心として熱拡散体110の外周部に向けて拡がるように伝導すると共に、熱拡散体110の厚さ方向にも良好に伝導することができるので、良好な発熱体120の冷却が可能となる。
【0084】
本実施形態では、熱拡散体110の形成にあたり、4つの熱拡散体110C〜110Fを用いたが、これに限らず、3つの場合、5つ以上の場合等さまざまな組合せでの対応が可能である。
【0085】
また、各熱拡散体110C〜110FにおけるA点〜B点間の仮想線は、対角線にすることに限定される訳ではなく、A点を発熱体120の接続用の領域内の任意の点とし、B点を辺L1、L2上の任意の点として、このA点とB点とを結ぶ仮想線として設定することができる。要は、熱伝導性板材111の一辺111bの方向が、発熱体120の接続用領域内から、熱拡散体110外周部に向けて拡がるような方向とすれば良い。
【符号の説明】
【0086】
100A〜100F 発熱体の冷却装置
110 熱拡散体
110A 第1熱拡散体
110B 第2熱拡散体
110C〜110F 熱拡散体
111 熱伝送性板材
112 無機物の接合層(無機物の層)
120 発熱体
130 絶縁板
140 冷却器
150 金属板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板厚方向に比べて、長手方向および幅方向に良好な熱伝導性を有する短冊状の熱伝導性板材(111)が、前記板厚方向に複数積層された積層体として形成された熱拡散体であって、
前記積層体において、前記熱伝導性板材(111)の前記長手方向の辺(111a)によって前記積層方向に形成される面が、板状に拡がる板面(110a)となるように形成されると共に、
前記板面(110a)に対して直交する方向が、厚さ方向となるように形成されたことを特徴とする熱拡散体。
【請求項2】
前記積層体を複数備え、
複数の前記積層体(110A、110B)は、前記厚さ方向に積層され、複数の前記積層体(110A、110B)の間に介在される無機物の層(112)によって接合されており、
隣り合う前記積層体(110A、110B)において、前記熱伝導性板材(111)の前記積層方向が互いに異なるように配置されたことを特徴とする請求項1に記載の熱拡散体。
【請求項3】
前記互いに異なる前記熱伝導性板材(111)の前記積層方向の成す角度が、85〜90度の角度を成すことを特徴とする請求項2に記載の熱拡散体。
【請求項4】
前記無機物の層(112)は、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、錫(Sn)、鉛(Pb)、および金(Au)のうち少なくとも1つを含んだ層であることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の熱拡散体。
【請求項5】
前記積層体は、前記板面(110a)の拡がる方向に複数配置されると共に、複数の前記積層体のそれぞれの前記板面(110a)の一部が、発熱体(120)を接続するための接続用領域に含まれるようになっており、
それぞれの前記積層体において、
それぞれの前記積層体の前記熱伝導性板材(111)の前記長手方向は、
前記接続用領域内の任意の一点(A)と、
それぞれの前記積層体の外周部のうち、複数の前記積層体によって形成される全体の外周部に含まれる外周部上の任意の点(B)とを結ぶ仮想線に対して平行となるように配置されたことを特徴とする請求項1に記載の熱拡散体。
【請求項6】
複数の前記積層体は、前記板面(110a)が四角形状を成す4つの積層体(110C〜110F)から成り、
それぞれの前記積層体(110C〜110F)の四角形状の1つの角部が前記接続用領域に含まれるようになっていることを特徴とする請求項5に記載の熱交換板。
【請求項7】
前記積層体の前記厚さ方向の熱伝導率が、600W/mK以上であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1つに記載の熱拡散体。
【請求項8】
前記熱伝導性板材(111)は、グラファイト材料、またはグラファイトと金属との複合材料であることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1つに記載の熱拡散体。
【請求項9】
請求項1〜請求項8のいずれか1つに記載の熱拡散体(110)と、
前記熱拡散体(110)の一方の前記板面(110a)に配設された発熱体(120)と、
前記熱拡散体(110)の他方の前記板面(110a)に配設された絶縁板(130)と、
前記絶縁板(130)の前記熱拡散体(110)とは反対側の面に配設された冷却器(140)とを備えることを特徴とする発熱体の冷却装置。
【請求項10】
前記発熱体(120)は、半導体素子(120)であり、
前記熱拡散体(110)と、前記絶縁板(130)との間に、金属板(150)が配設されたことを特徴とする請求項9に記載の発熱体の冷却装置。
【請求項11】
前記発熱体(120)は、半導体素子(120)であり、
前記発熱体(120)と、熱拡散体(110)との間に、金属板(150)が配設されたことを特徴とする請求項9に記載の発熱体の冷却装置。
【請求項12】
請求項3に記載の熱拡散体(110)であって、前記積層体を2つ備える熱拡散体(110)と、
前記熱拡散体(110)の一方の前記板面(110a)に配設された発熱体(120)と、
前記熱拡散体(110)の他方の前記板面(110a)に配設された絶縁板(130)と、
前記絶縁板(130)の前記熱拡散体(110)とは反対側の面に配設された冷却器(140)とを備え、
前記熱拡散体(110)における2つの前記積層体(110A、110B)のうち、一方の積層体(110A)の前記厚さ方向の寸法をt1、他方の積層体(110B)の前記厚さ方向の寸法をt2とし、
前記一方の積層体(110A)の前記熱伝導性板材(111)の長手方向において、前記発熱体(120)の中心位置から前記熱拡散体(110)の端までの距離をr1、前記他方の積層体(110B)の前記熱伝導性板材(111)の長手方向において、前記発熱体(120)の中心位置から前記熱拡散体(110)の端までの距離をr2としたとき、
前記寸法t1、t2、および前記距離r1、r2の間に、
0.5≦(t1/t2)/(r1/r2)≦2
という関係が成立つことを特徴とする発熱体の冷却装置。
【請求項13】
板厚方向に比べて、平面方向に良好な熱伝導性を有する板状の熱伝導性板材(111)を、前記板厚方向に複数積層することで、積層体を形成し、
前記積層体を、前記熱伝導性板材(111)の一辺(111b)に沿って前記積層方向に板状に切断して板状体を形成し、
前記板状体において、前記熱伝導性板材(111)の一辺(111b)によって前記積層方向に形成される面を、板状に拡がる板面(110a)とし、
前記板面(110a)に対して直交する方向を、厚さ方向とすることを特徴とする熱拡散体の製造方法。
【請求項14】
板厚方向に比べて、平面方向に良好な熱伝導性を有する板状の熱伝導性板材(111)を、前記板厚方向に複数積層することで、積層体を形成し、
前記積層体を、前記熱伝導性板材(111)の一辺(111b)に沿って前記積層方向に板状に切断して、1次板状体を形成し、
前記1次板状体において、前記熱伝導性板材(111)の一辺(111b)によって前記積層方向に形成される面を、板状に拡がる板面(110a)とし、
前記板面(110a)に対して直交する方向を、厚さ方向とし、
前記1次板状体の4隅を切り落とすことで四角形状に形成して、前記熱伝導性板材(111)の一辺(111b)の方向が、前記切り落としによって形成される四角形状の各辺に対して斜めになるようにした2次板状体を形成し、
前記2次板状体を、複数準備して、
複数の前記2次板状体を、前記板面(110b)の拡がる方向に配置すると共に、それぞれの前記板面(110a)の一部が、発熱体(120)を接続するための接続用領域に含まれるようにし、
それぞれの前記2次板状体において、
それぞれの前記2次板状体の前記熱伝導性板材(111)の一辺(111b)の方向が、
前記接続用領域内の任意の一点(A)と、
それぞれの前記2次板状体の外周部のうち、複数の前記2次板状体によって形成される全体の外周部に含まれる外周部上の任意の点(B)とを結ぶ仮想線に対して平行となるように配置することを特徴とする熱拡散体の製造方法。
【請求項1】
板厚方向に比べて、長手方向および幅方向に良好な熱伝導性を有する短冊状の熱伝導性板材(111)が、前記板厚方向に複数積層された積層体として形成された熱拡散体であって、
前記積層体において、前記熱伝導性板材(111)の前記長手方向の辺(111a)によって前記積層方向に形成される面が、板状に拡がる板面(110a)となるように形成されると共に、
前記板面(110a)に対して直交する方向が、厚さ方向となるように形成されたことを特徴とする熱拡散体。
【請求項2】
前記積層体を複数備え、
複数の前記積層体(110A、110B)は、前記厚さ方向に積層され、複数の前記積層体(110A、110B)の間に介在される無機物の層(112)によって接合されており、
隣り合う前記積層体(110A、110B)において、前記熱伝導性板材(111)の前記積層方向が互いに異なるように配置されたことを特徴とする請求項1に記載の熱拡散体。
【請求項3】
前記互いに異なる前記熱伝導性板材(111)の前記積層方向の成す角度が、85〜90度の角度を成すことを特徴とする請求項2に記載の熱拡散体。
【請求項4】
前記無機物の層(112)は、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、錫(Sn)、鉛(Pb)、および金(Au)のうち少なくとも1つを含んだ層であることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の熱拡散体。
【請求項5】
前記積層体は、前記板面(110a)の拡がる方向に複数配置されると共に、複数の前記積層体のそれぞれの前記板面(110a)の一部が、発熱体(120)を接続するための接続用領域に含まれるようになっており、
それぞれの前記積層体において、
それぞれの前記積層体の前記熱伝導性板材(111)の前記長手方向は、
前記接続用領域内の任意の一点(A)と、
それぞれの前記積層体の外周部のうち、複数の前記積層体によって形成される全体の外周部に含まれる外周部上の任意の点(B)とを結ぶ仮想線に対して平行となるように配置されたことを特徴とする請求項1に記載の熱拡散体。
【請求項6】
複数の前記積層体は、前記板面(110a)が四角形状を成す4つの積層体(110C〜110F)から成り、
それぞれの前記積層体(110C〜110F)の四角形状の1つの角部が前記接続用領域に含まれるようになっていることを特徴とする請求項5に記載の熱交換板。
【請求項7】
前記積層体の前記厚さ方向の熱伝導率が、600W/mK以上であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1つに記載の熱拡散体。
【請求項8】
前記熱伝導性板材(111)は、グラファイト材料、またはグラファイトと金属との複合材料であることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1つに記載の熱拡散体。
【請求項9】
請求項1〜請求項8のいずれか1つに記載の熱拡散体(110)と、
前記熱拡散体(110)の一方の前記板面(110a)に配設された発熱体(120)と、
前記熱拡散体(110)の他方の前記板面(110a)に配設された絶縁板(130)と、
前記絶縁板(130)の前記熱拡散体(110)とは反対側の面に配設された冷却器(140)とを備えることを特徴とする発熱体の冷却装置。
【請求項10】
前記発熱体(120)は、半導体素子(120)であり、
前記熱拡散体(110)と、前記絶縁板(130)との間に、金属板(150)が配設されたことを特徴とする請求項9に記載の発熱体の冷却装置。
【請求項11】
前記発熱体(120)は、半導体素子(120)であり、
前記発熱体(120)と、熱拡散体(110)との間に、金属板(150)が配設されたことを特徴とする請求項9に記載の発熱体の冷却装置。
【請求項12】
請求項3に記載の熱拡散体(110)であって、前記積層体を2つ備える熱拡散体(110)と、
前記熱拡散体(110)の一方の前記板面(110a)に配設された発熱体(120)と、
前記熱拡散体(110)の他方の前記板面(110a)に配設された絶縁板(130)と、
前記絶縁板(130)の前記熱拡散体(110)とは反対側の面に配設された冷却器(140)とを備え、
前記熱拡散体(110)における2つの前記積層体(110A、110B)のうち、一方の積層体(110A)の前記厚さ方向の寸法をt1、他方の積層体(110B)の前記厚さ方向の寸法をt2とし、
前記一方の積層体(110A)の前記熱伝導性板材(111)の長手方向において、前記発熱体(120)の中心位置から前記熱拡散体(110)の端までの距離をr1、前記他方の積層体(110B)の前記熱伝導性板材(111)の長手方向において、前記発熱体(120)の中心位置から前記熱拡散体(110)の端までの距離をr2としたとき、
前記寸法t1、t2、および前記距離r1、r2の間に、
0.5≦(t1/t2)/(r1/r2)≦2
という関係が成立つことを特徴とする発熱体の冷却装置。
【請求項13】
板厚方向に比べて、平面方向に良好な熱伝導性を有する板状の熱伝導性板材(111)を、前記板厚方向に複数積層することで、積層体を形成し、
前記積層体を、前記熱伝導性板材(111)の一辺(111b)に沿って前記積層方向に板状に切断して板状体を形成し、
前記板状体において、前記熱伝導性板材(111)の一辺(111b)によって前記積層方向に形成される面を、板状に拡がる板面(110a)とし、
前記板面(110a)に対して直交する方向を、厚さ方向とすることを特徴とする熱拡散体の製造方法。
【請求項14】
板厚方向に比べて、平面方向に良好な熱伝導性を有する板状の熱伝導性板材(111)を、前記板厚方向に複数積層することで、積層体を形成し、
前記積層体を、前記熱伝導性板材(111)の一辺(111b)に沿って前記積層方向に板状に切断して、1次板状体を形成し、
前記1次板状体において、前記熱伝導性板材(111)の一辺(111b)によって前記積層方向に形成される面を、板状に拡がる板面(110a)とし、
前記板面(110a)に対して直交する方向を、厚さ方向とし、
前記1次板状体の4隅を切り落とすことで四角形状に形成して、前記熱伝導性板材(111)の一辺(111b)の方向が、前記切り落としによって形成される四角形状の各辺に対して斜めになるようにした2次板状体を形成し、
前記2次板状体を、複数準備して、
複数の前記2次板状体を、前記板面(110b)の拡がる方向に配置すると共に、それぞれの前記板面(110a)の一部が、発熱体(120)を接続するための接続用領域に含まれるようにし、
それぞれの前記2次板状体において、
それぞれの前記2次板状体の前記熱伝導性板材(111)の一辺(111b)の方向が、
前記接続用領域内の任意の一点(A)と、
それぞれの前記2次板状体の外周部のうち、複数の前記2次板状体によって形成される全体の外周部に含まれる外周部上の任意の点(B)とを結ぶ仮想線に対して平行となるように配置することを特徴とする熱拡散体の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−258755(P2011−258755A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−132076(P2010−132076)
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【Fターム(参考)】
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