説明

熱接着性シート

【課題】 基材の一方の面に積層された接着剤層に加えられる熱量が少ない場合であっても、被貼着体表面に強固に貼着することができる熱接着性シートを提供すること。
【解決手段】 シート状の基材と、該シート状の基材の一方の面に積層された接着剤層とからなり、該接着剤層は、MFR(メルトフローレート)が100〜220の熱接着性樹脂を含むことを特徴とする熱接着性シートとする。またシート状の基材と、該シート状の基材の一方の面に積層された接着剤層とからなり、該接着剤層は、粘度が1000〜11000Pa・sの熱接着性樹脂を含むことを特徴とする熱接着性シートとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱接着性シートに関する。より詳しくは、アイロン等の熱を利用して、壁、天井、襖、障子、床材などの被貼着体表面に貼着することができる熱接着性シートに関する。
本発明の目的は、基材の一方の面に積層された接着剤層に加えられる熱量が少ない場合であっても、被貼着体表面に強固に貼着することができる熱接着性シートを提供することにある。
【背景技術】
【0002】
スチームアイロン等の一般家庭に存在する熱源による加熱加圧によって、壁、天井、襖、障子、床材などの被貼着体表面に簡単に貼着することができる熱接着性シートが知られており、この熱接着性シートはアイロン貼り可能な襖紙や障子紙などとして利用されている。
従来の熱接着性シートは、基材の一方の面に熱接着性樹脂が積層されたものであり、スチームアイロン等の熱源を利用することで、熱接着性樹脂を加熱溶融・加圧することで、熱接着性シートを被貼着体表面に貼着することができるものであった。
【0003】
このようなアイロン貼り可能な襖紙や障子紙として用いられる熱接着性シートに関する発明としては、特許文献1〜5に開示されているようなものが知られている。
特許文献1には、温湿度の変化によってその凹凸の大きさが変化する凹凸をクレープ加工又はエンボス加工によって設けたスチーム通過性の紙シート材の一面に、熱可塑性で感熱収縮性の感圧接着剤の層を設けてスチームアイロンの使用による接着を可能とした熱接着紙シートが開示されている。
特許文献2には、紙シート材の一面に熱溶融接着性材料よりなる粒状体を添着した熱接着性シートが開示されている。
特許文献3には、接着面に熱接着樹脂を非連続状態の島状に塗布せしめたのち、この熱接着樹脂を加熱溶融してなる熱接着貼り紙であって、前記加熱溶融後の熱接着樹脂の島の球状或いは半球状を維持してなる熱接着貼り紙が開示されている。
特許文献4には、障子紙の片面に粒状の熱接着性樹脂を分布付着させた障子紙であって、該熱接着性樹脂の粒中には非水溶性熱接着性樹脂と水溶性熱接着性樹脂が特定量混在している熱接着性障子紙が開示されている。
特許文献5には、紙の片面に熱可塑性の疎水性ポリマーの水性分散液からなる8〜30ミクロン厚のホットメルト層を形成した湿式剥離性に優れた熱接着紙が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特公平5−77800号公報
【特許文献2】特開平6−280200号公報
【特許文献3】特開平7−300575号公報
【特許文献4】特開平10−37096号公報
【特許文献5】特開2004−52209号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来の熱接着性シートは、アイロンなどの熱を利用して襖や障子などの被貼着体表面に貼着することができるものであったが、以下に示すような問題を有していた。
従来の熱接着性シートを被貼着体表面に貼着する場合、スチームアイロンを使用しなければ、被貼着体表面に強固に貼着することはできなかった。スチームアイロンに比べて熱容量が小さいノンスチームアイロンやコードレスアイロンを使用した場合では、基材の一方の面に積層された接着剤を十分に溶融することができず、被貼着体表面に貼着することができない場合があった。
また、一般家庭用のスチームアイロンは、底部を壁面や天井面に向けて使用した場合、その構造上、スチームが噴出することがない。従って、スチームアイロンを使用しなければならない従来の熱接着性シートを壁面や天井面などの表面に貼着することはできなかった。
【0006】
また、熱源としてスチームアイロンを使用した場合であっても、人の手によってアイロンを動かして貼着作業を行うために、常に一定の圧力と一定の加熱時間を付与することができず、このために、美しく貼着することができなかった。
即ち、一般的な熱接着の場合(例えば、ヒートシール機を使用した場合)、一定圧力で一定時間、しかも一定温度を付与することができるので、強固にしかも美しく貼着することができる。一方、本発明のようにアイロンを使用して貼着作業を行う場合、人の手によって作業を行うために、加えられる圧力はヒートシール機を使用した場合の1/50〜1/300程度(具体的には、人の手による作業では、0.8×10N/m〜5.0×10N/m程度の圧力となる。)であり、しかも加圧時間や加圧温度にもバラツキが生じてしまい、その結果、美しく、しかも強固に貼着することができなかった。
【0007】
また従来の熱接着性シートは、被貼着体表面に対する接着力が十分といえるものではなかった。このために、被貼着体に対する十分な接着力を確保するために、アイロン等の熱源で接着剤を溶融・加圧する際に、アイロン等で強い押圧力を加えなければならなかった。
一方、強い押圧力を加えた場合、強い接着力を確保することができるが、被貼着体自体の凹凸や桟の跡が熱接着性シートの表面に現れてしまい、美しく貼着することができなかった。
さらに、従来の熱接着性シートは被貼着体表面に対する接着力が十分ではないために、繊維壁や砂壁などのような表面に凹凸が形成された被貼着体の表面に貼着することは困難であった。
【0008】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、基材の表面に積層される熱接着性樹脂の溶融状態における流動性に着目することによって、弱い押圧力及び低い加熱温度であっても熱接着性シートを被貼着体表面に美しく、しかも強固に貼着することができることを見出し、本発明の完成に至った。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、シート状の基材と、該シート状の基材の一方の面に積層された接着剤層とからなり、該接着剤層は、MFR(メルトフローレート)が100〜220の熱接着性樹脂を含むことを特徴とする熱接着性シートに関する。
請求項2に係る発明は、シート状の基材と、該シート状の基材の一方の面に積層された接着剤層とからなり、該接着剤層は、粘度が1000〜11000Pa・sの熱接着性樹脂を含むことを特徴とする熱接着性シートに関する。
請求項3に係る発明は、シート状の基材と、該シート状の基材の一方の面に積層された接着剤層とからなり、該接着剤層は、該シート状の基材の一方の面に接するように積層された第一の接着剤層と、該第一の接着剤層に接するように積層された第二の接着剤層とからなり、該第一の接着剤層は、粘度が5000〜11000Pa・sの熱接着性樹脂を含み、該第二の接着剤層は、粘度が1000〜5000Pa・sの熱接着性樹脂を含むことを特徴とする熱接着性シートに関する。
請求項4に係る発明は、前記シート状の基材には、パルプが含まれていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の熱接着性シートに関する。
請求項5に係る発明は、前記シート状の基材には、疎水性収縮繊維が含まれていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の熱接着性シートに関する。
請求項6に係る発明は、前記シート状の基材には、クレープ加工又はエンボス加工によって凹凸が形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の熱接着性シートに関する。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る熱接着性シートは、ノンスチームアイロンやコードレスアイロン等の熱容量の小さい熱源を使用した場合であっても、簡単に接着剤層を溶融させることができ、襖、障子或いは壁などの被貼着体表面に手軽に貼着することができる。しかも、この熱接着性シートは、被貼着体表面との接着力が強く、アイロン等を使用して接着剤を溶融させて被貼着体表面に貼着する際に強い押圧力を加える必要がない。従って、請求項1に係る熱接着性シートは、ノンスチームアイロンを使用することができるので、壁面や天井面に直接貼着することができる。また表面に凹凸が形成された被貼着体に貼着する場合でも、接着剤層が容易に溶融するので、溶融した接着剤が凹凸にすばやく入り込み、強固に貼着することができる。
請求項2に係る熱接着性シートは、ノンスチームアイロンやコードレスアイロン等の熱容量の小さい熱源を使用した場合であっても、簡単に接着剤層を溶融させることができ、襖、障子或いは壁などの被貼着体表面に手軽に貼着することができる。しかも、この熱接着性シートは、被貼着体表面との接着力が強く、アイロン等を使用して接着剤を溶融させて被貼着体表面に貼着する際に強い押圧力を加える必要がない。従って、請求項2に係る熱接着性シートは、ノンスチームアイロンを使用することができるので、壁面や天井面に直接貼着することができる。また表面に凹凸が形成された被貼着体に貼着する場合でも、接着剤層が容易に溶融するので、溶融した接着剤が凹凸にすばやく入り込み、強固に貼着することができる。
請求項3に係る熱接着性シートは、接着剤層が高粘度の接着剤層と低粘度の接着剤層とから構成されているので、被貼着体に凹凸がある場合、低粘度の接着剤層が先に凹凸の凹みに入り込むために接着性が向上し、更に高粘度の接着剤により、より強固に固着させることができる。また、低粘度の接着剤層が主に被着体との接着に寄与し、高粘度の接着剤層によって、低粘度の接着剤層が基材に染み出すことを防いで、シワやフクラミが生じることを防止することもできる。
請求項4に係る熱接着性シートは、被貼着体の表面に貼着する際にパルプに含まれている水分が蒸発して接着剤層の溶融を補助することができる。
請求項5に係る熱接着性シートは、被貼着体の表面に貼着した後、湿温度の変化により基材が伸縮するのを防ぐことができる。
請求項6に係る熱接着性シートは、被貼着体の表面に貼着する際に、基材が熱収縮した場合であっても、エンボス加工やクレープ加工の凹凸が熱収縮を吸収することができ、熱が加えられていない部分に熱収縮が広範囲に及ぶことを防いで、シワやフクラミが生じることを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る熱接着性シートについて説明する。
まず、本発明の第一実施形態に係る熱接着性シートについて、図面を参照しつつ説明する。
図1の(A)は、本発明の第一実施形態に係る熱接着性シートの概略を示す部分断面図である。本発明の第一実施形態に係る熱接着性シート(1a)は、シート状の基材(2)と、該シート状の基材(2)の一方の面に積層された接着剤層(3a)とからなる。
【0012】
シート状の基材(2)を構成する素材は特に限定されないが、こうぞ、みつまた、がん皮、麻などのじん皮繊維、木材パルプ、わらパルプ、竹パルプ、あしパルプ、コットンシリンダーパルプなどのパルプなどを例示することができる。
【0013】
特に本発明では、基材(2)にはパルプを1〜100重量%含有することが好ましく、50〜100重量%含有することがより好ましい。パルプには水分が存在しており、被貼着体表面に貼着する際に、アイロン等の熱源によってこのパルプに存在している水分が蒸発する。この蒸発した水分が接着剤層(3a)を溶融するのに補助的な役割を果たすことができ、熱容量が少ない熱源を使用した場合であっても接着剤層(3a)を確実に溶融することができる。
【0014】
基材(2)の透気度(JIS P 8117)は特に限定されないが、15秒以下であることが好ましく、10秒以下であることがより好ましい。基材(2)の透気度が15秒を超える場合、アイロン等の熱が接着剤層(3a)に伝わり難くなり、接着剤層(3a)を溶融させることが困難になる場合がある。
【0015】
本発明では、基材(2)に疎水性収縮の繊維を配合することができる。疎水性収縮繊維としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリクラール、アクリル、酢酸ビニル、又はこれらの誘導体などを例示することができる。
疎水性収縮繊維を配合すると、アイロン等の熱源によって接着剤を溶融する際に、基材(2)を収縮させることができる。これによって、熱接着性シート(1)を被貼着体表面に貼着した際に、基剤(2)が熱収縮することによってシワやフクラミが生じることを防ぐことができ、また疎水性収縮繊維を配合すると、紙の寸法安定性が良くなり、被貼着体表面により美しく貼着することができる。
疎水性収縮繊維を配合する場合、基材全重量の1〜100重量%、好ましくは5〜50重量%となるように配合する。
基材(2)の密度は特に限定されないが、0.3g/cm以上、好ましくは0.4〜0.9g/cmとされる。基材(2)の密度が0.3g/cm以上であると、溶融した接着剤が基材(2)の中に侵入することを防ぐことで、接着力の低下を防止することができる。
【0016】
本発明に係る熱接着性シート(1a)は、被貼着体表面に貼着した後、基材(2)がある程度熱収縮することによって、基材(2)の表面にシワやフクラミが発生することなく、美しく貼着することができる。しかし、熱収縮が広範囲に及ぶと、逆に基材(2)表面にシワやフクラミが発生する原因となる場合がある。そこで、基材(2)の熱収縮が広範囲に及ぶことを防止する目的で、本発明では、基材(2)に温湿度の変化によって凹凸の大きさが変化する凹凸部(図示せず)を形成することができる。
被貼着体表面に熱接着性シート(1a)を貼着する際に、アイロン等の熱源によって熱が加えられた部分は熱収縮するが、基材(2)に凹凸部を設けることによって、加熱された部分と加熱されなかった部分の境界部に存在する凹凸部が高さを縮小して熱が加えられなかった部分に収縮が広範囲に及ぶのを防ぐことができ、シワやフクラミが発生することを防止することができる。
基材(2)に凹凸部を形成する方法は特に限定されないが、クレープ加工又はエンボス加工を例示することができる。
クレープ加工による場合、クレープ率は特に限定されないが、5〜100%、好ましくは5〜50%とする。
またエンボス加工による場合、エンボスロールの版の深さを基材(2)の厚さの1/2から50倍程度とする。
【0017】
上記基材(2)には、必要に応じて、ガラス繊維、マイクロガラス、ロックウール、鉱さい綿、アルミナ繊維、アルミナシリカ繊維、ムライト繊維、ホウ酸繊維、石英繊維、ケイ酸ガラス繊維、溶融ガラス繊維、チタン酸ガラス繊維、ジルコニアガラス繊維、硫酸カルシウム繊維、フォスフェートファイバー、ポロシリケート繊維、炭素繊維、活性炭素繊維などの無機繊維が含有されていても良い。
【0018】
上記基材(2)には、水溶性尿素樹脂、メラミン樹脂、カチオン化澱粉、CMCポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂、ポリイミン樹脂、水溶性アクリル樹脂、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等の紙力増強剤を配合することができる。
【0019】
尚、本発明においては、基材(2)にサイズ剤を配合することができるが、サイズ剤を大量に配合すると、基材(2)を構成する繊維同士が固着するために伝熱性が悪化する。このために、ノンスチームアイロンやコードレスアイロンなどの熱容量の小さいアイロンを使用した場合、接着剤層(3a)を十分溶融させることができず、基材(2)を被貼着体表面に貼着することができない場合がある。またサイズ剤を大量に配合すると、基材(2)の伸縮が阻害されるために、接着剤層(3a)を溶融させて被貼着体表面に貼着することができたとしても、貼着後に基材(2)表面にシワやフクラミが生じやすくなり、美しく貼着することができない場合がある。
従って、サイズ剤を配合する場合は、基材(2)全重量の15重量%以下となるように配合することが好ましく、サイズ剤を配合しないことがより好ましい。
【0020】
基材(2)の厚さは特に限定されず、通常の襖紙や障子紙などと同等程度の厚さとされ、具体的には、80〜350μm、より好ましくは150〜300μm程度とされる。
【0021】
さらに、本発明では、必要に応じて、基材(2)の表面(接着剤層(3a)が設けられる面の反対側の面)に、織布、編布、不織布、合成樹脂、金属箔、皮革などを積層することができる。
【0022】
基材(2)の一方の面には、接着剤層(3a)が積層されている。接着剤層(3a)は、MFR(メルトフローレート)が100〜220の熱接着性樹脂を含有する。
尚、MFRは分子量の指標の一つであり、溶融状態にある樹脂の流動性を示す尺度である。MFRは、決められた温度(190℃)と圧力(2160gの荷重)のもとで、一定寸法(内径2mm)のノズルから10分間に押出された溶融樹脂を溶融樹脂の質量(g)で表したものである。
【0023】
熱接着性樹脂は、MFRが100〜220のものであればあらゆる熱接着性樹脂を使用することができる。具体的には、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、エチレン−エチルアクリレートコポリマー、アイオノマー樹脂、ウレタン樹脂、またはこれらの誘導体などを例示することができる。
【0024】
熱接着性樹脂のMFRは100〜220、好ましくは150〜200である。熱接着性樹脂のMFRが100〜220であると、ノンスチームアイロンやコードレスアイロンなどの熱容量の小さい熱源を使用した場合であっても、被貼着体表面に熱接着性シート(1a)を貼着することができる。また、接着剤層(3a)を加熱溶融・加圧して熱接着性シート(1)を被貼着体表面に貼着する際に、強い押圧力を加えなくても、被貼着体表面に強固に貼着することができる。
熱接着性樹脂のMFRが100未満の場合、ノンスチームアイロンやコードレスアイロンなどの熱容量の小さな熱源から供給される熱によっては、十分に溶融せず、熱接着性シートを被貼着体表面に貼着することができる十分な接着力が得られない場合がある。
熱接着性樹脂のMFRが220を超える場合、熱容量の少ない熱源から供給される熱によって容易に溶融することができるようになるが、その反面、流動性が高くなるために、製造時に基材(2)の一方の面に接着剤層(3a)を形成することが困難となり、生産性が低下する場合がある。
【0025】
熱接着性樹脂の軟化点(180℃環球法)は特に限定されないが、70〜130℃であることが好ましく、90〜100℃であることがより好ましい。
熱接着性樹脂の軟化点が70℃未満であると、熱接着性シート(1a)がロール状に巻き取られた際に、経時で基材(2)と接着剤層(3a)がブロッキングしたり、シュリンク包装時に基材(2)と接着剤層(3a)がブロッキングしたりする場合がある。
熱接着性樹脂の軟化点が130℃を超えると、一般家庭用アイロンの熱源による加熱・加圧では接着剤層(3a)が十分に溶融せず、十分な接着力が得られない場合がある。
【0026】
熱接着性樹脂の融点は特に限定されないが、60〜120℃であることが好ましく、70〜90℃であることがより好ましい。
熱接着性樹脂の融点が60℃未満の場合、熱接着性シート(1a)がロール状に巻き取られた際に、経時で基材(2)と接着剤層(3a)がブロッキングしたり、シュリンク包装時に基材(2)と接着剤層(3a)がブロッキングしたりする場合がある。
熱接着性樹脂の融点が120℃を超える場合、一般家庭用アイロンの熱源による加熱・加圧では接着剤層(3a)が十分に溶融せず、十分な接着力が得られない場合がある。
【0027】
熱接着性樹脂には、粘度調整及びブロッキングを防止するためにワックス類を配合することができる。
ワックス類としては、カルナバロウ、キャンデリラロウ、モンタンロウ、鯨ロウ、ミツロウなどを例示することができる。
ワックス類を配合する場合、その配合量は特に限定されないが、熱接着性樹脂全量中、1〜50重量%、好ましくは5〜15重量%とされる。
ワックス類の配合量が5重量%未満の場合、ブロッキングを防止する効果に乏しい。
ワックス類の配合量が50重量%を超えても、それ以上の効果が得られないばかりか、接着性などに悪影響を与える場合がある。
【0028】
図2は、本発明の第一実施形態に係る熱接着性シート(1a)において、基材(2)の一方の面に接着剤層(3a)を積層する方法の概略工程を示した図である。
基材(2)の一方の面に、接着剤層(3a)を形成する方法は特に限定されず、例えば、図2に例示するような押出ラミネート加工が挙げられる。以下、押出ラミネート加工によって、基材(2)の一方の面に接着剤層(3a)を形成する方法について説明する。
【0029】
押出器(10)には、MFRが100〜220の熱接着性樹脂を供給する。押出器(10)で溶融された溶融樹脂はTダイ(11)に供給されフィルム(a)を形成する。
基材(2)は繰り出しロール(12)からニップロール(13)に供給される。Tダイ(11)から押出されたフィルム(a)は、ニップロール(13)と冷却ロール(14)の間に供給される。基材(2)はフィルム(a)とともにニップロール(13)と冷却ロール(14)の間を通過させられることにより、基材(2)の一方の面にフィルム(a)が加圧接着される。次いで、冷却ロール(14)により冷却固化される。基材(2)の一方の面にフィルム(a)が加圧接着された熱接着性シート(1a)は、巻き取りロール(15)に巻き取られる。
【0030】
尚、熱接着性樹脂のMFRによっては、溶融した溶融樹脂の流動性が高くなることで、ラミネート加工性が悪化する場合がある。
ラミネート加工性を向上させる方法としては、熱接着性樹脂に、上述したようにワックス類を配合する方法を例示することができる。熱接着性樹脂にワックス類を配合することによって、溶融樹脂の流動性を調整することができ、ラミネート加工性を向上させることができる。
また、冷却ロール(14)の表面に、非粘着コーティング(図示せず)を施す方法を例示することができる。冷却ロール(14)表面に施される非粘着コーティングとしては、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂でコーティングする方法や、セラミックスを溶射コーティングする方法を例示することができる。
さらには、加工温度を調節する方法や、ラインスピードを低下(約60m/分程度)させる方法などを例示することができる。
【0031】
次に、本発明の第二実施形態に係る熱接着性シートについて、図面を参照しつつ説明する。
図1(B)は、本発明の第二実施形態に係る熱接着性シートの概略を示す部分断面図である。本発明の第二実施形態に係る熱接着性シート(1b)は、シート状の基材(2)と、該シート状の基材(2)の一方の面に積層された接着剤層(3b)とからなる。
【0032】
第二実施形態に係る熱接着性シート(1b)において、接着剤層(3b)は、粘度が1000〜11000Pa・sの熱接着性樹脂を含む。
尚、本発明において、粘度は180℃の温度条件下で測定したものである。
接着剤層(3b)が、1000〜11000Pa・sの熱接着性樹脂を含むことにより、ノンスチームアイロンやコードレスアイロンなどの熱容量が小さい熱源によっても、接着剤層(3b)を容易に溶融させることができ、熱接着性シート(1b)を被貼着体表面に貼着することができる。しかも、被貼着体表面に対する接着力が高いので、被貼着体表面に貼着する際に、大きな押圧力を加えなくても被貼着体表面に貼着することができる。
熱接着性樹脂の粘度は1000〜11000Pa・sであれば構わないが、3000〜10000Pa・sが好ましく、5000〜9000Pa・sがより好ましい。
【0033】
接着剤層(3b)を構成する熱接着性樹脂は粘度が1000〜11000Pa・sのものであればあらゆる熱接着性樹脂を使用することができる。具体的には、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、エチレン−エチルアクリレートコポリマー、アイオノマー樹脂、ウレタン樹脂、またはこれらの誘導体などを例示することができる。
【0034】
図1(C)は、本発明の第二実施形態に係る熱接着性シートの変更例を示す断面図である。
第二実施形態に係る熱接着性シート(1b)の変更例では、接着剤層(3b)は第一の接着剤層(3b)と第二の接着剤層(3b)とから構成されている。第一の接着剤層(3b)は基材(2)と接するように積層されており、第二の接着剤層(3b)は第一の接着剤層(3b)と接するように積層されている。
【0035】
第一と第二の接着剤層(3b、3b)は1000〜11000Pa・sの熱接着性樹脂を含有するが、第一の接着剤層(3b)は1000〜11000Pa・sの熱接着性樹脂のうち、高粘度の樹脂を含有し、第二の接着剤層(3b)は1000〜11000Pa・sの熱接着性樹脂のうち、低粘度の樹脂を含有する。
より詳しくは、第一の接着剤層(3b)は、粘度が5000〜11000Pa・s、より好ましくは粘度が7000〜9000Pa・sの高粘度の熱接着性樹脂を含む。
第二の接着剤層(3b)は、粘度が1000〜5000Pa・s、より好ましくは粘度が3000〜5000Pa・sの低粘度の熱接着性樹脂を含む。
【0036】
第二実施形態に係る熱接着性シート(1b)において、接着剤層(3b)を第一接着剤層(3b)と第二接着剤層(3b)の二層から構成することにより、被貼着体に凹凸がある場合、まず、低粘度の熱接着性樹脂が凹凸の凹みにまで入り込む。次に高粘度の熱接着剤によってより強固に固着させることができる。また、接着剤層(3b)を構成する熱接着性樹脂が基材(2)や被貼着体表面へ染み出すことを防止することもできる。
即ち、第二実施形態に係る熱接着性シート(1b)において、接着剤層(3b)を構成する熱接着性樹脂の粘度が低くなるにつれて、アイロン等の熱を供給した際に、溶融した接着剤が基材(2)或いは被貼着体に染み込みやすくなる。溶融した接着剤が基材(2)や被貼着体に染み込んだ箇所では、基材(2)の表面に接着剤が殆ど存在していないことになり、基材(2)と被貼着体との接着力が低下する原因となった。またシワやフクラミなどの原因となり、美しく仕上げることができない場合があった。
この変更例のように、高粘度の熱接着性樹脂を含む第一の接着剤層(3b)を基材(2)側に形成することによって、高粘度の熱接着性樹脂の表面に積層された第二の接着剤層(3b)を構成する低粘度の熱接着性樹脂が基材(2)に染み込むことを防止することができる。また第二の接着剤層(3b)を構成する熱接着性樹脂が被貼着体に染み込んだ場合であっても、高粘度の第一の接着剤層(3b)が基材(2)表面に存在しているので、基材(2)と被貼着体表面との接着力が低下することがなく、シワやフクラミの発生を防止することができる。
【0037】
尚、第二実施形態に係る熱接着性シート(1b)において、シート状の基材(2)に関しては、上述の第一実施形態に係る熱接着性シート(1a)と同様の構成であり、説明を省略する。
【0038】
図3及び4は、本発明の第二実施形態に係る熱接着性シート(1b)において、基材(2)の一方の面に接着剤層(3b)を積層する方法の概略工程を示した図である。
基材(2)の一方の面に、接着剤層(3b)を形成する方法は特に限定されず、例えば、図3や図4に例示するようなロールコート加工が挙げられる。以下、ロールコート加工によって、基材(2)の一方の面に接着剤層(3b)を形成する方法について説明する。
【0039】
まず、図3に示す工程について説明する。図3に示す工程では、基材(2)の一方の面に単層の接着剤層(3b)を形成する工程、即ち、図1(B)に示す熱接着性シート(1b)の製造工程を示す。
接着剤槽(20)には、溶融された1000〜11000Pa・sの熱接着性樹脂(b)が入れられており、熱接着性樹脂はコーティングロール(21)に供給される。
基材(2)は繰り出しロール(22)からニップロール(23)に供給され、ニップロール(23)とコーティングロール(21)の間を通過させられる。この際、接着剤槽(20)からコーティングロール(21)に供給された熱接着性樹脂(b)が基材(2)の一方の面に塗布される。
基材(2)の一方の面に塗布された熱接着剤樹脂(b)を冷却ロール(24)にて冷却固化させる。これによって、基材(2)の一方の面に接着剤層(3b)が積層された熱接着性シート(1b)が製造される。熱接着性シート(1b)は巻き取りロール(25)に巻き取られる。
【0040】
次に、図4に示す工程について説明する。図4に示す工程では、基材(2)の一方の面に二層の接着剤層(3b)を積層した熱接着性シート(1b)、即ち、図1(C)に示す熱接着性シート(1b)の製造工程を示す。
第一の接着剤槽(30)には、溶融された高粘度(7000〜9000Pa・s)の熱接着性樹脂(b)が入れられており、高粘度の熱接着性樹脂(b)は第一のコーティングロール(31)に供給される。
基材(2)は繰り出しロール(32)から第一のニップロール(33)に供給され、第一のニップロール(33)と第一のコーティングロール(31)の間を通過させられる。この際、第一の接着剤槽(30)から第一のコーティングロール(31)に供給された高粘度の熱接着性樹脂(b)が基材(2)の一方の面に塗布される。
基材(2)の一方の面に塗布された熱接着性樹脂(b)を冷却ロール(34)にて冷却固化させて、基材(2)の一方の面に、まず、第一の接着剤層(3b1)を積層する。
【0041】
第二の接着剤槽(35)には、溶融された低粘度(3000〜5000Pa・s)の熱接着性樹脂(b)が入れられており、低粘度の熱接着性樹脂(b)は第二のコーティングロール(36)に供給される。
一方の面に第一の接着剤層(3b)が積層された基材(2)は、第二のニップロール(37)に供給され、第二のニップロール(37)と第二のコーティングロール(36)の間を通過させられる。この際、第二の接着剤槽(35)から第二のコーティングロール(36)に供給された低粘度の熱接着性樹脂(b)が、高粘度の熱接着性樹脂(b)によって形成された第一の接着剤層(3b)の上に塗布される。
基材(2)の一方の面に塗布された低粘度の熱接着性樹脂(b)を冷却ロール(38)にて冷却固化させる。これによって、基材(2)の一方の面に、第一の接着剤層(3b)と第二の接着剤層(3b)からなる接着剤層(3b)が積層された熱接着性シート(1b)が製造される。熱接着性シート(1b)は巻き取りロール(39)に巻き取られる。
【0042】
本発明に係る熱接着性シート(1)は、従来と同様の方法によって、即ち、アイロン等の熱源を使用することによって被貼着体の表面に貼着することができる。本発明に係る熱接着性シート(1)を貼着する際に使用するアイロン等の熱源としては、従来の熱接着性シートと同様にスチームアイロンを使用することもできるが、従来の熱接着性シートでは使用することが困難であったコードレスアイロンやノンスチームアイロン等の熱容量の小さなアイロンを使用することができる。
【0043】
以下、実施例を示すことにより本発明を詳細に説明する。尚、本発明は以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0044】
[実施例1]
押出ラミネート加工によって、基材(那須製紙社製の坪量100g/m2)の裏面に、熱接着性樹脂(ヒロダイン社製、「HD7554」)のMFRを150に調整した接着剤層を積層することにより、実施例1の試料を調製した。
【0045】
[実施例2]
押出ラミネート加工によって、基材(那須製紙社製の坪量100g/m2)の裏面に、熱接着性樹脂(ヒロダイン社製、「HD7736」)のMFRを220に調整した接着剤層を積層することにより、実施例2の試料を調製した。
【0046】
[実施例3]
押出ラミネート加工によって、基材(那須製紙社製の坪量100g/m2)の裏面に、熱接着性樹脂(ヒロダイン社製、「HD7554」)のMFRを106に調整した接着剤層を積層することにより、実施例3の試料を調製した。
【0047】
[実施例4]
押出ラミネート加工によって、基材(那須製紙社製の坪量100g/m2)の裏面に、熱接着性樹脂(東ソー社製、「メルセンMX24」)のMFRを100に調整した接着剤層を積層することにより、実施例4の試料を調製した。
【0048】
[実施例5]
ロールコート加工によって、基材(那須製紙社製の坪量100g/m2)の裏面に、熱接着性樹脂(東洋ペトロライト社製、「トヨメルトH655」)の粘度を9050Pa・sに調整した接着剤層を積層することにより、実施例5の試料を調製した。
【0049】
[実施例6]
ロールコート加工によって、基材(那須製紙社製の坪量100g/m2)の裏面に、熱接着性樹脂(東洋ペトロライト社製、「トヨメルトH655」)の粘度を6780Pa・sに調整した接着剤層を積層することにより、実施例6の試料を調製した。
【0050】
[実施例7]
ロールコート加工によって、基材(那須製紙社製の坪量100g/m2)の裏面に、熱接着性樹脂(東洋ペトロライト社製、「トヨメルトH655」)の粘度を5930Pa・sに調整した接着剤層を積層することにより、実施例7の試料を調製した。
【0051】
[実施例8]
ロールコート加工によって、基材(那須製紙社製の坪量100g/m2)の裏面に、熱接着性樹脂(ヒロダイン社製、「HD4605」)の粘度を4600Pa・sに調整した接着剤層を積層することにより、実施例8の試料を調製した。
【0052】
[比較例1]
押出ラミネート加工によって、基材(那須製紙社製の坪量100g/m2)の裏面に、熱接着性樹脂(ヒロダイン社製、「HD7520」)のMFRを65に調整した接着剤層を積層することにより、比較例1の試料を調製した。
【0053】
[比較例2]
押出ラミネート加工によって、基材(那須製紙社製の坪量100g/m2)の裏面に、熱接着性樹脂(東ソー社製、「メルセンMX22」)のMFRを90に調整した接着剤層を積層することにより、比較例2の試料を調製した。
【0054】
[比較例3]
押出ラミネート加工によって、基材(那須製紙社製の坪量100g/m2)の裏面に、熱接着性樹脂(東ソー社製、「メルセンMX06」)のMFRを46に調整した接着剤層を積層することにより、比較例3の試料を調製した。
【0055】
[比較例4]
押出ラミネート加工によって、基材(那須製紙社製の坪量100g/m2)の裏面に、熱接着性樹脂(ヒロダイン社製、「HD7554DB」)のMFRを22に調整した接着剤層を積層することにより、比較例4の試料を調製した。
【0056】
上記各実施例及び比較例の基材の物性値は以下のとおりである。
材質:パルプ、疎水性収縮繊維
坪量:100g/m2
厚さ:180〜200μm
密度:0.57
サイズ度:50秒以下
透気度:10秒以下
【0057】
[試験例1:接着力の評価1]
実施例1〜8及び比較例1〜4の試料を、ヒートシール機を用いて、ヒートシール温度:200℃、荷重:0.8×10N/m、ヒートシール時間:1秒でラワンベニヤの表面に貼着した。各試料とラワンベニヤとの接着力を評価した。結果を表1及び2に記載する。
【0058】
【表1】

【0059】
【表2】

【0060】
シワやフクラミの発生状況の評価でシワやフクラミが多数発生したものの接着力を評価すると、5N/25mm前後であることが確認された。このことより、接着力は、少なくとも6N/25mm以上、好ましくは8N/25mm以上必要であることが確認された。一方、比較例の接着力は大半が6N/25mm以下であり、接着力が著しく劣ることが確認された。
【0061】
[試験例2:接着力の評価2]
実施例1〜8及び比較例1〜4の試料を、ヒートシール機を用いて、ヒートシール温度:160℃、荷重:0.8×10N/m、ヒートシール時間:1秒でラワンベニヤの表面に貼着した。各試料とラワンベニヤとの接着力を評価した。結果を表3及び4に記載する。
【0062】
【表3】

【0063】
【表4】

【0064】
実施例の試料では、ヒートシール温度を低下させた場合でも、7N/25mm以上の接着力があり、著しい接着力の低下は確認されなかった。
【0065】
[試験例3:接着力の評価3]
実施例1〜8及び比較例1〜4の試料を、家庭用アイロンを用いて、同一の条件(各試料での押圧力:0.4×10N/m、加熱時間;1秒、温度:200℃、スチーム:無し)でラワンベニヤの表面に貼着した。各試料とラワンベニヤとの接着力を評価した。結果を表5及び6に記載する。
【0066】
【表5】

【0067】
【表6】

【0068】
接着力が5N/25mm以下になると、接着性が著しく低下することから、最低の場合でも6N/25mm以上、好ましくは8N/25mm以上の接着力が必要とされる。
表1に記載のとおり、実施例の試料の接着力はいずれも8N/25mm以上であり、十分な接着力を有することが確認された。一方、比較例の試料の接着力はいずれも5N/25mm以下であり、接着力が著しく劣ることが確認された。
【0069】
[試験例4:シワやフクラミの発生状況の評価1]
実施例1〜8及び比較例1〜4の各試料を、以下の条件でラワンベニヤの表面に貼着した。次いで、以下の評価基準に従って、ラワンベニヤの表面に貼着された各試料のシワやフクラミの発生状況を評価した。
結果を表3及び4に記載する。
【0070】
<アイロン掛けの条件>
温度 :200℃
荷重 :約0.4×10N/m
速度 :約10cm/秒
スチーム発生量 :約8g/分
【0071】
<評価基準>
◎ シワやフクラミの発生が無く、良好な状態で貼着されている。
〇 シワやフクラミの総面積が全面積の1/10以下であり、概ね良好な状態で貼着されている
△ シワやフクラミの総面積が1/10〜1/3であり、シワやフクラミが確認される。
× シワやフクラミの総面積が1/3以上であり、多くのシワやフクラミが確認される。
【0072】
[試験例3:シワやフクラミの発生状況の評価2]
実施例1〜8及び比較例1〜4の各試料を用いて、スチームを発生させなかった以外は試験例2と全く同一の条件でラワンベニヤの表面に貼着した。各試料のシワやフクラミの発生状況を、試験例2と同様の評価基準で評価した。結果を表7及び8に記載する。
【0073】
【表7】

【0074】
【表8】

【0075】
表7に記載されるように、実施例の試料では、シワやフクラミの発生が無く、或いはシワやフクラミが発生した場合でも、その発生量は少量であり、家庭用アイロンを使用した場合でも、美しく貼着できることが確認された。またスチームを使用しない場合でも、スチームを使用した場合と同様に美しく貼着できることが確認された。
一方、表8に記載されるように、比較例の試料では、シワやフクラミの発生量が多く、美しく貼着することはできなかった。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明に係る熱接着性シートは、襖、障子或いは壁などの被貼着体の表面に、アイロン等の熱源を使用することにより貼着される襖紙、障子紙或いは壁紙として好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】(A)は第一実施形態に係る熱接着性シートの概略を示す部分断面図であり、(B)は第二実施形態に係る熱接着性シートの概略を示す部分断面図であり、(C)は第二実施形態に係る熱接着性シートの変更例の概略を示す部分断面図である。
【図2】第一実施形態に係る熱接着性シートにおいて、基材の一方の面に接着剤層を積層する方法の概略工程を示した図である。
【図3】第二実施形態に係る熱接着性シートにおいて、基材の一方の面に接着剤層を積層する方法の概略工程を示した図である。
【図4】第二実施形態に係る熱接着性シートにおいて、基材の一方の面に接着剤層を積層する方法の概略工程を示した図である。
【符号の説明】
【0078】
1a 第一実施形態に係る熱接着性シート
1b 第二実施形態に係る熱接着性シート
2 基材
3a 接着剤層
3b 接着剤層
3b 第一の接着剤層
3b 第二の接着剤層
10 押出器
11 Tダイ
12 繰り出しロール
13 ニップロール
14 冷却ロール
15 巻き取りロール
20 接着剤槽
21 コーティングロール
22 繰り出しロール
23 ニップロール
24 冷却ロール
25 巻き取りロール
30 第一の接着剤槽
31 第一のコーティングロール
32 繰り出しロール
33 第一のニップロール
34 冷却ロール
35 第二の接着剤槽
36 第二のコーティングロール
37 第二のニップロール
38 冷却ロール
39 巻き取りロール
a フィルム
b 熱接着性樹脂
高粘度の熱接着性樹脂
低粘度の熱接着性樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の基材と、該シート状の基材の一方の面に積層された接着剤層とからなり、該接着剤層は、MFR(メルトフローレート)が100〜220の熱接着性樹脂を含むことを特徴とする熱接着性シート。
【請求項2】
シート状の基材と、該シート状の基材の一方の面に積層された接着剤層とからなり、
該接着剤層は、粘度が1000〜11000Pa・sの熱接着性樹脂を含むことを特徴とする熱接着性シート。
【請求項3】
シート状の基材と、該シート状の基材の一方の面に積層された接着剤層とからなり、
該接着剤層は、該シート状の基材の一方の面に接するように積層された第一の接着剤層と、該第一の接着剤層に接するように積層された第二の接着剤層とからなり、
該第一の接着剤層は、粘度が5000〜11000Pa・sの熱接着性樹脂を含み、該第二の接着剤層は、粘度が1000〜5000Pa・sの熱接着性樹脂を含むことを特徴とする熱接着性シート。
【請求項4】
前記シート状の基材には、パルプが含まれていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の熱接着性シート。
【請求項5】
前記シート状の基材には、疎水性収縮繊維が含まれていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の熱接着性シート。
【請求項6】
前記シート状の基材には、クレープ加工又はエンボス加工によって凹凸が形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の熱接着性シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−182810(P2006−182810A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−374697(P2004−374697)
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【出願人】(000126528)株式会社アサヒペン (14)
【Fターム(参考)】