説明

熱測量システム

【課題】短時間でヒートパイプの導熱係数を定めることを可能にする熱測量システムを提供する。
【解決手段】ヒートパイプ110、加熱器130、熱電冷却モジュール250及び熱電冷却制御器120を備える。ヒートパイプ110は電子設備の冷却に適用され、かつ第一温度センサー171に接続される第一端と第二温度センサー174に接続される第二端とを有する。加熱器130は第一端と加熱制御器150に接続される。熱電冷却器250は第二端に接続される。熱電冷却制御器120は第一温度センサー171または第二温度センサー174に電気的に接続される。また、熱電冷却制御器120は比例―積分―微分制御器220を有し、加熱制御器250は定温制御または定熱効率制御を行い、電子設備は高熱エネルギーを生じて熱エネルギーが集中する電子部品を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱測量システムに関し、特にヒートパイプの品質を認識するヒートパイプ熱測量システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒートパイプは放熱効果を果たす重要なユニットとしてパーソナルコンピューター、ノートパソコン、ゲーム機などに汎用されている。ヒートパイプの外観のみからヒートパイプの品質を判断することは非常に難しいため、導熱係数を測量することによりヒートパイプの品質を判断する方法が一般的である。周知のヒートパイプ測量システムは、凝結端において水流循環を介して温度を制御し、蒸発端において定効率により加熱を行い、熱平衡に至り測量を完成させるまで比較的長い時間を費やす必要がある。水流循環システムの安定性はあまりよくないため測量の誤差が生じる。しかし、水流循環システムの安定性を維持するには非常に時間とコストがかかる。またヒートパイプ測量システムのうちの特に大量生産の生産ラインに適用される一般の熱測量システムは非常に時間がかかるだけでなく、不正確でメンテナンスが容易ではないため、経済効果があまり高くない。従って、時間を短縮化し、メンテナンスを容易にし、極めて正確で経済効果が高い熱測量システムが求められる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の主な目的は短時間でヒートパイプの導熱係数を定めることを可能にする熱測量システムを提供することである。
本発明のもう一つの目的は冷却温度を安定させるように正確に制御し、かつ正確な結果によりヒートパイプの導熱係数を定めることを可能にする熱測量システムを提供することである。
本発明のさらにもう一つの目的は修繕が簡単で水流循環システムがいらない熱測量システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上述の目的を達成するために、本発明による熱測量システムはヒートパイプ、加熱器、熱電冷却器及び熱電冷却制御器を備える。ヒートパイプは電子設備の冷却に適用され、かつ第一温度センサーに接続される第一端と第二温度センサーに接続される第二端とを有する。加熱器は第一端と加熱制御器に接続される。熱電冷却器は第二端に接続される。熱電冷却制御器は第一温度センサーまたは第二温度センサーに電気的に接続される。また熱電冷却制御器は比例―積分―微分制御器を有し、加熱制御器は定温制御または定熱効率制御を行い、電子設備は高熱エネルギーを生じて熱エネルギーが集中する電子部品を少なくとも一つ有し、かつ電子設備のうちの高熱エネルギーを生じる電子部品は、コンピューター、ノートパソコン、ゲーム機のCPUまたはパターン処理器、コンピューターのモニター、液晶テレビの画面または高効率照明灯の高効率発光ダイオードなどである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
本発明の実施形態を図面を用いて説明する。
(第1実施形態)
図1に示すのは本発明の第1実施形態による熱測量システムを示す模式図である。ヒートパイプ110は熱発生機構冷却用のユニット、例えばCPUの冷却モジュールのうちの一部分のユニットである。ヒートパイプ110はヒートパイプ110の蒸発端を囲む支持平台111とヒートパイプ110の凝結端を囲む支持平台112とを有する。支持平台111、112(クリップ機能を有するスタンド)は金属のような高導熱係数の物質である。また支持平台111、112は熱測量システムのうちの重要なユニットである。
【0006】
加熱器130は支持平台111を介してヒートパイプ110の蒸発端を加熱することが可能である。また、加熱器130は多機能加熱制御器150の設定に基づき電力を介して熱エネルギーを生じ、定温(図2と図3のうちの信号Stfbで示す)または定熱効率(図3のうちのSをSpfbに切り換えたとき)に達することによりヒートパイプ110の蒸発端を加熱することが可能である。多機能加熱制御器150は定熱効率Qを利用するか、或いは動態下で熱効率を調整することにより温度センサー171で測量された蒸発端の温度を一定値にするような方法で加熱器130を制御することが可能である。
【0007】
熱電冷却制御器120は熱電冷却モジュール250を制御し、かつ支持平台112を介してヒートパイプ110の凝結端を冷却させることが可能である。熱電冷却モジュール250の構造は基板上に縦列に配列される熱電材ブロックを有する。放熱器(heat sink)160は放熱を向上させるために熱電冷却モジュール250に接続される。また放熱器160は鰭状の金属構造による熱交換構造を有してもよい。熱電冷却モジュール250の放熱を向上させることを可能にする任意の構造は本発明の請求範囲に属すべきである。また、図示しないファンまたは水流循環により放熱効果を向上させることも可能である。温度センサー174は熱電冷却モジュール250及び放熱器160により達した温度を感知することが可能である。
【0008】
熱電冷却制御器120は熱電冷却モジュール250に接続され、かつ温度センサー174のフィードバックにより放熱効率を制御し、温度を安定させることが可能である。ヒートパイプ110の蒸発端に位置付けられるT1を計測するための温度センサー173とT1を計測するための温度センサー172とは対応する温度を測量することが可能であり、そのうちの前者はヒートパイプ110の端点に近く、後者はヒートパイプ110の端点から離れる。その二つの対応する温度を計算すれば蒸発端の第一平均温度T1を得ることが可能である。ヒートパイプ110の凝結端に位置付けられるT2を計測するための温度センサー176とT2を計測するための温度センサー175とは対応する温度を測量することが可能であり、そのうちの前者はヒートパイプ110の別の端点に近く、後者はヒートパイプ110の別の端点から離れる。その二つの対応する温度を計算すれば蒸発端の第一平均温度T2を得ることが可能である。上述したT1とT2の計算法は説明のために挙げた一例に過ぎないため、蒸発端と凝結端との温度を定める唯一の方法とは言い切れない。T1及びT2は即ち蒸発端及び凝結端の温度以外のものを定めることを可能にする位置と方法であるため、本発明の範疇に入ると考えられる。
【0009】
測量したヒートパイプの導熱係数Kは公式Q=K(T1−T2)により算出される。凝結端は熱電冷却制御器120を介して定温制御を行うことが可能である。蒸発端は定熱効率Qを制御するか別の固定温度に対し定温制御を行うことが可能である。多機能加熱制御器150はこの二種の制御モードを有する。前の制御モードにおいて、KはT1とT2を測量し、Qの値を算出する。後の制御モードにおいて、多機能加熱制御器150は必要なQの値を測量し、KはQ、T1及びT2を測量することにより値が算出される。
【0010】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態における熱電冷却制御器200を図2に示す。熱電冷却制御器200は、第1実施形態の熱電冷却制御器120に相当するものである。熱電冷却制御器200は電圧設定回路210、比例―積分―微分制御器220、双方向駆動回路230及び温度―電圧変換回路240を有する。熱電冷却モジュール250の温度センサー260は感知した温度信号を温度―電圧変換回路240に伝送することが可能である。温度―電圧変換回路240は温度信号に基づき電圧設定回路210を介してそれに対応する電圧(Stfb、温度フィードバック信号、temperature feed back signal)を生じ、そしてそれに対応する電圧と所定温度に対応する所定電圧Vとを比べることにより比例―積分―微分制御器220への入力電圧を生じる。比例―積分―微分制御器220は双方向駆動回路230に電圧を出力することにより熱電冷却モジュール250に必要な電流を生じる。比例―積分―微分制御器220は総比例を足した利得、入力信号の積分及び微分部分、制御器内部に設定された比例―積分―微分パラメーターの適切な調整などにより出力信号を算出する。双方向駆動回路230は所定の補正に伴い、比例―積分―微分出力信号を電流に変換する。測量全体の過程において、熱電冷却モジュール250はヒートパイプを加熱または冷却することが可能であり、熱電冷却モジュール250を流れる電流は正極性または負極性を呈する。双方向駆動回路230は需要に応じ動作する。また、駆動エネルギーの効率を高めるには双方向駆動回路230は通常パルス幅変調(PWM)のモードで動作するように設けられるが、本発明はこの構造に制限されるとは限らない。
【0011】
本発明の第2実施形態による多機能加熱制御器205を図3に示す。多機能加熱制御器205の制御方法は、熱電冷却制御器120が冷熱温度に対し制御する方法と同じである。多機能加熱制御器205は電圧設定回路210、比例―積分―微分制御器220、駆動回路235、温度―電圧変換回路240及び効率―電圧変換回路245を備える。加熱器255の温度センサー260は感知した温度信号を温度―電圧変換回路240に伝送する。温度―電圧変換回路240は温度に基づき電圧設定回路210を介してそれに対応する電圧(Stfb、温度フィードバック信号、temperature feed back signal)を生じ、そしてそれに対応する電圧と所定温度に対応する所定電圧Vとを比べることにより比例―積分―微分制御器220の入力電圧を生じる。効率―電圧変換回路245は駆動回路235の出力電圧と電流との乗積に基づきそれに対応する電圧(Spfb、効率フィードバック信号、power feed back signal)を生じ、そしてそれに対応する電圧Sと所定温度に対応する所定電圧Vとを比べることにより比例―積分―微分制御器220の入力電圧を生じる。比例―積分―微分制御器220は駆動回路235に電圧を出力することにより加熱器255に必要な電流を生じる。比例―積分―微分制御器220は総比例を足した利得、入力信号の積分及び微分部分、制御器内部に設定された比例―積分―微分パラメーターの適切な調整などにより出力信号を算出する。駆動回路235は所定の補正に伴い、比例―積分―微分出力信号を電流に変換する。測量全体の過程において、加熱器255はヒートパイプを加熱または冷却することが可能であり、駆動回路235を流れる電流は任意の方法で接続する。駆動回路235は需要に応じ動作する。駆動エネルギーの効率を高めるには駆動回路235は通常パルス幅変調(PWM)のモードで動作するように設けられるが、本発明はこの構造に制限されるとは限らない。
【0012】
比例―積分―微分制御器220が使用した演算法は、以下に示す数式1の通りである。
【0013】
【数1】

【0014】
制御を最適化するために、U(t)は比例―積分―微分制御器220の出力となり、e(t)は誤差信号となり、温度の電圧設定回路210による入力と温度―電圧変換回路240に対するフィードバック(定温制御モード)または効率―電圧変換回路に対するフィードバック(定効率制御モード)との差を定義し、Kp、Ki、Kdは比例、積分及び微分の時間定数となる。
【0015】
上述した本発明の実施形態は説明のために挙げた一例に過ぎず、本発明のもっとも確実に実践可能な具体的な実施形態とは言えないため、本発明を制限することができない。本発明により提示された実施形態と説明は本発明の原理と最良な応用方法を解釈するためであり、かつ、この技術分野に属する者は本発明の実施例を通して様々な修正または変更を容易に行うことが可能である。従ってこの技術分野に属する者が任意の変化を行うことは、本発明の範疇と特許請求の範囲から逸脱しない限り本発明の請求範囲に属すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態による熱測量システムの模式図である。
【図2】本発明の第2実施形態による熱測量システムの熱電冷却制御器を示すブロック図である。
【図3】本発明の第2実施形態による熱測量システムの多機能加熱制御器を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0017】
110:ヒートパイプ、111:支持平台、112:支持平台、120:熱電冷却制御器、130:加熱器、150:多機能加熱制御器、160:放熱器、171から176:温度センサー、200:熱電冷却制御器、205:多機能加熱制御器、210:電圧設定回路、220:比例―積分―微分制御器、230:双方向駆動回路、235:駆動回路、240:温度―電圧変換回路、245:効率―電圧変換回路、250:熱電冷却モジュール、255:加熱器、260:温度センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一温度センサーに接続される第一端と第二温度センサーに接続される第二端とを有するヒートパイプと、
前記第一端と加熱制御器とに接続される加熱器と、
前記第一温度センサーまたは前記第二温度センサーに電気的に接続され、かつ定温制御または定熱効率制御を行う比例―積分―微分制御器を有する制御器と、
を備えることを特徴とする熱測量システム。
【請求項2】
さらに、前記第二端に接続される熱電冷却制御モジュールを備えることを特徴とする請求項1に記載の熱測量システム。
【請求項3】
前記ヒートパイプは電子設備の冷却に適用され、前記電子設備は高熱エネルギーを生じる電子部品を少なくとも一つ有し、前記電子設備のうちの高熱エネルギーを生じる電子部品はコンピューター、ノートパソコン、ゲーム機のCPUまたはパターン処理器、コンピューターのモニター、液晶テレビの画面、または高効率照明灯の高効率発光ダイオードであることを特徴とする請求項2に記載の熱測量システム。
【請求項4】
熱電冷却器は放熱器に接続され、前記放熱器は金属製の熱交換構造を有することを特徴とする請求項2に記載の熱測量システム。
【請求項5】
さらに、前記ヒートパイプの前記第一端を囲み、かつ前記加熱器に接続される第一金属構造を有することを特徴とする請求項2に記載の熱測量システム。
【請求項6】
さらに、前記ヒートパイプの前記第二端を囲み、かつ前記熱電冷却モジュールに接続される第二金属構造による熱交換構造を有することを特徴とする請求項2に記載の熱測量システム。
【請求項7】
ヒートパイプを用意するステップと、
加熱器により前記ヒートパイプの第一端を加熱するステップと、
複数の温度センサーにより前記第一端の第一温度と第二端の第二温度とを別々に測定する温度測定のステップと、
を含む熱測量方法。
【請求項8】
さらに、前記温度測定のステップを行う前に、熱電冷却器により前記ヒートパイプの前記第二端を冷却させるステップを含むことを特徴する請求項7の熱測量方法。
【請求項9】
前記熱電冷却器は熱電冷却制御器に接続され、前記熱電冷却制御器は、温度を一定に制御する比例―積分―微分制御器を有することを特徴とする請求項7に記載の熱測量方法。
【請求項10】
前記加熱器は多機能加熱制御器との接続により定熱効率または定温制御を提供することを特徴とする請求項7に記載の熱測量方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−275580(P2008−275580A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−291922(P2007−291922)
【出願日】平成19年11月9日(2007.11.9)
【出願人】(507372648)致惠科技股▲分▼有限公司 (1)
【Fターム(参考)】