説明

熱発色インキ及びそれを用いた不可視情報印刷シート

【課題】本発明は、熱発色インキ及びそれを用いた不可視情報印刷部分の発色汚れ防止、不可視情報の可視化が容易に行える事などである。
【解決手段】電子供与性染料前駆体を含有するインキベース(a)と電子受容性化合物を含有する電子受容性化合物インキベース(b)を別個に作製したものを混合することにより得た熱発色インキ、及びそれを用いて印刷により作製する不可視情報印刷シートである。好ましくは情報をインキ盛量を適度に印刷してなり、該支持体表面と該熱発色インキによる印刷部分のJIS−Z8730による色差(△E*ab)が2.0以下である不可視情報が形成されていると好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予め形成された不可視情報を熱により発色させることで可視化する熱発色インキ及びそれを用いた不可視情報印刷シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、金券、証券、チケット等に用いられるシートに関して、偽造防止手段として、原紙抄造段階で透かし模様を設けたり、ホログラム、極細線や極小網点印刷により、コピーをした際に原稿の再現を出来難くする方法が実施されている。また、蛍光インキによる印刷や、着色染料又は蛍光染料等を予め練り込んだポリマー短繊維を抄造時にランダムに添加することで、ブラックライト(紫外線照射機)等により真贋判定をする方法も提案されている。(例えば、特許文献1参照)
【0003】
また、文字、数字、図柄等の情報を紙などのシートに印刷し、さらに隠蔽層で覆うことで情報を不可視の状態とした不可視情報印刷シートもある。例えば、紙等のシートに可視情報等を印刷し、さらに不可視化すべき情報を印刷した後、不可視化すべき情報を覆うように剥離剤層を設け、その上に隠蔽性の銀色等のインキ(スクラッチインキ)を設けた状態であり、硬貨等により隠蔽層を削り取ることで不可視情報が現れるようにして用いられている。更に、支持体上に電子受容性化合物により不可視化すべき情報を印刷し、それを覆うように染料内包カプセルを分散したスクラッチ層を設けた印刷体が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
しかし、上記の技術では、製造に多工程を要したり、使用される用途や場所が限定されたり、あるいは、隠蔽層(スクラッチ層)を取り除く際に発生する削りカスがゴミとなってしまう欠点が有る。
【0005】
また、スクラッチインキを用いることなく不可視情報の発現が容易に行え、削りカスの発生が抑えられるものとして、シートに染料内包マイクロカプセル剤と電子受容性化合物(顕色剤)含有の自己発色剤よりなる不可視情報を自己発色部として形成した不可視情報印刷シート、不可視情報を顕色剤インキで形成し、染料内包マイクロカプセルインキを隣接させて設けた不可視情報所持体が提案されている(例えば、特許文献3、4参照)。しかしながら、染料内包マイクロカプセルが加工工程や取り扱い時の擦れにより破壊されることにより、汚れの発生や不可視情報が意図しない時に可視化してしまうという問題が有る。
【0006】
上記の方法(削り取りや加圧による可視化方法)よりは、熱発色の方法が、容易かつ正確な真贋判定を要求される高額金券や有価証券には望ましいと考えられ、一般の感熱記録材料に用いる塗工液をインキとして用いる事も検討された。溶媒は水または有機溶媒である。
【0007】
しかし、無色または淡色の電子供与性染料前駆体及び電子受容性化合物を含有するインキを印刷する場合、通常の印刷であれば最も一般的であるオフセット印刷方法によると、溶媒による地汚れ等の印刷適性上の問題があり、他の印刷方法、例えばグラビア印刷、フレキソ印刷等に限られ、製造上の制約となっていた。これを回避する方法として紫外線硬化型樹脂を用いるインキの提案もある。(例えば、特許文献5)しかし、この場合、シート作製時に紫外線照射の装置と工程が必須となるため、装置及び工程上の不利が伴うものであった。また、インキを使用する前に硬化しない条件で保管する必要があるなど、取扱い上の制約もあった。
【0008】
なお、この地汚れは、インキ中の含有成分に例えば感熱記録材料において、電子供与性染料前駆体及び電子受容性化合物を選択する場合、あるいは公知の増感剤等の熱可融化合物を配合する場合、更に甚だしく、満足な熱発色インキが得られていない現状である。高融点の素材選択が従来の手法であるが、この場合も、熱応答性(感度)の低下を招く上に、オフセット印刷には耐えない。(例えば、特許文献6)
【特許文献1】特開平9−160497号公報
【特許文献2】特許第2944861号公報
【特許文献3】特開平10−16386号公報
【特許文献4】特開2001−63258号公報
【特許文献5】特許第3324214号公報
【特許文献6】特許第3382728号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
不可視情報が視認されず、不可視情報印刷部分が通常取り扱い時の擦れでは発色しにくく、熱発色により不可視情報の可視化が容易に行え、特に可視化する際に、高感度で真贋判定容易な発色画像が得られ、オフセット印刷方法でも印刷出来る熱発色インキ及びそれを用いた不可視情報印刷シートを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の熱発色インキは、
無色または淡色の電子供与性染料前駆体及びワニスを主たる成分として含有する染料前駆体インキベース(a)、
電子受容性化合物及びワニスを主たる成分として含有する電子受容性化合物インキベース(b)
を別個に作製したものをドライヤーと混合して得たものである。
【0011】
あるいは、本発明の熱発色インキは、
無色または淡色の電子供与性染料前駆体及びワニスを主たる成分として含有する染料前駆体インキベース(a)、
電子受容性化合物及びワニスを主たる成分として含有する電子受容性化合物インキベース(b)、
融点60℃以上250℃以下の熱可融化合物及びワニスを主たる成分として含有する熱可融化合物インキベース(c)
を別個に作製したものをドライヤーと混合して得たものである。
【0012】
本発明の熱発色インキに、熱可融化合物を含有させる場合、
(1)熱可融化合物及びワニスを主たる成分として含有する熱可融化合物インキベースとして用いる方法、
(2)電子供与性染料前駆体、熱可融化合物及びワニスを主たる成分として含有する染料前駆体インキベース(a′)として用いる方法、
(3)電子受容性化合物、熱可融化合物及びワニスを主たる成分として含有する電子受容性化合物インキベース(b′)として用いる方法、
のいずれでもよい。
【0013】
例えば、上記染料前駆体インキベース(a)を上記染料前駆体インキベース(a′)に置き換え、更に、電子受容性化合物インキベース(b)を電子受容性化合物インキベース(b′)に置き換えた熱発色インキも本発明である。もちろん、染料前駆体インキベース(a)を上記染料前駆体インキベース(a′)に置き換えただけでも、電子受容性化合物インキベース(b)を電子受容性化合物インキベース(b′)に置き換えただけでもよい。
本発明の熱発色インキを物性面から捉えると、実質的に未発色の状態である。
【0014】
電子供与性染料前駆体と電子受容性化合物の含有質量比が1:1〜1:3であるとより好ましい。
【0015】
電子供与性染料前駆体がキサンテン系化合物、電子受容性化合物がジフェニルスルホン系化合物であると更に好ましい。
【0016】
本発明の不可視情報印刷シートは、支持体上に、情報を印刷した情報印刷部を設けた不可視情報印刷シートにおいて、上記記載の熱発色インキを用いて情報印刷部を設け、かつ、該情報印刷部の電子供与性染料前駆体含有量が、0.003g/m2以上、0.300g/m2以下である事を特徴とする不可視情報印刷シートである。
【0017】
本発明の不可視情報印刷シートは、不可視情報がオフセット印刷により印刷されているとより好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の熱発色インキを用いた不可視情報印刷シートは、支持体上に、本発明の熱発色インキを用いて、オフセット印刷方法により不可視情報を形成しても地汚れがなく、不可視情報が、低エネルギーないし低温の熱発色条件によっても、高感度で真贋判定が容易な程度に可視化できる。すなわち、熱発色すると本物、しないと偽物と容易に真贋判定出来る。更に、通常取り扱い時の擦れによる発色汚れが発生しにくく、熱発色時の削りカスやヘッドカスの発生がない。これらの本発明の不可視情報印刷シートにおける効果は、本発明の熱発色インキを用いた効果でもある。
【0019】
不可視情報は、熱発色により可視化されるが、熱発色前後の、環境に由来する熱、水、湿度、光、溶剤あるいは可塑剤等の薬品によっても発色ないし消色する事なく、熱発色への影響もない。特に熱発色前に各種環境に曝されても発色する事なく、使用時の熱発色インキによる印刷部分の発色へも影響しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の熱発色インキ及びそれを用いた不可視情報印刷シートを更に具体的に説明する。本発明の熱発色インキは、少なくとも無色または淡色の電子供与性染料前駆体、電子受容性化合物及び必要に応じて融点60℃以上250℃以下の熱可融化合物を実質的に未発色の固体粒子として含有し、更にワニス及びドライヤーを含有するものである。該熱発色インキを用いた本発明の不可視情報印刷シートは支持体上に該熱発色インキにより情報印刷部(不可視情報を印刷した部分)が形成された不可視情報印刷シートである。
【0021】
まず、本発明の熱発色インキについて説明する。本発明の熱発色インキに用いられる無色または淡色の電子供与性染料前駆体としては、一般に感圧記録材料や、感熱記録材料に用いられているものに代表されるが、特に限定されるものではない。
【0022】
具体的な電子供与性染料前駆体の例としては、
(1)トリアリールメタン系化合物:3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド(クリスタルバイオレットラクトン)、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(1,2−ジメチルインドール−3−イル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−フェニルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1,2−ジメチルインドール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(1,2−ジメチルインドール−3−イル)−6−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(9−エチルカルバゾール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(2−フェニルインドール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3−p−ジメチルアミノフェニル−3−(1−メチルピロール−2−イル)−6−ジメチルアミノフタリド等、
【0023】
(2)ジフェニルメタン系化合物:4,4′−ビス(ジメチルアミノフェニル)ベンズヒドリルベンジルエーテル、N−クロロフェニルロイコオーラミン、N−2,4,5−トリクロロフェニルロイコオーラミン等、
【0024】
(3)キサンテン系化合物:ローダミンBアニリノラクタム、ローダミンB−p−クロロアニリノラクタム、3−ジエチルアミノ−7−ジベンジルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−オクチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−フェニルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−メチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(3,4−ジクロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(2−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジペンチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−p−トリル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−トリル)アミノ−6−メチル−7−フェネチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(4−ニトロアニリノ)フルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチル−N−プロピル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−イソアミル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチル−N−シクロヘキシル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−テトラヒドロフルフリル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン等、
【0025】
(4)チアジン系化合物:ベンゾイルロイコメチレンブルー、p−ニトロベンゾイルロイコメチレンブルー等、
【0026】
(5)スピロ系化合物:3−メチルスピロジナフトピラン、3−エチルスピロジナフトピラン、3,3′−ジクロロスピロジナフトピラン、3−ベンジルスピロジナフトピラン、3−メチルナフト−(3−メトキシベンゾ)スピロピラン、3−プロピルスピロベンゾピラン等を挙げることができる。またこれらの染料前駆体は必要に応じて単独、もしくは2種以上混合して使用することができる。熱発色インキの変色防止性や発色感度からは好ましくはキサンテン系化合物が用いられる。
【0027】
本発明の熱発色インキに用いられる電子受容性化合物としては、一般に感圧記録材料、または感熱記録材料に用いられる酸性物質に代表されるが、これらに制限されることはない。例えば、フェノール誘導体、芳香族カルボン酸誘導体、N,N′−ジアリールチオ尿素誘導体、アリールスルホニル尿素誘導体、スルホンアミド誘導体、有機化合物の亜鉛塩などの多価金属塩、ベンゼンスルホンアミド誘導体等を挙げることができる。
【0028】
具体的な例を挙げれば、
4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4´−イソプロポキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−ベンジルオキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−プロポキシジフェニルスルホン、ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、3,4−ジヒドロキシ−4′−メチルジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−ベンゼンスルホニルオキシジフェニルスルホン、2,4−ビス(フェニルスルホニル)フェノール等のジフェニルスルホン系化合物が挙げられる。
【0029】
その他の具体例としては、p−フェニルフェノール、p−ヒドロキシアセトフェノン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,3−ビス〔2−(p−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル〕ベンゼン、1,3−ビス〔2−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−2−プロピル〕ベンゼン、1,4−ビス〔2−(p−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル〕ベンゼン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、
【0030】
3,3′−ジクロロ−4,4′−ヒドロキシジフェニルスルフィド、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸メチル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸ブチル、4,4′−チオビス(2−t−ブチル−5−メチルフェノール)、
【0031】
N−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゼンスルホンアミド、N−(2−ヒドロキシフェニル)−p−トルエンスルホンアミド、N−(2,4−ジヒドロキシフェニル)ベンゼンスルホンアミド、N−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−p−トルエンスルホンアミド、N−(2−ヒドロキシナフチル)ベンゼンスルホンアミド、N−(2−ヒドロキシナフチル)−p−トルエンスルホンアミド、N−(2−ヒドロキシフェニル)−1−ナフタレンスルホンアミド、N−(2−ヒドロキシフェニル)−2−ナフタレンスルホンアミド、N−(2−ヒドロキシナフチル)−1−ナフタレンスルホンアミド、N−(2−ヒドロキシナフチル)−2−ナフタレンスルホンアミド、N−(2−ヒドロキシフェニル)−p−クロロベンゼンスルホンアミド、N−(2−ヒドロキシフェニル)−p−メトキシベンゼンスルホンアミド、N−(2−ヒドロキシフェニル)−p−アリルベンゼンスルホンアミド、N−(2−ヒドロキシフェニル)−p−フェニルベンゼンスルホンアミド、4,4′−ビス(2−ヒドロキシフェニルアミノスルホニル)ジフェニルメタン、N−(2−ヒドロキシフェニル)−N−メチルベンゼンスルホンアミド、N−(2−ヒドロキシフェニル)−N−メチル−p−トルエンスルホンアミド、N−(2−ヒドロキシフェニル)−N−ベンジル−p−トルエンスルホンアミド、N−(2−ヒドロキシフェニル)−N−アリル−p−トルエンスルホンアミド、N−(2−ヒドロキシフェニル)−N−フェニルベンゼンスルホンアミド、
【0032】
4−ヒドロキシフタル酸ジメチル、4−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、4−ヒドロキシ安息香酸メチル、没食子酸ベンジル、没食子酸ステアリル、N,N′−ジフェニルチオ尿素、4,4′−ビス(3−(4−メチルフェニルスルホニル)ウレイド)ジフェニルメタン、N−(4−メチルフェニルスルホニル)−N′−フェニル尿素、サリチルアニリド、5−クロロサリチルアニリド、サリチル酸、3,5−ジ−t−ブチルサリチル酸、3,5−ジ−α−メチルベンジルサリチル酸、4−[2′−(4−メトキシフェノキシ)エチルオキシ]サリチル酸、3−(オクチルオキシカルボニルアミノ)サリチル酸あるいはこれらサリチル酸誘導体の金属塩、N−(4−ヒドロキシフェニル)−p−トルエンスルホンアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼンスルホンアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)−1−ナフタレンスルホンアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)−2−ナフタレンスルホンアミド、N−(4−ヒドロキシナフチル)−p−トルエンスルホンアミド、N−(4−ヒドロキシナフチル)ベンゼンスルホンアミド、N−(4−ヒドロキシナフチル)−1−ナフタレンスルホンアミド、N−(4−ヒドロキシナフチル)−2−ナフタレンスルホンアミド、N−(3−ヒドロキシフェニル)−p−トルエンスルホンアミド、N−(3−ヒドロキシフェニル)ベンゼンスルホンアミド、N−(3−ヒドロキシフェニル)−1−ナフタレンスルホンアミド、N−(3−ヒドロキシフェニル)−2−ナフタレンスルホンアミドなどが挙げられる。特に熱発色インキの変色防止性や発色感度からはジフェニルスルホン系化合物が好ましい。
【0033】
本発明の熱発色インキに用いられる熱可融化合物としては、一般に感熱記録材料に用いられる熱可融成分に代表されるが、これらに制限されることはない。但し、熱発色時の感度と地汚れ防止の両方を満足させるため、融点は60℃以上250℃以下である。熱可融化合物の具体例としては例えば、感熱記録材料において公知の脂肪酸アミド類、脂肪族尿素化合物、エーテル化合物、エステル化合物、ビフェニル誘導体等の増感剤や、融点が上記範囲の紫外線吸収剤、酸化防止剤等の添加剤等が挙げられる。
【0034】
具体的な例としては、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、N−ヒドロキシメチルパルミチン酸アミド、N−ヒドロキシメチルステアリン酸アミド、N−ヒドロキシメチルベヘン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、N−ヘキサデシル尿素、N−オクタデシル尿素、N−ドデシル尿素、ベンジル−2−ナフチルエーテル、m−ターフェニル、4−ベンジルビフェニル、4−アセチルビフェニル、2,2′−ビス(4−メトキシフェノキシ)ジエチルエーテル、α,α′−ジフェノキシキシレン、2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、1,2−ジフェノキシエタン、1,2−ビス(3−メチルフェノキシ)エタン、ビス(4−メトキシフェニル)エーテル、アジピン酸ジフェニル、シュウ酸ジベンジル、シュウ酸ビス(4−メチルベンジル)、シュウ酸ビス(4−クロルベンジル)、テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジベンジル、p−ベンジルオキシ安息香酸ベンジルエステル、ベンゼンスルホン酸フェニルエステル、ビス(4−アリルオキシフェニル)スルホン、ジフェニルスルホン、4−アセチルアセトフェノン、アセト酢酸アニリド類、脂肪酸アニリド類等、公知の熱可融性物質が挙げられる。これらの熱可融化合物は単独もしくは2種以上併用して使用することもできる。
【0035】
本発明に用いる熱可融化合物としては、一般に紫外線吸収剤として公知のベンゾトリアゾール誘導体も挙げられる。その具体的な例としては、2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−アミノフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)−5−t−ブチルベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−ドデシル−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−4−(2−エチルヘキシル)オキシフェニル]ベンゾトリアゾール、5−t−ブチル−3−(5−クロロベンゾトリアゾリル)−4−ヒドロキシベンゼン−プロピオン酸オクチル、2−(2−ヒドロキシ−3−sec−ブチル−5−t−ブチルフェニル)−5−t−ブチルベンゾトリアゾール、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−ベンゾトリアゾリルフェノール)、2,2′−メチレンビス[4−メチル−6−(5−メチルベンゾトリアゾリル)フェノール]、2,2′−メチレンビス[4−メチル−6−(5−クロロベンゾトリアゾリル)フェノール]、2,2′−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−ベンゾトリアゾリルフェノール]、2,2′−メチレンビス(4−tert−ブチル−6−ベンゾトリアゾリルフェノール)、2,2′−プロピリデンビス(4−メチル−6−ベンゾトリアゾリルフェノール)、2,2′−イソプロピリデンビス(4−メチル−6−ベンゾトリアゾリルフェノール)、2,2′−イソプロピリデンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−ベンゾトリアゾリルフェノール]、2,2′−オクチリデンビス[4−メチル−6−(5−メチルベンゾトリアゾリル)フェノール]等を挙げることができるが、これに限定されるものではなく、また、これらの化合物は必要に応じて単独、もしくは2種以上併用して使用することができる。
【0036】
本発明に用いる熱可融化合物の具体例を更に挙げる。一般に酸化防止剤として知られるヒンダードフェノール系化合物も好ましく用いられる。その具体的な例としては、1,1,2,2−テトラキス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,3−トリス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(5−フェニル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)ブタン、1,1,3,3−テトラキス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)プロパン、1,1,3,3−テトラキス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,5,5−テトラキス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)ペンタン、1,1,3,3−テトラキス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1,3,3−テトラキス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3,3−テトラキス(5−フェニル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)プロパン、1,1,3,3−テトラキス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3,3−テトラキス(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)プロパン、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノ−ル)、2,2′−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノ−ル)、2,2′−エチリデンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェノ−ル)、4,4′−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノ−ル)、4,4′−チオビス(2−メチル−6−t−ブチルフェノ−ル)、4,4′−チオビス(2−メチルフェノ−ル)、4,4′−チオビス(2,6−ジメチルフェノ−ル)、4,4′−チオビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノ−ル)、2,2′−チオビス(4−t−オクチルフェノ−ル)、2,2′−チオビス(3−t−オクチルフェノ−ル)、4,4′−ブチリデンビス(6−t−ブチル−m−クレゾ−ル)、1−[α−メチル−α−(4′−ヒドロキシフェニル)エチル]4−[α′,α′−ビス(4′′−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、トリス(2,6−ジメチル)−4−t−ブチル−3−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート等を挙げることができ、ヒンダードアミン系化合物の具体的な例としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、コハク酸−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)エステル、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸−テトラキス[1,2,2,6,6−ペンタメチル(4−ピペリジル)]エステル、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸−テトラキス[2,2,6,6−テトラメチル(4−ピペリジル)]エステル等を挙げることができるが、これに限定されるものではなく、また、これらの熱可融化合物は必要に応じて単独、もしくは2種以上併用して使用することができる。
【0037】
更に本発明に用いる熱可融化合物の具体例を挙げると、ウレアウレタン化合物が挙げられる。
【0038】
ウレアウレタン化合物の具体的な例としては、4、4′−ビス[(4−メチル−3−フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド]ジフェニルスルホン、4、4′−ビス[(2−メチル−5−フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド]ジフェニルスルホン、[4−(2−メチル−5−フェノキシカルボニルアミノフェニル)−4′−(4−メチル−3−フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド]ジフェニルスルホンなどを挙げることができるが、本発明に係わるウレアウレタン化合物は、これに限定されるものではなく、また、これらのウレアウレタン化合物は必要に応じて単独、または2種以上併用して使用することができる。
【0039】
また、本発明に用いる熱可融化合物としては、一般の感熱記録材料に増感剤、滑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等として用いられる熱可融化合物も好ましい。
【0040】
本発明の熱発色インキに使用されるワニスには、バインダー樹脂、油及び必要に応じて溶剤等が含有されている。
【0041】
ワニスに含有されるバインダー樹脂としては、ロジンなどの天然樹脂、硬化ロジン、ロジンエステルなどの天然樹脂誘導体、そしてアルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、スチレン樹脂、エポキシ樹脂、セルロース誘導体、フェノール樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、キシレン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ケトン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、オレフィン等の不飽和炭化水素を原料とした石油樹脂などの合成樹脂が使用される。
【0042】
ワニスに含有される油は、アマニ油、菜種油、ヤシ油、オリ−ブ油、大豆油、桐油等の植物油、及びこれらを再生処理した植物油、スピンドル油、マシン油、モービル油等の鉱物油が用途により適宜選択されて使用される。
【0043】
ワニスに必要に応じて含有される溶剤は、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、酢酸エチル、酢酸イソプロピル等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤、メチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール等のアルコール系溶剤、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール系溶剤、パラフィン、ナフテン系を主成分とした芳香族成分1%以下の石油系溶剤等が挙げられる。
【0044】
本発明の熱発色インキには、ドライヤーを用いる。更に各種の補助剤を使用してもよい。合せて説明する。例えば、乾燥促進剤としてナフテン酸コバルト、オクチル酸マンガン等のドライヤー、一般的にアルミニウムキレートと呼ばれるキレート化剤、インキの粘度を調整する石油系溶剤やワニス等の調整剤、印刷後の滑りを調節するワックス、界面活性剤、有機や無機の微粒子類等を、支持体と熱発色インキの印刷部のJIS−K5701−1による60度鏡面光沢度差が20%以下になるよう使用することが望ましい。なお、ドライヤーを添加しない場合は、印刷部がセットし難くなり、また、各種の方法で熱発色させた場合、発色部が周辺に広がったり、汚れが発生し易い傾向である。
【0045】
本発明の熱発色インキは、印刷部分の地汚れ防止及び発色感度の面から、電子供与性染料前駆体に対する電子受容性化合物の質量比率は、50〜400質量%が好ましく、100〜300質量%が特に好ましい。また、電子供与性染料前駆体と電子受容性化合物とを所定の割合で同時にワニスに添加し、混練りすると染料が発色してインキの着色を招くため、別々に混練りしてインキ化した後に、撹拌機等により所定の割合で十分に混ぜ合わせる方が、染料と電子受容性化合物の接触等によるインキ着色を低減することができ、染料前駆体が実質的に未発色状態の熱発色インキを得やすい。その事は、印刷部の不可視化には好ましい。
【0046】
熱発色インキ中のワニス含有量は印刷方法により異なるが、好ましくは熱発色インキの10〜90容量%、特に30〜70容量%の範囲で適宜選択される。容量%による数値範囲は質量%によるそれとほぼ合致する。
【0047】
本発明の熱発色インキにおけるワニスの調製は、従来公知の方法で良く、例えばバインダー樹脂、油等の組成成分を加熱溶解させた後、溶剤、アルミニウムキレート剤等を添加反応して得られる。
【0048】
熱発色インキに含有される成分別に、ベースインキを作製し、それらをドライヤーと共に混合しても熱発色インキが得られる。その際、染料前駆体を含有するベースインキと、電子受容性化合物を含有するベースインキとを、別々に作製しておく事が、熱発色インキ中の染料前駆体が実質的に未発色の状態を得る上で好ましい。一方、熱可融化合物は、染料前駆体または電子受容性化合物のいずれかと共にベースインキを得ても、染料前駆体や電子受容性化合物を含有するベースインキとは別に熱可融化合物を含有するベースインキを得ておいてもいずれでもよい。
【0049】
次に本発明の不可視情報印刷シートについて説明する。用いる支持体は、紙が主として用いられるが、紙の他に各種織布、不織布、合成樹脂フィルム、合成樹脂ラミネート紙、合成紙、金属泊、蒸着シート、或いはこれらを貼り合わせ等で組み合わせた複合シートを目的に応じて任意に用いることができる。なお、支持体中の蛍光増白剤の有無に合わせ、熱発色インキへの蛍光染料添加の有無を考慮することが好ましい。目的に応じて支持体の厚みや坪量は適宜調節出来る。一般的な記録材料における厚みよりかなり厚いものや、板紙も必要に応じて用いてよい。
【0050】
特に、不可視情報を設ける面に少なくとも顔料とバインダーを含有する塗工層を有する支持体を用いることで美装性、不透明性が良好で発色性が向上し、取り扱い時の地肌かぶり(発色汚れ)も改良されるので好ましい。顔料としては、カオリン、ケイソウ土、タルク、焼成カオリン、重質炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸亜鉛、非晶質シリカ、非晶質ケイ酸カルシウム、コロイダルシリカ等の無機顔料、メラミン樹脂フィラー、尿素−ホルマリン樹脂フィラー、ポリエチレンパウダー、ナイロンパウダー等の有機顔料を使用することができる。主として白色顔料が使用されるが、有色顔料も使用できる。
【0051】
塗工層のバインダーとしては、デンプン類、ヒドロキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、カゼイン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、アルギン酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、アクリルアミド/アクリル酸エステル共重合体、アクリルアミド/アクリル酸エステル/メタクリル酸三元共重合体、ポリアクリル酸のアルカリ塩、ポリマレイン酸のアルカリ塩、スチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩、エチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩、イソブチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩などの水溶性バインダー、およびスチレン/ブタジエン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン共重合体、アクリル酸メチル/ブタジエン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン三元共重合体、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル/アクリル酸エステル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、ポリアクリル酸エステル、スチレン/アクリル酸エステル共重合体、ポリウレタンなどの水分散性バインダーなどが挙げられる。
【0052】
顔料が多く、バインダーが少なすぎると強度が低下して粉落ち等の問題が発生しやすいので顔料に対するバインダーの固形分が10〜500質量%、好ましくは10〜100質量%が好ましい。塗工量は粉落ち等から固形分で30g/m2以下、特に2〜20g/m2が好ましい。支持体の塗工層の表面処理を行う場合には、スーパーカレンダー、ソフトカレンダー等を必要に応じて用いる。
【0053】
支持体(熱発色インキによる情報印刷部の無い部分)と熱発色インキを印刷した情報印刷部(不可視情報部分。以下、説明の内容により熱発色インキ印刷部と呼ぶ場合もある。)とを、より判別困難にする方法としては、情報印刷部の染料前駆体含有量が、0.300g/m2以下、より好ましくは0.120g/m2以下、特に好ましくは0.080g/m2以下となるように印刷することが望ましい。これは、染料前駆体含有量が上記好ましい範囲を越えると、該インキ(発色させる前)の淡い色が濃度を徐々に増してくる傾向があるので、支持体とのコントラストが徐々に発現してしまい、不可視性が損なわれる傾向となるためである。また、熱発色インキの発色濃度は染料前駆体の量が多いと高くなるが、必要以上に発色濃度が高いと熱発色インキ印刷部に記入してある数値等の判読も困難となる。なお、染料前駆体含有量の下限は、0.003g/m2であり、より好ましくは0.010g/m2、更に好ましくは0.030g/m2である。これを下回ると熱発色による真贋判定が困難となる。
【0054】
本発明の不可視情報印刷シートでは、支持体表面と熱発色インキによる情報印刷部のJIS−Z8730による色差(△E*ab)が2.0以下であるとコントラストがついて真贋判定がより容易となり好ましい。そのためには、熱発色インキの色相と支持体の色相を調整する。例えば、着色された支持体である場合、類似の着色染料を添加することで熱発色インキの不可視性を向上することができる。また、前にも述べたが、熱発色インキの着色を最小限に止めるために電子供与性染料前駆体と電子受容性化合物は別々にワニスで混練りし、適当な割合で均一混合することが、電子供与性染料前駆体と電子受容性化合物の物理的接触等による発色が減少できるため、インキ着色が抑制され、本発明の熱発色インキを得るため好ましい。
【0055】
次に、不可視情報印刷シートを得る方法の更に詳細な説明に移る。本発明の不可視情報印刷シートに熱発色インキ印刷部を設ける場合には、各種印刷用インキが使用可能であるが、熱発色インキの発色色相や、支持体面の色相と異なった色相のインキを使用することもできる。支持体面の色相が白色で、熱発色インキの発色色相が黒系(無彩色)や青色であれば、黄色、橙等の明度の高い色相のインキが好ましい。なお、熱発色インキ印刷部の上に更に数値等の印刷ないし筆記を予定する場合、又は既に数値等を印刷ないし筆記してある場合は、熱発色インキの発色濃度を低くするか、熱発色インキの発色色相と数値等の印刷ないし筆記の色相とを異なるものにすると、数値等が容易に読める。発色濃度を低くするためには、熱発色インキ中の染料前駆体の含有量を適宜減らすのが印刷への影響が少なく好ましい。もちろん、インキ盛量の制御によってもよい。熱発色インキ及びその他の印刷インキの印刷には、オフセット印刷、グラビア印刷、凸版印刷等の各種印刷方法が用いられるが、熱発色インキとその他の印刷インキの印刷とをする場合、同一工程で印刷するほうが効率的で好ましい。印刷順序は特に制限されないが、熱発色インキ以外の印刷後に熱発色インキを印刷することで発色性が良好となる。一方、熱発色インキを先に印刷することで不可視情報を保護する効果が得られる。印刷順序はいずれでもよく、要求される機能に応じて選択される。熱発色インキ印刷前と後に他のインキを印刷してもよい。
【0056】
本発明の不可視情報印刷シートの不可視情報を印刷するには、本発明の熱発色インキにより、オフセット印刷、グラビア印刷、凸版印刷等の各種印刷方法を用いて作成されるが、印刷精度や印刷性からは特にオフセット印刷により作成することが好ましい。熱発色インキの印刷盛量は特に限定されないが、望む発色濃度により適宜選択される。
【0057】
本発明の不可視情報印刷シートを熱発色させる方法は通常の記録材料等における加熱手段なら特に問わない。熱発色すると本物、しないと偽物と容易に真贋判定出来る。感熱ヘッド、熱ペン、熱スタンプ、赤外線加熱(レーザー光加熱も含む)、電磁誘導加熱、マイクロ波加熱(電子レンジ使用)、直火、摩擦熱(爪や硬貨でこする方法)、熱いものとの接触等が具体例として挙げられる。加熱に用いる装置も例えば、アイロンやラミネーターなど、一般的な感熱記録材料を発色させるもの以外でもよい。但し、簡便さや省エネルギーの観点から、熱スタンプ又は感熱ヘッドを用いるのが有利な場合が多い。
実際に本発明のシートを使用する場合の利便性の点で、すなわち、真贋判定とシート記載事項(数値等)読み取りとを迅速に行うため、シート記載事項と熱発色インキ印刷部とが一部又は全部重なる、あるいは互いに隣接したり近傍にある様にする事が好ましい場合が多い。
【0058】
以下、実施例によって本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0059】
(実施例1)
(ワニスの作製)
植物油としてアマニ油20質量部、ロジン変性フェノール樹脂(質量平均分子量15000〜150000、酸価20〜35mgKOH/g)50質量部、スピンドル油20質量部を配合して約200℃で約1時間加熱して樹脂を溶解させた後、スピンドル油10質量部、アルミニウムキレート剤1質量部を添加して約180℃で約1時間加熱し、ワニスを得た。
【0060】
(染料前駆体インキベース(a)の調製)
上記ワニス50質量部、電子供与性染料前駆体3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン30質量部、スピンドル油5質量部を3本ロールミルで練肉し、上記ワニス10質量部、スピンドル油10質量部を添加することによって染料前駆体インキベース(a)を調製した。
【0061】
(電子受容性化合物インキベース(b)の調製)
上記ワニス50質量部、電子受容性化合物4−ヒドロキシ−4′−イソプロポキシジフェニルスルホン30質量部、スピンドル油5質量部を3本ロールミルで練肉し、上記ワニス10質量部、スピンドル油10質量部を添加することによって電子受容性化合物インキベース(b)を調製した。
【0062】
(熱発色インキの調製)
上記2種のインキベース(a)を17.5質量部、(b)を35.0質量部の割合で混合し、上記ワニス47.5質量部、ドライヤー(ナフテン酸マンガン)添加量を該インキベース合計の0.2質量%、及び調整溶剤(新日本石油社製・AFソルベント6号)を添加し、十分撹拌して均質化することによって、熱発色インキを得た。電子供与性染料前駆体が実質的に未発色の状態である事は目視観察より明らかであった。
【0063】
(実施例2)
実施例1の熱発色インキで使用の3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオランを3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド(クリスタルバイオレットラクトン)に代えた以外は実施例1と同様にして熱発色インキを得た。電子供与性染料前駆体が実質的に未発色の状態である事は目視観察より明らかであった。
【0064】
(実施例3)
実施例1の熱発色インキで使用の4−ヒドロキシ−4′−イソプロポキシジフェニルスルホンを2,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホンに代えた以外は実施例1と同様にして熱発色インキを得た。電子供与性染料前駆体が実質的に未発色の状態である事は目視観察より明らかであった。
【0065】
(実施例4)
実施例1における、熱発色インキの調製において、ワニスを65.0質量部用い、2種のインキベース(a)、(b)の量をそれぞれ17.5質量部に変更して混合した以外は実施例1と同様にして熱発色インキを作製した。電子供与性染料前駆体が実質的に未発色の状態である事は目視観察より明らかであった。
【0066】
(実施例5)
インキベース(a)、(b)は実施例1におけるインキベース(a)、(b)とそれぞれ同様にして調製した。
【0067】
(熱可融化合物インキベース(c)の作製)
上記ワニス50質量部、N−(ヒドロキシメチル)ステアリン酸アミド30質量部、スピンドル油5質量部を3本ロールミルで練肉し、上記ワニス10質量部、スピンドル油10質量部を添加することによって熱可融化合物インキベース(c)を調製した。
【0068】
(熱発色インキの調製)
上記3種のインキベース(a)を17.5質量部、(b)を35.0質量部、(c)を0.2質量部の割合で混合し、上記ワニス47.5質量部、ドライヤー(ナフテン酸マンガン)添加量を該インキベース合計の0.2質量%、及び調整溶剤を添加し、十分撹拌して均質化することによって、熱発色インキを得た。電子供与性染料前駆体が実質的に未発色の状態である事は目視観察より明らかであった。
【0069】
(実施例6)
実施例5で使用したN−(ヒドロキシメチル)ステアリン酸アミドを1,2−ビス(3−メチルフェノキシ)エタンに代えた以外は実施例5と同様にして熱発色インキを得た。電子供与性染料前駆体が実質的に未発色の状態である事は目視観察より明らかであった。
【0070】
(実施例7)
実施例5で使用したN−(ヒドロキシメチル)ステアリン酸アミドを4、4′−ビス[(4−メチル−3−フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド]ジフェニルスルホンに代えた以外は実施例5と同様にして熱発色インキを得た。電子供与性染料前駆体が実質的に未発色の状態である事は目視観察より明らかであった。
【0071】
(実施例8)
実施例5の熱発色インキの調製に使用した熱可融化合物インキベース(c)を3.5質量部にした以外は実施例5と同様にして熱発色インキを得た。電子供与性染料前駆体が実質的に未発色の状態である事は目視観察より明らかであった。
【0072】
(実施例9)
実施例6の熱発色インキの調製に使用した熱可融化合物インキベース(c)を3.5質量部にした以外は実施例6と同様にして熱発色インキを得た。電子供与性染料前駆体が実質的に未発色の状態である事は目視観察より明らかであった。
【0073】
(実施例10)
実施例7の熱発色インキの調製に使用した熱可融化合物インキベース(c)を3.5質量部にした以外は実施例7と同様にして熱発色インキを得た。電子供与性染料前駆体が実質的に未発色の状態である事は目視観察より明らかであった。
【0074】
(実施例11)
実施例1で用いた染料前駆体インキベース(a)を次に示す熱可融化合物を含む染料前駆体インキベース(a′)に替えた以外は、実施例1と同様にして熱発色インキを得た。電子供与性染料前駆体が実質的に未発色の状態である事は目視観察より明らかであった。
【0075】
(熱可融化合物を含む染料前駆体インキベース(a′)の調製)
実施例1で作製したのと同じワニス50質量部、電子供与性染料前駆体3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン30質量部、N−(ヒドロキシメチル)ステアリン酸アミド1.5質量部、スピンドル油5質量部を3本ロールミルで練肉し、上記ワニス10質量部、スピンドル油10質量部を添加することによって染料前駆体インキベース(a′)を調製した。
【0076】
(実施例12)
実施例1で用いた電子受容性化合物インキベース(b)を次に示す熱可融化合物を含む電子受容性化合物インキベース(b′)に替えた以外は、実施例1と同様にして熱発色インキを得た。電子供与性染料前駆体が実質的に未発色の状態である事は目視観察より明らかであった。
【0077】
(熱可融化合物を含む電子受容性化合物インキベース(b′)の調製)
実施例1で作製したのと同じワニス50質量部、電子受容性化合物4−ヒドロキシ−4′−イソプロポキシジフェニルスルホン30質量部、N−(ヒドロキシメチル)ステアリン酸アミド1.5質量部、スピンドル油5質量部を3本ロールミルで練肉し、上記ワニス10質量部、スピンドル油10質量部を添加することによって電子受容性化合物インキベース(b′)を調製した。
【0078】
(実施例13)
(塗工紙支持体の作製)
坪量80g/m2の紙支持体の表面に下記の組成の塗工層を固形で7g/m2となるようにブレードコーターにより塗工、乾燥し、スーパーカレンダー(剛性ロール:外径500mmのチルドロール、弾性ロール:外径500mmの樹脂ロール、線圧:220kN/m、温度60℃)処理して塗工紙支持体を得た。更に、これに数字「12345」を印刷し、熱発色インキを印刷する部分とした。なお、印刷した数字の色は黒色にした。
カオリン(平均粒径1.5μm) 30質量部
重質炭酸カルシウム(平均粒径1.8μm) 70質量部
リン酸エステル化デンプン 5質量部
スチレン/ブタジエン系ラテックス 10質量部
【0079】
(不可視情報印刷シートの作製)
得られた塗工紙支持体の塗工層面の数字印刷部の欄に実施例1の熱発色インキを用いて染料前駆体含有量0.069g/m2になるようにオフセット印刷して本発明の不可視情報印刷シートを得た。
【0080】
(実施例14)
実施例13で用いた、実施例1の熱発色インキを実施例2で得たものに代えた以外は実施例13と同様に、塗工紙支持体に同様に印刷を行い、真偽判定可能な不可視情報印刷シートを得た。
【0081】
(実施例15)
実施例13で用いた、実施例1の熱発色インキを実施例3で得たものに代えた以外は実施例13と同様に、塗工紙支持体に同様に印刷を行い、真偽判定可能な不可視情報印刷シートを得た。
【0082】
(実施例16)
実施例13で用いた、実施例1の熱発色インキを実施例4で得たものに代えた以外は実施例13と同様に、塗工紙支持体に同様に印刷を行い、真偽判定可能な不可視情報印刷シートを得た。
【0083】
(実施例17)
実施例13で用いた、実施例1の熱発色インキを実施例5で得たものに代えた以外は実施例13と同様に、塗工紙支持体に同様に印刷を行い、真偽判定可能な不可視情報印刷シートを得た。
【0084】
(実施例18)
実施例13で用いた、実施例1の熱発色インキを実施例6で得たものに代えた以外は実施例13と同様に、塗工紙支持体に同様に印刷を行い、真偽判定可能な不可視情報印刷シートを得た。
【0085】
(実施例19)
実施例13で用いた、実施例1の熱発色インキを実施例7で得たものに代えた以外は実施例13と同様に、塗工紙支持体に同様に印刷を行い、真偽判定可能な不可視情報印刷シートを得た。
【0086】
(実施例20)
実施例13で用いた、実施例1の熱発色インキを実施例8で得たものに代えた以外は実施例13と同様に、塗工紙支持体に同様に印刷を行い、真偽判定可能な不可視情報印刷シートを得た。
【0087】
(実施例21)
実施例13で用いた、実施例1の熱発色インキを実施例9で得たものに代えた以外は実施例13と同様に、塗工紙支持体に同様に印刷を行い、真偽判定可能な不可視情報印刷シートを得た。
【0088】
(実施例22)
実施例13で用いた、実施例1の熱発色インキを実施例10で得たものに代えた以外は実施例13と同様に、塗工紙支持体に同様に印刷を行い、真偽判定可能な不可視情報印刷シートを得た。
【0089】
(実施例23)
実施例13で用いた、実施例1の熱発色インキを実施例11で得たものに代えた以外は実施例13と同様に、塗工紙支持体に同様に印刷を行い、真偽判定可能な不可視情報印刷シートを得た。
【0090】
(実施例24)
実施例13で用いた、実施例1の熱発色インキを実施例12で得たものに代えた以外は実施例13と同様に、塗工紙支持体に同様に印刷を行い、真偽判定可能な不可視情報印刷シートを得た。
【0091】
(実施例25)
実施例13で用いた、塗工紙支持体を坪量120g/m2の上質紙支持体に代えた以外は実施例13と同様に、上質紙支持体に同様に印刷を行い、真偽判定可能な不可視情報印刷シートを得た。
【0092】
(実施例26)
実施例13で用いた塗工紙支持体への数字印刷を青色にした以外は実施例13と同様にして真偽判定可能な不可視情報印刷シートを得た。
【0093】
(比較例1)
実施例1で用いたインキベース(a)、(b)を、次に示すインキベース(d)に替えた以外は、実施例1と同様にして熱発色インキを得た。
【0094】
(インキベース(d)の調製)
実施例1で作製したのと同じワニス50質量部、電子供与性染料前駆体3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン30質量部、電子受容性化合物4−ヒドロキシ−4′−イソプロポキシジフェニルスルホン30質量部、スピンドル油5質量部を3本ロールミルで練肉し、上記ワニス10質量部、スピンドル油10質量部を添加することによってインキベース(d)を調製した。目視観察より染料前駆体が相当発色状態にある事が明らかであった。
【0095】
(比較例2)
実施例1の熱発色インキを比較例1で得たものに代えた以外は実施例13と同様に、塗工紙支持体に同様に印刷を行い、不可視情報印刷シートを得た。作製したシートは熱発色インキ印刷部分がかなり着色していた。
【0096】
試験1 感度及び発色濃度試験
実施例13−26及び比較例2のシートについて110℃、120℃、130℃の3通りの条件で熱スタンプ(シートと2秒接触)にて感度及び発色濃度を評価した。熱発色インキ印刷部分の地肌部(熱スタンプで処理していない情報印刷部)と熱発色部の濃度をマクベスRD−918型反射濃度計で測定した。
【0097】
試験2 不可視情報印刷シートの使用前耐光保存性試験
実施例13−26及び比較例2のシートについて、5000ルクスの光源に100時間曝した後、上記試験1と同様に地肌濃度、感度及び発色濃度を評価した。
【0098】
試験3 不可視情報印刷シートの使用前耐水保存性試験
実施例13−26及び比較例2のシートについて、水道水に浸し24時間後取り出し、自然乾燥してから上記試験1と同様に地肌濃度、感度及び発色濃度を評価した。
【0099】
試験4 不可視情報印刷シートの使用前耐湿保存性試験
実施例13−26及び比較例2のシートについて、40℃、90%RHの条件で24時間保管後、上記試験1と同様に地肌濃度、感度及び発色濃度を評価した。
【0100】
試験5 不可視情報印刷シートの使用前耐熱保存性試験
実施例13−26及び比較例2のシートについて、60℃の条件で24時間保管後、上記試験1と同様に地肌濃度、感度及び発色濃度を評価した。
【0101】
試験6 不可視情報印刷シートの使用前耐薬品保存性試験
実施例13−26及び比較例2のシートについて、ハンドクリームを指につけ、情報印刷部及びその周辺の地肌をなぞってから上記試験1と同様に地肌濃度、感度及び発色濃度を評価した。
【0102】
試験7 不可視情報印刷シートの使用前耐溶剤保存性試験
実施例13−26及び比較例2のシートについて、20質量%エタノール水溶液に浸し24時間後取り出し、自然乾燥してから上記試験1と同様に地肌濃度、感度及び発色濃度を評価した。
【0103】
試験8 不可視情報印刷シートの使用後保存性試験
実施例13−26及び比較例2のシートについて、熱発色後、上記試験2−6と同条件の試験を行った。地肌や、熱発色させた部分について各実施例のシートではそれぞれ、試験1と同等の結果となった。
【0104】
試験9 市販の感熱ヘッドを使用しているラベル印字用感熱プリンターによる評価
実施例13−26及び比較例2のシートについて、試験1の熱スタンプを市販のラベル印字用感熱プリンターで常用条件で印字し、試験1と同等の結果となった。ヘッドカスはいずれにも認められなかった。
【0105】
上記各試験のうち、試験1−6の結果を次の評価表に示す。
【0106】
【表1】

【0107】
【表2】

【0108】
【表3】

【0109】
ここで、評価結果中の光学濃度の数値の持つ意味について説明する。熱発色インキを発色させた時の発色濃度が0.20から0.50の範囲にあると、真贋判定(熱発色インキが発色したら本物と判定)で、かつ、同じ部分に印刷されている数値も容易に読み取り出来る。地肌の光学濃度は0.12以下であれば実使用上、支障無い。各実施例のシートは各試験においていずれも要求を満たしている。一方、比較例2のシートは地肌が既に発色状態にあり、熱発色部とのコントラストがわずかで真贋判定はきわめて困難であった。
【0110】
実施例14又は実施例26の様に、熱発色インキの発色色相と数値の記入色調とが異なると他の場合より数値の判読が容易であった。
【0111】
次に熱スタンプで発色させた発色部の外観にも触れておく。各実施例のシートでは、いずれも均一にハーフトーンの熱発色部が得られた。そのため数値の識別が容易であった。
【0112】
試験10 シートの情報印刷部における適切な染料前駆体含有量の見極め試験
実施例1で用いたインキ中の、染料前駆体と電子受容性化合物との含有質量比を変更せず、ワニスの総量を増減させ、さらに、これを用いてのシート作製時のインキ盛量も調節して、情報印刷部の染料前駆体含有量による、真贋判定及び数値識別への影響を確かめた。実施例13において、熱発色インキ中のワニス量及びシート作製時の染料前駆体含有量を様々に変更した以外は実施例13と同様にしてシートを作製した。これらを、試験1の130℃条件で発色させ、判定は金券の取扱いと真贋判定を業とする者10名をモニターとし、その結果、真贋判定については、染料前駆体含有量0.003g/m2以上であれば真贋判定が出来、0.010g/m2以上で判定がより容易となり、0.030g/m2以上では快適と言える程容易であった。印刷情報部の数値との識別及び情報印刷部の不可視性については、染料前駆体含有量0.300g/m2以下であれば数値の識別が出来、情報印刷部もなお、凝視にても発色が認められなかった。0.120g/m2以下だと、数値の識別がより容易となり、0.080g/m2以下では更に容易となった。 一方、染料前駆体含有量0.003g/m2未満では真贋判定困難となり、また、染料前駆体含有量0.300g/m2を超えると不可視性が保たれず、凝視により情報印刷部の所在が認められた。また、数値の確かな識別には時間を費やし容易と言えなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無色または淡色の電子供与性染料前駆体及びワニスを主たる成分として含有する染料前駆体インキベース(a)、
電子受容性化合物及びワニスを主たる成分として含有する電子受容性化合物インキベース(b)
を別個に作製したものをドライヤーと混合して得たものであることを特徴とする熱発色インキ。
【請求項2】
無色または淡色の電子供与性染料前駆体及びワニスを主たる成分として含有する染料前駆体インキベース(a)、
電子受容性化合物及びワニスを主たる成分として含有する電子受容性化合物インキベース(b)、
融点60℃以上250℃以下の熱可融化合物及びワニスを主たる成分として含有する熱可融化合物インキベース(c)
を別個に作製したものをドライヤーと混合して得たものであることを特徴とする熱発色インキ。
【請求項3】
無色または淡色の電子供与性染料前駆体、融点60℃以上250℃以下の熱可融化合物及びワニスを主たる成分として含有する染料前駆体インキベース(a′)、
電子受容性化合物及びワニスを主たる成分として含有する電子受容性化合物インキベース(b)
を別個に作製したものをドライヤーと混合して得たものであることを特徴とする熱発色インキ。
【請求項4】
無色または淡色の電子供与性染料前駆体及びワニスを主たる成分として含有する染料前駆体インキベース(a)、
電子受容性化合物、融点60℃以上250℃以下の熱可融化合物及びワニスを主たる成分として含有する電子受容性化合物インキベース(b′)
を別個に作製したものをドライヤーと混合して得たものであることを特徴とする熱発色インキ。
【請求項5】
無色または淡色の電子供与性染料前駆体、融点60℃以上250℃以下の熱可融化合物及びワニスを主たる成分として含有する染料前駆体インキベース(a′)、
電子受容性化合物、融点60℃以上250℃以下の熱可融化合物及びワニスを主たる成分として含有する電子受容性化合物インキベース(b′)
を別個に作製したものをドライヤーと混合して得たものであることを特徴とする熱発色インキ。
【請求項6】
電子供与性染料前駆体と電子受容性化合物の含有質量比が1:1〜1:3であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の熱発色インキ。
【請求項7】
電子供与性染料前駆体がキサンテン系化合物、電子受容性化合物がジフェニルスルホン系化合物である請求項1〜6の何れかに記載の熱発色インキ。
【請求項8】
支持体上に、情報を印刷した情報印刷部を設けた不可視情報印刷シートにおいて、請求項1〜7の何れかに記載の熱発色インキを用いて情報印刷部を設け、かつ、該情報印刷部の電子供与性染料前駆体含有量が、0.003g/m2以上、0.300g/m2以下である事を特徴とする不可視情報印刷シート。
【請求項9】
不可視情報がオフセット印刷により印刷されたことを特徴とする請求項8記載の不可視情報印刷シート。

【公開番号】特開2006−290975(P2006−290975A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−111606(P2005−111606)
【出願日】平成17年4月8日(2005.4.8)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【出願人】(000219912)東京インキ株式会社 (120)
【Fターム(参考)】